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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】浴槽用底板の昇降装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
A61H33/00 310N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022066791
(22)【出願日】2022-04-14
【審査請求日】2023-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135398
【氏名又は名称】株式会社ヤエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】新山 秀邦
(72)【発明者】
【氏名】藤川 浩之
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 勢
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-111813(JP,A)
【文献】特開2013-050187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板を浴槽内で昇降させる浴槽用底板の昇降装置であって、
底板と、前記底板を昇降する昇降装置本体と、前記昇降装置本体を収容する空間部を有する収容部とを備え、
前記収容部は、前記空間部を浴槽内との間で仕切る変形可能な仕切部材を備えており、
前記昇降装置本体は、前記仕切部材を介して前記底板を支持し、
前記底板は、矩形状に形成されており、
前記昇降装置本体は、前記底板の両側縁部をそれぞれ支持するように複数配置されている浴槽用底板の昇降装置。
【請求項2】
前記仕切部材は、前記底板の両側縁に沿ってそれぞれ複数配置されている請求項に記載の浴槽用底板の昇降装置。
【請求項3】
前記仕切部材は、弾性変形可能な材料からなる請求項に記載の浴槽用底板の昇降装置。
【請求項4】
前記空間部は、浴槽の内壁によって画定されており、
前記仕切部材は、前記内壁に形成された切欠部を覆うように設けられている請求項に記載の浴槽用底板の昇降装置。
【請求項5】
前記底板は、底板本体の両側縁部から側方に張り出すように設けられた被支持部を備えており、
前記被支持部は、前記切欠部を介して前記内壁の外側に突出することにより、前記昇降装置本体に支持される請求項に記載の浴槽用底板の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽用底板の昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の入浴装置として、昇降装置により上下動する底板を浴槽内に配置し、上昇位置において入浴者を車椅子ごと底板に搭載した後、底板を降下させることにより入浴者が入浴することができる昇降式入浴装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-290414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の昇降式入浴装置は、昇降装置が浴槽内に配置されるためにアクチュエータ等の水密性を確保する必要があり、昇降装置の製造コストや耐久性等に課題を有していた。
【0005】
そこで、本発明は、安価で耐久性に優れる浴槽用底板の昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、底板を浴槽内で昇降させる浴槽用底板の昇降装置であって、底板と、前記底板を昇降する昇降装置本体と、前記昇降装置本体を収容する空間部を有する収容部とを備え、前記収容部は、前記空間部を浴槽内との間で仕切る変形可能な仕切部材を備えており、前記昇降装置本体は、前記仕切部材を介して前記底板を支持し、前記底板は、矩形状に形成されており、前記昇降装置本体は、前記底板の両側縁部をそれぞれ支持するように複数配置されている浴槽用底板の昇降装置により達成される。
【0008】
前記仕切部材は、前記底板の両側縁に沿ってそれぞれ複数配置されていることが好ましい。
【0009】
前記仕切部材は、弾性変形可能な材料からなることが好ましい。
【0010】
前記空間部は、浴槽の内壁によって画定されていることが好ましく、前記仕切部材は、前記内壁に形成された切欠部を覆うように設けられていることが好ましい。前記底板は、底板本体の両側縁部から側方に張り出すように設けられた被支持部を備えることが好ましく、前記被支持部は、前記切欠部を介して前記内壁の外側に突出することにより、前記昇降装置本体に支持される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価で耐久性に優れる浴槽用底板の昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る浴槽用底板の昇降装置の斜視図である。
図2図1の要部を示す斜視図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4図1の他の要部を分解状態で示す斜視図である。
図5図1の更に他の要部を矢示B方向に見た正面図である。
図6図5に示す要部を矢示C方向に見た側面図である。
図7図5に示す要部の作動後の状態を示す正面図である。
図8図7に示す要部の側面図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る浴槽用底板の昇降装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る浴槽用底板の昇降装置(以下、単に「昇降装置」という)の斜視図である。図1に示すように、昇降装置1は、底板10と、底板10を昇降する昇降装置本体20と、昇降装置本体20を収容する収容部30とを備えており、底板10を浴槽50の内部で昇降させることができる。
【0014】
図2に示すように、底板10は、矩形平板状の底板本体11と、底板本体11の両側縁部から側方に張り出すように設けられた被支持部12とを備えている。被支持部12は、棒状体をコ字状に屈曲させた形状を有しており、底板本体11の一対の長辺縁部における両端部の2か所(合計4箇所)に取り付けられている。底板10の上面には、入浴者を車椅子ごと搭載することができるが、入浴者が座るための椅子等を設けてもよい。この椅子は、回転可能あるいは着脱可能に設けることが可能であり、例えば、90度±15度の範囲で回動するように構成することができる。
【0015】
図3は、図1のA-A断面図である。図3に示すように、浴槽50は、上部が断面逆U字状に形成されており、内壁51と外壁53とが上縁部52において連結された形状を有している。内壁51と外壁53との間には全周にわたって隙間が形成されており、この隙間によって収容部30の空間部31が構成されている。空間部31には、後述する昇降装置本体20が収容される。
【0016】
浴槽50は、土台60によって支持されており、空間部31の下方が土台60の上部により閉塞されている。浴槽50内に配置される底板10と内壁51の側部との間には、若干(例えば25mm以上)の隙間が形成されている。安全性を高めるため、底板10の各側面には、内壁51の側部に向けて突出するように、ショックアブソーバ等の緩衝器を設けてもよい。
【0017】
収容部30の空間部31は、浴槽50内に面する側が内壁51によって画定される。空間部31は、水が浸入しないように密閉空間であることが好ましいが、水がかからない一部において外壁53の外部と連通してもよい。内壁51には、底板10の各被支持部12に対応する箇所(図1に示す合計4か所)に、仕切部材40が設けられている。図4に示すように、仕切部材40は、上下に延びる帯状のシート体41の周縁に枠部42を備えており、浴槽50の内壁51に形成された切欠部54に枠部52を嵌め込むことにより、仕切部材40が切欠部54を水密状態で覆うように設けられている。仕切部材40は、底板10の昇降による各被支持部12の上下方向の可動範囲全体にわたって設けられていればよく、本実施形態においては、内壁51の側部の下部から上縁部52にわたって設けられているが、内壁51の側部にのみに設けることも可能である。
【0018】
シート体41は、弛みをもたせることで、底板10の昇降に伴い変形可能とされている。シート体41は、変形を容易にするため、弾性変形可能な材料により形成されることが好ましく、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等のゴム材により形成することができる。
【0019】
図1に示すように、昇降装置本体20は、収容部30内において底板10の短辺方向両側にそれぞれ配置されている。図5は、収容部30に収容された一方の昇降装置本体20を図1の矢示B方向に見た正面図である。図5に示すように、昇降装置本体20は、パンタグラフ式の公知の機構を備えており、ベース部21と可動部22との間が、互いに交差する一対の連結部材23,24により連結されている。可動部22は、底板10の長辺縁部に沿って延びる棒状の部材である。
【0020】
一対の連結部材23,24は、回動部25において互いに回動可能とされており、水圧シリンダ等からなるアクチュエータ26の作動により可動部22を上下動させることができる。可動部22の昇降ストロークは、例えば45cm±20cm程度であり、任意の位置で可動部22を停止させることができる。
【0021】
図6は、図5に示す昇降装置本体20を矢示C方向に見た側面図である。図5および図6に示すように、昇降装置本体20の可動部22は、長手方向の両側において、仕切部材40を介して底板10の被支持部12を支持する。被支持部12は、浴槽50の内壁51の切欠部54を介して内壁51の外側に突出しており、この突出部分が可動部22に支持される。被支持部12が可動部22により支持される部分の形状は特に限定されないが、例えば、円筒状、球状、角状等とすることができる。
【0022】
上記の構成を備える昇降装置1は、図5および図6に示すように、底板10が上昇位置にある状態から、アクチュエータ26の作動により可動部22を降下させると、図7および図8に示すように、可動部22に支持された底板10が下降位置まで下降する。可動部22が上昇位置と下降位置との間で移動する間は、仕切部材40の変形によって、仕切部材40を介した可動部22と被支持部12との密着状態が維持される。
【0023】
被支持部12が仕切部材40に沿ってスムーズに上下動するように、仕切部材40の表面にコーティングを施す等して摩擦係数を低減させてもよい。また、被支持部12が仕切部材40の表面に沿って転動可能となるように、被支持部12をローラ等により形成してもよく、これによって仕切部材40の摩耗を抑制して長寿命化を図ることができる。被支持部12は、仕切部材40を介して可動部22に密着することが好ましいが、可動部22と被支持部12との間に磁力を作用させることにより、底板10を浮遊状態で支持することもできる。
【0024】
本実施形態の昇降装置1は、昇降装置本体20が収容される収容部30の空間部31が、変形可能な仕切部材40によって浴槽50内との間で仕切られているため、昇降装置本体20が浴槽50内の水に浸漬されるおそれがない。したがって、昇降装置本体20のアクチュエータ26等に対して高い水密性が要求されないため、昇降装置1の低コスト化、長寿命化を図ることができる。昇降装置本体20のアクチュエータ26は、水圧シリンダ以外に、電力や磁力等を動力源とするものであってもよく、例えば、ギヤドモータ、ソレノイド等を挙げることができる。また、昇降装置本体20を浴槽50の内壁51の外側に設けることで、浴槽50内の清掃や昇降装置本体20のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0025】
本実施形態の昇降装置本体20は、底板10の短辺方向両側を支持するように配置しているが、底板10の長辺方向両側を支持する構成であってもよい。
【0026】
本実施形態の収容部30は、浴槽50の内壁51と外壁53との間に形成される空間部31に昇降装置本体20を収容する構成としているが、昇降装置本体20が浴槽50内の水に浸漬されることなく底板10を支持可能であれば、他の構成であってもよく、浴槽50の形状や大きさ、配置等に応じて適宜の位置に収容部30を設けることが可能である。空間部31は、浴槽50の内壁51によって画定されることが好ましいが、必ずしもこの構成には限定されない。例えば、図9に示すように、底板10の両側縁部に沿って筐体状の収容部30を配置し、この収容部30内の空間部に昇降装置本体20を収容することもできる。なお、図9において、図1等と同様の構成部分には同一の符号を付している。
【0027】
本実施形態の仕切部材40は、底板10の側縁部に沿って複数設けられているが、単一であってもよい。単一の仕切部材40を底板本体11の側縁部と略同じ長さに形成することで、昇降装置本体20が仕切部材40を介して底板本体11の側縁部を支持することも可能であり、被支持部12を備えない構成にすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 浴槽用底板の昇降装置
10 底板
11 底板本体
12 被支持部
20 昇降装置本体
30 収容部
31 空間部
40 仕切部材
50 浴槽
51 内壁
54 切欠部
【要約】
【課題】 安価で耐久性に優れる浴槽用底板の昇降装置を提供する。
【解決手段】 底板10を浴槽50内で昇降させる浴槽用底板の昇降装置1であって、底板10と、底板10を昇降する昇降装置本体20と、昇降装置本体20を収容する空間部31を有する収容部30とを備え、収容部30は、空間部31を浴槽50内との間で仕切る変形可能な仕切部材40を備えており、昇降装置本体20は、仕切部材40を介して底板10を支持する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9