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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】発振回路および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   H03B 7/08 20060101AFI20230927BHJP
   G06N 3/049 20230101ALI20230927BHJP
【FI】
H03B7/08
G06N3/049
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022523761
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2020019654
(87)【国際公開番号】W WO2021234780
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河口 研一
(72)【発明者】
【氏名】宮原 昭一
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517620(JP,A)
【文献】特開平1-272201(JP,A)
【文献】特開2005-333227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0146386(US,A1)
【文献】米国特許第6323737(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N3/00-99/00
H03B1/00-28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の負性微分抵抗を有する第1のダイオードと、第1のインダクタおよび第2のインダクタが直列接続される合成インダクタとを含み、前記第1のダイオードと前記合成インダクタとが直列接続される発振部と、
第2の負性微分抵抗を有して前記第1のインダクタに並列接続される第2のダイオードと、
第3の負性微分抵抗を有して前記第1のダイオードに直列接続され前記合成インダクタに並列接続される第3のダイオードと、
を備え、
前記第1のインダクタ、前記第2のインダクタおよび前記第2のダイオードの共通接続点からバーストパルスを出力する、
発振回路。
【請求項2】
直流電圧、または交流電圧、または直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を出力する電源部を備え、前記電源部の第1の出力端子は前記第1のダイオードのアノードに接続され、前記第1のダイオードのカソードは、前記第2のインダクタの一端と、前記第3のダイオードのアノードとに接続され、前記第2のインダクタの他端は、前記第1のインダクタの一端と、前記第2のダイオードのアノードとに接続され、前記電源部の第2の出力端子は、前記第1のインダクタの他端、前記第2のダイオードのカソードおよび前記第3のダイオードのカソードに接続される請求項1記載の発振回路。
【請求項3】
前記第1の負性微分抵抗は、前記第2の負性微分抵抗および前記第3の負性微分抵抗よりも大きい請求項1記載の発振回路。
【請求項4】
前記第1のインダクタの第1のインダクタンスおよび前記第2のインダクタの第2のインダクタンスを可変して、前記バーストパルスに含まれる間欠パルスの周期および前記間欠パルスに重畳される短パルスのパルス数を可変する請求項1記載の発振回路。
【請求項5】
前記第1のインダクタンスと前記第2のインダクタンスとが等しいときに出力される前記バーストパルスに含まれる前記間欠パルスの第1の周期と、前記短パルスの第1のパルス数とに対して、
前記第2のインダクタンスよりも前記第1のインダクタンスを小さくして、前記第2のインダクタンスよりも前記第1のインダクタンスが小さいときに出力される前記バーストパルスに含まれる前記間欠パルスの第2の周期を前記第1の周期よりも短くし、前記バーストパルスに含まれる前記短パルスの第2のパルス数を前記第1のパルス数よりも減少させ、
前記第1のインダクタンスよりも前記第2のインダクタンスを小さくして、前記第1のインダクタンスよりも前記第2のインダクタンスが小さいときに出力される前記バーストパルスに含まれる前記間欠パルスの第3の周期を前記第1の周期よりも短くし、前記バーストパルスに含まれる前記短パルスの第3のパルス数を前記第1のパルス数よりも増加させる、
請求項4記載の発振回路。
【請求項6】
前記第2のダイオードの前記第2の負性微分抵抗および非線形特性により、前記バーストパルスに含まれる間欠パルスのデューティ比を非対称にする請求項1記載の発振回路。
【請求項7】
前記第3のダイオードの前記第3の負性微分抵抗および非線形特性により、前記バーストパルスに含まれる間欠パルスの間欠度合を可変にする請求項1記載の発振回路。
【請求項8】
前記第1のダイオードのサイズにより前記バーストパルスの振幅を可変にする請求項1記載の発振回路。
【請求項9】
第1の負性微分抵抗を有する第1のダイオードと、第1のインダクタおよび第2のインダクタが直列接続される第1の合成インダクタとを含み、前記第1のダイオードと前記第1の合成インダクタとが直列接続される第1の発振部と、第2の負性微分抵抗を有して前記第1のインダクタに並列接続される第2のダイオードと、第3の負性微分抵抗を有して前記第1のダイオードに直列接続され前記第1の合成インダクタに並列接続される第3のダイオードと、を含む第1の発振回路と、
第4の負性微分抵抗を有する第4のダイオードと、第3のインダクタおよび第4のインダクタが直列接続される第2の合成インダクタとを含み、前記第4のダイオードと前記第2の合成インダクタとが直列接続される第2の発振部と、第5の負性微分抵抗を有して前記第3のインダクタに並列接続される第5のダイオードと、第6の負性微分抵抗を有して前記第4のダイオードに直列接続され前記第2の合成インダクタに並列接続される第6のダイオードと、を含む第2の発振回路と、
を備え、
前記第1の発振回路の第1の入力端に前記第2の発振回路の第2の出力端が接続される第1のフィードバックループと、前記第2の発振回路の第2の入力端に前記第1の発振回路の第1の出力端が接続される第2のフィードバックループとが形成され、
前記第1のインダクタ、前記第2のインダクタおよび前記第2のダイオードの共通接続点である前記第1の出力端から第1のバーストパルスを出力し、
前記第3のインダクタ、前記第4のインダクタおよび前記第5のダイオードの共通接続点である前記第2の出力端から第2のバーストパルスを出力する、
発振回路。
【請求項10】
前記第1の発振回路は、直流電圧、または交流電圧、または直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を出力する第1の電源部と、第1の整流ダイオードとをさらに備え、
前記第2の発振回路は、直流電圧、または交流電圧、または直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を出力する第2の電源部と、第2の整流ダイオードをさらに備え、
前記第1の電源部の第1の出力端子は、前記第1のダイオードのアノードと、前記第2の整流ダイオードのカソードとに接続され、前記第1のダイオードのカソードは、前記第3のダイオードのアノードと、前記第2のインダクタの一端とに接続され、前記第2のインダクタの他端は、前記第2のダイオードのアノード、前記第1の整流ダイオードのアノード、前記第1の出力端および前記第1のインダクタの一端に接続され、前記第1の電源部の第2の出力端子は、前記第1のインダクタの他端、前記第2のダイオードのカソードおよび前記第3のダイオードのカソードに接続され、
前記第2の電源部の第3の出力端子は、前記第4のダイオードのアノードと、前記第1の整流ダイオードのカソードとに接続され、前記第4のダイオードのカソードは、前記第6のダイオードのアノードと、前記第4のインダクタの一端とに接続され、前記第4のインダクタの他端は、前記第5のダイオードのアノード、前記第2の整流ダイオードのアノード、前記第2の出力端および前記第3のインダクタの一端に接続され、前記第2の電源部の第4の出力端子は、前記第3のインダクタの他端、前記第5のダイオードのカソードおよび前記第6のダイオードのカソードに接続される、
請求項9記載の発振回路。
【請求項11】
第1の負性微分抵抗を有する第1のダイオードと、第1のインダクタおよび第2のインダクタが直列接続される合成インダクタとを含み、前記第1のダイオードと前記合成インダクタとが直列接続される発振部と、第2の負性微分抵抗を有して前記第1のインダクタに並列接続される第2のダイオードと、第3の負性微分抵抗を有して前記第1のダイオードに直列接続され前記合成インダクタに並列接続される第3のダイオードと、を備え、前記第1のインダクタ、前記第2のインダクタおよび前記第2のダイオードの共通接続点からバーストパルスを出力する発振回路が複数配置され、複数の前記発振回路のそれぞれが任意に相互接続されているリザバー回路、
を有する情報処理装置。
【請求項12】
第1の負性微分抵抗を有する第1のダイオードと、第1のインダクタおよび第2のインダクタが直列接続される合成インダクタとを含み、前記第1のダイオードと前記合成インダクタとが直列接続される発振部と、第2の負性微分抵抗を有して前記第1のインダクタに並列接続される第2のダイオードと、第3の負性微分抵抗を有して前記第1のダイオードに直列接続され前記合成インダクタに並列接続される第3のダイオードと、を備え、前記第1のインダクタ、前記第2のインダクタおよび前記第2のダイオードの共通接続点からバーストパルスを出力する発振回路と、
前記発振回路から出力される前記バーストパルスと、入力信号とにもとづいて符号化パルス信号を生成する符号化部と、
複数のニューロン素子を含んで、前記符号化パルス信号の情報処理を行うニューラルネットワーク部と、
を有する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度なAI(Artificial Intelligence)サービスを提供するために、AI向けのコンピューティングシステムの開発が進められている。その中で、脳の神経信号処理に着想を得たニューロモルフィック(Neuromorphic)コンピューティングが注目されている。
【0003】
深層学習ベースのAIでは、脳の神経細胞とその結合回路を単純化したモデル(アナログニューロン)が使用される。これに対し、ニューロモルフィックでは、神経細胞がスパイクパルスを出力すること等を模倣するモデル(スパイキングニューロン等)が用いられ、より脳の仕組みをまねた知的な情報処理を可能にする。
【0004】
また、ニューロモルフィックコンピューティングでは、神経信号パルスを模倣した神経様パルスを発振する発振回路を信号源ユニットとして、コンピューティングシステムが構築される。
【0005】
発振回路に関連する技術としては、例えば、2つのN型負性抵抗素子を直列接続し、2つのN型負性抵抗素子の接続部に、インダクタおよびキャパシタから構成される共振回路を接続して、スプリアス発振の抑制を図った技術が提案されている。
【0006】
また、2つの負性微分抵抗素子の接続点を出力の取り出し点とし、一方の負性微分抵抗素子の電源側端子に振動型の電圧を印加して、負性微分抵抗素子に加わる熱雑音によって決定される2値出力を自然乱数として用いる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-333227号公報
【文献】特開2005-018500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パルス信号を神経様パルスとするためには、パルス間隔やパルス数等を多様に変化させたバーストパルスを発振させることが求められる。しかし、バーストパルスを発振させる従前の回路では、部品点数が多く回路規模が増大するという問題がある。
【0009】
1つの側面では、本発明は、バーストパルスを発振させる回路において回路規模の低減化を可能にした発振回路、および発振回路を備えた情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、発振回路が提供される。発振回路は、第1の負性微分抵抗を有する第1のダイオードと、第1のインダクタおよび第2のインダクタが直列接続される合成インダクタとを含み、第1のダイオードと合成インダクタとが直列接続される発振部と、第2の負性微分抵抗を有して第1のインダクタに並列接続される第2のダイオードと、第3の負性微分抵抗を有して第1のダイオードに直列接続され合成インダクタに並列接続される第3のダイオードと、を備え、第1のインダクタ、第2のインダクタおよび第2のダイオードの共通接続点からバーストパルスを出力する。
【0011】
また、上記課題を解決するために、上記発振回路を備えた情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
1側面によれば、回路規模の低減化が可能になる。
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は本発明の例として好ましい実施の形態を表す添付の図面と関連した以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施の形態の発振回路の一例を示す図である。
図2】バーストパルスの一例を示す図である。
図3】負性微分抵抗を説明するための図である。
図4】発振回路の一例を示す図である。
図5】発振波形の一例を示す図である。
図6】発振回路の一例を示す図である。
図7】発振波形の一例を示す図である。
図8】発振回路の一例を示す図である。
図9】発振波形の一例を示す図である。
図10】トンネルダイオードの負性微分抵抗の特性の一例を示す図である。
図11】バーストパルスの波形の一例を示す図である。
図12】バーストパルスの波形の一例を示す図である。
図13】バーストパルスの波形の一例を示す図である。
図14】第2の実施の形態の発振回路の一例を示す図である。
図15】バーストパルスの波形の一例を示す図である。
図16】複数の発振回路を備える発振回路群の一例を示す図である。
図17】バーストパルスの波形の一例を示す図である。
図18】電源部の構成の一例を示す図である。
図19】フィードバックループを備えた発振回路の構成の一例を示す図である。
図20】バーストパルスの波形の一例を示す図である。
図21】リザバー回路の一例を示す図である。
図22】リザバーコンピューティング装置の一例を示す図である。
図23】スパイキングニューラルネットワークシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は第1の実施の形態の発振回路の一例を示す図である。発振回路1は、ダイオードD1(第1のダイオード)、ダイオードD2(第2のダイオード)、ダイオードD3(第3のダイオード)、インダクタL1(第1のインダクタ)、インダクタL2(第2のインダクタ)および電源部V1(DC(Direct Current)直流電源)を備える。
【0015】
ダイオードD1、D2、D3は、負性微分抵抗を有する非線形受動素子であり、例えば、エサキダイオードまたは共鳴トンネルダイオードが使用される。
発振回路1では、第1の負性微分抵抗を有するダイオードD1と、合成インダクタ11とが直列接続して発振部10が形成される。合成インダクタ11は、インダクタL1、L2が直列接続されている。
【0016】
さらに発振回路1は、第2の負性微分抵抗を有するダイオードD2が、インダクタL1に並列接続される。また、第3の負性微分抵抗を有するダイオードD3が、ダイオードD1に直列接続され合成インダクタ11に並列接続される。発振回路1の出力端は、インダクタL1、L2およびダイオードD2の共通接続点(Vout)であり、共通接続点(Vout)からバーストパルス(神経様パルス)が出力される。
【0017】
各構成要素の接続関係において、電源部V1の正極側端子は、ダイオードD1のアノードに接続され、ダイオードD1のカソードは、ダイオードD3のアノードと、インダクタL2の一端とに接続される。
【0018】
インダクタL2の他端は、ダイオードD2のアノードと、インダクタL1の一端とに接続される。電源部V1の負極側端子は、インダクタL1の他端、ダイオードD2のカソードおよびダイオードD3のカソードに接続される。
【0019】
図2はバーストパルスの一例を示す図である。縦軸は電圧(mV)、横軸は時間(μs)である。図1に示す発振回路1の出力端(共通接続点)Voutから、図2に示すようなバーストパルスPが発振される。バーストパルスPは、間欠パルスP1と、間欠パルスP1内に含まれる短パルスP2とを有する。
【0020】
このように、発振回路1では、負性微分抵抗を有する非線形素子であるダイオードD1、D2、D3、およびインダクタL1、L2の部品を用いて、DC電圧印可でバーストパルスを発振する。これにより、少ない部品数でバーストパルスを発振することが実現できるので、回路規模の低減化が可能になる。
【0021】
<負性微分抵抗>
次に負性微分抵抗について説明する。なお以降では、負性微分抵抗を有するダイオードをトンネルダイオードと呼ぶ場合がある。よって、ダイオードD1、D2、D3それぞれもトンネルダイオードD1、D2、D3と呼ぶ場合がある。
【0022】
トンネルダイオードは、p型とn型の層にドープされる不純物の濃度が、通常の整流特性を持つpn接合ダイオードやトランジスタの不純物の濃度と比べて高いという特性を有している。
【0023】
図3は負性微分抵抗を説明するための図である。高不純物濃度pn接合の電流-電圧特性(順方向特性)を示しており、縦軸は電流、横軸は電圧である。一般的なpn接合のダイオードでは、順方向バイアスをかけると(p側にプラス、n側にマイナスの電圧を印加)、順方向接合電圧以上で電流が増大する。
【0024】
これに対し、高不純物濃度pn接合のトンネルダイオードでは、順方向バイアスをかけると電圧範囲h0でトンネル効果(空乏層に作られる電位障壁を電子が通り抜ける現象)が生じて電流が増加する。また、順方向バイアスをさらに大きくしていくと、電圧範囲h1ではトンネル効果が減少して電圧増加に対して電流が減少する特性(負性微分抵抗領域)が現れる。
【0025】
このような特性は、電圧増分と電流増分の比である微分抵抗が負になることに相当するので、負の値を有する抵抗成分として負性微分抵抗(負性抵抗)と呼ばれる。また、負性微分抵抗領域内の特性曲線の傾きは、負性微分抵抗の微分係数として表せる。
【0026】
トンネルダイオードに対して、電圧を高くすると電流が小さくなるというこのような電圧範囲(負性微分抵抗領域)を利用することで、例えば、自励系の高周波発振回路を実現することができる。
【0027】
<発振回路の最小構成要素>
次に図1に示した発振回路1に含まれる構成要素がバーストパルスを発振させるための最小の構成要素(基本ユニット)であることについて図4から図9を用いて説明する。
【0028】
図4は発振回路の一例を示す図である。発振回路1a0は、トンネルダイオードD1、インダクタL1および電源部V1を備える。電源部V1の正極側端子は、トンネルダイオードD1のアノードに接続され、トンネルダイオードD1のカソードは、インダクタL1の一端に接続される。電源部V1の負極側端子は、インダクタL1の他端に接続される。
【0029】
図5は発振波形の一例を示す図である。発振回路1a0の出力端Voutから出力される発振パルスp0を示しており、縦軸は電圧(mV)、横軸は時間(μs)である。発振回路1a0のように、1つのトンネルダイオードD1と、1つのインダクタL1を用いることで、発振パルスp0が生成される。
【0030】
発振パルスp0の周期は、15μs程度であり、パルスのデューティ比はおよそ50%である。また、発振パルスp0は、図2のバーストパルスの繰り返し間隔よりは短いものとなっている。また、トンネルダイオードD1の電流-電圧曲線の非線形特性によって、発振パルスp0の波形は正弦波ではなく、立ち上がりおよび立ち下がりが急峻な波形になっている。
【0031】
図6は発振回路の一例を示す図である。発振回路1a1は、トンネルダイオードD1、トンネルダイオードD2、インダクタL1および電源部V1を備える。電源部V1の正極側端子は、トンネルダイオードD1のアノードに接続され、トンネルダイオードD1のカソードは、トンネルダイオードD2のアノードと、インダクタL1の一端とに接続される。電源部V1の負極側端子は、インダクタL1の他端と、トンネルダイオードD2のカソードとに接続される。
【0032】
図7は発振波形の一例を示す図である。発振回路1a1の出力端Voutから出力される発振パルスp1を示しており、縦軸は電圧(mV)、横軸は時間(μs)である。発振回路1a1のように、発振回路1a0に対してトンネルダイオードD2をインダクタL1に対して並列に接続し、かつトンネルダイオードD1に対して直列に接続することで、発振パルスp1が生成される。
【0033】
発振パルスp1の周期は、発振パルスp0とおよそ同じであるがパルスのデューティ比が非対称になる。これは、トンネルダイオードD2により、発振回路1a0に対してバイパスラインが追加されて、トンネルダイオードD2の負性微分抵抗および非線形特性によりパルス幅変調が生じたものとみなすことができる。
【0034】
図8は発振回路の一例を示す図である。発振回路1a2は、トンネルダイオードD1、トンネルダイオードD2、インダクタL1、インダクタL2および電源部V1を備える。電源部V1の正極側端子は、トンネルダイオードD1のアノードに接続され、トンネルダイオードD1のカソードは、インダクタL2の一端に接続される。
【0035】
インダクタL2の他端は、トンネルダイオードD2のアノードと、インダクタL1の一端とに接続される。電源部V1の負極側端子は、インダクタL1の他端と、トンネルダイオードD2のカソードとに接続される。
【0036】
図9は発振波形の一例を示す図である。発振回路1a2の出力端Voutから出力される発振パルスp2を示しており、縦軸は電圧(mV)、横軸は時間(μs)である。発振回路1a2のように、発振回路1a1に対してインダクタL2を、トンネルダイオードD1のカソードと、トンネルダイオードD2のアノードおよびインダクタL1の一端との間に挿入することで、発振パルスp2が生成される。発振パルスp2は、間欠パルス内に短パルス列が重畳される波形になっている。
【0037】
このように、発振回路1a1に対してインダクタL2を図8に示す接続構成になるように追加して発振回路1a2を構成することで、短パルス列が間欠的に繰り返されるバーストパルスを生成することができる。
【0038】
また、発振回路1a2に対してトンネルダイオードD3を、トンネルダイオードD1に直列にかつインダクタL1、L2を含む合成インダクタ11に並列に接続することで、図1に示したような発振回路1が構成される。
【0039】
発振回路1a2に対してトンネルダイオードD3を追加することで、トンネルダイオードD3の負性微分抵抗および非線形特性により、発振パルスp2に対して、間欠パルスの間欠度合(一定期間内に含まれる間欠パルスの個数の割合)の調整が可能になる。
【0040】
なお、トンネルダイオードD1のサイズ(素子の大きさ)を可変することでバーストパルスの振幅を変えることができる。ダイオードサイズは、ダイオードに流れる電流量に比例する。トンネルダイオードD1のサイズを大きくすればバーストパルスの振幅が大きくなり、トンネルダイオードD1のサイズを小さくすればバーストパルスの振幅が小さくなる。
【0041】
以上説明したように、トンネルダイオードD1、D2、D3およびインダクタL1、L2による最小の構成要素を使用した発振回路1によって、神経信号パルスを模倣したバーストパルスを発振することができ、回路規模の低減化を図ることが可能になる。
【0042】
<トンネルダイオードの特性>
次にトンネルダイオードD1、D2、D3の特性について説明する。図10はトンネルダイオードの負性微分抵抗の特性の一例を示す図である。縦軸は電流、横軸は電圧である。特性曲線k1、・・・、k5は、トンネルダイオードの負性微分抵抗の特性を示している。
【0043】
特性曲線k1は、サイズが100μmのトンネルダイオードの負性微分抵抗の特性を示し、特性曲線k2は、サイズが80μmのトンネルダイオードの負性微分抵抗の特性を示し、特性曲線k3は、サイズが60μmのトンネルダイオードの負性微分抵抗の特性を示している。
【0044】
また、特性曲線k4は、サイズが20μmのトンネルダイオードの負性微分抵抗の特性を示し、特性曲線k5は、サイズが10μmのトンネルダイオードの負性微分抵抗の特性を示している。このように、トンネルダイオードのサイズに応じて流れる電流が異なり、トンネルダイオードのサイズが大きいほど負性微分抵抗が大きくなる。
【0045】
発振回路1においては、トンネルダイオードD1の負性微分抵抗を、トンネルダイオードD2、D3の負性微分抵抗よりも大きい特性にすることで、トンネルダイオードD1を発振回路1の発振駆動源として機能させる。
【0046】
したがって、トンネルダイオードD1は、例えば、特性曲線k1、k2、k3のうちの1つの特性となるようなサイズが選択される。また、トンネルダイオードD2、D3は、特性曲線k4、k5のいずれかの特性となるようなサイズが選択される。
【0047】
例えば、トンネルダイオードD1のサイズを100μm(特性曲線k1)、トンネルダイオードD2のサイズを20μm(特性曲線k4)、トンネルダイオードD3のサイズを10μmとする(特性曲線k5)。なお、トンネルダイオードD2、D3の負性微分抵抗がトンネルダイオードD1の負性微分抵抗よりも小さければ、トンネルダイオードD2、D3の負性微分抵抗は同じでもよい(トンネルダイオードD2、D3のサイズは同じでもよい)。
【0048】
このようにトンネルダイオードのサイズを選択することで、トンネルダイオードD1を発振回路1の発振駆動源として機能させることができ、またトンネルダイオードD1と、インダクタL1、L2の合成直列インダクタとから、バーストパルスを安定して発振させることができる。
【0049】
なお、負性微分抵抗の異なる複数のトンネルダイオードを、半導体層に対して同一の構成とすることも可能である。よって、異種ウェハからの集積を行うことなく、単一ウェハ上にて一括して発振回路1を構成して、バーストパルスの発振回路群を構築することも可能である。
【0050】
<合成インダクタの特性>
次に合成インダクタ11に含まれるインダクタL1、L2の特性について、図11から図13を用いて説明する。図11から図13はバーストパルスの波形の一例を示す図である。縦軸は電圧(mV)、横軸は時間(μs)である。
【0051】
図11において、インダクタL1のインダクタンス(第1のインダクタンス)と、インダクタL2のインダクタンス(第2のインダクタンス)とが同じ値のときのバーストパルスの波形G0を示している(例えば、L1=L2=100μH)。
【0052】
図12において、インダクタL2のインダクタンスよりもインダクタL1のインダクタンスの方が小さい値のときのバーストパルスの波形G1を示している(例えば、L1=50μH、L2=100μH)。
【0053】
インダクタL2のインダクタンスよりもインダクタL1のインダクタンスの方を小さくすることにより、間欠パルスの周期を波形G0に比べて短くすることができ、かつ間欠パルス内に含まれる短パルスのパルス数を波形G0に比べて少なくすることがでできる。
【0054】
図13において、インダクタL1のインダクタンスよりもインダクタL2のインダクタンスの方が小さい値のときのバーストパルスの波形G2を示している(例えば、L1=100μH、L2=50μH)。
【0055】
インダクタL1のインダクタンスよりもインダクタL2のインダクタンスの方を小さくすることにより、間欠パルスの周期を波形G0に比べて短くすることができ、かつ間欠パルス内に含まれる短パルスのパルス数を波形G0に比べて多くすることができる。
【0056】
このように、インダクタL1、L2の各インダクタンスの設定を変えることで、間欠パルス周期の間隔調整、および間欠パルス内に重畳される短パルスのパルス数の増減を行うことができる。よって、間欠パルス周期および短パルス数を柔軟に調整することができるため、所望の情報処理に適したバーストパルスを発振させることができる。
【0057】
[第2の実施の形態]
次に第2の実施の形態について説明する。上記の第1の実施の形態では、入力電源にはDC電源を使用したが、第2の実施の形態では、AC(Alternating Current)電源、またはDC電圧にAC電圧を重畳させた電圧(以下、DC+AC電圧と表記)を出力する電源を使用して、さらに多様なバーストパルスを発振させるものである。
【0058】
図14は第2の実施の形態の発振回路の一例を示す図である。発振回路1bは、トンネルダイオードD1、D2、D3、インダクタL1、L2および電源部V2を備える。電源部V2は、AC電源、またはDC+AC電圧を出力する電源である。なお、電源部V2以外については図1と同じ構成なので回路構成の説明は省略する。
【0059】
図15はバーストパルスの波形の一例を示す図である。縦軸は電圧(mV)、横軸は時間(ms)である。発振回路1bにおいて、電源部V2からDC+AC電圧を出力させるものとする。波形g11は、電源部V2のDC+AC電圧の波形であり、波形g12は、発振回路1bの出力端Voutから出力されるバーストパルスの波形を示している。
【0060】
電源部V2により、DC電圧に加えてランダムなAC電圧を印可した電源電圧を入力することにより、入力電圧が変動することによってバーストパルスの波形を複雑に変化させることができる。なお、ランダムなAC電圧としては、AC電圧の振幅や周波数を変化させるものである。
【0061】
図16は複数の発振回路を備える発振回路群の一例を示す図である。発振回路群1Bは、発振回路1b1、1b2、・・・、1bnを備える。発振回路1b1、1b2、・・・、1bnそれぞれには、互いに異なるAC電圧を出力する電源部V2b-1、V2b-2、・・・、V2b-nが備えられている。トンネルダイオードD1、D2、D3およびインダクタL1、L2の特性は、発振回路1b1、1b2、・・・、1bnにおいて共通である。
【0062】
このような構成の発振回路群1Bによって、発振回路1b1、1b2、・・・、1bnの出力端Voutから、互いに波形が異なるn個のバーストパルスを発振させることができる。
【0063】
図17はバーストパルスの波形の一例を示す図である。縦軸は電圧(mV)、横軸は時間(μs)である。グラフg1、・・・、g9は、電源部から出力されるAC電圧の変化に一定の規則性を与えたときの発振回路1b1、・・・・、1b9それぞれの出力端Voutから出力されるバーストパルスの波形を示している。
【0064】
図17の例では、互いに異なる振幅の正弦波のAC電圧を電源部V2b-1、・・・、V2b-9から出力させたものである。例えば、正弦波の信号を、振幅50mV刻みで500mVから450mV(9本のAC電圧信号)まで変えたものである。
【0065】
ここで、上記では互いに異なる振幅のAC電圧を出力する複数のAC電源を設ける構成としたが、AC電圧の振幅のみを変えるならば、1つのAC電源と、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗とで電源部を構成できる。
【0066】
図18は電源部の構成の一例を示す図である。1つのAC電源と複数の抵抗とで構成した電源部V0の一例である。電源部V0は、AC電源v10および抵抗R1、・・・、Rnを備える。AC電源v10の出力端に抵抗R1、・・・、Rnそれぞれの一端が接続され、抵抗R1、・・・、Rnの他端が、n個の発振回路の入力端となる。抵抗R1、・・・、Rnの各抵抗値はそれぞれ異なる。
【0067】
このように、AC電圧の正弦波信号を出力するAC電源v10を共通にして、異なる抵抗値を持つ複数の抵抗素子で正弦波信号を分岐出力する構成にする。これにより、振幅が互いに異なるAC電圧をn個の発振回路に対して印加することができる。このような構成にすることで、部品点数をより削減した回路構成で、周期は同じで振幅の異なる正弦波の波形を入力信号として生成することができる。
【0068】
なお、上記では、発振回路内のトンネルダイオードおよびインダクタの特性を同一にして電源部からの出力電圧の変動にもとづいてバーストパルス波形を多様化することを示したが、発振回路毎にトンネルダイオードおよびインダクタの特性を変えてもよい。
【0069】
例えば、インダクタのインダクタンスを発振回路毎に違うものを用いることによって、バーストパルスの基本周波数(間欠パルスの周波数、短パルスの周波数)を変化させて、より多様なバーストパルスを発振させることができる。
【0070】
また、このような発振回路を例えば、再帰的ニューラルネットワークのアーキテクチャの1つである後述のリザバーコンピューティング(Reservoir Computing)に使用することで、リザバーコンピューティングの性能も向上させることができる。
【0071】
[第3の実施の形態]
次に第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、発振回路にフィードバックループを設けたものである。
【0072】
図19はフィードバックループを備えた発振回路の構成の一例を示す図である。発振回路3は、発振回路1(第1の発振回路)と発振回路2(第2の発振回路)を備えて、発振回路1の出力信号を発振回路2の入力とし、発振回路2の出力信号を発振回路1の入力とするフィードバックループを有する回路である。
【0073】
発振回路1は、トンネルダイオードD1(第1のダイオード)、トンネルダイオードD2(第2のダイオード)、トンネルダイオードD3(第3のダイオード)、インダクタL1(第1のインダクタ)、インダクタL2(第2のインダクタ)、電源部V1a(第1の電源部)および整流ダイオードd1(第1の整流ダイオード)を備える。
【0074】
また、発振回路1では、トンネルダイオードD1と、合成インダクタ11(第1の合成インダクタ)とが直列接続して発振部10(第1の発振部)が形成される。合成インダクタ11は、インダクタL1、L2を含んでインダクタL1、L2が直列接続された合成直列インダクタである。
【0075】
発振回路2は、トンネルダイオードD11(第4のダイオード)、トンネルダイオードD12(第5のダイオード)、トンネルダイオードD13(第6のダイオード)、インダクタL11(第3のインダクタ)、インダクタL12(第4のインダクタ)、電源部V1b(第2の電源部)および整流ダイオードd2(第2の整流ダイオード)を備える。
【0076】
発振回路2では、トンネルダイオードD11と、合成インダクタ21(第2の合成インダクタ)とが直列接続して発振部20(第2の発振部)が形成される。合成インダクタ21は、インダクタL11、L12を含んでインダクタL11、L12が直列接続された合成直列インダクタである。
【0077】
ここで、発振回路3では、フィードバックループによって電源電圧成分が逆流するのを防止するために、通常の整流ダイオードd1、d2が設けられている。また、発振回路3内の発振回路1、2それぞれはフローティング回路(非接地回路)となっていて、フィードバックループのみによって相互作用が取り込まれる構成となっている。
【0078】
さらに、発振回路1の入力端a1(第1の入力端)に発振回路2の出力端Vout2(第2の出力端)が接続されるフィードバックループ(第1のフィードバックループ)が形成される。また、発振回路2の入力端b1(第2の入力端)に発振回路1の出力端Vout1(第1の出力端)が接続されるフィードバックループ(第2のフィードバックループ)が形成される。
【0079】
各構成要素の接続関係において、電源部V1aの正極側端子(第1の出力端子)は、トンネルダイオードD1のアノード、および整流ダイオードd2のカソードに接続される。トンネルダイオードD1のカソードは、トンネルダイオードD3のアノードと、インダクタL2の一端とに接続される。
【0080】
インダクタL2の他端は、トンネルダイオードD2のアノード、整流ダイオードd1のアノード、出力端Vout1およびインダクタL1の一端に接続される。電源部V1aの負極側端子(第2の出力端子)は、インダクタL1の他端、トンネルダイオードD2のカソードおよびトンネルダイオードD3のカソードに接続される。
【0081】
一方、電源部V1bの正極側端子(第3の出力端子)は、トンネルダイオードD11のアノードと、整流ダイオードd1のカソードとに接続される。トンネルダイオードD11のカソードは、トンネルダイオードD13のアノードと、インダクタL12の一端とに接続される。
【0082】
インダクタL12の他端は、トンネルダイオードD12のアノード、整流ダイオードd2のアノード、出力端Vout2およびインダクタL11の一端に接続される。電源部V1bの負極側端子(第4の出力端子)は、インダクタL11の他端、トンネルダイオードD12のカソードおよびトンネルダイオードD13のカソードに接続される。
【0083】
図20はバーストパルスの波形の一例を示す図である。縦軸は電圧(mV)、横軸は時間(ms)である。グラフg21は、出力端Vout1から出力されるバーストパルスの波形を示し、グラフg22は、出力端Vout2から出力されるバーストパルスの波形を示している。
【0084】
このように、発振回路3では、2つの発振回路1、2にフィードバックループを備えることで、複雑で多様なバーストパルスの波形生成を可能にしている。なお、上記では、2つの発振回路が相互接続された構成を示したが、より多くの発振回路を用いてもよい。その場合は、相互接続の数をアンバランスにすることによって、より複雑で多様なバーストパルスを生成することが可能となる。
【0085】
[第4の実施の形態]
次に第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態は、発振回路1をリザバーコンピューティングに適用した情報処理装置である。図21はリザバー回路の一例を示す図である。リザバー回路4は、複数の発振回路1を備え、発振回路1が2次元格子状に配置されている。また、複数の発振回路1のフィードバックループ(図中の矢印)がランダムに生成されている。
【0086】
このように、ランダムなフィードバックループで互いに接続された複数の発振回路1がリザバー回路4内で非線形ノードとして機能する。これにより、1つのノードを単純な非線形素子(ダイオードやインダクタ等)で構成した場合と比較して、より複雑で高性能なリザバーコンピューティング機能を実現することが可能になる。
【0087】
図22はリザバーコンピューティング装置の一例を示す図である。リザバーコンピューティング装置40は、入力回路41、リザバー回路4、学習データ処理回路42および出力回路43を備える。また、出力回路43内には読み出し重み付け部43aが配置される。
【0088】
入力回路41からリザバー回路4にデータが入力され、リザバー回路4において入力されたデータの演算処理が行われる。リザバー学習時においては、学習データ処理回路42から出力される学習データ(教師データ)と、演算処理後のデータとの誤差に基づいて、読み出し重み付け部43aにおいて重みづけ値の調整がなされ、調整後のデータが出力回路43から出力される。このように、リザバー回路4の出力と学習データとの誤差をもとに重み付けを調整することで、リアルタイムで高速な学習を行うことができる。
【0089】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態は、発振回路1をスパイキングニューラルネットワークシステムに適用した情報処理装置である。図23はスパイキングニューラルネットワークシステムの一例を示す図である。スパイキングニューラルネットワークシステム5は、発振回路1-1、・・・、1-4、符号化部51-1、・・・、51-4および網状に接続された複数のニューロン素子を含むニューラルネットワーク部52を備える。
【0090】
発振回路1-1、・・・、1-4は、バーストパルスを発振する。符号化部51-1、・・・、51-4は、バーストパルスと入力信号とを受信し、バーストパルスと入力信号をミキシングして符号化パルス信号を生成してニューラルネットワーク部52に出力する。なお、符号化部51-1、・・・、51-4では、バーストパルスの強度、頻度、間隔の少なくともいずれか1つにもとづいて入力信号を変調して、符号化パルス信号を生成する。ニューラルネットワーク部52では、符号化パルス信号にもとづいて情報処理を行う。
【0091】
以上説明したように、本発明の発振回路によれば、所定の電圧範囲において負性微分抵抗を有するトンネルダイオードと、インダクタとを備えた回路を基本ユニットとしてバーストパルスを発振する。これにより、部品点数が少なく低消費電力で集積性に富んだ神経様なバーストパルスを発振する回路を構成することができる。
【0092】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0093】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【符号の説明】
【0094】
1 発振回路
10 発振部
11 合成インダクタ
D1、D2、D3 ダイオード
L1、L2 インダクタ
V1 電源部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図23