(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】エイジングケア用マイクロニードル
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230927BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230927BHJP
A61K 8/68 20060101ALI20230927BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20230927BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230927BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230927BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230927BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230927BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/68
A61K8/65
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K8/41
A61K8/02
A61M37/00 530
(21)【出願番号】P 2021185345
(22)【出願日】2021-11-15
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501296380
【氏名又は名称】コスメディ製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518042327
【氏名又は名称】株式会社イワミズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神山 文男
(72)【発明者】
【氏名】権 英淑
(72)【発明者】
【氏名】田中 弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 菜穂子
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113197814(CN,A)
【文献】特開2006-199634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61M 37/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重ラメラベシクルに含有されたセラミドとヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体と加水分解コラーゲンとを含
み、
前記ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体におけるヒアルロン酸誘導体が、ヒアルロン酸のナトリウム塩、ポリエチレンオキサイドグラフトヒアルロン酸、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチル化ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、又はヒアルロン酸クロスポリマーナトリウムであり、
前記ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体が、1,800kDa~2,200kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)と、5kDa~1,000kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(B)とを含み、
前記セラミドの含有量が0.0001重量%~0.01重量%であり、前記ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)の含有量が1重量%~10重量%であり、前記加水分解コラーゲンの含有量が0.01重量%~10重量%であるマイクロニードル組成物。
【請求項2】
前記多重ラメラベシクルがクオタニウムによって作製される請求項1に記載のマイクロニードル組成物。
【請求項3】
前記多重ラメラベシクルがセラミドNG、セラミドNP及びセラミドAPを含有する請求項1又は2に記載のマイクロニードル組成物。
【請求項4】
前記セラミドと前記ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)と前記ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(B)と前記加水分解コラーゲンとの合計含有量が80重量%以上である請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロニードル組成物。
【請求項5】
前記ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)の含有量が1重量%~5重量%である請求項1~4のいずれか1項に記載のマイクロニードル組成物。
【請求項6】
前記加水分解コラーゲンの含有量が0.01重量%~5.0重量%である請求項1~5のいずれか1項に記載のマイクロニードル組成物。
【請求項7】
前記マイクロニードルの高さが50μm~300μmである請求項1~6のいずれか1項に記載のマイクロニードル組成物。
【請求項8】
前記マイクロニードルの密度が50本/cm
2~2000本/cm
2である請求項1~7のいずれか1項に記載のマイクロニードル組成物。
【請求項9】
マイクロニードル形成用凹部が形成された鋳型上に多重ラメラベシクルに含有されたセラミドとヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体と加水分解コラーゲンとを含むマイクロニードル組成物の水溶液を流し込む工程、
前記マイクロニードル組成物の水溶液を加温して該水溶液層の水分を蒸発させ、マイクロニードルシートを製造する工程、及び
前記マイクロニードルシートを鋳型から剥離して製品の形状に打ち抜いてマイクロニードルパッチを形成させる工程、
を含
み、
前記ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体におけるヒアルロン酸誘導体が、ヒアルロン酸のナトリウム塩、ポリエチレンオキサイドグラフトヒアルロン酸、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチル化ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、又はヒアルロン酸クロスポリマーナトリウムであり、
前記ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体が、1,800kDa~2,200kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)と、5kDa~1,000kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(B)とを含み、
マイクロニードル組成物の総重量に対して、前記セラミドの含有量が0.0001重量%~0.01重量%であり、前記ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)の含有量が1重量%~10重量%であり、前記加水分解コラーゲンの含有量が0.01重量%~10重量%である、マイクロニードルパッチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚への局所適用マイクロニードルの技術分野に関し、詳しくは、皮膚の潤いアップ及び/又は皮膚のシワ改善技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトの皮膚の構造やその新陳代謝のメカニズムなどに関する研究が進むにつれて、加齢にともないヒトの皮膚にシワ、小ジワ、タルミなどの変化が現れる原因や機構が徐々に明らかになりつつある。皮膚は、外側の薄い表皮とその下層の厚い真皮とから構成されており、表皮は体の最外層として外界から生体を保護するとともに、角質層に存在するNMF(天然保湿因子)やセラミドにより、内部の水分や栄養分が外界に漏出するのを防いでいる。
【0003】
一方、真皮は、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、およびプロテオグリカンなどが複合的にマトリックス状に広がった構造に線維芽細胞が存在する結合組織であって、皮膚に強度、伸展性及び弾力性をもたらす役割を担っている。しかし、加齢とともに細胞の新陳代謝が衰えることにより、NMFやセラミドの産生量が低下すると、皮膚表面の角質層の保湿力が失われ、乾燥などによる小ジワが生じやすくなるといわれている。
【0004】
また、加齢によって真皮における線維芽細胞のヒアルロン酸やコラーゲンの産生量が低下したり、コラーゲンやエラスチンの変性が起こると、皮膚の弾性が低下して、シワが形成されたり、タルミが起こるといわれている。コラーゲンの線維を支える役割を持つ線維であるエラスチンは、肌にハリや弾力を与える役割をしており、エラスチンの減少はしわやタルミの形成につながる。
【0005】
これらの知見に基づき、皮膚の乾燥を防ぎ、小ジワやシワ、タルミの改善の目的で、エンテロコッカス属に属する乳酸菌を含有する、ヒアルロン酸産生促進用組成物(特許文献1)や、皮膚および粘膜などの正常上皮組織の再生機能などに関与し、皮膚の老化を抑制すると言われているレチノールを配合する皮膚外用組成物が提案されている(特許文献2)。また、線維芽細胞のコラーゲン産生を促進する成分として、バラ科バラ属の植物の花弁、つぼみのエキスと、コラーゲンペプチドであるGly-Pro-Hyp及びGly-Pro-Alaの配列を有する2種類のトリペプチドを有効成分として含有するコラーゲン産生促進用組成物が提案されている(特許文献3)。さらに、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、セラミドと、シロキクラゲ科キノコの抽出物を含有する皮膚老化防止に対して改善効果のある皮膚外用剤が提案されている(特許文献4)。
【0006】
また、マイクロニードル剤型としてはポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン、およびポリビニルアルコールからなる水溶性高分子にリポソームを含有する組成物が提案されている(特許文献5)。さらに、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸誘導体からなるマイクロニードル組成物に天然ヒト型セラミドを含有する組成物が提案されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-105100号公報
【文献】特開2019-137671号公報
【文献】特開2021-011439号公報
【文献】特開2006-131557号公報
【文献】国際公開第2017/179617号
【文献】特開2018-162234号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】「コラーゲンからコラーゲンペプチドへ」発行者:日本ゼラチン・コラーゲンペプチド工業組合 コラーゲン研究の現在と未来P48-55、2014:藤本大三郎
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~4に記載の組成物は、皮膚に塗布することにより有効成分が皮膚中の線維芽細胞に作用することを前提として説明がなされている。しかしながら、皮膚には角層のバリアが存在し、塗布した成分がすべて経皮吸収されるわけではなく、むしろ逆に吸収されない成分が多いのが現実である。そこで、特許文献5~6では、シワに有効な成分をマイクロニードルに製剤化して、角層中に直接吸収促進させることにより、シワに効果的に作用するマイクロニードル組成物が提案されている。しかしながら、提案されている組成物では、皮膚の乾燥を防ぎ、小ジワやシワ、タルミの改善の目的を達成するに至るものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に示す通りである。
[1] 多重ラメラベシクルに含有されたセラミドとヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体と加水分解コラーゲンとを含むマイクロニードル組成物。
[2] 前記多重ラメラベシクルがクオタニウムによって作製される[1]に記載のマイクロニードル組成物。
[3] 前記多重ラメラベシクルがセラミドNG、セラミドNP及びセラミドAPを含有する[1]又は[2]に記載のマイクロニードル組成物。
[4] 前記セラミドの総含有量が0.0001重量%~0.01重量%である[1]~[3]のいずれか1項に記載のマイクロニードル組成物。
[5] 前記ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体が、1,800kDa~2,200kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)を含み、前記ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)の含有量が1重量%~5重量%である[1]~[4]のいずれか1項に記載のマイクロニードル組成物。
[6] 前記加水分解コラーゲンの含有量が0.01重量%~5.0重量%である[1]~[5]のいずれか1項に記載のマイクロニードル組成物。
[7] 前記マイクロニードルの高さが50μm~300μmである[1]~[6]のいずれか1項に記載のマイクロニードル組成物。
[8] 前記マイクロニードルの密度が50本/cm2~2000本/cm2である[1]~[7]のいずれか1項に記載のマイクロニードル組成物。
[9] マイクロニードル形成用凹部が形成された鋳型上に多重ラメラベシクルに含有されたセラミドとヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体と加水分解コラーゲンとを含むマイクロニードル組成物の水溶液を流し込む工程、前記マイクロニードル組成物の水溶液を加温して該水溶液層の水分を蒸発させ、マイクロニードルシートを製造する工程、及び前記マイクロニードルシートを鋳型から剥離して製品の形状に打ち抜いてマイクロニードルパッチを形成させる工程、を含む、マイクロニードルパッチの製造方法。
【0011】
本発明の好ましい形態は、多重ラメラベシクルにセラミドを内包してなるマイクロニードル組成物であり、マイクロニードルの基剤がヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体からなり、マイクロニードルの針の高さが50μmから300μmであり、かつ針の密度が50本/cm2~2,000本/cm2であるマイクロニードル組成物である。さらに、多重ラメラベシクルがクオタニウムによって作製される組成物であり、セラミドの含有量が0.0001重量%~0.01重量%、またマイクロニードル中に配合される加水分解コラーゲン量が0.01重量%~5.0重量%であり、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸誘導体が1,800kDa~2,200kDaの高分子量のものを1重量%~5重量%含有することを特徴とするマイクロニードル組成物であり、本組成物を皮膚に適用することにより、マイクロニードル中に配合された有効成分が、角層バリアを通過し、直接作用することにより皮膚の潤いをアップし、高いシワ改善効果を示すものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマイクロニードル組成物によれば、ニードル中に配合された有効成分が角層バリアを通過し、皮膚に作用させることが可能である。また、多重ラメラベシクルに内包されたセラミドは角層中に効率的に吸収促進され皮膚の水分保持効果が高まることで、小じわの改善に至る。また、マイクロニードルをヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体で作製することにより、塗布することでは経皮吸収されなかったヒアルロン酸も角層バリアを通過できることとなり、皮膚中での水分保持能が一気に高まるとともに、マイクロニードル中に配合された加水分解コラーゲンが真皮の線維芽細胞に作用して新たにコラーゲン産生を促進させ、肌にハリと弾力を与え、加齢にともなう皮膚のシワ、弛みなどを効果的に改善することが可能となる(非特許文献1)。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のマイクロニードルの製造方法に使用される鋳型の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のマイクロニードル組成物は、多重ラメラベシクルに含有されたセラミドと、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体と、加水分解コラーゲンとを含む。
【0015】
本発明のマイクロニードル組成物は、0.0001重量%~0.01重量%のセラミドを内包する多重ラメラベシクルを含有するとともに、0.01重量%~5.0重量%の加水分解コラーゲン、および平均分子量が1,800kDa~2,200kDaのヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体を1重量%~5重量%含有するマイクロニードルであることが好ましい。
【0016】
本発明のマイクロニードル組成物は、シート状であることが好ましく、マイクロニードルシートであることが好ましい。
【0017】
マイクロニードルのニードルの形状及び高さは、厳密にコントロールし皮内に挿入されないように設計されなければならない。具体的には、ニードルの針の先端は直径5μm以上の円形あるいはそれと同面積を有する平面であることが望ましい。5μm未満の先端面積であると、適用時に皮内へ挿入される危険性を有する。針の形状は、棒状でなく円錐台形状、又はコニーデ形状が望ましい。ニードルが皮膚に適用されるとき、円錐台形、又はコニーデ形状の場合は、皮膚との接触面積が大きく皮膚を圧迫するので、皮膚表面が引っ張られて薄くなり、それによってニードル中に配合された有効成分の皮内送達が有利になる。それに反し、針が棒状の合は、皮膚との接触面積が小さくなり、有効成分の皮内送達が不利となる。針先端部直径は150μm以下であることが望ましく、先端部直径が150μmを超えると皮膚が引っ張られる効果が小さくなりマイクロニードルとしての機能を失う。
【0018】
ニードルの高さは、50μm以上300μm以下であることが望ましく、100μm以上250μm以下がより好ましい。50μm未満では皮膚を圧迫する度合いが小さく有効成分の送達に不利である。また、300μmを超えると適用時に針が皮膚深部に至る危険性がある。
【0019】
ニードルの密度は、50本/cm2~2,000本/cm2であることが望ましく、100本/cm2~1,200本/cm2であることがより好ましい。50本/cm2未満であると有効成分を配合できる全体量が少なくなり、有効成分の送達量が不十分となる。逆に、2,000本/cm2を超えると、皮膚に挿入することが難しくなる。
【0020】
マイクロニードルを構成する材料は、ヒアルロン酸又はその誘導体、例えばナトリウム塩、ポリエチレンオキサイドグラフトヒアルロン酸、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチル化ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸クロスポリマーナトリウムを使用することが可能である。これらの高分子の特徴は、少量の水を吸収するときに膨潤性を有することである。マイクロニードルを介して皮膚中で溶解したヒアルロン酸及びその誘導体は、皮膚中の水分を吸収して膨潤し、皮膚の小じわを改善する効果をもたらす。
【0021】
ヒアルロン酸は、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種であり、N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸の二糖単位が連結した構造を有している。ヒアルロン酸としては、例えば、鶏冠、臍帯等から単離される生物由来のヒアルロン酸、また、乳酸菌、連鎖球菌等により大量生産される培養由来のヒアルロン酸等が使用できる。
【0022】
ヒアルロン酸又はその誘導体から選ばれた高分子物質を成分として用いてマイクロニードルを作製するに当たっては、これら高分子物質から成形されたマイクロニードルは、重量平均分子量が小さくなると硬くなり皮膚に刺さりやすくなり、逆に重量平均分子量が大きくなると機械的強度が向上し粘り強くなるので、硬度が低下し皮膚に刺さりにくくなる傾向がある。本発明の目的においては、ヒアルロン酸又はその誘導体は、1,800kDa~2,200kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)を含むことが好ましく、1,800kDa~2,200kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)と、5kDa~1,000kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(B)とを含むことがより好ましい。ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(B)のほかに、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)を1重量%~5重量%別途配合することが望ましい。
【0023】
1,800kDa~2,200kDaの平均分子量のヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)は、一般的には、マイクロニードル組成物の総重量に対しておよそ1重量%から10重量%まで配合が可能である。1重量%未満の配合では十分な効果を発揮し得なく、10重量%を超えて配合するとマイクロニードルの機能性を損なうことになる。マイクロニードル組成物の総重量に対して、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)をより好ましくはおよそ0.5重量%~5重量%、最も好ましくは1重量%~5重量%の量を配合することで効果を発揮させることができる。
【0024】
多重ラメラベシクルに内包するセラミドには、セラミドAG、セラミドAP、セラミドAS、セラミドEOP、セラミドEOS、セラミドNG、セラミドNP、セラミドNSなどが挙げられる。セラミドは水に不溶で扱いにくい成分であるが、多重ラメラベシクルに内包することにより水溶性が付与されマイクロニードルに配合しやすい形態となる。多重ラメラベシクルを構成するにはクオタニウム-14、クオタニウム-18、クオタニウム-33、クオタニウム-60などの4級カチオン活性剤が使用可能である。一般的には、セラミドは、マイクロニードル組成物の総重量に対しておよそ0.0001重量%~0.01重量%まで配合が可能である。0.0001重量%未満の配合では十分な効果を発揮し得なく、0.01重量%を超えて配合すると多重ラメラベシクル作製に必要なクオタニウムの使用量が増加し、マイクロニードルの成型に支障をきたすことになる。マイクロニードル組成物の総重量に対して、セラミドをより好ましくはおよそ0.0005重量%~0.01重量%、最も好ましくは0.001重量%~0.01重量%の量を配合することで最も効果を発揮させることができる。
【0025】
コラーゲンは豚・馬・鳥などの動物や魚の皮・鱗から抽出される。マイクロニードル組成物に配合する加水分解コラーゲンは、酸・アルカリ・酵素によりコラーゲンを加水分解したもので平均分子量は400~2,000程度であり、アラニン、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどのアミノ酸からなるペプチドが主成分となっている。なかでもコラーゲン以外のたんぱく質には存在しないプロリルヒドロキシプロリンは、線維芽細胞の増殖を促進する効果があることが報告されている(非特許文献1)。加水分解コラーゲンは、一般的にはマイクロニードル組成物の総重量に対して、0.01重量%~10重量%配合することが可能である。0.01重量%未満の配合では十分な効果を発揮し得なく、10重量%を超えて配合するとマイクロニードルの機能性を損なうことになる。マイクロニードル組成物の総重量に対して、加水分解コラーゲンをより好ましくはおよそ0.1重量%~5.0重量%、最も好ましくは0.5重量%~5.0重量%の量を配合することで最良な効果を発揮させることができる。
【0026】
マイクロニードル組成物の総重量に対して、セラミドとヒアルロン酸又はその誘導体と加水分解コラーゲンとの合計含有量、又は、セラミドとヒアルロン酸又はその誘導体(A)とヒアルロン酸又はその誘導体(B)と加水分解コラーゲンとの合計含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。
【0027】
本発明のマイクロニードル組成物においては、上述したヒアルロン酸及びその誘導体、セラミド、加水分解コラーゲン以外にも公知の有効成分を配合することができる。例えば、抗炎症剤、ビタミン類、保湿成分、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、角質柔軟成分、老化防止成分、抗糖化成分、血行促進作用成分、美白成分、ポリフェノール類等が挙げられる。なお、本発明の上記各種組成物、各種剤において、これらの成分はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記抗炎症剤としては、例えば、植物に由来する成分、アラントイン及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその塩又は誘導体、サリチル酸誘導体、アミノカプロン酸、アズレン及びその誘導体、等が挙げられる。
【0029】
上記ビタミン類としては、水溶性ビタミン及び油溶性ビタミンのいずれであってもよい。油溶性成分であれば界面活性剤で可溶化して配合することが可能である。例えば、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、5’-リン酸ピリドキサール、及びそれらの塩等のビタミンB6類:パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール、D-パンテサイン、D-パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル、及びそれらの塩等のパントテン酸類:ニコチン酸、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸アミド、及びそれらの塩等のニコチン酸類:γ-オリザノール、チアミン、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミントリリン酸エステル、及びそれらの塩等のビタミンB1類:リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビン5’-リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル、及びそれらの塩等のビタミンB2類:ビオチン、ビオシチン、及びそれらの塩等のビオチン類:葉酸、プテロイルグルタミン酸、及びそれらの塩等の葉酸類:シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン、及びそれらの塩等のビタミンB12類:アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸-2-グルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、グリセリルアスコルビン酸、ビスグリセリルアスコルビン酸、アルキルグリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸誘導体、及びそれらの塩等の水溶性のビタミンC類:dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、トコフェロール、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム等のビタミンE類:、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L-アスコルビル、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル等の油溶性のビタミンC及びその塩類:エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD類:フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類;レチノール、レチナール、レチノイン酸、3-デヒドロレチノール、3-デヒドロレチナール、3-デヒドロレチノイン酸、水添レチノールなどのビタミンA類及びその誘導体であるパルミチン酸レチノール、リノール酸レチノール、酢酸レチノールなどのビタミンA誘導体類、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、クリプトキサンチンなどのプロビタミンA類:フェルラ酸、ピロロキノリンキノン又はその塩、ヘスペリジン及びグルコシルヘルペリジン等のヘスペリジン誘導体、ユビキノン、グルクロラクトン、グルクロン酸アミド、オロチン酸、L-カルニチン、α-リポ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子等が挙げられる。
【0030】
上記保湿成分としては、例えば、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のムコ多糖類:コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサン等とそれらの加水分解物:グリシン、アスパラギン酸、アルギニン等のアミノ酸:乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の天然保湿因子:コレステロール、フィトステロール、リン脂質等の脂質:カミツレエキス、ハマメリスエキス、チャエキス、シソエキス、グレープフルーツエキス等の植物抽出エキス:グリセリン、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、グリセリルグルコシドなどの多価アルコールまたはその誘導体、ヒドロキシエチルウレア等が挙げられる。
【0031】
上記ペプチド又はその誘導体としては、例えば、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、魚由来コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン分解ペプチド、塩化ヒドロキシプロピルアンモニウム加水分解コラーゲン、エラスチン分解ペプチド、加水分解コンキオリン、シルク蛋白分解ペプチド、加水分解シルク、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、大豆蛋白分解ペプチド、加水分解大豆蛋白、小麦蛋白、小麦蛋白分解ペプチド、加水分解小麦蛋白、カゼイン分解ペプチド、アシル化ペプチド等が挙げられる。
【0032】
上記アミノ酸又はその誘導体としては、例えば、ベタイン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、トレオニン、チロシン、タウリン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシン、クレアチン、イプシロンアミノカプロン酸、トリプトファン、オルニチン等が挙げられる。またこれらアミノ酸又はその誘導体は、水和物等の溶媒和物であってもよい。
【0033】
上記角質柔軟成分としては、例えば、乳酸、サリチル酸、グルコン酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、フルーツ酸、フィチン酸、尿素、イオウ等が挙げられる。
【0034】
上記老化防止成分としては、例えば、加水分解大豆タンパク、レチノイド(レチノール及びその誘導体、レチノイン酸、及びレチナール等)、カイネチン、アデノシン、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)、AMP(アデノシン一リン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)、ATP(アデノシン三リン酸)、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、メバロノラクトン等が挙げられる。
【0035】
上記抗糖化成分としては、例えば、ブドレジャアキシラリス葉エキス等の植物エキス、月見草油、アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物、L-アルギニン、L-リジン、加水分解カゼイン、加水分解性タンニン、カルノシン等が挙げられる。
【0036】
上記血行促進作用成分としては、例えば、オタネニンジン、アシタバ、アルニカ、イチョウ、ウイキョウ、エンメイソウ、オランダカシ、カミツレ、ローマカミツレ、カロット、ゲンチアナ、ゴボウ、コメ、サンザシ、シイタケ、ショウガ、セイヨウサンザシ、セイヨウネズ、センキュウ、センブリ、タイム、チョウジ、チンピ、トウガラシ、トウキ、トウニン、トウヒ、ニンジン、ニンニク、ブッチャーブルーム、ブドウ、ボタン、マロニエ、メリッサ、ユズ、ヨクイニン、リョクチャ、ローズマリー、ローズヒップ、チンピ、トウキ、トウヒ、モモ、アンズ、クルミ、トウモロコシ、ゴールデンカモミール、イクタモール、カンタリスチンキ、セファランチン等植物に由来する成分:ガンマーオリザノール、ニコチン酸トコフェロール、グルコシルヘスペリジン等が挙げられる。
【0037】
上記美白成分としては、例えば、トラネキサム酸、アスコルビン酸とその塩、アスコルビン酸誘導体等のビタミンC類(アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、2-O-エチルアスコルビン酸、3-O-エチルアスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシドなど)、アルブチン、コウジ酸、プラセンタ、エラグ酸、ニコチン酸アミド、ハイドロキノン、リノール酸及びその誘導体、等が挙げられる。
【0038】
上記ポリフェノール類には、クルクミノイド、フラバノン、スチルペノイド、ポリメトキシフラボノイド類、フラボノール、キサントノイド、カルコン、リグノイド、フラバノール、イソフラボン等のフラボノイド系ポリフェノール類があげられる。
【0039】
上記成分の添加量は様々であり、物質の種類および性質および望まれる効果の度合いによって異なるが一般的には、組成物の総重量に対しておよそ0.001重量%から20重量%まで配合が可能である。0.001重量%未満の配合では十分な効果を発揮し得なく、20重量%を超えて配合しても期待しうる効果が高まることはない。より好ましくはおよそ0.01重量%~10重量%、最も好ましくはおよそ0.1重量%~5重量%の量を配合することで効果を発揮させることができる。
【0040】
本発明のマイクロニードルパッチの製造方法は、以下の工程を含む。
マイクロニードル形成用凹部が形成された鋳型上に多重ラメラベシクルに含有されたセラミドとヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体と加水分解コラーゲンとを含むマイクロニードル組成物の水溶液を流し込む工程、
前記マイクロニードル組成物の水溶液を加温して該水溶液層の水分を蒸発させ、マイクロニードルシートを製造する工程、及び
前記マイクロニードルシートを鋳型から剥離して製品の形状に打ち抜いてマイクロニードルパッチを形成させる工程。
【0041】
図1は本発明のマイクロニードルの製造方法の一例を断面図で示す。リソグラフィー法により凸型のマイクロニードルパターンを転写するか、あるいは精密金属加工法によってマイクロニードル形成用凹部(11)が形成された鋳型(1)を作製する。
【0042】
多重ラメラベシクルに含有されたセラミドとヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体と加水分解コラーゲンとを含むマイクロニードル組成物の水溶液を鋳型(1)上に流し込む。
【0043】
次いで、流し込まれたマイクロニードル組成物の水溶液層(2)を加温して該水溶液層の水分を蒸発させると、
図1の形状のマイクロニードルシートが得られる。
【0044】
鋳型(1)から該シートを剥離して製品の形状に打ち抜き、マイクロニードルシートを皮膚に付着させるための粘着シートや粘着面を保護する離型シートなどを付加してマイクロニードルパッチとする。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を例示して本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0046】
製造例1:多重ラメラベシクル含有マイクロニードルの製造
セラミドNG、セラミドNP、セラミドAPを合計0.05重量%内包するクオタニウム-33により安定化された多重ラメラベシクル(日本精化社製:「NanoRepair-CMC」)、加水分解コラーゲン(日祥社製:「マリンコラーゲンオリゴCF」)、ヒアルロン酸(キッコーマンバイオケミファ社製:「FCH-200」、平均分子量1,800kDa~2,200kDa、上述のヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(A)に相当)を、それぞれ表3,4に記載の量(単位は重量部)を秤量し、さらに残部をヒアルロン酸(キッコーマンバイオケミファ社製:「FCH-SU」、平均分子量100kDa、上述のヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体(B)に相当)を加え、合計100重量部とした。これを水に溶解して、
図1と同様の鋳型に流し込み、角を丸めた長方形(7mm×50mm)のマイクロニードルシートを製造した。そのマイクロニードルシートを、角を丸めた長方形(10mm×60mm)の粘着テープの中央部にセットすることにより本発明のマイクロニードルパッチを得た。マイクロニードルの密度は250本/cm
2、マイクロニードルの高さは200μm、マイクロニードルの基盤部の厚みは100μmであった。
【0047】
試験例1:官能試験
製造例1において作製した比較例1-2、実施例1-11のマイクロニードルについて、効果の官能試験を実施した。比較例1-2、実施例1-11のマイクロニードルの組成は、表3,4に示す通りである。なお、表3,4中の配合量の数字の単位は、重量部である。比較例1-2、および実施例1-11の試験品につき、5名ずつ7群のグループに分けて、使用性試験を行った。1群5名のパネラーに表1に表示した試験品を左右目尻に3日おきに2回使用した。就寝前にマイクロニードルを貼付し、朝起きた時に剥がした。2回使用後の目尻の状態を自己観察し、表2の評価基準に従って評価を行った。評価点数は、それぞれの例に関して5名のパネラーの点数の合計とした。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
比較例1、比較例2ではNanoRepair-CMCないしはマリンコラーゲンオリゴCFが配合されていない為、評価点数が低かった。
【0053】
NanoRepair-CMC及びマリンコラーゲンオリゴCFの配合量が増加するに伴い、評価点も高くなっている。
【符号の説明】
【0054】
1 鋳型
11 マイクロニードル形成用凹部
2 マイクロニードル組成物の水溶液層