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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】スカム処理ロボット
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/40 20230101AFI20230927BHJP
   E03F 5/14 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C02F1/40 J
C02F1/40 C
C02F1/40 G
E03F5/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018090298
(22)【出願日】2018-05-09
(65)【公開番号】P2019195759
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-02-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】長田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】中條 晃伸
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】土屋 知久
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-146189(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0143965(KR,A)
【文献】特開平7-116665(JP,A)
【文献】特開2017-202433(JP,A)
【文献】特許第5575311(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/40
E02B15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮上したスカムを処理するためのスカム処理ロボットであって、
スカムを処理するための処理部と、前記処理部に推進力を与える駆動部と、舵部と、を備え、
前記処理部と前記駆動部が一体となり、前記処理部と共に前記駆動部が移動するように自走し、
前記処理部と前記駆動部の移動は、進行方向が自在に変更可能であり、
前記処理部は、スカムを掻き寄せる掻き寄せ部であり、
前記掻き寄せ部は、掻き寄せたスカムを、前記掻き寄せ部と前記駆動部の移動により、 処理系内の所定の位置に移送することを特徴とする、スカム処理ロボット。
【請求項2】
浮上したスカムを処理するためのスカム処理ロボットであって、
スカムを処理するための処理部と、前記処理部に推進力を与える駆動部と、を備え、
前記処理部と前記駆動部が一体となり、前記処理部と共に前記駆動部が移動するように自走し、
前記処理部と前記駆動部の移動は、進行方向が変更可能であり、
さらに、スカム処理ロボットを充電するための充電ベース又はスカム処理ロボットに捕捉したスカムを系外に排出するための回収ベースに自動的に移動させる運転制御部を備えることを特徴とする、スカム処理ロボット。
【請求項3】
浮上したスカムを処理するためのスカム処理ロボットであって、
スカムを処理するための処理部と、前記処理部に推進力を与える駆動部と、を備え、
前記処理部と前記駆動部が一体となり、前記処理部と共に前記駆動部が移動するように自走し、
前記処理部と前記駆動部の移動は、進行方向が変更可能であり、
定点カメラにより撮影された処理槽の画像を用いて所定の位置に移動することを特徴とする、スカム処理ロボット。
【請求項5】
浮上したスカムを処理するためのスカム処理方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載のスカム処理ロボットを使用してスカムを処理することを特徴とする、スカム処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上したスカムを処理するためのスカム処理ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理設備等の水処理施設における沈殿池、生物反応槽等では、水面付近にスカムが発生する。スカムは、沈殿池等の処理槽の一部に堆積してスカム層を形成するため、スカム層を除去する方法が開発されている。
例えば、特許文献1には、スカム層を除去する方法において、スカム層を形成しやすい部分の水面下にスプレーノズルを埋設して、スプレーノズルから洗浄水を水平方向に噴射して表層流を発生させ、表層流に連れて流れ込むスカムをスプレーノズル噴射される洗浄水によって破砕する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-233867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたスカムを除去する方法では、スカム層が形成しやすい部分のみにスプレーノズルを固定しているため、処理槽全体においてスカム層の形成を防止することができない。そのため、スプレーノズルを設置した部分以外にスカムが堆積する場合がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、処理槽の全域においてスカムの堆積を防止することが可能なスカム処理ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、浮上したスカムを処理するためのスカム処理ロボットにおいて、スカムの捕捉、破砕、掻き寄せ等の処理を行う処理部を自走させることにより、処理槽の全域においてスカムの堆積を防止できることを見いだして本発明を完成した。
具体的には、以下のスカム処理ロボットである。
【0007】
上記課題を解決するための本願発明のスカム処理ロボットは、浮上したスカムを処理するためのスカム処理ロボットであって、スカムを処理するための処理部が自走することを特徴とする。
このスカム処理ロボットによれば、スカムを処理するための処理部が自走可能であるため、処理槽の全域にスカム処理部を移動させて、スカムを除去することができる。
また、このスカム処理ロボットによれば、小型化することができるため、簡素な装置で処理槽のスカムを除去することができる。よって、省電力化やメンテナンス作業の簡素化などにも効果を奏する。
【0008】
更に本発明のスカム処理ロボットの一実施態様によれば、処理部は、スカムを捕捉する捕捉部であることを特徴とする。
この特徴によれば、どのような性状のスカムでも除去することができるため、例えば、固化して破砕しにくくなったスカムなどを除去することも可能となる。また、捕捉したスカムを濃縮することや、破砕して被処理水に戻すこともできるため、スカムの除去と共に処理槽の系外に流れ出る被処理水の流出量を抑制することができる。
【0009】
更に本発明のスカム処理ロボットの一実施態様によれば、処理部は、スカムを破砕する破砕処理部であることを特徴とする。
この特徴によれば、スカムを破砕して被処理水に戻すことができるため、スカムを回収して別の処理に供する必要がないという効果がある。また、スカムの除去と共に流れ出る被処理水の流出量を抑制するという効果もある。
【0010】
更に本発明のスカム処理ロボットの一実施態様によれば、処理部は、スカムを掻き寄せる掻き寄せ部であることを特徴とする。
この特徴によれば、スカムを処理槽の所定の位置に掻き寄せるのみでスカムを除去することができるため、装置を簡素化することが可能となる。
【0011】
上記課題を解決するための本願発明のスカム処理方法は、浮上したスカムを処理するためのスカム処理方法であって、自走式のスカム処理ロボットを使用してスカムを処理することを特徴とする。
このスカム処理方法によれば、自走式のスカム処理ロボットによりスカムを処理するため、処理槽の全域にスカム処理ロボットが移動してスカムを除去することができる。
また、このスカム処理方法によれば、スカム処理ロボットを小型化することができるため、省電力化やメンテナンス等の作業の簡素化などにも効果がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、処理槽の全域においてスカムの堆積を防止することが可能なスカム処理ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一の実施態様のスカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。
図2】本発明の第二の実施態様のスカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。
図3】本発明の第三の実施態様のスカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。
図4】本発明の第四の実施態様のスカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。
図5】本発明の第五の実施態様のスカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。
図6】本発明の第六の実施態様のスカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。
図7】本発明の第七の実施態様のスカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。
図8】本発明の第八の実施態様のスカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。
図9】本発明の第九の実施態様のスカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。
図10】本発明の第十の実施態様のスカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。図10(A)は、スカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。図10(B)は、処理槽の平面図であり、スカム処理ロボットの動作を説明する概略説明図である。
図11】本発明の第十の実施態様のスカム処理ロボットの動作の制御を説明する概略説明図である。図11(A)は、処理槽の平面図である。図11(B)は、処理槽の画像を投影する表示端末の構造を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のスカム処理ロボットは、浮上したスカムを処理するためのスカム処理ロボットであって、スカムを処理するための処理部が自走することを特徴とするものである。
スカムは、下水処理場等の水処理設備、食品工場、飲料工場、製薬工場等の排水処理設備や廃水処理設備における沈殿池、濃縮槽、生物処理槽、洗浄槽、浮上分離槽等で発生する。本発明のスカム処理ロボットは、これらのスカムを発生する処理槽に好適に利用することができる。
【0015】
処理部とは、スカムの発生を抑制する処理や、発生したスカムを除去する処理を行うものである。スカムの発生を抑制する処理としては、例えば、被処理水の水面付近を撹拌する撹拌処理などが挙げられる。また、発生したスカムを除去する処理としては、例えば、スカムを捕捉する捕捉処理、スカムを破砕する破砕処理、スカムを掻き寄せる掻き寄せ処理などが挙げられる。本発明のスカム処理ロボットは、処理部が自走するため、処理槽の全領域に移動してスカムを除去することができるというものである。
ここで、「自走する」とは、処理部と、処理部に推進力を与える駆動部が一体となり、処理部と共に駆動部が移動することである。
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るスカム処理ロボットの実施態様を詳細に説明する。なお、以下の実施態様に記載するスカム処理ロボットについては、本発明に係るスカム処理ロボットを説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0017】
[第一の実施態様]
図1は、本発明の第一の実施態様のスカム処理ロボット100の構造を説明する概略説明図である。図1に示すスカム処理ロボット100は、処理槽(不図示)に溜められた被処理水の水面付近に配置されている。なお、スカム処理ロボット100を水面付近に配置する手段としては、浮力を調整するための浮き(不図示)などを利用すればよい。
【0018】
本発明の第一の実施態様のスカム処理ロボット100は、処理部としてスカムを捕捉する捕捉部1Aと、捕捉部1Aに推進力を与える駆動部2Aを具備する。
捕捉部1Aは、内部に被処理水を導入する本体3を備え、本体3は、被処理水とスカムSを分離する機能を有する。また、本体3は、水面付近の被処理水を取り込む取水口31と、被処理水の水面より低位に形成され、内部の被処理水を排水する排水口32を備える。
【0019】
駆動部2Aは、本体3の上部に設置され、動力を発生するモータ4と、モータ4の動力により回転するスクリュー5を備える。スクリュー5は、本体3の排水口32に配置され、本体3の内部の被処理水を排出しつつ、捕捉部1Aに推進力を与えることができる。なお、図1の駆動部2Aでは、モータ4の軸と、スクリュー5の軸が垂直に連結しているが、交差部にはギアや歯車等を設けてモータ4の動力をスクリュー5に伝達することができる。
【0020】
次に、スカム処理ロボット100の処理を説明する。このスカム処理ロボット100は、駆動部2Aのスクリュー5により本体3の内部の被処理水が排出口32により排出される。これにより、水面付近の被処理水が、取水口31から本体3の内部に流入する。水面付近には、浮上したスカムSが浮遊しているため、スカムSは被処理水と共に本体3の内部に流入する。
【0021】
本体3の内部は、被処理水を溜めるための空間を有しており、内部の被処理水は、水面にスカムSが分離した状態となる。内部の被処理水は、水面より低位に形成された排水口32より排水されるため、分離した被処理水のみが排水され、本体3の内部にはスカムSが蓄積されることになる。
【0022】
また、スクリュー5の推進力により、スカム処理ロボット100は自走するため、処理槽の全域に移動して、スカムSを捕捉することができる。なお、スカム処理ロボット100移動では、進行方向を変更する舵部(不図示)が設けられており、進行方向が変えられる。進行方向の制御は、ランダムに移動するよう制御してもよいし、所定の位置に向かって移動するように制御してもよい。
【0023】
以下に、処理槽及び本発明のスカム処理ロボットの各構成について、詳細に説明する。
<処理槽>
処理槽は、被処理水にスカムが発生する処理を行う槽であり、例えば、下水処理場等の水処理設備、食品工場、飲料工場、製薬工場等の排水処理設備や廃水処理設備における沈殿池、濃縮槽、生物処理槽、洗浄槽、浮上分離槽等が挙げられる。処理槽の形状は、特に制限されず、例えば、平面視した形状として、略正方形状、長方形状、三角形状、五角形状等の多角形状や、円形状、楕円形状等が挙げられる。多角形状では、角部にスカムが溜まりやすいため、処理槽の全領域でスカムを除去することができるという本発明の効果がより発揮される。また、円形状、楕円形状では、角部を有しないため、スカム処理ロボットが角部にはまり込んで移動できないというトラブルが生じにくいという効果がある。
【0024】
<処理部>
処理部とは、スカムの発生を抑制する処理や、発生したスカムを除去する処理を行うものである。スカムの発生を抑制するための処理部としては、例えば、被処理水の水面付近を撹拌する撹拌処理部などが挙げられる。また、発生したスカムを除去するための処理部としては、例えば、スカムを捕捉する捕捉部、スカムを破砕する破砕処理部、スカムを掻き寄せる掻き寄せ部などが挙げられる。本発明のスカム処理ロボットは、処理部が自走するため、処理槽の全領域に移動してスカムを除去することができるというものである。
【0025】
(捕捉部)
捕捉部は、スカムを捕捉するための処理部である。更には、スカムと被処理水を分離して、スカムを濃縮してもよい。スカムを濃縮する手段は、特に制限されず、例えば、被処理水とスカムの比重差を利用した比重分離手段や、フィルタによるろ過分離手段などが挙げられる。比重分離手段では、エアレーションや加圧水の注入等によりスカムの浮上を補助するスカム浮上補助手段を設けてもよい。比重分離手段は、簡素な装置で実現できるため、メンテナンス等の作業が簡素化できるという効果がある。また、ろ過分離手段は、被処理水からスカムを高性能に分離することが可能であるため、スカムの再発生を抑制するという効果がある。
【0026】
捕捉されたスカムは、どのように処理してもよく、例えば、処理槽に設けられた回収ベースに運んで系外に排出してもよいし、破砕処理を行って、被処理水中に排出してもよい。系外に排出する場合には、スカムの再発生を抑制することができるという効果がある。また、破砕して被処理水中に排出する場合には、スカムを別の処理に供する必要がないという効果がある。
【0027】
(破砕処理部)
破砕処理部は、スカムを破砕するための処理部である。スカムを破砕する手段は、特に制限されず、例えば、破砕刃のような破砕装置を用いる破砕手段や、スプレーノズルなどの噴霧装置を用いる破砕手段や、撹拌羽根などの撹拌装置を用いる破砕手段や、ポンプなどの水流発生装置を用いる破砕手段等が挙げられる。破砕装置を用いる破砕手段は、スカムの堆積が進行して固化したスカムを破砕することが可能である。また、噴霧装置を用いる破砕手段、撹拌装置を用いる破砕手段、水流発生装置を用いる破砕手段は、簡素な装置によりスカムを破砕できるため、スカム処理ロボットの構成を簡素化することができる。
【0028】
破砕処理は、スカム処理ロボットの本体の内部に捕捉したスカムを破砕してもよいし、スカム処理ロボットの本体の外部でスカムを破砕してもよい。スカム処理ロボットの本体の内部でスカムを破砕する場合には、破砕処理時に被処理水の飛散を防止することができる。また、スカム処理ロボットの本体の外部でスカムを破砕する場合には、簡素な装置でスカムを破砕することができるため、スカム処理ロボットの構成を簡素化することができる。
【0029】
処理部として破砕処理を行う場合には、破砕手段の動力を利用して、スカム処理ロボットの推進力とすることが可能である。例えば、破砕処理部としてパドルを用いてスカムを破砕する場合、水面のスカムを破砕しながら、破砕処理部であるパドルを処理槽の全域に移動することができる。このように、所定の位置に移動するための推進力を生じる破砕処理部を用いることにより、処理部と別に駆動部を備える必要がないため、スカム処理ロボットの構成を簡素化することができる。
【0030】
なお、上記の破砕手段は、いずれも水面付近の被処理水を撹拌する作用を有するため、撹拌処理部として利用してもよい。撹拌処理部は、スカムの発生を抑制するための処理部である。
【0031】
(掻き寄せ部)
掻き寄せ部は、スカムを掻き寄せるための処理部である。掻き寄せられたスカムは、処理槽の所定の位置に移送されて系外へ排出する。スカムを掻き寄せる手段は、特に制限されず、例えば、掻き寄せ板を駆動部の推進力で移送することにより、スカムを掻き寄せる手段や、被処理水の水面に風力を与えて、波によりスカムを掻き寄せる手段等が挙げられる。掻き寄せ板によりスカムを掻き寄せる手段は、簡素な装置でスカムを掻き寄せることができるため、スカム処理ロボットの構成を簡素化することができる。また、波によりスカムを掻き寄せる手段は、スカム掻き寄せ部から離れた位置にあるスカムを掻き寄せることができるという効果がある。
【0032】
<駆動部>
駆動部は、処理部に推進力を与えて、処理部を処理槽の全域に移動させるものである。駆動部のエネルギー源としては、推進力を発生することができればよく、例えば、電力、火力などが挙げられる。なお、電力を利用する場合には、推進力を発生するための電源は、スカム処理ロボットに蓄電池を搭載してもよいし、スカム処理ロボットとは別の場所に電源を設置して、ケーブルを介してスカム処理ロボットに電力を供給してもよい。電力発生のためのエネルギー源は、ガソリン、灯油、LPガス、石炭などを燃焼して得られる火力、太陽光、水力等により自家発電してもよいし、電力会社から供給された電力を利用してもよい。
【0033】
処理部に推進力を与えるための手段としては、特に制限されず、例えば、スクリュー、パドル、ポンプなどが挙げられる。また、処理槽の底面を走行する水中車や、処理槽の上部に配設したレールを走行する自走車などを利用してもよい。
【0034】
処理部の移動は、ランダムに移動してもよいし、所定の位置に移動するように制御してもよい。所定の位置に移動するように制御する場合には、スカム処理ロボットの位置情報に基づいてコンピュータ等の制御部で自動制御してもよいし、操作者によりスカム処理ロボットの位置を制御してもよい。操作者によりスカム処理ロボットの位置を制御する手段としては、特に制限されないが、タブレットやコンピュータ画面でスカムの位置を確認しながら、コンピュータを介して移動の指示を与える手段や、自走車を運転してスカム処理ロボットを移動する手段等がある。
【0035】
[第二の実施態様]
図2は、本発明の第二の実施態様のスカム処理ロボット101の構造を説明する概略説明図である。第二の実施態様のスカム処理ロボット101では、捕捉部1Bに、スカムを濃縮する手段として、フィルタによるろ過分離手段を具備する。なお、第一の実施態様と同符号の構成については、説明を省略する。
【0036】
図2に示すように、本体3の内部の空間は、フィルタ6が立設されており、取水口31側の前室33と、排水口32側の後室34に区画されている。フィルタ6の目開きは、特に制限されないが、スカムをろ過により捕捉できる程度に適宜調整すればよい。
【0037】
取水口31から流入した被処理水は、フィルタ6によりろ過されてスカムSが取り除かれる。スカムSが取り除かれた被処理水は後室34に流入し、駆動部2Aのスクリュー5により排水口32から本体3の外部に排水する。スカムSは、フィルタ6の前室33側に堆積し、本体3の内部に捕捉される。
【0038】
また、スカム処理ロボット101は、後室34に逆洗装置7を備えている。逆洗装置7は、ポンプPにより後室34側から被処理水を吸水し、フィルタ6の後室34側に被処理水を噴射する装置である。これにより、フィルタ6に堆積したスカムを剥がし落して、フィルタ6の目詰まりを防止することができる。
【0039】
[第三の実施態様]
図3は、本発明の第三の実施態様のスカム処理ロボット102の構造を説明する概略説明図である。第三の実施態様のスカム処理ロボット102では、処理部として破砕処理部1Cを具備する。なお、第一の実施態様と同符号の構成については、説明を省略する。
【0040】
破砕処理部1Cは、スカムSを破砕するための破砕装置であり、水面付近に略水平に配置された回転軸に、複数の破砕刃8が固定された装置である。回転軸は、モータ4に連結されており、モータ4の動力により回転駆動する。なお、図3では、モータ4の軸と破砕処理部1Cの回転軸が垂直に連結されているが、連結部にギアや歯車を設けることにより、モータ4の動力を破砕処理部1Cの回転軸に伝達することができる。
【0041】
また、破砕処理部1Cの回転軸は、本体3の取水口31から本体3の内部に亘って配置されている。このように、破砕処理部1Cを本体3の内部に配置することにより、破砕刃8が回転することにより飛散する被処理水を本体3の内部に留めることができる。
【0042】
本体3に被処理水と共に流入したスカムSは、破砕処理部1Cにより破砕されて被処理水中に分散し、被処理水と共に排水口32から本体3の外部に排水される。このように、破砕処理部1Cを使用することにより、スカムSは被処理水中に分散するため、スカムSを系外の別の処理設備で処理する必要が無いという効果がある。
【0043】
[第四の実施態様]
図4は、本発明の第四の実施態様のスカム処理ロボット103の構造を説明する概略説明図である。第四の実施態様のスカム処理ロボット103では、処理部として破砕処理部1D、駆動部2Bとしてパドル9を具備する。なお、本体3は、取水口31及び排水口32を具備せず、内部に空間を有しないものである。
【0044】
破砕処理部1Dは、ポンプPとスプレーノズル10を備えており、ポンプPにより吸い上げた被処理水を、スプレーノズル10により水面に向けて噴射するものである。噴射された被処理水は、スカムSに衝突してスカムSを破砕することができる。破砕されたスカムSは、被処理水中に分散するため、スカムSを系外の別の処理設備で処理する必要がない。また、スプレーノズル10を備えた破砕処理部1Dでは、被処理水が飛散しにくいため、第三の実施態様の破砕刃8を備えた破砕処理部1Cのように本体3の内部で破砕処理する必要がなく、装置を簡素化することができる。
【0045】
[第五の実施態様]
図5は、本発明の第五の実施態様のスカム処理ロボット104の構造を説明する概略説明図である。第五の実施態様のスカム処理ロボット104では、処理部として、パドル9からなる破砕処理部1Eを具備する。パドル9は、スカムSを破砕する作用だけでなく、所定の位置に移動するための推進力を発生する。そのため、このスカム処理ロボット104によれば、駆動部を設ける必要がないという効果を奏する。
【0046】
[第六の実施態様]
図6は、本発明の第六の実施態様のスカム処理ロボット105の構造を説明する概略説明図である。第六の実施態様のスカム処理ロボット105では、処理部として掻き寄せ板11を備えた掻き寄せ部1Fを具備する。このスカム処理ロボット105によれば、処理部として掻き寄せ板11を設置すればよいため、装置を簡素化できるという効果がある。
【0047】
[第七の実施態様]
図7は、本発明の第七の実施態様のスカム処理ロボット106の構造を説明する概略説明図である。第七の実施態様のスカム処理ロボット106では、駆動部2Cとして処理槽の底面を走行する水中車12を具備する。水中車12は、フロート式の処理部と比較して、水面の揺れに対して安定性が高いため、掻き寄せ板11等の処理部を安定して移動させることができる。そのため、処理部におけるスカムの処理の精度が高まり、確実にスカムを処理することができるという効果がある。
【0048】
[第八の実施態様]
図8は、本発明の第八の実施態様のスカム処理ロボット107の構造を説明する概略説明図である。第八の実施態様のスカム処理ロボット107では、駆動部2Dとして処理槽の上部に設置されたレール14を走行する自走車13を具備する。自走車13は、水面より上部に配置するため、メンテナンスなどの作業が簡素化する。また、被処理水と接触しないため、腐食の進行が遅いという効果もある。
【0049】
[第九の実施態様]
図9は、本発明の第九の実施態様のスカム処理ロボット108の構造を説明する概略説明図である。第九の実施態様のスカム処理ロボット108では、駆動部2Eとしてドローン19を具備する。ドローン19は、プロペラ等の飛行手段を備え、空中を飛行する装置である。ドローン19は、被処理水と接触しないため、腐食しにくいという効果がある。ドローン19の飛行の制御は、公知のドローンにおける制御手段を利用することが可能であり、例えば、コントローラやタブレット等の操作装置によりドローン19の位置を操作してもよいし、自動で制御してもよい。
【0050】
また、第九の実施態様のスカム処理ロボット108では、捕捉部1Gとして掬い網20を具備する。掬い網20は、水面に浮遊するスカムSを掬い取るための網と柄からなり、柄の一端には網が取り付けられ、他端はドローン19に固定されている。スカムSを掬い取る際には、網の略半分を水中に入れ、ドローン19を水平方向に移動させることによりスカムSを網の中に捕捉する。なお、掬い網20の柄は、ドローン19に回動可能に取り付けて、網をスイングさせることによりスカムSを掬い取ってもよい。
【0051】
[第十の実施態様]
図10は、本発明の第十の実施態様のスカム処理ロボット109の構造を説明する概略説明図である。図10(A)は、スカム処理ロボットの構造を説明する概略説明図である。図10(B)は、処理槽の平面図であり、スカム処理ロボットの動作を説明する概略説明図である。
【0052】
第十の実施態様のスカム処理ロボット109は、第一の実施態様のスカム処理ロボットに、スカムを探知するためのスカム探知部16、本体3の内部に堆積したスカムの層の厚さを検知するスカム水位検知部17、スカム処理ロボット109の進行方向を制御する運転制御部15を備える。また、駆動部2Aは、モータ4に電力を供給する電源18を備えている。なお、電源18は、スカム探知部16、スカム水位検知部17、運転制御部15にも電力を供給する。
【0053】
また、図10(B)に示すように、処理槽200には、スカム処理ロボット109を充電するための充電ベース201と、スカム処理ロボット109に捕捉したスカムを系外に排出するための回収ベース202を備える。
【0054】
<スカム探知部>
スカム探知部16は、スカムを探知するための装置である。スカムを探知するための装置は、特に制限されないが、例えば、処理水の水面の画像を取得するカメラや、反射型の光学センサ等が挙げられる。
【0055】
カメラを備えたスカム探知部によるスカムの検知方法としては、例えば、カメラで得られた画像情報から、スカムと処理水の色調の違いによりスカムの位置を検知することができる。カメラを備えたスカム探知部は、広範囲の水面の情報を入手することができるため、スカムの探知能力に優れている。
【0056】
反射型の光学センサを備えたスカム探知部によるスカムの検知方法としては、例えば、赤外線を照射して、スカムと処理水の反射光の違いによりスカムの位置を検知することができる。
【0057】
なお、スカム探知部16は、回動可能に本体3に固定されている。スカム探知部16を回動可能とすることにより、広範囲の水面の情報を入手することができるため、スカムの探知能力を向上するという効果がある。
【0058】
<スカム水位検知部>
スカム水位検知部17は、捕捉部1Aで捕捉したスカムの量を検知するための検知装置である。捕捉部1Aの本体3の内部でスカムを濃縮すると、スカムが堆積してスカムの層が形成される。スカム水位検知部17を設けることにより、捕捉部1Aにおけるスカムの堆積量を検知できるため、捕捉部1Aからスカムが溢れ出ることを防止できるという効果を奏する。なお、スカム水位検知部として使用するセンサは、特に制限されないが、例えば、超音波式界面センサなどを利用することができる。
【0059】
<運転制御部>
運転制御部15は、スカム処理ロボット109の進行方向を制御するための制御装置である。運転制御部15は、スカム探知部16、スカム水位探知部17、電源18に電気的に接続されている。
【0060】
スカムを捕捉する処理を行う場合には、スカム探知部16で検知したスカムの位置情報が運転制御部15に送信される。運転制御部15では、スカム探知部16から送信されたスカムの情報に基づいてスカム処理ロボット109をスカムの方向に移動させるように制御する。
【0061】
スカムを捕捉する処理を継続すると、本体3の内部にスカムが堆積する。スカムが堆積して形成したスカムの層が所定の厚さとなると、スカム水位探知部17が検知し、スカム堆積量の情報を運転制御部15に送信する。そして、運転制御部15は、スカム処理ロボット109を、スカムを回収するための回収ベース202に移動させるように制御する(図10(B)参照。)。スカム処理ロボット109は、回収ベース202にドッキングすると、本体3の内部に堆積したスカムを系外に排出する。本体3の内部からスカムを系外に排出する手段としては、特に制限されないが、例えば、本体3を回動して取水口31を下方に向けることにより取水口31からスカムを流出させる手段や、バキュームホースを本体3の内部に挿入してスカムを吸い出す手段等が挙げられる。
【0062】
また、スカム処理ロボット109の電源18の電力量が、所定の量まで低下すると、運転制御部15に電源18の電力量の情報が送信される。そして、運転制御部15は、スカム処理ロボット109を充電ベース201に移動するように制御する。充電ベース201で電源18が充電され、所定の量まで電力が充電されると、スカム処理ロボット109が充電ベース201から離れ、スカムの処理を再開する。
【0063】
スカム処理ロボット109が充電ベース201や回収ベース202へ移動する制御は、コンピュータ等の制御装置で自動的に制御される。スカム処理ロボット109の移動を自動制御する方法としては、どのような方法を用いてもよいが、例えば、赤外線センサによりスカム処理ロボット109の位置情報を取得し、自動的に充電ベース201や回収ベース202に移動させることができる。
【0064】
なお、スカム処理ロボット109の移動の制御は、操作員が手動で行ってもよい。スカム処理ロボット109の移動を手動制御する方法としては、どのような方法を用いてもよいが、例えば、タブレットやコンピュータ等の表示端末の画面でスカム処理ロボット109の位置を表示し、画面上のスカム処理ロボット109を移動させることにより実物のスカム処理ロボット109の移動させる制御などがある。また、スカム処理ロボット109のコントローラを用いて移動させる制御でもよい。
【0065】
[第10の実施態様]
図11は、本発明の第十の実施態様のスカム処理ロボットの動作の制御を説明する概略説明図である。図11(A)は、処理槽の平面図である。図11(B)は、処理槽の画像を投影する表示端末の構造を説明する概略説明図である。
【0066】
図11に示す処理槽200は、定点カメラ203が設置されており、処理槽全体の水面の状態が撮影されている。定点カメラ203の画像は、タブレット204の画面に投影される。そして、タブレット204の画面上に表示されたスカム処理ロボット109を指でスワイプすることにより、スカム処理ロボット109を移動させる。例えば、図11(B)に示すように、タブレット204の画面上で、スカムSが多く存在する位置(破線囲み)にスカム処理ロボット109を移動させることにより、処理槽200内のスカム処理ロボット109を移動する。これにより、スカムSの位置を目視で確認しながら、スカム処理ロボット109を簡単に移動させることができる。
【0067】
なお、本発明のスカム処理ロボットは、実施態様の構成に限定されず、種々の態様に応用することができる。例えば、捕捉部や破砕処理部や掻き寄せ部などの処理部の各態様と、駆動部の各態様の組み合わせを変更してもよいし、処理部として捕捉部と破砕処理部と掻き寄せ部を複数設けてもよいし、駆動部の各態様を複数設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のスカム処理ロボットは、水面付近にスカムを生じる被処理水を処理するための処理槽に利用される。例えば、下水処理場等の水処理設備、食品工場、飲料工場、製薬工場等の排水処理設備や廃水処理設備における沈殿池、濃縮槽、生物処理槽、洗浄槽、浮上分離槽等に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
100~109…スカム処理ロボット、1A,1B,1G…捕捉部、1C,1D,1E…破砕処理部、1F…掻き寄せ部、2A,2B,2C,2D,2E…駆動部、3…本体、31…取水口、32…排水口、33…前室、34…後室、4…モータ、5…スクリュー、6…フィルタ、7…逆洗装置、8…破砕刃、9…パドル、10…スプレーノズル、11…掻き寄せ板、12…水中車、13…自走車、14…レール、15…運転制御部、16…スカム探知部、17…スカム水位検知部、18…電源、19…ドローン、20…掬い網、200…処理槽、201…充電ベース、202…回収ベース、203…定点カメラ、204…タブレット、S…スカム、M…モータ、P…ポンプ、B…底面
図1
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図11