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特許7356181近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021547177
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 KR2019013628
(87)【国際公開番号】W WO2020166785
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0016903
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518374631
【氏名又は名称】レティノル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ハ、ジョンフン
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08294994(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0028339(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置であって、
拡張現実用画像に相応する画像光を出射する画像出射部と、
実際事物から出射した画像光の少なくとも一部を使用者の目の瞳孔に向けて透過させ、前記画像出射部から出射する拡張現実用画像に相応する画像光を内面で少なくとも1回以上反射させて光学素子に伝達する光学手段と、
前記光学手段の内部に配置され、前記光学手段を介して伝達される拡張現実用画像に相応する画像光を使用者の目の瞳孔に向けて伝達することによって使用者に拡張現実用画像を提供する少なくとも一つ以上の光学素子と、
を含み、
前記光学手段は、実際事物から出射した画像光が入射する第1面と、前記光学素子を介して伝達される拡張現実用画像に相応する画像光が出射する第2面とを有し、
前記画像出射部は、前記光学手段の前記第2面の一端部に向かって拡張現実用画像に相応する画像光を出射するように配置され、
前記第2面は、使用者の瞳孔から前方に延びる方向に対して垂直の平面であり、
前記第1面は、前記第2面とは互いに平行でないように、前記第2面の前記一端部から徐々に瞳孔から離れるように延びて形成され、前記第2面に対して傾斜角θで傾斜した平面であり、
前記画像出射部から出射する画像光は、互いに平行ではなく、
前記画像出射部から出射した画像光は、前記光学手段の内面に配置された反射ミラーによって反射された後、前記第1面及び前記第2面で少なくとも1回以上全反射されて光学素子に伝達され、
前記画像出射部から出射する拡張現実用画像に相応する画像光に相応する拡張現実用画像の焦点距離をDとし、前記画像出射部から前記光学手段の前記反射ミラーに入射する広さをSとしたときに、前記傾斜角θは、tan-1(S/D)の数式によって設定されることを特徴とする、
近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【請求項2】
前記光学素子は、8mm以下の反射手段からなることを特徴とする、請求項1に記載の近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【請求項3】
前記傾斜角θは0.015°~4.6°の範囲の値を有することを特徴とする、請求項1に記載の近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【請求項4】
前記光学手段の前記第1面及び前記第2面の少なくとも一つは少なくとも一部が曲面に形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置に関するもので、より詳しくは無限大の焦点距離ではない近接焦点距離を有する拡張現実用画像を歪みや切れなしに鮮やかに使用者に提供することができる拡張現実用光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
拡張現実(Augmented Reality、AR)とは、周知のように、現実世界の実際映像にコンピュータなどによって生成される仮想の映像やイメージを重ねて提供することを意味する。
【0003】
このような拡張現実を具現するためには、コンピュータのようなデバイスによって生成される仮想の映像やイメージを現実世界の映像に重ねて提供することができるようにする光学系を必要とする。このような光学系としては、HMD(Head Mounted Display)又はメガネ型装置を用いて仮想映像を反射又は屈折させるプリズムなどのような光学手段を使う技術が知られている。
【0004】
しかし、このような従来の光学系を用いた装置は、その構成が複雑であって重さ及び体積が相当なので使用者が着用するのに不便さがあり、製造工程も複雑なので製造コストが高いという問題がある。
【0005】
また、従来の装置は、使用者が現実世界を見つめるときに焦点距離を変更する場合、仮想映像の焦点が合わなくなるという限界がある。これを解決するために、仮想映像に対する焦点距離を調節することができるプリズムのような構成を用いるか焦点距離の変更によって可変型焦点レンズを電気的に制御するなどの技術が提案されている。しかし、このような技術も焦点距離を調節するために使用者が別に操作しなければならないか焦点距離の制御のための別途のプロセッサなどのようなハードウェア及びソフトウェアを必要とするという点で問題がある。
【0006】
このような従来技術の問題点を解決するために、本出願人は特許文献1に記載されているように、人の瞳孔より小さいサイズの反射部を用いて仮想映像を瞳孔を通して網膜に投映することによって拡張現実を具現することができる装置を開発したことがある。
【0007】
図1は前記特許文献1に開示されたような拡張現実用光学装置を示す図である。
【0008】
図1を参照すると、画像出射部30は拡張現実用画像に相応する画像光を出射する手段であり、例えば小型ディスプレイ装置によって具現されることができる。反射部20は画像出射部30から出射した拡張現実用画像に相応する画像光を使用者の瞳孔に向けて反射させることによって拡張現実用画像を提供する。
【0009】
光学手段10は実際の事物から出射した画像光の少なくとも一部を透過させる手段であり、例えばメガネレンズであることができ、その内部に反射部20が埋め込まれている。フレーム部40は画像出射部30と光学手段10を固定及び支持する手段である。
【0010】
図1の反射部20は、人の瞳孔サイズより小さなサイズ、すなわち8mm以下に形成されている。このように反射部20を瞳孔サイズより小さく形成することにより、反射部20を介して瞳孔に入射する光に対する深度(Depth of Field)をほとんど無限大に近く、すなわち深度を非常に深くすることができる。ここで、深度とは焦点が合うものと認識される範囲を言う。深度が深くなれば拡張現実用画像に対する焦点距離も深くなるということを意味し、よって使用者が実際世界を見つめながら実際世界に対する焦点距離を変更しても、これにかかわらず拡張現実用画像の焦点はいつも合っているものと認識することになる。これは一種のピンホール効果(pin hole effect)と見なすことができる。したがって、使用者が実際世界に存在する実際事物を見つめながら焦点距離を変更することに関係なく、拡張現実用画像に対してはいつも鮮やかな仮想映像を提供することができる。
【0011】
図2は本出願人によって開発された拡張現実用光学装置の他の例を示す図である。
【0012】
図2の拡張現実用光学装置は、図1で説明したような利点をそのまま有するが、画像出射部30から出射した拡張現実用画像光が光学手段10の内面で反射されて反射部20に伝達され、反射部20はこれを瞳孔40に向けて反射させることによって拡張現実用画像を提供することを特徴とする。
【0013】
しかし、図2の拡張現実用光学装置は、拡張現実用画像の焦点が無限大の場合にのみ正常に像が表現されるという問題点がある。すなわち、画像出射部30から出射する拡張現実用画像光は、図2に示すように、原則的に完璧な形態の平行光ではなければならない。
【0014】
図3及び図4は画像出射部30から出射する画像光が平行光の場合と平行光ではない場合を比較して説明するための図である。
【0015】
図3を参照すると、画像出射部30から出射した拡張現実用画像に相応する画像光A、Bは平行光であり、これらは反射ミラー50で反射された後、光学手段10の内面で全反射されて反射部20に伝達される。
【0016】
この際、図3に示すように、画像光A、Bは光学手段10の内面で反射された後、互いに重畳することが分かる。よって、このような場合、反射部20で反射されて瞳孔40に向かうとき、使用者の立場では正常に結ばれた像を見ることができるであろう。
【0017】
一方、図4では、画像出射部30から出射する画像光A、Bは平行光ではない。このような場合、反射ミラー50を経て互いに異なる角度で光学手段10の内面に入射するから、光学手段10の内面で全反射されるとき、図3のように重畳せずに互いに異なる角度で全反射されて進行することが分かる。よって、図4のような場合には、反射部20を介して瞳孔40に伝達される画像光によって形成される像はずれるか割れたように見えることになる。言い換えれば、無限大の焦点を有する拡張現実用画像ではない場合には像が正常に結ばないことがあるという問題があり、これは無限大ではない焦点を有する近接焦点距離の拡張現実用画像を正常に表現しにくいということを意味する。このような問題を光路長整合(optical path length matching)又は光路長調節(optical path length adjusting)問題といい、図4の場合には光路長整合が不完全になって像切れ現象が発生する。
【0018】
図5図7は像切れ現象を示す実際画面である。
【0019】
図5図4で説明したように画像出射部30から出射する画像光A、Bが完全な平行光ではない場合であり、近距離の焦点距離を有する仮想事物(鉛筆)の像が切れて表示されることが分かる。よって、仮想事物に相応する画像光が光学手段10を介して伝達されるとき、イメージが自然に連結されずに不完全な状態で結合されて光路長整合が不完全であるので、仮想事物(鉛筆)が部分的に切れて提供されることが分かる。
【0020】
図6図5の場合より焦点距離が少し長くなった場合である。この場合にもやはり仮想事物の像は自然に連結されなく、光路長整合が不完全であることが分かる。
【0021】
一方、図7図6の場合より焦点距離がかなり長くなった場合である。この場合は仮想事物の焦点距離が無限大に近いものと見なすことができる。したがって、仮想事物から出射する画像光A、Bは、図3に示すように、光学手段10に平行光として入射するので、歪みがなくかつ像切れ現象がほとんどない像を使用者に提供することができる。これは光路長整合がほぼ完全な形態と見なすことができる。
【0022】
このような問題点を解決するためには図8のような方法を思うことができる。
【0023】
図8は近接焦点距離の拡張現実用画像を表示するための従来の構成を示す図である。図8に示すように、光学手段10の前後に凸レンズ及び凹レンズの対を配置し、近接焦点距離を有する拡張現実用画像(仮想事物)に対しては、反射部20で反射された後、凹レンズを介して画像光が外側に屈折されるようにする。この場合、凹レンズのみ使えば、使用者が光学手段10を介して認識する実際世界に存在する実際事物に対する像は歪むことができるが、光学手段10の外面に配置された凸レンズによって実際事物に対する像は内側に屈折されて光学手段10に入射した後、凹レンズを介して再び外側に屈折されるから、実際世界の事物に対する像は正常に形成されることができる。よって、図8のような構造を使えば、近接焦点距離の拡張現実用画像を正常に表現することができる。
【0024】
しかし、図8のような構成は、光学手段10の外部に凹レンズ及び凸レンズのような追加の構成を必要とするから、体積が大きくなり、装置の重さが増加するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】韓国登録特許10-1660519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は前述したような問題点を解決するためのものであり、無限大の焦点距離ではない近接焦点距離を有する拡張現実用画像を歪みや切れなしに鮮やかに使用者に提供することができる拡張現実用光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前述したような課題を解決するために、本発明は、近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置であって、実際事物から出射した画像光の少なくとも一部を使用者の目の瞳孔に向けて透過させ、画像出射部から出射する拡張現実用画像に相応する画像光を内面で少なくとも1回以上反射させて光学素子に伝達する光学手段と、前記光学手段の内部に配置され、前記光学手段を介して伝達される拡張現実用画像に相応する画像光を使用者の目の瞳孔に向けて伝達することによって使用者に拡張現実用画像を提供する少なくとも一つ以上の光学素子とを含み、前記光学手段は、実際事物から出射した画像光が入射する第1面と、前記光学素子を介して伝達される拡張現実用画像に相応する画像光が出射する第2面とを有し、前記第1面と第2面は互いに平行でないように傾斜角θを有することを特徴とする近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置を提供する。
【0028】
ここで、前記光学素子は、8mm以下の反射手段からなることが好ましい。
【0029】
また、前記画像出射部のある一点から出射する画像光は互いに平行でないことが好ましい。
【0030】
また、前記画像出射部から出射した画像光は、前記光学手段の内面に配置された反射ミラーによって反射された後、前記第1面及び第2面で少なくとも1回以上全反射されて光学素子に伝達されるようにすることができる。
【0031】
また、前記傾斜角θは、画像出射部から出射する拡張現実用画像に相応する画像光に相応する拡張現実用画像の焦点距離D及び前記画像出射部から光学手段の反射ミラーに入射する広さSに基づいて設定されるように構成することができる。
【0032】
また、前記傾斜角θはtan-1(S/D)の数式によって設定されることが好ましい。
【0033】
また、前記傾斜角θは0.015°~4.6°の範囲の値を有することが好ましい。
【0034】
また、前記光学手段の第1面及び第2面の少なくとも一つは少なくとも一部が曲面に形成されることができる。
【0035】
また、前記光学手段の第1面と第2面は部分的に傾斜角θを有することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、無限大の焦点距離ではない近接焦点距離を有する拡張現実用画像を歪みや切れなしに鮮やかに使用者に提供することができる拡張現実用光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】特許文献1に開示されたような拡張現実用光学装置を示す図である。
図2】本出願人によって開発された拡張現実用光学装置の他の例を示す図である。
図3】画像出射部30から出射する画像光が平行光である場合と平行光ではない場合を比較して説明するための図である。
図4】画像出射部30から出射する画像光が平行光である場合と平行光ではない場合を比較して説明するための図である。
図5】像切れ現象を示す実際画面である。
図6】像切れ現象を示す実際画面である。
図7】像切れ現象を示す実際画面である。
図8】近接焦点距離の拡張現実用画像を表示するための従来の構成を示す図である。
図9】本発明の一実施例による拡張現実用光学装置100の全体的な構成を示す図である。
図10図9のような構成による実際事物に対する画像光の屈折及びこれによる影響を説明するための図である。
図11図9のような構成による実際事物に対する画像光の屈折及びこれによる影響を説明するための図である。
図12】光学手段10の第1面11と第2面12の傾斜角θを設定する過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。
【0039】
図9は本発明の一実施例による拡張現実用光学装置100の全体的な構成を示す図である。
【0040】
図9を参照すると、本実施例の拡張現実用光学装置100(以下、簡単に“光学装置100”と言う)は、光学手段10及び光学素子20を含む。
【0041】
光学手段10は、実際事物から出射した画像光の少なくとも一部を使用者の瞳孔40に向けて透過させ、画像出射部30から出射する拡張現実用画像に相応する画像光を内面で少なくとも1回以上反射させて光学素子20に伝達する手段である。
【0042】
また、光学手段10は、実際事物から出射した画像光が入射する第1面11と、光学素子20を介して伝達された拡張現実用画像に相応する画像光が出射する第2面12とを有し、前記第1面11と第2面12は互いに平行でないように傾斜角θを持って配置される。
【0043】
光学素子20は光学手段10の内部に配置され、光学手段10を介して伝達される拡張現実用画像に相応する画像光を使用者の瞳孔40に向けて伝達することにより、使用者に拡張現実用画像を提供する機能を果たす。
【0044】
すなわち、実際世界に存在する実際事物から出射する画像光は光学手段10を介して使用者の瞳孔40に伝達され、画像出射部30から出射する拡張現実用画像光に相応する画像光は光学手段10及び光学素子20によって使用者の瞳孔40に伝達されるので、使用者は実際事物を見つめながら拡張現実用画像を受けることができる。
【0045】
ここで、画像出射部30は拡張現実用画像に相応する画像光を光学手段10に向けて出射する手段であり、例えば小型のLCDのようなディスプレイ装置であるか、ディスプレイ装置から出射する画像光を反射又は屈折させて光学手段10に向けて伝達する反射手段又は屈折手段であることができる。
【0046】
すなわち、画像出射部30は拡張現実用画像を表示するディスプレイ装置であるか、このようなディスプレイ装置から出射した画像光を最終的に光学手段10に伝達する反射又は屈折手段などのその他の多様な手段を意味し、画像出射部30自体は本発明の直接的な目的ではなく従来技術に知られているものなので、ここでは詳細は説明を省略する。
【0047】
一方、拡張現実用画像とは、ディスプレイ装置に表示されて光学手段10及び光学素子20を介して使用者の瞳孔40に伝達される仮想画像を意味し、イメージ形態の静止映像又は動画のようなものであることができる。このような拡張現実用画像はディスプレイ装置から画像光として出射し、光学手段10及び光学素子20を介して使用者の瞳孔40に伝達されることによって仮想画像として提供され、これと同時に、使用者は光学手段10を介して実際世界に存在する実際事物から出射する画像光を目で直接見つめることにより拡張現実サービスを受けるようになる。
【0048】
一方、図9に光学素子20は1個のみ示したが、複数が形成されることもできる。複数が形成される場合、図9に横方向に一列に配置されることができる。また、図9の紙面方向に一列に形成されるか横方向及び紙面方向の組合せによる行列状に形成されることもできる。
【0049】
一方、光学素子20は、前記背景技術で説明したように、深度を深くしてピンホール効果が得られるように、人の瞳孔サイズより小さなサイズ、すなわち8mm以下に形成されることが好ましい。
【0050】
また、光学素子20は、例えば小型ミラー又はハーフミラーのような反射手段であるか回折手段などのようなものであることができ、人の瞳孔サイズより小さなサイズ、すなわち8mm以下の反射手段から形成されることが好ましい。
【0051】
一方、光学手段10の内面には反射ミラー50が配置されている。これは画像出射部30から出射した画像光A、Bを反射させて光学手段10の内面に反射させ、全反射によって画像光A、Bが光学素子20に伝達されるようにするための手段である。
【0052】
ただ、反射ミラー50は図9のように画像出射部30が配置された場合に必要なものである。例えば、画像出射部30から出射する画像光A、Bが直接光学手段10の内面で全反射されるようにする位置に配置される場合には省略することができる。
【0053】
一方、図9で、画像出射部30の表面のある一点から出射する画像光は、先に図4で説明したように、互いに平行でない画像光A、Bであり、これらは反射ミラー50によって反射された後、光学手段10の第1面11及び第2面12で少なくとも1回以上全反射された後、光学素子20に入射する。
【0054】
ここで、光学手段10の第1面11と第2面12は互いに平行でないように傾斜角θを有するように配置されているから、画像光Aと画像光Bは互いに異なる角度を持って光学手段10の第1面11で全反射され、光学手段10の第1面11で初めて画像光Aと画像光Bが会う点からは画像光Aと画像光Bは重畳して光学素子20に伝達される。
【0055】
一方、このような構成によれば、第1面11と第2面が互いに傾斜角θだけ傾くように形成されているので、光学手段10の第1面11を介して瞳孔40に入射する実際世界の映像、すなわち実際事物から出射した画像光は光学手段10を通過するときに屈折されることができ、これは実際事物に対する像に影響を与えることができる。
【0056】
図10及び図11図9のような構成による実際事物に対する画像光の屈折及びこれによる影響を説明するための図である。
【0057】
図10を参照すると、第1面11と第2面が傾斜角θを持って配置され、光学手段10の屈折率をnというとき、実際事物から出射する画像光が光学手段10に入射して屈折されてから出射する出射角θ’は次のような関係を満たす。
【0058】
【数1】
【0059】
【数2】
【0060】
【数3】
【0061】
したがって、使用者の瞳孔40の正面方向の実際事物に対する画像光の出射角θsは次のように求めることができる。
【0062】
【数4】
【0063】
ここで、θが0に近い値を有すればsinθはθに収斂し、sin-1(nsinθ)はnθと見なすことができる。また、ガラス材の光学手段10の場合、屈折率nは1.5であるので、結局
【数5】
になる。
【0064】
これは、光学手段10の第1面11と第2面12が傾斜角θを持って配置される場合、実際事物は瞳孔40の正面方向に対して
【数6】
だけ屈折されるということを意味する。
【0065】
一方、図11を参照すると、画像出射部30から出射した互いに平行でない画像光A及び画像光Bが光学手段10の第1面11の一点で全反射された後、光学手段10の第2面12に出射するとき、傾斜角θcを有することになり、これは次のような関係を満たす。
【0066】
θc=2θ
【0067】
前述したように、θは2θsであるので、θc≒4θsになる。
【0068】
これは、光学手段10の第1面11と第2面12が傾斜角θを有する場合、拡張現実用画像に相応する画像光に対する影響が実際世界の実際事物に対する画像光に及ぶ影響より4倍ほど大きいということを意味する。よって、拡張現実用画像に相応する画像光に対する像整合効果は大きくなるが、これに比べて実際世界の画像光に対する屈折効果は大きくないということを意味する。
【0069】
図12は光学手段10の第1面11と第2面12の傾斜角θを設定する過程を説明するための図である。
【0070】
図12を参照すると、比較的近距離の焦点距離Dを有する仮想事物(虚像)を拡張現実用画像として提供しようとする場合、仮想事物に相応する画像光が反射ミラー50に入射する広さSは次のような関係を有する。
【0071】
tanθ≒S/D
【0072】
ここで、θは仮想事物の中心から反射ミラー50の最外殻に入射する画像光の経路間の角度であり、これを光学手段10の第1面11と第2面12との間の傾斜角θに設定することができる。
【0073】
したがって、tan-1(S/D)を計算して傾斜角θを計算することができ、この計算された結果に近似した値に光学手段10の第1面11と第2面12との間の傾斜角θを設定することができる。
【0074】
すなわち、光学手段10の第1面11と第2面12との間の傾斜角θは拡張現実用画像の焦点距離Dをどこに置くかによって設定することができることを意味する。
【0075】
一般に、人の目の深度範囲は±0.3ジオプターであると知られている。よって、前述したような従来の無限大焦点距離を有する構造では、焦点距離を3.333mm(=1/0.3)より近くすることが不可能である。また、人はおよそ125mm以上の場合にのみ焦点を合わせることができ、それ以下の場合には焦点を合わせることができないと知られている。本発明は、このような点を考慮し、拡張現実用画像、すなわち仮想イメージの焦点を3.333mm~125mmの範囲に置くことができるように構成することを特徴とする。
【0076】
したがって、傾斜角θが有することができる好ましい最小値と最大値は次のように計算することができる。
【0077】
最小傾斜角θはS=3.333mmの場合であるので、Dは人の瞳孔サイズに相応するので1mm~10mmの範囲の値を有し、最小傾斜角θの場合にはDが最小値を有しなければならないのでD=1mmとすれば、tanθ≒S/D≒0.017°になる。
【0078】
最大傾斜角θはS=125mmの場合であるので、Dは人の瞳孔サイズに相応するので1mm~10mmの範囲の値を有し、最大傾斜角θの場合にはDが最大値を有しなければならないので、D=10mmとすれば、tanθ≒S/D≒4.574°になる。
【0079】
したがって、傾斜角θは0.017°~4.574°の範囲の値を有することが好ましく、およそ0.015°~4.6°の範囲内であれば十分である。
【0080】
一方、光学手段10の第1面11と第2面12は平面のものとして示したが、これらの中で少なくとも一つは少なくとも一部が曲面に形成されることもできる。
【0081】
また、光学手段10の第1面11と第2面12はいずれも平面に形成されているので、第1面11と第2面12は全面に対して傾斜角θを有するものになっているが、第1面11と第2面12は部分的にのみ傾斜角θを有するようにしても良い。例えば、瞳孔40の周辺部のみ傾斜角θを有するようにし、残部は第1面11と第2面12が平行になるようにすることもできる。
【0082】
以上で説明した本発明による拡張現実用光学装置10は無限大の焦点距離を有しない近距離の焦点距離を有する仮想事物を図7の場合のように使用者に提供することができる効果を有する。
【0083】
以上で、本発明の好適な実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その他の多様な修正及び変形実施が可能であるというのは言うまでもない。
【0084】
(付記)
(付記1)
近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置であって、
実際事物から出射した画像光の少なくとも一部を使用者の目の瞳孔に向けて透過させ、画像出射部から出射する拡張現実用画像に相応する画像光を内面で少なくとも1回以上反射させて光学素子に伝達する光学手段と、
前記光学手段の内部に配置され、前記光学手段を介して伝達される拡張現実用画像に相応する画像光を使用者の目の瞳孔に向けて伝達することによって使用者に拡張現実用画像を提供する少なくとも一つ以上の光学素子と、
を含み、
前記光学手段は、実際事物から出射した画像光が入射する第1面と、前記光学素子を介して伝達される拡張現実用画像に相応する画像光が出射する第2面とを有し、前記第1面と第2面は互いに平行でないように傾斜角θを有することを特徴とする、
近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【0085】
(付記2)
前記光学素子は、8mm以下の反射手段からなることを特徴とする、付記1に記載の近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【0086】
(付記3)
前記画像出射部のある一点から出射する画像光は互いに平行でないことを特徴とする、付記1に記載の近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【0087】
(付記4)
前記画像出射部から出射した画像光は、前記光学手段の内面に配置された反射ミラーによって反射された後、前記第1面及び第2面で少なくとも1回以上全反射されて光学素子に伝達されることを特徴とする、付記1に記載の近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【0088】
(付記5)
前記傾斜角θは、画像出射部から出射する拡張現実用画像に相応する画像光に相応する拡張現実用画像の焦点距離D及び前記画像出射部から光学手段の反射ミラーに入射する広さSに基づいて設定されることを特徴とする、付記4に記載の近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【0089】
(付記6)
前記傾斜角θはtan-1(S/D)の数式によって設定されることを特徴とする、付記5に記載の近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【0090】
(付記7)
前記傾斜角θは0.015°~4.6°の範囲の値を有することを特徴とする、付記6に記載の近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【0091】
(付記8)
前記光学手段の第1面及び第2面の少なくとも一つは少なくとも一部が曲面に形成されたことを特徴とする、付記1に記載の近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
【0092】
(付記9)
前記光学手段の第1面と第2面は部分的に傾斜角θを有することを特徴とする、付記1に記載の近接距離の拡張現実用画像を提供することができる拡張現実用光学装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12