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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】収納庫
(51)【国際特許分類】
   E05D 7/12 20060101AFI20230927BHJP
   E05D 5/02 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
E05D7/12 B
E05D7/12 D
E05D5/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019178613
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021055366
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000152228
【氏名又は名称】株式会社内田洋行
(73)【特許権者】
【識別番号】597008245
【氏名又は名称】江戸崎共栄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】秋本 恵三
(72)【発明者】
【氏名】丸山 高央
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正行
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-091925(JP,A)
【文献】特開平07-252974(JP,A)
【文献】特開2012-041688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 7/12
E05D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空間を有する収納庫本体と、
前記収納庫本体に取り付けられる扉と、
前記収納庫本体及び前記扉を連結するヒンジ機構とを備え、
前記ヒンジ機構は、
内部空間、弾性変形が可能なヒンジ支持爪、及び前記内部空間に連通する開口部を有し、前記収納庫本体に形成された取付孔に挿入される保持部材と、
前記扉の回動中心となる回転軸を貫挿する軸貫挿部、及び貫通孔を有し、前記保持部材の前記内部空間に挿入されるヒンジ本体と、
前記回転軸を支持する軸受部を有し、前記扉に取り付けられるフレーム部材と、を備え、
前記保持部材の前記ヒンジ支持爪は、前記内部空間側から外側へ向かって外力が加えられた状態で前記内部空間に対して反対側へ弾性変形し、外力が加えられていない状態で前記内部空間へ張り出して前記内部空間に挿入された前記ヒンジ本体の前記貫通孔に挿入され、前記開口部を介して外力が加えられた状態で前記貫通孔から退出し、
前記収納庫本体は、前記空間に収納された収納物を支持する横板と、前記横板と組み合わされて前記空間を形成する側壁部とを有し、
前記取付孔は、前記側壁部に形成されるとともに、前記側壁部に沿って設けられた支持フレームの連通孔に連通され、
前記保持部材は、前記支持フレームに固定される
収納庫。
【請求項2】
前記保持部材は、前記取付孔に挿入された状態で前記扉と前記収納庫本体との間に配置される爪部を備える
請求項1に記載の収納庫
【請求項3】
前記保持部材は、樹脂からなり、
前記ヒンジ支持爪が形成された第1片と、
前記開口部が形成された第2片と、
前記第1片及び前記第2片を連結し、可撓性を有する薄肉部とを備え、
前記薄肉部が折り曲げられることにより、前記第1片及び前記第2片が向かい合い、その内側に前記内部空間を形成する
請求項1又は2に記載の収納庫
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納庫に関する。
【背景技術】
【0002】
家具本体に扉を回動可能に連結するヒンジ機構として、物置の取付板に設けられる支持部材と、支持ピンを有し支持部材に差し込まれるヒンジ板とを備えるものが提案されている。この物置に対し、ユーザが扉を取り付ける際は、工場等で物置に予め設けられた支持部材にヒンジ板の先端部を挿着し、ヒンジ板の支持ピンを扉に形成された軸孔に篏合させればよい。このため、ユーザは、扉を、ヒンジ板を介して物置に簡単に取り付けることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-115142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のヒンジ機構は、物置に扉を簡単に取り付けることができるものの、扉の取り外しは簡単に行うことができない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、扉の取り付け作業及び取り外し作業を簡単に行うことのできる収納庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するヒンジ機構は、被取付部と、前記被取付部に取り付けられる扉を連結するヒンジ機構であって、内部空間、弾性変形が可能なヒンジ支持爪、及び前記内部空間に連通する開口部を有し、前記被取付部に形成された取付孔に挿入される保持部材と、前記扉の回動中心となる回転軸を貫挿する軸貫挿部、及び貫通孔を有し、前記保持部材の前記内部空間に挿入されるヒンジ本体と、前記回転軸を支持する軸受部を有し、前記扉に取り付けられるフレーム部材と、を備え、前記保持部材の前記ヒンジ支持爪は、前記内部空間側から外側へ向かって外力が加えられた状態で前記内部空間に対して反対側へ弾性変形し、外力が加えられていない状態で前記内部空間へ張り出して前記内部空間に挿入された前記ヒンジ本体の前記貫通孔に挿入され、前記開口部を介して外力が加えられた状態で前記貫通孔から退出する。
【0006】
上記課題を解決する収納庫は、複数の空間を有する収納庫本体と、前記収納庫本体に取り付けられる扉と、前記収納庫本体及び前記扉を連結するヒンジ機構とを備え、前記ヒンジ機構は、内部空間、弾性変形が可能なヒンジ支持爪、及び前記内部空間に連通する開口部を有し、前記被取付部に形成された取付孔に挿入される保持部材と、前記扉の回動中心となる回転軸を貫挿する軸貫挿部、及び貫通孔を有し、前記保持部材の前記内部空間に挿入されるヒンジ本体と、前記回転軸を支持する軸受部を有し、前記扉に取り付けられるフレーム部材と、を備え、前記保持部材の前記ヒンジ支持爪は、前記内部空間側から外側へ向かって外力が加えられた状態で前記内部空間に対して反対側へ弾性変形し、外力が加えられていない状態で前記内部空間へ張り出して前記内部空間に挿入された前記ヒンジ本体の前記貫通孔に挿入され、前記開口部を介して外力が加えられた状態で前記貫通孔から退出する。
【0007】
上記構成によれば、保持部材のヒンジ支持爪は、ヒンジ本体が保持部材の内部空間に挿入される過程でヒンジ本体と当接することで内部空間に対して反対側へ弾性変形し、ヒンジ本体の保持部材への挿入を許容する。また、ヒンジ本体が、貫通孔がヒンジ支持爪の位置に到達するまで保持部材に挿入されると、弾性変形したヒンジ支持爪が元の位置に戻り、その一部がヒンジ本体の貫通孔に挿入される。これにより、ヒンジ本体の保持部材からの抜出方向への移動が規制される。よって、扉をヒンジ本体を介して被取付部に簡単に取り付けることができる。また、扉を取り外す際には、保持部材の開口部から冶具を差し込んで、ヒンジ支持爪を内部空間の外側へ向かって弾性変形させることで、ヒンジ支持爪が貫通孔から退出する。このため、ヒンジ本体が取り付けられた扉を、被取付部から簡単に取り外すことができる。このため、ユーザが、被取付部に対する扉の取り付け及び取り外しを簡単に行うことができる。
【0008】
上記ヒンジ機構について、前記保持部材は、前記取付孔に挿入された状態で前記扉と前記被取付部との間に配置される爪部を備えることが好ましい。
上記構成によれば、扉と被取付部との間に保持部材の爪部が配置されるため、ユーザが、扉と被取付部との間に指や異物を挟むことを抑制することができる。
【0009】
上記ヒンジ機構について、前記保持部材は、樹脂からなり、前記ヒンジ支持爪が形成された第1片と、前記開口部が形成された第2片と、前記第1片及び前記第2片を連結し、可撓性を有する薄肉部とを備え、前記薄肉部が折り曲げられることにより、前記第1片及び前記第2片が向かい合い、その内側に前記内部空間を形成することが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、保持部材を、第1片と第2片とが薄肉部で連結された樹脂部品として成型するため、扁平状のシンプルな形状とすることができる。このため、金型を作りやすくすることができる。
【0011】
上記収納庫について、前記収納庫本体は、前記空間に収納された収納物を支持する横板と、前記横板と組み合わされて前記空間を形成する縦板とを有し、前記取付孔は、前記縦板に形成されるとともに、前記縦板に沿って設けられた支持フレームの連通孔に連通され、前記保持部材は、前記支持フレームに固定される。
【0012】
上記構成によれば、ヒンジ機構を取り付ける取付孔は縦板に設けられるので、ヒンジ機構を横板に設ける場合に比べ、収納庫の間口のうち水平方向の寸法を広くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、扉の取り付け作業及び取り外し作業を簡単に行うことのできる収納庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の収納庫の一部を示す斜視図。
図2】同実施形態における扉の取付構造を示す斜視図。
図3】同実施形態のヒンジ機構を構成する保持部材及び収納庫本体の要部の斜視図。
図4】同実施形態の保持部材を開いた状態の斜視図。
図5】同実施形態のヒンジ機構を構成する保持部材、ヒンジ本体、及びフレーム部材の分解斜視図。
図6】同実施形態の収納庫の側面図。
図7】同実施形態における図6のヒンジ機構の7-7線の断面を示し、扉が全閉位置にある場合の断面図。
図8】同実施形態のヒンジ機構であって、扉が全閉位置と全開位置との間にある場合の断面図。
図9】同実施形態のヒンジ機構であって、扉が全開位置にある場合の断面図。
図10】同実施形態のヒンジ機構であって、扉を取り外す場合の断面図。
図11】変形例のヒンジ機構の断面図。
図12】変形例のヒンジ機構の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図10を参照して、ヒンジ機構及び収納庫について説明する。
図1に示すように、収納庫10は、収納庫本体11と、収納庫本体11に取り付けられた扉12とを備える。収納庫本体11は、金属板からなる複数の壁部を備えている。収納庫本体11は、底壁部(図示略)、及び上壁部11Bの間を仕切る1又は複数の横壁部11Aを備えている。底壁部、上壁部11B、及び横壁部11Aは、複数の側壁部11Dに連結されている。これらの壁部により、収納庫本体11には複数の収納空間が区画される。
【0016】
扉12は、1対のヒンジ機構30を介して収納庫本体11に取り付けられている。扉12は、収納空間の開口を閉塞する全閉位置と開口から最も離れた全開位置との間で、回動可能に設けられている。なお、収納庫10のうち、扉12が設けられた面を正面、その反対側の面を背面、正面からみて左側の面を左側面及び右側の面を右側面とする。また、正面から背面に向かう方向を奥行方向Z、左側面から右側面に向かう方向を幅方向X、底面から上面に向かう方向を高さ方向Yとする。
【0017】
扉12には、扉12を施錠するための錠16と、挿入口17とが設けられている。挿入口17は、扉12の上部に貫通形成されている。挿入口17は、角丸四角形状楕円形状に形成され、その長手方向が幅方向Xと平行である。この収納庫10は、例えば、固定席を設けずにオフィスのユーザの一人ひとりが日々の業務にあわせて席を選択して働くことのできる、いわゆるフリーアドレススタイルのオフィスに設置される個人用の収納庫として使用することができる。ユーザ宛の郵便物やその他の書類等は、挿入口17を介して収納空間に投入される。また、錠16は、鍵式、カードキー式、ダイヤル式、又は指紋等の生体認証式のものである。ユーザは、鍵式やカード式の錠16であればユーザが所持する鍵やカードで錠16を開き、ダイヤル式や生体認証式の錠16であれば、固有の番号や認証情報などを入力することにより錠16を開く。
【0018】
図2を参照して、扉12の取り付け構造について説明する。ヒンジ機構30は、側壁部11Dに取り付けられる。側壁部11Dの正面には、取付孔21が設けられている。また、収納庫本体11のうち、収納空間13の開口14側には、支持フレーム20が設けられている。支持フレーム20は、高さ方向に延び、側壁部11Dに沿って設けられている。
【0019】
扉12は、長方形状の金属板から形成されている。扉12には、その四辺の端部を背面側に折り曲げて形成した折り曲げ部18を有している。折り曲げ部18は、扉12のうち折り曲げ部18以外の部分との間に空間を設けるように、略L字状に折り曲げられている。正面からみて右側端の折り曲げ部18には、ヒンジ機構30を取り付けるための切り欠き部19が設けられている。扉12の背面側には、小物や、挿入口17から投入されたユーザ宛の郵便物等を収容するポケット25が取り付けられている。ポケット25には、小物を収容する小物収容部26、郵便物等を取り出しやすくするための長孔27が設けられている。
【0020】
扉12の2箇所に設けられたヒンジ機構30は、ヒンジ本体36、フレーム部材37を備えている。ヒンジ本体36は、一方の端部が、取付孔21及び支持フレーム20に形成された連通孔(図示略)に挿入され、他方の端部は、収納庫本体11から突出している。取付孔21及び連通孔に挿入された部分は収納庫本体11に固定され、収納庫本体11から突出した部分は、扉12に設けられたフレーム部材37に連結され、扉12を回動可能に支持している。
【0021】
一方のフレーム部材37は、上端及び側端に設けられた折り曲げ部18と、扉12のうち折り曲げ部18を除く部分とで区画される空間に収容され、ビス等の締結部材60で扉12に固定されている。他方のフレーム部材37は、下端及び側端に設けられた折り曲げ部18と、扉12のうち折り曲げ部18を除く部分とで区画される空間に収容され、締結部材60で扉12に固定されている。また、フレーム部材37は、爪掛止部37Aを備えている。爪掛止部37Aには、ポケット25の爪28が掛止される。
【0022】
次に、図3図6を参照して、ヒンジ機構30を構成する各部品について詳述する。図3に示すように、ヒンジ機構30は、ヒンジ本体36及びフレーム部材37に加え、保持部材35を備えている。保持部材35は、樹脂からなり、射出成型により形成される。保持部材35は、開状態、及び開状態の保持部材35を畳んだ閉状態となる。図3に示す保持部材35は、閉状態である。保持部材35は、挿入口40、開口部42、及び切り欠き部44を有する。閉状態の保持部材35の内側には、挿入口40に連通する内部空間50が設けられている。また、開口部42は、保持部材35の一方の壁に形成されている。また、切り欠き部44は、挿入口40側から、挿入口40に対して反対側となる端部へ向かって延びるように形成されている。
【0023】
支持フレーム20のうち、側壁部11Dの取付孔21に対応する位置には連通孔22が設けられている。また、支持フレーム20のうち、収納空間13側の壁部には、取り外し孔20Aが貫通形成されている。保持部材35は、挿入口40が、正面を向くように側壁部11Dに形成された取付孔21及び支持フレーム20の連通孔22に挿入される。支持フレーム20に挿入された保持部材35は、支持フレーム20に形成された孔20B及び保持部材35に形成された貫通孔43を介して締結される締結部材60により支持フレーム20に対して固定される。
【0024】
図4に示すよう保持部材35は、開状態である。保持部材35は、第1片51、第2片52、及びこれらを接続する薄肉部53を備えている。第1片51は、ヒンジ支持爪41、貫通孔43、及び薄肉部53に対して反対側となる端部に設けられた爪部45を備える。ヒンジ支持爪41は、第1片51に連結する基端41Aと、第1片51に形成された爪用孔部41C内で弾性変形する可動端41Bとを備える。また、第1片51は、その縁に沿って形成された周壁部54を備えている。周壁部54の端には、面取部59が形成されている。第1片51の側端に設けられた周壁部54には、掛止爪55が設けられている。掛止爪55の先端は、第1片51の外側を向く鉤状の形状を有している。
【0025】
第2片52は、貫通孔43と、開口部42を備える。また、第2片52は、その縁に沿って形成された周壁部57を備えている。第2片52の側端に設けられた周壁部57の端には、面取部58が形成されている。さらに、第2片52の側端には、1対の孔56が周壁部57に沿って形成されている。
【0026】
第1片51の掛止爪55が第2片52の孔56に掛止されることにより、第1片51及び第2片52は互いに固定され、保持部材35は閉状態となる。保持部材35が閉状態となると、第1片51の周壁部54及び第2片52の周壁部57が当接し、それらの内側にヒンジ本体36を挿入する内部空間が形成される。内部空間は、第1片51の面取部59及び第2片52の面取部58側からヒンジ本体36を受け入れる。このとき、面取部58,59が設けられることによって、ヒンジ本体36を内部空間に挿入しやすくすることができる。このとき、第1片51のヒンジ支持爪41の可動端41Bは、保持部材35内の空間に突出している。
【0027】
図5に示すように、フレーム部材37は、略L字状の形状に形成され、高さ方向に延出する鉛直部37B、及び水平方向に延出する水平部37Cを備えている。鉛直部37Bには、1対の軸受部37Dが形成されている。軸受部37Dは、回転軸38を貫挿可能な孔を有している。また、鉛直部37Bの下端には、回転軸38の頭部38Aを支持する軸支持部37Eが設けられている。鉛直部37Bであって、一対の軸受部37Dの間には、ストッパ部39が設けられている。
【0028】
ヒンジ本体36は、金属材からなり、被保持部61、屈曲部62、軸貫挿部63を備えている。被保持部61は、保持部材35に挿入される。被保持部61には、貫通孔65、及び締結孔66が形成されている。貫通孔65には、保持部材35のヒンジ支持爪41が挿入される。締結孔66には、締結部材60が締結される。被保持部61と屈曲部62との間には、張り出し部67が設けられている。張り出し部67は、その高さ方向Yの長さが、被保持部61の高さ方向Yにおける長さよりも大きくなっている。屈曲部62は、高さ方向Yにおける上方からみて略L字状の形状をなしている。屈曲部62は、フレーム部材37に回転可能に支持された回転軸38の一部を囲むように設けられる。軸貫挿部63には、軸貫挿孔64が形成されている。軸貫挿孔64には、回転軸38が回動可能に貫挿される。
【0029】
ヒンジ本体36の被保持部61を保持部材35に挿入すると、被保持部61の先端が、保持部材35のヒンジ支持爪41(図4参照)を押圧して、ヒンジ支持爪41を第1片51及び第2片52で形成される内部空間の外側に押し出す。被保持部61を保持部材35にさらに挿入すると、張り出し部67が、切り欠き部44の端部に当接する。これにより、ヒンジ本体36の挿入方向へのさらなる移動が規制される。また、ヒンジ本体36が、貫通孔65と保持部材35のヒンジ支持爪41とが向かい合う位置まで挿入されると、貫通孔65にヒンジ支持爪41が挿入される。これにより、ヒンジ本体36は、保持部材35に固定され、ヒンジ本体36の挿入方向及びその反対方向である抜出方向の移動が規制される。また、屈曲部62及び軸貫挿部63は、扉12を収納庫本体11に回動可能に連結する。
【0030】
図6に示すように、フレーム部材37及び保持部材35の爪部45は、扉12の切り欠き部19を介して扉12の外部に露出している。扉12に切り欠き部19が設けられることにより、全閉位置の扉12と収納庫本体11との間に設けられた隙間23は大きくなるが、爪部45が隙間23に介在することにより、隙間23の大部分を塞ぐ。
【0031】
次に、図7図10を参照して、ヒンジ機構30の作用について説明する。
図7は、扉12が全閉位置にある状態を示す。保持部材35及びヒンジ本体36は、側壁部11D及び支持フレーム20で区画される空間に収容され、支持フレーム20に対して締結部材60によって固定されている。また、ヒンジ支持爪41は、貫通孔65に挿入される。さらに、側壁部11Dに形成された取付孔21の端部は、保持部材35に設けられたリブ46と爪部45とによって挟持され、保持部材35の内部空間にヒンジ本体36が挿入されることで、爪部45が収納空間13の方向に移動することが抑制される。これにより、ヒンジ本体36は、保持部材35を介して収納庫本体11側に固定される。また、扉12が全閉位置にあるとき、隙間23の大部分は爪部45に閉塞されるので、指や異物を挟みにくい。
【0032】
図8に示すように、扉12を全閉位置から全開位置へ向かって移動させると、収納庫本体11に固定されたヒンジ本体36の軸貫挿孔64内で回転軸38が回動する。フレーム部材37は、扉12の移動に伴い、回転軸38を中心に、ストッパ部39をヒンジ本体36に近付けるように図中反時計回りに回動する。
【0033】
図9に示すように、さらに扉12を移動させると、回転軸38を中心に回動するフレーム部材37のストッパ部39が、ヒンジ本体36に当接し、さらなる回動が規制される。これにより、扉12は全開位置となる。また、全開位置の扉12と収納庫本体11との間の隙間23も、保持部材35の爪部45によってその一部が閉塞されるので、指や異物を挟みにくくなる。
【0034】
扉12の収納庫本体11への取付方法について説明する。収納庫10を出荷する前に、保持部材35を、予め収納庫10の取付孔21に挿入し、爪部45によって収納庫本体11に固定しておく。さらに、扉12には、1対のフレーム部材37、回転軸38、及びヒンジ本体36を予め取り付けておく。このとき、ヒンジ本体36をフレーム部材37の軸受部37Dの間に挿入し、軸支持部37Eを弾性変形させながら、回転軸38を軸受部37D及びヒンジ本体36の軸貫挿孔64に挿入する。さらに、そのフレーム部材37を、扉12に締結部材60で固定する。ユーザが収納庫本体11に扉12を取り付ける際には、扉12のヒンジ本体36の被保持部61を、収納庫本体11の側壁部11Dの取付孔21から押し込む。ヒンジ本体36の張り出し部67が保持部材35の切り欠き部44の端部に当接すると、ヒンジ本体36をそれ以上押し込むことができなくなるため、ユーザは、ヒンジ本体36が保持部材35に保持されたことを把握することができる。このとき、ヒンジ支持爪41は、ヒンジ本体36の貫通孔65に挿入されるので、扉12の抜出方向への移動を規制することができる。ユーザは、支持フレーム20の孔20B、保持部材35の貫通孔43を介して、ヒンジ本体36の締結孔66に締結部材60を締結し、取付作業を終了する。
【0035】
図10を参照して、扉12の取り外し方法について説明する。ヒンジ機構30が収納庫本体11に取り付けられた状態において、支持フレーム20の取り外し孔20A、保持部材35の開口部42及びヒンジ本体36の貫通孔65は、幅方向Xに連通しており、保持部材35のヒンジ支持爪41は、貫通孔65に挿入されている。扉12を取り外す場合は、締結部材60を支持フレーム20から取り外し、扉12を開いた状態で、細長い形状の治具100を、取り外し孔20Aから開口部42及び貫通孔65に押し込む。これにより、ヒンジ支持爪41の可動端41Bは、基端41Aを中心に保持部材35の外側へ向かって弾性変形し、貫通孔65から退出する。このように治具100でヒンジ支持爪41を押しながら、扉12を正面側へ引っ張る。ヒンジ本体36が、ヒンジ支持爪41の先端がヒンジ本体36の貫通孔65を越えると、ヒンジ本体36が取り付けられた扉12を収納庫本体11から抜き出すことができる。このように扉12を容易に取り外すことが可能になると、解体等が容易になる。また、使用態様の一例ではあるが、ユーザがオフィス内で引っ越しを行う場合等、ユーザが用いる収納庫10を変更するとき、錠16を開くための鍵やカード等の付属品や錠16の設定を変えることなく、ヒンジ本体16付きの扉12を、移動先にある同じタイプの収納庫本体11に取り付けることも可能である。
【0036】
また、開状態の保持部材35は扁平状且つシンプルな形状であるため、開状態の保持部材35のような内側に空間を有する部品を成型するための金型に比べ、金型が複雑化しない。また、複雑な金型とはならないことから、金型の耐久性が高められる。
【0037】
また、複数段の収納空間13を有する収納庫10において、ヒンジ機構30を横壁部11Aに設けた取付孔に取り付ける場合、各段の庫内の有効内寸、扉12のサイズ、ヒンジ機構30、及び横壁部11Aの全てを共通化することが困難なケースが発生する。しかし、本実施形態のように側壁部11Dに取付孔21を設けることで、複数段の収納空間13の有効内寸、扉12のサイズ、ヒンジ機構30及び横壁部11Aを共通化することができる。
【0038】
以上説明したように、ヒンジ機構及び収納庫によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)保持部材35のヒンジ支持爪41は、ヒンジ本体36が保持部材35の内部空間50に挿入される過程で、ヒンジ本体36と当接することで保持部材35の内部空間50とは反対側に向かって弾性変形し、ヒンジ本体36の保持部材35への挿入を許容する。また、ヒンジ本体36が、貫通孔65がヒンジ支持爪41に対応する位置に到達するまで保持部材35に挿入されると、ヒンジ支持爪41が貫通孔65に挿入される。このように貫通孔65にヒンジ支持爪41が挿入されることにより、ヒンジ本体36を引き抜く方向への移動が規制される。したがって、ヒンジ本体36が取り付けられた扉12を、収納庫本体11に簡単に取り付けることができる。また、扉12を取り外す場合には、保持部材35の開口部42から治具を差し込んで、ヒンジ支持爪41を内部空間50の外側へ向かって弾性変形させることで、ヒンジ支持爪41がヒンジ本体36の貫通孔65から退出する。このため、ヒンジ本体36が取り付けられた状態の扉12を、収納庫本体11から簡単に取り外すことができる。このため、ユーザが、収納庫本体11に対する扉12の取り付け及び取り外しを簡単に行うことができる。
【0039】
(2)保持部材35は、扉12と収納庫本体11との間に配置される爪部45を有するので、ユーザが、扉12と収納庫本体11との間に指や異物を挟むことを抑制することができる。
【0040】
(3)保持部材35は、第1片51、第2片52及びこれらを連結する可撓性の薄肉部53を備えるため、保持部材35を扁平且つシンプルな形状の樹脂部品として成型することができる。このため、保持部材35を中空構造を有する樹脂製品として成型する場合に比べ、金型を作りやすくすることができる。
【0041】
(4)ヒンジ機構30を収納庫本体11へ取り付けるための取付孔21は、収納庫本体11の側壁部11Dに設けられているため、扉12を取り付ける際は、鉛直に立てた扉12と側壁部11Dの取付孔21とを位置合わせすることで取り付けることができる。よって、取付孔21が横壁部11A及び上壁部11Bに設けられている場合に比べ、扉12と取付孔21とを簡単に位置合わせすることができるとともに、扉12を奥行方向に押し込んで、ヒンジ本体36をスムーズに保持部材35に保持させることができる。
【0042】
(その他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0043】
図11に示すように、ヒンジ機構30は、保持部材35の端部が支持フレーム20に形成された貫通孔に挿通される構造であってもよい。支持フレーム20には、取付孔21が設けられた端部に対して反対側の端部に、保持部材35の端部を挿通することが可能な貫通孔20Cが形成されている。この貫通孔20Cには、保持部材35のうち内部空間50の入口側に対して反対側となる端部が挿通される。これにより、保持部材35は、爪部45が収納庫本体11の側壁部11Dに当接する一方で、爪部45が形成された端部に対して反対側の端部が支持フレーム20に支持された状態となる。その結果、締結部材60を支持フレーム20に締結することによってヒンジ本体36に側壁部11D側に向かう押圧力が加わったときでも、ヒンジ本体36が側壁部11D側に変位することを防ぐことができる。
【0044】
また図12に示すように、保持部材35は、その端部に、支持フレーム20に形成された貫通孔20Dに挿通される挿通片70を備えていてもよい。挿通片70は、図12に示すように第1片51に形成されてもよいし、第2片52に形成されてもよい。要は、保持部材35の一部が、支持フレーム20に形成された貫通孔に挿通される構成であればよい。
【0045】
・上記実施形態では、保持部材35の挿入口40側に爪部45を設けた。これに代えて若しくは加えて、上記の挿通片70に爪部を設けるようにしてもよい。この爪部は、保持部材35が支持フレーム20に固定された状態で支持フレーム20の外側に位置し、支持フレーム20と当接する。このように挿通片70に爪部を設けることで、支持フレーム20に取り付けられた保持部材35の意図しない変位を抑制しつつ、保持部材35を収納庫本体11に固定することができる。
【0046】
・上記実施形態では、保持部材35は、爪部45を備える構成としたが、爪部45を省略した構成としてもよい。
・上記実施形態では、保持部材35を、第1片51、第2片52、及び薄肉部53を備える構成とした。これに代えて、保持部材35を、閉状態の形状として成型してもよい。
【0047】
・上記実施形態では、収納庫10の側壁部11Dにヒンジ機構30を取り付けた。これに代えて、ヒンジ機構30を、横壁部11Aに設けるようにしてもよい。
・上記実施形態では、ヒンジ本体36を、屈曲部62、張り出し部67を備える構成としたが、これらのうち少なくとも一つを省略した形状としてもよい。
【0048】
・上記実施形態では、フレーム部材37は、略L字状の形状としたが、少なくとも回転軸38を支持できる構成であれば、これ以外の形状であってもよい。例えば、フレーム部材37の水平部37Cを省略してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、保持部材35を支持フレーム20に固定したが、収納庫本体11等、その他の部材に固定してもよい。
・上記実施形態では、収納庫10は、フリーアドレス式のオフィスに設置されるものとして説明したが、学校等、その他の施設に設置されるものであってもよい。
【0050】
・上記実施形態では、ヒンジ機構30を個人用のロッカーである収納庫10に取り付けた。これに代えて、ヒンジ機構30を、例えば戸棚など、個人用のロッカー以外の家具に設けてもよい。又は、ヒンジ機構30を、出入口に設けられるドアなど、開口を閉塞する閉塞位置と開口を開放する開位置との間で回動可能な扉を有する装置に設けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…収納庫、11…収納庫本体、11A…横壁部、11B…上壁部、11D…側壁部、12…扉、13…収納空間、14…開口、16…錠、17…挿入口、18…折り曲げ部、19…切り欠き部、20…支持フレーム、20A,20B…孔、20C,20D…貫通孔、21…取付孔、22…連通孔、23…隙間、25…ポケット、26…小物収容部、27…長孔、28…爪、30…ヒンジ機構、35…保持部材、36…ヒンジ本体、37…フレーム部材、37A…爪掛止部、37B…鉛直部、37C…水平部、37D…軸受部、37E…軸支持部、38…回転軸、38A…頭部、39…ストッパ部、40…挿入口、41…ヒンジ支持爪、41A…基端、41B…可動端、41C…爪用孔部、42…開口部、43…締結孔、44…切り欠き部、45…爪部、46…リブ、50…内部空間、51…第1片、52…第2片、53…薄肉部、54…周壁部、55…掛止爪、56…孔、57…周壁部、58…掛止爪、60…締結部材、61…被保持部、62…屈曲部、63…軸貫挿部、64…軸貫挿孔、65…貫通孔、66…締結孔、67…張り出し部。
図1
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図12