(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】衝撃吸収ユニットおよび落石防止システム
(51)【国際特許分類】
E01F 7/04 20060101AFI20230927BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20230927BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20230927BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
E01F7/04
F16F7/00 C
F16F7/12
F16F15/02 Z
(21)【出願番号】P 2020043385
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】507096124
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 博
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-020253(JP,A)
【文献】特開2015-183456(JP,A)
【文献】特開2010-001679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
F16F 7/00
F16F 7/12
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃を吸収するための衝撃吸収ユニットであって、
伸縮可能なバネと、前記バネを固定
し、前記バネの周囲に配置される固定部材とを有しており、
前記衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに前記固定部材が破断
し、
前記固定部材の内側には、前記固定部材が破断したときに前記バネの伸びを許容しない固定部分と、前記固定部材が破断したときに前記バネの伸びを許容する開放部分とが形成されている、衝撃吸収ユニット。
【請求項2】
衝撃を吸収するための衝撃吸収ユニットであって、
伸縮可能なバネと、前記バネを固定するための固定部材とを有しており、
前記固定部材は、前記バネの一部を内部に収容する第1の収容部分と、前記バネの一部を内部に収容するための第2の収容部分と、前記第1の収容部分と前記第2の収容部分とが相対的に移動しないよう維持するための維持部分とを有しており、
前記衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに前記維持部分が破断する、衝撃吸収ユニット。
【請求項3】
前記固定部材の前記第1の収容部分および前記第2の収容部分の内側には、前記維持部分が破断したときに前記バネの伸びを許容しない固定部分と、前記維持部分が破断したときに前記バネの伸びを許容する開放部分とがそれぞれ形成されている、請求項2記載の衝撃吸収ユニット。
【請求項4】
衝撃を吸収するための衝撃吸収ユニットであって、
伸縮可能なバネと、前記バネを固定するための固定部材と、前記バネの周囲に配置される保護部材と、前記保護部材と接触する位置に配置され、前記バネを液密に封止する封止部材と、を有しており、
前記衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに前記固定部材が破断する、衝撃吸収ユニット。
【請求項5】
前記バネは押しバネであり、
前記固定部材は、長手方向に沿って圧縮された状態の前記バネを固定する、請求項1
乃至4のいずれか一項に記載の衝撃吸収ユニット。
【請求項6】
前記バネは引きバネである、請求項1
乃至4のいずれか一項に記載の衝撃吸収ユニット。
【請求項7】
前記固定部材には破断部分が設けられており、
前記衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに前記固定部材が前記破断部分に沿って破断する、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の衝撃吸収ユニット。
【請求項8】
前記固定部材の前記維持部分は、前記バネの内部に配置される棒状部材を含んでおり、
前記衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに前記棒状部材が破断する、請求項
2または
3記載の衝撃吸収ユニット。
【請求項9】
前記固定部材は、前記バネの内側に配置されており、
前記固定部材の外側には、前記固定部材が破断したときに前記バネの伸びを許容しない固定部分と、前記固定部材が破断したときに前記バネの伸びを許容する開放部分とが形成されている、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の衝撃吸収ユニット。
【請求項10】
所定の間隔を空けて斜面に配置される複数の支柱と、
各前記支柱に張架され、前記斜面に沿って落ちる落下物を受け止める落下物受止部材と、
各前記支柱と山側の前記斜面との間に張られたワイヤ本体と、
前記ワイヤ本体に接続された衝撃吸収ユニットであって、伸縮可能なバネと、前記バネを固定するための固定部材と
、前記バネの周囲に配置される保護部材と、前記保護部材と接触する位置に配置され、前記バネを液密に封止する封止部材と、を有しており、前記衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに前記固定部材が破断する衝撃吸収ユニットと、
を備えた、落石防止システム。
【請求項11】
衝撃
吸収ユニットとして、当該衝撃吸収ユニットに衝撃が加えられたときに前記固定部材が破断する衝撃の大きさの閾値が互いに異なる複数の種類のものが直列に並ぶよう用いられる、請求項
10記載の落石防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃を吸収するための衝撃吸収ユニット、およびこのような衝撃吸収ユニットを用いた山の斜面等に設置される落石防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、落石を捕捉するために山の斜面等に設置される落石防護柵において、落石防護柵により落石を受け止めた際の衝撃を衝撃吸収ユニットによって吸収することが行われている。より具体的には、このような衝撃吸収ユニットを用いた落石防護柵として、特許文献1の
図1等に開示されるものが知られている。
【0003】
特許文献1の
図1に開示される落下防護柵は、所定の間隔を空けて斜面に配置された支柱と、支柱の上端部と山側の斜面との間に張られた山側ワイヤと、支柱の間に張られた、落石を受け止めるためのリング式ネット等とを有している。また、リング式ネットにより落石が受け止められたときに山側ワイヤ等の変形(伸び)を許容することにより、この山側ワイヤの伸びによって当該山側ワイヤ等に加えられた衝撃の一部を吸収するようになっている。より詳細には、山側ワイヤの一部が当該山側ワイヤの径方向において重なるよう一巻きすることによって環状の部分を形成し、この重ねられた部分に配置された緊締部材をかしめることにより環状の部分を固定するようになっている。そして、衝撃が加えられたときに、環状の部分の環の大きさが小さくなることにより、落石を受け止めた際の衝撃の一部が山側ワイヤと緊締部材との間に働く摩擦力によって吸収されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来の衝撃吸収ユニットは、ワイヤの伸びを許容することによりワイヤに加えられる衝撃を吸収するものであり、上記の構成では与えられる衝撃の大きさが小さいときにもワイヤが伸びるようになっている。このように、小さい衝撃でもワイヤが伸びやすいため比較的短い間隔で衝撃吸収ユニットのメンテナンスを行う必要があるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときにのみ固定部材が破断することにより衝撃を吸収することのできる衝撃吸収ユニット、およびこのような衝撃吸収ユニットを用いた落石防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の衝撃吸収ユニットは、衝撃を吸収するための衝撃吸収ユニットであって、伸縮可能なバネと、前記バネを固定するための固定部材とを有しており、前記衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに前記固定部材が破断することを特徴とする。
【0008】
このような衝撃吸収ユニットによれば、所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときにのみ固定部材が破断するとともにバネが伸縮するようになっているため、固定部材が破断する際に衝撃を吸収するようにすることができる。
【0009】
本発明の衝撃吸収ユニットにおいては、前記バネは押しバネであり、前記固定部材は、長手方向に沿って圧縮された状態の前記バネを固定するようになっていてもよい。
【0010】
あるいは、前記バネは引きバネであってもよい。
【0011】
本発明の衝撃吸収ユニットにおいては、前記固定部材には破断部分が設けられており、 前記衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに前記固定部材が前記破断部分に沿って破断するようになっていてもよい。
【0012】
また、本発明の衝撃吸収ユニットにおいては、前記固定部材は、前記バネの周囲に配置されており、前記固定部材の内側には、前記固定部材が破断したときに前記バネの伸びを許容しない固定部分と、前記固定部材が破断したときに前記バネの伸びを許容する開放部分とが形成されていてもよい。
【0013】
また、前記固定部材は、前記バネの一部を内部に収容する第1の収容部分と、前記バネの一部を内部に収容するための第2の収容部分と、前記第1の収容部分と前記第2の収容部分とが相対的に移動しないよう維持するための維持部分とを有しており、前記衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに前記維持部分が破断するようになっていてもよい。
【0014】
この場合、前記固定部材の前記第1の収容部分および前記第2の収容部分の内側には、前記維持部分が破断したときに前記バネの伸びを許容しない固定部分と、前記維持部分が破断したときに前記バネの伸びを許容する開放部分とがそれぞれ形成されていてもよい。
【0015】
本発明の衝撃吸収ユニットにおいては、前記固定部材の前記維持部分は、前記バネの内部に配置される棒状部材を含んでおり、前記衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに前記棒状部材が破断するようになっていてもよい。
【0016】
また、本発明の衝撃吸収ユニットにおいては、前記固定部材は、前記バネの内側に配置されており、前記固定部材の外側には、前記固定部材が破断したときに前記バネの伸びを許容しない固定部分と、前記固定部材が破断したときに前記バネの伸びを許容する開放部分とが形成されていてもよい。
【0017】
本発明の衝撃吸収ユニットは、前記バネの周囲に配置される保護部材と、前記保護部材と接触する位置に配置され、前記バネを液密に封止する封止部材とを更に備えていてもよい。
【0018】
本発明の落石防止システムは、所定の間隔を空けて斜面に配置される複数の支柱と、各前記支柱に張架され、前記斜面に沿って落ちる落下物を受け止める落下物受止部材と、各前記支柱と山側の前記斜面との間に張られたワイヤ本体と、前記ワイヤ本体に接続された衝撃吸収ユニットであって、伸縮可能なバネと、前記バネを固定するための固定部材とを有しており、前記衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに前記固定部材が破断する衝撃吸収ユニットと、を備えたことを特徴とする。
【0019】
このような落石防止システムによれば、所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときにのみ固定部分が破断するとともにバネが伸縮することにより衝撃を吸収する衝撃吸収ユニットを用いることにより、メンテナンスの手間を軽減させることができる。
【0020】
本発明の落石防止システムにおいては、前記衝撃ユニットとして、当該衝撃吸収ユニットに衝撃が加えられたときに前記固定部材が破断する衝撃の大きさの閾値が互いに異なる複数の種類のものが直列に並ぶよう用いられてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の衝撃吸収ユニットおよび落石防止システムによれば、所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときにのみ固定部材が破断するようにすることにより、衝撃吸収ユニットに加えられた衝撃を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態による衝撃吸収ユニットの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す衝撃吸収ユニットに設けられた圧縮された状態のバネの構成を示す上面図である。
【
図3】
図1に示す衝撃吸収ユニットに設けられた固定部材の構成を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す衝撃吸収ユニットの固定部材の構成を説明するための説明図である。
【
図5】
図1等に示す衝撃吸収ユニットの固定部材が破断したときの構成を説明するための説明図である。
【
図6】本実施の形態による衝撃吸収ユニットの他の例の構成を示す説明図である。
【
図7】
図6に示す衝撃吸収ユニットの固定部材の構成を説明するための説明図である。
【
図8】
図6に示す衝撃吸収ユニットの固定部材が破断したときの構成を説明するための説明図である。
【
図9】本実施の形態による衝撃吸収ユニットの更に他の例の構成を示す説明図である。
【
図10】
図9に示す衝撃吸収ユニットの取付部の構成を示す上面図である。
【
図11】
図9等に示す衝撃吸収ユニットの固定部材および内側ハウジングの構成を示す断面図である。
【
図12】
図9等に示す衝撃吸収ユニットの取付部、固定部材および内側ハウジングが組み立てられたときの構成を示す説明図である。
【
図13】
図9等に示す衝撃吸収ユニットの固定部材が破断したときの構成を説明するための説明図である。
【
図14】本実施の形態による衝撃吸収ユニットの更に他の例の構成を示す説明図である。
【
図15】
図14等に示す衝撃吸収ユニットの固定部材の構成を示す上面図である。
【
図16】
図14に示す衝撃吸収ユニットの保護部材の構成を示す断面図である。
【
図17】
図14等に示す衝撃吸収ユニットの固定部材が破断したときの構成を説明するための説明図である。
【
図18】従来技術による衝撃吸収ユニットの構成を示す斜視図である。
【
図19】
図1等に示す衝撃吸収ユニットを用いた落石防止システムの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図20】
図19に示す落石防止システムの構成を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図20は、本実施の形態による衝撃吸収ユニットおよび落石防止システムを説明するための図である。このうち、
図1は、本実施の形態による衝撃吸収ユニットの構成を示す構成図であり、
図2および
図3は、それぞれ、
図1に示す衝撃吸収ユニットのバネの構成を示す上面図および固定部材の構成を示す断面図である。また、
図4および
図5は、それぞれ、
図1に示す衝撃吸収ユニットの固定部材が破断する前および破断した後の構成を説明するための説明図である。また、
図6乃至
図8は、それぞれ、本実施の形態による衝撃吸収ユニットの他の例の構成を説明するための説明図である。また、
図9乃至
図13は、それぞれ、本実施の形態による衝撃吸収ユニットの更に他の例の構成を説明するための上面図、断面図および説明図である。また、
図14乃至
図17は、それぞれ、本実施の形態による衝撃吸収ユニットの更に他の例の構成を説明するための上面図、断面図および説明図である。また、
図18は、従来技術による衝撃吸収ユニットの構成を示す斜視図である。また、
図19は、
図1等に示す衝撃吸収ユニットを用いた落石防止システムの構成を概略的に示す斜視図であり、
図20は、
図19に示す落石防止システムの構成を概略的に示す側面図である。なお、固定部材が破断してバネが伸びたときの構成を分かりやすくするため、
図4乃至
図8において、固定部材については断面図を記載する一方、バネおよび取付部材については上面図を記載している。また、詳細については後述するが、
図9および
図14等において、構成を理解しやすくすることを目的として、断面図や上面図を組み合わせることにより衝撃吸収ユニットの更に他の例を描写している。また、
図20において、斜面に沿って落ちる落下物を参照符号Dで表示している。
【0024】
図1乃至
図5に示すように、本実施の形態の衝撃吸収ユニット10は、伸縮可能なバネ12と、バネ12の周囲に配置されており、当該バネ12が伸縮しないよう固定するための固定部材14とを有している。そして、衝撃吸収ユニット10に所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときに固定部材14が破断することにより、衝撃吸収ユニット10に加えられた衝撃を吸収するようになっている。また、固定部材14が破断したときにバネ12の伸縮を許容することにより、衝撃吸収ユニット10に加えられた衝撃を更に吸収するようになっている。具体的には、固定部材14には後述する破断部分18が設けられており、衝撃吸収ユニット10に加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに固定部材14が破断部分18に沿って破断するようになっている(
図5参照)。
【0025】
また、バネ12は略円筒形状の押しバネから構成されており、当該バネ12は長手方向に沿って(すなわち、
図2における左右方向に沿って)伸縮することができるようになっている。ここで、押しバネとは、概してバネ部分を形成する各コイル間に隙間が存在した状態となるよう(すなわち、バネ部分を長手方向に沿って圧縮することができるよう)各コイル部分が巻かれたものである。
図1等に示す例では、バネ12は、各コイル部分が密着するよう長手方向に沿って圧縮された状態で固定部材14により固定されている。また、バネ12の両端部にはそれぞれ取付部材として略S字形状のフック13が設けられている。具体的には、バネ12は、当該バネ12の両端近傍において外径が小さくなるよう形成されており、略S字状のフック13の一方の端部がバネ12の内部に位置するよう設置されている。そして、各フック13により、衝撃吸収ユニット10が後述する落石防止システム300のワイヤ本体330に取り付けられるようになっている(
図20参照)。また、バネ12は、硬鋼線、ピアノ線やステンレス鋼線等から形成されている。
【0026】
図3に示すように、衝撃吸収ユニット10の固定部材14は略円筒形状のスリーブから構成されており、当該固定部材の14の内側には、それぞれ固定部分15および開放部分16が形成されている。具体的には、固定部分15は、固定部材14の両端部側にそれぞれ設けられており、固定部材14が破断部分18に沿って破断したときにバネ12の伸びを許容しないよう構成されている。より詳細には、
図4および
図5に示すように、固定部分15はバネ12の輪郭に沿った形状を有しており、固定部分15の内面とバネ12の外面とが互いに接触した状態で配置されている。このため、衝撃吸収ユニット10の各フック13が互いに離れる方向にそれぞれ引っ張られて固定部材14が破断部分18に沿って破断した場合にも、バネ12における固定部分15と接触している箇所は
図4に示す状態から伸びないようになっている。一方、開放部分16は、固定部材14の中央部に設けられており、固定部材14が破断部分18に沿って破断したときにバネ12の伸びを許容するよう構成されている。より詳細には、
図4等に示すように、開放部分16はバネ12の輪郭とは異なる形状を有しており、バネ12が固定部材14の内部に収容されているときにバネ12と開放部分16とが接触しないようになっている。具体的には、固定部材14の開放部分16は、バネ12の外径の大きさよりも大きい内径を有する略円筒形状の部分から構成されている。
【0027】
上述したように、固定部材14には破断部分18が設けられており、当該固定部材14は破断部分18に沿って破断するようになっている。具体的には、バネ12の両端部に設けられた各フック13に対して互いに離れる向きの衝撃が加えられたときに、この衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいと、固定部材14が破断部分18に沿って破断する。
図1等に示す例では、破断部分18は断面が略V字形状(楔形状)の溝である。また、破断部分18は、円筒形状の開放部分16の略中央部において、周方向に沿って全周にわたって形成されている。
【0028】
具体的には、
図4に示す状態において衝撃吸収ユニット10の各フック13に所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられると、
図5に示すように固定部材14が破断部分18に沿って破断する。このような固定部材14の破断により、衝撃吸収ユニット10に与えられた衝撃の一部が吸収されるようになっている。また、上述したように、固定部材14の開放部分16はバネ12とは接触していないため、固定部材14が破断するとバネ12の伸びが許容されるようになる。また、バネ12の伸びが許容されると、当該バネ12が伸びることにより、衝撃吸収ユニット10に加えられた衝撃が更に吸収されるようになる。このように、衝撃吸収ユニット10は、固定部材14の破断およびバネ12の伸縮により衝撃を吸収するため、摩擦により衝撃を吸収する構成と比較してより効果的に衝撃を吸収することができる。
【0029】
また、固定部材14に形成される破断部分18の形状を変更することにより、固定部材14が破断するときの衝撃の大きさの閾値を調整することができるようになっている。例えば、
図4に示す状態から破断部分18の溝の深さを浅くすると、固定部材14が破断部分18に沿って破断しにくくなるため、固定部材14が破断するときの衝撃の大きさの閾値を大きくすることができる。一方、
図4に示す状態から破断部分18の溝の深さを深くすると、固定部材14が破断部分18に沿って破断しやすくなるため、固定部材14が破断するときの衝撃の大きさの閾値を小さくすることができる。このことにより、様々な大きさの衝撃を吸収する衝撃吸収ユニット10を作製することができる。
【0030】
また、破断部分18の形状は、
図4等に示すものに限定されることはない。上述した断面が略V字形状の溝が固定部材14の周方向の一部のみに形成されていてもよい。また、固定部材14に設けられる破断部分の断面の形状が、略U字形状、凹形状や窪み等の形状であってもよい。言い換えると、固定部材14において、破断部分18が形成される箇所が固定部材14における他の箇所よりも強度が低くなるような形状であれば、破断部分はどのような形状でもよい。
【0031】
なお、破断部分18が固定部材14の周方向全周にわたって形成された、断面が略V字形状のものである場合には、固定部材14の破断荷重は公知の方法により計算可能である。このため、上記の所定の閾値を計算により求めることができ、よって目的とする所定の閾値を有する衝撃吸収ユニット10を容易に設計することができる。また、破断部分18の形状が複雑であり、固定部材14の破断荷重が容易に計算できないような場合にも、試作品を作製して評価すること等により、所望の閾値を有する衝撃吸収ユニット10を作製することができる。
【0032】
また、破断部分18の形状を変更することによって固定部材14が破断するときの衝撃の大きさの閾値を調整する代わりに、あるいは破断部分18の形状を変更することに加えて、以下のような方法により衝撃の大きさの閾値を調整してもよい。具体的には、固定部材14を構成する材料を変更することにより、固定部材14が破断するときの衝撃の大きさの閾値を調整するようにしてもよい。このように、材料が異なる場合には、固定部材14を略同一の形状に成形する場合でも、固定部材14が破断するときの衝撃の大きさの閾値を調整することができる。具体的には、固定部材14の材料として、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミ合金、銅、真鍮、チタンやプラスチック等を用いることができる。例を挙げると、プラスチックから形成された固定部材14が破断するときの衝撃の大きさの閾値よりも、炭素鋼から形成された固定部材14が破断するときの衝撃の大きさの閾値のほうが大きくなる。
【0033】
また、本実施の衝撃吸収ユニット10の他の例として、
図6乃至
図8に示すものが用いられてもよい。
図6乃至
図8は、それぞれ、本発明の衝撃吸収ユニットの他の例の構成を説明するための説明図である。上述したように、
図6乃至
図8においても、固定部材については断面図を記載する一方、バネおよび取付部材については上面図を記載している。
【0034】
図6乃至
図8に示す衝撃吸収ユニット20は、伸縮可能なバネ22と、バネ22の周囲に配置されており、当該バネ22が伸縮しないよう固定するための固定部材24とを有している。また、衝撃吸収ユニット20に所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときに固定部材24の一部(具体的には、後述するノックピン28a)が破断することにより、衝撃吸収ユニット20に加えられた衝撃を吸収するようになっている。
【0035】
具体的には、バネ22は略円筒形状の押しバネから構成されており、当該バネ22は長手方向に沿って(すなわち、
図6における左右方向に沿って)伸縮することができるようになっている。
図6等に示す例では、バネ22は、各コイル部分が密着するよう長手方向に沿って圧縮された状態で固定部材24により固定されている。また、
図6等に示すように、バネ22の両端部にはそれぞれ取付部材23が設けられている。そして、各取付部材23により、衝撃吸収ユニット20が後述する落石防止システム300のワイヤ本体330に取り付けられるようになっている(
図20参照)。また、バネ22は、硬鋼線、ピアノ線やステンレス鋼線等から形成されている。
【0036】
図6等に示すように、衝撃吸収ユニット20の固定部材24は、複数の部材を組み合わせたものから構成されている。具体的には、固定部材24は、一対の筒状部材24a、24b(すなわち、第1の収容部分および第2の収容部分)と、当該筒状部材24a、24bの周囲に配置されるスリーブ24cと、ノックピン28a、28b(すなわち、維持部分)とを有している。また、バネ22は、一対の筒状部材24a、24bの内側に配置されるようになっている。言い換えると、一方の筒状部材24aの内部にはバネ22の一部が収容されるようになっており、他方の筒状部材24bの内部にもバネ22の一部が収容されるようになっている。
【0037】
また、筒状部材24a、24bには、それぞれ、略円形形状の開口27a、27bが設けられている。また、スリーブ24cにも、2つの略円形形状の開口27cがそれぞれ設けられている。そして、各開口27a、27bと、各開口27cとが対向した状態となるよう各筒状部材24a、24bおよびスリーブ24cが設置される。その後、略円柱形状のノックピン28aが各開口27a、27cに挿入されるとともに、略円柱形状のノックピン28bが各開口27b、27cに挿入されるようになっている。このような維持部分としての各ノックピン28a、28bにより、各筒状部材24a、24bが相対的に移動しないよう維持されるようになっている。このようにして、衝撃吸収ユニット20が組み立てられるようになっている。
【0038】
また、各筒状部材24a、24bは、第1の外径を有しており、取付部材23が設けられる側の第1部分と、上記の第1の外径よりも大きい第2の外径を有する第2部分とを備えている。また、各筒状部材24a、24bの第1部分の内側には、ノックピン28aが破断したときにバネ22の伸びを許容しない固定部分25a、25bがそれぞれ形成されている。
【0039】
より詳細には、
図6等に示すように、各固定部分25a、25bは、それぞれバネ22の輪郭に沿った形状を有しており、各固定部分25a、25bの内面とバネ22の外面とが互いに接触した状態で配置されている。このため、衝撃吸収ユニット20の各取付部材23が互いに離れる方向にそれぞれ引っ張られてノックピン28aが破断部分に沿って破断した場合にも、バネ22における固定部分25a、25bと接触している箇所は
図6に示す状態から伸びないようになっている。この場合には、破断部分は、ノックピン28aにおける筒状部材24aとスリーブ24cとが接触している部分の近傍の箇所となる。一方、各筒状部材24a、24bの第2部分の内側には、ノックピン28aが破断したときにバネ22の伸びを許容する開放部分26a、26bがそれぞれ形成されている。より詳細には、
図7等に示すように、開放部分26a、26bはバネ22の輪郭とは異なる形状を有している。そして、バネ22が各筒状部材24a、24bの内部に収容されているときに、バネ22と各開放部分26a、26bとが接触しないようになっている。具体的には、各筒状部材24a、24bの開放部分26a、26bは、バネ22の外径の大きさよりも大きい内径を有する略円筒形状の部分から構成されている。
【0040】
なお、
図6等に示す例では、右側のノックピン28aのせん断応力が5KNであり、左側のノックピン28bのせん断応力が20KNのものが用いられている。このため、衝撃吸収ユニット20に所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときに、まず、ノックピン28aが破断してバネ22の伸びが許容されるようになっている(
図8参照)。このようなノックピン28aの破断により、衝撃吸収ユニット20に与えられた衝撃の一部が吸収されるようになっている。上述したように、ノックピン28aは、筒状部材24aとスリーブ24cとが接触している箇所の近傍から破断するようになっており、
図6等に示す衝撃吸収ユニット20においては、この箇所が固定部材24の破断部分に相当する。
【0041】
また、上述したように、各筒状部材24a、24bの開放部分26a、26bはバネ22とは接触していないため、ノックピン28aが破断するとバネ22の伸びが許容されるようになる。また、バネ22の伸びが許容されると、当該バネ22が伸びることにより、衝撃吸収ユニット10に加えられた衝撃が更に吸収されるようになる。このように、衝撃吸収ユニット20は、ノックピン28aの破断およびバネ22の伸縮により衝撃を吸収するため、摩擦により衝撃を吸収する構成と比較してより効果的に衝撃を吸収することができる。また、ノックピン28aが破断した後に衝撃吸収ユニット20に更なる衝撃が加えられると、ノックピン28bも破断するようになる。
【0042】
また、右側のノックピン28aのせん断応力が5KNであり、左側のノックピン28bのせん断応力が20KNのものが用いられる例について説明したが、このような構成に限定されることはない。ノックピン28a、28bのせん断応力が上述したものとは異なる値のものが用いられてもよいし、せん断応力が略同一であるノックピン28a、28bがそれぞれ用いられてもよい。なお、略同一の形状の衝撃吸収ユニット20であっても、構成が異なる各ノックピン28a、28bを用いることにより、衝撃吸収ユニット20の各ノックピン28a、28bが破断するときの衝撃の大きさの閾値を調整することができる。具体的には、各ノックピン28a、28bの材質や、直径の大きさを変更することにより、各ノックピン28a、28bが破断するときの衝撃の大きさの閾値を調整することができる。
【0043】
なお、各筒状部材24a、24bに設けられる開口27a、27bの数は1つのみに限定されることはなく、各筒状部材24a、24bにそれぞれ2つ以上の開口27a、27bが設けられていてもよい。この場合、スリーブ24cには、各筒状部材24a、24bに設けられた開口27a、27bの総数と同じ数の開口27cがスリーブ24cに形成されるようになる。言い換えると、スリーブ24cには、各筒状部材24a、24bに設けられた開口27a、27bの総数と同じ数の開口27cが形成されるようになる。また、各開口27a、27b、27cを貫通するようノックピンがそれぞれ配置されるようになる。
【0044】
また、本実施の衝撃吸収ユニット10の更に他の例として、
図9乃至
図13に示すものが用いられてもよい。
図9乃至
図13は、それぞれ、本発明の衝撃吸収ユニットの更に他の例の構成を説明するための上面図、断面図および説明図である。ここで、
図10および
図11は、それぞれ、衝撃吸収ユニットの更に他の例の構成を説明するための上面図および断面図である。また、
図9、
図12および
図13は、それぞれ、構成を理解しやすくすることを目的として、断面図や上面図を組み合わせて衝撃吸収ユニットを描写した説明図である。
【0045】
図9乃至
図13に示す衝撃吸収ユニット100は、伸縮可能なバネ120と、バネ120の周囲に配置されており、当該バネ120が伸縮しないよう固定するための固定部材130とを有している。また、衝撃吸収ユニット100に所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときに固定部材130の一部(具体的には、後述する棒状部材152)が破断することにより、衝撃吸収ユニット100に加えられた衝撃を吸収するようになっている。
【0046】
具体的には、バネ120は略円筒形状の押しバネから構成されており、当該バネ120は長手方向に沿って(すなわち、
図9における左右方向に沿って)伸縮することができるようになっている。
図9等に示す例では、バネ120は、各コイル部分が密着するよう長手方向に沿って圧縮された状態で固定部材130により固定されている。また、
図9等に示すように、バネ120の両端部にはそれぞれ取付部110a、110bが設けられている。そして、各取付部110a、110bにより、衝撃吸収ユニット100が後述する落石防止システム300のワイヤ本体330に取り付けられるようになっている(
図20参照)。また、バネ120は、硬鋼線、ピアノ線やステンレス鋼線等から形成されている。
【0047】
図9等に示すように、衝撃吸収ユニット100の固定部材130は、複数の部材を組み合わせたものから構成されている。具体的には、固定部材130は、一対の筒状部材130a、130b(すなわち、第1の収容部分および第2の収容部分)と、略円筒形状のバネ120の内部に設置される内側ハウジング140a、140bと、維持部分150とを有している。また、バネ120は、一対の筒状部材130a、130bの内側に配置されるようになっている。より詳細には、バネ120の一部が一方の筒状部材130aの内部に収容されるとともに、バネ120の残りの部分が他方の筒状部材130bの内部に収容されるようになっている。本実施の形態においては、各筒状部材130a、130bおよび各内側ハウジング140a、140bは、それぞれ、バネ120の長さ方向における略中央箇所で互いに接触するよう構成されている。そして、維持部分150により、このような状態が維持されるようになっている。
【0048】
次に、維持部分150により、各筒状部材130a、130bが相対的に移動しないよう維持される構成について、
図9乃至
図12を参照して説明する。なお、各取付部110a、110b、各筒状部材130a、130bおよび各内側ハウジング140a、140bの構成は略同一である。このため、以下においては、一方の部材(
図9における左側の部材)の構成について詳細に説明し、他方の部材(
図9における右側の部材)の構成については説明を省略する場合がある。
【0049】
取付部110aは、後述する落石防止システム300のワイヤ本体330が取り付けられる取付部分111aと、中間部分114aと、雄ネジ等の取付部が形成されたネジ部分116aとを有している。また、中間部分114aは、取付部分111aとネジ部分116aとの間に設けられており、筒状部材130aに形成された開口132a(
図11参照)と略同一の外径となるよう形成されている。また、ネジ部分116aは、中間部分114aよりも小さい外径となるよう形成されている。このため、筒状部材130aの開口132aに取付部110aのネジ部分116aを通すことができるようになっている。この状態において、ネジ部分116aに対して筒状部材130aの開口132aよりも大きい外径を有するワッシャ117aとナット118aとを取り付ける。このことにより、取付部110aを筒状部材130aに対して固定することができる(
図12参照)。なお、バネ120の内側に配置される内側ハウジング140aには、収容部142aが形成されている。このことにより、
図12に示すように取付部110a、筒状部材130aおよび内側ハウジング140aが組み立てられたときに、取付部110aと内側ハウジング140aとが干渉してしまうことを防止することができるようになっている。
【0050】
また、取付部110aには、ザグリ穴112aと、ザグリ穴112aよりも小さい直径の貫通穴119aとが形成されており、貫通穴119aの内部には維持部分150の棒状部材152が設置されるようになっている。また、棒状部材152の両端部には、それぞれナット154aを取り付けるためのネジ部分(図示せず)が形成されている。また、ナット154aとして、貫通穴119aよりも外径が大きいものが用いられるようになっている。このため、棒状部材152をザグリ穴112aおよび貫通穴119aの内部に配置した後、棒状部材152のネジ部分にナット154aを取り付けることにより、貫通穴119aから棒状部材152およびナット154aが抜けてしまうことを防止することができる。
【0051】
また、
図9に示すように、棒状部材152として、各取付部110a、110bの貫通穴119a、119bの深さ(長さ)と、各筒状部材130a、130bの長さとを足し合わせた値より大きい長さを有するものが用いられるようになっている。このため、棒状部材152を、各貫通穴119a、119bおよび各筒状部材130a、130bの内部に配置した状態において、棒状部材152の両端部に各ナット154a、154bを取り付けることができる。また、このことにより、一方の筒状部材130aと、他方の筒状部材130bとが相対的に移動しないよう維持することができるようになる。なお、
図11等に示すように、内側ハウジング140aには貫通穴144aが設けられているため、維持部分150の棒状部材152と内側ハウジング140aとが干渉してしまうことが防止されるようになっている。
【0052】
また、各貫通穴119aから棒状部材152が抜けてしまうことを防止するための抜け止め部材として、各ナット154a以外のものが用いられるようになっていてもよい。例えば、棒状部材152の周囲に配置された後、かしめられることによって棒状部材152に対して固定されるような抜け止め部材が用いられてもよい。あるいは、棒状部材152の端部に他の構成の抜け止め部材を溶接すること等により、棒状部材152が各貫通穴119aから抜けないようにしてもよい。
【0053】
また、バネ120の周囲に配置される、第1の収容部分および第2の収容部分としての筒状部材130a、130bの内側には、固定部分134a、134bと、開放部分136a、136bとがそれぞれ形成されている。また、各固定部分134a、134bは、維持部分150の棒状部材152が破断したときにバネ120の伸びを許容しないようになっている。具体的には、
図9等に示すように、各固定部分134a、134bの内周面は、それぞれバネ120の輪郭に沿った形状を有しており、各固定部分134a、134bの内面とバネ120の外面とが互いに接触した状態となるよう配置されている。一方、各開放部分136a、136bは、バネ120が各筒状部材130a、130bの内部に収容されているときに、バネ120とが接触しない構成されている。このため、維持部分150の棒状部材152が破断したときに、バネ120における各開放部分136a、136bに対向する箇所の伸びを許容するようになっている。具体的には、各筒状部材130a、130bの開放部分136a、136bは、バネ120の外径の大きさよりも大きい内径を有する略円筒形状の部分から構成されている。
【0054】
また、略円筒形状のバネ120の内側に位置される各内側ハウジング140a、140bの外側には、固定部分146a、146bと、開放部分148a、148bとがそれぞれ形成されている。また、固定部分146a、146bは、維持部分150の棒状部材152が破断したときにバネ120の伸びを許容しないようになっている。具体的には、
図9等に示すように、各固定部分146a、146bの外周面はそれぞれバネ120の輪郭に沿った形状を有しており、各固定部分146a、146bの外周面とバネ120の内周面とが互いに接触した状態となるよう配置されている。一方、各開放部分148a、148bは、各内側ハウジング140a、140bがバネ120の内部に収容されているときに、バネ120と接触しないよう構成されている。このため、維持部分150の棒状部材152が破断したときに、バネ120における各開放部分148a、148bに対向する箇所の伸びを許容するようになっている。具体的には、各内側ハウジング140a、140bの開放部分148a、148bは、バネ120の内径の大きさよりも小さい外径を有する略円筒形状の部分から構成されている。
【0055】
上述したように、衝撃吸収ユニット100は、当該衝撃吸収ユニット100に所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときに、棒状部材152が破断するようになっている。このような棒状部材152の破断により、衝撃吸収ユニット100に与えられた衝撃の一部が吸収されるようになっている。また、棒状部材152が破断すると、各筒状部材130a、130bが相対的に移動しないよう維持するための力が働かなくなるため、バネ120の伸びが許容されるようになる。また、バネ120の伸びが許容されると、当該バネ120が伸びることにより、衝撃吸収ユニット100に加えられた衝撃が更に吸収されるようになる(
図13参照)。このように、衝撃吸収ユニット100は、棒状部材152の破断およびバネ22の伸縮により衝撃を吸収するため、摩擦により衝撃を吸収する構成と比較してより効果的に衝撃を吸収することができる。また、破断した棒状部材152を新しい棒状部材152に取り替えるだけで衝撃吸収ユニット100を再度使用することができるようになるため、利用者にとっての利便性を向上させることができる。
【0056】
なお、
図9等に示す維持部分150の棒状部材152は、所定の直径を備えた棒状のものであり破断部分は形成されていないが、このような態様に限定されることはない。棒状部材152の一部の直径を細くしたり、凹部や切り欠きを設けたりすることにより、棒状部材152に破断部分を形成するようにしてもよい。また、棒状部材152の直径や材質を変更することにより、棒状部材152が破断するときの衝撃の閾値を調整するようにしてもよい。
【0057】
なお、上述したように、取付部110a、各筒状部材130aおよび内側ハウジング140aの構成と、取付部110b、筒状部材130bおよび内側ハウジング140bの構成は略同一である。言い換えると、取付部110bは、取付部分111bと、ザグリ穴112bと、中間部分114bと、ネジ部分116bと、ワッシャ117bと、ナット118bと、貫通穴119bとを有している。また、筒状部材130bは、開口132bを更に有している。また、内側ハウジング140bは、収容部142bと、貫通穴144bとを更に有している。
【0058】
また、各内側ハウジング140a、140bの設置が省略されていてもよい。なお、各内側ハウジング140a、140bを追加的に設置した場合には、バネ120が、各筒状部材130a、130bの固定部分134a、134bと、各内側ハウジング140a、140bの固定部分146a、146bとの間に挟まれるようになる。この場合には、バネ120における各固定部分134a、134b、146a、146bと接触している箇所が変形してしまうことをより確実に防止することができる。
【0059】
また、
図9等に示す例では、第1の筒状部材および第2の筒状部材として略同一の長さを有するものを用いる態様や、各内側ハウジングとして略同一の長さを有するものを用いる態様について説明したが、このような構成に限定されることはない。例えば、それぞれ異なる長さを有する第1の筒状部材および第2の筒状部材や、各内側ハウジングを用いるようにしてもよい。
【0060】
また、本実施の衝撃吸収ユニット10の他の例として、
図14乃至
図17に示すものが用いられてもよい。
図14乃至
図17は、それぞれ、本発明の衝撃吸収ユニットの更に他の例の構成を説明するための説明図、上面図および断面図である。ここで、
図15および
図16は、それぞれ、衝撃吸収ユニットの更に他の例の構成を説明するための上面図および断面図である。また、
図14および
図17は、それぞれ、構成を理解しやすくすることを目的として断面図や上面図を組み合わせて衝撃吸収ユニットを描写した説明図である。
【0061】
図14乃至
図17に示す衝撃吸収ユニット200は、伸縮可能なバネ220と、バネ220が伸縮しないよう固定するための固定部材230とを有している。より具体的には、バネ220は略円筒形状のものであり、固定部材230は当該バネ220の内側に配置されるようになっている。また、衝撃吸収ユニット200に所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときに固定部材230(具体的には、破断部分238)が破断することにより、衝撃吸収ユニット200に加えられた衝撃を吸収するようになっている。
【0062】
具体的には、バネ220は押しバネから構成されており、当該バネ220は長手方向に沿って(すなわち、
図14における左右方向に沿って)伸縮することができるようになっている。
図14等に示す例では、バネ220は、各コイル部分が密着するよう長手方向に沿って圧縮された状態で固定部材230により固定されている。また、バネ220は、硬鋼線、ピアノ線やステンレス鋼線等から形成されている。
【0063】
また、
図15等に示すように、固定部材230の両端部にはそれぞれ雌ねじ等の被取付部232が形成されており、これらの被取付部232に取付部210がそれぞれ取り付けられるようになっている。また、各取付部210により、衝撃吸収ユニット200が後述する落石防止システム300のワイヤ本体330に取り付けられるようになっている。なお、
図14等に示す例では、各取付部210は、略U字形状の取付部分212を備えている。また、取付部分212は、バネ220の延びる方向(すなわち、
図14における左右方向)に沿った軸を中心として固定部材230に対して回転可能となっている。また、取付部分212は、略U字形状の取付部分212の端部同士を結ぶ直線に沿った軸(すなわち、
図14における上下方向に沿った軸)を中心として固定部材230に対して回転可能となっている。
【0064】
また、固定部材230には、封止部材取付部233と、固定部分234と、開放部分236と、破断部分238とがそれぞれ形成されている。後述するように、各封止部材取付部233には、Oリング等の封止部材264、266が取り付けられるようになっている。また、各固定部分234は、破断部分238が破断したときにバネ220の伸びを許容しないよう構成されている。具体的には、各固定部分234の外周面は、それぞれバネ220の内周面の輪郭に沿った形状を有しており、各固定部材230の外周面とバネ220の内周面とが互いに接触した状態となるよう配置されている。一方、開放部分236は、各固定部材230がバネ220の内部に収容されているときに、バネ220とが接触しないよう構成されている。このため、固定部材230の破断部分238が破断したときにバネ220の伸びが許容されるようになっている。具体的には、固定部材230の開放部分236は、バネ220の内径の大きさよりも小さい外径を有する略円柱形状の部分から構成されている。
【0065】
また、衝撃吸収ユニット200においては、当該衝撃吸収ユニット200に所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときに、固定部材230の破断部分238が破断してバネ220の伸びが許容されるようになっている(
図17参照)。このような固定部材230の破断により、衝撃吸収ユニット200に与えられた衝撃の一部が吸収されるようになっている。また、固定部材230が破断すると、
図14に示すような状態を維持するための力が働かなくなるため、バネ220の伸びが許容されるようになる。また、バネ220の伸びが許容されると、当該バネ220が伸びることにより、衝撃吸収ユニット200に加えられた衝撃が更に吸収されるようになる。このように、衝撃吸収ユニット200は、固定部材230の破断およびバネ220の伸縮により衝撃を吸収するため、摩擦により衝撃を吸収する構成と比較してより効果的に衝撃を吸収することができる。
【0066】
なお、破断部分238は、固定部材230における直径の最も小さい箇所であり、
図15等に示す例では、固定部材230の延びる方向における略中央箇所に破断部分238が形成されている。また、破断部分238の破断荷重(引張り応力)は、固定部材230の材質や破断部分238の直径の大きさ等に基づいて公知の方法により計算可能となっている。また、固定部材230の材質や、破断部分238の直径の大きさを変更することにより、破断部分238が破断するときの衝撃の大きさの閾値を調整することができる。また、固定部材230の延びる方向における略中央以外の箇所に破断部分238が形成されていてもよい。
【0067】
図14および
図16等に示すように、衝撃吸収ユニット200は、バネ220の周囲に配置される保護部材と、保護部材と接触する位置に配置され、バネ220を液密に封止する封止部材262、264、266とを備えている。具体的には、保護部材は、第1の筒状部材240と、第2の筒状部材250とを組み合わせたものから構成されている。また、バネ220は、第1の筒状部材240および第2の筒状部材250の内部に配置されるようになっている。より詳細には、バネ220の一部が第1の筒状部材240の内部に収容されるとともに、バネ220の残りの部分が第2の筒状部材250の内部に収容されるようになっている。
【0068】
また、第1の筒状部材240には開口242が形成されており、固定部材230の一方の端部(具体的には、一方の被取付部232)はこの開口242を介して第1の筒状部材240の外側に露出するようになっている。また、第2の筒状部材250には開口252が形成されており、固定部材230の他方の端部(具体的には、他方の被取付部232)はこの開口252を介して第2の筒状部材250の外側に露出するようになっている。そして、外部に露出している、固定部材230の各被取付部232に対して取付部210がそれぞれ取り付けられるようになっている。
【0069】
また、第1の筒状部材240における開口242とは反対側の端部近傍には、当該第1の筒状部材240の周方向に沿って全周にわたって形成された凹部からなる封止部材取付部248が形成されている。また、第2の筒状部材250における開口252とは反対側の端部近傍には、第1の筒状部材240の端部の外径よりも大きい外径を有する延伸部258が設けられている。また、第2の筒状部材250の延伸部258は、第1の筒状部材240と第2の筒状部材250が
図16に示すよう状態となるよう組合せられたときに、第1の筒状部材240における封止部材取付部248を含む領域を覆うような長さに形成されている。このため、第1の筒状部材240の封止部材取付部248に、Oリング等の封止部材262を取り付けることにより、第1の筒状部材240と第2の筒状部材250との接触部分から水等の液体が入ってしまいバネ220が濡れてしまうことを防止することができる(
図14参照)。
【0070】
また、固定部材230の周方向に沿って全周にわたって形成された凹部からなる各封止部材取付部233には、Oリング等の封止部材262、264が設置されるようになっている。
図14に示すように、固定部材230の一方の端部に設けられた封止部材取付部233と、第1の筒状部材240との間には、封止部材264が取り付けられるようになっている。また、固定部材230に形成された他方の封止部材取付部233と、第2の筒状部材250との間には、封止部材266が取り付けられるようになっている。これらの封止部材262、264により、第1の筒状部材240の開口242や第2の筒状部材250の開口252から水等の液体が入ってきた場合にも、バネ220が濡れてしまうことを防止することができる。
【0071】
また、第1の筒状部材240の内側および第2の筒状部材250の内側には、それぞれ、固定部分244、254と、開放部分246、256が形成されている。具体的には、各固定部分244、254は、固定部材230の破断部分238が破断したときにバネ220の伸びを許容しないよう構成されている。
図14等に示すように、各固定部分244、254の内周面は、それぞれバネ220の輪郭に沿った形状を有しており、各固定部分244、254の内周面とバネ220の外周面とが互いに接触した状態となるよう配置されている。一方、各開放部分246、256は、バネ220が第1の筒状部材240および第2の筒状部材250の内部に収容されているときに、バネ220と接触しないよう構成されている。このため、固定部材230の破断部分238が破断したときにバネ220の伸びが許容されるようになっている。具体的には、第1の筒状部材240および第2の筒状部材250の各開放部分246、256は、バネ220の外径の大きさよりも大きい内径を有する略円筒形状の部分から構成されている。
【0072】
なお、上述した衝撃吸収ユニット200の第1の筒状部材240および第2の筒状部材250に、それぞれグリスを注入するためのグリス注入口を形成するようにしてもよい。この場合にも、対応する形状のキャップを各グリス注入口に取り付けることにより、当該グリス注入口から水等の液体が浸入してしまうことを防止することができる。
【0073】
ここで、従来技術の衝撃吸収ユニット50を
図18に示す。従来技術の衝撃吸収ユニット50においては、ワイヤ本体52の一部が径方向において重なるよう環状に一巻きされており、この重ねられた部分が緊締部材54によりかしめられることによって環状の部分が固定されるようになっている。また、衝撃吸収ユニット50に加えられた衝撃の一部は、ワイヤ本体52同士の間に働く摩擦力およびワイヤ本体52と緊締部材54との間に働く摩擦力より吸収されるようになっている。すなわち、衝撃が吸収される際に、ワイヤ本体52における環状の部分の輪の大きさが小さくなるようになっている。これに対し、本実施の形態による衝撃吸収ユニット10、20、100、200は、上述したように固定部材14、24、152、230を破断させるようになっている。そして、バネ12、22、120、220を伸縮させることにより衝撃を吸収するようになっている。このため、摩擦により衝撃を吸収する従来技術よりも高い衝撃吸収効果を奏することができる。また、上述した所定の閾値よりも小さい衝撃が衝撃吸収ユニット10、20、100、200に加えられても、固定部材14、24、152、230が破断しないようになっている。このため、小さい衝撃でもワイヤが伸びやすい従来技術のものと比較して衝撃吸収ユニット10、20、100、200のメンテナンスや交換を行う間隔を長くすることができ、衝撃吸収ユニット10、20、100、200の利便性を向上させることができる。また、破断した固定部材14、24、152、230が飛散してしまうことを防止することができる。
【0074】
なお、バネ12、22、120、220として上述した押しバネを使用する場合に、当該バネ12、22、120、220を圧縮した状態で固定部材14、24、152、230により固定する構成に限定されることはない。各コイル部分の間に隙間が存在するような、コイル部分が圧縮されていない状態のバネ12、22、120、220を固定部材14、24、152、230により固定するようにしてもよい。あるいは、バネ12、22、120、220として、上述した押しバネの代わりに、略円筒形状の引きバネ(引張コイルバネ)を用いるようにしてもよい。ここで、引きバネ(引張コイルバネ)とは、概してバネ部分を形成する各コイル間に隙間が生じないよう各コイル部分が予め密着した状態で巻かれたものである。
【0075】
次に、本実施の衝撃吸収ユニット10、20、100、200を用いた落石防止システムの一例として、
図19および
図20に示すような、衝撃吸収ユニット10を備えた落石防止システム300について説明する。また、
図20において、山等の斜面400に沿って落ちる落下物を参照符号Dで表示している。なお、以下では、衝撃吸収ユニット10を含む落石防止システム300について説明するが、衝撃吸収ユニット10の代わりに衝撃吸収ユニット20、100、200を用いて落石防止システムを構成するようにしてもよい。
【0076】
図19および
図20に示す落石防止システム300は、山等の斜面400に設置することにより、当該斜面400に沿って山側から谷側に向かって落ちる石等の落下物(例えば、
図20において参照符号Dにより示すもの)を受け止めるために用いられるものである。また、落石防止システム300は、支柱310と、各支柱310に張架された落下物受止部材320と、支柱310と山側の斜面400との間に張られたワイヤ本体330と、ワイヤ本体330に接続された衝撃吸収ユニット10とを有している。具体的には、支柱310は所定の間隔を空けて斜面400に配置されており、各支柱310に張架された落下物受止部材320は、斜面400に沿って落ちる落下物を受け止めるようになっている。そして、落下物受止部材320により落下物が受け止められたときの衝撃が衝撃吸収ユニット10等により吸収されるようになっている。
【0077】
また、ワイヤ本体330は複数のワイヤ部分から構成されており、各ワイヤ部分の端部には、当該ワイヤ部分と衝撃吸収ユニット10とを接続する接続部材として環状部材が設けられている。そして、各ワイヤ部分の環状部材に衝撃吸収ユニット10の各フック13の先端が挿入されることにより、ワイヤ本体330と衝撃吸収ユニット10とが接続されるようになっている。なお、ワイヤ本体330の各ワイヤ部分と、衝撃吸収ユニット10の各フック13とを溶接等により接続するようにしてもよい。また、ワイヤ本体330の各ワイヤ部分の端部に、環状部材とは異なる接続部材を設けるようにしてもよい。なお、衝撃吸収ユニット20、100、200を用いて落石防止システム300を構成する場合には、別途適切な接続部材がワイヤ本体330の各ワイヤ部分に設けられるようになる。
【0078】
また、
図19等に示す落石防止システム300では、複数のワイヤ部分からなる1つのワイヤ本体330に複数(具体的には、2つ)の衝撃吸収ユニット10が直列に並ぶよう接続されている。本実施の形態においては、衝撃吸収ユニット10に衝撃が加えられたときに固定部材14が破断する衝撃の大きさの閾値が互いに異なるものが用いられるようになっている。このような構成によれば、落石防止システム300において様々な大きさの衝撃を適切に吸収することができるようになる。一例として、上記の衝撃の大きさの閾値が第1の値である固定部材14を備えた各衝撃吸収ユニット10と、衝撃の大きさの閾値が第1の値よりも大きい第2の値である固定部材14を備えた衝撃吸収ユニット10とが設けられているケースを考える。この場合には、第1の値よりも大きいが第2の値よりも小さい衝撃が各衝撃吸収ユニット10に加えられたときには、衝撃の大きさの閾値が第1の値である一方の衝撃吸収ユニット10の固定部材14のみが破断するようになる。一方、第1の値と第2の値とを合計した値より大きい衝撃が各衝撃吸収ユニット10に加えられたときには、両方の衝撃吸収ユニット10の固定部材14がそれぞれ破断するようになる。また、第1の値よりも大きく、第1の値と第2の値とを合計した値よりも小さい衝撃が衝撃吸収ユニット10に加えられたときには、どちらか一方の衝撃吸収ユニット10の固定部材14が破断するようになる。
【0079】
なお、複数のワイヤ部分からなる1つのワイヤ本体330に接続される衝撃吸収ユニット10に数は2つに限定されることはない。1つのワイヤ本体330に1つの衝撃吸収ユニット10のみが接続されていてもよく、1つのワイヤ本体330に3つ以上の衝撃吸収ユニット10が接続されていてもよい。また、衝撃吸収ユニット10に衝撃が加えられたときに固定部材14が破断する衝撃の大きさの閾値が略同一である複数のものが直接に並ぶよう用いられてもよい。
【0080】
また、各支柱310は、斜面400に固定された各ベース部材312を介して斜面400から見て高さレベルの略等しい箇所に設置されている。また、
図20に示すように、各支柱310と各ベース部材312とは、例えば両側開きのヒンジ314により接続されている。このため、各支柱310を各ベース部材312(すなわち、斜面400)に対して揺動させることができるようになっている(
図20の矢印A参照)。このことにより、落下物受止部材320により落下物が受け止められたときに各支柱310に作用する応力を軽減することができるようになっている。なお、各支柱310と各ベース部材312とを接続する部材は上述したヒンジ314に限定されることはく、他の部材が用いられるようになっていてもよい。
【0081】
また、
図19および
図20に示す落石防止システム300においては、落下物を受け止める落下物受止部材320として金網が用いられるようになっている。なお、落下物受止部材として、例えば、金属の棒およびプレート等から構成される柵や、リング状のネットが用いられるようになっていてもよい。
【0082】
ここで、従来の落石防止システムとして、落下物受止部材に接続された、
図18に示すようなワイヤの伸びを許容することによって落下物受止部材により落下物を受け止めたときにワイヤに加えられる衝撃を吸収する衝撃吸収ユニットを用いるものが知られている。しかしながら、上記の構成では与えられる衝撃の大きさが小さいときにもワイヤが伸びるようになっており、小さい衝撃でもワイヤが伸びやすいため比較的短い間隔でワイヤのメンテナンスを行う必要があるという問題があった。これに対し、本実施の形態による落石防止システム300によれば、所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときにのみ衝撃を吸収する衝撃吸収ユニット10が用いられるようになっている。このことにより、落石防止システム300のメンテナンスの手間を軽減させることができるようになる。
【0083】
また、落石防止システム300のワイヤ本体330および衝撃吸収ユニット10が略直線状に延びた状態で設置されるため、衝撃吸収ユニット10の固定部材14が破断した後にワイヤ本体330への悪影響を抑制することができるようになっている。すなわち、
図18に示すような従来技術の衝撃吸収ユニット50においては、ワイヤ本体52は環状に一巻きされた状態で緊締部材54によりかしめられている。このため、衝撃吸収ユニット50が衝撃を吸収した後(すなわち、環状の部分が縮小した後)にもワイヤ本体52は環状に一巻きされた状態となる。この状態において衝撃吸収ユニット50に更に衝撃が加えられた場合には、ワイヤ本体52と緊締部材54とが接触している箇所に大きな負荷がかかり、当該箇所からワイヤ本体52が破断してしまう可能性がある。これに対し、本実施の形態においては、ワイヤ本体330および衝撃吸収ユニット10が略直線状に延びた状態で設置されるようになっているため、上述した問題が発生してしまうことを防止することができる。また、衝撃吸収ユニット10の固定部材14が破断した後にワイヤ本体330が捩れてしまうことを防止することができる。
【0084】
以上のような構成からなる、衝撃を吸収するための衝撃吸収ユニット10、20、100、200は、伸縮可能なバネ12、22、120、220と、バネ12、22、120、220を固定するための固定部材14、24、130、230とを有している。そして、衝撃吸収ユニット10、20、100、200に加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに固定部材14、24、130、230が破断するようになっている。このように、所定の閾値よりも大きい衝撃が加えられたときにのみ固定部材14、24、130、230が破断するとともにバネ12、22、120、220が伸縮するようになっている。このため、固定部材14、24、130、230が破断する際に衝撃を吸収するようにすることができる。また、固定部材14、24、130、230が破断することにより衝撃を吸収するようになっているため、摩擦により衝撃を吸収する構成と比較してより効果的に衝撃を吸収することができる。また、衝撃吸収ユニット10、20、100、200においては、バネ12、22、120、220は押しバネまたは引きバネである。また、バネ12、22、120、220として押しバネが用いられる場合には、固定部材14、24、130、230は、長手方向に沿って圧縮された状態のバネ12、22、120、220を固定するようになっている。
【0085】
また、上述した衝撃吸収ユニット10、20、100、200においては、固定部材14、24、152、230には破断部分18、238が設けられている。そして、衝撃吸収ユニット10、20、100、200に加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに、固定部材14、24、152、230が破断部分18、238に沿って破断するようになっている。このように、破断部分18、238を設ける場合には、固定部材14、24、152、230がどの箇所から破断するかを指定することができるため、衝撃吸収ユニット10、20、100、200の利便性を向上させることができる。
【0086】
また、上述した衝撃吸収ユニット10においては、固定部材14はバネ12の周囲に配置されており、当該固定部材14、24の内側には、固定部分15と、開放部分16とが形成されている。また、固定部分15は、固定部材14が破断したときにバネ12の伸びを許容しないようになっている。また、開放部分16は、固定部材14が破断したときにバネ12の伸びを許容するようになっている。
【0087】
また、上述した衝撃吸収ユニット20、100においては、固定部材24、130は、第1の収容部分24a、130aと、第2の収容部分24b、130bと、維持部分150とを有している。また、第1の収容部分24a、130aは、バネ22、120の一部を内部に収容するようになっており、第2の収容部分24b、130bは、バネ22、120の一部を内部に収容するようになっている。また、維持部分28a、150は、第1の収容部分24a、130aと第2の収容部分24b、130bとが相対的に移動しないよう維持するようになっている。そして、衝撃吸収ユニット20、100に加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに維持部分28a、150が破断するようになっている。また、固定部材24、130の第1の収容部分24a、130aおよび第2の収容部分24b、130bの内側には、固定部分25a、25b、134a、134bと、開放部分26a、26b、136a、136bとがそれぞれ形成されている。また、固定部分25a、25b、134a、134bは、維持部分28a、150が破断したときにバネ22、120の伸びを許容しないようになっている。また、開放部分26a、26b、136a、136bは、維持部分28a、150が破断したときにバネ22、120の伸びを許容するようになっている。
【0088】
また、上述した衝撃吸収ユニット100においては、固定部材130の維持部分150は、バネ120の内部に配置される棒状部材152を含んでいる。そして、衝撃吸収ユニット100に加えられた衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに棒状部材152が破断することにより、衝撃が吸収されるようになっている。このため、棒状部材152が破断しても、この棒状部材152と新しい棒状部材152を取り換えるだけで、衝撃吸収ユニット100を再度使用することができる。
【0089】
また、上述した衝撃吸収ユニット200においては、固定部材230は、バネ220の内側に配置されている。また、固定部材230の外側には、固定部材230が破断したときにバネ220の伸びを許容しない固定部分234と、固定部材230が破断したときにバネ220の伸びを許容する開放部分236とが形成されている。また、衝撃吸収ユニット200は、バネ220の周囲に配置される保護部材(具体的には、第1の筒状部材240および第2の筒状部材250)と、封止部材262、264、266とを更に備えている。また、各封止部材262、264、266は、保護部材と接触する位置に配置され、バネ220を液密に封止するようになっている。このことにより、バネ220が濡れたり、錆びてしまうことを防止することができるため、衝撃吸収ユニット200を例えば水中で好適に使用することができるようになる。
【0090】
また、以上のような構成からなる落石防止システム300は、所定の間隔を空けて斜面400に配置される複数の支柱310と、落下物受止部材320と、ワイヤ本体330と、上述した衝撃吸収ユニット10、20、100、200とを備えている。より具体的には、落下物受止部材320は、各支柱310に張架され、斜面400に沿って落ちる落下物を受け止めるようになっている。また、ワイヤ本体330は、各支柱310と山側の斜面400との間に張られており、衝撃吸収ユニット10、20、100、200は、ワイヤ本体330に接続されている。そして、落下物受止部材320により落下物が受け止められたときの衝撃の大きさが所定の閾値よりも大きいときに衝撃吸収ユニット10、20、100、200の固定部材14、24、152、230が破断する。このため、摩擦により衝撃を吸収する従来の構成と比較してより効果的に衝撃を吸収することができる。また、谷側ワイヤ(すなわち、谷側に配置される衝撃吸収ユニット10、20およびワイヤ本体330)の設置を省略することができるとともに、落石防止システム300のメンテナンスの手間を軽減させることができる。また、衝撃吸収ユニット10、20、100、200として、当該衝撃吸収ユニット10、20、100、200に衝撃が加えられたときに固定部材14、24、152、230が破断する衝撃の大きさの閾値が互いに異なる複数の種類のものが直列に並ぶよう用いられるようになっている。このことにより、落石防止システム300において様々な大きさの衝撃を適切に吸収することができるようになる。
【0091】
なお、本実施の形態による衝撃吸収ユニット10、20、100、200や落石防止システム300は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0092】
例えば、バネ12、22、120、220として、略円筒形状の押しバネまたは引きバネを用いる例について説明したが、このような構成に限定されることはない。略円錐形状の押しバネまたは引きバネや、略樽型形状の押しバネまたは引きバネを使用するようにしてもよい。この場合にも、対応する形状の固定部材を用いることにより、本発明の衝撃吸収ユニットを構成することができる。
【0093】
また、バネ12、22、120、220を、硬鋼線、ピアノ線やステンレス鋼線から形成する例について説明したが、他の材料からバネ12、22、120、220を形成するようにしてもよい。また、バネ12、22、120、220の表面にメッキ処理が施されていてもよい。
【0094】
また、バネ12、22、120を固定するための固定部材として、
図1、
図6、
図9等に示す固定部材14、24、130、230について説明したが、他の構成の固定部材を用いるようにしてもよい。固定部材として、略円筒形状のスリーブの外周面に開口が設けられたものが用いられてもよいし、略円筒形状のスリーブの上端部から下端部まで延びるスリット(切り欠き)が形成されたものが用いられてもよい。このように、固定部材に開口やスリットを設けた場合には、バネ12、22、120の状態を外部から確認することができるため、衝撃吸収ユニット10、20、100のメンテナンスを容易に行うことができるようになる。
【0095】
また、
図4、
図6、
図9、
図14等に示す例とは異なる構成の固定部材14、24、130、230を用いるようにしてもよい。例えば、
図4、
図6、
図9、
図14等に示す状態から、各固定部分15、25a、25b、134a、134b、234の領域を小さくするようにしてもよい。一方、各開放部分16、26a、26b、136a、136b、236の領域を大きくしてもよい。このように、開放部分の領域を大きくした場合には、固定部材が破断したときにバネ12、22、120、220の伸びる量が大きくなるため、バネ12、22、120、220によって吸収することのできる衝撃のエネルギー量を増加させることができる。
【0096】
また、衝撃吸収ユニット10のバネ12の両端部に設けられた取付部材として、バネ12とフック13とが別個の部材から構成される例について説明したが、他の形状の取付部材がバネ12に設けられてれていてもよい。例えば、バネ12を構成する金属線の端部を、略S字形状、略U字形状や略V字形状に成形することにより、バネと取付部材とが一体的に成型されたものが用いられてもよい。また、衝撃吸収ユニット20のバネ22の両端部に設けられる取付部材として、上述した略S字形状、略U字形状や略V字形状のフックが用いられてもよい。
【0097】
また、衝撃吸収ユニット10の固定部材14の開放部分16における略中央部に破断部分18を設ける例について説明したが、このような構成に限定されることはなく、例えば開放部分16の端部近傍に破断部分18が設けられていてもよい。言い換えると、固定部材14の開放部分16におけるいずれかの箇所に破断部分18が設けられていれば、衝撃吸収ユニット10は上述した効果を奏することができる。
【0098】
また、衝撃吸収ユニット20の固定部材24として、略円形形状の開口27a、27b27cに、略円柱形状のノックピン28a、28bを挿入する例について説明したが、このような例に限定されることはない。略三角形形状の開口に略三角柱形状のノックピンを挿入するようにしてもよいし、他の多角形形状の開口を設け、対応する形状のノックピンを当該開口に挿入するようにしてもよい。
【0099】
また、衝撃吸収ユニット20の各ノックピン28a、28bに、破断部分を形成するようにしてもよい。例えば、
図1等に示す衝撃吸収ユニット10の破断部分18のような、断面が略V字形状の溝を略円筒形状のノックピン28a、28bの外周面に形成するようにしてもよい。
【0100】
また、必ずしも全ての支柱310に衝撃吸収ユニット10、20、100、200を取り付ける必要はない。落石防止システムの強度が担保される場合には、衝撃吸収ユニット10、20、100、200が接続されたワイヤ本体330が取り付けられた支柱310と、衝撃吸収ユニット10、20、100、200が接続されていないワイヤ本体330が取り付けられた支柱310とを交互に並べるようにしてもよい。あるいは、衝撃吸収ユニット10、20、100、200が接続されたワイヤ本体330が取り付けられた支柱310と、衝撃吸収ユニット10、20、100、200が接続されていないワイヤ本体330が取り付けられた支柱310とが上述したものとは異なる並びかたをしていてもよい。
【0101】
なお、上述した衝撃吸収ユニット10、20、100、200の用途は、上述した落石防止システム300に限定されることはない。例えば、上述した衝撃吸収ユニット10、20、100、200は、様々な土木構造物や建設物で使用することができる。具体的には、大規模地震時に橋の落下を防止するための橋梁上部工耐震補強工事や、橋脚を鉄筋コンクリートにて巻き立て補強する橋梁下部工耐震補強工事等に上述した衝撃吸収ユニット10、20、100、200を用いてもよい。この場合には、橋梁上部および橋梁下部の耐震性を向上させることができる。また、落橋防止システムにおけるエネルギー吸収装置として、上述した衝撃吸収ユニット10、20、100、200が用いられてもよい。より詳細には、地震等により大きな地震力が橋に加えられたときに、橋台等の、橋の下部構造に対する桁の移動を制限するとともに、橋に加えられた衝撃を吸収するために用いられる部材として上述した衝撃吸収ユニット10、20、100、200が用いられてもよい。より具体的には、衝撃吸収ユニット10、20、100、200により、橋軸方向への桁の大きな変位や、橋軸に直角する方向への桁の大きな変位を防止するようにしてもよい。また、複数の桁を含む構造の橋において、ある桁と、この桁の隣に位置する桁とを、上記の衝撃吸収ユニット10、20、100、200を介して接続するようにしてもよい。また、ガードレールや中央分離帯として衝撃吸収ユニット10、20、100、200を用いることにより、車両等が衝突した際の衝撃を吸収するようにしてもよい。また、衝撃吸収ユニット10、20、100、200は他の様々な用途に使用することができる。
【符号の説明】
【0102】
10 衝撃吸収ユニット
12 バネ
13 フック
14 固定部材
15 固定部分
16 開放部分
18 破断部分
20 衝撃吸収ユニット
22 バネ
23 取付部材
24 固定部材
24a、24b 筒状部材
24c スリーブ
25a、25b 固定部分
26a、26b 開放部分
27a、27b、27c 開口
28a、28b ノックピン
50 衝撃吸収ユニット
52 ワイヤ本体
54 緊締部材
100 衝撃吸収ユニット
110a、110b 取付部
111a、111b 取付部分
112a、112b ザグリ穴
114a、114b 中間部分
116a、116b ネジ部分
117a、117b ワッシャ
118a、118b ナット
119a、119b 貫通穴
120 バネ
130 固定部材
130a 筒状部材(第1の収容部分)
130b 筒状部材(第2の収容部分)
132a、132b 開口
134a、134b 固定部分
136a、136b 開放部分
140a、140b 内側ハウジング
142a、142b 収容部
144a、144b 貫通穴
146a、146b 固定部分
148a、148b 開放部分
150 維持部分
152 棒状部材(固定部材の一部)
154a、154b ナット
200 衝撃吸収ユニット
210 取付部
212 取付部分
220 バネ
230 固定部材
232 被取付部
233 封止部材取付部
234 固定部分
236 開放部分
238 破断部分
240 第1の筒状部材
242 開口
244 固定部分
246 開放部分
248 封止部材取付部
250 第2の筒状部材
252 開口
254 固定部分
256 開放部分
258 延伸部
262、264、266 封止部材
300 落石防止システム
310 支柱
312 ベース部材
314 ヒンジ
320 落下物受止部材
330 ワイヤ本体
400 斜面