(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】耐力壁及び木造建物
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20230927BHJP
E04C 2/30 20060101ALI20230927BHJP
E04C 2/38 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
E04B2/56 605E
E04B2/56 604G
E04B2/56 605J
E04B2/56 605M
E04C2/30 F
E04C2/30 V
E04C2/38 J
(21)【出願番号】P 2020036214
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭一
(72)【発明者】
【氏名】久積 綾那
(72)【発明者】
【氏名】清水 信孝
(72)【発明者】
【氏名】濱田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】河合 良道
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-121338(JP,A)
【文献】登録実用新案第3215862(JP,U)
【文献】国際公開第2015/034099(WO,A1)
【文献】特開平11-036486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56- 2/70
E04B 1/00- 1/36
E04B 1/38- 1/61
E04H 9/00- 9/16
E04C 2/00- 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に間隔をあけて開口が形成された金属製の壁面材と、
前記壁面材の前記開口の縁部に沿って設けられ、該縁部から前記壁面材の厚み方向に突出する環状のリブと、
前記上下方向に延び、前記壁面材における幅方向の両端部がそれぞれ接合された一対の縦枠材と、
を備え、
前記縦枠材は、前記壁面材の前記厚み方向の一方側に配置された木製の第1縦材と、前記壁面材の前記厚み方向の他方側に配置されて前記第1縦材との間で前記壁面材の前記幅方向の端部を挟む木製の第2縦材と、を有する、耐力壁。
【請求項2】
前記壁面材の前記幅方向の両端部には、該端部から前記幅方向内側に折り返された折り返し部がそれぞれ設けられており、
前記折り返し部が前記壁面材に重なった状態で、前記壁面材が前記縦枠材に接合されている、請求項1に記載の耐力壁。
【請求項3】
前記リブは、前記壁面材の前記厚み方向の他方側に突出しており、
前記第2縦材の断面積が前記第1縦材の断面積よりも小さい、請求項1又は請求項2に記載の耐力壁。
【請求項4】
少なくとも2枚の前記壁面材を備えており、
前記一対の縦枠材間には、前記上下方向に延びる中間枠材が配置されており、
一方の前記壁面材の前記幅方向の端部と他方の前記壁面材の前記幅方向の端部が前記厚み方向で重なった状態で、前記中間枠材に接合されている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の耐力壁。
【請求項5】
前記壁面材の前記幅方向に延び、前記壁面材における上端部及び下端部がそれぞれ接合された一対の横枠材を更に有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の耐力壁。
【請求項6】
前記壁面材を厚み方向から見て、前記開口の形状及び大きさが同じである、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の耐力壁。
【請求項7】
前記壁面材を厚み方向から見て、前記開口の形状が円形である、請求項6に記載の耐力壁。
【請求項8】
複数の柱材と複数の梁材を組み立てた木造躯体と、
前記木造躯体に用いられる請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の耐力壁と、を備え、
前記耐力壁は、隣り合う前記柱材の間に配置された状態で一対の縦枠材が前記隣り合う柱材にそれぞれ接合されている、木造建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐力壁及び木造建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の上下の梁材に接合される金属製の一対の縦材と、一対の縦材に接合され、複数のバーリング孔が上下に1列に形成された金属製の壁面材と、を備える耐力壁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された耐力壁では、一対の縦材の表面に壁面材を接合している。このため、上記耐力壁では、地震等の水平荷重が作用した場合、縦材に該縦材を捩じるような力が作用する。ここで、縦材が金属材料よりも低強度で且つ低剛性の木質材料によって構成される場合には、水平荷重に対して壁面材の性能が十分に発揮されるよりも前(壁面材が大変形に至る前)に、縦材や縦材と壁面材との接合部に破損が生じる虞がある。
【0005】
上記のように水平荷重によって耐力壁が大変形に至る前に、縦材や縦材と壁面材との接合部に破損が生じたりすることで、耐力壁を大変形まで安定して変形させられない。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、金属製の壁面材と木製の縦枠材とを備える構成において、縦枠材や縦枠材と壁面材との接合部に破損が生じるのを抑制しつつ、大変形時まで安定した耐力を保持できる耐力壁、及びこの耐力壁を用いた木造建物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様の耐力壁は、上下方向に間隔をあけて開口が形成された金属製の壁面材と、前記壁面材の前記開口の縁部に沿って設けられ、該縁部から前記壁面材の厚み方向に突出する環状のリブと、前記上下方向に延び、前記壁面材における幅方向の両端部がそれぞれ接合された一対の縦枠材と、を備え、前記縦枠材は、前記壁面材の厚み方向の一方側に配置された木製の第1縦材と、前記壁面材の厚み方向の他方側に配置されて前記第1縦材との間で前記壁面材の前記幅方向の端部を挟む木製の第2縦材と、を有する、
【0008】
第1態様の耐力壁では、壁面材の幅方向の両端部がそれぞれ第1縦材と第2縦材とで挟まれた状態で、縦枠材が壁面材に接合されていることから、例えば、縦枠材の表面に壁面材が接合される構成と比べて、壁面材が壁厚み方向の中央寄りに位置する。すなわち、壁面材と縦枠材との壁厚み方向の偏心が小さくなる。このため、第1態様の耐力壁を木造躯体の隣り合う柱材間に配置し、一対の縦枠材を隣り合う柱材にそれぞれ接合した状態で、当該耐力壁に地震等による水平荷重が伝達されても、縦枠材(第1縦材及び第2縦材)に作用する該縦枠材を捩じる力が低減されるため、縦枠材や縦枠材と壁面材との接合部に破損が生じるのが抑制される。
また、上記耐力壁では、壁面材の幅方向の端部を第1縦材と第2縦材とで壁厚み方向から挟むことから、壁面材と縦枠材との接合部が2面せん断となり、これらの接合部の耐力と剛性が向上する。これにより、縦枠材や縦枠材と壁面材との接合部に破損が生じるのが更に抑制される。
【0009】
また、上記耐力壁では、壁面材に上下方向に間隔をあけて開口を形成していることから、水平荷重が伝達された場合に、壁面材における上下方向に隣り合う開口間の部分が変形(せん断変形)しやすい。このため、耐力壁では、例えば、壁面材に開口を形成しない構成と比べて、壁面材が水平荷重に対してせん断変形しやすく、縦枠材や縦枠材と壁面材との接合部に破損が生じるのをより抑制することができる。
このように上記耐力壁では、地震等による水平荷重によって壁面材が大変形に至る前に、縦枠材や縦枠材と壁面材との接合部に破損が生じるのが抑制されるため、壁面材が大変形まで安定して変形できる。すなわち、耐力壁は、大変形時まで安定した耐力を保持できる。その結果、第1態様の耐力壁は、地震エネルギー等を安定して吸収することが可能となる。
【0010】
本発明の第2態様の耐力壁は、第1態様の耐力壁において、前記壁面材の前記幅方向の両端部には、該端部から前記幅方向内側に折り返された折り返し部がそれぞれ設けられており、前記折り返し部が前記壁面材に重なった状態で、前記壁面材が前記縦枠材に接合されている。
【0011】
第2態様の耐力壁では、折り返し部が壁面材に重なり、壁面材の幅方向の端部が第1縦材と第2縦材とで挟まれた状態で壁面材が縦枠材に接合されている。すなわち、上記耐力壁では、第1縦材と第2縦材とで挟んだ部分において金属板が2重になるため、例えば、第1縦材と第2縦材とで挟んだ部分において金属板が一重の構成と比べて、壁面材及び折り返し部と縦枠材との接合部の耐力及び剛性が向上する。これにより、上記耐力壁では、壁面材が大変形に至る前に、壁面材及び折り返し部と縦枠材との接合部に破損が生じるのが更に抑制される。
【0012】
本発明の第3態様の耐力壁は、第1態様又は第2態様の耐力壁において、前記リブは、前記壁面材の前記厚み方向の他方側に突出しており、前記第2縦材の断面積が前記第1縦材の断面積よりも小さい。
【0013】
第3態様の耐力壁では、壁面材の厚み方向でリブの突出側に配置された第2縦材の断面積を、第1縦材の断面積よりも小さくしていることから、例えば、第1縦材の断面積が第2縦材の断面積以上の構成と比べて、壁面材と縦枠材とを含む壁全体としてのせん断中心と壁の軸線とのずれが小さくなる。これにより、上記耐力壁では、水平荷重が作用した場合の縦枠材(第1縦材及び第2縦材)の捩じれが抑制され、縦枠材と壁面材との接合部に破損が生じるのが抑制される。
【0014】
本発明の第4態様の耐力壁は、第1態様~第3態様のいずれか1態様の耐力壁において、少なくとも2枚の前記壁面材を備えており、前記一対の縦枠材間には、前記上下方向に延びる中間枠材が配置されており、一方の前記壁面材の前記幅方向の端部と他方の前記壁面材の前記幅方向の端部が前記厚み方向で重なった状態で、前記中間枠材に接合されている。
【0015】
第4態様の耐力壁では、一方の壁面材の幅方向の端部と他方の壁面材の幅方向の端部が壁厚み方向で重なった状態で、中間枠材に接合されている。すなわち、上記耐力壁では、2枚の壁面材が壁厚み方向で重なって2重になった部分に中間枠材が接合されていることから、壁面材と中間枠材との接合部の耐力及び剛性が向上する。これにより、上記耐力壁では、壁面材が大変形に至る前に、中間枠と壁面材との接合部に破損が生じるのが更に抑制される。
【0016】
本発明の第5態様の耐力壁は、第1態様~第4態様のいずれか1態様の耐力壁において、前記壁面材の前記幅方向に延び、前記壁面材における上端部及び下端部がそれぞれ接合された一対の横枠材を更に有する。
【0017】
第5態様の耐力壁では、壁面材の幅方向にそれぞれ延びる一対の横枠材に、壁面材における上端部及び下端部がそれぞれ接合されている。このため、第5態様の耐力壁を木造躯体の隣り合う柱材間に配置し、上枠材を上梁材に接合し、下枠材を下梁材に接合した状態で、当該耐力壁に地震等による水平荷重が伝達された場合に、縦枠材と壁面材との接合部に作用する力が、横枠材と壁面材との接合部に分散されるため、縦枠材と壁面材との接合部に破損が生じるのが抑制される。
【0018】
本発明の第6態様の耐力壁は、第1態様~第4態様のいずれか1態様の耐力壁において、前記壁面材を厚み方向から見て、前記開口の形状及び大きさが同じである。
【0019】
第6態様の耐力壁では、壁面材を厚み方向から見て、開口の形状及び大きさが同じであることから、例えば、開口の形状及び大きさの少なくとも一方が異なる構成と比べて、開口及び開口の縁部に設けられるリブ毎に作用する応力を一定にできる。これにより、壁面材に早期にせん断座屈が生じるのが抑制される。また、壁面材に開口及びリブを形成するに際して、開口及びリブの形状及び大きさに合わせた様々な加工具(金型含む)を用いる必要がないため、耐力壁の製造(加工)が容易になる。
【0020】
本発明の第7態様の耐力壁は、第6態様の耐力壁において、前記壁面材を厚み方向から見て、前記開口の形状が円形である。
【0021】
第7態様の耐力壁では、壁面材を厚み方向から見て、開口の形状を円形としていることから、例えば、開口の形状を多角形状とした構成と比べて、水平荷重が作用したときの、開口及び開口の縁部に設けられるリブへの局部応力集中が緩和され、大変形時まで安定した耐力を保持できる。
【0022】
本発明の第8態様の木造建物は、複数の柱材と複数の梁材を組み立てた木造躯体と、前記木造躯体に用いられる第1態様~第7態様のいずれか1態様の耐力壁と、を備え、前記耐力壁は、隣り合う前記柱材の間に配置された状態で一対の縦枠材が前記隣り合う柱材にそれぞれ接合されている。
【0023】
地震等による水平荷重が耐力壁に伝達されても、第1態様~第7態様のいずれか1態様の耐力壁では、大変形に至る前に、縦枠材や縦枠材と壁面材との接合部に破損が生じるのが抑制されるため、大変形時まで安定した耐力を保持できる。第8態様の木造建物では、上記のような耐力壁を用いることから、地震エネルギーが耐力壁によって安定して吸収されるため、耐震性能が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、金属製の壁面材と木製の縦枠材とを備える構成において、縦枠材や縦枠材と壁面材との接合部に破損が生じるのを抑制しつつ、大変形時まで安定した耐力を保持できる耐力壁、及びこの耐力壁を用いた木造建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態の耐力壁の斜視図である。
【
図4】
図3における矢印4X-4X線断面の拡大図である。
【
図5】
図3における矢印5X-5X線断面の拡大図である。
【
図6】
図3の耐力壁を木造躯体に設置した状態を示す、耐力壁の正面図である。
【
図7】
図6における矢印7X-7X線断面の拡大図である。
【
図8】
図6における矢印8X-8X線断面の拡大図である。
【
図9】(A)比較例の耐力壁に水平荷重が作用した状態を示す、縦枠材と壁面材の接合部の拡大断面図である。(B)水平荷重により比較例の耐力壁の縦枠材が破損した状態を示す、拡大断面図(
図9(A)に対応する部分の拡大断面図)である。(C)水平荷重により比較例の耐力壁の縦枠材と壁面材の接合部が破損した状態を示す、拡大断面図(
図9(A)に対応する部分の拡大断面図)である。
【
図10】(A)
図6の耐力壁に水平荷重が作用した状態を示す、縦枠材と壁面材の接合部の拡大断面図である。(B)水平荷重に対して、
図6の耐力壁の縦枠材及び縦枠材と壁面材との接合部の破損が抑制された状態を示す、拡大断面図(
図10(A)に対応する部分の拡大断面図)である。
【
図11】第1実施形態の耐力壁の変形例の正面図である。
【
図12】
図11における矢印12X-12X線断面の拡大図である。
【
図13】本発明の第2実施形態の耐力壁の正面図である。
【
図14】
図13における矢印14X-14X線断面の拡大図である。
【
図15】本発明の第3実施形態の耐力壁における縦枠材と壁面材の接合部の拡大断面図である。
【
図16】本発明の第4実施形態の耐力壁における縦枠材と壁面材の接合部の拡大断面図である。
【
図17】本発明の第4実施形態の耐力壁の変形における縦枠材と壁面材の接合部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面を用いて、本発明の一実施形態の耐力壁及びこの耐力壁を用いた木造建物について説明する。
【0027】
[第1実施形態]
まず、
図1~
図8を用いて本発明の第1実施形態の耐力壁20及びこの耐力壁20を用いた木造建物100について説明する。なお、図中に示された矢印UPは、本実施形態の耐力壁20が用いられる木造建物100の上方向を示している。また、図中に示された矢印Wは、耐力壁20の幅方向(以下、適宜「壁幅方向」と記載する。)を示し、矢印Tは、耐力壁20の厚み方向(以下、適宜「壁厚み方向」と記載する。)を示している。なお、本実施形態では、壁幅方向と木造建物100の水平方向が一致している。また、壁幅方向と壁厚み方向は直交している。
【0028】
<木造建物100>
まず、耐力壁20を用いた木造建物100について説明する。
図6~
図8に示すように、木造建物100は、木造躯体102と、この木造躯体102に設置された耐力壁20を備えている。木造躯体102は、軸組工法の柱梁骨組であり、複数の柱材と複数の梁材とを組み立てて形成されている。具体的には、木造躯体102は、
図6に示すように、複数の柱材104と、複数の柱材104の下端部が固定される下梁材108と、複数の柱材104の上端部が固定される上梁材106と、を備えている。なお、本実施形態の柱材104、上梁材106及び下梁材108は、それぞれ断面形状が略矩形の木材である(
図7及び
図8参照)。
【0029】
図8に示すように、耐力壁20は、木造躯体102の隣り合う柱材104間に配置されており、後述する一対の縦枠材26が、隣り合う柱材104にそれぞれ接合されている。このように一対の縦枠材26が隣り合う柱材104にそれぞれ接合されることで、耐力壁20が木造躯体102に設置されている。なお、本実施形態では、耐力壁20の上枠材40が上梁材106に接合され、下枠材50が下梁材108に接合されている。
【0030】
また本実施形態の耐力壁20は、木造建物100の真壁として用いられる。耐力壁20の表面側(
図7では耐力壁20の左側)、すなわち、建物の室内側には、図示しない内装材が配設され、耐力壁20の裏面側(
図7では耐力壁20の右側)、すなわち、建物の室外側には、図示しない外装材が配設されている。
【0031】
<耐力壁20>
図1及び
図2に示すように、本実施形態の耐力壁20は、壁面材22と、環状リブ24と、一対の縦枠材26と、を備えている。
【0032】
(壁面材22)
図1及び
図2に示すように、壁面材22は、矩形状の金属板(本実施形態では、厚み0.8mm~1.2mmの鋼板(所謂薄板))である。この壁面材22には、上下方向に間隔をあけて複数(本実施形態では7つ)の開口28が形成されている。これら7つの開口28は、上下方向に1列に形成されている。なお、本実施形態では、壁面材22の壁幅方向の中心を通って上下方向に延びる中心線上に全ての開口28の中心が位置しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、壁面材22の中心線に対して壁幅方向にオフセットした直線上に全ての開口28の中心が位置していてもよい。
なお、本実施形態における壁面材22の幅方向及び厚み方向は、それぞれ壁幅方向及び壁厚み方向と同じ方向である。
【0033】
図3に示すように、開口28の形状は、壁面材22を壁厚み方向から見て、円形である。そして、壁面材22を壁厚み方向から見て、上下方向に隣り合う開口28の形状及び大きさが、同じ形状及び大きさとされている。なお、本実施形態では、全ての開口28の形状及び大きさが同じに設定されている。また、開口28の直径は、配管や配線を通す観点から150mm以上、より好ましくは200mm以上に設定されている。
【0034】
(環状リブ24)
図2及び
図3に示すように、環状リブ24は、壁面材22の開口28の縁部に沿って設けられており、該縁部から壁厚み方向に突出する環状の突条部である。なお、本実施形態では、環状リブ24は、壁厚み方向の他方側(
図4では右側)に向けて突出している。また、本実施形態では、開口28の形状が円形のため、環状リブ24の形状が円環状とされている。
【0035】
また、本実施形態では、壁面材22にバーリング加工を施すことで、壁面材22に開口28及び環状リブ24を形成している。このため、環状リブ24は、壁面材22と一体に形成されている。なお、本発明は上記構成に限定されず、例えば、壁面材22にプレス加工で開口28を形成し、この開口28の縁部に円形の環状部材(筒状部材)を接合して環状リブ24を形成してもよい。
【0036】
(縦枠材26)
図1及び
図3に示すように、一対の縦枠材26は、壁幅方向に間隔をあけて配置されており、それぞれ上下方向に延びている。これらの一対の縦枠材26には、
図5に示すように、壁面材22における壁幅方向の幅端部22Aがそれぞれ接合されている。
【0037】
図2及び
図5に示すように、縦枠材26は、第1縦材30と、第2縦材32とを有している。
【0038】
図2及び
図4に示すように、第1縦材30は、上下方向に延びる長尺な木材であり、壁面材22の壁厚み方向の一方側の板面22B上に配置されている。なお、第1縦材30の長手方向と直交する方向の断面形状は、略長方形とされている。また、壁面材22の板面22Bは、環状リブ24の突出側と反対側の板面である。
【0039】
第2縦材32は、上下方向に延びる長尺な木材であり、壁面材22の壁厚み方向の他方側の板面22C上に配置されている。なお、第2縦材32の長手方向と直交する方向の断面形状は、略長方形とされている。また、壁面材22の板面22Cは、壁面材22の板面22Bと反対側の板面である。
なお、本実施形態の第1縦材30と第2縦材32は、同一寸法形状の木材である。すなわち、第1縦材30の断面積と第2縦材32の断面積は同じである。
【0040】
図5に示すように、第1縦材30と第2縦材32によって、壁面材22の幅端部22Aが壁厚み方向で挟まれている。このように第1縦材30と第2縦材32が壁面材22の幅端部22Aを挟んだ状態で、第1縦材30、第2縦材32及び壁面材22が接合具34によって接合されている。この接合具34としては、釘や木ネジ(例えば、ドリル付きの木ネジ)等が挙げられる。なお、本実施形態では、接合具34として鋼板釘を用いており、この接合具34が第1縦材30から第2縦材32へ向けて打ち込まれて、縦枠材26に壁面材22が接合されている。
【0041】
また、以下では、第1縦材30、第2縦材32及び壁面材22との接合具34による接合部分を接合部36と記載する。これらの接合部36は、上下方向に間隔をあけて複数形成されている。なお、本実施形態の耐力壁20では、接合部36が略一定の間隔で設けられているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、耐力壁20に地震等による水平荷重が伝達された場合に、せん断力が大きく作用する領域に接合部36を密に配置してもよい。
【0042】
また、本実施形態の縦枠材26は、
図8に示すように、接合具38によって柱材104に接合されている。具体的には、接合具38によって第1縦材30及び第2縦材32がそれぞれ柱材104に接合されている。この接合具38としては、接合具34と同様に、釘や木ネジ(例えば、ドリル付きの木ネジ)等を用いることができる。なお、本実施形態では、接合具38として木材用の釘を用いている。そして、第1縦材30から柱材104へ向けて接合具38が打ち込まれて第1縦材30が柱材104に接合され、第2縦材32から柱材104へ向けて接合具38が打ち込まれて第2縦材32が柱材104に接合されている。このようにして縦枠材26が柱材104に接合されている。
【0043】
図2及び
図3に示すように、耐力壁20は、上枠材40と、下枠材50と、を更に有している。なお、本実施形態の上枠材40と下枠材50は、それぞれ本発明における一対の横枠材の一例である。
【0044】
(上枠材40)
図1及び
図2に示すように、上枠材40は、壁幅方向に延びており、壁面材22における上端部22Dが接合されている。
【0045】
図2及び
図4に示すように、上枠材40は、第1横材42と、第2横材44とを有している。
【0046】
第1横材42は、壁幅方向に延びる長尺な木材であり、壁面材22の壁厚み方向の一方側の板面22B上に配置されている。なお、第1横材42の長手方向と直交する方向の断面形状は、略長方形とされている。
【0047】
第2横材44は、壁幅方向に延びる長尺な木材であり、壁面材22の壁厚み方向の他方側の板面22C上に配置されている。なお、第2横材44の長手方向と直交する方向の断面形状は、略長方形とされている。
【0048】
なお、本実施形態の第1横材42と第2横材44は、同一寸法形状の木材である。すなわち、第1横材42の断面積と第2横材44の断面積は同じである。
【0049】
図4に示すように、第1横材42と第2横材44によって、壁面材22の上端部22Dが壁厚み方向で挟まれている。このように第1横材42と第2横材44が壁面材22の上端部22Dを挟んだ状態で、第1横材42、第2横材44及び壁面材22が接合具34によって接合されている。なお、本実施形態では、接合具34が第1横材42から第2横材44へ向けて打ち込まれて、上枠材40に壁面材22が接合されている。
【0050】
また、以下では、第1横材42、第2横材44及び壁面材22との接合具34による接合部分を接合部46と記載する。これらの接合部46は、壁幅方向に間隔をあけて複数形成されている。なお、本実施形態の耐力壁20では、接合部46が略一定の間隔で設けられているが、本発明はこの構成に限定されない。
【0051】
また、本実施形態の上枠材40は、
図7に示すように、接合具38によって上梁材106に接合されている。具体的には、接合具38によって第1横材42及び第2横材44がそれぞれ上梁材106に接合されている。なお、本実施形態では、第1横材42から上梁材106へ向けて接合具38が打ち込まれて第1横材42が上梁材106に接合され、第2横材44から上梁材106へ向けて接合具38が打ち込まれて第2横材44が上梁材106に接合されている。このようにして上枠材40が上梁材106に接合されている。
【0052】
(下枠材50)
図1及び
図2に示すように、下枠材50は、上枠材40に対して上下方向に間隔をあけて配置されている。この下枠材50は、壁幅方向に延びており、壁面材22における下端部22Eが接合されている。
【0053】
図2及び
図5に示すように、下枠材50は、第1横材52と、第2横材54とを有している。
【0054】
第1横材52は、壁幅方向に延びる長尺な木材であり、壁面材22の壁厚み方向の一方側の板面22B上に配置されている。なお、第1横材52の長手方向と直交する方向の断面形状は、略長方形とされている。
【0055】
第2横材54は、壁幅方向に延びる長尺な木材であり、壁面材22の壁厚み方向の他方側の板面22C上に配置されている。なお、第2横材54の長手方向と直交する方向の断面形状は、略長方形とされている。
【0056】
なお、本実施形態の第1横材52と第2横材54は、同一寸法形状の木材である。すなわち、第1横材52の断面積と第2横材54の断面積は同じである。
【0057】
図4に示すように、第1横材52と第2横材54によって、壁面材22の下端部22Eが壁厚み方向で挟まれている。このように第1横材52と第2横材54が壁面材22の下端部22Eを挟んだ状態で、第1横材52、第2横材54及び壁面材22が接合具34によって接合されている。なお、本実施形態では、接合具34が第1横材52から第2横材54へ向けて打ち込まれて、下枠材50に壁面材22が接合されている。
【0058】
また、以下では、第1横材52、第2横材54及び壁面材22との接合具34による接合部分を接合部56と記載する。これらの接合部56は、壁幅方向に間隔をあけて複数形成されている。なお、本実施形態の耐力壁20では、接合部56が略一定の間隔で設けられているが、本発明はこの構成に限定されない。
【0059】
また、本実施形態の下枠材50は、
図7に示すように、接合具38によって下梁材108に接合されている。具体的には、接合具38によって第1横材52及び第2横材54がそれぞれ下梁材108に接合されている。なお、本実施形態では、第1横材52から下梁材108へ向けて接合具38が打ち込まれて第1横材52が下梁材108に接合され、第2横材54から下梁材108へ向けて接合具38が打ち込まれて第2横材54が下梁材108に接合されている。このようにして下枠材50が下梁材108に接合されている。
【0060】
また、本実施形態では、第1横材42が一対の第1縦材30の上端部同士を連結し、第1横材52が一対の第1縦材30の下端部同士を連結している。これら一対の第1縦材30、第1横材42及び第1横材52によって第1枠材60(
図2参照)が形成されている。同様に、第2横材44が一対の第2縦材32の上端部同士を連結し、第2横材54が一対の第2縦材32の下端部同士を連結している。これら一対の第2縦材32、第2横材44及び第2横材54によって第2枠材62(
図2参照)が形成されている。これら第1枠材60と第2枠材62によって、壁面材22が壁厚み方向の両側から挟まれている。なお、縦材と横材の連結は、公知の技術を用いて行われる。例えば、縦材と横材は、釘、木ネジ、接着剤等を用いて連結されてもよいし、板材等を介して連結されてもよい。また、本実施形態の耐力壁20は、第1枠材60と第2枠材62をそれぞれ形成した後で、第1枠材60と第2枠材62で壁面材22を壁厚み方向で挟み、その状態で、接合具34によって第1枠材60及び第2枠材62と壁面材22とを接合して形成してもよく、壁面材22を各縦材で挟んだ状態で接合具34によって壁面材22と各縦材を接合し、壁面材22を各横材で挟んだ状態で接合具34によって壁面材22と各横材を接合し、その後、縦材と横材を連結して形成してもよい。
なお、本実施形態では、縦材と横材を連結する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、縦材と横材が連結されない構成でもよい。
【0061】
図1及び
図4に示すように、上下方向に隣り合う開口28の中心間距離D1は、一対の縦枠材26と壁面材22との接合部36間の水平方向(壁幅方向)に沿った水平距離D2(
図5参照)よりも短くなっている。なお、ここでいう、水平距離D2は、壁幅方向で一方の接合部36の中心から壁幅方向で他方の接合部36の中心までの壁幅方向に沿った距離である。また、開口28の水平方向(壁幅方向)に沿った幅W1は、水平距離D2の30%~80%の範囲内に設定されている。
【0062】
次に本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0063】
図9(A)には、比較例1の耐力壁70が示されている。この耐力壁70は、一対の縦枠材72と、一対の縦枠材72の上端部同士及び下端部同士を連結する一対の横枠材74とで構成される木製の枠材76の表面に第1実施形態の壁面材22を接合具34で接合した耐力壁である。このような耐力壁70を木造躯体102の隣り合う柱材104間に設置した状態で、地震等による水平荷重HLが耐力壁70に伝達されると、
図9(A)に示されるように、縦枠材72に該縦枠材72を捩じる力Fが作用する。ここで、縦枠材72が金属製の壁面材22よりも低強度で且つ低剛性の木材によって構成されている場合、水平荷重HLに対して壁面材22の性能が十分に発揮されるよりも前(壁面材22が大変形に至る前)に、
図9(B)に示すように縦枠材72が捩じれて該縦枠材72が破損する、又は、
図9(C)に示すように縦枠材72から接合具34が引き抜かれて、縦枠材72と壁面材22との接合部が破損する虞がある。
【0064】
上記のように、水平荷重によって耐力壁が大変形に至る前に、縦枠材や、縦枠材と壁面材との接合部に破損が生じた場合、耐力壁(壁面材)が大変形まで安定して変形できない。そのため、耐力壁には、縦枠材や、縦枠材と壁面材との接合部に破損が生じるのを抑制しつつ、大変形時まで安定した耐力を保持できることが求められている。これらのことを考慮のうえ、本発明者らは、本発明の開発に至った。
【0065】
本実施形態の耐力壁20では、壁面材22の両方の幅端部22Aがそれぞれ第1縦材30と第2縦材32とで挟まれた状態で、縦枠材26が壁面材22に接合されていることから、例えば、比較例1のように縦枠材72の表面に壁面材22が接合される構成と比べて、壁面材22が壁厚み方向の中央寄りに位置する。すなわち、壁面材22と縦枠材26との壁厚み方向の偏心が小さくなる。このため、本実施形態の耐力壁20を木造躯体102の隣り合う柱材104間に配置し、一対の縦枠材26を隣り合う柱材104にそれぞれ接合した状態で、
図10(A)に示すように耐力壁20に水平荷重HLが伝達されても、縦枠材26(第1縦材30及び第2縦材32)に作用する該縦枠材26を捩じる力Fが低減される。これにより、耐力壁20では、縦枠材26の捩じれが抑制されたり、縦枠材26から接合具34が引き抜かれたりするのが抑制される(
図10(B)参照)。すなわち、耐力壁20では、水平荷重HLによって縦枠材26や縦枠材26と壁面材22との接合部36に破損が生じたりするのを抑制できる。
【0066】
また、耐力壁20では、壁面材22の幅端部22Aを第1縦材30と第2縦材32とで壁厚み方向から挟むことから、壁面材22と縦枠材26との接合部36が2面せん断となり、これらの接合部36の耐力と剛性が向上する。これにより、縦枠材26や縦枠材26と壁面材22との接合部36に破損が生じるのが更に抑制される。
【0067】
さらに、耐力壁20では、壁面材22に上下方向に間隔をあけて開口28を形成していることから、水平荷重HLが伝達された場合に、壁面材22における上下方向に隣り合う開口28間の部分が変形(せん断変形)しやすい。このため、耐力壁20では、例えば、壁面材22に開口28を形成しない構成と比べて、壁面材22が水平荷重HLに対してせん断変形しやすく、縦枠材26や縦枠材26と壁面材22との接合部36に破損が生じるのをより抑制することができる。
【0068】
このように耐力壁20では、水平荷重HLによって壁面材22が大変形に至る前に、縦枠材26や、縦枠材26と壁面材22との接合部36に破損が生じるのを抑制できるため、壁面材22が大変形まで安定して変形することができる。すなわち、耐力壁20は、大変形時まで安定した耐力を保持できる。その結果、耐力壁20は、地震エネルギー等を安定して吸収することが可能となる。このような耐力壁20を用いる木造建物100では、耐力壁20によって地震エネルギーが安定して吸収されるため、耐震性能が向上する。
【0069】
また、耐力壁20では、壁面材22の上端部22Dに上枠材40が接合され、壁面材の22の下端部22Eに下枠材50が接合されている。このため、耐力壁20の一対の縦枠材26を隣り合う柱材104にそれぞれ接合し、上枠材40を上梁材106に接合し、下枠材50を下梁材108に接合した状態で、当該耐力壁20に水平荷重HLが伝達されると、縦枠材26と壁面材22との接合部36に作用する力が、上枠材40と壁面材22との接合部46及び下枠材50と壁面材22との接合部56にそれぞれ分散されるため、縦枠材26と壁面材22との接合部36に破損が生じるのが抑制される。
【0070】
また、耐力壁20では、壁面材22を壁厚み方向から見て、全ての開口28の形状及び大きさが同じであることから、例えば、開口28の形状及び大きさの少なくとも一方が異なる構成と比べて、開口28及び開口28の縁部に設けられる環状リブ24毎に作用する応力を一定にできる。これにより、壁面材22に早期にせん断座屈が生じるのが抑制される。また、壁面材22に開口28及び環状リブ24を形成するに際して、開口28及び環状リブ24の形状及び大きさに合わせた様々な加工具(金型含む)を用いる必要がないため、耐力壁の製造(加工)が容易になる。
【0071】
さらに、耐力壁20では、壁面材22を壁厚み方向から見て、全ての開口28の形状を円形としていることから、例えば、開口28の形状を多角形状とした構成と比べて、水平荷重HLが作用したときの、開口28及び環状リブ24への局部応力集中が緩和され、大変形時まで安定した耐力を保持できる。
【0072】
耐力壁20では、中心間距離D1が水平距離D2よりも短いため、水平荷重HLが耐力壁20に伝達された場合に、壁面材22において、一対の接合部36と開口28との水平方向の中間部22Gにおけるせん断応力(ミーゼス応力)値が、上下方向に隣り合う開口28間の上下方向の中間部22Fのせん断応力値よりも低くなる。その結果、耐力壁20では、壁面材22における上下方向に隣り合う開口28間の上下方向の中間部22Fが変形する前に、縦枠材26と壁面材22との接合部36に破損が生じるのが抑制され、大変形時まで安定した耐力を保持できる。
【0073】
また、耐力壁20では、幅W1が水平距離D2の30%~80%の範囲内であることから、壁面材22において上下方向に隣り合う開口28間の中間部22Fが変形する前に、縦枠材26と壁面材22との接合部36に破損が生じるのを効果的に抑制できる。
【0074】
そして、耐力壁20では、壁面材22に開口28が形成されているため、この開口28を用いて配管や配線を実施できる。このため、耐力壁20では、例えば、壁面材に開口を形成しない構成と比べて、配管や配線を迂回させる必要がなく、また、壁面材に貫通孔を現場加工する必要もないため、施工現場において省力化が図れる。さらに、壁面材22に開口28を形成することで、軽量化を図ることができる。
【0075】
また、耐力壁20では、壁面材22の幅端部22Aを第1縦材30と第2縦材32とで挟み込む構造のため、この挟み込み部分の寸法を適宜調整することで、木造躯体102の寸法公差や施工誤差を耐力壁20において吸収することが可能となる。
【0076】
第1実施形態では、耐力壁20を構成する壁面材22に開口28を1列形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、
図11に示す耐力壁80のように、耐力壁80を構成する壁面材82に開口28を複数列(耐力壁80では2列)形成してもよい。この耐力壁80は、隣り合う柱材104間の距離が広い場合に用いられるため、第1実施形態よりも壁面材82の壁幅方向の幅が広くなっている。このような耐力壁80を隣り合う柱材104間に設置すると、壁面材82における2列の開口28間の部分の剛性が不足するため、
図11及び
図12では一対の縦枠材26間に中間枠材84を配置し、この中間枠材84と壁面材82とを接合して、壁面材82における上記部分を補強している。なお、中間枠材84は、上端部が上枠材40に接合され、下端部が下枠材50に接合されている。具体的には、中間枠材84は、壁面材82の壁厚み方向の一方側の板面82A上に配置される第1縦材86と、壁面材82の板面82Aと反対側の板面82B上に配置される第2縦材88とを有しており、接合具34を第1縦材86から第2縦材88に向けて打ち込むことで壁面材82に接合されている。なお、以下では、中間枠材84と壁面材82との接合具34による接合部分を接合部90と記載する。これらの接合部90は、壁幅方向に間隔をあけて複数形成されている。ここで、
図12に示すように、耐力壁80では、上下方向に隣り合う開口28の中心間距離D1が一方又は他方の接合部36から接合部90までの水平距離D2よりも短くなっている。そして、開口28の幅W1は、水平距離D3の30%~80%の範囲内に設定されている。これらの構成により、耐力壁80では、水平荷重HLが耐力壁80に伝達された場合に、壁面材82において、一方の接合部36と開口28との水平方向の中間部におけるせん断応力(ミーゼス応力)値及び接合部90と開口28との水平方向の中間部におけるせん断応力値が、上下方向に隣り合う開口28間の上下方向の中間部のせん断応力値よりも低くなる。その結果、耐力壁80では、壁面材82における上下方向に隣り合う開口28間の中間部が変形する前に、接合部36と接合部90に破損が生じるのが抑制され、大変形時まで安定した耐力を保持できる。なお、
図11及び
図12で示す符号92は、第1枠材60に第1縦材86を組み入れた枠材であり、符号94は、第2枠材62に第2縦材88を組み入れた枠材である。また、中間枠材84を構成する第1縦材86と第2縦材88は同一寸法形状である。
【0077】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態の耐力壁110について説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には、同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0078】
図13及び
図14に示すように、本実施形態の耐力壁110は、隣り合う柱材104間の距離が第1実施形態よりも広い木造躯体102に用いられる。このため、
図13及び
図14に示すように、耐力壁110は、第1実施形態の壁面材22を2枚用いて構成されている(同一寸法形状の壁面材22を2枚用いている)。具体的には、
図13及び
図14に示すように、2枚の壁面材22を同じ向きで壁幅方向に並べ、1枚目の壁面材22の幅端部22Aと2枚目の壁面材22の幅端部22Aを重ね、この重なり部分を接合具34で接合している。
【0079】
図13及び
図14に示すように、耐力壁110では、一対の縦枠材26間に中間枠材112を配置し、この中間枠材112と2枚の壁面材22とを接合している。具体的には、中間枠材112は、第1縦材114と第2縦材116とを備えており、これらの第1縦材114と第2縦材116とによって、2枚の壁面材22の重なり部分が壁厚み方向で挟まれている。そして、接合具34が第1縦材114から第2縦材116に向けて打ち込まれることで、中間枠材112と2枚の壁面材22とが接合されている。なお、以下では、中間枠材112と壁面材22との接合具34による接合部分を接合部118と記載する。これらの接合部118は、上下方向に間隔をあけて複数形成されている。ここで、
図14に示すように、耐力壁110では、上下方向に隣り合う開口28の中心間距離D1が一方又は他方の接合部36から接合部118までの水平距離D2よりも短くなっている。
【0080】
なお、
図13及び
図14で示す符号120は、第1枠材60に第1縦材114を組み入れた枠材であり、符号122は、第2枠材62に第2縦材116を組み入れた枠材である。また、中間枠材112を構成する第1縦材114と第2縦材116は同一寸法形状である。
【0081】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
なお、第1実施形態と同様の構成で得られる作用並びに効果については、その説明を省略する。
【0082】
耐力壁110では、1枚目の壁面材22の幅端部22Aと2枚目の壁面材22の幅端部22Aを壁厚み方向で重ねて、この重なり部分を第1縦材114と第2縦材116で挟んだ状態で接合具34に2枚の壁面材22を中間枠材112に接合している。ここで、耐力壁110では、2枚の壁面材22が壁厚み方向で重なって2重になった部分に中間枠材112が接合されていることから、2枚の壁面材22と中間枠材112との接合部の耐力及び剛性が向上する。これにより、上記耐力壁110では、壁面材22が大変形に至る前に、中間枠材112と2枚の壁面材22との接合部118に破損が生じるのが更に抑制される。
【0083】
また、耐力壁110では、同一寸法形状の2枚の壁面材22を用いるため、異なる寸法形状の壁面材を用いる構成と比べて、部品管理が容易であり、生産コストの削減も図れる。
【0084】
第2実施形態の耐力壁110では、2枚の壁面材22を同じ向きで壁幅方向に並べ、1枚目の壁面材22の幅端部22Aと2枚目の壁面材22の幅端部22Aを重ね、この重なり部分で、2枚の壁面材22と中間枠材112とを接合具34で接合しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、2枚の壁面材22を同じ向きで各々の幅端部22A同士が重ならないように壁幅方向に並べ、各々の幅端部22Aを中間枠材112に接合具34で接合してもよい。なお、ここでいう2枚の壁面材22の各々の幅端部22A同士が重ならないように壁幅方向に並べるには、2枚の壁面材22の各々の幅端部22A同士を接した状態で並べたものや各々の幅端部22A同士を離した状態で並べたものを含む。
【0085】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態の耐力壁130について説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には、同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0086】
図15に示すように、本実施形態の耐力壁130は、第1実施形態の壁面材22と、この壁面材22の幅端部22Aに設けられた折り返し部132と、を有している。具体的には、折り返し部132は、壁面材22の幅端部22Aから壁幅方向内側に折り返された部分であり、壁面材22と一体成形されている。この折り返し部132が壁面材22に重なった状態で、壁面材22が縦枠材26に接合されている。具体的には、第1縦材30と第2縦材32とによって、壁面材22と、この壁面材22に重なった折り返し部132とが壁厚み方向に挟まれて、接合具34によって接合されている。なお、以下では、縦枠材26と壁面材22との接合具34による接合部分を接合部134と記載する。これらの接合部134は、上下方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0087】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
なお、第1実施形態と同様の構成で得られる作用並びに効果については、その説明を省略する。
【0088】
耐力壁130では、折り返し部132が壁面材22に重なり、壁面材22の幅端部22Aが第1縦材30と第2縦材32とで挟まれた状態で壁面材22が縦枠材26に接合されている。すなわち、耐力壁130では、第1縦材30と第2縦材32とで挟んだ部分において金属板が2重になるため、例えば、第1縦材30と第2縦材32とで挟んだ部分において金属板が一重の構成と比べて、壁面材22及び折り返し部132と縦枠材26との接合部134の耐力及び剛性が向上する。これにより、上記耐力壁では、壁面材22が大変形に至る前に、壁面材22及び折り返し部132と縦枠材26との接合部134に破損が生じるのが更に抑制される。
【0089】
第3実施形態では、壁面材22の幅端部22Aに折り返し部132を設けたが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、壁面材22の上端部22D、下端部22Eにそれぞれ折り返し部を設けてもよい。
【0090】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態の耐力壁140について説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には、同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0091】
図16に示すように、本実施形態の耐力壁140は、第1実施形態の壁面材22と、第1枠材60と、第2枠材142とを有している。
【0092】
第2枠材142は、一対の第2縦材144、第2横材44及び第2横材54を有している。第2縦材144の断面積は、第1縦材30の断面積よりも小さい。具体的には、第2縦材144の壁幅方向に沿った幅が、第1縦材30の壁幅方向に沿った幅よりも狭くなっており、第2縦材144の断面積が第1縦材30の断面積よりも小さくされている。
【0093】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
なお、第1実施形態と同様の構成で得られる作用並びに効果については、その説明を省略する。
【0094】
耐力壁130では、壁面材22の壁厚み方向で環状リブ24の突出側に配置された第2縦材144の断面積を、第1縦材30の断面積よりも小さくしていることから、例えば、第1縦材30の断面積が第2縦材144の断面積以上の構成と比べて、壁面材22と縦枠材146とを含む壁全体としてのせん断中心と壁の軸線とのずれが小さくなる。これにより、耐力壁130では、水平荷重HLが作用した場合の縦枠材146(第1縦材30及び第2縦材144)の捩じれが抑制され、縦枠材146と壁面材22との接合具34による接合部148に破損が生じるのが抑制される。
【0095】
第4実施形態の耐力壁140では、第2縦材144の壁幅方向に沿った幅を第1縦材30の壁幅方向に沿った幅よりも狭くして、第2縦材144の断面積を第1縦材30の断面積よりも小さくしているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、
図17に示す耐力壁150のように、第2縦材154の壁厚み方向に沿った厚みを第1縦材30の壁厚み方向に沿った厚みよりも薄くして、第2縦材154の断面積を第1縦材30の断面積よりも小さくしてもよい。なお、
図17における符号152は、一対の第2縦材154、第2横材44及び第2横材54を有する第2枠材を示し、符号156は、第1縦材30及び第2縦材154で構成される縦枠材を示し、符号158は、縦枠材156と壁面材22との接合具34による接合部を示している。
【0096】
前述の実施形態では、壁厚み方向から見て、開口28の形状を円形にしているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、開口28の形状を楕円形にしてもよいし、多角形状としてもよい。
【0097】
また、前述の実施形態では、壁厚み方向から見て、全ての開口28の形状及び大きさを同じ形状及び寸法としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、隣り合う開口28の形状及び大きさが異なっていてもよい。
【0098】
前述の実施形態では、接合具(接合具34、38)を接合対象に対して垂直に打ち込んでいるが、本発明はこの構成に限定されず、接合具を接合対象に対して斜めに打ち込んでもよい。例えば、一の接合具38を第1横材42の表面(壁面材22と反対側の面)から上梁材106に向けて斜めに打ち込み、他の接合具38を第2横材44の表面(壁面材22と反対側の面)から上梁材106に向けて、上記一の接合具38と逆向きに斜めに打ち込んでもよい。
【0099】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0100】
20 耐力壁
22 壁面材
22A 幅端部(幅方向の端部)
22D 上端部
22E 下端部
24 環状リブ(リブ)
26 縦枠材
28 開口
30 第1縦材
32 第2縦材
40 上枠材
50 下枠材
52 第1横材
54 第2横材
80 耐力壁
82 壁面材
84 中間枠材
86 第1縦材
88 第2縦材
100 木造建物
102 木造躯体
104 柱材
106 上梁材
108 下梁材
110 耐力壁
112 中間枠材
114 第1縦材
116 第2縦材
130 耐力壁
132 折り返し部
140 耐力壁
144 縦材
146 縦枠材
150 耐力壁
154 縦材
156 縦枠材