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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】レギュレータ装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
G05F1/56 310W
G05F1/56 310L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023014369
(22)【出願日】2023-02-02
(62)【分割の表示】P 2018247303の分割
【原出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2023041853
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018071817
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】牧 慎一朗
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】横山 勝浩
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-012000(JP,A)
【文献】特開2007-004420(JP,A)
【文献】特開平06-086540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0357204(US,A1)
【文献】特開2006-155100(JP,A)
【文献】特開2002-055724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が入力される電圧入力端子と出力端子との間に接続された電圧制御用トランジスタと、出力のフィードバック電圧に応じて前記電圧制御用トランジスタを制御する制御回路と、出力電圧を制御するために外部から供給される出力制御信号が入力される第1外部端子とを備えた電源制御用半導体装置と、
連続的に可変可能な信号である第1出力信号を出力する第1出力端子を備えたマイコン装置と、
を備えたレギュレータ装置であって、
前記電源制御用半導体装置は、
前記出力端子の出力電圧を分圧する第1分圧回路によって分圧された電圧と所定の基準電圧との電位差に応じた電圧を出力する第1誤差アンプと、
前記第1誤差アンプの入力端子の一方には前記第1外部端子を通して前記第1出力信号が入力され、前記第1出力信号に応じて変位させる出力電圧変更回路と、を備え、
前記出力電圧を前記第1出力信号の連続的な電圧変化に応じて連続的に変更するように構成されていることを特徴とするレギュレータ装置。
【請求項2】
前記電源制御用半導体装置は、オン/オフ制御するために外部から供給される制御信号が入力される第2外部端子を備え、
前記マイコン装置は、ハイ信号またはロー信号である第2出力信号を出力する第2出力端子を備え、
前記第2外部端子と前記第2出力端子とが接続されていることが特徴とする請求項1に記載のレギュレータ装置。
【請求項3】
前記出力電圧変更回路は、
前記第1分圧回路によって分圧された電圧が取り出されるノードと定電位点との間に直列に接続された第1トランジスタおよび第1抵抗素子と、
前記第1出力信号に応じた電圧と前記第1抵抗素子により電流-電圧変換された電圧との電位差に応じた電圧を出力する第2誤差アンプと、を備え、
前記第2誤差アンプの出力が前記第1トランジスタの制御端子に印加されるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレギュレータ装置。
【請求項4】
前記出力電圧変更回路は、
前記基準電圧を分圧する第2分圧回路と、
前記第2分圧回路によって分圧された電圧が取り出されるノードと定電位点との間に直列に接続された第1トランジスタおよび第1抵抗素子と、
前記第1出力信号に応じた電圧と前記第1抵抗素子により電流-電圧変換された電圧との電位差に応じた電圧を出力する第2誤差アンプと、を備え、
前記第2誤差アンプの出力が前記第1トランジスタの制御端子に印加されるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレギュレータ装置。
【請求項5】
前記出力電圧変更回路は、
前記第1外部端子に入力される電圧が入力される第2誤差アンプと、
前記第2誤差アンプの出力が制御端子に印加される第1トランジスタと、
前記電圧入力端子に接続され前記第1トランジスタに流れる電流を転写するカレントミラー回路と、
前記第1トランジスタと直列に接続された第1抵抗素子と、
を備え、
前記第2誤差アンプは、前記第1出力信号に応じた電圧と前記第1抵抗素子により電流-電圧変換された電圧との電位差に応じた電圧を前記第1トランジスタの制御端子へ出力して前記第1トランジスタに前記電位差に応じた電流を流し、前記カレントミラー回路で転写された電流を前記第1分圧回路によって分圧された電圧が取り出されるノードから引き抜くかまたは流し込むように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレギュレータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レギュレータ装置に関し、特に出力電圧をリニアに変化させることが可能なシリーズレギュレータ方式の電源制御用半導体装置およびマイコン装置を備えたレギュレータ装置に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電圧入力端子と出力端子との間に設けられたトランジスタを制御して所望の電位の直流電圧を出力する電源装置としてシリーズレギュレータ(以下、レギュレータと略す)がある。かかるレギュレータの用途として、例えば自動車の車体に実装される送風装置(ファン)や照明装置、オーディオ装置など車載用の電子機器に直流電源を供給するための定電圧電源装置(車載用レギュレータ)がある。
【0003】
送風装置(ファン)や照明装置のような電子機器においては、ファンを回転させるモータや照明装置のランプを駆動する電圧をリニアに変化させることで、送風量や照明の明るさを連続的に変化させることができる機能を付加したいことがあるため、レギュレータに対して出力電圧をリニアに変化させる機能を有することが求められている。
従来、出力電圧を変化させることができるようにしたレギュレータに関する発明としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-265224号公報
【文献】特開2010-055490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているレギュレータは、出力電圧を分圧してフィードバック信号を生成する分圧回路として、直列に接続された複数の抵抗と、それらの抵抗と並列に接続されたスイッチトランジスタを設けて、いずれかのスイッチトランジスタを電圧設定入力によって導通させることによって分圧比を変えることで出力電圧を変化させるように構成したものである。
この発明のレギュレータは、出力電圧を段階的に切り替えることはできるものの、出力電圧をリニアに変化させることができないという課題がある。なお、分圧回路を構成する直列抵抗およびスイッチトランジスタの数を増やすことで近似的にリニアに変化させることも考えられるが、そのようにすると、素子数が増加して実装面積が大きくなり装置の小型化が困難になるという課題が生じる。
【0006】
特許文献2には、リニアレギュレータへのフィードバック電圧を生成するための出力電圧分圧回路を構成する直列抵抗の一方の抵抗の両端子間に、調整用の抵抗素子と出力電圧を監視する電圧監視回路を有する電圧制御部を設けて、出力電圧値を調整するようにした可変出力電圧レギュレータが記載されている。
しかしながら、この発明のレギュレータは、レギュレータICの外付け素子で出力電圧値の調整回路を構成しているため、部品点数が多く実装面積が大きくなって装置の小型化を妨げるとともに、消費電力が大きい。また、使用する調整用抵抗素子の抵抗値のバラツキにより出力電圧がばらついてしまい、出力電圧の精度が悪くなるという課題がある。
【0007】
この発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、素子数や部品点数の増加を招くことなく、出力電圧をリニアに変化させることができるレギュレータ装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、出力電圧の精度の高いレギュレータ装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、汎用のマイクロコンピュータを用いて簡単に出力電圧を制御することができるレギュレータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、
直流電圧が入力される電圧入力端子と出力端子との間に接続された電圧制御用トランジスタと、出力のフィードバック電圧に応じて前記電圧制御用トランジスタを制御する制御回路と、出力電圧を制御するために外部から供給される出力制御信号が入力される第1外部端子とを備えた電源制御用半導体装置と、
連続的に可変可能な信号である第1出力信号を出力する第1出力端子を備えたマイコン装置と、
を備えたレギュレータ装置において、
前記電源制御用半導体装置は、
前記出力端子の出力電圧を分圧する第1分圧回路によって分圧された電圧と所定の基準電圧との電位差に応じた電圧を出力する第1誤差アンプと、
前記第1誤差アンプの入力端子の一方には前記第1外部端子を通して前記第1出力信号が入力され、前記第1出力信号に応じて変位させる出力電圧変更回路と、を備え、
前記出力電圧を前記第1出力信号の連続的な電圧変化に応じて連続的に変更するように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有するレギュレータ装置によれば、マイコン装置からの出力制御信号によって電源制御用半導体装置の出力電圧をリニアに変化させることできる。
また、マイコン装置に内蔵されたD/A変換機能を使用して出力制御信号を生成するようにした場合、ソフトの変更のみで出力電圧の可変が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るレギュレータ装置によれば、素子数や部品点数の増加を招くことなく、出力電圧をリニアに変化させることができる。また、本発明によれば、汎用のマイクロコンピュータを用いて簡単に出力電圧を制御することができるレギュレータ装置を実現するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用したシリーズレギュレータ方式の出力電圧可変電源装置の第1実施形態を示す回路構成図である。
図2】第1実施形態のレギュレータにおける出力制御信号Vadjと出力電圧Voutとの関係を示すグラフである。
図3】第1実施形態のレギュレータにおける出力制御回路を構成する誤差増幅回路の具体例を示す回路図である。
図4】(A),(B)は、第1実施形態のレギュレータとこれを制御するマイコンとからなるレギュレータ装置の構成例を示すブロック図である。
図5】(A)は図4(A)の電源システムにおけるマイコンからの信号と出力電圧の変化の様子を示す波形図、(B)は図4(B)の電源システムにおけるマイコンからの信号と出力電圧の変化の様子を示す波形図である。
図6】第1実施形態を適用したレギュレータを構成するICの変形例を示す回路図である。
図7】本発明を適用したシリーズレギュレータ方式の出力電圧可変電源装置の第2実施形態を示す回路構成図である。
図8図7に示す第2実施形態のレギュレータICにおいて第2のカレントミラー回路を省略した場合の回路構成を示す回路図である。
図9】(A)は図7に示す出力電圧可変電源装置におけるオン・オフ制御信号ON/OFFと出力制御信号Vadjと出力電圧Voutとの関係を示す波形図、(B)は図8に示す出力電圧可変電源装置におけるオン・オフ制御信号ON/OFFと出力制御信号Vadjと出力電圧Voutとの関係を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した出力電圧可変電源装置としてのシリーズレギュレータの第1実施形態を示す。なお、図1において、一点鎖線で囲まれた部分は、単結晶シリコンのような半導体チップ上に半導体集積回路(レギュレータIC)10として形成され、該レギュレータIC10の出力端子OUTにコンデンサCoが接続されることで図示しないモータやLEDランプなどの負荷へ安定な直流電圧を出力する出力電圧可変電源装置として機能する。
【0013】
本実施形態の出力電圧可変電源装置においては、図1に示すように、レギュレータIC10の直流入力電圧Vinが印加される電圧入力端子INと出力端子OUTとの間に、電圧制御用のPチャネルMOSトランジスタ(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)M1が接続され、出力端子OUTと接地電位GNDが印加されるグランドライン(接地点)との間には、出力電圧Voutを分圧する分圧回路12を構成する抵抗R2,R1が直列に接続されている。
【0014】
この分圧回路12を構成する抵抗R1とR2との接続ノードN1の電圧が、上記電圧制御用のトランジスタM1のゲート端子を制御する誤差増幅回路としての誤差アンプ11の非反転入力端子にフィードバック電圧VFBとして入力されている。そして、誤差アンプ11は、出力のフィードバック電圧VFBと所定の基準電圧Vrefとの電位差に応じた電圧を生成して電圧制御用のトランジスタM1のゲート端子に供給してM1を制御し、出力電圧Voutが所望の電位になるように制御する。
【0015】
また、本実施形態のレギュレータIC10においては、上記抵抗R1とR2との接続ノードN1と接地点との間に、NチャネルMOSトランジスタM2および抵抗R3が直列に接続されている。さらに、レギュレータIC10には、図示しないマイコン等から供給される出力電圧Voutを制御する信号Vadjが入力される外部端子としての出力制御端子ADJが設けられているとともに、該端子ADJと接地点との間には、出力制御信号Vadjを分圧する分圧回路14aを構成する抵抗R4,R5が直列に接続されている。
【0016】
そして、この分圧回路14aにより分圧された電圧(ノードN3の電圧)V3を入力とし、上記MOSトランジスタM2のゲート端子を制御する誤差増幅回路としての誤差アンプ14bが設けられている。
この誤差アンプ14bは、制御対象のMOSトランジスタM2と抵抗R3との接続ノードN2の電圧V2が反転入力端子に入力されることで負帰還がかかり、イマジナリ・ショートの動作で、ノードN2の電圧V2がノードN3の電圧V3と同一となるような電流を抵抗R3に流すようにトランジスタM2を駆動する。
【0017】
そして、抵抗R3にそのような電流が流れることにより変位したフィードバック電圧VFBが、電圧制御用トランジスタM1のゲート端子を制御する誤差アンプ11の非反転入力端子に入力される。これにより、レギュレータIC10の出力端子OUTには、出力制御信号Vadjに応じた出力電圧Voutが出力される。従って、上記分圧回路14aと誤差アンプ14bとトランジスタM2および抵抗R3によって、出力電圧Voutを出力制御信号Vadjに応じた電圧に変更する出力電圧変更回路14が構成される。
【0018】
ここで、出力電圧Voutは、次式(1)
Vout=((R1+R2)/R1)*Vref+(V2/R3)*R2 ……(1)
で表わされ、ノードN3の電圧V3は、次式(2)
V3=(R4/(R4+R5))*Vadj ……(2)
で表わされる。ここで、V2=V3であるので、上記式(1),(2)より、Voutは、
Vout=((R1+R2)/R1)*Vref+((R4*R2)/R3*(R4+R5))*Vadj……(3)
となる。
【0019】
上記式(3)より、出力電圧Voutは内部抵抗の相対精度により決まるため、精度良く設定可能であることが分かる。また、出力制御端子ADJに入力される出力制御信号Vadjは、これを生成するD/A変換回路の出力範囲で設定可能であり、出力電圧Voutに対するゲインが下がるため、出力制御信号Vadjの精度に対する出力電圧Voutのバラつきも小さくなる。なお、出力電圧Voutの可変範囲はVref~Vinである。
【0020】
図2には、本実施例の出力電圧可変電源装置における出力制御信号Vadjと出力電圧Voutとの関係の一例が示されている。図2から分かるように、出力電圧Voutは出力制御信号Vadjに比例し、Vout-Vadj特性線Aは傾きがほぼ一定の直線となる。傾きは抵抗の値により、任意に設定することができる。
また、出力制御信号Vadjが0Vのときの出力電圧Voutは、上記式(3)の第2項が「0」となることから、抵抗R1とR2の比および基準電圧Vrefにより設定されることがわかる。具体的には、例えば基準電圧Vrefが1.5Vの場合、R1とR2の比を1:1とすることで、Vadj=0Vで出力電圧Voutを3Vに設定することができる。これにより、例えば最低電圧3V以上で動作するモータに対する電源電圧を供給する電源装置を設計する場合に、モータを確実に動作させるとともに出力制御信号Vadjを高くすることで回転数を増大させることができる。
【0021】
さらに、本実施例のレギュレータIC10には、入力電圧Vinに基づいて基準電圧Vrefを生成する基準電圧源15と誤差アンプ11の動作電流を生成するバイアス回路16および該バイアス回路16をオン、オフ制御するための信号ON/OFFが入力される外部端子としてのオン・オフ制御端子CNTが設けられており、オン・オフ制御端子CNTへローレベル(0V)のオン、オフ制御信号ON/OFFが入力されると、バイアス回路16は基準電圧源15と誤差アンプ11への動作電流の供給を停止し、これらの回路の動作を停止させるように構成されている。
【0022】
上記誤差アンプ11,14bとしては、例えば図3に示すように、トランジスタM11,M12および定電流源CC1,CC2からなる入力部と、差動入力トランジスタM13,M14およびアクティブ負荷トランジスタM15,M16と定電流源CC3とからなる差動増幅部と、差動増幅部の出力ノードにゲート端子が接続されたトランジスタM17およびそのソース端子と接地点との間に接続された抵抗R10からなる出力部とを有する差動増幅回路を使用することができる。なお、図3に示す回路は一例であって、このような構成の回路に限定されるものではない。
【0023】
次に、前述のレギュレータIC10と汎用のマイコンとを使用したレギュレータ装置の構成例について、図4および図5を用いて説明する。
図4(A)は汎用のマイコンとしてD/A変換回路を内蔵しているものを使用する場合のレギュレータ装置の構成例で、図4(B)は汎用のマイコンとしてD/A変換回路を内蔵していないものを使用する場合のレギュレータ装置の構成例である。
【0024】
D/A変換回路を内蔵しているものを使用する場合、図4(A)に示すように、マイコン20に内蔵されているD/A変換回路の出力ポートから出力される信号D/Aを出力電圧の制御信号Vadjとして、レギュレータIC10の外部端子ADJへ入力させるように接続を行う。また、マイコン20の通常のI/OポートよりレギュレータIC10のON/OFF信号を出力して、レギュレータIC10のオン・オフ制御端子CNTへ入力させるように接続を行う。このような接続を有する電源装置を構成することで、図5(A)に示すように、出力制御端子ADJへ入力される制御信号Vadjに応じて出力電圧Voutを連続的に変化させることができる出力電圧可変電源装置を実現することができる。
【0025】
一方、D/A変換回路を内蔵していないものを使用する場合、図4(B)に示すように、マイコン20が備えているI/Oポートから出力電圧の切替え信号EXCを、レギュレータIC10の出力制御端子ADJへ入力させるように接続を行う。また、マイコン20の通常のI/OポートよりレギュレータIC10のON/OFF信号を出力して、レギュレータIC10のオン・オフ制御端子CNTへ入力させるように接続を行う。このような接続を有する電源装置を構成することで、図5(B)に示すように、出力制御端子ADJへ入力される切替え信号EXCに応じて出力電圧Voutを段階的に変化させることができる出力電圧可変電源装置を実現することができる。
【0026】
上記実施例のレギュレータIC10によれば、ICの外付け部品をなくしかつ出力制御端子ADJへ入力される制御信号VadjまたはEXCのみで出力電圧Voutを変化させることできる出力電圧可変電源装置を実現することができる。また、基準電圧の精度及び内部抵抗の比で出力電圧が決まるため、精度および温度特性の良効となるとともに、可変入力電圧範囲が大きく、入力電圧に対するバラつき精度が小さくなる。また、誤差アンプによる電圧-電流変換でフィードバック電圧を変位させて出力電圧を変化させる構成であるため、電源ノイズの影響が少ない可変電源装置を実現することができる。
さらに、マイコン内蔵のD/A変換機能を使用して出力制御信号を生成するようにした場合、ソフトの変更のみで出力電圧の可変が可能となるとともに、マイコンのI/O機能により、2段階での出力電圧の切替えが可能となる。
【0027】
なお、上記実施例のレギュレータIC10においては、ICの動作を停止させるためのON/OFF信号を入力するオン・オフ制御端子CNTを設けているが、このオン・オフ制御端子CNTを省略した構成も可能である。オン・オフ制御端子CNTを省略した場合、レギュレータIC10を4端子で構成可能なため、パッケージの小型化による省スペース化およびコストの低減が可能となる。また、上記実施例のレギュレータIC10においては、電圧制御用トランジスタM1や出力電圧変更回路を構成するトランジスタM2としてMOSトランジスタを使用したものを示したが、MOSトランジスタの代わりにバイポーラ・トランジスタを使用するようにしてもよい。
【0028】
(変形例)
次に、前記実施形態のレギュレータIC10の変形例について、図6を用いて説明する。
図6に示す変形例は、前記実施形態のレギュレータIC10の出力制御端子ADJに接続されている分圧回路14aを構成する抵抗R4,R5を省き、代わりに基準電圧源15により生成される基準電圧Vrefを分圧する抵抗R6,R7からなる分圧回路17を設け、抵抗R6,R7によって分圧された電圧Vref’を誤差アンプ11へ入力する。また、抵抗R6とR7との接続ノードN4と接地点との間に、出力電圧変更回路14を構成するMOSトランジスタM2および抵抗R3を直列に接続するとともに、出力制御端子ADJへ入力される出力制御信号Vadjを誤差アンプ14bの非反転入力端子へ直接入力するように構成したものである。
【0029】
図6の変形例のレギュレータICを使用したレギュレータにおいては、ノードN4の電圧Vref'は、次式(4)
Vref'=(1/R6+R7)*(R6*Vref-(R6*R7/R3)*Vadj) ……(4)
で表わされる。従って、出力電圧Voutは、
Vout=((R1+R2)/R1)*Vref'
=((R1+R2)/R1*(R6+R7))*(R6*Vref-(R6*R7/R3)*Vadj)
……(5)
となる。
上記式(5)より、出力電圧Voutは内部抵抗の相対精度により決まるため、精度良く設定可能であることが分かる。また、出力制御端子ADJへ入力する制御信号Vadjを変化させることで出力電圧Voutを変化させることができる。
【0030】
(第2実施形態)
図7は、本発明を適用した出力電圧可変電源装置としてのシリーズレギュレータを構成するレギュレータIC10の第2実施形態を示す。
本実施形態の出力電圧可変電源装置は、図1に示す第1実施形態の出力電圧変更回路14における分圧回路14aを設ける代わりに、図7に示すように、互いにベース端子同士が結合されたトランジスタTr1,Tr2からなる第1のカレントミラー回路17Aと、互いにベース端子同士が結合されたトランジスタTr3,Tr4からなる第2のカレントミラー回路17Bを設けたものである。
【0031】
上記トランジスタTr1とTr3は、ベース端子とコレクタ端子とが結合されることで、電流-電圧変換素子として機能し、変換された電圧がトランジスタTr2とTr4にそれぞれ印加されることで、Tr1とTr2のエミッタサイズ比、Tr3とTr4のエミッタサイズ比に応じた電流がトランジスタTr2、Tr4にそれぞれ流れる。
また、誤差アンプ14bによって駆動される電圧-電流変換手段としてのトランジスタM2は、フィードバック電圧VFBを生成する分圧回路12を構成する抵抗R2,R1の接続ノードではなく第1のカレントミラー回路17Aを構成するトランジスタTr1と直列となるように接続され、トランジスタM2の電流がカレントミラー回路17Aと17Bで転写されて、抵抗R2,R1の接続ノードN1から電流を引き抜くように構成されている。
【0032】
さらに、特に限定されるものでないが、第2実施形態においては、レギュレータIC10をバイポーラ・トランジスタにより構成している。ただし、第1実施形態と同様にMOSトランジスタ(P-MOSとN-MOS)によって構成することも可能である。他の構成は、第1実施形態のレギュレータICと同様である。
図7の第2実施形態のレギュレータICを使用したレギュレータにおいては、カレントミラー回路17Aと17Bの電流比をそれぞれ1:1に設定した場合、出力電圧Voutは、
Vout=((R1+R2)/R1)*Vref+(Vadj/R3)* R2 ……(6)
で表わされる。
【0033】
従って、本実施形態の出力電圧可変電源装置においても、第1実施形態と同様に、出力制御端子ADJへ任意の電圧(制御信号Vadj)を印加することで、任意の出力電圧を設定することができるとともに、出力制御端子ADJの印加電圧に応じて、出力電圧Voutをリニアに変化させることができる。
具体的には、本実施形態の出力電圧可変電源装置におけるオン・オフ制御端子CNTへの入力信号ON/OFFと、出力制御端子ADJへ入力される制御信号Vadjと、出力電圧Voutとの関係を示すと、図9(A)のようになる。図9(A)より、制御信号Vadjを例えば0~3.3Vの範囲で変化させると、出力電圧VoutをV1~Vinの範囲で変化させることができることが分かる。なお、制御信号Vadjの可変範囲の0~3.3Vは一例であって、これに限定されるものではない。
【0034】
また、図1に示す第1実施形態の出力電圧可変電源装置においては、出力制御端子ADJへの電圧(制御信号Vadj)の入力範囲を広くとるために、出力電圧変更回路14に入力電圧(Vadj)を分圧する分圧回路14a(抵抗R5,R4)を設けており、分圧回路14aの接続ノードN3の電位V3を、ばらつき含めてVref-Vds(M2)以下に設定する必要がある。また、出力制御端子ADJの電圧(Vadj)を分圧回路14aで圧縮して出力電圧Voutを所望の電圧範囲で変化させる構成であり、ノードN3の電位V3は出力電圧変更回路14のゲイン倍されるため、分圧回路14aの抵抗R5,R4の抵抗比のばらつきが出力電圧Voutへ大きく影響してしまう。
【0035】
これに対し、第2実施形態においては、出力制御端子ADJの電圧(Vadj)を分圧回路14aで圧縮するようなことはしないため、制御信号Vadjによる出力電圧Voutの制御精度が第1実施形態の出力電圧可変電源装置に比べて向上する。また、第2実施形態においては、出力電圧Voutの可変範囲が、出力電圧変更回路14の抵抗R3の抵抗値だけでなく、カレントミラー回路17Aと17Bの電流比でも変更が可能であるため、設計の自由度が高くなるという利点がある。
さらに、第2実施形態によれば、制御信号Vadjによる出力電圧Voutの可変制御論理をカレントミラー回路17Bの有無で切り替えることが可能となる。
【0036】
具体的には、カレントミラー回路17Aを構成するトランジスタTr1,Tr2と、カレントミラー回路17Bを構成するトランジスタTr3,Tr4を、レギュレータICのチップ上に予め作り込んでおいて、マスクオプションで、トランジスタTr2とTr3との間の接続配線をトランジスタTr2とノードN3との接続配線に切り替えたり、ノードN3から誤差アンプ11の入力端子までの配線に対するスルーホールの形成位置を切り替えたりすることによって、カレントミラー回路17Aのみを設けた回路またはカレントミラー回路17Aと17Bの両方を設けた回路を実現することができる。
【0037】
図8には、第2実施形態のシリーズレギュレータを構成するレギュレータIC10において、上述したような手法で、図7に示す第2実施形態のレギュレータIC10における第2のカレントミラー回路17Bを省略して、第1のカレントミラー回路17Aを構成するトランジスタTr2のコレクタ端子を、分圧回路12を構成する抵抗R2,R1の接続ノードN1に接続して、トランジスタM2の電流をカレントミラー回路17Aで転写した電流を、抵抗R2,R1の接続ノードN1へ流し込むように構成した場合のレギュレータIC10の回路図が示されている。
【0038】
図8に示すレギュレータIC10においては、カレントミラー回路17Aの電流比を1:1に設定した場合、出力電圧Voutは、次式
Vout=((R1+R2)/R1)*Vref-(R1*Vadj/R3) ……(8)
で表わされる。この式より、第1実施形態とは論理が逆、すなわち制御信号Vadjを低くすると出力電圧Voutが高くなることが分かる。
本変形例の出力電圧可変電源装置におけるオン・オフ制御端子CNTへの入力信号ON/OFFと、出力制御端子ADJへ入力される制御信号Vadjと、出力電圧Voutとの関係を示すと、図9(B)のようになる。図9(B)より、制御信号Vadjを例えば0~3.3Vの範囲で変化させると、出力電圧VoutをVin~V1の範囲で変化することが分かる。なお、制御信号Vadjの可変範囲の0~3.3Vは一例であって、これに限定されるものではない。
【0039】
出力電圧Voutの制御論理を変更すなわち制御信号Vadjを高くすると出力電圧Voutが高くなるのではなく、制御信号Vadjを低くすると出力電圧Voutが高くなるように制御することができる電源装置を構成したい場合、第1実施形態の出力電圧可変電源装置においては、誤差アンプ14bの前段に反転増幅回路のようなアンプを別途設ける必要があるが、本変形例によれば、カレントミラー回路17Bを省略するのみで制御論理を変更することができる。なお、図7及び図8におけるカレントミラー回路17Aと17Bは、図示のような構成のものに限定されず、ウィルソン型やベース電流補償型など他の回路形式のものであっても良い。
【0040】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば、前記第1、第2実施形態においては、出力電圧Voutを連続的に変化させるためマイコン内蔵のD/A変換機能を使用しているが、D/A出力の他、可変抵抗器を有するブリーダ抵抗回路などを使用するようにしても良い。また、出力電圧のフィードバック電圧VFBを生成する分圧回路(抵抗R1,R2)12や抵抗R3は、レギュレータIC10の外付け素子として接続されるものであっても良い。
また、前記実施例においては、本発明をシリーズレギュレータ方式の出力電圧可変電源装置に適用した場合について説明したが、本発明はシャントレギュレータ方式の電源装置にも利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10……レギュレータIC、11……誤差アンプ、12……分圧回路、14……出力電圧変更回路、14a……分圧回路、14b……誤差アンプ、15……基準電圧源、16……バイアス回路、17A,17B……カレントミラー回路、M1……電圧制御用トランジスタ、ADJ……出力制御端子、CNT……オン・オフ制御端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9