(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】自己位置推定装置、自己位置推定方法、および自己位置推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20230927BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20230927BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230927BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20230927BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
G01C21/28
G01C21/34
G08G1/00 J
G09B29/00 A
G09B29/10 A
(21)【出願番号】P 2018026965
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】321011767
【氏名又は名称】ジオテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 淳一
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-041070(JP,A)
【文献】特開2014-098784(JP,A)
【文献】特開2002-019485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/28
G01C 21/34
G09B 29/00
G09B 29/10
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の外部の状況を示す外部状況信号を取得する第1取得部と、
所定の大きさに細分化された区画毎に、天候の影響を受ける特徴を示す情報が設定された地図データを取得する第2取得部と、
天候の状態を示す天候情報を取得する第3取得部と、
前記外部状況信号に基づいて当該移動体の自己位置を推定する自己位置推定部と、を備え、
前記天候の影響を受ける特徴を示す情報は、降雨による水の溜まり易さ、降雪による雪の積もり易さ、凍結し易さ、の少なくとも1つに関するパラメータを含み、
前記自己位置推定部は、前記天候情報に
基づく値と、前記パラメータとを乗算することにより予測を行い、予測結果に基づいて前記外部状況信号の確度を評価する、
ことを特徴とする自己位置推定装置。
【請求項2】
前記自己位置推定部は、前記外部状況信号の評価が所定の基準よりも低い場合は、当該信号は自己位置推定に用いないようにすることを特徴とする請求項1に記載の自己位置推定装置。
【請求項3】
前記天候の影響を受ける特徴を示す情報は、当該区画が示す地域における実績と、当該区画が示す地域の地形又は地質の特性との少なくとも一方に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自己位置推定装置。
【請求項4】
前記第2取得部が取得した前記地図データに基づいて所定の目的地までの経路を探索する経路探索部を備え、
前記経路探索部は、さらに前記天候情報に基づいて経路を探索する、
ことを特徴とする請求項1から
3のうちいずれか一項に記載の自己位置推定装置。
【請求項5】
移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置で実行される自己位置推定方法であって、
移動体の外部の状況を示す外部状況信号を取得する第1取得工程と、
所定の大きさに細分化された区画毎に、天候の影響を受ける特徴を示す情報が設定された地図データを取得する第2取得工程と、
天候の状態を示す天候情報を取得する第3取得工程と、
前記外部状況信号に基づいて当該移動体の自己位置を推定する自己位置推定工程と、を含み、
前記天候の影響を受ける特徴を示す情報は、降雨による水の溜まり易さ、降雪による雪の積もり易さ、凍結し易さ、の少なくとも1つに関するパラメータを含み、
前記自己位置推定工程は、前記天候情報に
基づく値と、前記パラメータとを乗算することにより予測を行い、予測結果に基づいて前記外部状況信号の確度を評価する、
ことを特徴とする自己位置推定方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の自己位置推定方法を、コンピュータにより実行させることを特徴とする自己位置推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在開発が進められている車両等の移動体の自動運転においては、ライダ(LiDAR:Light Detection And Ranging)などの各種センサにより自車両周辺の状況を取得して、その取得された周辺状況に基づいて自身の位置(自己位置)を推定している。具体的には、自己位置推定は、周囲状況として所定の地物(特に路面情報)を用いて行われることが多い(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した路面情報を利用して自己位置の推定を行う場合、雨、雪等の天候の状態によりライダ等のセンサで取得できる情報が変化する場合がある。例えば、路面に描かれている道路標示等の部分に降雨により水が溜まってしまうと、ライダ等のセンサで道路標示が検出できない場合がある。
【0005】
このように、自動運転車両等の移動体においては、天候に応じて走行できることが望まれている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、自動運転車両等の移動体において天候に応じた走行を可能とすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、移動体の外部の状況を示す外部状況信号を取得する第1取得部と、天候の影響を受ける特徴を示す情報を含んだ地図データを取得する第2取得部と、天候の状態を示す天候情報を取得する第3取得部と、前記外部状況信号に基づいて当該移動体の自己位置を推定する自己位置推定部と、を備え、前記自己位置推定部は、前記地図データ及び前記天候情報に基づいて前記外部状況信号の確度を評価する、ことを特徴としている。
【0008】
請求項6に記載の発明は、移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置で実行される自己位置推定方法であって、移動体の外部の状況を示す外部状況信号を取得する第1取得工程と、天候の影響を受ける特徴を示す情報を含んだ地図データを取得する第2取得工程と、天候の状態を示す天候情報を取得する第3取得工程と、前記外部状況信号に基づいて当該移動体の自己位置を推定する自己位置推定工程と、を含み、前記自己位置推定工程は、前記地図データ及び前記天候情報に基づいて前記外部状況信号の確度を評価する、ことを特徴としている。
【0009】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の自己位置推定方法を、コンピュータにより実行させることを特徴としている。
【0010】
請求項8に記載の発明は、自己位置推定に用いる地図データの地図データ構造であって、前記地図データには、天候に関する特徴を示す情報を含むことを特徴としている。
【0011】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の地図データ構造を記憶することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例にかかる地図データ記憶装置を有するシステムの概略構成図である。
【
図2】
図1に示されたサーバ装置の機能構成図である。
【
図3】
図1に示された車両制御装置の機能構成図である。
【
図5】
図3に示された地図データの地図データ構造の天候特徴情報にかかる部分を示した図である。
【
図6】
図3に示された制御部における自己位置推定方法のフローチャートである。
【
図7】
図6に示された自己位置推定方法の変形例にかかるフローチャートである。
【
図8】
図7に示された自己位置推定方法の変形例にかかるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態にかかる自己位置推定装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる自己位置推定装置は、移動体の外部の状況を示す外部状況信号を取得する第1取得部と、天候の影響を受ける特徴を示す情報を含んだ地図データを取得する第2取得部と、天候の状態を示す天候情報を取得する第3取得部と、外部状況信号に基づいて当該移動体の自己位置を推定する自己位置推定部と、を備え、自己位置推定部は、地図データ及び天候情報に基づいて外部状況信号の確度を評価する。このようにすることにより、地図データに含まれる天候の影響を受ける特徴を示す情報により、第2取得部が取得した天候情報が示す天候に応じた自己位置推定を行って走行することができる。
【0014】
また、自己位置推定部は、外部状況信号の評価が所定の基準よりも低い場合は、当該信号は自己位置推定に用いないようにしてもよい。このようにすることにより、天候の影響により自己位置推定の信頼性が低下していると判断して、外部状況信号を自己位置推定に利用しないようにして、自己位置の誤推定を防ぐことができる。
【0015】
また、地図データは、所定の大きさに細分化された区画毎に天候の影響を受ける特徴を示す情報が設定されていてもよい。このようにすることにより、例えば、天候の影響を受ける特徴を細分化して設定するので、当該区画の示す地域の特徴をより的確に反映した地図データとすることができる。
【0016】
また、天候の影響を受ける特徴を示す情報は、降雨により水が溜まり易い、降雪により雪が積もり易い、凍結し易い、の少なくともいずれかの情報を含んでもよい。このようにすることにより、降雨や降雪あるいは凍結により路面の状態が変化する可能性が高い場合に対応して自己位置推定をすることができる。
【0017】
また、第2取得部が取得した地図データに基づいて所定の目的地までの経路を探索する経路探索部を備え、経路探索部は、さらに天候情報に基づいて経路を探索するようにしてもよい。このようにすることにより、天候に応じた経路探索をすることが可能となる。
【0018】
また、本発明の一実施形態にかかる自己位置推定方法は、移動体の外部の状況を示す外部状況信号を取得する第1取得工程と、天候の影響を受ける特徴を示す情報を含んだ地図データを取得する第2取得工程と、天候情報を取得する第3取得工程と、外部状況信号に基づいて当該移動体の自己位置を推定する自己位置推定工程と、を備え、自己位置推定工程は、地図データ及び天候情報に基づいて外部状況信号の確度を評価する。このようにすることにより、地図データに含まれる天候の影響を受ける特徴を示す情報により、第2取得部が取得した天候情報が示す天候に応じた自己位置推定を行って走行することができる。
【0019】
また、上述した自己位置推定方法を、コンピュータにより実行させてもよい。このようにすることにより、コンピュータを用いて、地図データに含まれる天候の影響を受ける特徴を示す情報により、第3取得部が取得した天候情報が示す天候に応じた自己位置推定をすることができる。
【0020】
また、本発明の一実施形態にかかる地図データ構造は、自己位置推定に用いる地図データの地図データ構造であって、地図データには、天候の影響を受ける特徴を示す情報を含んでいる。このようにすることにより、天候の影響を受ける特徴を示す情報によって、天候に応じた自己位置推定を行うことができる。
【0021】
また、地図データには、天候の影響を受ける特徴を示す情報及び天候情報に基づいて、所定の移動体の外部の状況を示す信号を評価した結果の情報を含んでもよい。このようにすることにより、車両等の移動体が搭載するライダ等のセンサにより地物が検出できなかったとの状況が示された場合に、その状況が天候の影響があったか否かを評価した結果を含めることができる。したがって、天候と評価結果の履歴を蓄積することができ、この履歴を参照して天候の影響を受ける特徴を示す情報を有効に利用することができる。
【0022】
また、本発明の一実施形態にかかる地図データ記憶装置は、上述した地図データ構造を記憶している。このようにすることにより、天候に関する特徴を示す情報によって、天候に応じた自己位置推定を行うことができる。
【実施例】
【0023】
本発明の一実施例にかかる自己位置推定装置、地図データ構造及び地図データ記憶装置を
図1~
図8を参照して説明する。自動運転車両Cに搭載されている自己位置推定装置としての車両制御装置3は、
図1に示したように、インターネット等のネットワークNを介してサーバ装置1及びサーバ装置2と通信可能となっている。
【0024】
地図データ記憶装置としてのサーバ装置1の機能的構成を
図2に示す。サーバ装置1は、制御部11と、通信部12と、記憶部13と、を備えている。
【0025】
制御部11は、サーバ装置1のCPU(Central Processing Unit)が機能し、サーバ装置1の全体制御を司る。制御部11は、車両制御装置3からの要求に応じて記憶部13に記憶されている地図データ13aから必要な領域の地図データを読み出して通信部12を介して車両制御装置3に配信する。
【0026】
通信部12は、サーバ装置1のネットワークインターフェース等が機能し、車両制御装置3が出力した要求情報等を受信する。また、制御部11が地図データ13aから読み出した地図データを車両制御装置3に送信する。
【0027】
記憶部13は、サーバ装置1のハードディスク等の記憶装置が機能し、地図データ13aが記憶されている。地図データ13aは、自動運転車両Cが自律的に走行可能な程度の詳細な情報(車線ネットワーク、地物の位置等)が含まれている地図である。また、地図データ13aには、天候の影響を受ける特徴を示す情報としての天候特徴情報13b(
図5を参照)が含まれている。天候特徴情報13bについては後述する。
【0028】
自動運転車両Cは、車両制御装置3及びセンサ4を備えている。車両制御装置3は、センサ4が検出した結果及び、車両制御装置3が有する地図データ33aに基づいて自動運転車両Cを自律的に走行(自動運転)させる。
【0029】
サーバ装置2も機能的構成は、サーバ装置1と同様である。サーバ装置2には、各地の天候の状態を示す情報である天候データ2aが記憶部13に記憶されている。天候データ2aは、天気の状態だけでなく降水量や降雪量及び気温等の情報も含んでいる。
【0030】
図3に車両制御装置3の機能的構成を示す。車両制御装置3は、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、を備えている。
【0031】
制御部31は、センサ4が検出した結果、サーバ装置2から取得した天候データ及び記憶部33に記憶された地図データ33aに基づいて、自動運転車両Cの自己位置を推定する。そして、制御部31は、自動運転車両Cのハンドル(操舵装置)やアクセル、ブレーキ等を制御して自動運転車両Cを自律的に走行させる。つまり、制御部31は、外界認識部としてのセンサ4の検出結果(認識結果)を取得する。また、制御部31は、サーバ装置1に対して走行経路となる領域の地図データの配信を通信部32を介して要求し、サーバ装置1から配信された地図データを記憶部33に地図データ33aとして記憶させるとともに、目的地までの経路を探索する。
【0032】
通信部32は、制御部31が出力した要求情報等をサーバ装置1に送信する。また、サーバ装置1から配信された地図データやサーバ装置2から配信された天候データを受信する。
【0033】
地図データ記憶装置としての記憶部33は、地図データ33aが記憶されている。地図データ33aは、自動運転車両Cが自律的に走行可能な程度の詳細な情報が含まれている地図である。また、地図データ33aには、地図データ13aと同様に天候特徴情報13bが含まれている。
【0034】
センサ4は、自車位置等の自車の情報や周辺環境(周辺に存在する地物等)を認識するためのセンサであり、カメラ、ライダ、GPS(Global Positioning System)受信機等、を含む。また、これらのセンサ以外に車両の加速度を検出する加速度センサ、車両の速度を検出する速度センサ、或いは、車両の姿勢(向きなど)を認識して他のセンサの取得データを補正するための慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)やジャイロセンサなどを備えてもよい。
【0035】
センサ4に含まれるカメラは、自動運転車両Cの外界の状況を表す画像を撮影する。センサ4に含まれるライダは、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置や形状等を三次元の点群として認識する。このライダが取得した情報は点群情報として出力される。センサ4に含まれるGPS受信機は、現在の車両の位置を表す緯度及び経度の位置情報を生成し出力する。
【0036】
次に、本実施例にかかる天候特徴情報13bを有する地図データ構造を説明する。本実施例にかかる地図データが有する天候特徴情報13bは、
図4に示したように、地図上において、所定の大きさのメッシュ(区画)Mに細分化し、メッシュMごとに降雨による水の溜まり易さを示したものである。
図4においてはハッチングの密度が大きくなるにしたがって、水が溜まり易いことを示している。なお、
図4においては、ハッチングのない部分についてもメッシュMは存在するが、図面を見易くするため表示を省略している(つまりハッチングのない部分は水が溜まりにくい地域を示している)。また、メッシュMの形状は正方形に限らず、長方形でもよいし、六角形や八角形等の多角形でもよい。また、メッシュMの大きさは任意に定めることができるが、自動運転車両Cの自己位置推定や経路探索に利用することができる程度の大きさが望ましい。
【0037】
また、各メッシュMには、
図5に示したように、天候特徴情報13bとして、メッシュID、位置情報、水の溜まり易さ等が設定されている。位置情報は、緯度経度等の絶対位置でもよいし、絶対位置が設定されている基準位置からの相対位置(何行何列)でもよい。水の溜まり易さは当該メッシュMにおける降雨時の水の溜まり易さを示した情報である。これは、
図5のように、大、中、小といった段階で示してもよいし数値でもよい。数値の場合は、例えば降水量と乗算することで水の溜まっている量を予測できるような係数等のパラメータでもよい。
【0038】
この水の溜まり易さは、過去の当該メッシュMが示す地域における実績等に基づいて設定すればよい。あるいは、地形や地質(アスファルトの道路や建築物が多い又は未舗装の道路が多い、排水性の良し悪し等)といった当該地域の特性を加味して設定してもよい。
【0039】
降雨により水溜りが発生すると、道路標示がライダ等により正しく認識できない場合があり、実際には道路標示があるのに道路標示がないと判断されてしまうことがあり得る。そこで、
図4、
図5に示したような天候特徴情報13bを有することで、後述するように、ライダ等による検出結果が正しくない可能性があることを認識することが可能となる。なお、
図4や
図5では、降雨による水の溜まり易さについて説明したが、降雪による積雪のし易さや凍結のし易さ等についても同様にメッシュMの情報に追加してもよい。積雪についても、道路標示を隠してしまうためライダ等により正しく認識できない場合があり、凍結の場合も、反射率の変化や乱反射等によりライダ等により正しく認識できない場合がある。したがって、天候特徴情報13bとしてこれらの情報を設定すると有用である。
【0040】
次に、上述した構成の車両制御装置3において、自動運転車両Cの自己位置を推定する方法(自己位置推定方法)について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
図6に示したフローチャートは制御部31で実行される。また、
図6のフローチャートを、制御部31を構成するCPU等のコンピュータで実行する自己位置推定プログラムとして構成してもよい。
【0041】
まず、ステップS101において、制御部31は、センサ4で検出された結果(センサ情報)を取得する。このセンサ情報は、例えばライダで取得された点群情報やカメラが撮影した画像情報等である。即ち、本実施例では、この点群情報や画像情報が、移動体の外部の状況を示す外部状況信号となり、制御部31が第1取得部として機能する。なお、以下の説明では、外部状況信号としては主に点群情報で説明する。
【0042】
次に、ステップS102において、制御部31は、記憶部33から地図データ33aを取得する。このステップで取得する地図データとしては、自動運転車両Cの現在位置周辺の地図データでよい。即ち、制御部31が天候特徴情報を含んだ地図データを取得する第2取得部として機能する。
【0043】
次に、ステップS103において、制御部31は、通信部32を介して天候データをサーバ装置2から取得する。この天候データは、ステップS102で取得した地図データに対応する範囲であればよい。
【0044】
次に、ステップS104において、制御部31は、センサ4で検出された結果の評価を行う。この評価とは、例えば、ライダで取得された点群情報に含まれる道路標示等の信頼性(確度)を判断するものである。例えば、ステップS103で取得した天候データから雨が降っていることが判明した場合は、地図データ33aから、センサ4が検出した位置に対応する天候特徴情報を読み出す。次に、現在までの降水量と
図5に示した水の溜まり易さから、路面上に水溜りが発生しているか否か推測する。そして、水溜りが発生していると推測される場合は、センサ4で検出した結果は、水溜りの影響により正しく道路標示等が検出できていない可能性が高く、点群情報に含まれる道路標示等の信頼性が低いと評価する。即ち、制御部31は、地図データ33a及び天候データに基づいて点群情報の確度を評価する。
【0045】
図5の例で説明すると、例えば過去1時間の降水量が10mm以上30mm未満の場合で、水の溜まり易さが「大」の場合は当該メッシュMには水溜りが発生しているとして、取得した点群情報に含まれる道路標示等が検出できていない可能性が高く、点群情報に含まれる道路標示等の信頼性が低いと評価する。つまり、この例では、評価にあたっての所定の基準は、道路標示等が検出できているか否かであり、道路標示等が検出できていない可能性が高く、道路標示等の信頼性が低い場合を、所定の基準よりも低いと見做している。
【0046】
なお、この評価は、数値を算出して行ってもよい。例えば、数式やグラフ等により道路標示等が検出できる確率等を求め、所定の確率未満の場合は検出できないと評価するといったことが挙げられる。
【0047】
次に、ステップS105において、制御部31は、ステップS104で評価した結果が、所定の基準以上であった場合は、ステップS106において、ステップS101で取得したセンサ情報に含まれる道路標示に基づいて自己位置推定を行う。上述した例であれば、点群情報に含まれる道路標示等の信頼性が高いと評価された場合であり、その場合は、ステップS101で取得したセンサ情報に含まれる道路標示と地図データ33aに含まれる道路標示とをマッチングして自己位置の推定を行う。即ち、制御部31は、点群情報に基づいて自動運転車両Cの自己位置を推定する自己位置推定部として機能する。
【0048】
一方、ステップS105において、ステップS104で評価した結果が、所定の基準未満であった場合は、ステップS107において、例えばライダで検出された点群情報に含まれる道路標示を利用した自己位置推定を行わない。この場合は、例えば、道路標示以外の地物により自己位置推定を行う。あるいはライダによる自己位置推定は行わずにGPS等の他の方法により自己位置推定を行ってもよいし、当該位置においては自己位置推定を行わないようにしてもよい。
【0049】
次にステップS108において、制御部31は、自動運転車両Cが目的地に到着したか否かを判断し、目的地に到着した場合はフローチャートを終了し、到着していない場合はステップS101に戻り再度フローチャートを実行する。
【0050】
なお、上述したフローチャートの説明では、道路標示で説明したが、道路標示に限らず、道路上に設けられているものであれば、例えばマンホール等であってもよい。
【0051】
以上の説明から明らかなように、ステップS101が第1取得工程、ステップS102が第2取得工程、ステップS103が第3取得工程、ステップS106が自己位置推定工程として機能する。
【0052】
次に、
図6に示したフローチャートの変形例を説明する。
図6のフローチャートは、自動運転車両Cの走行中における自己位置推定動作を示したが、
図7に示すフローチャートは、走行前の経路探索の段階で各経路における検出結果の予測を事前に評価して、評価結果を基に再度経路探索を行うものである。
【0053】
図7のフローチャートを説明する。まず、制御部31は、ステップS201において経路探索を行う。この経路探索は、ユーザ等が入力した目的地までの経路を地図データに基づいて周知の方法により探索するものである。なお、経路探索に用いる地図は、地図データ33aでもよいし、経路探索用に別途地図データを記憶部33に記憶させる、或いはサーバ装置1から取得するようにしてもよい。即ち、制御部31が経路探索部として機能する。
【0054】
次のステップS202、S203は、
図6のフローチャートのステップS102、S103と同様である。ただし、取得する地図データはステップS101で探索した経路の範囲である。天候データも当該経路の範囲となる。
【0055】
次に、ステップS204において、制御部31は、センサ4で検出された結果の評価を行う。この評価は、基本的にはステップS104で説明したのと同様の考え方で行うが、
図7のフローチャートの場合は、実際の走行前であるので、これから走行してライダで点群情報を取得した場合に、道路標示等がどの程度の信頼性(確度)があるかを事前に予測して判断するものである。例えば、ステップS203で取得した天候データから探索された経路に雨が降っていることが判明した場合は、地図データ33aから、当該経路に対応する天候特徴情報を読み出す。そして、現在までの降水量と
図5に示した水の溜まり易さから、経路の路面上に水溜りが発生しているか否か推測して、水溜りが発生していると推測される場合は、センサ4で検出した結果は、水溜りの影響により正しく道路標示等が検出できない可能性が高いと評価する。
【0056】
次に、ステップS205において、ステップS204で評価した結果が、所定の基準以上であった場合は、フローチャートを終了する。これは、探索した経路において水溜りの影響により正しく道路標示等が検出できない可能性が高い地点はないと判断されたことを意味し、再探索は行わずにステップS101で探索された経路により走行を開始する。
【0057】
一方、ステップS205において、ステップS204で評価した結果が、所定の基準未満であった場合は、ステップS206において、目的地までの経路の再探索を行う。つまり、水溜りの影響により正しく道路標示等が検出できない可能性が高い地点を避けて再探索を行う。
【0058】
なお、自動運転車両Cの走行前においては、
図7に示したフローチャートに限らず、
図8に示したようなフローチャートであってもよい。
図8に示したフローチャートは、経路探索中に評価も行うことで、効率的に経路を探索している。
【0059】
図8のフローチャートについて説明する。ステップS301、S302は、
図7のステップS202、S203と同様である。ステップS303は、評価と経路探索を行う。これは、例えば、天候データが雨の場合は、経路探索時に天候特徴情報を参照して、水の溜まり易さが「大」のメッシュにかかる領域は通らないように経路を探索する。
【0060】
本実施例によれば、車両制御装置3は、自動運転車両Cの外部の状況を示す点群情報を取得するセンサ4と、天候情報を取得する通信部32と、天候特徴情報13bを含んだ地図データ33aを取得して点群情報に基づいて自動運転車両Cの自己位置を推定する制御部31と、を備えている。そして、制御部31は、地図データ33a及び天候情報に基づいて点群情報の確度を評価する。このようにすることにより、地図データ33aに含まれる天候特徴情報13bにより、自動運転車両Cは、通信部32が取得した天候情報が示す天候に応じた自己位置推定を行って走行することができる。
【0061】
また、制御部31は、点群情報に含まれる道路標示等を正しく検出できない可能性が高い場合は、当該点群情報に含まれる道路標示等を用いて自己位置推定をしないようにしている。このようにすることにより、天候の影響により道路標示等を用いた自己位置推定の信頼性が低下していると判断して、点群情報を自己位置推定に利用しないようにして、自己位置の誤推定を防ぐことができる。
【0062】
また、地図データ33aは、所定の大きさに細分化されたメッシュM毎に天候特徴情報13bが設定されている。このようにすることにより、例えば、天候の影響を受ける特徴を細分化して設定するので、当該メッシュの示す地域の特徴をより的確に反映した地図データとすることができる。
【0063】
また、天候特徴情報13bは、降雨により水が溜まり易い、降雪により雪が積もり易い、凍結し易い、の少なくともいずれかの情報を含んでもよい。このようにすることにより、降雨や降雪あるいは凍結により路面の状態が変化する可能性が高い場合に対応して自己位置推定を行うことができる。
【0064】
また、制御部31は、地図データ33aに基づいて所定の目的地までの経路を探索する経路探索部としての機能も備え、制御部31は、さらに天候情報に基づいて経路を探索するようにしてもよい。このようにすることにより、天候に応じた経路探索を行うことが可能となる。
【0065】
また、地図データ33aにかかる地図データ構造は、自己位置推定に用いる地図データの地図データ構造である。そして、この地図データ33aには、天候特徴情報13bを含んでいる。このようにすることにより、天候特徴情報13bによって、天候に応じた自己位置推定を行うことができる。
【0066】
また、記憶部33は、上述した地図データ構造を有する地図データ33aを記憶している。このようにすることにより、天候に関する特徴を示す情報によって、天候に応じた自己位置推定を行うことができる。
【0067】
なお、地図データ33aには、天候特徴情報13b及び天候情報に基づいて点群情報を評価した結果の情報を含んでもよい。このようにすることにより、自動運転車両Cが搭載するライダ等のセンサにより、道路標示等の地物が検出できなかったとの状況が示された場合に、その状況が天候の影響があったか否かを評価した結果を含めることができる。したがって、天候と評価結果の履歴を蓄積することができ、この履歴を参照することで、より天候特徴情報を有効に利用することができる。
【0068】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の自己位置推定装置、地図データ構造及び地物データ記憶装置を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 サーバ装置(地図データ記憶装置)
3 車両制御装置
4 センサ(ライダ)
13 記憶部
13a 地図データ(地図データ構造)
31 制御部
32 通信部
33 記憶部(地図データ記憶装置)
33a 地図データ(地図データ構造)