(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】置換ブテンアミド医薬組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4706 20060101AFI20230927BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230927BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230927BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230927BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230927BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230927BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A61K31/4706
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/14
A61K9/48
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2022531443
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 CN2020131636
(87)【国際公開番号】W WO2021104340
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】201911180660.1
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522209859
【氏名又は名称】蘇中薬業集団股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522209871
【氏名又は名称】江蘇蘇中薬業研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】唐 海涛
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ベイ▼
(72)【発明者】
【氏名】葛 濱
(72)【発明者】
【氏名】葛 海涛
(72)【発明者】
【氏名】王 正俊
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-531433(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104513200(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド
のマレイン酸塩
の一水和物を
8~
12重量部、充填剤を
50~1
00重量部、崩壊剤を
4~
15重量部、粘着剤を0
.3~
5重量部、滑沢剤を0.
3~
6重量部含有
し、
前記充填剤は、マンニトール及び乳糖のうち1種又は複数種であり、前記滑沢剤は、ベヘン酸グリセリルであり、前記崩壊剤は、カルボキシメチルスターチナトリウムであり、前記粘着剤は、ヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする、(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド
のマレイン酸塩
の一水和物の医薬組成物。
【請求項2】
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド
のマレイン酸塩
の一水和物を9~11重量部、充填剤を65~90重量部、崩壊剤を5~12重量部、粘着剤を0.5~3重量部、滑沢剤を0.5~4重量部含有することを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物の水分含有量が5wt%
以内又は3wt%
以内又は1.5wt%以内であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(1)予備混合:(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミドのマレイン酸塩
の一水和物、充填剤、及び崩壊剤を均一に混合するステップと、
(2)湿式造粒:粘着剤溶液を添加して軟質材料を調製し、篩にかけて造粒し、湿状顆粒を製造するステップと、
(3)乾燥、整粒、総混合:前記湿状顆粒を乾燥した後に、篩にかけて整粒し、滑沢剤を加えて総混合し、医薬組成物を製造するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項5】
ステップ(2)の前記粘着剤は、濃度が2~10wt%であり、純水で調製され、ステップ(3)の前記乾燥後の顆粒の水分は、1.5wt%以内、好ましくは1wt%以内であることを特徴とする、請求項
4に記載の医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物製剤の分野に属し、具体的には置換ブテンアミド医薬組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肺癌は、世界中で最も罹患率及び死亡率が高い悪性腫瘍であり、非小細胞肺癌(NSCLC)は全肺癌の約80%を占める。非小細胞肺癌の中で最も罹患率が高いのは腺癌である。現在、腺癌は、EGFR、ALK、ROS1変異を含む遺伝子変異を駆動することが見出されている。変異遺伝子に対して標的薬を使用すると、従来の化学療法薬を使用することに比べて、生存期間が明らかに改善される。標的薬で遺伝子変異による非小細胞肺癌を治療すると、有効率が70%以上であり、腫瘍制御時間が化学療法の2倍であり、副作用が少なく、生活の質が高い。
【0003】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬EGFR-TKIsは、EGFR遺伝子感受性変異によるNSCLC患者に良好な治療効果を有し、標準治療としてEGFR-TKI治療を第1選択とする。EGFR-TKIsには、1世代のゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、2世代のダコミチニブ、アファチニブ、及び3世代のオシメルチニブが含まれる。癌細胞内のEGFRチロシンキナーゼのリン酸化活性化シグナル並びに下流のMAPK及びAKTシグナル伝達経路を遮断することにより、増殖を抑制し、アポトーシスを促進し、抗腫瘍血管を形成するなどの腫瘍成長の阻害作用を達成する。
【0004】
置換ブテンアミド化合物(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩はEGFR-TKIsであり、非小細胞肺癌に適用され、(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミドのマレイン酸塩は、(E)-N-{4-[(3-エチニルフェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]}-4-(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミドのマレイン酸塩とも呼ばれる。その構造式は、下記式(1)で示される。
【化1】
【0005】
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩の原料は、湿熱に敏感であり、湿熱条件下で、構造式(2)に示す関連不純物Aを生成する。
【化2】
【0006】
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩の不純物Aの生成を製剤組成物の手段により制御又は抑制することについては、従来技術の記載がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、優れた安定性を有する置換ブテンアミド化合物(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩の医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様において、組成が、(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩を5~50重量部、充填剤を40~120重量部、崩壊剤を2~20重量部、粘着剤を0~6重量部、滑沢剤を0.5~5重量部含有する(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩の医薬組成物を提供する。
【0009】
前記組成が、さらに(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩を8~12重量部、充填剤を50~100重量部、崩壊剤を4~15重量部、粘着剤を0.3~5重量部、滑沢剤を0.3~6重量部含有する。さらに(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩を9~11重量部、充填剤を65~90重量部、崩壊剤を5~12重量部、粘着剤を0.5~3重量部、滑沢剤を0.5~4重量部含有する。具体的に(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩を10重量部、充填剤を65~90重量部、崩壊剤を5~12重量部、粘着剤を0.5~3重量部、滑沢剤を0.5~4重量部含有する。
【0010】
前記充填剤は、炭水化物から選ばれ、好ましくは糖類化合物であり、さらに好ましくは糖アルコールである。前記糖アルコールは、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、乳糖から選ばれる1種又は複数種であり、より好ましくはマンニトール、乳糖の1種又は複数種である。
【0011】
前記崩壊剤は、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウムの一方又は両方であり、好ましくはカルボキシメチルスターチナトリウムである。
【0012】
前記粘着剤は、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒプロメロースの一方又は両方であり、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースである。
【0013】
前記滑沢剤は、ベヘン酸グリセリル、ステアリルフマル酸ナトリウム、タルクの1種以上であり、好ましくはベヘン酸グリセリルである。
【0014】
前記(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミドの塩は、薬学的に許容され得る塩である。
【0015】
前記薬学的に許容され得る塩には、規制当局によって承認されるアルカリ金属塩を形成して遊離酸又は遊離塩基の付加塩を形成するために一般的に使用される塩が含まれる。塩は、イオン会合、電荷-電荷相互作用、共有結合、錯化、配位などの作用により形成される。塩が薬学的に許容され得る限り、その性質は重要ではない。
【0016】
前記薬学的に許容され得る塩の種類としては、前記化合物の遊離塩基形態と、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等のような無機酸、又は酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸等のような有機酸の薬学的に許容され得る酸とを反応させて形成される酸付加塩を含むが、これらに限定されるものではない。
【0017】
このような塩の他の例としては、Bergeら,J.Pharm.Sci,66,1(1977)を参照されたい。いくつかの実施形態において、従来の方法を用いて塩を形成する。本発明の化合物のリン酸塩は、例えば、所望の溶媒又は溶媒の組み合わせ中の所望の化合物遊離塩基と、所望の化学量論量のリン酸とを、所望の温度、通常加熱下(溶媒の沸点に依存する)で混合することにより調製される。一実施形態において、冷却(徐冷又は急速冷却)後、前記塩は析出して結晶化する(結晶性である場合)。また、本明細書には本発明の化合物の半塩、単塩、二塩、三塩及び多塩形態がさらに含まれる。同様に、本明細書には、前記化合物、その塩、又は半水和物、一水和物、二水和物、三水和物及び多水和物形態がさらに含まれる。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記化合物は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩又はメタリン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、カプロン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、グリコール酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩、桂皮酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、1,2-エタンジスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、4-メチルビシクロ-[2.2.2]オクト-2-エン-1-カルボン酸塩、グルコヘプトン酸塩、4’4-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)塩、3-フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、t-ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、ムコン酸塩、酪酸塩、フェニル酢酸塩、フェニル酪酸塩、バルプロ酸塩等である。
【0019】
好ましい実施形態において、化合物の塩としては、塩酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩、又はこれらの水和物、例えば一水和物が挙げられる。具体的には、(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミドのマレイン酸塩及びその一水和物が特に適切である。
【0020】
本発明に記載の医薬組成物は、その含水量が好ましくは5wt%以内であり、さらに好ましくは3wt%以内であり、よりさらに好ましくは2wt%又は1.5wt%以内であり、1wt%以内であることは特に適切である。
【0021】
本発明に記載の医薬組成物は、さらに、担体、賦形剤、粘着剤、充填剤、懸濁化剤、芳香剤、甘味剤、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、希釈剤、溶解補助剤、湿潤剤、可塑剤、安定化剤、浸透促進剤、濡らし剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、又はこれらの1種又は複数種の組み合わせを含むが、これらに限定されない薬学的に許容され得る補助剤を含む。前記医薬組成物は、前記化合物を有機体に投与するのに役立つ。
【0022】
本発明に記載の医薬組成物は、さらに、水性分散液、自己乳化分散液、固体溶液、リポソーム分散液、エアゾール剤、固形剤、散剤、即時放出製剤、放出制御製剤、崩壊(fastmelt)製剤、錠剤、カプセル剤、ペレット剤、遅放化製剤、徐放性製剤、パルス放出型製剤、多顆粒製剤並びに混合型即時放出及び放出制御製剤を含むが、これらに限定されず、医薬製剤として、患者への投与を容易にするために調製することができる。
【0023】
本発明の他の態様において、
(1)予備混合:(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩、充填剤、及び崩壊剤を均一に混合するステップと、
(2)湿式造粒:粘着剤溶液を添加して軟質材料を調製し、篩にかけて造粒し、湿状顆粒を製造するステップと、
(3)乾燥、整粒、総混合:湿状顆粒を乾燥した後に、篩にかけて整粒し、滑沢剤を加えて総混合し、前記医薬組成物を製造するステップと、を含む前記(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩の医薬組成物の製造方法を提供する。この医薬組成物は、さらに打錠して錠剤にするか、又はカプセルに充填してカプセル剤にすることができる。ステップ(1)の前記予備混合方法は、ジェットミル予備混合、篩分け予備混合、湿式造粒機予備混合を含み、ステップ(2)の前記粘着剤は、濃度が2~10wt%であり、純水で調製され、ステップ(2)の前記湿式造粒は、湿式造粒機又は流動床を用いて行うことができ、流動床で造粒し乾燥することが好ましく、ステップ(3)の前記乾燥は、送風乾燥又は流動床を用いて行うことができ、流動床を用いることが好ましく、乾燥後の顆粒の水分を1.5wt%以内にし、1wt%以内にすることが好ましい。
【0024】
本発明に係る他の前記(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩の医薬組成物の製造方法は、
(1)予備混合:有効成分、充填剤及び崩壊剤を均一に混合するステップと、
(2)乾燥、総混合:乾燥後の粉末に滑沢剤を加えて総混合するステップと、を含み、ステップ(1)の前記予備混合方法は、ジェットミル予備混合、篩分け予備混合、湿式造粒機予備混合を含み、ステップ(2)の前記乾燥は、送風乾燥を用いて行うことができ、乾燥後の水分を3wt%又は1.5wt%以内にし、1wt%以内にすることが好ましい。
【0025】
具体的には、本発明に係る医薬組成物の製造過程では、マレイン酸(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩を充填剤、崩壊剤と均一に混合し、さらに粘着剤溶液を加えて軟質材料を製造し、その後造粒し、乾燥し、乾燥後の顆粒の水分を3%又は1.5%以内にし、最後に滑沢剤を加えて総混合して前記医薬組成物を得、この医薬組成物に他の薬学的に許容され得る補助剤を加えて錠剤やカプセル剤などの薬物製剤を製造することができる。又は、有効成分のマレイン酸(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩を充填剤、崩壊剤と均一に混合し、その後滑沢剤を加えて総混合し、乾燥して、乾燥後の水分を3wt%又は1.5wt%以内にし、前記医薬組成物を得、この医薬組成物に他の薬学的に許容され得る補助剤を加えて錠剤やカプセル剤などの薬物製剤を製造することができる。
【0026】
より具体的には、本発明に係る医薬組成物の製造方法は、
(1)予備混合:有効成分、充填剤及び崩壊剤を均一に混合するステップと、
(2)湿式造粒:粘着剤溶液を添加して軟質材料を調製し、20~30メッシュの篩にかけて造粒するステップと、
(3)乾燥、整粒、総混合:湿状顆粒を乾燥した後に、0~30メッシュの篩にかけて整粒し、滑沢剤を加えて総混合し、前記医薬組成物を製造するステップと、を含むことが好ましい。
【0027】
本発明では前記不純物Aの測定方法は、次の通りであり、
機器:Agilent 1260高速液体クロマトグラフ、カラム:Agilent ZORBAX Extend(4.6mm×250mm,5μm)、移動相:1wt%の酢酸アンモニウム水溶液(トリエチルアミン又は酢酸でpHを7.0に調整した)を移動相Aとし、アセトニトリルを移動相Bとし、段階溶出手順を表1に示す。検出波長:261nm、流速:1.0mL/min、カラム温度:25℃、試料導入量:10μL、溶液調製:希釈剤:アセトニトリル-水(v/v 60:40)。
【表1】
【発明の効果】
【0028】
本発明の医薬組成物によれば、材料の流動性が大幅に改善され、原料の粘性が大きくて容器壁に付着し易いため、製造が困難であり、製品の含有量が低く、不純物Aの含有量が増加するという問題を解決し、そして、品質の安定性に優れた品質を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の実施例により、本発明の(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミドのマレイン酸塩一水和物(以下、有効成分という)医薬組成物及びその製造方法をさらに説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。有効成分は、CN104513200Aに記載の方法で調製されたものである。
【0030】
(実施例)
(実施例1)
一回使用量の処方組成を表2に示す。
【表2】
【0031】
処方量の有効成分、マンニトール、微結晶セルロース、クロスポビドンを湿式造粒機に加え、均一に混合した後15wt%のポビドンK30を粘着剤として軟質材料を製造し、20メッシュの篩にかけて、乾燥し、顆粒の水分を1.5wt%以内にする。10メッシュで整粒後に顆粒に処方量のステアリン酸マグネシウム、コロイダルシリカを加え、総混合して中間体顆粒をカプセルに充填する。
【0032】
(実施例2)
一回使用量の処方組成を表3に示す。
【表3】
【0033】
処方量の有効成分、微結晶セルロースを湿式造粒機に加え、均一に混合した後15wt%のポビドンK30を粘着剤として軟質材料を製造し、20メッシュの篩にかけて、乾燥し、顆粒の水分を1.5wt%以内にする。0~30メッシュで整粒後に顆粒に処方量のベヘン酸グリセリル、コロイダルシリカを加え、総混合して中間体顆粒をカプセルに充填する。
【0034】
(実施例3)
一回使用量の処方組成を表4に示す。
【表4】
【0035】
処方量の有効成分、マンニトールを湿式造粒機に加え、均一に混合した後15wt%のポビドンK30を粘着剤として軟質材料を製造し、20メッシュの篩にかけて、乾燥し、顆粒の水分を1.5wt%以内にする。整粒後に顆粒に処方量のベヘン酸グリセリル、コロイダルシリカを加え、総混合して中間体顆粒をカプセルに充填する。
【0036】
(実施例4)
一回使用量の処方組成を表5に示す。
【表5】
【0037】
処方量の有効成分、マンニトール、カルボキシメチルスターチナトリウムを湿式造粒機に加え、均一に混合した後4wt%のヒドロキシプロピルセルロースを粘着剤として軟質材料を製造し、20メッシュの篩にかけて、乾燥し、顆粒の水分を1.5wt%以内にする。10メッシュで整粒後に顆粒に処方量のベヘン酸グリセリルを加え、総混合して中間体顆粒をカプセルに充填する。
【0038】
実施例1、2、3、4のカプセル剤顆粒を開放秤量瓶に入れ、高温40℃で1ヶ月間放置し、取り出してその関連物質の含有量(%)を測定した結果を表6に示す。
【表6】
【0039】
上記結果から分かるように、実施例4の組成物は、高温条件下に1ヶ月間放置した場合、関連物質不純物Aの増加が緩やかであった。本発明の技術的手段による医薬組成物は、安定性が他の処方組成物よりも著しく向上したことを示す。
【0040】
(実施例5)
一回使用量の処方組成を表7に示す。
【表7】
処方量の有効成分、マンニトール、カルボキシメチルスターチナトリウムを湿式造粒機に加え、均一に混合した後4wt%のヒドロキシプロピルセルロースを粘着剤として軟質材料を製造し、20メッシュの篩にかけて、乾燥し、水分含有量が0.8wt%、1.0wt%、1.4wt%である顆粒をそれぞれ得る。整粒後にそれぞれの顆粒に処方量のベヘン酸グリセリルを加え、総混合して中間体顆粒をカプセルに充填する。
【0041】
実施例5の水分含有量の異なるカプセル剤顆粒を、それぞれ高温40℃、高湿92.5%RH、照度4500lux、加速(高温40℃、高湿75%)の条件下で14日間放置し、取り出して関連物質の不純物Aの含有量(%)を測定し、結果を表8に示した。
【表8】
【0042】
上記の結果から分かるように、顆粒の水分が1.5wt%以内の製剤組成物が安定した。
【0043】
(実施例6)
一回使用量の処方組成を表9に示す。
【表9】
【0044】
処方量の有効成分、マンニトール、クロスポビドンを湿式造粒機に加え、均一に混合した後4wt%のヒドロキシプロピルセルロースを粘着剤として軟質材料を製造し、20メッシュの篩にかけて、乾燥し、顆粒の水分を1.5wt%以内にする。整粒後に顆粒に処方量のベヘン酸グリセリルを加え、総混合して中間体顆粒をカプセルに充填する。
【0045】
(実施例7)
一回使用量の処方組成を表10に示す。
【表10】
【0046】
処方量の有効成分、マンニトール、カルボキシメチルスターチナトリウムを湿式造粒機に加え、均一に混合した後4wt%のヒドロキシプロピルセルロースを粘着剤として軟質材料を製造し、20メッシュの篩にかけて、乾燥し、顆粒の水分を1.5wt%以内にする。処方量のベヘン酸グリセリルを加え、総混合して中間体顆粒をカプセルに充填する。
【0047】
(実施例8)
一回使用量の処方組成を表11に示す。
【表11】
【0048】
処方量の有効成分、ラクトース一水和物、カルボキシメチルスターチナトリウムを湿式造粒機に加え、均一に混合した後4%のヒドロキシプロピルセルロースを粘着剤として軟質材料を製造し、20メッシュの篩にかけて、乾燥し、顆粒の水分を1.5%以内にする。整粒後に顆粒に処方量のベヘン酸グリセリルを加え、総混合して中間体顆粒をカプセルに充填する。
【0049】
実施例1、2、3、4、6、7、8のカプセル剤を20個/ボトルで、それぞれ高密度ポリエチレンボトルで包装し、2バッグ/ボトルの乾燥剤を加え、加速(高温40℃、高湿75%)条件で3ヶ月間放置し、各ロットの不純物Aの含有量(%)の変化の結果を表12に示す。
【表12】
【0050】
上記の結果から分かるように、加速条件下で3ヶ月間放置した場合に、実施例4、7、8の処方の安定性が他の処方よりも著しく高く、本発明の技術的手段により製造されたカプセル剤の安定性が著しく向上したことを示した。
【0051】
(付記)
(付記1)
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩を5~50重量部、充填剤を40~120重量部、崩壊剤を2~20重量部、粘着剤を0~6重量部、滑沢剤を0.5~5重量部含有することを特徴とする、(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩の医薬組成物。
【0052】
(付記2)
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩を8~12重量部、充填剤を50~100重量部、崩壊剤を4~15重量部、粘着剤を0.3~5重量部、滑沢剤を0.3~6重量部含有することを特徴とする、付記1に記載の医薬組成物。
【0053】
(付記3)
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミド又はその塩を9~11重量部、充填剤を65~90重量部、崩壊剤を5~12重量部、粘着剤を0.5~3重量部、滑沢剤を0.5~4重量部含有することを特徴とする、付記1に記載の医薬組成物。
【0054】
(付記4)
前記充填剤は、炭水化物から選ばれ、好ましくは糖類化合物であり、さらに好ましくは糖アルコールであることを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0055】
(付記5)
前記糖アルコールは、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、乳糖であり、より好ましくはマンニトール、乳糖の1種又は複数種であることを特徴とする、付記1~3のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0056】
(付記6)
前記崩壊剤は、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウムの一方又は両方であり、好ましくはカルボキシメチルスターチナトリウムであることを特徴とする、付記1~3のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0057】
(付記7)
前記粘着剤は、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒプロメロースの一方又は両方であり、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースであり、さらに、前記滑沢剤は、ベヘン酸グリセリル、ステアリルフマル酸ナトリウム、タルクの1種以上であり、好ましくはベヘン酸グリセリルであることを特徴とする、付記1~3のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0058】
(付記8)
前記塩は、塩酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩又はマレイン酸塩であり、さらに塩酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩又はマレイン酸塩の半水和物、一水和物であり、好ましくはマレイン酸塩の一水和物であり、好ましくは前記医薬組成物の水分含有量が5wt%又は3wt%又は1.5wt%以内であることを特徴とする、付記1~3のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0059】
(付記9)
(1)予備混合:(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エンアミドのマレイン酸塩、充填剤、及び崩壊剤を均一に混合するステップと、
(2)湿式造粒:粘着剤溶液を添加して軟質材料を調製し、篩にかけて造粒し、湿状顆粒を製造するステップと、
(3)乾燥、整粒、総混合:前記湿状顆粒を乾燥した後に、篩にかけて整粒し、滑沢剤を加えて総混合し、医薬組成物を製造するステップと、
を含むことを特徴とする、付記1~8のいずれか一つに記載の医薬組成物の製造方法。
【0060】
(付記10)
ステップ(2)の前記粘着剤は、濃度が2~10wt%であり、純水で調製され、ステップ(3)の前記乾燥後の顆粒の水分は、1.5wt%以内、好ましくは1wt%以内であることを特徴とする、付記9に記載の医薬組成物の製造方法。