(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】層状掃気エンジン用ロータリー式気化器
(51)【国際特許分類】
F02M 19/00 20060101AFI20230927BHJP
F02M 9/08 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
F02M19/00 F
F02M9/08 A
(21)【出願番号】P 2020001166
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】307043902
【氏名又は名称】ザマ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓臣
(72)【発明者】
【氏名】田村 峰行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏輝
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-163754(JP,A)
【文献】特開2014-105628(JP,A)
【文献】特開2001-342837(JP,A)
【文献】特許第3073740(JP,B1)
【文献】特開2011-007189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 19/00
F02M 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化器本体に吸気通路と混合気通路が水平方向に貫通形成されるとともに、前記気化器本体の各通路に直交して垂直に形成された有底円筒のスロットル弁孔に嵌合されるスロットル弁を設け、前記スロットル弁には前記吸気通路側
に空気供給側弁孔が
、前記混合気通路側に燃料供給側弁孔が形成された層状掃気エンジン用ロータリー式気化器において、
前記スロットル弁の
前記燃料供給側弁孔
における加速回転方向側の上流端の開口縁に溝ポケットが形成されているとともに、前記混合気通路の少なくとも前記スロットル弁側の開口端の下流側の開口形状が前記スロットル弁の軸線に平行な垂直辺に形成されていることを特徴とする層状掃気エンジン用ロータリー式気化器。
【請求項2】
前記気化器本体に形成されている
前記吸気通路の断面形状が上方に半円状で、
前記混合気通路の断面形状が下方に半円状で仕切り壁により分離した円形であるとともに、前記スロットル弁に形成されている前記空気供給側弁孔の断面形状が上方に半円状で、
前記燃料供給側弁孔側の断面形状が下方に半円状で仕切り壁により分離した円形であることを特徴とする請求項1記載の層状掃気エンジン用ロータリー式気化器。
【請求項3】
前記スロットル弁の
前記溝ポケットが平行な対向辺を有する舌状の開口端を有することを特徴とする請求項1または2記載の層状掃気エンジン用ロータリー式気化器。
【請求項4】
前
記垂直辺の長さが初期設定時に前
記溝ポケットの平行な対向辺により形成される部分が掛か
る長さを有することを特徴とする請求項3記載の層状掃気エンジン用ロータリー式気化器。
【請求項5】
前記混合気通路の少なくとも前記スロットル弁側の開口端の開口形状が矩形状であることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の層状掃気エンジン用ロータリー式気化器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力鋸、芝刈り機などの2行程内燃機関に適した層状掃気エンジン用ロータリー式気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業や林業用の携帯作業機械や小型車両などの2行程内燃機関に気化燃料を供給する装置として、回転体からなるスロットル弁(絞り弁)を弁軸方向に移動させるロータリー式気化器(回転絞り弁式気化器)が広く普及している。このロータリー式気化器は、例えば特開平10-252565号公報に提示されているように、気化器本体の吸気通路に直交させてスロットル弁孔及び計量針を有した円柱状のスロットル弁を回転可能且つ回転時に軸線方向に移動可能に配置し、このスロットル弁をアクセル操作に応じて回動させることでスロットル弁孔の吸気通路との重なり度合いを変更しながら空気流量を制御するとともに、計量針の燃料ノズルへの挿入深さを変えて燃料流量を制御するようになっている。
【0003】
また、前記ロータリー式気化器において、スロットル弁は、同一軸ロータに2つの円孔形状弁孔を持っていて、アイドル時に燃料供給側弁孔を先に開くため、空気供給側弁孔のロータ外径を大きくし2段形状のロータ構成になっており、殊に、例えば特開2006-177352号公報に提示されているものは、
図7に示したようにスロットル弁6に形成した同一の弁孔内に仕切壁9により上方に向けた半円形状の空気供給側弁孔7と下向き半円形状の燃料供給側弁孔8を有し、このスロットル弁6を
図8に示したように、前記半円形状の空気供給側弁孔7と下向き半円形状の燃料供給側弁孔8に対向して吸気通路2および混合気通路3を備えた気化器本体1に装着するものであり、構造が簡単で、気化器の高さを最小にできるため気化器を小型にでき、エンジンも小型に設計できるメリットがある。
【0004】
ところが、前記
図7および
図8に示したような従来の同一の弁孔に仕切壁9を設けただけではロータリー気化器の空燃比制御の構造上、アイドル開度ではスロットル弁6が下方に変位するため、空気供給側弁孔7が先に開き、燃料供給側弁孔8が後から開く構造となってしまうため、少ない空気量でのアイドル空燃比の維持が難しい。
【0005】
そこで、
図9に示したように、スロットル弁6の燃料供給側弁孔8の加速回転方向側の上流端の開口縁に溝ポケット10を形成することで、アイドル初期度から更にアイドル中開度の間は燃料供給側弁孔の溝ポケット10での運転が可能となり、全ての空気と燃料は前記溝ポケット10を介してエンジン側に供給されるため、エマルジョンが比較的高速となりエンジンに供給されることにより、アイドル全姿勢変化時の回転落ち込みを改善するロータリー式気化器が、特開2008-163754号公報に提示されている。
【0006】
一方、気化器は、組み立て時のばらつきを修正することや排気ガスの規制に適合させるため初期設定が必要であり、出荷時に少なくともアイドル域で空気流量および燃料流量が適正となるようにベンチテストを行いエンジン組み立ての流れの中で初期設定しなければならないが、前記ロータリー式気化器は前述のように、スロットル弁のスロットル弁孔と気化器本体に形成された吸気通路との重なり度合いを変更しながら空気流量を制御するとともに、計量針の燃料ノズルへの挿入深さを変えて燃料流量を制御するようになっており、初期設定も、スロットル弁を前記溝ポケットが混合気通路に重なる前記アイドル域において前記スロットル弁をアイドル調節ネジにより軸線方向に移動させる(図示せず)とともに前記計量針を燃料調節ネジにより軸線方向に移動させて燃料ノズルへの挿入深さを調整する(図示せず)ことにより
図10に示すように空気流量(Air)と燃料流量(Fuel)を予め定めた目標仕様(Spec)に調整するものである。
【0007】
しかしながら、前述のように、ロータリー式気化器では、スロットル弁を軸線方向に移動させることにより燃料流量(Fuel)を増減するものであり、
図11(a)に示したアイドル域において調整ねじ(図示せず)を用いて燃料を増加させると、スロットル弁6が軸線方向(図示する上方向)に移動するので燃料供給側弁孔8の溝ポケット10が
図11(b)に示したように気化器本体1の混合気通路3の間で移動する。
【0008】
このとき、この従来例では、混合気通路3が下向き半円形状であることから必然的にスロットル弁6における燃料供給側弁孔8の溝ポケット10の開口度合いが増加する(図示する斜線の部分)ことになり、燃料流量(Fuel)を変化させただけで同時に空気流量(Air)が変化してしまうことになる。
【0009】
そのため、例えば初めに目標仕様(Spec)になるように所定の空気流量(Air)を決めた状態で燃料流量(Fuel)を調整しても空気流量(Air)が変化してしまうので初期設定を前記
図10に示したように予め定めた目標仕様(Spec)に調整することはきわめて困難であり、
図12または
図13に示したように目標仕様(Spec)付近で空気流量(Air)と燃料流量(Fuel)との微調整を何度も繰り返して調整しているのが現状でありきわめて生産性が悪い。
【0010】
また、例えば特開2002-256975公報に、空気流量(Air)と燃料流量(Fuel)をそれぞれ個別に調整可能な調整ネジを備えてアイドル調整を容易にしたロータリー気化器が提案されているが、前記初期設定の調整が困難な理由は、前述のように、スロットル弁6における燃料供給側弁孔8の溝ポケット10の形状と気化器本体1に形成した混合気通路3の下向き半円形状を起因とするものであり、この場合にもスロットル弁を軸線方向に移動させて燃料流量(Fuel)を調整すると同時に空気流量(Air)が変化してしまうので初期設定の調整における煩雑さを解消するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2006-177352号公報
【文献】特開2008-163754号公報
【文献】特開2002-256975公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、ロータリー式気化器について、出荷時におけるアイドル運転域の初期設定時(スタートポジション(チョーク時))の空気流量(Air)と燃料流量(Fuel)を予め定めた目標仕様(Spec)に容易に調整可能として生産性の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するためになされた本発明は、気化器本体に吸気通路と混合気通路が水平方向に貫通形成されるとともに、前記気化器本体の各通路に直交して垂直に形成された有底円筒のスロットル弁孔に嵌合されるスロットル弁を設け、前記スロットル弁には前記吸気通路側に空気供給側弁孔が、前記混合気通路側に燃料供給側弁孔が形成された層状掃気エンジン用ロータリー式気化器において、前記スロットル弁の前記燃料供給側弁孔における加速回転方向側の上流端の開口縁に溝ポケットが形成されているとともに、前記混合気通路の少なくとも前記スロットル弁側の開口端の下流側の開口形状が前記スロットル弁の軸線に平行な垂直辺に形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明において、前記気化器本体に形成されている前記吸気通路の断面形状が上方に半円状で、前記混合気通路の断面形状が下方に半円状で仕切り壁により分離した円形であるとともに、前記スロットル弁に形成されている前記空気供給側弁孔の断面形状が上方に半円状で、前記燃料供給側弁孔側の断面形状が下方に半円状で仕切り壁により分離した円形であると気化器本体の小型化が図れる。
【0015】
更に、本発明において、前記スロットル弁の前記溝ポケットが平行な対向辺を有する舌状の開口端を有することを特徴とする場合には更に正確な調整を容易にすることができる。
【0016】
更にまた、本発明において、前記垂直辺の長さが初期設定時に前記溝ポケットの平行な対向辺により形成される部分が掛かる長さを有すると好ましく、前記気化器本体に形成された混合気通路のスロットル弁側の開口端の開口形状が矩形状であると好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、スロットル弁を前記溝ポケットが混合気通路に重なる前記アイドル域において前記スロットル弁を調節ネジにより軸線方向に移動させて燃料を増減させても溝ポケットの混合気通路への開口面積は変化しないか、または変化が少ないので空気流量を定めておくことで、燃料ノズルへの挿入深さを調整することにより空気流量(Air)と燃料流量(Fuel)を予め定めた目標仕様(Spec)に容易に調整することで生産効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の好ましい実施の形態を示す気化器本体の正面図である。
【
図2】
図1のY-Y線に沿って一部を破断した側面図である。
【
図3】
図1に示した実施の形態に用いられるスロットル弁の拡大斜視図である。
【
図4】
図1および
図2に示した実施の形態に
図3に示したスロットル弁の実施の形態を使用した場合のアイドル域における気化器本体の混合気通路に露出するスロットル弁を示すもので、(a)は燃料流量調整前の状態を、(b)は燃料流量調整後の状態をそれぞれ示すものである。
【
図5】本発明の異なる実施の形態における気化器本体の正面図である。
【
図6】
図5に示した実施の形態に
図3に示したスロットル弁の実施の形態を使用した場合のアイドル域における気化器本体の混合気通路に露出するスロットル弁を示すもので、(a)は燃料流量調整前の状態を、(b)は燃料流量調整後の状態をそれぞれ示すものである。
【
図7】従来例におけるスロットル弁の拡大斜視図である。
【
図9】異なる従来例におけるスロットル弁の拡大斜視図である。
【
図10】出荷時のアイドル域における燃料流量(Fuel)と空気流量(Air)を調整して目標仕様値(Spec)に調整する状態を示す状態図である。
【
図11】従来のアイドル域における気化器本体の混合気通路に露出するスロットル弁を示すもので、(a)は燃料流量調整前の状態を、(b)は燃料流量調整後の状態をそれぞれ示すものである。
【
図12】従来の出荷時のアイドル域における燃料流量(Fuel)と空気流量(Air)を調整して目標仕様値(Spec)に調整する状態を示す状態図である。
【
図13】従来の出荷時のアイドル域における燃料流量(Fuel)と空気流量(Air)を調整して目標仕様値(Spec)に調整する状態を示す状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の層状掃気エンジン用ロータリー式気化器の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の層状掃気エンジン用ロータリー式気化器の好ましい実施の形態の正面図を示すものであり、基本的な構成は従来周知のものと同様で、符号1は気化器本体、符号2は前記気化器本体1に貫通形成した吸気通路、符号3は前記気化器本体1に貫通形成した混合気通路、符号4は前記吸気通路2と前記混合気通路3を分離する前記気化器本体1に形成した仕切壁である。
【0021】
また、本実施の形態は、
図2の縦断面図に示すように、気化器本体1に水平方向に横断して断面形状が上方に半円状の吸気通路2および断面形状が下方に半円状の混合気通路3が吸気通路2の下方に設けられ、そして両者は仕切壁4によって互いに分離された一つの円筒状の共通円孔に形成されており、前記吸気通路2と前記混合気通路3の左方の端は上流側のエアクリーナに接続されており、前記吸気通路2と前記混合気通路3の
図2右方の端は下流側のエンジン側インシュレータを介して吸気通路および掃気通路へ接続されている(図示せず)。
【0022】
更に、本実施の形態は、気化器本体1に垂直に形成された有底円筒のスロットル弁孔5に軸線において備えられた回転軸を介して回転可能且つ回転に伴って軸線方向に移動するスロットル弁6が嵌合されている。
【0023】
このスロットル弁6は
図3に示すように、前記
図1および
図2に示したスロットル弁孔5と略同径の単一の円筒で、前記スロットル弁6には空気供給側弁孔7と燃料供給側弁孔8とが前記スロットル弁6を直径方向に横切って貫通形成され、前記空気供給側弁孔7は断面形状が上方に半円状で、前記燃料供給側弁孔8は断面形状が下方に半円状であって、前記空気供給側弁孔7と前記燃料供給側弁孔8の間には仕切壁9を有し、互いに分離された一つの円筒状の共通円孔に形成されている。
【0024】
そして、前記空気供給側弁孔7は掃気空気の流量比を制御するために吸気通路2へ空気を供給し、前記燃料供給側弁孔8は混合気通路3にエンジン出力を制御するために燃料混合気を供給する。前記吸気通路2及び前記混合気通路3並びに空気供給側弁孔7及び前記燃料供給側弁孔8は略同一の断面形状に形成され、両者はそれぞれ仕切壁4,9によって互いに一致した一つの円筒状の共通円孔に形成されている。
【0025】
また、本実施の形態では、スロットル弁6の前記燃料供給側弁孔8には、前記スロットル弁6の加速回転方向側の上流端の開口縁に前記燃料供給側弁孔8に連通する溝ポケット10が形成されている。
【0026】
この溝ポケット10は、例えば特開2008-163754号公報に提示されているように、スロットル弁6がアイドル状態の時、前記スロットル弁6は先行して溝ポケット10と混合気通路3の部分的に重なり合いにより、即ち、前記燃料供給側弁孔8の溝ポケット10が先に連通することにより混合気通路3は開かれる一方、前記吸気通路2は閉じられたままで、したがって、全ての空気と燃料は前記溝ポケット10を介してエンジン側に供給されるため、エマルジョンが比較的高速となりエンジンに供給されるため、アイドル全姿勢変化時の回転落ち込みが改善されると言う作用、効果を生じさせるものであり、本実施の形態では殊に溝ポケット10が燃料供給側弁孔8の加速回転方向側の上流端の開口縁81に所定の間隔を有して配置される平行な対向辺101,102を有する舌状の開口端を有する。
【0027】
加えて、本実施の形態は、前記混合気通路3の少なくとも前記スロットル弁6側の開口端31(
図2参照)の下流側の開口が所定の長さを有する前記スロットル弁6の軸線に平行な垂直辺32に形成されていることが特徴である。
【0028】
このように、本実施の形態は、前記スロットル弁6をアイドル運転位置に水平に回転させたとき、最初に前記溝ポケット10が前記混合気通路3と重なり合い、前記燃料供給側弁孔8と前記混合気通路3が連通し、空気供給側弁孔7より先に前記燃料供給側弁孔8が開口する構造となっている。
【0029】
尚、他の部分における本実施の形態における基本的構成や使用方法は従来周知の層状掃気エンジン用ロータリー式気化器と同様であり、スロットル弁6がスロットル弁カバー12から突出された回転軸11の終端に取り付けられているスロットルレバー13の回転により回転軸11を中心として水平回転され、前記気化器本体1及び前記スロットルレバー13との間に設けられている例えばカム機構14によって、前記スロットルレバー13及び前記スロットル弁6は徐々に持ち上げられながら水平回転され、スロットル弁6の空気供給側弁孔7および燃料供給側弁孔8と気化器本体1に形成されている吸気通路2および混合気通路3との開通度合いを変化させるとともに上方から空気供給側弁孔7を横切って燃料供給側弁孔8の中に突き出されて延びる回転軸11へ取り付けられた燃料調節するニードル15から所定の燃料をスロットル弁カバー12とは反対側の底面にメタリングダイヤフラム17によってベント穴から大気開放された空気チャンバ18から隔離されたメタリングチャンバ19からの燃料は、前記燃料供給側弁孔8の中に設けられるメインノズル20から流出するものであり詳細な説明は省略する。
【0030】
そして、層状掃気エンジン用ロータリー式気化器は、
図4(a)に示したように、スロットル弁6における燃料供給側弁孔8の溝ポケット10部分が、気化器本体1に形成した前記混合気通路3の下流側の開口に重なり合うようなアイドル域位置において、ベンチテストにおいて、調整ネジ(図示せず)を用いて前記スロットル弁6を軸線方向に移動させるとともに前記軽量針を燃料調節ネジにより軸線方向に移動させて燃料ノズルへの挿入深さを調整することにより前記10に示すように空気流量(Air)と燃料流量(Fuel)を予め定めた目標仕様(Spec)に調整してエンジンに組み込んで出荷されるが、前記混合気通路3のスロットル弁6側の開口端31の下流側の開口が所定の長さを有する前記スロットル弁6の軸線に平行な垂直辺32に形成されているので、
図4(b)に示したようにスロットル弁6を調整して例えば矢印方向に移動させて燃料流量を増加させたとしても
図11に示した従来例の場合と異なりスロットル弁6における燃料供給側弁孔8の溝ポケット10との開口度合いが変化しないのでスロットル弁6を空気流量(Air)に影響を与えることなく燃料流量(Fuel)を調整可能であり、予め定めた目標仕様(Spec)に容易に調整することができ、生産性が向上する。
【0031】
尚、本実施の形態では、スロットル弁6における燃料供給側弁孔8の溝ポケット10部分は、開口端が所定の間隔を有して配置される平行な対向辺101,102を有する舌状であることからスロットル弁6を調整して燃料流量を増加させたとしても溝ポケット10との開口度合いが変化しないので調整がより確実で且つ容易であるが、本発明は、基本的に混合気通路3のスロットル弁6側の開口端31の下流側の開口が所定の長さを有する前記スロットル弁6の軸線に平行な垂直辺32に形成されていることによりスロットル弁6を調整して燃料流量を増加させたとしても溝ポケット10との開口度合いの変化を少なくするので前記
図3に示した形状を含めて他の形状の溝ポケットを用いた場合(図示せず)にも十分な成果を挙げることができるものである。
【0032】
図5および
図6は本発明の異なる実施の形態を示すものであり、基本的構成および作用、効果は前記
図1乃至
図4に示した実施の形態とほぼ同様であるが、前記
図1乃至
図4に示した実施の形態では気化器本体1に形成した下向き半円形の混合気通路3にスロットル弁6側の開口端31の下流側の開口が所定の長さを有する前記スロットル弁6の軸線に平行な垂直辺32を形成しているのに対して混合気通路3の形状が前記垂直辺32を含む矩形状に形成されている点が異なる。
【0033】
この実施の形態における作用、効果は前記
図1乃至
図4に示した実施の形態と同様であるが、前記
図1乃至
図4に示した実施の形態の混合気通路3が基本的に下向き半円形でスロットル弁6側の開口端31(
図2参照)の下流側の開口が所定の長さを有する前記スロットル弁6の軸線に平行な垂直辺32に形成されているのに対して混合気通路3の加工がより簡単である。
【符号の説明】
【0034】
1 気化器本体、2 吸気通路、3 混合気通路、4 仕切壁、5 スロットル弁孔、6 スロットル弁、7 空気供給側弁孔、8 燃料供給側弁孔、9 仕切壁、10 溝ポケット、11 回転軸、12 スロットル弁カバー、13 スロットルレバー、14 カム機構、15 ニードル、17 メタリングダイヤフラム、18 空気チャンバ、19 メタリングチャンバ、20 メインノズル、31 開口端、32 垂直辺、81 開口端、101,102 平行辺