(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】口内X線撮影用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 6/14 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
A61B6/14 301
(21)【出願番号】P 2020096574
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019164501
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020088737
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】503110451
【氏名又は名称】株式会社フラット
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕
(72)【発明者】
【氏名】里見 智恵子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寿延
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-147805(JP,U)
【文献】実開昭52-056569(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0279976(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0071809(US,A1)
【文献】特表2014-528273(JP,A)
【文献】特開平3-16558(JP,A)
【文献】国際公開第2010/098498(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の歯で挟持可能な挟持部と、X線の照射方向を決める際の基準となる基準部と、前記挟持部と前記基準部の間で延びるアーム部と、X線検出媒体を保持する保持部を備え、前記基準部を口外に配した状態で使用する口内X線撮影用器具であって、
前記基準部は、複数の基準部側係合部を有し、
前記アーム部は、アーム側係合部を有し、
前記アーム側係合部と、複数の前記基準部側係合部から選択した一の前記基準部側係合部とを係合させて、前記アーム部に前記基準部を取り付けるものであり、
前記アーム側係合部と係合させる前記基準部側係合部を変更することで、前記保持部に対する前記基準部の向きを変更可能であ
り、
複数の基準部側係合部は、第一リング側係合部と、第二リング側係合部と、第三リング側係合部であり、
前記アーム側係合部と前記第一リング側係合部を係合させることで、前記基準部が基準姿勢となり、
前記アーム側係合部と前記第二リング側係合部を係合させることで、前記基準部が近心側姿勢となり、
前記アーム側係合部と前記第三リング側係合部を係合させることで、前記基準部が遠心側姿勢となり、
前記基準姿勢から前記遠心側姿勢にすると、前記基準部が、基準姿勢から近心側姿勢にした場合とは逆方向にずれることを特徴とする口内X線撮影用器具。
【請求項2】
前記基準部は、円環状に連続しており、
前記第一リング側係合部から、前記基準部の周方向の一方側に所定角度だけ離れた位置に前記第二リング側係合部が設けられ、前記第一リング側係合部から前記基準部の周方向の逆側に前記所定角度だけ離れた位置に第三リング側係合部が設けられており、
前記第一リング側係合部と、前記第二リング側係合部及び前記第三リング側係合部とは、前記アーム側係合部と係合する部分の延び方向が異なり、
前記第一リング側係合部は、前記アーム側係合部と係合する部分の延び方向に延びる仮想線と前記基準部の開口面と同一平面となる面のなす角が90度となるように形成され、
前記第二リング側係合部及び前記第三リング側係合部は、前記アーム側係合部と係合する部分の延び方向に延びる仮想線と前記基準部の開口面と同一平面となる面のなす角が鋭角となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の口内X線撮影用器具。
【請求項3】
前記挟持部は、上下の歯で挟持された状態で外側から歯が当接する当接部を有し、
前記当接部には、所定方向に延びる第一溝と、前記第一溝と交差する方向に延びる第二溝とを含む複数の溝部分が形成されており、前記当接部の外側部分が前記溝部分による凹凸形状を有することを特徴とする
請求項1又は2に記載の口内X線撮影用器具。
【請求項4】
複数の前記第一溝と複数の前記第二溝が一連の格子状の溝を形成することを特徴とする請求項
3に記載の口内X線撮影用器具。
【請求項5】
前記挟持部は、使用時の上下方向で前記当接部の逆側に咬合ピースを保持するピース保持部を有し、
前記当接部は、外側に向かって凸となるように突出しており、前記溝部分によって断続する山なりの曲面を突出端側に有
し、且つ、中央部分から縁部分にかけて突出長さが短くなっていくことを特徴とする請求項
3又は4に記載の口内X線撮影用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口内法X線撮影で好適に使用可能な口内X線撮影用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科医療の現場では、患者の歯の状態を確認するための手法として、口内のX線撮影が広く行われている。このようなX線撮影の撮影手法として、口の中に感光体を入れ、外部からX線を照射して感光体を感光させる口内法が広く知られている。
【0003】
口内法で使用する器具として、例えば、特許文献1に開示された歯科用X線撮影具が知られている。
【0004】
特許文献1に開示された歯科用X線撮影具は、X線フィルムを保持するフィルム押さえバネと、X線管(X線装置のコーン)を位置決めする際に基準となる案内リングを備えており、これらが保定板の一端側と他端側にそれぞれ配されている。
【0005】
この歯科用X線撮影具は、フィルム押さえバネに保持されたX線フィルムを患者(被撮影者)の口内に配し、保定板の一端側となるフィルム押さえバネ側の一部を患者の上下歯で咬んだ状態で使用する。このとき、保定板が患者の口内から口外まで延びた状態となり、案内リングが患者の口外に配された状態となる。そして、撮影者は、案内リングの位置にX線管の位置を合わせ、X線を照射して撮影を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、医療現場等で口内X線撮影を行うとき、隣接する2つの歯それぞれの歯冠部の近接面同士や、歯根部分同士が重なって写ってしまい、医師が確認したい部分が写らず、撮り直しを行う場合があった。
【0008】
このような撮り直しを行う場合、X線の照射方向を微調整する必要がある。すなわち、最初に撮影した状態(
図30(a)参照)から、患者に口を開いてもらい、X線撮影具300の全体の姿勢を僅かに変更する。
【0009】
具体的には、例えば、X線の照射方向(
図30の矢印で示す方向)を照射元が歯の近心側に寄るように傾ける場合、案内リング301が歯の近心側に僅かに近づくようにX線撮影具300の全体の姿勢を変更する(
図30(b)参照)。これに対し、X線の照射方向(
図30の矢印で示す方向)を照射元が歯の遠心側に寄るように傾ける場合、案内リング301が歯の遠心側に僅かに近づくようにX線撮影具300の全体の姿勢を変更する(
図30(c)参照)といった具合である。
【0010】
いずれにしても、患者に口を開いてもらい、X線撮影具300の全体の姿勢を微調整する作業を行った後、再度患者にX線撮影具300を噛んでもらう必要がある。そして、その後、案内リング301の位置にX線管302の位置を合わせ、再度撮影を実施する。
【0011】
しかしながら、X線撮影具300全体を僅かに動かして姿勢を微調整する再撮影の準備作業は、熟練が必要となる作業であり、熟練者が行う必要があった。このため、準備作業の手間を軽減可能であり、熟練者ではない者でも作業が可能となる撮影用器具が望まれていた。
【0012】
また、人の歯は、前歯と奥歯で大きく形状が異なるため、従来のX線撮影具は、奥歯撮影用のものと前歯撮影用のものをそれぞれ形成し、これらを使い分ける必要があった。すなわち、奥歯撮影用のものは、奥歯の上下歯で噛む場合にしっかりと咬持させることが可能であるが、前歯の上下歯で噛む場合にしっかりと咬持させることできなかった。反対に前歯撮影用のものは、前歯の上下歯で噛む場合にしっかりと咬持させることが可能であるが、奥歯の上下歯で噛む場合にしっかりと咬持させることできなかった。
【0013】
そこで本発明は、口内X線撮影において、さまざまな歯の撮影に使用可能な汎用性の高い口内X線撮影用器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、上下の歯で挟持可能な挟持部と、X線の照射方向を決める際の基準となる基準部と、前記挟持部と前記基準部の間で延びるアーム部と、X線検出媒体を保持する保持部を備え、前記基準部を口外に配した状態で使用する口内X線撮影用器具であって、前記基準部は、複数の基準部側係合部を有し、前記アーム部は、アーム側係合部を有し、前記アーム側係合部と、複数の前記基準部側係合部から選択した一の前記基準部側係合部とを係合させて、前記アーム部に前記基準部を取り付けるものであり、前記アーム側係合部と係合させる前記基準部側係合部を変更することで、前記保持部に対する前記基準部の向きを変更可能であり、複数の基準部側係合部は、第一リング側係合部と、第二リング側係合部と、第三リング側係合部であり、前記アーム側係合部と前記第一リング側係合部を係合させることで、前記基準部が基準姿勢となり、前記アーム側係合部と前記第二リング側係合部を係合させることで、前記基準部が近心側姿勢となり、前記アーム側係合部と前記第三リング側係合部を係合させることで、前記基準部が遠心側姿勢となり、前記基準姿勢から前記遠心側姿勢にすると、前記基準部が、基準姿勢から近心側姿勢にした場合とは逆方向にずれることを特徴とする口内X線撮影用器具である。
請求項2に記載の発明は、前記基準部は、円環状に連続しており、前記第一リング側係合部から、前記基準部の周方向の一方側に所定角度だけ離れた位置に前記第二リング側係合部が設けられ、前記第一リング側係合部から前記基準部の周方向の逆側に前記所定角度だけ離れた位置に第三リング側係合部が設けられており、前記第一リング側係合部と、前記第二リング側係合部及び前記第三リング側係合部とは、前記アーム側係合部と係合する部分の延び方向が異なり、前記第一リング側係合部は、前記アーム側係合部と係合する部分の延び方向に延びる仮想線と前記基準部の開口面と同一平面となる面のなす角が90度となるように形成され、前記第二リング側係合部及び前記第三リング側係合部は、前記アーム側係合部と係合する部分の延び方向に延びる仮想線と前記基準部の開口面と同一平面となる面のなす角が鋭角となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の口内X線撮影用器具である。
請求項3に記載の発明は、前記挟持部は、上下の歯で挟持された状態で外側から歯が当接する当接部を有し、前記当接部には、所定方向に延びる第一溝と、前記第一溝と交差する方向に延びる第二溝とを含む複数の溝部分が形成されており、前記当接部の外側部分が前記溝部分による凹凸形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の口内X線撮影用器具である。
請求項4に記載の発明は、複数の前記第一溝と複数の前記第二溝が一連の格子状の溝を形成することを特徴とする請求項3に記載の口内X線撮影用器具である。
請求項5に記載の発明は、前記挟持部は、使用時の上下方向で前記当接部の逆側に咬合ピースを保持するピース保持部を有し、前記当接部は、外側に向かって凸となるように突出しており、前記溝部分によって断続する山なりの曲面を突出端側に有し、且つ、中央部分から縁部分にかけて突出長さが短くなっていくことを特徴とする請求項3又は4に記載の口内X線撮影用器具である。
本発明に関連する発明は、上下の歯で挟持可能な挟持部と、X線の照射方向を決める際の基準となる基準部と、前記挟持部と前記基準部の間で延びるアーム部と、X線検出媒体を保持する保持部を備え、前記基準部を口外に配した状態で使用する口内X線撮影用器具であって、前記挟持部は、上下の歯で挟持された状態で外側から歯が当接する当接部を有し、前記当接部には、所定方向に延びる第一溝と、前記第一溝と交差する方向に延びる第二溝とを含む複数の溝部分が形成されており、前記当接部の外側部分が前記溝部分による凹凸形状を有することを特徴とする口内X線撮影用器具である。
【0015】
本発明の関連発明の口内X線撮影用器具は、挟持部を前歯の上下歯で噛む場合と、奥歯の上下歯で噛む場合のそれぞれにおいて、しっかりと咬持させることが可能となる。
【0016】
上記した関連発明の口内X線撮影用器具は、複数の前記第一溝と複数の前記第二溝が一連の格子状の溝を形成することが好ましい。
【0017】
上記した関連発明は、前記当接部は、外側に向かって凸となるように突出しており、前記溝部分によって断続する山なりの曲面を突出端側に有することが好ましい。
【0018】
かかる構成によると、前歯で噛む場合と、奥歯で噛む場合のそれぞれにおいて、凹凸形状を有する部分をよりしっかりと歯の凹凸部分に当接させることができるので、好ましい。
【0019】
この好ましい態様の口内X線撮影用器具は、前記当接部は、中央部分から縁部分にかけて突出長さが短くなっていくことがさらに好ましい。
【0020】
上記した関連発明は、前記基準部は、複数の基準部側係合部を有し、前記アーム部は、アーム側係合部を有し、前記アーム側係合部と、複数の前記基準部側係合部から選択した一の前記基準部側係合部とを係合させて、前記アーム部に前記基準部を取り付けるものであり、前記アーム側係合部と係合させる前記基準部側係合部を変更することで、前記保持部に対する前記基準部の向きを変更可能であることが好ましい。
【0021】
かかる構成によると、患者(被撮影者)に挟持部を噛んでもらった状態で基準部の位置調整を行うことが可能となり、X線の照射方向の調整が容易である。さらに、口内に配した部分を動かさずに基準部の位置調整ができるため、患者に不快感を感じさせることなく基準部の位置調整が可能となる。
【0022】
本発明は、上下の歯で挟持可能な挟持部と、X線の照射方向を決める際の基準となる基準部と、前記挟持部と前記基準部の間で延びるアーム部と、X線検出媒体を保持する保持部を備え、前記基準部を口外に配した状態で使用する口内X線撮影用器具であって、前記基準部は、複数の基準部側係合部を有し、前記アーム部は、アーム側係合部を有し、前記アーム側係合部と、複数の前記基準部側係合部から選択した一の前記基準部側係合部とを係合させて、前記アーム部に前記基準部を取り付けるものであり、前記アーム側係合部と係合させる前記基準部側係合部を変更することで、前記保持部に対する前記基準部の向きを変更可能である。
【0023】
また、上記した従来技術を踏まえ、口内X線撮影における撮影者の手間を軽減可能な口内X線撮影用器具を提供することを課題とする本発明の関連発明は、上下の歯で挟持可能な挟持部と、基準部と、前記挟持部と前記基準部の間で延びるアーム部と、X線検出媒体を保持する保持部を備え、前記基準部を口外に配した状態で使用する口内X線撮影用器具であって、前記基準部は、外部装置から照射されるX線の照射方向を決める際の基準となる部分であり、前記挟持部が上下の歯で挟持された状態で、前記基準部が前記アーム部と共に前記挟持部に対して近心側から遠心側、又は、遠心側から近心側に回動するものであり、前記基準部と前記アーム部が回動するとき、前記保持部が前記基準部との相対位置を維持したまま前記基準部と共に回動することを特徴とする口内X線撮影用器具である。
【0024】
関連発明の口内X線撮影用器具は、基準部がアーム部と共に挟持部に対して近心側から遠心側、又は、遠心側から近心側に回動するので、患者(被撮影者)に挟持部を噛んでもらった状態で基準部の位置調整を行うことが可能となる。
すなわち、口内X線撮影用器具の全体を動かして調整しなくても、基準部の位置調整が可能であり、X線の照射方向の調整が容易になるので、口内X線撮影における撮影者の手間を軽減できる。
さらに、この関連発明では、基準部の位置調整の前後で、基準部と、X線検出媒体を保持する保持部の相対位置が維持される。すなわち、基準部の位置調整の前後で、基準部に合わせて定めたX線の照射方向とX線検出媒体の交差角度が維持されることとなる。このことから、撮影者は、基準部の位置調整した後、基準部に合わせてX線の照射方向を定めるだけで、歪みを抑制した正確な撮影が可能となる。
【0025】
上記した関連発明は、前記挟持部と前記アーム部の一方にガイド突起部が設けられると共に、他方にガイド受部が設けられており、前記ガイド突起部は、前記ガイド受部の一部に挿入されており、前記アーム部の回動に伴って前記ガイド突起部と前記ガイド受部の一方が他方に対して相対移動し、前記ガイド突起部の挿入位置が変更されるものであり、前記ガイド受部は、複数個所に前記ガイド突起部を保持する突起保持領域が設けられており、前記相対移動によって前記ガイド突起部が一の前記突起保持領域に保持された状態から、他の前記突起保持領域に保持された状態に移行することが好ましい。
【0026】
かかる構成では、アーム部を回動させる際、回動に伴ってガイド突起部をガイド受部の複数の突起保持領域のいずれかに保持させる。このことにより、アーム部の回動停止位置を規定された複数位置のいずれかの位置とすることができる。
すなわち、アーム部を一の規定位置から他の規定位置まで回動させることで、アーム部を所定角度ずつ回動させることが可能となり、基準部の位置調整がより容易となる。
【0027】
上記した好ましい様相は、前記ガイド受部は、隣接する部分よりも隆起する規制部を有し、前記規制部は、前記アーム部が回動するとき、前記ガイド突起部と接触して前記相対移動を規制する部分であり、一定以上の力で前記アーム部を回動させることで、前記規制部が前記ガイド突起部によって一時的に押しやられ、又は、前記ガイド突起部の前記相対移動の方向が変更されて規制解除されることがさらに好ましい。
【0028】
かかる構成によると、意図しないアーム部の回動を阻止できる。
【0029】
上記した関連発明は、前記挟持部は、上下の歯で挟持された状態で外側から歯が当接する当接部を有し、前記当接部の外側部分には、所定方向に延びる第一溝と、前記第一溝と交差する方向に延びる第二溝とを含む複数の溝部分が形成され、当該溝部分によって前記当接部の外側面に凹凸面が形成されていることが好ましい。
【0030】
かかる構成によると、挟持部を前歯の上下歯で噛む場合と、奥歯の上下歯で噛む場合のいずれにおいても、しっかりと咬持させることが可能であり、好ましい。
【0031】
上記した構成の口内X線撮影用器具は、複数の前記第一溝と複数の前記第二溝が一連の格子状の溝を形成していることがさらに好ましい。
【0032】
上記した関連発明は、前記挟持部は、上下の歯で挟持された状態で外側から歯が当接する当接部を有し、前記当接部の外側部分は、中央部が周縁部分に比べて外側に大きく膨らんだ形状であることが好ましい。
【0033】
かかる構成においても、挟持部を前歯の上下歯で噛む場合と、奥歯の上下歯で噛む場合のいずれにおいても、しっかりと咬持させることが可能であり、好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、さまざまな歯の撮影に使用可能な汎用性の高い口内X線撮影用器具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るインジケータに対し、咬合ピースとX線感光体を取り付けた様子を示す斜視図である。
【
図2】
図1のインジケータを使用して口内X線撮影を行う様子を示す説明図である。
【
図3】
図1のインジケータを示す分解斜視図である。
【
図4】
図3のインジケータを天地逆として示す分解斜視図である。
【
図5】
図3のアーム基端部を示す斜視図であり、ガイド孔部を拡大して示す。
【
図6】
図5のガイド孔部を示す平面図であり、(a)は、ガイド突起部が挿通されていない状態を示し、(b)乃至(d)はそれぞれ異なる保持領域にガイド突起部が挿通されている状態を示す。
【
図7】
図3のピース保持部を示す斜視図であり、(a)は上方からみた様子を示し、(b)は下方からみた様子を示す。
【
図8】
図3の上下歯当接部を示す斜視図であり、(a)は上方からみた様子を示し、(b)は下方からみた様子を示す。
【
図9】(a)は、
図1の挟持部及びアーム基端部を示すA-A断面図であり、咬合ピース及び保持クリップを省略して示す図であって、(b)は、(a)を分解して示す説明図である。
【
図10】
図1のインジケータを回動させる様子を模式的に示す説明図であって、左図は下歯に対するインジケータの位置を示す図であり、右図はアーム基端部に対するガイド突起部の位置を示す図である。また、(a)は、移動前の状態を示し、(b)は、(a)で示す状態から案内リングを近心側に移動させた様子を示し、(c)は、(a)で示す状態から案内リングを遠心側に移動させた様子を示す。
【
図11】
図10(a)の状態から
図10(b)の状態へ移行させる途中の様子を示す説明図であって、左図は下歯に対するインジケータの位置を示す図であり、右図はアーム基端部に対するガイド突起部の位置を示す図である。
【
図12】(a)は、
図1のインジケータを前歯のX線撮影に使用する様子を模式的に示す説明図であり、(b)は、
図1のインジケータを奥歯のX線撮影に使用する様子を模式的に示す説明図である。
【
図13】(a)は、
図1のインジケータの挟持部を上下の前歯で咬持している様子を模式的に示す説明図であり、(b)は、
図1のインジケータの挟持部を上下の奥歯で咬持している様子を模式的に示す説明図である。
【
図14】挟持部取付部材と上下歯当接部をアーム基端部に対して上下方向に相対移動可能とした実施形態を示す説明図である。(a)は、挟持部取付部材と上下歯当接部をアーム基端部に対して最も下側に移動させた状態を示し、(b)は、挟持部取付部材と上下歯当接部をアーム基端部に対して最も上側に移動させた様子を示す。
【
図15】本発明の第二実施形態に係るインジケータを示す分解斜視図である。
【
図16】(a)は、
図15のアーム基端部の周辺を示す斜視図であって、一つのガイド凹部を拡大して示す図であり、(b)は、(a)のガイド凹部を幅方向の中心位置で切断した状態を示すA-A断面図である。
【
図17】
図15のピース保持部を示す斜視図であり、(a)は上方からみた様子を示し、(b)は下方からみた様子を示す。
【
図18】挟持部をアーム基端部に対して上下方向に相対移動させる様子を示す断面図であり、(a)は、挟持部をアーム基端部に対して最も下側に移動させた状態を示し、(b)は、挟持部をアーム基端部に対して最も上側に移動させた状態を示す。
【
図19】挟持部をアーム基端部に対して上下方向に相対移動させる際のガイド突起部とガイド凹部の位置関係を模式的に示す断面図である。(a)は、挟持部をアーム基端部に対して最も下側に移動させた状態を示し、(b)は、挟持部をアーム基端部に対して最も上側に移動させた状態を示す。
【
図20】
図15のインジケータを回動させる様子を模式的に示す説明図であって、左図は下歯に対するインジケータの位置を示す図であり、右図はアーム基端部に対するガイド突起部の位置を黒丸で示す図である。また、(a)は、移動前の状態を示し、(b)は、(a)で示す状態から案内リングを近心側に移動させた様子を示す。
【
図21】
図20で示すインジケータの回動操作において、ガイド突起部の保持位置が移行する様子を示す説明図であり、(a)~(c)の順に移行する。
【
図22】本発明の第三実施形態に係るインジケータを示す斜視図である。
【
図23】
図22のインジケータを天地逆として示す斜視図である。
【
図24】
図22のインジケータを示す説明図であり、インジケータ本体部に案内リングを取り付ける様子を示す。
【
図25】(a)は、
図22のインジケータ本体部を示す斜視図であり、(b)は、(a)のリング取付部の周辺を拡大して示す側面図である。
【
図26】
図23の上下歯当接部を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【
図27】
図22の案内リングを直立させた姿勢とした状態を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【
図28】
図22のインジケータを示す説明図であり、(a)は、案内リングの姿勢を基準姿勢とした状態を示し、(b)は、案内リングの姿勢を近心側姿勢とした状態を示し、(c)は、案内リングの姿勢を遠心側姿勢とした状態を示す。
【
図29】(a)乃至(c)は、いずれも案内リングを直立させた姿勢とした上で、第一リング側係合部乃至第三リング側係合部のそれぞれを下側に位置させて、その周辺を示す図であり、左図が斜視図、右図が左図を上方からみた平面図である。
【
図30】従来の歯科用X線撮影具を使用して口内X線撮影を行う際、X線の照射方向を変えて撮影する様子を模式的に示す説明図であり、(a)~(c)は、それぞれ異なる照射方向で撮影する様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態に係るインジケータ1(口内X線撮影用器具)について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、上下方向については、
図1の状態を基準として説明する。
【0037】
第一実施形態のインジケータ1は、
図1で示されるように、咬合ピース2と、X線画像検出媒体3(X線検出媒体)を取り付けた状態で使用される。
【0038】
咬合ピース2は、弾性を有する略直方体状の部材であり、発泡ポリスチレン等を原料とし、X線撮影時に写り込まない部材となっている。
【0039】
X線画像検出媒体3は、X線フィルム(感光フィルム)やイメージングプレート等のX線感光体に対し、X線を透過して太陽光を遮断する遮光フィルムや、X線感光体を人の唾液から保護する保護カバー等を必要に応じて取り付けて形成されている。すなわち、X線画像検出媒体3は、目的の物質(歯及び/又はその周辺)に照射して透過したX線の情報を取得する部材である。したがって、上記したX線画像検出媒体3に替わって、X線感光体にフィルム等を装着せず、そのままX線検出媒体として使用してもよい。
【0040】
インジケータ1は、案内リング10(基準部)と、アーム部11と、挟持部12と、保持クリップ13(保持部)を有している。
【0041】
案内リング10は、円環状に連続するリング部10aと、リング部10aの一部に設けられたリング取付部10bから構成されている。
ここで、
図2で示されるように、インジケータ1を使用して口内X線撮影を行うとき、作業者は、X線装置16(外部装置)のコーン17の配置位置を調整し、照射されるX線の照射方向を定める必要がある。この案内リング10は、被撮影者の口外に配され、コーン17の配置位置を調整する際に基準となる部分である。
【0042】
すなわち、作業者は、被撮影者の口外に配された案内リング10の位置を確認することで、被撮影者の口内に配されたX線画像検出媒体3の位置を知ることができる。そして、案内リング10を基準にコーン17を適切な位置に配することで、X線画像検出媒体3に対してコーン17を適切な位置に配することが可能となる。
【0043】
アーム部11は、
図3、
図4で示されるように、アーム基端部20と連結板部21とが一体となって形成された平板状の部材である。このアーム部11は、合成樹脂製の部材であり、弾性を有する。
【0044】
アーム基端部20は、上下方向に厚さを有する平板状の部分であり、案内リング10側の一部分が略半円板状となっている。すなわち、このアーム基端部20は、案内リング10側を向く側面部分が円弧状に連続し、丸みを帯びた形状となっている。
【0045】
このアーム基端部20には、1つの第一取付孔部25と、2つのガイド孔部26(ガイド受部)が設けられている。第一取付孔部25は、開口形状が円形であり、アーム基端部20を厚さ方向に貫通する貫通孔である。
【0046】
2つのガイド孔部26は、それぞれが第一取付孔部25の開口の周方向に延びる長孔であり、平面視したとき、第一取付孔部25を挟んで対称となるように設けられている。このガイド孔部26もまた、アーム基端部20を厚さ方向に貫通する貫通孔となっている。
【0047】
ガイド孔部26の内壁部分には、
図5で示されるように、周囲よりも内側に隆起する隆起部28(規制部)が設けられている。
具体的には、ガイド孔部26の内周面の外側部分に、第一隆起部28a乃至第四隆起部28dからなる複数(4つ)の隆起部28がそれぞれ設けられ、ガイド孔部26の延び方向で間隔を空けて並列配置されている。さらに、ガイド孔部26の内周面の内側部分にもまた、第一隆起部28a乃至第四隆起部28dからなる4つの隆起部28がそれぞれ設けられ、ガイド孔部26の延び方向で間隔を空けて並列配置されている。
【0048】
すなわち、ガイド孔部26の幅方向で離れた位置にそれぞれ同数の隆起部28が設けられている。そして、2つの第一隆起部28a同士、第二隆起部28b同士、第三隆起部28c同士、第四隆起部28d同士が幅方向で離れた位置で向き合った状態(互いに近づくように隆起した状態)となっている。
ガイド孔部26のうち、幅方向で離れた2つの隆起部28が向き合っている部分は、隣接部分よりも幅の狭い狭窄部となる。すなわち、本実施形態のガイド孔部26は、複数(4つ)の狭窄部を有する。
【0049】
そして、ガイド孔部26は、
図6(a)で示されるように、4つの狭窄部によって5つの領域に区画されている。すなわち、ガイド孔部26は、第一保持領域31a乃至第五保持領域31eからなる5つの保持領域31(突起保持領域)を有する。
【0050】
ここで、このガイド孔部26は、ピース保持部36のガイド突起部48(
図4参照)が挿入される孔である(詳しくは後述する)。本実施形態では、アーム部11が回動するとき、ガイド突起部48がガイド孔部26に挿通された状態のまま、ガイド孔部26に対して相対的に移動する。
【0051】
そして、それぞれの保持領域31は、ガイド突起部48を保持可能な部分であり、ガイド突起部48が嵌まり込む部分となっている。
詳細に説明すると、
図6(a)で示されるように、第一保持領域31aと第五保持領域31eは、ガイド孔部26の延び方向における端部に形成された端部側の保持領域31となっている。そして、
図6(d)で示されるように、この端部側の保持領域31(
図6(d)では第一保持領域31a)では、ガイド突起部48は、外周面のうち、周方向で半分以上の部分がガイド孔部26の内周面と接触した状態で保持される。このガイド突起部48の外周面と密着する第一保持領域31aの内壁部分は、平面視形状が略C字状であり、2つの第一隆起部28aの一方側から他方側までの間に位置する。
【0052】
対して、
図6(b)、
図6(c)で示されるように、第二保持領域31b乃至第四保持領域31dは、ガイド孔部26の延び方向における中途部分に形成された中央側の保持領域31となっている。そして、
図6(b)で示されるように、この中央側の保持領域31(
図6(b)では第三保持領域31c)では、ガイド突起部48は、外周面のうち、周方向で離れた二個所がガイド孔部26の内周面と接触した状態で保持される。つまり、中央側の保持領域31では、ガイド孔部26の幅方向で離れた位置のそれぞれに、ガイド突起部48の外周面と密着する円弧状部分が形成されている。この円弧状部分は、隣接する2つの隆起部28(
図6(b)では第二隆起部28b、第三隆起部28c)の間であり、一方の最も隆起した部分から他方の最も隆起した部分までの間に形成される。
すなわち、隆起部28は、側面の一部が保持領域31の壁面を形成する部分となる。
【0053】
挟持部12は、使用時に人の上下歯の間に位置する部分であり、
図3、
図4で示されるように、ピース保持部36と、上下歯当接部37(当接部)と、挟持部連結部材38を有している。すなわち、詳しくは後述するが、挟持部12は、ピース保持部36、上下歯当接部37が挟持部連結部材38を介して連結することで、形成される部分である。
【0054】
ピース保持部36は、
図7で示されるように、断面形状が略コ字状で延びる部材であり、平板状の底板部41と、底板部41の幅方向で離れたそれぞれの位置から上方に突出する2つの側壁部42を有する。このことから、ピース保持部36には、2つの側壁部42の間に一つの取付溝部43が形成されており、この取付溝部43に咬合ピース2を嵌め込むことで、咬合ピース2の取り付けが可能となっている(
図1参照)。
【0055】
ここで、ピース保持部36には、底板部41を貫通する第二取付孔部47と、底板部41の下面から下方(
図7(b)では上面から上方)に突出するガイド突起部48が設けられている。
【0056】
第二取付孔部47は、
図7で示されるように、上面側に形成された開口の開口面積が、下面側に形成された開口の開口面積よりも大きくなっている。すなわち、第二取付孔部47は、孔径の異なる2つの孔を連続させた形状であり、上側孔47aと、下側孔47bに区画される(
図7(a)参照)。そして、上側孔47aの内周面と、下側孔47bの内周面の間に段差部が形成されている(
図7(a)参照)。
【0057】
2つのガイド突起部48は、いずれも略円柱状の突起であり、ピース保持部36を下方側から平面視したとき、第二取付孔部47を挟んで対称となるように設けられている。
この2つのガイド突起部48は、取付溝部43の長手方向で間隔を空けて並列配置されている。
【0058】
上下歯当接部37は、
図8で示されるように、円板状の本体部50を基準として片側(上側)に取付筒部51が形成され、その反対側(下側)に当接面部52が形成されている。この上下歯当接部37は、合成樹脂製の部材であり、弾性を有する。
【0059】
取付筒部51は、略有底円筒状の部分であり、本体部50の片側面(上面)から外側(上方)へ向かって突出する部分である。この取付筒部51の内孔51aは、上面に開口形状が円形となる開口部分が形成され、上下方向を深さ方向とする有底孔である。
【0060】
当接面部52は、使用時に被撮影者の歯が当接する部分であり、全体形状が略ドーム型となっている。すなわち、当接面部52の全体形状は、外側(下方)へ向かって丸みを帯びて凸となるように膨らんだ形状であり、中央側部分が周辺側部分に比べてより大きく膨らんだ形状となっている。
【0061】
ここで、当接面部52の外側面(下面であり、
図8(b)では上面)には、所定方向に延びる複数の第一溝55と、第一溝55と交差する(直交する)方向に延びる複数の第二溝56が形成されている。そして、これら第一溝55、第二溝56によって凹凸面が形成されている。
【0062】
詳細には、複数の第一溝55は、それぞれが同方向に延びており、延び方向と交差する(直交する)方向で間隔を空けて並列配置されている。第一溝55とは異なる方向に延びる複数の第二溝56もまた、同様に、それぞれが同方向に延び、間隔を空けて並列配置されている。以上のことから、当接面部52の外側面には、複数の第一溝55と複数の第二溝56によって格子溝が形成される。この格子溝では、一の第一溝55と一の第二溝56とが交わる部分に十字溝が形成される。
【0063】
したがって、当接面部52の外側部分には、第一溝55、第二溝56のそれぞれと隣接する部分に四角柱、又は、三角柱状の突起状部58が形成される。なお、作図の都合上、一部の突起状部58にのみ符号を付し、他への符号を省略する。
そして、複数の突起状部58が行列状に配されることで、当接面部52に凹凸面が形成される。
【0064】
挟持部連結部材38は、略円板状の頭部38aと、頭部38aの一方の主面(下面)から下方へ突出する略円柱状の軸部38bとを有し、これらが一体となって形成される部材である。
【0065】
保持クリップ13は、
図5で示されるように、アーム基端部20の片側主面(上面)から上方に突出する支持板部60と押さえ板部61から構成されている。
詳細には、これら支持板部60と押さえ板部61は、アーム基端部20と一体に形成され、ピース保持部36の取り付け位置(
図1参照)と隣接する位置に配されている。
【0066】
支持板部60と押さえ板部61は、上方に屈曲しつつ延びた立板状部分である。
押さえ板部61は、弾性を有し、支持板部60よりも薄く、支持板部60よりも幅が小さい。また、押さえ板部61は、上端側部分を一時的に支持板部60から離れる方向に移動させることが可能となっている。
すなわち、保持クリップ13は、X線画像検出媒体3を支持板部60と押さえ板部61で挟んで保持可能な部分である。
【0067】
なお、この保持クリップ13は、
図2で示されるように、案内リング10から水平方向に離れた位置に形成される。すなわち、インジケータ1では、案内リング10と、ピース保持部36と、保持クリップ13とが直線状に並んだ状態となるように配される。
したがって、X線画像検出媒体3が保持クリップ13に保持されると、X線画像検出媒体3は、リング部10aで囲まれた空間と正面で向き合う位置に配される(
図1参照)。
【0068】
続いて、本実施形態のインジケータ1の組み立て構造について説明する。
【0069】
本実施形態のインジケータ1は、
図1、
図3で示されるように、アーム基端部20の一方の主面(上面)側にピース保持部36を取り付け、他方の主面(下面)側に上下歯当接部37を取り付けている。
詳細には、
図3、
図9で示されるように、ピース保持部36の2つのガイド突起部48をそれぞれ別のガイド孔部26に挿通し、アーム基端部20の第一取付孔部25と、ピース保持部36の第二取付孔部47を重ねた状態としている。
【0070】
その一方で、
図9で示されるように、上下歯当接部37の取付筒部51を第一取付孔部25及び第二取付孔部47に挿入し、取付筒部51の上側部分を第二取付孔部47(下側孔47b)の内側に配した状態とする(
図9(a)参照)。そして、挟持部連結部材38の軸部38bを取付筒部51の内孔51aに挿入してこれらを連結し、挟持部連結部材38の頭部38aを第二取付孔部47(上側孔47a)の内側に配した状態とする。
【0071】
このことにより、上下歯当接部37とピース保持部36が挟持部連結部材38を介して連結し、挟持部12が形成される。
そして、ピース保持部36の底板部41と、上下歯当接部37の本体部50の間にアーム基端部20が位置し、これらによって挟まれた状態となる。
【0072】
この本実施形態のインジケータ1は、
図10で示されるように、被撮影者が挟持部12を軽く噛んだ状態(
図2参照)で、アーム部11を挟持部12に対して回動させることが可能となっている。このとき、アーム部11は、ピース保持部36と上下歯当接部37の位置が固定された状態(
図2等参照)で、第一取付孔部25に挿通される取付筒部51(
図9参照)を軸とし、この軸回りに回転する。つまり、アーム部11は、上下歯の一方側から他方側へ向かって縦方向に延びる回転軸を中心として回動可能となっている。
【0073】
このことにつき、
図10を参照しつつ、インジケータ1を被撮影者が左奥歯で軽く噛んで固定した状態で、アーム部11及び案内リング10を近心側、遠心側に動かす場合について説明する。なお、以下の説明において、
図10(a)で示される姿勢を基準姿勢として説明する。
【0074】
基準姿勢は、
図10(a)の右図で示されるように、2つのガイド突起部48が、いずれもガイド孔部26の中心側に保持された状態である。すなわち、2つのガイド突起部48がいずれもガイド孔部26の第三保持領域31c(
図6参照)に保持された状態となっている。また、この基準姿勢では、平面視において、リング部10aの開口面と垂直な方向に延びる仮想線L1と、取付溝部43の長手方向に延びる仮想線L2のなす角θが90度となっている。
【0075】
基準姿勢から案内リング10を近心側(歯列の前歯側)に近づける場合、
図10(b)右図で示す矢印の向きにアーム部11(アーム基端部20)を回動させる。すなわち、アーム基端部20から延びる連結板部21の基端部を歯列の外側から内側へ向かう方向に移動させる。このことにより、
図10(a)右図、
図10(b)右図で示されるように、2つのガイド孔部26でガイド突起部48の保持位置が変更される。
【0076】
すなわち、ガイド突起部48が同位置に留まった状態のまま、ガイド突起部48に対してアーム基端部20が移動することで、ガイド突起部48は、ガイド孔部26に挿入された状態を維持しつつガイド孔部26に対して相対移動する。
【0077】
このとき、
図10(b)右図で示されるように、一方のガイド孔部26(図中で上側のガイド孔部26)では、基準姿勢に比べ、ガイド突起部48の保持位置がより案内リング10側(
図10(b)右図では左側)の位置となる。
対して、他方のガイド孔部26(図中の下側のガイド孔部26)では、基準姿勢に比べ、ガイド突起部48の保持位置がより保持クリップ13側(
図10(b)右図では右側)の位置となる。
つまり、2つのガイド突起部48は、基準姿勢に比べ、いずれもガイド孔部26の延び方向でより端部側に位置する部分に保持される。
【0078】
なお、アーム基端部20の回動に伴ってガイド突起部48の保持位置が変更されるとき、2つのガイド突起部48の保持位置が同時に変更される構造となっている。つまり、一方のガイド突起部48の保持位置が変更されるとき、同時に他方の保持位置も変更される。
【0079】
ここで、ガイド孔部26は、上記したように、第一保持領域31a乃至第五保持領域31eからなる5つの保持領域31を有している(
図6(a)参照)。したがって、
図10(a)、
図10(b)で示されるように、ガイド突起部48の保持位置を変更すると、
図6(b)乃至
図6(d)で示されるように、ガイド突起部48を保持する保持領域31が変更されていく。
【0080】
このことにつき、
図6(b)乃至
図6(d)で示されるように、ガイド突起部48が第三保持領域31cに保持された状態から、第一保持領域31aに保持された状態へ移行する場合について説明する。
【0081】
この場合、ガイド突起部48は、第三保持領域31cに保持された状態から第二保持領域31bに保持された状態に移行し、その後に第一保持領域31aに保持された状態に移行する。すなわち、ガイド突起部48を保持する保持領域31は、並び順に一つずつ切り替わっていく。
【0082】
なお、ガイド突起部48が第三保持領域31cに保持された状態から第二保持領域31bに保持された状態に移行しようとするとき、2つの第二隆起部28bがガイド突起部48の相対移動を規制する規制部として機能する。すなわち、一定以上の力を加えてアーム基端部20を回動させない限り(
図10参照)、この2つの第二隆起部28bがガイド突起部48に当接して回動が阻止される構造となっている。このことにより、アーム部11(アーム基端部20)の意図しない回動を阻止できる。
【0083】
その一方で、一定以上の力を加えてアーム基端部20を回動させると、ガイド孔部26が一時的に弾性変形し(図示しない)、2つの第二隆起部28bが互いに離れる方向へ移動して規制が解除される。つまり、ガイド突起部48がガイド孔部26に対して相対移動するとき、2つの第二隆起部28bがそれぞれ外側(ガイド孔部26の幅方向外側)に一時的に押しやられ、ガイド突起部48が2つの第二隆起部28bの間を通過するように相対移動する。そして、ガイド突起部48が第二保持領域31bに嵌まり込んだ状態となる。すなわち、ガイド突起部48が第二保持領域31bに挿入された状態となり、一時的に変形していたガイド孔部26が元の形状に戻る(図示しない)。
【0084】
このことから、ガイド突起部48が第二保持領域31bに嵌まり込む際、アーム基端部20を回動させた者は「カチッ」という節度感を感じる。つまり、ガイド突起部48とガイド孔部26は、一方の他方に対する相対移動に応じて異なる位置で係合し、係合に伴って節度感を生じさせる(使用者に節度感を与える)係止構造(保持構造)を有する。
【0085】
第二保持領域31bから第一保持領域31a保持された状態に移行する場合も同様に、ガイド突起部48が2つの第一隆起部28aの規制に抗して相対移動する。そして、第一保持領域31aに嵌まり込むとき、使用者に「カチッ」という節度感を感じさせる。
また、逆向きにアーム基端部20を回動させる場合も同様に、ガイド突起部48が2つの隆起部28の規制に抗して相対移動し、隣の保持領域31に嵌まり込むとき、使用者に「カチッ」という節度感を感じさせる。
【0086】
以上のことから、本実施形態のインジケータ1は、アーム部11を少しずつ所定の回転角度(本実施形態では5度)で、回動させることができる。
【0087】
すなわち、上記したように、基準姿勢(
図10(a)参照)から案内リング10を近心側に近づけるとき、使用者が節度感を感じるまでアーム部11(アーム基端部20)を回動させる。この場合、
図11で示されるように、2つのガイド孔部26のそれぞれで、ガイド突起部48を保持する保持領域31が一つ隣の保持領域31に移行した状態となる。このことにより、仮想線L1と仮想線L2のなす角のうち、前歯側のなす角θ1が85度となる。つまり、アーム基端部20が回転角5度で回転する。
【0088】
この状態から使用者が節度感を感じるまで、さらにアーム部11を同方向に回動させると、
図10(b)で示されるように、2つのガイド孔部26のそれぞれで、ガイド突起部48を保持する保持領域31がさらにもう一つ隣の保持領域31に移行する。
このことにより、仮想線L1と仮想線L2のなす角のうち、前歯側のなす角θ2が80度となる。つまり、アーム基端部20がさらに回転角5度で回転し、基準姿勢から回転角10度で回転した状態となる。
【0089】
また、基準姿勢(
図10(a)参照)から案内リング10を遠心側(歯列の奥歯側)に近づける場合、近心側に近づける場合とは逆向きにアーム部11(アーム基端部20)を回動させる。すなわち、
図10(c)右図で示す矢印の向きであり、連結板部21の基端部を歯列の内側から外側へ向かう方向に移動させる。
【0090】
このとき、基準姿勢から使用者が節度感を感じるまでアーム部11(アーム基端部20)を回動させることで、2つのガイド孔部26でガイド突起部48の保持位置が変更され、アーム部11が回転角5度で回転した状態となる(図示しない)。
そして、この状態からさらにアーム部11を同方向に回動させると、
図10(c)で示されるように、2つのガイド孔部26のそれぞれで、ガイド突起部48を保持する保持領域31がさらにもう一つ隣の保持領域31に移行した状態となる。
このことにより、仮想線L1と仮想線L2のなす角のうち、前歯側のなす角θ3が100度となる。つまり、アーム基端部20がさらに回転角5度で回転し、基準姿勢から回転角10度で回転した状態となる。
【0091】
このように、アーム部11を予め規定された所定角度(本実施形態では5度)で少しずつ回転させることが可能な構造とすると、案内リング10の位置調整が容易である。
また、上記したように、本実施形態では、案内リング10が固定されるアーム部11(アーム基端部20、連結板部21)と保持クリップ13が一体に形成されている(
図3参照)。したがって、
図10で示されるように、案内リング10の回動に伴って保持クリップ13が同時に回動する。このとき、案内リング10と保持クリップ13の相対位置が維持されたままこれらが共に回動するので、案内リング10が移動しても、案内リング10と、保持クリップ13に保持されるX線画像検出媒体3(
図1参照)との相対位置が維持される。つまり、案内リング10が移動しても、X線画像検出媒体3は、リング部10aで囲まれた空間と正面で向き合う状態が維持される(
図1参照)。
【0092】
ここで、X線の照射方向(
図10の左図において矢印で示す方向)と、X線画像検出媒体3の交差角度(
図10では90度)が変更されると、得られた画像において像が歪んで写る(例えば、歯が引き延ばされて写る)といった事態が生じる。
しかしながら、本実施形態では、上記したように、X線の照射方向の基準となる案内リング10とX線画像検出媒体3の相対位置が維持されるので、移動させた案内リング10にコーン17を合わせるだけで(
図2参照)、歪みを抑制した正確な撮影が可能となる。
【0093】
本実施形態のインジケータ1は、
図12で示されるように、上下の前歯で噛むことで前歯のX線撮影で使用可能であり、上下の奥歯で噛むことで奥歯のX線撮影に使用可能である。つまり、従来のように、奥歯用のインジケータと前歯用のインジケータをそれぞれ用意して使い分ける必要がなく、X線撮影時における作業者の利便性が向上する。
なお、付言すると、本実施形態のインジケータ1は、図示を省略するが、天地逆の姿勢で被撮影者に噛んでもらうことで、上歯側のX線撮影だけでなく、下歯側のX線撮影にも使用可能である。
【0094】
ここで本実施形態のインジケータ1は、
図13で示されるように、挟持部12の片側に上下歯当接部37を有しており、上記したように、歯が当接する当接面部52の全体形状が略ドーム型であって、当接面部52の表面に格子溝が形成されている。
このことから、挟持部12を被撮影者が上下の前歯で軽く噛んだ状態(
図13(a)参照)と、上下の奥歯で軽く噛んだ状態(
図13(b)参照)のいずれの状態でも、挟持部12をしっかりと咬持させることができる。
このことにつき、当接面部52を下方側に向けて使用する場合を例に挙げ、詳細に説明する。
【0095】
前歯で挟持部12を噛む場合、
図13(a)で示されるように、口を比較的小さく空けるため、下顎が上顎に対して大きく傾かない。このため、挟持部12に上方から接触する歯列(上側の前歯の列)と、下方から接触する歯列(下側の前歯の列)の間に形成される上下間の隙間は、各部における上下間の長さが略一定となる。
そして、この場合、当接面部52のうちで最も外側(
図13では下側)に膨らむ中央側部分及びその周辺に下側の歯列が当接し、格子溝(
図8(b)参照)の一部に当接する歯列の歯先部分が入り込むことで、意図しない位置ずれが防止(抑制)される。
【0096】
対して、奥歯で挟持部12を噛む場合、
図13(b)で示されるように、口を比較的大きく空けるため、下顎が上顎に対して大きく傾く。このため、挟持部12に上方から接触する上歯の歯列と、下方から接触する下歯の歯列は、上下間の隙間が奥歯側に向かうにつれて小さくなる。
ここで、当接面部52は、中央側部分が最も外側(
図13では下側)に膨らんだ形状であり、中央側部分から周縁部分にかけて膨らみが小さくなる(厚さが薄くなる)形状となっている。このため、当接面部52の中央側部分から周縁部分(
図13(b)では右端の周縁部分)に至る部分が、奥歯側に向かうにつれて小さくなる上下歯列間の隙間に入り込み、当接面部52に歯をしっかりと当接させることができる。また、このとき、歯の歯冠部分の表面に形成される凹凸部分が、格子溝(
図8(b)参照)に入り込み、意図しない位置ずれを防止する。
【0097】
すなわち、本実施形態のインジケータ1は、前歯で挟持部12を噛む場合と、奥歯で挟持部12を噛む場合のいずれでも、挟持部12に適切な姿勢をとらせた状態で、当接面部52の広い範囲に歯を接触させることができる。また、前歯の歯先部分や、奥歯表面の凹凸部分が格子溝に入り込む(引っ掛かる)ことで、意図しない位置ずれを防止できる。
【0098】
また、上記した第一実施形態では、
図14で示されるように、取付筒部51の長手方向の長さLαを、下側孔47bと第一取付孔部25が連続して形成される連通孔の深さLβよりも長くしてもよい。すなわち、挟持部連結部材38及び上下歯当接部37をアーム基端部20の厚さ方向(
図14の上下方向)に移動可能な構造としてもよい。
【0099】
すなわち、自然状態では、
図14(a)で示されるように、挟持部連結部材38の頭部38aが上側孔47aの底部分に当接し、アーム基端部20の下面と上下歯当接部37の本体部50の上面の間に隙間70が形成された状態となる。
そして、この状態で被撮影者が挟持部12を軽く噛み、アーム基端部20と上下歯当接部37の間の隙間70がやや狭くなった状態(図示しない)で、上記したようにアーム基端部20を回転させることが可能となる。
【0100】
対して、アーム基端部20を回転させた後、被撮影者に挟持部12を強く噛んでもらうことで、挟持部連結部材38及び上下歯当接部37が、ピース保持部36及びアーム基端部20に対して相対的に上側へ移動させる。この状態では、アーム基端部20の下面と、上下歯当接部37の本体部50の上面とが広い範囲で面接触し、摩擦力によってアーム基端部20を回動し難くすることができる。すなわち、本実施形態のインジケータ1は、被撮影者が強く噛むことで、アーム基端部20を規制する(阻止する)構造を有するものであってもよい。
【0101】
続いて、本発明の第二実施形態にかかるインジケータ101について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、上記した実施形態と同様の部分については、同じ符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。
【0102】
本実施形態のインジケータ101(口内X線撮影用器具)は、
図15で示されるように、案内リング10と、アーム部111と、挟持部112を構成するピース保持部136及び上下歯当接部37と、保持クリップ13を有している。
【0103】
アーム部111は、アーム基端部120の構造が上記した第一実施形態とは異なっている。本実施形態のアーム基端部120には、1つの第一取付孔部25と、4つのガイド凹部126(ガイド受部)が設けられている。第一取付孔部25は、開口形状が円形であり、アーム基端部120を厚さ方向に貫通する貫通孔である。
【0104】
ガイド凹部126は、
図16で示されるように、有底長孔状の窪みであり、アーム基端部120の一方の主面(上面)に開口を有し、アーム基端部20を厚さ方向に深さを有する。また、ガイド凹部126は、第一取付孔部25の開口の周方向に延びる窪み部分となっている。
【0105】
それぞれのガイド凹部126は、第一保持領域131a乃至第三保持領域131cからなる3つの保持領域131(突起保持領域)と、2つの保持領域131の間に位置する隆起部128(規制部)を有する。
【0106】
保持領域131は、丸みを帯びて凸となるように窪んだ形状であり、具体的には、略半球状に窪んだ凹部となっている。なお、ここでいう「略半球状」とは、完全な半球に限らず、球の一部を平面で切り取った形状を含むものとし、以下も同様とする。
【0107】
隆起部128は、
図16(b)で示されるように、ガイド凹部126の底部分から開口側(上側)へ隆起した部分であり、側面の一部が保持領域131の壁面部分を形成する。
隆起部128は、ガイド凹部126において比較的深さが浅い部分であり、その底部分は、隆起部128の最も深い底部分よりも開口側(
図16(b)では上側)に位置する。
【0108】
ピース保持部136は、
図17で示されるように、底板部141に第二取付孔部47(
図7参照)が設けられておらず、ガイド突起部148の形状、数、形成位置が異なる点において、上記したピース保持部36(
図7参照)とは異なっている。
【0109】
ピース保持部136は、
図17(b)で示されるように、底板部141の一主面(下面)であり、取付溝部43の底部分を形成する主面(上面)とは逆側となる位置に、1つの係合小筒部147と、4つのガイド突起部148が設けられている。
【0110】
係合小筒部147は、略円筒状の部分であり、底板部141の長手方向及び幅方向の中心近傍に形成され外側(
図17では上方)に突出する部分である。
ガイド突起部148は、全体形状が略半球状となるように突出する突起部分である。
4つのガイド突起部148のそれぞれは、底板部141の四隅のそれぞれから底板部141の中心側(係合小筒部147側)にやや離れた位置に設けられている。つまり、4つのガイド突起部148は、底板部141の長手方向及び幅方向で間隔を空けて行列状に配されている。
【0111】
続いて、本実施形態のインジケータ101の組み立て構造について説明する。
本実施形態のインジケータ101は、
図18で示されるように、第一取付孔部25に対して取付筒部51を挿入し、この取付筒部51の内孔51aにピース保持部136の係合小筒部147を挿入している。
【0112】
すなわち、上下歯当接部37側の係合部である取付筒部51と、ピース保持部136側の係合部である係合小筒部147とを互いに係合させ、上下歯当接部37とピース保持部136を連結し、挟持部112を形成している。
つまり、上記した第一実施形態では、ピース保持部36と上下歯当接部37とを挟持部連結部材38を介して連結して挟持部12を形成したが、本実施形態では、上下歯当接部37とピース保持部136を直接連結して挟持部112を形成している。
【0113】
ここで、取付筒部51は、挟持部112において、本体部50の上面からピース保持部136の底板部141の下面までの間で延びる軸部分を形成する。
そして、この取付筒部51の長さ(本体部50の上面から底板部141の下面までの距離)Lγは、アーム基端部120の厚さ(第一取付孔部25の長さ)よりも長い。
このことから、
図18で示されるように、挟持部112は、アーム基端部120に対して上下方向に移動可能な状態で取り付けられている。
【0114】
このとき、
図19で示されるように、ピース保持部136のガイド突起部148の下端側部分は、ガイド凹部126に挿入された状態となっている。そして、挟持部112をアーム基端部120に対して上下方向に移動しても、ガイド突起部148がガイド凹部126から外れない構造となっている。
【0115】
具体的に説明すると、挟持部112が移動範囲内で最も下方側に位置した状態では、
図18(a)で示されるように、アーム基端部120の下面と本体部50の上面との間に隙間170が形成される。そして、底板部141の下面と、アーム基端部120の上面との間にもまた、比較的小さな隙間171が形成された状態となる。
また、この状態では、
図19(a)で示されるように、ガイド突起部148は、ガイド凹部126のいずれか一つの保持領域131に挿入され、保持領域131の底部分に接触した状態となる。
【0116】
これ対し、挟持部112をアーム基端部120に対して上方へ移動させ、挟持部112が移動範囲内で最も上方側に位置した状態では、
図18(b)で示されるように、アーム基端部120の下面と本体部50の上面とが面接触する。このとき、底板部141の下面と、アーム基端部120の上面との間の隙間171は、大きく広がり、比較的広い隙間171となる。
そして、この状態では、
図19(b)で示されるように、ガイド突起部148は、保持領域131の底部分と接触しないが、ガイド突起部148の先端部分は、ガイド凹部126の開口よりも下方側に位置する。
【0117】
以上のことから、挟持部112をアーム基端部120に対して相対移動させるとき、挟持部112が移動範囲内のいずれの位置に配されていても、ガイド突起部148の先端部分は、ガイド凹部126の開口よりも下方側に位置した状態となる。つまり、挟持部112のアーム基端部120に対する位置がどのように変化しても、ガイド突起部148の少なくとも一部がガイド凹部126の内側に配された状態が維持されるので、ガイド突起部148がガイド凹部126から外れない。
【0118】
本実施形態のインジケータ101もまた、
図20で示されるように、被撮影者が挟持部112を軽く噛んだ状態で、アーム部111を挟持部112に対して回動させることが可能となっている。このことにつき、
図20を参照しつつ、アーム部111及び案内リング10を近心側に動かす場合について説明する。
【0119】
上記と同様に、
図20(a)で示される姿勢を基準姿勢とする。
すなわち、基準姿勢は、リング部10aの開口面と垂直な方向に延びる仮想線L1と、取付溝部43の長手方向に延びる仮想線L2のなす角θが90度となる姿勢である。
【0120】
基準姿勢では、
図20(a)の右図で示されるように、4つのガイド突起部148が、いずれもガイド凹部126の長手方向で中心側に位置する保持領域131(第二保持領域131b)に保持された状態となっている。
【0121】
基準姿勢から案内リング10を近心側(歯列の前歯側)に近づける場合、
図20(b)右図で示す矢印の向きにアーム部111(アーム基端部120)を回動させる。すなわち、アーム基端部120から延びる連結板部21の基端部を歯列の外側から内側へ向かう方向に移動させる。このことにより、
図20(a)右図、
図20(b)右図で示されるように、それぞれのガイド突起部148の保持位置が変更される。
【0122】
すなわち、ガイド突起部148が同位置に留まった状態のまま、ガイド突起部148に対してアーム基端部120が移動することで、ガイド突起部148は、ガイド凹部126に挿入された状態を維持しつつガイド凹部126に対して相対移動する。
【0123】
このとき、
図20(b)右図で示されるように、連結板部21側(
図20(b)右図の上側)に位置する2つのガイド凹部126では、基準姿勢に比べ、ガイド突起部48の保持位置がより案内リング10側(
図20(b)右図の左側)の位置となる。
対して、第一取付孔部25を挟んで逆側(
図20(b)右図の下側)に位置する他の2つのガイド凹部126では、基準姿勢に比べ、ガイド突起部48の保持位置がより保持クリップ13側(
図20(b)右図の右側)の位置となる。
つまり、ガイド突起部48は、基準姿勢に比べ、それぞれがガイド凹部126の延び方向でより端部側に位置する部分に保持される。
【0124】
なお、本実施形態においても、4つのガイド突起部148の保持位置が同時に変更される構造となっている。
【0125】
ここで、ガイド凹部126は、上記したように、第一保持領域131a乃至第三保持領域131cからなる3つの保持領域131を有している(
図16参照)。したがって、
図20で示されるように、ガイド突起部148の保持位置を変更すると、
図21で示されるように、ガイド突起部148を保持する保持領域131が変更されていく。
【0126】
このことにつき、
図21(a)乃至
図21(c)で示されるように、ガイド突起部148が第二保持領域131bに保持された状態から、第一保持領域131aに保持された状態へ移行する場合について詳細に説明する。
【0127】
アーム基端部120を回動させようとする(
図21(a)、
図21(b)の矢印の向きに移動させようとする)と、隆起部128の側面部分がガイド突起部148に押し付けられた状態となる。
ここで、この隆起部128は、ガイド突起部148の相対移動を規制する規制部として機能する。すなわち、一定以上の力を加えてアーム基端部120を回動させようとしない限り、ガイド突起部148が隆起部128に引っ掛かることで、アーム基端部120の移動が阻止される。つまり、ガイド突起部148のアーム基端部120に対する相対移動が阻止される。
【0128】
その一方で、一定以上の力を加えてアーム基端部120を回動させると、アーム基端部120が回動しつつ下方側へ移動する(図示しない)。
【0129】
すなわち、
図20で示されるように、ガイド突起部148の外表面は、略半球状の凸曲面であり、隆起部128の側面は、ガイド突起部148の外表面に沿う形状の凹曲面となっている。そして、上記したように、ガイド突起部148が形成されている挟持部112(ピース保持部136)は、アーム基端部120に対して相対的に上下方向に移動可能となっている(
図19等参照)。
これらのことから、これらの曲面同士が接触した状態でアーム基端部120に回動方向に一定以上の力を加えると、アーム基端部120の第二保持領域131bがガイド突起部148の外表面に沿って下方側へ滑るように移動する(図示しない)。その結果、隆起部128の上端部分がガイド突起部148の下端部分と接触した状態へ移行する(
図21(b)参照)。
【0130】
そして、そのままアーム基端部120を回動させることで、ガイド突起部148の下方側に第一保持領域131aが位置した状態となり、ガイド突起部148が第一保持領域131aに挿入された状態に移行する。
つまり、ガイド突起部148は、あたかも隆起部128を乗り越えて移動するように、アーム基端部120に対して相対移動する。このことにより、ガイド突起部148が第二保持領域131bに保持された状態から、第一保持領域131aに保持された状態へ移行する。
【0131】
すなわち、隆起部128は、上記したように、ガイド突起部148の相対移動を規制する規制部として機能する一方で、アーム基端部120の移動方向(ガイド突起部148の相対移動の方向)を変更する移動方向変更部としても機能する。
【0132】
以上のことから、本実施形態のインジケータ101もまた、アーム部111を少しずつ所定の回転角度(本実施形態では15度)で回動させることができる。
すなわち、上記したように、基準姿勢から案内リング10を近心側に近づけるとき、ガイド突起部148を保持する保持領域131を一つ隣の保持領域131に移行させる。このことにより、
図20(b)で示されるように、仮想線L1と仮想線L2のなす角のうち、前歯側のなす角θ4が75度となる。つまり、アーム基端部120が回転角15度で回転する。
なお、アーム部111を遠心側に回動させる際は、上記とは逆方向にアーム部111を回動させる(詳細な説明を省略する)。
【0133】
ところで、上記したように、挟持部112が移動範囲内で最も上方側に位置した状態では、
図19(b)で示されるように、ガイド突起部148の先端部分が保持領域131の底部分と接触せず、ガイド凹部126の開口よりも下方側に位置した状態となる。
すなわち、
図19(b)で示されるように、ガイド突起部148を保持領域131に保持された状態から鉛直上方に移動させると、ガイド突起部148の先端側部分が保持領域131の一部に入り込んだ状態となる。
そして、この状態では、ガイド突起部148の先端部分が隆起部128(
図21等参照)の上端よりも下方に位置した状態となることが好ましい。
【0134】
すなわち、
図21で示されるように、ガイド突起部148が隆起部128を乗り越えるように相対移動するとき、隆起部128が下方側へ微細に窪むように一時的に弾性変形し、ガイド突起部148が隆起部128の上に乗り上げる構造としてもよい。この構造では、ガイド突起部148が一つ隣の保持領域131の上側に相対移動したとき、隆起部128が元の形状に戻る。このような構造によると、保持領域131の移行に伴い、使用者が節度感をより強く感じるので、好ましい。
【0135】
上記した各実施形態では、挟持部12,112にガイド突起部48,148を設け、これらガイド突起部48,148と互いに係合するガイド孔部26、ガイド凹部126をアーム部11,111に設けた例を示した。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、アーム部側に突起部分を設け、挟持部側に受け部分を設けてもよい。すなわち、互いに係合する係合部の一方と他方をアーム部側と挟持部側のそれぞれに設け、この係合部によってアーム部の所定角度ずつ回動させ、アーム部の不意の回動を規制できればよい。
【0136】
続いて、本発明の第三実施形態にかかるインジケータ401(口内X線撮影用器具)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、上記した実施形態と同様の部分については、同じ符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。さらに、以下の説明において、特に説明の無い場合、案内リング410側を前方とし、その反対側を後方として説明する。また、上下方向は、
図22の状態を基準として説明する。
【0137】
本実施形態のインジケータ401は、
図22、
図23で示されるように、案内リング410(基準部)と、アーム部411と、挟持部412と、保持クリップ413(保持部)を有している。このインジケータ401は、上記したインジケータ1(
図1等参照)と同様に、咬合ピース2とX線画像検出媒体3を取り付けて使用する(
図22、
図23では、咬合ピース2とX線画像検出媒体3を取り付けていない状態を示す)。
【0138】
本実施形態のインジケータ401では、アーム部411、挟持部412、保持クリップ413が一体的に形成され、インジケータ本体部414を成している。すなわち、インジケータ401は、インジケータ本体部414と、インジケータ本体部414に対して着脱自在となる案内リング410を有し、インジケータ本体部414に案内リング410を取り付けて形成されるものである。インジケータ本体部414と案内リング410は、いずれも合成樹脂製の部材である。
【0139】
アーム部411は、アーム本体部411aとリング取付部411b(アーム側係合部)を有し、これらが一体となって形成されている。アーム本体部411aは、平板状の部分であり、上記した連結板部21(
図1参照)と同様に、平面視で略V字状に屈曲しつつ延びる部分である。つまり、平面視したとき、挟持部412(中央板状部435)の側方から外側(左右方向の一方側)に延びる部位と、折り返し部分となる屈曲部415と、前方に向かうにつれて左右方向の他方側に向かうように延びる部位を有する。つまり、屈曲部415は、左右方向の一方側へ延びる部分と、逆側となる他方側へ延びる部分の間に位置する部分である。
【0140】
リング取付部411bは、
図24、
図25で示されるように、アーム本体部411aの延び方向の先端側に設けられ、斜め上方(前方上側)に延びる部分である。このリング取付部411bは、略長方形平板状の突起部分であり、アーム本体部411aよりも幅方向の長さが短くなっている(
図25参照)。
【0141】
挟持部412は、
図22、
図23で示されるように、平板状の中央板状部435と、中央板状部435の上側に形成されたピース保持部436と、中央板状部435の下側に形成された上下歯当接部437(当接部)を有する。すなわち、上下方向において、中央板状部435を挟んだ両側となる位置にピース保持部436と上下歯当接部437とがそれぞれ形成されている。これらピース保持部436、上下歯当接部437は、使用時に人の上下歯の間に位置する部分である。つまり、ピース保持部436に保持された咬合ピース2(
図1参照)と上下歯当接部437は、上歯と下歯の一方と他方とがそれぞれ当接する部分となる。
【0142】
ピース保持部436は、断面形状が略コ字状で延びる部分である。すなわち、
図24で示されるように、平板状の底板部436aと、底板部分の幅方向で離れたそれぞれの位置から上方に突出する2つの側壁部436bを有する。本実施形態では、ピース保持部436の一方の側壁部436bと、保持クリップ413の押さえ板部461とが一体に形成されている(詳しくは後述する)。
【0143】
上下歯当接部437は、
図23、
図26で示されるように、平板状の基端側板状部451と、基端側板状部451の下側(
図26では上側)に位置する当接面形成部452が一体となって形成された部分である。上下歯当接部437は、
図26で示されるように、全体形状が略ドーム型であり、詳細には、平面視形状が略隅丸長方形状(小判型)となるように、ドーム型の一部を欠落させた形状となっている。
【0144】
当接面形成部452の全体形状は、外側(下方であり、
図26では上方)へ向かって丸みを帯びて凸となるように突出した(膨らんだ)形状となっている。より詳細には、周辺側部分から中央側部分にかけて突出長さが長くなる(中央側部分が周辺側部分よりも大きく膨らむ)形状となっている。
【0145】
ここで、当接面形成部452には、所定方向に延びる複数の第一溝55(溝部分)と、第一溝55と交差する(直交する)方向に延びる複数の第二溝56(溝部分)が形成されている。上記した実施形態と同様に、これら複数の第一溝55と複数の第二溝56がそれぞれ並列配置され、一連の溝(格子溝)を形成している。
【0146】
すなわち、当接面形成部452は、ドーム状に膨らんだ形状となる部分を複数の溝部分(第一溝55、第二溝56)によって、複数の突起状部58に分割した部分であると言える。言い換えると、当接面形成部452は、行列状に配された複数の突起状部58によって構成されている。
【0147】
したがって、当接面形成部452の外側部分(下端側部分であり、
図26では上端側部分)は、凹凸形状を有する。言い換えると、当接面形成部452の外表面(外側端部の面)が凹凸面となっている。また、
図26(b)で示されるように、当接面形成部452の側面視形状(第一溝55の延び方向を視線方向とした平面視形状)は、当接面形成部452の突出端側の面が溝部分によって断続する山なりの曲面となる形状となる。そして、当接面形成部452の正面視形状(第二溝56の延び方向を視線方向とした平面視形状)もまた、突出端側の面が溝部分によって断続する山なりの曲面となる形状となっている。
つまり、当接面形成部452を側方(例えば、四方)からみた平面視形状は、いずれの方向からみた形状であっても、断続する山なりの曲面を突出端側に有する。
【0148】
保持クリップ413は、X線画像検出媒体3を挟んで保持する部分であり、
図22、
図24で示されるように、支持板部460と押さえ板部461を有する。
支持板部460は、ピース保持部436からやや側方に離れた位置に形成され、中央板状部435の上面から斜め上方に延び、一部に屈曲して延びる部分を有する。
押さえ板部461は、ピース保持部436の一方の側壁部436bを含んで形成される部分である。つまり、側壁部436bと、側壁部436bの上側部分からさらに上方に向かって延びる部分によって構成されている。
【0149】
案内リング410は、
図27で示されるように、円環状に連続する部材であり、上記した案内リング10と同様に、被撮影者の口外に配され、コーン17の配置位置を調整する際に基準となる部分である。
本実施形態の案内リング410は、リング本体部410aと、複数のリング側係合部470(基準部側係合部)とが一体に形成された部材である。詳細には、案内リング410は、第一リング側係合部470a、第二リング側係合部470b、第三リング側係合部470cからなる3つのリング側係合部470を有する。
【0150】
リング本体部410aは、案内リング410の周方向に細長く延びる部分である。すなわち、リング本体部410aは、複数の円弧状に延びる部分を有しており、それぞれの円弧状に延びる部分は、2つの異なるリング側係合部470の間で延びている。
【0151】
第一リング側係合部470a、第二リング側係合部470b、第三リング側係合部470cは、それぞれ第一取付用孔475、第二取付用孔476、第三取付用孔477を有している。第一取付用孔475、第二取付用孔476、第三取付用孔477は、いずれもリング取付部411b(
図24等参照)を略丁度内嵌させる(係合させる)ことが可能な孔である。
【0152】
つまり、
図28で示されるように、案内リング410の複数のリング側係合部470から一つを選択し、選択したリング側係合部470をアーム部411のリング取付部411bを係合させることで、案内リング410をインジケータ本体部414に取り付ける。
このことにより、本実施形態のインジケータ401は、案内リング410の姿勢を基準姿勢(
図28(a)参照)、近心側姿勢(
図28(b)参照)、遠心側姿勢(
図28(c)参照)からなる複数の姿勢から選択できる。このことにつき、以下で詳細に説明する。
【0153】
案内リング410は、
図27で示されるように、直立させた姿勢とし、第一リング側係合部470aを下端側に位置するように配した姿勢で、左右対称となる。
すなわち、第一リング側係合部470aから、案内リング410の周方向の一方側に所定角度θ5だけ離れた位置に、第二リング側係合部470bが設けられている。また、第一リング側係合部470aから、案内リング410の周方向の逆側に所定角度θ5だけ離れた位置に、第三リング側係合部470cが設けられている。
なお、所定角度θ5は、0度より大きく90度以下となる角度であり、本実施形態では60度である。
【0154】
第一リング側係合部470aは、
図27で示されるように、第一取付用孔475を内孔とする略短角筒状の部分である。そして、第一取付用孔475は、断面形状が略長方形状で延びる孔である。この第一取付用孔475は、案内リング410の開口面480に対して垂直な方向に延びている。すなわち、
図27(b)で示されるように、第一取付用孔475の延び方向に延びる仮想線L3と、案内リング410の開口面480と同一平面となる面のなす角が90度となる。
【0155】
第二リング側係合部470b、第三リング側係合部470cは、それぞれ第二取付用孔476、第三取付用孔477を内孔とする略短筒状の部分である。第二取付用孔476及び第三取付用孔477は、第一取付用孔475と延び方向が異なる孔であり、案内リング410の開口面480と交わる方向に延びている。具体的には、
図27(b)で示されるように、第二取付用孔476及び第三取付用孔477の延び方向に延びる仮想線L4と、案内リング410の開口面480と同一平面となる面とのなす角θ6が鋭角となる。
【0156】
ここで、
図29(a)で示されるように、案内リング410を直立させ、第一リング側係合部470aを下側に配し、第一取付用孔475の横断面形状が横長長方形状となる姿勢とする。この姿勢において、第一リング側係合部470aは、左右方向の両端側がリング本体部410aと連続する部分となる。つまり、
図29(a)の右図で示されるように、この姿勢の第一リング側係合部470aを平面視すると、第一取付用孔475の延び方向(同右図の上下方向)と、リング本体部410aの延び方向(同右図のX方向)とが互いに直交する。
【0157】
これに対し、
図29(b)で示されるように、案内リング410を直立させ、第二リング側係合部470bを下側に配し、第二取付用孔476の横断面形状が横長長方形状となる姿勢とする。この姿勢において、第二リング側係合部470bは、左右方向の一方側(
図29(b)左図の手前側)であって前方上側よりの部分がリング本体部410aと連続する部分となる。
つまり、
図29(b)の右図で示されるように、この姿勢の第二リング側係合部470bを平面視すると、リング本体部410aの延び方向(同右図のX方向)は、第二取付用孔476の延び方向(同右図の上下方向)及び幅方向(同右図の左右方向)に対して傾斜する。詳細には、同平面視において、リング本体部410aの延び方向は、左右方向の一方側(同右図の左側)から他方側に向かうにつれて前側(同右図の下側)に延びる方向となる。
【0158】
また、
図29(c)で示されるように、第三リング側係合部470cを下側に配し、第三取付用孔477の横断面形状が横長長方形状となる姿勢とする。この姿勢において、第三リング側係合部470cは、左右方向の他方側(
図29(c)左図の奥側)であって前方上側よりの部分がリング本体部410aと連続する部分となる。
つまり、
図29(c)の右図で示されるように、この姿勢の第三リング側係合部470cを平面視すると、リング本体部410aの延び方向(同右図のX方向)は、第三取付用孔477の延び方向(同右図の上下方向)及び幅方向(同右図の左右方向)に対して傾斜する。詳細には、同平面視において、リング本体部410aの延び方向は、左右方向の一方側(同右図の左側)から他方側に向かうにつれて後側(同右図の上側)に延びる方向となる。
【0159】
以上のことから、上記したように、リング取付部411bと係合させるリング側係合部470を変更することで、案内リング410の姿勢変更が可能となる(
図28参照)。
【0160】
リング取付部411bを第一リング側係合部470a(
図29(a)参照)と係合させると、案内リング410が基準姿勢(
図28(a)参照)となる。
案内リング410を基準姿勢とし、X線画像検出媒体3(
図1参照)を保持クリップ413に保持させると、案内リング410の内側空間と、X線画像検出媒体3は正面で向き合う位置に配される。なお、案内リング410の内側空間は、環状に連続するリング本体部410a及び複数のリング側係合部470によって囲まれた空間である。
【0161】
対して、リング取付部411bを第二リング側係合部470b(
図29(b)参照)と係合させると、案内リング410が近心側姿勢(
図28(b)参照)となる。
案内リング410他の姿勢から近心側姿勢(
図28(b)参照)とすると、保持クリップ413に対する案内リング410の向きが変更される。近心側姿勢では、基準姿勢に比べ、案内リング410の環状に連続する部分が近心側にずれた位置となる。すなわち、案内リング410は、平面視において、内側空間の中心位置が屈曲部415に近づく方向にずれ、且つ、保持クリップ413に近づく方向にずれた位置となる。
【0162】
また、リング取付部411bを第三リング側係合部470c(
図29(c)参照)と係合させると、案内リング410が遠心側姿勢(
図28(c)参照)となる。
案内リング410を他の姿勢から遠心側姿勢(
図28(c)参照)とすると、保持クリップ413に対する案内リング410の向きが変更される。遠心側姿勢では、基準姿勢に比べ、案内リング410の環状に連続する部分が遠心側にずれた位置となる。すなわち、基準姿勢から近心側姿勢にした場合とは逆方向にずれる。具体的には、案内リング410は、平面視において、内側空間の中心位置が屈曲部415から離れる方向にずれ、且つ、保持クリップ413に近づく方向にずれた位置となる。
【0163】
本実施形態のインジケータ401もまた、患者(被撮影者)に挟持部412を噛んでもらった状態で案内リング410の位置調整を行うことが可能であり、案内リング410の位置調整を行うことでX線の照射方向を微調整できる。ここで、案内リング410が位置する部分は、使用時に口外に位置する部分となる。このため、本実施形態のインジケータ401の構造によると、口内に配した部分を動かさずに案内リング410の位置調整が可能となる。
【0164】
なお、本実施形態のインジケータ401は、所謂二等分法と称される撮影方法で使用することを想定している。したがって、
図24で示される様に、アーム部411の厚さ方向が上下方向となる姿勢とした状態において、支持板部460の延び方向の垂直線(水平面に対する法線)に対する傾斜角度θ7は25度となっている。この傾斜角度θ7は、支持板部460の延び方向に延びる仮想線と、垂直線のなす角でもある。したがって、X線画像検出媒体3を取り付けたとき、このX線画像検出媒体3の垂直線に対する傾斜角度θ7は25度となる。
そして、同姿勢(アーム部411の厚さ方向が上下方向となる姿勢)において、インジケータ本体部414に案内リング410を取り付けたとき、案内リング410の直立した姿勢からの傾斜角度θ8は、12.5度となっている。この傾斜角度θ8は、案内リング410の側面視においてリング本体部410aの延び方向に延びる仮想線と、上記した垂直線のなす角でもある。
また、本実施形態のインジケータ401は、これに限らず、所謂平行法と称される撮影方法で使用することを想定したものとしてもよい。すなわち、上記した傾斜角度θ7と傾斜角度θ8をいずれも25度となるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0165】
1,101,401 インジケータ(口内X線撮影用器具)
3 X線画像検出媒体(X線検出媒体)
10,410 案内リング(基準部)
11,111,411 アーム部
12,112,412 挟持部
13,413 保持クリップ(保持部)
26 ガイド孔部(ガイド受部)
28,128 隆起部(規制部)
31,131 保持領域(突起保持領域)
36,136 ピース保持部
37,437 上下歯当接部(当接部)
48,148 ガイド突起部
55 第一溝(溝部分)
56 第二溝(溝部分)
126 ガイド凹部(ガイド受部)
411b リング取付部(アーム側係合部)
470 リング側係合部(基準部側係合部)