(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】オーガスクリューの排土装置
(51)【国際特許分類】
E21B 12/06 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
E21B12/06
(21)【出願番号】P 2020006704
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519017993
【氏名又は名称】新成基礎工事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】黒田 裕規
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-060634(JP,U)
【文献】実開平07-034088(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1878867(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00- 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方向に伸びるリーダと、前記リーダに沿って回転しながら昇降するオーガスクリューと、前記オーガスクリューをガイドするためのリング状のガイド部を有する振れ止めを備えた掘削機に据え付けられるオーガスクリューの排土装置であって、
前記振れ止めは、前記リーダに前記オーガスクリューの昇降に追従して昇降可能に取り付けられ、前記振れ止めに
前記オーガスクリューに付着した土を除去する排土装置が取り付けられ、前記排土装置は前記振れ止めに取り付けられ、鉛直方向に伸縮する一または複数の排土ブラシ支持部材と、前記排土ブラシ支持部材の上端部に
前記オーガスクリューの軸部
および羽根部に向けて
取り付けられ、前記排土ブラシ支持部材が鉛直方向に伸縮することにより前記オーガスクリューの昇降に追従して昇降する排土ブラシを備え、
前記排土ブラシ支持部材は外柱と当該外柱に内接する内柱を備え、かつ前記内柱が前記外柱の軸方向にスライドして鉛直方向に伸縮するように構成されていることを特徴とするオーガスクリューの排土装置。
【請求項2】
請求項1記載のオーガスクリューの排土装置において、
前記排土ブラシは前記排土ブラシ支持部材の上端部に上下方向に回動可能に軸支され、かつバネ部材によりほぼ水平位置に復帰するように付勢されていることを特徴とするオーガスクリューの排土装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のオーガスクリューの排土装置において、前記排土ブラシ
は、束ねられた複数の鉄筋、鋼線、PC鋼棒、PC鋼より線、コイルまたは単一の角材
から形成されていることを特徴とするオーガスクリューの排土装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のオーガスクリューの排土装置を用いて前記オーガスクリューの羽部および軸部に付着した土を除去するオーガスクリューの排土方法であって、前記オーガスクリューを回転させながら上昇させると共に、前記排土ブラシを前記オーガスクリューの
前記羽根部および前記軸部側に向けて突出
させ、かつ前記振れ止めを前記オーガスクリューの上昇に追従させて上昇させることを特徴とするオーガスクリューの排土方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオーガスクリューの羽部や軸部の表面に付着した土を除去するオーガスクリューの排土装置に関し、オーガスクリューを備えた掘削機によって掘削工事や地盤改良工事を行う際に、オーガスクリューの羽部や軸部に付着した土をきわめて効率的かつ確実に、しかも安全に除去できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
オーガスクリューを備えた掘削機によって実施される掘削工事や地盤改良工事においては、掘削や撹拌工事に伴いオーガスクリューの羽部や軸部の表面に大量の土が付着する。
【0003】
従来、この種の付着土は、スコップ等の土工具を用いた手作業、またはバケットを備えた重機などによって除去していた。
【0004】
しかし、付着土は乾燥すると共に羽部や軸部の表面に固結した状態でこびり付いているため、スコップ等の土工具を用いた手作業では作業員の負担のみが大きく、完全に取り切れない等の課題があった。
【0005】
また、重機のバケットを利用して除去する方法は、羽部の裏側部分、さらには羽部の軸部との付け根部などといった隅々にわたって付着土を除去することはほぼ不可能で、取り残しが避けられない等の課題があった。
【0006】
また、いずれの方法も、オーガスクリューの回転力を利用し、回転するオーガスクリューに近い位置で行うため、作業者の安全性にも課題があった。
【0007】
また、これらの課題を解決すべく、専用の排土装置も開発されている。例えば、特許文献1には、オーガスクリューの羽部や軸部に付着した土砂を弾性棒状体の回転動作を利用して除去するオーガスクリューの付着物除去装置の発明が開示されている。
【0008】
簡単に説明すると(
図5参照)、掘削機本体のブームに取り付けられた振れ止め部材30の上に、当該振れ止め部材30および基台部(ドラム支持体)31を鉛直に貫通するオーガスクリュー32と直交する方向の軸33を回転軸に回転するドラム34が、オーガスクリュー32に近接して設置されている。
【0009】
また、ドラム34の外周に複数の弾性棒状体35がドラム34の軸方向に複数列に突設され、各弾性棒状体35の自由端35a側はオーガスクリュー32のスクリュー翼36の上まで伸びている。
【0010】
このような構成において、オーガスクリュー32が回転しながら上昇すると、弾性棒状体35がオーガスクリュー32のスクリュー翼36によってオーガスクリュー32の回転方向に押圧され、ドラム34が矢印方向に回転する。このとき、弾性棒状体35が上下のスクリュー翼36の間にあってスクリュー翼36や軸部の表面に付着した土砂を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2001-82065号公報
【文献】特開昭52-107103号公報
【文献】特許第2679496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1の付着土除去装置は、弾性棒状体35を備えたドラム34の設置された定位置、すなわち振れ止め部材30の上でのみ、オーガスクリュー32のスクリュー翼36等に付着した土を除去するため、オーガスクリュー32の回転と引上げを高速で行うと、土砂の取残しが発生するおそれがあり、また、このことから低速作業を強いられ、作業効率が非常に悪い等の課題があった。
【0013】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、オーガスクリューの羽部や軸部に付着した土をきわめて効率的かつ確実に、しかも安全に除去できるオーガスクリューの排土装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上方向に伸びるリーダと、前記リーダに沿って回転しながら昇降するオーガスクリューと、前記オーガスクリューをガイドするためのリング状のガイド部を有する振れ止めを備えた掘削機に据え付けられるオーガスクリューの排土装置であって、前記振れ止めに固定される一または複数の排土ブラシ支持部材と、前記排土ブラシ支持部材の上端部に、鉛直面内で回動可能に軸支され、前記オーガスクリューの軸部に向けて突出する排土ブラシを備えていることを特徴とするものである。
【0015】
前記排土ブラシは、バネ部材によりほぼ水平位置に復帰するように付勢された状態で取り付けられていることで、前記オーガスクリューの羽部および軸部に付着した土の取残しを防止して、付着土を確実に除去することができる。
【0016】
また、前記排土ブラシ支持部材が上下方向に伸縮可能に構成されていることで、前記排土ブラシ支持部材の上端部に軸支された排土ブラシが、回転しながら上昇するオーガスクリューに追従して、上昇しながら前記オーガスクリューの羽部および軸部に付着した土を除去するため、オーガスクリューの回転と引上げを高速で行うことにより、オーガスクリューの羽部や軸部に付着した土をきわめて効率的に除去することができる。
【0017】
前記排土ブラシとしては、束ねられた複数の鉄筋、鋼線、PC鋼棒、PC鋼より線、コイルまたは単一の角材を取り付け、角材には木製角材や鋼管を利用することができる。
【0018】
また、排土ブラシ支持部材としては、例えば、外柱と前記外柱の鉛直軸方向にスライドする内柱とから構成することができ、外柱と内柱には、いずれも円形または矩形の鋼管を用いることができる。
【0019】
なお、前記排土ブラシ支持部材が上下方向に伸縮する構成とする代わりに、振れ止めが回転しながら上昇するオーガスクリューに追従して、リーダに沿って昇降する構成にしてもよい。
【0020】
また、いずれの発明においても、電気浸透工法を併用することができる。すなわち、オーガスクリューまたは地面の一方に陰極、他方に陽極をそれぞれ設置してオーガスクリューに直流電流を流すと、電気浸透の原理によってオーガスクリューの表面に水分が集まることにより、オーガスクリューの羽部および軸部に付着した土の付着力が低減されることにより、排土装置による排土作業をさらに効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のオーガスクリューの排土装置によれば、特に排土ブラシが、回転しながら上昇するオーガスクリューに追従して上昇しながら、オーガスクリューの羽部および軸部に付着した土を除去するため、オーガスクリューの回転と引上げを高速で行うことにより、オーガスクリューの羽部や軸部に付着した土をきわめて効率的にかつ確実に除去することができる。また、作業時に、作業者が回転するオーガスクリューに近づく必要もないので、作業員の安全性も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るオーガスクリューの排土装置の一実施形態を図示したものであり、図(a)は平面図、図(b),(c)はそれぞれ図(a)におけるa-a線矢視図、b-b線矢視図である。
【
図2】
図1に図示する排土装置の拡大側面図である。
【
図3】図(a)~(e)は、
図1に図示するオーガスクリューの排土装置によるオーガスクリューの羽部および軸部に付着した土を排土する方法を示す説明図である。
【
図4】図(a)~(e)は、排土ブラシが振れ止めと共に昇降するオーガスクリューの排土装置によるオーガスクリューの羽部および軸部に付着した土を排土する方法を示す説明図である。
【
図5】オーガスクリューの排土装置の一従来例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1~
図3は、本発明の一実施形態であり、オーガスクリューと当該オーガスクリューの羽部や軸部の表面に付着した土を除去するオーガスクリューの排土装置(以下「排土装置」)を備えた杭打ち機を図示したものである。
【0024】
図において、杭打ち機1は、杭打機の本体に鉛直に据え付けられたリーダ2と、当該リーダ2の前面にリーダ2に沿って鉛直に据え付けられ、かつリーダ2に沿って回転しながら昇降するオーガスクリュー3を備えている。
【0025】
また、リーダ2の下端部にオーガスクリュー3の横振れを防止する振れ止め4を備え、当該振れ止め4にオーガスクリュー3の羽部3aおよび軸部3bの表面に付着した土を除去する排土装置5を備えている。
【0026】
振れ止め4は、オーガスクリュー3が鉛直に貫通する円筒形状に形成されたガイド部4aを備え、リーダ2の下端部に脱着可能に取り付けられている。そして、当該振れ止め4のガイド部4aによって、オーガスクリュー3がリーダ2に沿って回転しながら昇降する時の横振れが防止されるようになっている。
【0027】
排土装置5は、振れ止め4の側部に鉛直に立て付けられた排土ブラシ支持部材(以下「支柱」)6と、当該支柱6を振れ止め4の側部に脱着可能に固定する固定具7と、オーガスクリュー3の羽部3aおよび軸部3bの表面に付着した土を除去する排土ブラシ8を備え、オーガスクリュー3の両側に対称に据え付けられている。
【0028】
支柱6は、外柱6aと当該外柱6a内に内接する内柱6bを備え、内柱6bが外柱6a内を外柱6aの鉛直軸方向にスライドすることにより鉛直軸方向に自由に伸縮するように構成されている。なお、外柱6aと内柱6bは円形または角形の鋼管から形成されている。
【0029】
排土ブラシ8は、複数の棒状材(鋼線を含む)8a,…と当該複数の棒状材8a,…の一端側を束ねるホルダー8bを備えて矩形状または円形状の断面形状に構成され、またホルダー8bの後端部に内柱6bの上端部に締結ボルト9によってボルト締結されたブラケット8cが突設されている。
【0030】
棒状材8a,…は、鋼線または小径の鉄筋やPC鋼棒、PC鋼より線、或いは鉄筋、スプリングコイル、さらには角形鋼管などの単一角材などから形成され、その一端側がホルダー8b内に挿入され、かつホルダー8b内に固定されている。
【0031】
ホルダー8bは矩形または円形の鋼管から形成され、その側部にホルダー8b内に挿入された複数の棒状材8a,…の端部をホルダー8b内に固定する固定ボルト10が脱着可能に締め付けられている。
【0032】
このように構成された排土ブラシ8は、オーガスクリュー3の軸部3bと交差する方向に配置され、オーガスクリュー3の羽部3aの上面および軸部3bの側面に沿って接する状態で配置され、かつ締結ボルト9を軸に上下方向に回動可能に配置されている。
【0033】
また、排土ブラシ8は、当該排土ブラシ8と支柱6間に斜めに張設されたバネ部材(以下「引張りバネ」)11によってほぼ水平位置に復帰するように付勢されており、これにより排土ブラシ8は、羽部3aの上面および軸部3bの側面に常に押し付けられている。なお、排土ブラシ8は支柱6に上下複数段に設置されていてもよい。
【0034】
このような構成において、オーガスクリュー3が正回転または逆回転することにより、排土ブラシ8によって羽部3aおよび軸部3bに付着した土がかき落される。
【0035】
また、オーガスクリュー3が正回転または逆回転しながら上昇すると、排土ブラシ8は、回転しながら上昇するオーガスクリュー3に追従して上昇しながら羽部3aおよび軸部3bの表面に付着した土をかき落とす。これにより、オーガスクリュー3の羽部3aおよび軸部3bの表面に付着した土をきわめて効率的にかつすることができる。
【0036】
この場合、支柱6の内柱6bが外柱6a内を鉛直軸方向にスライドして、支柱6が鉛直軸方向に伸縮することにより、排土ブラシ8は回転しながら上昇するオーガスクリュー3に追従して上昇することができる。
【0037】
こうして、支柱6が伸び切って排土ブラシ8が上限まで上昇したら、排土ブラシ8は締結ボルト9を軸に上方に回動してオーガスクリュー3の羽部3aをかわし、支柱6の内柱6bが元の高さまでに下降し、そして引張りバネ11の張力によって排土ブラシ8は元の状態にリセットされる。なお、排土ブラシ8のこの一連の動作は遠隔操作或いは完全な自動によってなされる。
【0038】
図4(a)~(d)は、請求項4に係る発明の一実施形態であって、特に排土ブラシが、リーダに沿って昇降する振れ止めと共に上昇するように構成されたオーガスクリューの排土装置を図示したものである。
【0039】
図において、特に振れ止め4がリーダ2に当該リーダ2に沿って昇降可能に設置され、当該振れ止め4にオーガスクリューの排土装置(以下「排土装置」)12が据え付けられている。
【0040】
排土装置12は、振れ止め4の側部に鉛直に立て付けられた排土ブラシ支持部材(以下「支柱」)13と、当該支柱13を振れ止め4の側部に脱着可能に固定する固定具7と、オーガスクリュー3の羽部3aおよび軸部3bの表面に付着した土を除去する排土ブラシ8を備えている。
【0041】
支柱13は、矩形状または円形状の鋼管から形成され、上端部に排土ブラシ8が取り付けられている。
【0042】
このような構成において、オーガスクリュー3が正回転または逆回転することにより、排土ブラシ8によって羽部3aおよび軸部3bの表面に付着した土がかき落される。
【0043】
また特に、オーガスクリュー3が回転しながら上昇すると、排土ブラシ8は回転しながら上昇するオーガスクリュー3に追従して上昇しながら羽部3aおよび軸部3bの表面に付着した土をより確実にかき落とす。これにより、オーガスクリュー3の羽部3aおよび軸部3bの表面に付着した土をきわめて効率的に除去することができる。
【0044】
この場合、振れ止め4が、回転しながら上昇するオーガスクリュー3に追従して上昇することで、排土ブラシ8はオーガスクリュー3に追従して上昇することができる。
【0045】
こうして、排土ブラシ8が振れ止め4と共にある程度まで上昇したら、排土ブラシ8は、締結ボルト9を軸に上方に回動してオーガスクリュー3の羽部3aをかわし、振れ止め4と共に元の位置まで下降する。また、引張りバネ11の張力によって元の状態にリセットされる。排土ブラシ8のこの一連の動作は遠隔操作或いは完全な自動によってなされる。
【0046】
なお、いずれの実施形態においても、電気浸透工法を併用することができる。すなわち、オーガスクリュー3または地面の一方に陰極、他方に陽極をそれぞれ設置してオーガスクリュー3に直流電流を流すと、電気浸透の原理によってオーガスクリュー3の表面に水分が集まることにより、オーガスクリュー3の羽部3aおよび軸部3bに付着した土の付着力が低減することにより、排土装置による排土を効率的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、掘削や地盤改良などでオーガスクリューの羽部や軸部に付着した土をきわめて効率的かつ確実に、しかも安全に除去することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 杭打ち機
2 リーダ
3 オーガスクリュー
3a 羽部
3b 軸部
4 振れ止め
4a ガイド部
5 オーガスクリューの排土装置
6 支柱(排土ブラシ支持部材)
6a 外柱
6b 内柱
7 固定具
8 排土ブラシ
8a 棒状材
8b ホルダー
8c ブラケット
9 締結ボルト
10 固定ボルト
11 引張りバネ(バネ部材)
12 オーガスクリューの排土装置
13 支柱(排土ブラシ支持部材)