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特許7356196解空間クリッピング粒子群最適化に基づくコンフォーマルアレイパターン合成法
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  • 特許-解空間クリッピング粒子群最適化に基づくコンフォーマルアレイパターン合成法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】解空間クリッピング粒子群最適化に基づくコンフォーマルアレイパターン合成法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/20 20060101AFI20230927BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20230927BHJP
【FI】
H01Q21/20
G06F30/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022527847
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 CN2021109108
(87)【国際公開番号】W WO2022188337
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】202110251847.7
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522185900
【氏名又は名称】ヂェァジァン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Zhejiang university
【住所又は居所原語表記】866 Yuhangtang Road, Xihu District, Hangzhou City, Zhejiang Province,310058 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ソン チュンイー
(72)【発明者】
【氏名】ワン シン
(72)【発明者】
【氏名】チェン チン
(72)【発明者】
【氏名】ユィ ディンカー
(72)【発明者】
【氏名】シー ユィジャン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ウェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュイ ジーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リー ホァン
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0164428(US,A1)
【文献】D.W. Boeringer, et al.,"Efficiency-constrained particle swarm optimization of a modified bernstein polynomial for conformal array excitation amplitude synthesis",IEEE Transactions on Antennas and Propagation,2005年,Vol.53, No.8, pp.2662 - 2673,DOI: 10.1109/TAP.2005.851783
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/20
G06F 30/20
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1:ピークサイドローブレベル抑制指数SLLを唯一の指数として、射影アレイとコンフォーマルアレイとの間の励起変換関係及び射影アレイとユニフォームアレイアレイ素子の励起との間の最小二乗関係に基づいて、コンフォーマルアレイとユニフォームアレイとの間のアレイ素子の励起変換を実現し、IFFT及びFFT法でパターンを迅速に計算及び処理し、アレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比の制約下でSLLを満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得るステップ、及び
S2:S1で得られたアレイ素子の励起に従って、粒子群最適化の解空間クリップ処理を行い、非線形更新の重み係数を設計し、十分なグローバル探索を確保し、多目的最適化により適応度関数を設計し、コンフォーマルアレイパターンをさらに最適化させて、アレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比の制約下で多目的最適化を満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得るステップ
を含む解空間クリッピング粒子群最適化に基づくコンフォーマルアレイパターン合成法であって、
前記S1は、
S1.1:設計指数に従って、正規化された遠方界パターンピークサイドローブレベル抑制指数SLL、メインビームの最初のヌルビーム幅の最大値FNMWe、所望のヌル点NULLpointe、及びヌルの深さNULLvalueeを含む最適化の目標を設定し、
S1.2:アレイ素子数N、アレイ素子番号1~Nを設定し、アレイ素子の動作中心周波数fを設定して計算して次の式(1)で表される波長λを得、
【数1】
[式中、c=3×108m/sで、真空中の電磁波の速さである。]
アレイ素子の間隔をλ/2に設定し、アレイ対称中心点が位置する接線方向をx軸方向とし、前記アレイ対称中心点を通過する法線方向をy軸方向として、グローバルデカルト座標系を確立し、ローカル座標系における各アレイ素子のパターン関数f(θ)をグローバル座標系におけるパターン関数fn(θ)に変換して計算して次の式(2)で表されるコンフォーマルアレイ遠方界パターンF(θ)を得、
【数2】
[式中、Anは、n番目のアレイ素子の励起、kは波長の数k=2π/λ、
[式1]
はメインビーム指向性の遠方界方向、
[式2]
はグローバル座標系におけるn番目のアレイ素子の位置ベクトルであり、jは虚数単位を表す。]
S1.3:コンフォーマルアレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比の最大値をdrrに設定し、アレイ素子の励起Anを次の式(3)で表し、
【数3】
[式中、Inは、n番目のアレイ素子の励起の振幅、αnはn番目のアレイ素子の励起の位相である。算出したInの取り得る値の範囲は、[1/drr, 1]で、
[式3]
である。ここで
[式4]
はグローバル座標系におけるメインビーム方向の位置ベクトルである。]
S1.4:S1.3で決定された振幅範囲内で、コンフォーマルアレイ素子の励起をランダムに初期化し、
S1.5:メインビーム方向θ0=0°をグローバル座標系y軸方向に設定し、コンフォーマルアレイをメインビーム方向に射影して射影アレイを得、射影アレイ素子のx軸方向座標は、対応するコンフォーマルアレイ素子に等しく、y軸方向座標は0である。ほぼ等しいピークサイドローブレベルの関係に基づいて、射影アレイとコンフォーマルアレイとの間の励起変換関係は次の式(4)によって計算され、
【数4】
[式中、Ipnは射影アレイのn番目のアレイ素子の励起振幅、
[式5]
はメインビーム方向におけるコンフォーマルアレイのn番目のアレイ素子のアレイ素子パターン振幅、
[式6]
は射影アレイ中のアレイ素子パターンメインビーム方向における振幅である。]
射影アレイをより小さい間隔で補間し、射影アレイを間隔がより小さいユニフォームアレイに変換し、各射影アレイのアレイ素子は前記射影アレイの中心にあるユニフォームアレイ素子で表され、射影アレイとユニフォームアレイのステアリングベクトルマトリックス間に存在する最小二乗関係に基づいて、次の式(5)で表される射影アレイとユニフォームアレイとの間の励起変換関係マトリックスを得、
【数5】
[式中、Epは、射影アレイのステアリングベクトルマトリックス、Eeはユニフォームアレイのステアリングベクトルマトリックス、cは該最小二乗関係を満たす変換マトリックスである。]
S1.6:ユニフォームアレイとアレイファクタとの間の逆フーリエ変換に従って計算してアレイファクタを得、アレイ素子パターンとの積は遠方界パターンであり、
S1.7:ピークサイドローブレベル抑制指数SLLに従って、当該指数を超えるパターンのサンプリングポイントの値を、指数を満たす値に修正し、
S1.8:修正後のパターンをアレイ素子パターンで除算してアレイファクタを得ると共にフーリエ変換を使用してユニフォームアレイ励起値を得、
S1.9:前記式(4)及び前記式(5)に対して逆演算を実行して、コンフォーマルアレイ素子の励起を得、
S1.10:アレイ素子の振幅励起範囲[1/drr, 1]に従ってコンフォーマルアレイ素子の励起を修正し、アレイ素子の励起振幅ダイナミックレンジ比制限を満たすようにし、
S1.11:S1.5~S1.10を反復して実行し、コンフォーマルアレイ素子の励起は、ダイナミックレンジ比[1/drr, 1]を満たし、かつパターンがピークサイドローブレベル抑制指数を満たしている場合、反復を終了し、満たさない場合、設定する最大回数まで実行し、ピークサイドローブレベル抑制指数SLLを満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得る、
というサブステップによって実現される、ことを特徴とする、解空間クリッピング粒子群最適化に基づくコンフォーマルアレイパターン合成法。
【請求項2】
前記S2は、
S2.1:前記S1で得られたコンフォーマルアレイ素子の励起及び前記S1.3で得られたアレイ素子の励起の振幅範囲[1/drr, 1]に基づいて、解空間を適切にクリップし、解空間の粒子の各次元は、コンフォーマルアレイ中の1つのアレイ素子の励起に対応し、i次元の解空間の探索範囲を次のように決定し、
【数6】
【数7】
[式中、
[式7]
は、粒子のi次元の探索範囲の下限、
[式8]
はi次元の探索範囲の上限、
[式9]
はS1で得られたコンフォーマルアレイ素子の励起から成るベクトルであり、次元の数がコンフォーマルアレイ素子の数に等しく、
[式10]

[式9]
のi次元、σは解空間クリッピング係数であり、S1で得られたコンフォーマルアレイ素子の励起近傍で保つ解空間範囲を表す。]
S2.2:クリッピング後の解空間で粒子の位置及速度のランダムな初期化を実行し、
S2.3:次の式に従って粒子の適応度を計算し、個体の最適値及び集団のグローバル最適値を更新し、
【数8】
[式中、slltotalは、ピークサイドローブレベル抑制指数SLL部分より高いパターンの全てのサンプリングポイントの全ての値の合計、FNMW及びFNMWeは最初のヌルビーム幅の実測値と期待値、NULLpoint及びNULLpointeはヌル点の実測値と期待値、NULLvalue及びNULLvalueeはヌル値の実測値と期待値、μ1、μ2、μ3は重み係数である。]
S2.4:次の式で粒子の速度と位置を計算及び更新し、
【数9】
【数10】
[式中、ωは、慣性重み係数、c1及びc2は加速係数、r1及びr2は[0,1]の間の一様分布を満たす乱数、pbestidは個体の最適値、gbestdはグローバル最適値である。[式11]
は、k回目の反復中の粒子のi次元の速度、
[式12]
はk回目の反復中の粒子のi次元の位置である。]
S2.5:探索中で十分なグローバル探索を強調するため、ωを次の式により非線形更新し、
【数11】
[式中、kは、現在の反復回数、Tは最大反復回数、ωIはωが取り得る値の範囲のスケーリング係数、ω0はωが取り得る値の範囲の最小値である。]
S2.6:反復が最大回数に達すると、演算が終了し、さもなければ、前記S2.3にジャンプし、最後にS1.1で設定された最適化の目標を満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得る、
というサブステップによって実現される、ことを特徴とする、請求項1に記載の解空間クリッピング粒子群最適化に基づくコンフォーマルアレイパターン合成法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイアンテナの技術分野に関し、特に、解空間クリッピング粒子群最適化に基づくコンフォーマルアレイパターン合成法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーダーシステムは、急速に発展を遂げ、使用シナリオもますます広範になっている。レーダーシステムの電磁トランシーバーデバイスの中核部分として、アレイアンテナが大きな注目を集めている。異なる使用シナリオにおいて、異なる使用ニーズについて、アレイアンテナは特定の遠方界パターンを生成する必要がある。アレイアンテナ素子の励起を合成することによって必要なアレイパターンをどのように実現するかは、常にホットな研究課題であった。工学の分野では、パターン合成問題を解決する際にも多くの制限がある。アレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比(Dynamic Range Ratio、DRR)は、重要な側面であり、DRRが高いほど給電ネットワークの設計が難しくなり、アレイ給電ネットワークのコストが増加するため、所望のアレイパターンを合成する際、アレイ素子の励起のDRRを妥当な範囲に制限することが非常に重要である。
【0003】
コンフォーマルアレイは、キャリアと融合され、両者が同じ形状特性を持ち、この特性によりコンフォーマルアレイに利用可能な大口径や広角スキャンなどの多くの利点を持たせる。これにより、近年、コンフォーマルアレイに関する技術研究が徐々に進んでいるが、同時に、コンフォーマルアレイのパターン合成には多くの課題に直面している。コンフォーマルアレイは、形状特性により、遠方界パターンをアレイファクタとアレイ素子パターンの積和形式に分解することはできず、チェビシェフ合成やテイラー合成などの従来の方法は適しない。FFTアルゴリズムはアレイファクタを最適化するためにのみ使用できるため、失敗の問題にも直面する。また、コンフォーマルアレイに適した代替射影法には、局所的な収束が起こりやすいという欠点もある。
【0004】
マルチパラメータ、非線形目的関数の最適化における独自のメリットにより、粒子群最適化アルゴリズムで表されるインテリジェント最適化アルゴリズムは、コンフォーマルアレイのパターン合成問題に非常に適している。粒子群最適化アルゴリズム(Particle Swarm Optimization、PSO)は、1995年にJ.Kennedy及びR.C.Eberhartらによって提案された。PSOアルゴリズムは単純で、パラメータの数が少なく、容易に実現する。ただし、粒子ベクトルの次元は最適化対象となるパラメータの数と同じであるため、最適化対象となるパラメータの数が多いと、解空間の次元が高くなり、アルゴリズムの収束速度が遅くなり、かつ局所的な収束に陥りやすいである。したがって、PSOに的を絞って最適化する必要がある。従来の最適化の多くは、粒子更新メカニズムの改善、慣性重みの改善、及び他のインテリジェント最適化アルゴリズムとの融合に着眼している。解空間における基本的なPSOの粒子の初期値をランダムに生成する面で改善されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記先行技術の最適化解空間を考慮しないという不足に着目し、パターンの単目的最適化結果に基づいて、PSOアルゴリズムの粒子は、クリッピング後の解空間で小範囲の細かい探索を行わせ、基本的なPSOアルゴリズムの初期値がランダムに与えられることによる遅い探索速度及び局所的な収束の問題を改善し、アルゴリズムのパフォーマンスを向上し、アレイ素子の励起ダイナミックレンジ比の制限下のコンフォーマルなパターン合成を実現し、多目的最適化を満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的を達成するため、次のような技術的手段を提示する。
【0007】
解空間クリッピング粒子群最適化に基づくコンフォーマルアレイパターン合成法であって、
S1:ピークサイドローブレベル抑制指数SLLを唯一の指数として、射影アレイとコンフォーマルアレイとの間の励起変換関係及び射影アレイとユニフォームアレイアレイ素子の励起との間の最小二乗関係に基づいて、コンフォーマルアレイとユニフォームアレイとの間のアレイ素子の励起変換を実現し、IFFT及びFFT法でパターンを迅速に計算及び処理し、アレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比の制約下でSLLを満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得るステップ、及び
S2:S1で得られたアレイ素子の励起に従って、粒子群最適化の解空間クリップ処理を行い、非線形更新の重み係数を設計し、十分なグローバル探索を確保し、多目的最適化により適応度関数を設計し、コンフォーマルアレイパターンをさらに最適化させて、アレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比の制約下で多目的最適化を満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得るステップ
を含む、合成法である。
【0008】
さらに、前記S1は、次のサブステップによって実現される。
【0009】
S1.1:設計指数に従って、正規化された遠方界パターンピークサイドローブレベル抑制指数SLL、メインビームの最初のヌルビーム幅の最大値FNMW、所望のヌル点NULLpoint、及びヌルの深さNULLvalueeを含む最適化の目標を設定し、
S1.2:アレイ素子数N、アレイ素子番号1~Nを設定し、アレイ素子の動作中心周波数fを設定して計算して次の式(1)で表される波長λを得る。
【0010】
【数1】
式中、c=3×10m/s、つまり真空中の電磁波の速さであり、
アレイ素子の間隔をλ/2に設定し、アレイ対称中心点が位置する接線方向をx軸方向とし、この点を通過する法線方向をy軸方向として、グローバルデカルト座標系を確立し、ローカル座標系における各アレイ素子のパターン関数f(θ)をグローバル座標系におけるパターン関数f(θ)に変換して計算して次の式(2)で表されるコンフォーマルアレイ遠方界パターンF(θ)を得る。
【0011】
【数2】
式中、Aは、n番目のアレイ素子の励起、kは波長の数k=2π/λ、
[式1]
はメインビーム指向性の遠方界方向、
[式2]
はグローバル座標系におけるn番目のアレイ素子の位置ベクトルであり、jは虚数単位を表し、
S1.3:コンフォーマルアレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比の最大値をdrrに設定し、アレイ素子の励起Aを次の式(3)で表す。
【0012】
【数3】
式中、Iは、n番目のアレイ素子の励起の振幅、αはn番目のアレイ素子の励起の位相である。算出したIの取り得る値の範囲は、[1/drr, 1]で、
[式3]
である。ここで
[式4]
はグローバル座標系におけるメインビーム方向の位置ベクトルであり、
S1.4:S1.3で決定された振幅範囲内で、コンフォーマルアレイ素子の励起をランダムに初期化し、
S1.5:メインビーム方向θ=0°をグローバル座標系y軸方向に設定し、コンフォーマルアレイをメインビーム方向に射影して射影アレイを得る。射影アレイ素子のx軸方向座標は、対応するコンフォーマルアレイ素子に等しく、y軸方向座標は0である。ほぼ等しいピークサイドローブレベルの関係に基づいて、射影アレイとコンフォーマルアレイとの間の励起変換関係は次の式(4)によって計算される。
【0013】
【数4】
式中、Ipnは射影アレイのn番目のアレイ素子の励起振幅、
[式5]
はメインビーム方向におけるコンフォーマルアレイのn番目のアレイ素子のアレイ素子パターン振幅、
[式6]
は射影アレイ中のアレイ素子パターンメインビーム方向における振幅であり、
射影アレイをより小さい間隔で補間し、射影アレイを間隔がより小さいユニフォームアレイに変換し、各射影アレイのアレイ素子はその中心にあるユニフォームアレイ素子で表される。射影アレイとユニフォームアレイのステアリングベクトルマトリックス間に存在する最小二乗関係に基づいて、次の式(5)で表される射影アレイとユニフォームアレイとの間の励起変換関係マトリックスを得る。
【0014】
【数5】
式中、Eは、射影アレイのステアリングベクトルマトリックス、Eはユニフォームアレイのステアリングベクトルマトリックス、cは該最小二乗関係を満たす変換マトリックスであり、
S1.6:ユニフォームアレイとアレイファクタとの間の逆フーリエ変換に従って計算してアレイファクタを得、アレイ素子パターンとの積は遠方界パターンであり、
S1.7:ピークサイドローブレベル抑制指数SLLに従って、当該指数を超えるパターンのサンプリングポイントの値を、指数を満たす値に修正し、
S1.8:修正後のパターンをアレイ素子パターンで除算してアレイファクタを得ると共にフーリエ変換を使用してユニフォームアレイ励起値を得、
S1.9:式(4)及び式(5)に対して逆演算を実行して、コンフォーマルアレイ素子の励起を得、
S1.10:アレイ素子の振幅励起範囲[1/drr, 1]に従ってコンフォーマルアレイ素子の励起を修正し、アレイ素子の励起振幅ダイナミックレンジ比制限を満たすようにし、
S1.11:S1.5~S1.10を反復して実行し、コンフォーマルアレイ素子の励起は、ダイナミックレンジ比[1/drr, 1]を満たし、かつパターンがピークサイドローブレベル抑制指数を満たしている場合、反復を終了し、満たさない場合、設定する最大回数まで実行し、ピークサイドローブレベル抑制指数SLLを満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得る。
【0015】
さらに、前記S2は、次のサブステップによって実現される。
【0016】
S2.1:S1で得られたコンフォーマルアレイ素子の励起及びS1.3で得られたアレイ素子の励起の振幅範囲[1/drr, 1]に基づいて、解空間を適切にクリップし、解空間の粒子の各次元は、コンフォーマルアレイ中の1つのアレイ素子の励起に対応し、i次元の解空間の探索範囲を次のように決定する。
【0017】
【数6】
【0018】
【数7】
【0019】
式中、
[式7]
は、粒子のi次元の探索範囲の下限、
[式8]
はi次元の探索範囲の上限、
[式9]
はS1で得られたコンフォーマルアレイ素子の励起から成るベクトルであり、次元の数がコンフォーマルアレイ素子の数に等しく、
[式10]

[式9]
のi次元、σは解空間クリッピング係数であり、S1で得られたコンフォーマルアレイ素子の励起近傍で保つ解空間範囲を表し、
S2.2:クリッピング後の解空間で粒子の位置及速度のランダムな初期化を実行し、
S2.3:次の式に従って粒子の適応度を計算し、個体の最適値及び集団のグローバル最適値を更新する。
【0020】
【数8】
【0021】
式中、slltotalは、ピークサイドローブレベル抑制指数SLL部分より高いパターンの全てのサンプリングポイントの全ての値の合計、FNMW及びFNMWeは最初のヌルビーム幅の実測値と期待値、NULLpoint及びNULLpointeはヌル点の実測値と期待値、NULLvalue及びNULLvalueeはヌル値の実測値と期待値、μ、μ、μは重み係数であり、
S2.4:次の式で粒子の速度と位置を計算及び更新する。
【0022】
【数9】
【0023】
【数10】
【0024】
式中、ωは、慣性重み係数、c及びcは加速係数、r及びrは[0,1]の間の一様分布を満たす乱数、pbestidは個体の最適値、gbestdはグローバル最適値である。
[式11]
は、k回目の反復中の粒子のi次元の速度、
[式12]
はk回目の反復中の粒子のi次元の位置であり、
S2.5:探索中で十分なグローバル探索を強調するため、ωを次の式により非線形更新する。
【0025】
【数11】
【0026】
式中、kは、現在の反復回数、Tは最大反復回数、ωはωが取り得る値の範囲のスケーリング係数、ωはωが取り得る値の範囲の最小値であり、
S2.6:反復が最大回数に達すると、演算が終了し、さもなければ、S2.3にジャンプし、最後にS1.1で設定された最適化の目標を満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明の有利な効果は、以下の通りである。
【0028】
本発明の解空間クリッピング粒子群最適化に基づくコンフォーマルアレイパターン合成法は、PSOに基づくコンフォーマルアレイパターン合成技術に焦点を合わせ、低複雑度のFFTアルゴリズムで単目的最適化結果を得ることに着眼し、該結果に基づいてPSOアルゴリズムの解空間のクリップ処理を行い、アルゴリズムの収束速度を効果的に上げ、局所的な収束問題を避けることで、PSOアルゴリズムパフォーマンスを向上し、コンフォーマルアレイの多目的パターンの最適化を実現し、多目的最適化を満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】コンフォーマルアレイモデルの概略図である。
図2】本発明の実施例に係るS1ステップを示す図である。
図3】本発明の実施例に係るアルゴリズムフローチャートである。
図4】本発明の実施例に係るパターン合成法、基本的なPSO法の最適化後に得られた遠方界パターンの比較図である。
図5】本発明の実施例に係るパターン合成法、基本的なPSO法の最適化後に得られた適応度の最適値の比較図である。
図6】本発明の実施によって得られたアレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比の制約下で多目的最適化を満たすコンフォーマルアレイ素子の励起分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の目的及び効果をより明確に理解するため、以下に図面及び好ましい実施例を参照しつつ本発明をさらに説明する。ここに明らかにされた具体的実施例は本発明の解釈を助けることを意図するが、本発明の範囲を如何とも限定することは意図しないことを理解されたい。
【0031】
本発明の解空間クリッピング粒子群最適化に基づくコンフォーマルアレイパターン合成法を図1図3に示し、前記方法は、次のステップを含む。
【0032】
S1:ピークサイドローブレベル抑制指数SLLを唯一の指数として、射影アレイとコンフォーマルアレイとの間の励起変換関係及び射影アレイとユニフォームアレイアレイ素子の励起との間の最小二乗関係に基づいて、コンフォーマルアレイとユニフォームアレイとの間のアレイ素子の励起変換を実現し、IFFT及びFFT法でパターンを迅速に計算及び処理し、アレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比の制約下でSLLを満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得るステップである。前記S1は、次のサブステップによって実現される。
S1.1:設計指数に従って、正規化された遠方界パターンピークサイドローブレベル抑制指数SLL=-35dB、メインビームの最初のヌルビーム幅の最大値FNMW=10°、所望のヌル点NULLpointe=±30°及びヌルの深さNULLvaluee=-60dBを含む最適化の目標を設定し、
S1.2:アレイ素子数N=41、アレイ素子番号1~41を設定し、アレイ素子の動作中心周波数fを設定して計算して次の式(1)で表される波長λを得る。
【0033】
【数1】
式中、c=3×10m/s、つまり真空中の電磁波の速さであり、
アレイ素子の間隔をλ/2に設定し、アレイ対称中心点が位置する接線方向をx軸方向とし、この点を通過する法線方向をy軸方向として、グローバルデカルト座標系を確立し、ローカル座標系における各アレイ素子のパターン関数f(θ)をグローバル座標系におけるパターン関数f(θ)(本実施例の場合、f(θ)=f(θ)*cos(θ))に変換して計算して次の式(2)で表されるコンフォーマルアレイ遠方界パターンF(θ)を得る。
【0034】
【数2】
式中、Aは、n番目のアレイ素子の励起、kは波長の数k=2π/λ、
[式1]
はメインビーム指向性の遠方界方向、
[式2]
はグローバル座標系におけるn番目のアレイ素子の位置ベクトルであり、jは虚数単位を表し、
S1.3:S1.3:コンフォーマルアレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比の最大値をdrr=5に設定し、アレイ素子の励起Aを次の式(3)で表す。
【0035】
【数3】
式中、Iは、n番目のアレイ素子の励起の振幅、αはn番目のアレイ素子の励起の位相である。算出したIの取り得る値の範囲は、[1/drr, 1]で、
[式3]
である。ここで
[式4]
はグローバル座標系におけるメインビーム方向の位置ベクトルであり、αの計算式はアレイ遠方界パターンの指向性がメインビーム方向を満たすことができる。
S1.4:S1.3で決定された振幅範囲内で、コンフォーマルアレイ素子の励起をランダムに初期化し、
S1.5:メインビーム方向θ=0°をグローバル座標系y軸方向に設定し、コンフォーマルアレイをメインビーム方向に射影して射影アレイを得る。図2に示すように、射影アレイ素子のx軸方向座標は、対応するコンフォーマルアレイ素子に等しく、y軸方向座標は0である。ほぼ等しいピークサイドローブレベルの関係に基づいて、射影アレイとコンフォーマルアレイとの間の励起変換関係は次の式(4)によって計算される。
【0036】
【数4】
式中、Ipnは射影アレイのn番目のアレイ素子の励起振幅、
[式5]
はメインビーム方向におけるコンフォーマルアレイのn番目のアレイ素子のアレイ素子パターン振幅、
[式6]
は射影アレイ中のアレイ素子パターンメインビーム方向における振幅であり、
射影アレイをより小さい間隔で補間し、射影アレイを間隔がより小さいユニフォームアレイに変換し、各射影アレイのアレイ素子はその中心にあるユニフォームアレイ素子で表される。パターンは、アレイ素子の励起マトリックスとステアリングベクトルマトリックスの積で、射影アレイがユニフォームアレイの遠方界パターンに等しい場合、射影アレイとユニフォームアレイのステアリングベクトルマトリックスに基づいて、最小二乗関係を確立できる。
【0037】
【数12】
式中、Eは、射影アレイのステアリングベクトルマトリックス、Eはユニフォームアレイのステアリングベクトルマトリックスであり、上記の式の変形に基づいて射影アレイとユニフォームアレイとの間の励起変換関係マトリックスcを得た。
【0038】
【数13】
式中、cは、前記最小二乗関係を満たす変換マトリックス、E はEの共役転置を表し、
S1.6:ユニフォームアレイとアレイファクタとの間の逆フーリエ変換に従って計算してアレイファクタを得、S1.2で得られたアレイ素子パターンとの積は遠方界パターンであり、従来のパターン計算式と比較して、この方法は高速フーリエ変換を使用し、複雑度が低く、計算がより速く、アルゴリズムの全体的な計算量への影響が少なく、S1をS2の前のステップとして適合させる。
【0039】
S1.7:ピークサイドローブレベル抑制指数SLLに従って、当該指数を超えるパターンのサンプリングポイントの値を、指数を満たす値に修正し、すなわち、パターンのサイドローブをSLLに抑制し、
S1.8:修正後のパターンをアレイ素子パターンで除算してアレイファクタを得ると共にフーリエ変換を使用してユニフォームアレイ励起値を得、
S1.9:式(4)及び式(6)に対して逆演算を実行して、コンフォーマルアレイ素子の励起を得、
S1.10:アレイ素子の振幅励起範囲[1/drr, 1]に従ってコンフォーマルアレイ素子の励起を修正し、アレイ素子の励起振幅ダイナミックレンジ比制限を満たすようにし、
S1.11:S1.5~S1.10を反復して実行し、コンフォーマルアレイ素子の励起は、ダイナミックレンジ比[1/drr, 1]を満たし、かつパターンがピークサイドローブレベル抑制指数を満たしている場合、反復を終了し、満たさない場合、設定する最大回数まで実行し、ピークサイドローブレベル抑制指数SLLを満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得る。
【0040】
S2:S1で得られたアレイ素子の励起に従って、粒子群最適化の解空間クリップ処理を行い、非線形更新の重み係数を設計し、十分なグローバル探索を確保し、多目的最適化により適応度関数を設計し、コンフォーマルアレイパターンをさらに最適化させて、アレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比の制約下で多目的最適化を満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得、
前記S2は、次のサブステップによって実現される。
S2.1:S1で得られたコンフォーマルアレイ素子の励起及びS1.3で得られたアレイ素子の励起の振幅範囲[1/drr, 1]に基づいて、解空間を適切にクリップし、解空間の粒子の各次元は、コンフォーマルアレイ中の1つのアレイ素子の励起に対応し、i次元の解空間の探索範囲を次のように決定する。
【0041】
【数14】
【0042】
【数15】
式中、
[式7]
は、粒子のi次元の探索範囲の下限、
[式8]
はi次元の探索範囲の上限、
[式9]
はS1で得られたコンフォーマルアレイ素子の励起から成るベクトルであり、次元の数がコンフォーマルアレイ素子の数に等しく、
[式10]

[式9]
のi次元、σは解空間クリッピング係数であり、S1で得られたコンフォーマルアレイ素子の励起近傍で保つ解空間範囲を表す。この式は、全体としてアレイ素子の励起振幅ダイナミックレンジ比[1/drr, 1]の制約下での粒子探索の解空間範囲を決定し、
S2.2:クリッピング後の解空間で粒子の位置及速度のランダムな初期化を実行し、
S2.3:次の式に従って粒子の適応度を計算し、個体の最適値及び集団のグローバル最適値を更新する。
【0043】
【数16】
式中、slltotalは、ピークサイドローブレベル抑制指数SLL部分より高いパターンの全てのサンプリングポイントの全ての値の合計、FNMW及びFNMWeは最初のヌルビーム幅の実測値と期待値、NULLpoint及びNULLpointeはヌル点の実測値と期待値、NULLvalue及びNULLvalueeはヌル値の実測値と期待値、μ、μ、μは探索効果を調整するための重み係数であり、本実施例では、μ=0.1、μ=0.5、μ=0.4であり、
S2.4:次の式で粒子の速度と位置を計算及び更新する。
【0044】
【数17】
【0045】
【数18】
式中、ωは、慣性重み係数、c及びcは加速係数、r及びrは[0,1]の間の一様分布を満たす乱数、pbestidは個体の最適値、gbestdはグローバル最適値である。
[式11]
は、k回目の反復中の粒子のi次元の速度、
[式12]
はk回目の反復中の粒子のi次元の位置であり、
S2.5:解空間をクリッピングするため、粒子の探索は小範囲な細かい探索が特徴であり、解空間中のグローバル探索をより強調する。ωは、グローバル探索及びローカル探索を調整する重み係数で、ωを次の式により非線形更新する。
【0046】
【数19】
式中、kは、現在の反復回数、Tは最大反復回数、ωはωが取り得る値の範囲のスケーリング係数、ωはωが取り得る値の範囲の最小値であり、ωrはωが取り得る値の範囲の調整を実現でき、
S2.6:本実施例では、最大反復回数Tが500回で、反復が最大回数に達すると、演算が終了し、さもなければ、S2.3にジャンプし、最後にS1.1で設定された最適化の目標を満たすコンフォーマルアレイ素子の励起を得る。
【0047】
図4及び図5は、コンフォーマルアレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比drr=5の場合、アレイパターンはS1.1に従って設定された時、本発明のコンフォーマルアレイパターン合成法、基本的なPSOアルゴリズムの最適化後で得られた遠方界パターン及び適応度の最適値の比較図を示す。図4から分かるように、本発明のパターン合成法は、基本的なPSOアルゴリズムと比較して、ピークサイドローブレベルを-35dB以下に抑制することができ、最初のヌルメインビーム幅を10°以内に制限でき、所望の位置に所望のヌルの深さを生成できる。図5は、20回の独立した実験後に得られた最適適応度関数値の平均値の反復変化した曲線を示し、この曲線は本発明のパターン合成法がより良い適応度の最適値を探索でき、すなわち、最適化効果がより良いことを示している。図6は、コンフォーマルアレイ素子の励起分布を示し、アレイ素子の励起範囲は[0.2,1]で、アレイ素子の励起振幅のダイナミックレンジ比の制限drr=5を満たしていることが分かる。
【0048】
上記は、発明の好ましい実施例にすぎず、発明を限定することを意図していないことは、当業者によって理解されるだろう。前述の実施例を参照しつつ本発明を詳細に説明してきたが、当業者であれば、對前述の各実施例に記載の技術的手段を修正できるか、その中の一部の技術的特徴を均等範囲で置き換えることができる。本発明の精神及び原則の範囲内で行われた全ての修正、均等範囲の置き換え等は本発明の保護範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6