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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】不動産取得システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/16 20120101AFI20230927BHJP
   G06Q 40/03 20230101ALI20230927BHJP
【FI】
G06Q50/16
G06Q40/03
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023086019
(22)【出願日】2023-05-25
【審査請求日】2023-05-25
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523196770
【氏名又は名称】株式会社優住館
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒瀧 英俊
(72)【発明者】
【氏名】丸山 政男
(72)【発明者】
【氏名】菊地 惠子
【審査官】深津 始
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-164662(JP,A)
【文献】特開2016-134091(JP,A)
【文献】特開2003-187129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -G06Q 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を定期賃貸借した後に当該建物及び土地を分割払いにより譲渡する際に賃貸借時の家賃月額と譲渡時の分割額が同一となるように地主の受取額をシミュレーションする不動産取得システムであって、
入力された前記建物及び土地の登記事項データから土地価格、建物価格及び経過年数を取得する不動産情報取得手段と、
前記建物価格から複利現価率又は減価償却率を用いて前記経過年数まで前記建物の価値を減らした経過価格を算出する手段と、
前記経過価格と前記土地価格を合計した不動産売買金額の所定割合を家賃月額として設定し、前記家賃月額を予め設定された譲渡額分割払いの期間で累計し利息分を引いたものを譲渡額として算出する家賃・譲渡額算定手段と、
前記不動産売買金額を予め設定された定期賃貸借の期間満了時に前記譲渡額と同一になるように減価償却して当該期間各回の譲渡時精算金を算出し、入力された前記建物の工事費用データから所定期間でローン返済する際の利息を加えたローン返済額を算出して、定期賃貸借の期間とその後の譲渡額分割払いの期間の各回における家賃累計と譲渡時精算金の合計から工事費用の元金残高とローン返済額を相殺した差額を地主の受取額として出力する手段と、を有する、
ことを特徴とする不動産取得システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貸家賃貸料と住宅取得分割払いを併用した不動産取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空き家問題が深刻となっている。居住者の死亡やその相続人が居住しないことで空き家になる。相続手続をせずに放置されているケースもあるが、相続により不動産を取得したとしても、相続人の居住地が離れていると手入れできず、固定資産税だけを負担している場合もある。空き家が放置されると近隣住民に迷惑を掛けることにもなる。
【0003】
住宅の劣化等により不動産を取得した時点より価値が下がっても、固定資産税の評価額が下がらないことが多い。固定資産税の負担が大きいと、所有者は売却を検討することになるが、劣化した状況では買い手が付かないことも多い。そのため、住宅をリフォームすることになるが、販売額が上がると若い世代とか収入が少ない場合には困難である。売主としても売れるか分からない状況でリフォーム代を負担しづらい。
【0004】
なお、中古住宅を売買する際に、売主自身が住宅の劣化状況や欠陥の有無などを把握するのは困難なことから、住宅の設計や施工に詳しい専門家がそれを診断するインスペクションが求められているが、瑕疵があれば却って購入を躊躇することに繋がる。そのため、不動産の所有権を放棄したくてもできない状況になる。
【0005】
また、少子高齢化により高齢者の割合が多くなるが、高齢になってから住む家を探すのは困難な場合が多い。家に住むには、賃貸住宅を借りるか、住宅を購入することになる。賃貸住宅を借りる場合は、家賃を支払い続けることになる。住宅を購入する場合は、一般的に住宅ローンを利用するが、銀行のローン審査が通らない場合は利用できない。特に高齢者は、長期の住宅ローンを組むのは困難である。
【0006】
なお、売主と買主が合意すれば分割払いすることも可能であるが、売主の住宅ローンが残っていて抵当権が設定されたままだと売却不可であったり、支払いが滞らないという保証は無かったり、デメリットもある。また、長期の分割で無利息の場合、利息分が贈与とみなされることもある。
【0007】
特許文献1に記載されているように、家賃の支払いとともに資産の形成を可能にするためのコンピュータシステムであって、賃貸物件を購入する場合は、蓄積された有価代替物が賃貸物件の購入費用に充当される発明も開示されている。また、特許文献2に記載されているように、上物建設のための底地割賦販売用プログラムであって、土地の所有権を移転して売主に一定金額の現金化を可能にしながら買主の資金負担を軽減する発明も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第7128378号公報
【文献】特開2003-263482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、賃貸借契約の更新時期に、借主が賃貸物件を購入するか、別の賃貸物件を借りるか、賃貸借契約を終了するか等を選択できるが、賃貸物件を購入する場合の支払いが更新前と同程度で居住できるとは限らない。また、特許文献2に記載の発明では、底地について割賦販売契約を締結して買主は分割払いすれば良いが、上物は買主が建設する必要がある。
【0010】
年齢を重ねてから住宅ローンを組んだり、若いうちでも長期のローンを組んだりした場合、貯蓄ができないまま定年等で収入が大きく減少すると、ローン返済が困難になる。住宅を手放す者が増えると、価格の安い中古住宅が多く出回ることになる。そうなると、ローンを返済できずに住宅を売却しようとしても、ローンが残ってしまうこともある。
【0011】
そこで、本発明は、賃貸住宅において賃料相当額を一定期間支払うことで所有権が移転されて継続して居住することを可能にする不動産取得システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、建物を定期賃貸借した後に当該建物及び土地を分割払いにより譲渡する不動産取得システムであって、入力された前記建物及び土地の登記事項データから建物価格及び土地価格を取得する不動産情報取得手段と、前記建物価格から賃貸借後の経過価格を導出し、前記経過価格と前記土地価格の合計から家賃と譲渡額を算定する家賃・譲渡額算定手段と、入力された前記建物の工事費用データを前記家賃累計と前記譲渡額の合計から差し引いた受取額について賃貸借及び分割払いの期間ごとに収益を比較する収益比較手段と、を有し、前記受取額に収益が出る期間かつ前記家賃月額と前記譲渡額の分割額が同一となるように設定する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、建物を定期賃貸借した後に当該建物及び土地を分割払いにより譲渡する不動産取得システムであって、入力された前記建物及び土地の登記事項データから建物価格及び土地価格を取得する不動産情報取得手段と、前記建物価格から賃貸借後の経過価格を導出し、前記経過価格と前記土地価格の合計から家賃と譲渡額を算定する家賃・譲渡額算定手段と、入力された前記建物及び土地の諸経費データを前記家賃累計と前記譲渡額の合計に加えた支払額を提示する結果表示手段と、を有し、前記支払額について前記家賃月額と前記譲渡額の分割額が同一となるように設定する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明において、前記経過価格は、前記建物価格から複利現価率を用いて前記建物の経過年数まで算出した額である、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明において、前記経過価格は、前記建物価格から償却率を用いて前記建物の耐用年数を超えたら償却額が一定の限度額となるよう減価償却していったときの前記建物の経過年数で算出した額である、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明において、前記譲渡額は、前記経過価格と前記土地価格の合計から償却率を用いて賃貸借の期間満了時において前記家賃月額を分割払いの期間で累計した額となるように減価償却した額である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、賃貸住宅において賃料相当額を一定期間支払うことで所有権が移転されて継続して居住することが可能となる。中古住宅について譲渡特約付き不動産賃貸借契約を締結する際に、途中で譲渡担保付き不動産割賦売買契約を締結するとして、リフォーム工事費や分割払いの利息などを考慮した家賃及び支払額を設定することができる。
【0018】
居住者は、最初は家賃を支払って住み、途中から家賃と同額で分割払いすることで、支払完了時に土地と建物の所有権を取得することができる。中古住宅の所有者は、ローンと管理費を賄える家賃を設定することで利益を得た上で、最終的に不動産を手放すことができ、居住者は、一定期間支払うことで住宅を取得して住み続けることができ、空き家問題が解消する。
【0019】
中古住宅であるため、新築住宅を購入するよりも支払期間を抑えることができ、定年までに支払いが完了するように人生設計することができる。賃貸借の期間と分割払いの期間で同じ負担額となるので、途中で支払不能となるリスクが少ない。賃貸借の期間を変動させることで家賃月額も増減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明である不動産取得システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明である不動産取得システムの流れを示すフローチャートである。
図3】本発明である不動産取得システムの不動産情報入力画面を示す図である。
図4】本発明である不動産取得システムの複利現価テーブルを示す図である。
図5】本発明である不動産取得システムの耐用減価償却テーブルを示す図である。
図6】本発明である不動産取得システムの家賃・譲渡額テーブルを示す図である。
図7】本発明である不動産取得システムの地主用試算表を示す図である。
図8】本発明である不動産取得システムの収益比較テーブルを示す図である。
図9】本発明である不動産取得システムの地主用結果表示画面を示す図である。
図10】本発明である不動産取得システムの入居者用試算表を示す図である。
図11】本発明である不動産取得システムの入居者用結果表示画面を示す図である。
図12】本発明である不動産取得システムの購入者用試算表を示す図である。
図13】本発明である不動産取得システムの購入者用結果表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例1】
【0022】
まず、本発明である不動産取得システムの構成について説明する。図1は、不動産取得システムの構成を示すブロック図である。図2は、不動産取得システムの流れを示すフローチャートである。図3は、不動産情報入力画面を示す図である。図4は、複利現価テーブルを示す図である。図5は、耐用減価償却テーブルを示す図である。図6は、家賃・譲渡額テーブルを示す図である。図7は、地主用試算表を示す図である。図8は、収益比較テーブルを示す図である。図9は、地主用結果表示画面を示す図である。
【0023】
不動産取得システム100は、建物を定期賃貸借した後に当該建物及び土地を分割払いにより譲渡することにより、支払いが完了した時点で当該建物及び土地の所有権を移転させるものである。なお、不動産の所有者であって賃貸・譲渡する側である地主用と、不動産を賃借・譲受する側である入居者又は購入者用がある。
【0024】
図1に示すように、不動産取得システム100は、コンピュータシステムであり、プログラムにしたがい処理を実行する演算手段200、外部から入力されたデータを受け付ける入力手段300、データを格納又は取り出すための記憶手段400、データを表示又は印刷する出力手段500等を備える。その他にネットワークを介してデータを送受信するための通信手段などがあっても良い。
【0025】
演算手段200は、CPU(中央処理装置)等のプロセッサであり、入力手段300、記憶手段400及び出力手段500等の動作を制御・管理する。具体的には、図2に示す各処理を実行する。
【0026】
入力手段300は、文字等のデータを入力するためのキーボードや、画面上で動作を指示するためのマウス等の信号を受け取る入力端子である。入力データの例としては、登記事項データ310、工事費用データ320、諸経費データ330等が入力される。演算手段200は、入力手段300で受け付けたデータを記憶手段400に格納する。
【0027】
記憶手段400は、プログラムやデータを作業用に一時的に記憶するメモリや、データを保存用に長期的に蓄積するハードディスク等の記録媒体であり、ファイルとして保存したりデータベースを構築したりしても良い。例えば、複利現価テーブル410、耐用減価償却テーブル420、家賃・譲渡額テーブル430、収益比較テーブル440等を用意すれば良い。演算手段200は、記憶手段400から読み出したデータを用いて処理を実行し、実行した結果を記憶手段400に格納する。
【0028】
出力手段500は、データを画面に表示するためのモニタや、データを用紙に印刷するためのプリンタ等の信号を送り出す出力端子である。出力データの例としては、地主用結果表示画面510、入居者用結果表示画面520、購入者用結果表示画面530等を用意すれば良い。演算手段200は、記憶手段400から読み出したデータを出力手段500に送り出す。
【0029】
演算手段200は、入力された建物及び土地の登記事項データから建物価格及び土地価格を取得する不動産情報取得手段、建物価格から賃貸借後の経過価格を導出し、経過価格と土地価格の合計から家賃と譲渡額を算定する家賃・譲渡額算定手段などを有し、まず地主を対象とする場合は、入力された建物の工事費用データ320を家賃累計と譲渡額の合計から差し引いた受取額について賃貸借及び分割払いの期間ごとに収益を比較する収益比較手段を有する。
【0030】
図2に示すように、不動産情報取得手段として不動産情報取得S10、家賃・譲渡額算定手段として複利現価計算S20、耐用減価償却計算S30、及び家賃・譲渡額算定S40、収益比較手段として試算表作成S50、収益比較S60、及びシミュレーション結果表示S70等の処理を実行する。なお、受取額に収益が出る期間かつ家賃月額と譲渡額の分割額が同一となるように設定する。
【0031】
不動産情報取得S10は、入力手段300を介して入力された登記事項データ310を記憶手段400に保存する。登記事項データ310は、建物登記事項証明書、土地登記事項証明書、固定資産税路線価図などに記載された情報である。例えば、建物登記事項証明書の構造や床面積や新築年、土地登記事項証明書の地積、固定資産税路線価図の路線価などである。
【0032】
図3に示すように、建物の新築年を入力すると、現在の建物の経過年数が計算される。建物の床面積(平方メートル)を入力すると、立坪(坪数)が計算される。建物の坪単価の相場を入力すると、新築時の建物価格が計算される。また、土地の面積(地積)を入力すると、坪数が計算される。土地の路線価(坪単価)を入力すると、土地価格が計算される。建物価格と土地価格から不動産価格が計算される。なお、建物の構造(木造や軽量金属)なども入力する。算出されたデータも記憶手段400に記憶する。
【0033】
建物価格は、新築時からの経過年数により徐々に価値が下がっていく。指標として固定資産税評価額を使用することも考えられるが、課税のためにどんなに下がっても所定の価格が維持されるので、中古住宅の場合は参考にならないこともある。そのため、複利現価計算S20又は耐用減価償却計算S30で建物価格を算出する。両方を比較して一方を選択しても良いし、その他の方法で算出しても良い。
【0034】
複利現価計算S20は、不動産情報取得S10で記憶手段400に保存されたデータを用いて、建物の経過価格を計算する。ここでの経過価格は、複利現価テーブル410を用いて、建物価格から複利現価率で建物の経過年数まで価値を減らしていった額である。
【0035】
図4に示すように、複利現価テーブル410は、経過年数、回数、譲渡時精算金、査定原価償却累計などのフィールドを有する。建物の構造ごとに予め耐用年数が設定されており、耐用年数に応じた複利現価率が決定される。建物価格が読み込まれると複利現価率を用いて回数に応じた譲渡時精算金が再計算される。そして、現在の経過年数における譲渡時精算金が建物の経過価格として算出され、土地価格と経過価格の合計が現在の不動産売買金額として査定される。
【0036】
耐用減価償却計算S30も同様に、不動産情報取得S10で記憶手段400に保存されたデータを用いて、建物の経過価格を計算する。ここでの経過価格は、耐用減価償却テーブル420を用いて、建物価格から償却率で建物の経過年数まで減価償却していく。なお、耐用年数の2倍を残存価値が無くなる期待耐用期間と設定する。また、償却額は、最初は多く徐々に少なくなっていくが、耐用年数を超えたら一定の限度額となる。
【0037】
図5に示すように、耐用減価償却テーブル420は、経過年数、回数、譲渡時精算金、減価償却などのフィールドを有する。まず、実質的に価値が残存する期待耐用年数、予め設定された償却率、少なくとも償却額として保証される限度額などが決定される。建物価格が読み込まれると償却率を用いて回数に応じた譲渡時精算金が再計算される。そして、現在の経過年数における譲渡時精算金が建物の経過価格として算出され、土地価格と経過価格の合計が現在の不動産売買金額として査定される。
【0038】
家賃・譲渡額算定S40は、複利現価計算S20又は耐用減価償却計算S30等で算出した不動産売買金額から賃貸借の家賃と賃貸借後の譲渡額を計算する。家賃は、不動産売買金額を参考にして、それに相場や住宅の状況を考慮して、さらに、地主に収益が出るように利回りも考慮して算出する。ここでは、不動産売買金額の約100分の1で設定したとする。
【0039】
譲渡額は、家賃・譲渡額テーブル430を用いて、経過価格と土地価格の合計から償却率を用いて賃貸借の期間満了時において家賃月額を分割払いの期間で累計した額となるように減価償却した額である。賃貸借後に建物及び土地を無償譲渡すると贈与税が掛かることから、分割払いの期間における家賃相当額を譲渡額として算出する。
【0040】
図6に示すように、例えば、建物について定期賃貸借契約を10年間した後に、建物と土地について不動産売買契約をして5年間の分割払いが完了したら所有権が移転されるようにしたとする。なお、賃貸借の家賃月額と不動産売買の分割額が同一となるようにし、分割払いの利息を考慮するものとする。
【0041】
不動産売買金額が年数に応じて下がっていき、第10年目における譲渡時精算金が譲渡額となる。譲渡額に分割払いの期間に応じた利息を加算し、それを回数で割ると分割額となる。すなわち、5年分の家賃相当額の累計から利息分を引いた額が譲渡額になれば良い。
【0042】
なお、第1~10年目の譲渡時精算金については譲渡額が残存するように減価償却と同様に価値を下げていき、第11~15年目の譲渡時精算金については譲渡額の各回分に利息を付けて引いていけば良い。
【0043】
賃貸借の期間を長くした場合は、建物の経過価格が下がることで不動産売買金額が下がり、家賃月額は下がるが期間に応じた家賃累計に変動する。家賃月額が下がることで譲渡金額も下がる。
【0044】
試算表作成S50は、地主用においては、まず入力手段300を介して入力された工事費用データ320を記憶手段400に保存する。工事費用データ320は、各リフォーム工事に掛かった費用を入力して合計額を算出しても良いし、簡易的に算定した合計額を入力しても良い。
【0045】
図7に示すように、現時点で不動産を一括で売買する場合は、複利現価計算S20又は耐用減価償却計算S30等で算出した不動産売買金額となるが、劣化した中古住宅をリフォームする場合には、工事費用データ320を相殺した差額が、地主の受取額となる。
【0046】
建物を定期賃貸借した後に建物と土地を売買する場合は、家賃累計と譲渡額の合計から工事費用データ320を相殺した差額が、地主の受取額となる。工事費用データ320は、賃貸借の期間(例えば10年)または賃貸借と分割払いの合計期間(例えば15年)でローンを利用して支払っても良い。
【0047】
収益比較S60は、地主用において、入力手段300を介して入力または選択されたローン期間と年利を記憶手段400に保存する。試算表作成S50で入力された工事費用データ320、及び家賃・譲渡額算定S40で算出した家賃累計と譲渡額を読み出して、収益比較テーブル440を用いて複数の条件で収益を比較する。
【0048】
収益比較テーブル440は、年目、回数、元金残高、譲渡時精算金、受領金合計、ローン返済額、収益などのフィールドを有する。なお、受領金合計は、譲渡時精算金と家賃の合計であり、工事費用の元金残高とローン返済額累計を引いたものが収益となる。ローン返済額は、工事費用に年利で利息を加えた合計額を回数で割ることで算出される。
【0049】
図8に示すように、例えば、10年間は毎月の家賃を受け取り、5年間は譲渡額を分割で受け取りつつ、工事費用について10年ローンで返済するようにしたとする。1~10年目は家賃収入とローン利用支出があり、10~15年目は家賃収入のみとなる。15年後の受取金合計からローン返済額累計を引くと合計収益となる。15年ローンにした場合など他の条件で合計収益を出して比較可能である。
【0050】
シミュレーション結果表示S70は、地主用においては、家賃・譲渡額算定S40等で算出した結果を記憶手段400から読み出して、地主用結果表示画面510を出力手段500に表示する。
【0051】
図9に示すように、入力手段300を介して賃貸借の期間を変更すれば、家賃や譲渡額などを試算可能である。また、不動産売買金額から工事費用を差し引いた額なども確認可能である。その他に、賃貸借を継続する場合の家賃累計や、賃貸借後に一括購入する場合の金額も、参考情報として表示される。
【実施例2】
【0052】
図10は、入居者用試算表を示す図である。図11は、入居者用結果表示画面を示す図である。図12は、購入者用試算表を示す図である。図13は、購入者用結果表示画面を示す図である。
【0053】
演算手段200は、入居者又は購入者を対象とする場合、入力された建物及び土地の諸経費データを家賃累計と譲渡額の合計に加えた支払額を提示する結果表示手段を有し、支払額について家賃月額と譲渡額の分割額が同一となるように設定する。なお、演算手段200は、結果表示手段として、試算表作成S50、及びシミュレーション結果表示S70等の処理を実行する。
【0054】
入居者用の場合の試算表作成S50は、まず入力手段300を介して入力された諸経費データ330を記憶手段400に保存する。諸経費データ330は、税金、役所への手続費用、専門家の手数料などの合計額を算出しても良いし、簡易的に算定した合計額を入力しても良い。
【0055】
図10に示すように、賃貸借契約が終了した時点で不動産を一括で売買する場合は、譲渡額に諸経費データ330を加えたものが、入居者の支払額となる。なお、賃貸借の家賃を含めた金額を提示しても良い。
【0056】
入居者用の場合のシミュレーション結果表示S70は、家賃・譲渡額算定S40等で算出した結果を記憶手段400から読み出して、入居者用結果表示画面520を出力手段500に表示する。
【0057】
図11に示すように、家賃、譲渡額、諸経費を考慮した額などを確認可能である。その他に、賃貸借を継続する場合の家賃累計や、賃貸借後に一括購入する場合の金額も、参考情報として表示される。
【0058】
購入者用の場合の試算表作成S50は、入力手段300を介して入力された契約金額と諸経費データ330を記憶手段400に保存する。契約金額は、地主と購入者の間で合意した額にすれば良い。
【0059】
図12に示すように、現時点で不動産を一括で売買する場合は、不動産売買金額を参考にして、契約金額を決定する。契約金額に諸経費データ330を加えたものが、購入者の支払額となる。
【0060】
購入者用の場合のシミュレーション結果表示S70は、家賃・譲渡額算定S40等で算出した結果を記憶手段400から読み出して、購入者用結果表示画面530を出力手段500に表示する。
【0061】
図13に示すように、譲渡額や諸経費を考慮した額などを確認可能である。その他に、賃貸借にする場合の家賃累計や、賃貸借後に一括購入する場合の金額も、参考情報として表示される。
【0062】
入居者又は購入者に対しても、支払いや不動産取得までのスケジュールを提示することができる。賃貸借を継続すれば家賃を支払い続けることになるが、途中で入退去も自由である。ただ、所定の期間で建物と土地の所有権を取得できれば、そこに住み続けるモチベーションになり、家賃滞納も起こりにくくなる。
【0063】
本発明によれば、賃貸住宅において賃料相当額を一定期間支払うことで所有権が移転されて継続して居住することが可能となる。中古住宅について譲渡特約付き不動産賃貸借契約を締結する際に、途中で譲渡担保付き不動産割賦売買契約を締結するとして、リフォーム工事費や分割払いの利息などを考慮した家賃及び支払額を設定する。
【0064】
居住者は、最初は家賃を支払って住み、途中から家賃と同額で分割払いすることで、支払完了時に土地と建物の所有権を取得することができる。中古住宅の所有者は、ローンと管理費を賄える家賃を設定することで利益を得た上で、最終的に不動産を手放すことができ、居住者は、一定期間支払うことで住宅を取得して住み続けることができ、空き家問題が解消する。
【0065】
中古住宅であるため、新築住宅を購入するよりも支払期間を抑えることができ、定年までに支払いが完了するように人生設計することができる。賃貸借の期間と分割払いの期間で同じ負担額となるので、途中で支払不能となるリスクが少ない。賃貸借の期間を変動させることで家賃月額も増減することができる。
【0066】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、不動産取得システムをUSBメモリ等の記録媒体に格納して提供したり、サーバ(クラウド含む)に格納してインターネットを介して提供したりしても良い。
【符号の説明】
【0067】
100:不動産取得システム
200:演算手段
300:入力手段
310:登記事項データ
320:工事費用データ
330:諸経費データ
400:記憶手段
410:複利現価テーブル
420:耐用減価償却テーブル
430:家賃・譲渡額テーブル
440:収益比較テーブル
500:出力手段
510:地主用結果表示画面
520:入居者用結果表示画面
530:購入者用結果表示画面
【要約】
【課題】賃貸住宅において賃料相当額を一定期間支払うことで所有権が移転されて継続して居住することを可能にする不動産取得システムを提供する。
【解決手段】建物を定期賃貸借した後に当該建物及び土地を分割払いにより譲渡する不動産取得システムであって、入力された前記建物及び土地の登記事項データから建物価格及び土地価格を取得する不動産情報取得手段と、前記建物価格から賃貸借後の経過価格を導出し、前記経過価格と前記土地価格の合計から家賃と譲渡額を算定する家賃・譲渡額算定手段と、入力された前記建物の工事費用データを前記家賃累計と前記譲渡額の合計から差し引いた受取額について賃貸借及び分割払いの期間ごとに収益を比較する収益比較手段と、を有し、前記受取額に収益が出る期間かつ前記家賃月額と前記譲渡額の分割額が同一となるように設定する、ことを特徴とする。
【選択図】図1
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図13