(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】細胞の超音波穿通のための微小気泡の定量吐出装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/42 20060101AFI20230927BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230927BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C12M1/42
C12M1/00 A
C12N15/87 Z
(21)【出願番号】P 2021515470
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(86)【国際出願番号】 EP2019075075
(87)【国際公開番号】W WO2020058367
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-06-21
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】510107448
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドルレアン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ドラランド アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ルベルトル マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ドラランド ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ピション シャンタル
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-099059(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0009424(US,A1)
【文献】Drug Delivery System,2014年11月25日,Vol. 29, No. 5,p. 456-458,doi:10.2745/dds.29.456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の超音波穿通のために微小気泡(30)を定量吐出する装置(10)において、前記装置(10)は、
‐垂直軸線(Z)に関して対称な管(14)を有し、前記管(14)は、微小気泡(30)の溶液(26)が入っているバイアル(20)を受け入れるよう構成され、
‐前記管(14)内に配置された少なくとも2本のカテーテル(11,12)を有し、前記カテーテル(11,12)は、少なくとも部分的に、前記垂直軸線(Z)に実質的に平行に差し向けられ、前記カテーテル(11,12)の各々は、前記バイアル(20)が前記管(14)によって受け入れられると、前記バイアル(20)中に開口するようになったオリフィスを第1の端(111,121)のところに有し、第1の前記カテーテル(11)は、第1の空気注入源に連結されるようになっており、第2の前記カテーテル(12)は、第2の端(122)を有し、
前記第1のカテーテル(11)が前記第1の空気注入源に連結されると、空気を前記第1のカテーテル(11)のオリフィスから前記バイアル(20)中に注入することができ、前記注入された空気は、前記バイアル(20)内に過剰圧力を生じさせ、その結果、前記バイアル(20)内に入っている微小気泡(30)が前記第2のカテーテル(12)に該第2のカテーテルの第1の端の前記オリフィスから入り、次に前記第2のカテーテル(12)内で該第2のカテーテルの前記第2の端(122)に向かって移動するようになっている、装置(10)。
【請求項2】
前記第2のカテーテル(12)の少なくとも一部の周りに少なくとも部分的に配置された第3のカテーテル(13)をさらに有し、前記第3のカテーテル(13)は、第2の空気注入源に連結されるようになっている、請求項1記載の微小気泡(30)の定量吐出装置(10)。
【請求項3】
請求項1または2記載の微小気泡(30)の定量吐出装置(10)を有する細胞超音波穿通装置。
【請求項4】
前記第1のカテーテル(11)に連結された第1の空気注入源をさらに有するともにオプションとして前記微小気泡(30)の定量吐出装置(10)が第3のカテーテル(13)を有する場合には前記第3のカテーテル(13)に連結された第2の空気注入源をさらに有する、請求項3記載の細胞超音波穿通装置。
【請求項5】
‐少なくとも部分的に液体で満たされるようになったタンク(40)と、
‐前記タンク(40)内に配置された超音波変換器(50)と、
‐トランスフェクション操作されるべき細胞を受け入れるようになった少なくとも1つの受け入れ部(61)を備えたプレート(60)と、
‐前記プレート(60)を受け入れるようになった可動支持体(70)と、
‐前記可動支持体(70)を動かすよう構成された可動支持体(70)移動ユニット(71,72)とをさらに有する、請求項3または4記載の細胞超音波穿通装置。
【請求項6】
前記移動ユニット(71,72)は、前記垂直軸線(Z)に垂直であって水平面と呼ばれる平面を定める少なくとも2つの寸法方向に延びるレール(71)を有し、第3の寸法方向が前記垂直軸線(Z)の方向であり、前記支持体(70)は、前記レール(71)に沿って動かされるようになっている、請求項5記載の細胞超音波穿通装置。
【請求項7】
前記移動ユニット(71,72)は、前記垂直軸線(Z)に垂直であって水平面と呼ばれる平面を定める少なくとも2つの寸法方向に前記支持体(70)を動かすようになったモータをさらに含み、第3の寸法方向が前記垂直軸線(Z)の方向である、請求項5または6記載の細胞超音波穿通装置。
【請求項8】
前記微小気泡(30)の定量吐出装置(10)は、前記垂直軸線(Z)に沿って前記超音波変換器(50)に向いた状態で位置決めされている、請求項5~7のうちいずれか一に記載の細胞超音波穿通装置。
【請求項9】
設けられている可能性のある空気注入源ならびに前記移動ユニット(71,72)の少なくとも一部を収容するよう構成されている第1の部分(81)を備えたハウジング(80)をさらに有し、前記ハウジング(80)は、前記微小気泡(30)の定量吐出装置(10)、前記タンク(40)、前記超音波変換器(50)、前記プレート(60)および前記可動支持体(70)を収容するようになった第2の部分(82)をさらに備え、前記第2の部分(82)は、開閉されるようになったカバー(83)をさらに有し、前記カバー(83)は、ユーザが少なくとも前記プレート(60)に接近することができる開放位置にある、請求項5~8のうちいずれか一に記載の細胞超音波穿通装置。
【請求項10】
前記微小気泡(30)の定量吐出装置(10)、前記超音波変換器(50)、前記移動ユニット(71,72)、設けられている可能性のある第1の空気注入源、設けられている可能性のある前記第2の空気注入源、および前記カバー(83)のうちの少なくとも1つを制御するよう構成された処理ユニットをさらに有する、請求項3~9のうちいずれか一に記載の細胞超音波穿通装置。
【請求項11】
請求項1または2のうちいずれか記載の微小気泡(30)を定量吐出する装置(10)によって細胞の超音波穿通を行う方法であって、微小気泡(30)の溶液(26)の入っているバイアル(20)が前記微小気泡(30)の定量吐出装置(10)内に受け入れられ、前記細胞超音波穿通方法は、空気を前記第1のカテーテル(11)の前記第1の端(111)の前記オリフィスから前記バイアル(20)中に注入するステップを含み、前記注入された空気は、バイアル(20)内に過剰圧力を生じさせ、その結果、前記バイアル(20)内に入っている微小気泡(30)が前記第2のカテーテル(12)に該第2のカテーテルの第1の端(121)の前記オリフィスから入り、次に、前記第2のカテーテル(12)内で該第2のカテーテルの前記第2の端(122)に向かって移動するようになっている、細胞超音波穿通方法。
【請求項12】
空気を前記第2のカテーテル(12)の少なくとも一部の周りに少なくとも部分的に配置された第3のカテーテル(13)に注入するステップをさらに含む、請求項11記載の細胞超音波穿通方法。
【請求項13】
前記支持体(70)を移動させるステップをさらに含み、前記微小気泡(30)の定量吐出装置(10)は、前記垂直軸線(Z)に沿って前記超音波変換器(50)に向いた状態で位置決めされ、前記支持体(70)は、前記プレート(60)の各受け入れ部(61)を前記垂直軸線(Z)に沿って前記微小気泡(30)の定量吐出装置(10)と前記超音波変換器(50)との間で連続して配置するよう動かされる、請求項11または12記載の細胞超音波穿通方法。
【請求項14】
コンピュータプログラム製品であって、コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると、請求項11~13のうちいずれか一に記載の細胞超音波穿通方法
を実行する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞トランスフェクション操作分野、特に気泡を用いた超音波穿通に関する。本発明は、特に、微小気泡を定量吐出する装置およびかかる装置を用いる細胞の超音波穿通(sonoporation:ソノポレーション)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞トランスフェクション(cell transfection)は、形質導入(transduction)とは異なり、ウイルスを利用しないで活性分子(例えば、核酸、化学療法剤分子、マーカ、タンパク質など)をトランスフェクション操作されるべき細胞中に導入する方法である。
【0003】
細胞超音波穿通は、超音波を用いて細胞の透過性を変えてトランスフェクション操作されるべき細胞中への活性分子の導入を可能にするトランスフェクション法である。
【0004】
既知の形式の超音波穿通装置は、例えば、国際公開第2005/110955号パンフレットに記載されている。この装置は、液体で満たされたタンクの底部に配置されていて超音波を可動構造体上に配置されたトランスフェクション操作されるべき細胞に放出する超音波変換器を有する。
【0005】
既知のように活性分子を微小気泡内に封入することによって超音波穿通操作の効率を大幅に高めることができる。次に、活性分子を収容した微小気泡をトランスフェクション操作されるべき細胞に接触させ、これら微小気泡は、そして変換器によって放出された超音波の影響下で振動する。トランスフェクション操作されるべき細胞とのこれらの相互作用により、かかる細胞膜が透過性を有し、それにより活性分子がトランスフェクション操作されるべき細胞に入ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2005/110955号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一問題は、トランスフェクション操作されるべき細胞上への微小気泡の定量吐出が、マイクロピペットを用いたユーザによって手動で行われるということにある。かかる定量吐出は、退屈であり、しかも超音波穿通操作の効率を貧弱にする。
【0008】
本発明の一目的は、公知形式の装置と比較して効率が向上した細胞超音波穿通のための微小気泡の定量吐出装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一観点によれば、本発明は、細胞の超音波穿通のために微小気泡を定量吐出する装置において、この装置は、
‐垂直軸線に関して対称な管を有し、管は、微小気泡の溶液の入ったバイアルを受け入れるよう構成され、
‐管内に配置された少なくとも2本のカテーテルを有し、カテーテルは、少なくとも部分的に、垂直軸線に実質的に平行に差し向けられ、カテーテルの各々は、バイアルが管によって受け入れられると、バイアル中に開口するようになったオリフィスを第1の端のところに有し、第1のカテーテルは、第1の空気注入源に連結されるようになっており、第2のカテーテルは、第2の端を有し、
第1のカテーテルが第1の空気注入源に連結されると、空気を第1のカテーテルのオリフィスからバイアル中に注入することができ、注入された空気は、バイアル内に過剰圧力を生じさせ、その結果、バイアル内に入っている微小気泡が第2のカテーテルに第2のカテーテルの第1の端のオリフィスから入り、次に第2のカテーテル内でこの第2のカテーテルの第2の端に向かって移動するようになっていることを特徴とする装置に関する。
【0010】
かかる装置は、ユーザの側での手動操作を必要とすることなく、微小気泡の正確かつ制御された量を自動的に定量吐出することができる。この装置は、ユーザが微小気泡の入ったピペットを手で保持しなければならない場合とは異なり、管およびカテーテルの位置が固定された状態で微小気泡定量吐出場所の精度を向上させることができる。
【0011】
したがって、かかる装置は、向上した微小気泡定量吐出効率をもたらす。
【0012】
さらに、かかる微小気泡の定量吐出は、微小気泡との接触を必要とせず、それにより、超音波穿通中、細胞は、何らかの生物学的汚染から保護される。
【0013】
微小気泡定量吐出装置は、第2のカテーテルの少なくとも一部の周りに少なくとも部分的に配置された第3のカテーテルをさらに有するのが良く、第3のカテーテルは、第2の空気注入源に連結されるようになっている。この第3のカテーテルにより、第2の空気注入源を経て、第2のカテーテルを第2の端まで動いた微小気泡を離脱させて微小気泡をトランスフェクション操作されるべき細胞に定量吐出することができる。この第3のカテーテルにより微小気泡の適用が迅速でありかつ正確である。
【0014】
本発明はまた、かかる微小気泡の定量吐出装置を有する細胞超音波穿通装置に関する。
【0015】
超音波穿通装置は、第1のカテーテルに連結された第1の空気注入源を有するのが良い。この第1の空気注入源により、微小気泡定量吐出装置によって受け入れられたバイアル中に空気を注入することができ、その目的は、微小気泡を第2のカテーテル中に通し、そして微小気泡が第2のカテーテルの第2の端まで移動するようにすることにある。
【0016】
超音波穿通装置は、微小気泡の定量吐出装置が第3のカテーテルを有する場合、オプションとして、第3のカテーテルに連結された第2の空気注入源を有するのが良い。このように、第2のカテーテルの第2の端まで移動した微小気泡は、トランスフェクション操作されるべき細胞に定量吐出されるようこの第2の端から自動的かつ正確に離脱させることができる。
【0017】
超音波穿通装置は、
‐少なくとも部分的に液体で満たされるようになったタンクと、
‐タンク内に配置された超音波変換器と、
‐トランスフェクション操作されるべき細胞を受け入れるようになった少なくとも1つの受け入れ部を備えたプレートと、
‐プレートを受け入れるようになった可動支持体と、
‐可動支持体を動かすよう構成された可動支持体移動ユニットとをさらに有するのが良い。
【0018】
かかる細胞超音波穿通装置により、トランスフェクション操作されるべき細胞を微小気泡定量吐出装置および超音波変換器に対して移動させることができる。したがって、微小気泡定量吐出の精度が向上し、これは、既知の装置と比較して、超音波穿通効率の向上の一因となる。
【0019】
細胞超音波穿通装置の幾つかの好ましいが非限定的な特徴は、個々にまたは組み合わされた状態で次のように示される。
‐移動ユニットは、垂直軸線に垂直であって水平面と呼ばれる平面を定める少なくとも2つの寸法方向に延びるレールを有し、第3の寸法方向が垂直軸線の方向であり、支持体は、レールに沿って動かされるようになっている。かくして、超音波穿通装置に対するトランスフェクション操作されるべき細胞を収容したプレートの配設場所を制御することができ、かくして定量吐出された微小気泡の存在場所の精度を向上させることができる。
‐移動ユニットは、垂直軸線に垂直であって水平面と呼ばれる平面を定める少なくとも2つの寸法方向に支持体を動かすようになったモータをさらに含み、第3の寸法方向が垂直軸線の方向である。このように、超音波穿通装置の配設場所に対するトランスフェクション操作されるべき細胞を収容したプレートの配設場所をユーザの側での手動操作の必要なく自動制御することができる。
‐微小気泡の定量吐出装置は、垂直軸線に沿って超音波変換器に向いた状態で位置決めされている。かくして、トランスフェクション操作されるべき細胞を超音波変換器と微小気泡の定量吐出装置の両方に対して移動させることができ、そしてこれら2つの要素と同一の軸線上に配置させることができ、かくして超音波穿通操作の効率が向上する。
‐細胞超音波穿通装置は、設けられている可能性のある空気注入源ならびに移動ユニットの少なくとも一部を収容するよう構成されている第1の部分を備えたハウジングをさらに有し、ハウジングは、微小気泡の定量吐出装置、タンク、超音波変換器、プレートおよび可動支持体を収容するようになった第2の部分をさらに備え、第2の部分は、開閉されるようになったカバーをさらに有し、カバーは、ユーザが少なくともプレートに接近することができる開放位置にある。かかるハウジングは、細胞超音波穿通装置全体をバイオセーフティキャビネット内に収容するとともにそのモジュール性を向上させるよう使用できる。閉鎖位置では、カバーは、蒸発を制限し、トランスフェクション操作されるべき細胞を隔離し、しかもユーザを支持体の運動から保護する。開放位置では、ユーザは、装置のある特定の要素に接近することができ、かくして、これら要素をモジュール方式で変更するとともに/あるいはクリーニングすることができ、それによりかかる装置の保守が容易になる。
【0020】
細胞超音波穿通装置は、微小気泡の定量吐出装置、超音波変換器、移動ユニット、設けられている可能性のある第1の空気注入源、設けられている可能性のある第2の空気注入源、およびカバーのうちの少なくとも1つを制御するよう構成された処理ユニットをさらに有するのが良い。かかる処理ユニットにより、微小気泡定量吐出シーケンス、プレートの移動、超音波の特性ならびに超音波穿通操作のパラメータの自動制御が可能である。
【0021】
第2の観点によれば、本発明は、第1の観点に係る微小気泡を定量吐出する装置によって細胞の超音波穿通を行う方法であって、微小気泡の溶液の入っているバイアルが微小気泡の定量吐出装置内に受け入れられ、細胞超音波穿通方法は、空気を第1のカテーテルの第1の端のオリフィスからバイアル中に注入するステップを含み、注入された空気は、バイアル内に過剰圧力を生じさせ、その結果、バイアル内に入っている微小気泡が第2のカテーテルにこの第2のカテーテルの第1の端のオリフィスから入り、次に、第2のカテーテル内でこの第2のカテーテルの第2の端に向かって移動するようになっていることを特徴とする細胞超音波穿通方法に関する。
【0022】
超音波穿通方法は、以下のステップを個々の状態でまたは組み合わせた状態でさらに含むことができる。
‐空気を第2のカテーテルの少なくとも一部の周りに少なくとも部分的に配置された第3のカテーテルに注入するステップ。
‐支持体を移動させるステップ。微小気泡の定量吐出装置は、垂直軸線に沿って超音波変換器に向いた状態で位置決めされ、支持体は、プレートの各受け入れ部を垂直軸線に沿って微小気泡の定量吐出装置と超音波変換器との間で連続して配置するよう動かされる。
【0023】
第3の観点によれば、本発明は、コンピュータプログラム製品であって、このコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると細胞超音波穿通方法の実施を可能にするコード命令を有することを特徴とするコンピュータプログラム製品に関する。
【0024】
本発明の他の観点、他の目的および他の利点は、非限定的な例示として与えられた以下の詳細な説明を読むと明らかになろう。かかる実施例は、以下の図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1a】本発明に係る微小記法を定量吐出する装置を示す線図である。
【
図1b】本発明に係る微小記法を定量吐出する装置を示す線図である。
【
図2】本発明に係る超音波穿通装置用のタンクおよび超音波変換器を示す線図である。
【
図3a】本発明に係る超音波穿通装置をカバーの閉鎖位置で示す線図である。
【
図3b】本発明に係る超音波穿通装置をカバーの開放位置で示す線図である。
【
図4】本発明に係る超音波穿通装置を示す線図である。
【
図5a】本発明に係る超音波穿通方法を示す線図である。
【
図5b】本発明に係る微小気泡の移動および定量吐出シーケンスを示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
微小気泡定量吐出および超音波穿通装置
【0027】
図1aおよび
図1bは、細胞の超音波穿通のために微小気泡30を定量吐出する装置10を示している。
【0028】
微小気泡30の定量吐出装置10は、管14を有する。管14は、硬質であるのが良く、実質的に形状が円筒形であるのが良く、しかも垂直軸線Zに関して回転対称であるのが良い。
【0029】
管14は、微小気泡30の溶液26を収容したバイアル20を受け入れるようになった空間を画定する。微小気泡30の直径は、実施されるべき超音波穿通の形式に従って様々であって良い。
【0030】
バイアル20は、クリンプ形バイアルであるのが良い。バイアル20は、底部21、実質的に円筒形の本体22、本体22よりも小さな寸法のネック23、およびネック23と比較して拡大されたヘッド24を有するのが良く、ヘッド24は、好ましくは、隔膜によって閉じられている。
【0031】
バイアル20は、好ましくは、微小気泡30の定量吐出装置10の管14内にヘッド24を下にした状態で位置決めされる。このように位置決めされると、バイアル20のヘッド24、そのネック23およびその本体22の一部は、微小気泡30を含有した溶液26で満たされる。溶液26で満たされていないバイアル20の部分は、空気25で満たされる。バイアル20の本体22は、微小気泡30を定量吐出する装置10の管14と直接的な接触状態にあるのが良い。変形例では、本体22と管14との間に隙間が残ったままである。
【0032】
微小気泡30を定量吐出する装置10は、円筒形の下側部分15をさらに有するのが良い。下側部分15は、管14の中心を通る垂直軸線Zに関して回転対称であり、この下側部分は、管14と接触状態にあるのが良い。下側部分15は、バイアル20を受け入れるようになった管14よりも大きな直径を有するのが良い。
【0033】
微小気泡30を定量吐出する装置10は、第1のカテーテル11を有する。第1のカテーテル11は、微小気泡30を定量吐出する装置10の下側部分15内に固定されている。第1のカテーテル11は、形状が実質的に円筒形であるのが良くかつ垂直軸線Zに関して回転対称であるのが良い。
【0034】
第1のカテーテル11は、オリフィスを備えた第1の端111を有する。バイアル20は、管14内に受け入れられ、第1のカテーテル11は、バイアル20の隔膜を穿通し、その第1の端111のオリフィスは、バイアル20中に、好ましくはバイアル20内に入っている空気25中に垂直に開口している。
【0035】
第1のカテーテル11は、第1の空気注入源に連結されるようになっている。第1の空気注入源と第1のカテーテル11との連結は、第1の空気入口パイプ16を介して行われる。
【0036】
かくして、第1の空気注入源により注入された空気は、第1の空気入口パイプ16を通り、次に、第1のカテーテル11を通って第1のカテーテル11の第1の端111のオリフィス経由でバイアル20中に注入され、それにより、バイアル20内に過剰圧力が生じる。
【0037】
微小気泡30を定量吐出する装置10は、第2のカテーテル12を有する。第2のカテーテル12は、微小気泡30を定量吐出する装置10の下側部分15内に固定されている。第2のカテーテル12は、形状が実質的に円筒形であるのが良くかつ垂直軸線Zに関して回転対称であるのが良い。
【0038】
第2のカテーテル12は、オリフィスを備えた第1の端121を有する。バイアル20が管14内に受け入れられると、第2のカテーテル12は、バイアル20の隔膜を穿通し、その第1の端121のオリフィスは、バイアル20中に、好ましくはバイアル20内に入れられている微小気泡30の溶液26中に垂直に開口する。
【0039】
第2のカテーテル12は、第2の端122を有する。第2のカテーテル12の第2の端122は、好ましくは、微小気泡30を定量吐出する装置10の管14および下側部分15の外部に開口する。
【0040】
かくして、バイアル20内に生じた過剰圧力により、バイアル20内に入っている微小気泡30が押されてその第1の端121のオリフィスを経て第2のカテーテル12に入り、次に第2のカテーテル12内でその第2の端122の方へ移動する。
【0041】
好ましい実施形態によれば、微小気泡30を定量吐出する装置10は、第3のカテーテル13を有する。第3のカテーテル13は、形状が実質的に円筒形であるのが良く、この垂直軸線Zに関して回転対称であるのが良い。
【0042】
第3のカテーテル13は、第2のカテーテル12の少なくとも一部の周りに配置されている。第3のカテーテルは、微小気泡30を定量吐出する装置10の下側部分15内に固定されるとともに配置されるのが良い。第3のカテーテル13の一端は、微小気泡30を定量吐出する装置10の管14および下側部分15の外側にかつ第2のカテーテル12の第2の端122の近くに開口するのが良い。
【0043】
第3のカテーテル13は、第2の空気注入源に連結されるようになっている。第2の空気注入源と第3のカテーテル13との連結は、第2の空気入口パイプ17を介して行われる。
【0044】
かくして、第2の空気注入源を通って空気を第3のカテーテル13中に注入することができ、注入された空気は、第2のカテーテル12の第2の端122まで動いている微小気泡30を離脱させてこれら微小気泡をトランスフェクション操作される細胞に定量吐出する。
【0045】
好ましい実施形態によれば、微小気泡30を定量吐出する装置10は、固定される。変形例では、微小気泡30を定量吐出する装置10は、この装置を1つまたは2つの方向に特に並進状態で動かすことができる移動ユニットを有するのが良い。微小気泡30を定量吐出する装置10のかかる移動は、微小気泡30の局所化および定量吐出の精度向上に寄与する。
【0046】
微小気泡30を定量吐出する装置10を陰イオン微小気泡30に用いるのが良く、これら陰イオン微小気泡は、細胞の超音波穿通操作のための現時点において最も一般的に用いられている微小気泡30である。
【0047】
変形例では、微小気泡30を定量吐出する装置10を陽イオン微小気泡30に用いることができる。かかる陽イオン微小気泡30は、陰イオンであり、次に、微小気泡30の外側に結合する活性分子、例えば核酸と静電相互作用を行うことができる。これら陽イオン微小気泡30は、脂質を陰イオン微小気泡30に負荷することによって得られる。これら微小気泡は、陰イオン微小気泡30で得られる効率の5倍以上の超音波穿通効率の実現を可能にする。
【0048】
図2、
図3a、
図3bおよび
図4は、一実施形態にかかる微小気泡の定量吐出装置10を有する細胞の超音波穿通装置を記載している。
【0049】
超音波穿通装置は、第1のカテーテル11に連結された第1の空気注入源をさらに有するのが良い。超音波穿通装置は、微小気泡30を定量吐出する装置10が第3のカテーテル13を有する場合、第3のカテーテル13に連結される第2の空気注入源をさらに有するのが良い。第1および第2の空気注入源は、例えば、ポンプまたは圧縮機である。
【0050】
好ましい実施形態によれば、細胞超音波穿通装置は、
‐少なくとも部分的に液体で満たされるようになったタンク40と、
‐タンク40内に配置された超音波変換器50と、
‐トランスフェクション操作されるべき細胞を受け入れるようになった少なくとも1つの受け入れ部61を備えたプレート60と、
‐プレート60を受け入れるようになった可動支持体70と、
‐可動支持体70を動かすよう構成された可動支持体70移動ユニット71,72とをさらに有する。
【0051】
好ましい実施形態によれば、タンク40は、垂直軸線Z周りに実質的に円筒形である。タンク40は、半透明であるのが良くかつ超音波を変換器50から伝搬するよう液体、例えば水で満たされるのが良い。タンク40の寸法は、プレート60および支持体70の寸法形状に合わせられている。タンク40は、液位がタンク40内の超音波の適正な伝搬を可能にするのに十分であることを確認することができる液位検出手段をさらに有するのが良い。タンク40は、これが収容している液体を排出させることができるドレン弁をさらに有するのが良い。さらに、タンク40は、超音波変換器50とタンクが収容している液体との間の封止を保証するシール、例えば二重Oリングシールを有するのが良い。
【0052】
超音波変換器50は、好ましくは、タンク40の中央に固定されるとともに配置される。超音波変換器は、実質的にタンク40の中間部内に配置されるのが良い。超音波変換器50は、タンク40のオリフィスを介してケーブルによって電源に接続される。超音波変換器50は、超音波の特性を例えば用いられる微小気泡30のサイズ、活性分子および/またはトランスフェクション操作されるべき細胞の性状、超音波穿通操作の所望の効率および/または速度などの関数として適合させるために交換可能であるのが良い。
【0053】
プレート60は、好ましくは、水平面を呼ばれる垂直軸線Zに垂直な平面内で延びる。プレート60は、寸法が同一の実質的に長方形の下側および上側を有するのが良い。プレート60の寸法は、セーフティキャビネットのエンクロージャ内に収納可能に構成されているのが良い。プレート60は、その上側上に均等に分布して配置された幾つかの受け入れ部61を有するのが良く、受け入れ部61は、トランスフェクション操作されるべき細胞を収容するようになっている。受け入れ部61は、円筒形であるのが良く、この受け入れ部は、垂直軸線Zに沿ってプレート60の深さ中に延びるのが良い。プレート60の下側と受け入れ部61の底部との間の距離は、1ミリメートルオーダのものであるのが良い。プレート60は、超音波変換器50と微小気泡30を垂直軸線Zに沿って定量吐出する装置10との間に配置されるのが良い。超音波変換器50は、プレート60の下側上に、好ましくはこれから固定された距離を置いたところに配置されるのが良い。微小気泡30を定量吐出する装置10は、プレート60の上側に、好ましくはこれから固定された距離を置いたところに配置されるのが良い。
【0054】
支持体70は、プレート60の一貫した寸法を有するのが良く、かつその周りにぐるりと全体にわたって延びるのが良い。支持体70は、例えばプレート60を凹ませることによってまたは締結具、例えばねじによってプレート60を固定するのが良い。
【0055】
移動ユニット71,72は、水平面と呼ばれる垂直軸線Zに垂直な平面を定める少なくとも2つの寸法方向に延びた走行レール71を含むのが良く、第3の寸法方向は、垂直軸線Zの方向である。移動ユニット71,72は、レール71に沿って摺動するようになった移動要素72をさらに含むのが良い。可動支持体70は移動要素72に取り付けられるのが良く、この可動支持体をレール71に沿って水平面内で並進状態でかつ必要ならば垂直軸線Zに沿って動かすことができる。
【0056】
移動ユニット71,72は、支持体70を上記において定められた寸法方向のうちの少なくとも1つに動かすようになった1つまたは2つ以上のモータをさらに含むのが良い。かくして、支持体70の移動をモータによって自動的に実施することができる。変形例では、移動ユニット71,72は、手動移動手段、例えばマイクロメートルねじを備えても良い。変形例では、移動ユニットは、モータと手動移動手段の両方を備えても良い。例えば、支持体70をモータによって水平面内で自動的に動かすとともにマイクロメートルねじにより手動で垂直軸線Zに沿って動かすことができる。
【0057】
好ましい実施形態によれば、微小気泡30を定量吐出する装置10は、垂直軸線Zに沿って超音波変換器50に向いた状態で位置決めされている。この場合、移動ユニット71,72は、支持体70およびかくしてプレート60を動かして各受け入れ部61を垂直軸線Z上で超音波変換器50と微小気泡30の定量吐出装置10との間で連続的に配置することができる。次に、第2のカテーテル12の第2の端122からいったん離脱した微小気泡30を重力の作用下で受け入れ部61に定量吐出することができる。
【0058】
先の段落で記載した超音波穿通装置では、バイアル20は、第2のカテーテル12の第2の端122の近くに配置され、この第2の端は、それ自体、トランスフェクション操作されるべき細胞を収容した受け入れ部61の近くに配置される。かかる装置は、バイアル20とトランスフェクション操作されるべき細胞との間で微小気泡30の動く距離を制限し、特に第2のカテーテル12の寸法を制限し、それにより高い超音波穿通効率が得られる。
【0059】
変形例では、微小気泡30を収容したバイアル20は、例えば装置の一方の側で、トランスフェクション操作されるべき細胞からさらに遠ざかって位置決めされても良い。
【0060】
超音波穿通装置は、超音波変換器50に電力供給することができる電源をさらに有するのが良い。
【0061】
好ましい実施形態では、超音波穿通装置は、ハウジング80をさらに有する。微小気泡30を定量吐出する装置10の管14は、ハウジング80に取り付けられるとともにこれから突き出るのが良い。かくして、管14中へのバイアル20の導入は、ハウジング80の外側から実施できる。微小気泡30を定量吐出する装置10が移動ユニットを有する場合、この移動ユニットは、例えば、ハウジング80に取り付けられた走行レールを有するのが良く、微小気泡30を定量吐出する装置10は、この走行レールに沿って動くことができる。次に、微小気泡30を定量吐出する装置10の管14をハウジング80ではなくレールに取り付けることができる。
【0062】
変形例では、ある特定の要素、例えばタンク40および超音波変換器50、または微小気泡30を定量吐出する装置10は、ハウジング80の外部に配置されても良い。
【0063】
好ましい実施形態によれば、ハウジング80は、第1の部分81と第2の部分82とから成る。第1の部分81は、不透明であるのが良く、第2の部分82は、透明であるのが良い。第1の部分81は、2つの空気注入源と、電源と、移動ユニット71,72のモータと、走行レール71のうちの幾つかまたは全てとを有するのが良い。第2の部分82は、微小気泡30を定量吐出する装置10と、タンク40と、超音波変換器50と、プレート60と、このプレートの支持体70と、走行レール71のうちの幾つかまたは全てとを有するのが良い。
【0064】
ハウジング80の第2の部分82は、開閉されるようになったカバー83をさらに有するのが良い。カバー83は、透明であるのが良い。閉鎖位置では、カバー83は、蒸発を制限し、トランスフェクション操作されるべき細胞を隔離し、ユーザを支持体70の移動から保護する。開放位置では、ユーザは、装置のある特定の要素、例えばプレート60、支持体70、タンク40およびその変換器50に接近することができる。かくして、幾つかの要素をモジュール方式で交換することができるとともに/あるいはクリーニングすることができ、それによりかかる装置の保守が容易になる。好ましくは、カバー83は、自動的に操作されるようになった閉鎖手段を有する。
【0065】
好ましい実施形態では、細胞の超音波穿通装置は、ソフトウェアにより以下の要素、すなわち、微小気泡30を定量吐出する装置10、超音波変換器50、移動ユニット71,72、第1の空気注入源、第2の空気注入源、カバー83を閉鎖する手段のうちの少なくとも1つを制御するよう構成された処理ユニットまたは処理装置をさらに有する。
【0066】
処理ユニットは、超音波穿通ハウジング80の内側または外側に配置可能である。処理ユニットは、例えば、USBによって、ユーザが超音波穿通操作を制御することができるマンマシンインターフェースを備えたコンピュータに接続されるのが良い。
【0067】
かかる処理ユニットは、微小気泡30の定量吐出の特性(定量吐出体積、定量吐出位置および時間、定量吐出された各微小気泡30相互間の時間、定量吐出操作の回数など)、超音波のパラメータ(周波数、振幅、電力、伝送時間など)、支持体70の移動(移動方向、移動速度、位置)、カバー80の開閉などを自動的に制御する。
【0068】
上記段落において説明した超音波穿通装置は、生体外で使用されるようになっている。変形例では、この装置は、生体内で使用でき、超音波穿通操作は、生体外使用の場合と同一の処理ユニットで制御される。この場合、超音波変換器50は、生体内使用に必要な振幅と適合性があるよう選択され、かかる振幅は、生体外使用の場合の振幅よりも大きい。タンク40は、その寸法が生体外超音波穿通の寸法よりも小さいように選択されるのが良く、このタンクは、観察されるべき組織、例えば動物の皮膚上に配置される。微小気泡30は、血流中に静注される。
【0069】
超音波穿通方法
【0070】
先の段落で説明した微小気泡30を定量吐出する装置10を用いた超音波穿通方法が
図5aに示されている。
【0071】
第1のステップS1によれば、微小気泡30を含有した溶液26を準備する。このステップS1は、陰イオンまたは陽イオン微小気泡30の生成、これら微小気泡30内への活性分子の配置および微小気泡を含有した溶液26の準備を含む。
【0072】
第2のステップS2によれば、バイアル20に微小気泡30を含有した溶液26を少なくとも部分的に満たす。バイアル20をこのステップS2の間、揺さぶるのが良い。バイアル20の充填レベルは、トランスフェクション操作されるべき活性分子の量、プレート60上の受け入れ部61の個数、トランスフェクション操作されるべき細胞の個数、カテーテル11,12,13の寸法などで決まるといえる。
【0073】
第3のステップS3によれば、ヘッド24を下にした状態で微小気泡30の定量吐出装置10の管14内にバイアル20を位置決めする。次に、バイアル20の隔膜を第1および第2のカテーテル11,12によって穿通する。
【0074】
第4のステップS4によれば、空気を第1の空気注入源から注入する。注入された空気は、第1の空気入口パイプ16および第1のカテーテル11を通り、そして第1のカテーテル11の第1の端111のオリフィスを通ってバイアル20内に入っている空気25中に開口する。空気の注入量は、1マイクロリットルのオーダである。このようにして注入された空気は、バイアル20内に入っている空気25の過剰圧力を生じさせる。この過剰圧力により、溶液26内に含まれている微小気泡30が第2のカテーテル12にその第1の端122のオリフィスを通って入り、次に、第2のカテーテル12内でその第2の端122に向かって移動する。
【0075】
第5のステップS5によれば、空気を第2の空気注入源から注入する。空気は、第2の空気入口パイプ17および第3のカテーテル13を通過し、第3のカテーテル13は、第2のカテーテル12の少なくとも一部の周りに配置されている。注入された空気は、第2のカテーテル12の第2の端122のところに生じた微小気泡30を離脱させ、これら微小気泡をトランスフェクション操作されるべき細胞に定量吐出する。
【0076】
先の段落で説明した超音波穿通装置による微小気泡30の移動および定量吐出のシーケンスが
図5bに示されている。
【0077】
第1のステップS11によれば、ユニット71,72を動かすことにより支持体70を動かしてプレート60(プレート60は、n個の受け入れ部61を有する)の受け入れ部61iの幾何学的中心を垂直軸線Z上で超音波変換器50と微小気泡30を定量吐出する装置10との間に配置する。
【0078】
第2のステップS12によれば、超音波を超音波変換器50によって放出して受け入れ部61iの中心を刺激し、この間、微小気泡30の第1の分量を微小気泡30の定量吐出装置10によって受け入れ部61内に定量吐出する。超音波の放出および微小気泡30の定量吐出をある特定の時間後に停止させる。
【0079】
変形例では、微小気泡30の定量吐出を超音波の放出と同時にではなく、これとは別個にまたはこの放出に対して時間をずらして実施しても良い。
【0080】
これらステップS11,S12を微小気泡30の移動および定量吐出の所望のシーケンスに従ってこの受け入れ部61iについてp回繰り返すのが良く、すなわち、支持体70を動かして受け入れ部61iの別の部分(例えば、受け入れ部61の上端、下端、右端または左端)を垂直軸線Z上で超音波変換器50と微小気泡30の定量吐出装置10との間に配置し、次に、微小気泡30の第2の部分を定量吐出している間、超音波を放出する。
【0081】
ステップS12で定量吐出された微小気泡30の分量は、ステップS11,S12の繰り返し回数pに反比例するのが良い。例えば、最初に受け入れ部61iの中央、次に上端、次に右端、次に下端、そして最後に左端を垂直軸線Z上で超音波変換器50と微小気泡30を定量吐出する装置10との間に配置することから成る移動シーケンスにおいてステップS11,S12を5回繰り返す場合、各ステップS12で定量吐出される微小気泡30の分量は、受け入れ部61i内に定量吐出されるべき微小気泡30の全量の1/5に一致するのが良い。かくして、このシーケンスの終わりでは、受け入れ部61i内に定量吐出されるべき微小気泡30の量全体が定量吐出されることになる。
【0082】
受け入れ部61iを移動させる他のシーケンスは、当然のことながら可能である。例えば、支持体70をステップS11において動かして受け入れ部61の中心ではなく、一端を超音波変換器50と微小気泡30を定量吐出する装置10との間に配置しても良い。受け入れ部61の移動シーケンスは、螺旋パターンをなしてまたは任意他の所望のパターンをなして実施可能である。このシーケンスを各受け入れ部61について数回繰り返すことができる。受け入れ部61の移動回数pもまた、様々であって良い。例えば、活性分子が核酸であり、受け入れ部61i中に定量吐出されるべき核酸の量が1グラムである場合、ステップS11,S12を3回繰り返し、そして0.33gの核酸を3つのステップS12の各々で定量吐出することによって核酸を定量吐出するのが良い。
【0083】
変形例では、支持体70が受け入れ部61iを動かしてその中心を垂直軸線Z上で超音波変換器40と微小気泡30を定量吐出する装置10との間に位置決めした状態でかつ微小気泡30の全てがステップS12の間に定量吐出される状態で、微小気泡30の全てを一度に受け入れ部61中に定量吐出しても良い。
【0084】
ステップS11,S12のp回の繰り返しが実施されたとき、受け入れ部61iの微小気泡30の移動および定量吐出のシーケンスが実施される。支持体70を動かしてプレート60の受け入れ部61i+1を垂直軸線Z上で超音波変換器40と微小気泡30を定量吐出する装置10との間に位置決めする。次に、微小気泡30の新たな移動および定量吐出シーケンスを実施する。微小気泡30のこの新たな移動および定量吐出シーケンスは、ステップS11,S12の繰り返し回数qから成るのが良く、この場合qは、pに等しくても良くこれとは異なっていても良い。かくして、各受け入れ部61は、微小気泡30の特定の移動および定量吐出シーケンスから恩恵を受ける。
【0085】
このシーケンスをプレート60のn個の受け入れ部61の各々について繰り返すのが良く、この場合、支持体70を動かしてプレート60の各受け入れ部61を微小気泡30を定量吐出する装置10と超音波変換器50との間に連続して配置する。かくして、超音波穿通操作をトランスフェクション操作されるべき細胞を収容したn個の受け入れ部61について実施するのが良い。変形例では、このシーケンスをプレート60のn個の受け入れ部61の幾つかについてのみ実施しても良い。
【0086】
超音波穿通プロセスをプロセッサ上でランするコンピュータプログラム製品によって実施することができる。かかるソフトウェアは、微小気泡30の定量吐出の特性(定量吐出体積、定量吐出位置および時間、定量吐出された各微小気泡30相互間の時間、定量吐出操作の回数など)、超音波のパラメータ(周波数、振幅、電力、伝送時間など)、支持体70の移動(移動方向、移動速度、位置)、微小気泡30の移動及び定量吐出シーケンス、カバー83の開閉などを自動的に制御するために処理ユニットと情報のやり取りをするのが良い。かくして、超音波穿通操作をプレート60の各受け入れ部61に関する特定のパラメータにより自動的に、再現可能に実施することができる。したがって、かかる超音波穿通効率は、現在の効率と比較して高められる。
【0087】
微小気泡30の移動および定量吐出シーケンスは、超音波穿通作業の実施前にあらかじめ定められるのが良く、この場合、ユーザは、処理ユニットのインターフェースを介して操作中、このシーケンスを変えることができる。変形例では、微小気泡30の移動および定量吐出シーケンスをユーザによって操作中に選択することができる。