IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-治療学的酵素類の結合体 図1
  • 特許-治療学的酵素類の結合体 図2
  • 特許-治療学的酵素類の結合体 図3
  • 特許-治療学的酵素類の結合体 図4
  • 特許-治療学的酵素類の結合体 図5
  • 特許-治療学的酵素類の結合体 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】治療学的酵素類の結合体
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/96 20060101AFI20230927BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20230927BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230927BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230927BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230927BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20230927BHJP
   C12N 9/00 20060101ALN20230927BHJP
   C12N 9/24 20060101ALN20230927BHJP
   C12N 9/40 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
C12N9/96
A61K38/43
A61K38/46
A61K38/47
A61K39/395 Y
A61K47/56
A61K47/60
A61K47/68
A61P3/00
A61P43/00 105
C07K16/00
C12N9/00
C12N9/24
C12N9/40
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2018539850
(86)(22)【出願日】2017-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 KR2017001016
(87)【国際公開番号】W WO2017131496
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-28
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】10-2016-0011886
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】キム デジン
(72)【発明者】
【氏名】キム チョングク
(72)【発明者】
【氏名】チョン ソンヨプ
(72)【発明者】
【氏名】クォン セチャン
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】森井 隆信
【審判官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-536211(JP,A)
【文献】国際公開第2015/009052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のための治療学的酵素と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された、酵素結合体であって、
前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域及び非ペプチド性重合体連結部が結合していない治療学的酵素より生体利用率(bioavailability, BA)が増加したものであり、
前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域のN末端に非ペプチド性重合体連結部が結合されたものであり、
前記酵素は、アリールスルファターゼB(ARSB)又はα-グルコシダーゼであり、
前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fcフラグメントであり、
前記酵素結合体は、酵素のN末端に非ペプチド性重合体連結部が結合されたものである、酵素結合体。
【請求項2】
前記リソソーム蓄積症は、ムコ多糖症(mucopolysaccharidosis, MPS)、グリコーゲン蓄積症(Glycogen storage disease)及びスフィンゴ脂質症(sphingolipidosis)からなる群から選択される、請求項に記載の酵素結合体。
【請求項3】
前記ムコ多糖症(MPS)は、MPS VI(mucopolysaccharidosis VI)である、請求項に記載の酵素結合体。
【請求項4】
前記グリコーゲン蓄積症はポンペ病(Pompe disease)である、請求項に記載の酵素結合体。
【請求項5】
前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域及び非ペプチド性重合体連結部が結合していない治療学的酵素よりトランスサイトーシス(transcytosis)が増加したものである、請求項1~のいずれかに記載の酵素結合体。
【請求項6】
前記トランスサイトーシスは、免疫グロブリンFc領域とFcRn(neonatal Fc receptor)との結合によるものである、請求項に記載の酵素結合体。
【請求項7】
前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域及び非ペプチド性重合体連結部が結合していない治療学的酵素より組織分布性(tissue distribution)が増加したものである、請求項1~のいずれかに記載の酵素結合体。
【請求項8】
前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域及び非ペプチド性重合体連結部が結合していない治療学的酵素より骨髄標的性が増加したものである、請求項に記載の酵素結合体。
【請求項9】
前記免疫グロブリンFc領域は非グリコシル化されたものである、請求項1~のいずれかに記載の酵素結合体。
【請求項10】
前記免疫グロブリンFc領域は、CH1、CH2、CH3及びCH4ドメインからなる群から選択される1つ~4つのドメインを含む、請求項1~のいずれかに記載の酵素結合体。
【請求項11】
前記免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ領域を含む、請求項1~のいずれかに記載の酵素結合体。
【請求項12】
前記免疫グロブリンFc領域は、同一起源のドメインからなる単鎖免疫グロブリンで構成された二量体又は多量体である、請求項1~のいずれかに記載の酵素結合体。
【請求項13】
前記免疫グロブリンFc領域はヒト非グリコシル化IgG4 Fcフラグメントである、請求項に記載の酵素結合体。
【請求項14】
請求項に記載の酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項15】
前記薬学的組成物は、免疫グロブリンFc領域及び非ペプチド性重合体連結部が結合していない治療学的酵素よりトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性を増加させるものである、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のための治療学的酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、
(b)(a)ステップの前記酵素と非ペプチド性重合体が連結された連結体を、免疫グロブリンFc領域に連結するステップとを含む、酵素結合体を製造する方法であって、
前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域及び非ペプチド性重合体連結部が結合していない治療学的酵素より生体利用率(bioavailability, BA)が増加したものであり、
前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域のN末端に非ペプチド性重合体連結部が結合されたものであり、
前記酵素は、アリールスルファターゼB(ARSB)又はα-グルコシダーゼであり、
前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fcフラグメントであり、
前記酵素結合体は、酵素のN末端に非ペプチド性重合体連結部が結合されたものである、方法。
【請求項17】
前記酵素結合体が下記化学式(1)で表される、請求項16に記載の酵素結合体を製造する方法。
X-La-F・・・(1)
ここで、Xはリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのアリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)又はα-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)であり、
Lは非ペプチド性重合体であり、
aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、
Fは免疫グロブリンFc領域である。
【請求項18】
前記非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16又は17に記載の酵素結合体を製造する方法。
【請求項19】
前記非ペプチド性重合体はポリエチレングリコールである、請求項18に記載の酵素結合体を製造する方法。
【請求項20】
前記(a)ステップの非ペプチド性重合体の反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択される、請求項16又は17に記載の酵素結合体を製造する方法。
【請求項21】
前記アルデヒド基は、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基である、請求項20に記載の酵素結合体を製造する方法。
【請求項22】
前記スクシンイミド誘導体は、スクシンイミジルカルボキシメチル、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド又はスクシンイミジルカーボネートである、請求項20に記載の酵素結合体を製造する方法。
【請求項23】
前記非ペプチド性重合体は、末端にアルデヒド反応基を有するものである、請求項20に記載の酵素結合体を製造する方法。
【請求項24】
前記非ペプチド性重合体は、両末端にそれぞれアルデヒド基及びマレイミド反応基を有するものである、請求項20に記載の酵素結合体を製造する方法。
【請求項25】
前記非ペプチド性重合体は、両末端にそれぞれアルデヒド基及びスクシンイミド反応基を有するものである、請求項20に記載の酵素結合体を製造する方法。
【請求項26】
請求項に記載の酵素結合体を含む、免疫グロブリンFc領域及び非ペプチド性重合体連結部が結合していない治療学的酵素より、治療学的酵素のトランスサイトーシス(transcytosis)を増加させるための組成物。
【請求項27】
請求項に記載の酵素結合体を含む、免疫グロブリンFc領域及び非ペプチド性重合体連結部が結合していない治療学的酵素より、治療学的酵素の組織分布性(tissue distribution)を増加させるための組成物。
【請求項28】
リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-ガラクトシダーゼAと免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された、酵素結合体であって、
前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域及び非ペプチド性重合体連結部が結合していないα-ガラクトシダーゼAより生体利用率(bioavailability, BA)及び組織分布性が増加したものであり、
前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域のN末端及び酵素のN末端に非ペプチド性重合体連結部が結合されたものであり、
前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fcフラグメントである、酵素結合体。
【請求項29】
前記リソソーム蓄積症はファブリー病である、請求項28に記載の酵素結合体。
【請求項30】
請求項28に記載の酵素結合体を含む、リソソーム蓄積症(LSD)予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項31】
前記リソソーム蓄積症はファブリー病である、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
(a)リソソーム蓄積症(LSD)治療のためのα-ガラクトシダーゼAと非ペプチド性重合体を連結するステップと、
(b)(a)ステップの連結された物質を結合するステップであって、前記α-ガラクトシダーゼAと前記非ペプチド性重合体を免疫グロブリンFc領域に連結するステップとを含む、α-ガラクトシダーゼA結合体を製造する方法であって、
前記α-ガラクトシダーゼA結合体は、免疫グロブリンFc領域及び非ペプチド性重合体連結部が結合していないα-ガラクトシダーゼAより生体利用率(bioavailability, BA)及び組織分布性が増加したものであり、
前記α-ガラクトシダーゼA結合体は、免疫グロブリンFc領域のN末端及びα-ガラクトシダーゼAのN末端に非ペプチド性重合体連結部が結合されたものであり、
前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fcフラグメントである、方法。
【請求項33】
前記α-ガラクトシダーゼA結合体が下記化学式(1)で表される、請求項32に記載の方法。
X-La-F・・・(1)
ここで、Xはα-ガラクトシダーゼAであり、
Lは非ペプチド性重合体であり、
aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、
Fは免疫グロブリンFc領域である。
【請求項34】
リソソーム蓄積症(LSD)を予防又は治療するための薬剤を調製するための請求項に記載の酵素結合体の使用。
【請求項35】
リソソーム蓄積症(LSD)を予防又は治療するための薬剤を調製するための請求項28に記載の酵素結合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して治療学的酵素類に結合した治療学的酵素類結合体、前記結合体の製造方法、及びそれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
治療学的酵素類などのタンパク質は、一般に安定性が低いので変性しやすく、血液内のプロテアーゼにより分解され、血中濃度及び力価を維持するために患者に頻繁に投与する必要がある。しかし、主に注射剤の形態で患者に投与されるタンパク質医薬品において、活性ポリペプチドの血中濃度を維持するために頻繁に注射することは患者に多大な苦痛をもたらす。前記問題を解決するために、治療学的酵素類の血中安定性を向上させ、血中薬物濃度を高い濃度に長期間持続して薬効を最大化するための多くの努力がなされてきた。このような治療学的酵素類の持続性製剤は、治療学的酵素類の安定性を向上させると共に、薬物自体の力価が十分に高く維持されなければならず、患者に免疫反応を誘発しないものでなければならない。
【0003】
特に、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)は、特定酵素の遺伝的欠陥により生じ、死に至る致命的な疾患であり、欠陥のある酵素の補充治療が必須である(非特許文献1)。酵素補充治療はリソソーム蓄積症において標準となる治療であり、不足した酵素を補充することにより既存の症状を緩和したり、疾患の進行を遅らせる効果を発揮する。しかし、継続して1~2週間ごとに2~6時間かけて薬物を静脈に投与しなければならず、患者及びその家族の日常生活が制限される。リソソーム蓄積症の治療に用いられる組換え酵素のヒトにおける半減期は、短い場合は10分から3時間未満であり、その持続時間が非常に短いので、生涯酵素を投与しなければならない患者に不便をかけており、その半減期の延長が強く求められている。
【0004】
また、リソソーム蓄積症治療に用いられる酵素の生体内蓄積位置が異なるという問題や、治療酵素が骨髄に到達しないなどという問題があるので、リソソーム蓄積症治療剤の開発の必要性が高まっている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第97/034631号
【文献】国際公開第96/032478号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Frances M. Platt et al., J Cell Biol. 2012 Nov 26;199(5):723-34
【文献】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York,1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、治療学的酵素と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体を介して連結された酵素結合体を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記酵素結合体を含むリソソーム蓄積症の予防又は治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記酵素結合体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のための治療学的酵素と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を提供する。
具体的な一態様として、前記酵素は、β-グルコシダーゼ(beta-glucosidase)、β-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase)、ガラクトース-6-スルファターゼ(Galactose-6-sulfatase)、酸性セラミダーゼ(acid ceramidase)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(acid sphingomyelinase)、ガラクトセレブロシダーゼ(galactocerebrosidsase)、アリールスルファターゼA(arylsulfatase A)、β-ヘキソサミニダーゼ(beta-hexosaminidase)A、β-ヘキソサミニダーゼ(beta-hexosaminidase)B、ヘパリン-N-スルファターゼ(heparin N-sulfatase)、α-D-マンノシダーゼ(alpha-D-mannosidase)、β-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)、N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ(N-acetylgalactosamine-6 sulfatase)、リソソーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase)、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ(alpha-N-acetyl-glucosaminidase, NAGLU)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(Chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(Uricase)、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(Platelet-Activating Factor Acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、アセチル-CoA-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA-glucosaminide N-acetyltransferse)、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ(N-acetylglucosamine-6-sulfatase)、ガラクトサミン-6-スルファターゼ(galactosamine 6-sulfatase, GALN)、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、α-フコシダーゼ(α-fucosidase)、β-マンノシダーゼ(β-mannosidase)、α-ノイラミニダーゼ(α-neuraminidase, sialidase)、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(N-acetyl-glucosamine-1-phosphotransferase)、ムコリピン1(mucolipin-1)、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(α-N-acetyl-galactosaminidase)、N-アスパルチル-β-グルコサミニダーゼ(N-aspartyl-β-glucosaminidase)、LAMP-2、シスチノシン(Cystinosin)、シアリン(Sialin)、セラミダーゼ(ceramidase)、酸性β-グルコシダーゼ(acid-β-glucosidase)、ガラクトシルセラミダーゼ(galactosylceramidase)、NPC1、カテプシンA(cathepsin A, protective protein)、SUMF1、リソソーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase, LIPA)及びトリペプチジルペプチダーゼ1(Tripeptidyl peptidase 1)からなる群から選択される酵素結合体を提供する。
【0011】
本発明の他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)Aと免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのアリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を提供する。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイズロニダーゼ(iduronidase)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を提供する。
【0014】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を提供する。
【0015】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイミグルセラーゼ(imiglucerase)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を提供する。
【0016】
具体的な一態様として、前記リソソーム蓄積症は、ムコ多糖症(mucopolysaccharidosis, MPS)、グリコーゲン蓄積症(Glycogen storage disease)及びスフィンゴ脂質症(sphingolipidosis)からなる群から選択される酵素結合体を提供する。
【0017】
具体的な他の態様として、前記ムコ多糖症は、MPS(mucopolysaccharidosis)I及びMPS(mucopolysaccharidosis)VIからなる群から選択される酵素結合体を提供する。
【0018】
具体的なさらに他の態様として、前記グリコーゲン蓄積症はポンペ病(Pompe disease)である酵素結合体を提供する。
【0019】
具体的なさらに他の態様として、前記スフィンゴ脂質症は、ファブリー病(Fabry disease)及びゴーシェ病(Gaucher’s disease)からなる群から選択される酵素結合体を提供する。
【0020】
具体的なさらに他の態様として、前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域が結合していない酵素よりトランスサイトーシス(transcytosis)及び生体利用率(bioavailability, BA)が増加したものである酵素結合体を提供する。
【0021】
具体的なさらに他の態様として、前記トランスサイトーシスは、免疫グロブリンFc領域とFcRn(neonatal Fc receptor)との結合によるものである酵素結合体を提供する。
【0022】
具体的なさらに他の態様として、前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域が結合していない酵素より組織分布性(tissue distribution)が増加したものである酵素結合体を提供する。
【0023】
具体的なさらに他の態様として、前記酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域が結合していない酵素より骨髄標的性が増加したものである酵素結合体を提供する。
【0024】
具体的なさらに他の態様として、前記免疫グロブリンFc領域は非グリコシル化されたものである酵素結合体を提供する。
【0025】
具体的なさらに他の態様として、前記免疫グロブリンFc領域は、CH1、CH2、CH3及びCH4ドメインからなる群から選択される1つ~4つのドメインからなる酵素結合体を提供する。
【0026】
具体的なさらに他の態様として、前記免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ領域をさらに含む酵素結合体を提供する。
【0027】
具体的なさらに他の態様として、前記免疫グロブリンFc領域が、IgG、IgA、IgD、IgE又はIgMに由来する免疫グロブリンFcフラグメントである酵素結合体を提供する。
【0028】
具体的なさらに他の態様として、前記免疫グロブリンFc領域のそれぞれのドメインが、IgG、IgA、IgD、IgE、IgMからなる群から選択される免疫グロブリンに由来する異なる起源を有するドメインのハイブリッドである酵素結合体を提供する。
【0029】
具体的なさらに他の態様として、前記免疫グロブリンFc領域は、同一起源のドメインからなる単鎖免疫グロブリンで構成された二量体又は多量体である酵素結合体を提供する。
【0030】
具体的なさらに他の態様として、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fcフラグメントである酵素結合体を提供する。
【0031】
具体的なさらに他の態様として、前記免疫グロブリンFc領域はヒト非グリコシル化IgG4 Fcフラグメントである酵素結合体を提供する。
【0032】
具体的なさらに他の態様として、前記酵素結合体は、酵素又はその誘導体のN末端に非ペプチド性重合体連結部が結合されたものである酵素結合体を提供する。
【0033】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム治療のための酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0034】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム治療のためのα-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)A酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0035】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム治療のためのアリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0036】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム治療のためのイズロニダーゼ(iduronidase)酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0037】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム治療のためのα-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0038】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム治療のためのイミグルセラーゼ(imiglucerase)酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0039】
具体的な一態様として、前記薬学的組成物は、トランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性を増加させるものである薬学的組成物を提供する。
【0040】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のための治療学的酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記酵素と非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0041】
具体的な一態様として、前記酵素は、β-グルコシダーゼ(beta-glucosidase)、β-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase)、ガラクトース-6-スルファターゼ(Galactose-6-sulfatase)、酸性セラミダーゼ(acid ceramidase)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(acid sphingomyelinase)、ガラクトセレブロシダーゼ(galactocerebrosidsase)、アリールスルファターゼA(arylsulfatase A)、β-ヘキソサミニダーゼ(beta-hexosaminidase)A、β-ヘキソサミニダーゼ(beta-hexosaminidase)B、ヘパリン-N-スルファターゼ(heparin N-sulfatase)、α-D-マンノシダーゼ(alpha-D-mannosidase)、β-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)、N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ(N-acetylgalactosamine-6 sulfatase)、リソソーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase)、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ(alpha-N-acetylglucosaminidase, NAGLU)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(Chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(Uricase)、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(Platelet-Activating Factor Acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、アセチル-CoA-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA-glucosaminide N-acetyltransferse)、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ(N-acetylglucosamine-6-sulfatase)、ガラクトサミン6-スルファターゼ(galactosamine 6-sulfatase, GALN)、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、α-フコシダーゼ(α-fucosidase)、β-マンノシダーゼ(β-mannosidase)、α-ノイラミニダーゼ(α-neuraminidase, sialidase)、N-アセチル-グルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(N-acetyl-glucosamine-1-phosphotransferase)、ムコリピン1(mucolipin-1)、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(α-N-acetyl-galactosaminidase)、N-アスパルチル-β-グルコサミニダーゼ(N-aspartyl-β-glucosaminidase)、LAMP-2、シスチノシン(Cystinosin)、シアリン(Sialin)、セラミダーゼ(ceramidase)、酸性β-グルコシダーゼ(acid-β-glucosidase)、ガラクトシルセラミダーゼ(galactosylceramidase)、NPC1(Cholesterol trafficking)、カテプシンA(cathepsin A, protective protein)、SUMF1、リソソーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase, LIPA)及びトリペプチジルペプチダーゼ1(Tripeptidyl peptidase 1)からなる群から選択される酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0042】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)A酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記α-ガラクトシダーゼAと非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0043】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのアリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記アリールスルファターゼBと非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0044】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイズロニダーゼ(iduronidase)酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記イズロニダーゼと非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0045】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記α-グルコシダーゼと非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0046】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイミグルセラーゼ(imiglucerase)酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記イミグルセラーゼと非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0047】
具体的な一態様として、前記非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0048】
具体的な他の態様として、前記非ペプチド性重合体はポリエチレングリコールである、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0049】
具体的なさらに他の態様として、前記(a)ステップの非ペプチド性重合体の反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択される、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0050】
具体的なさらに他の態様として、前記アルデヒド基は、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基である、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0051】
具体的なさらに他の態様として、前記スクシンイミド誘導体は、スクシンイミジルカルボキシメチル、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド又はスクシンイミジルカーボネートである、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0052】
具体的なさらに他の態様として、前記非ペプチド性重合体は、末端にアルデヒド反応基を有する酵素結合体を提供する。
【0053】
具体的なさらに他の態様として、前記非ペプチド性重合体は、両末端にそれぞれアルデヒド基及びマレイミド反応基を有する酵素結合体を提供する。
【0054】
具体的なさらに他の態様として、前記非ペプチド性重合体は、両末端にそれぞれアルデヒド基及びスクシンイミド反応基を有する酵素結合体を提供する。
【0055】
具体的なさらに他の態様として、前記酵素のN末端に非ペプチド性重合体連結部が結合された結合体を分離するステップをさらに含む、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0056】
本発明は、持続型治療学的酵素結合体に関し、特に、治療学的酵素、非ペプチド性重合体連結部及び免疫グロブリンFcが相互に共有結合により連結されているので、前記酵素の生体内持続性が向上するだけでなく、トランスサイトーシス(transcytosis)、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性が向上する酵素結合体に関する。本発明により製造された酵素結合体は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)の治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】アガルシダーゼβ持続型結合体のPK実験結果を示す図である。
図2】アガルシダーゼβ持続型結合体のin vitro酵素活性を示す図である。
図3】アガルシダーゼβ持続型結合体のin vitro細胞内吸収活性を示す図である。
図4】イミグルセラーゼ持続型結合体のin vitro酵素活性を示す図である。
図5】ガルスルファーゼ持続型結合体のin vitro酵素活性を示す図である。
図6】イズロニダーゼ持続型結合体のin vitro酵素活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。一方、本発明で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本発明で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0059】
前記目的を達成するための本発明の一態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のための治療学的酵素と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を提供する。
【0060】
具体的には、前記酵素結合体は、前記非ペプチド性重合体連結部が免疫グロブリンFc領域及び前記酵素に結合された酵素結合体であってもよい。
【0061】
本発明の一具体例においては、前記酵素結合体が非ペプチド性重合体を遊離Fc領域と遊離酵素に反応させて得たものであり、ここで、前記非ペプチド性重合体は前記非ペプチド性重合体連結部と繰り返し単位の種類、数、位置の面で同じ物質である。前記遊離Fc領域及び遊離酵素反応に用いられる非ペプチド性重合体は、その繰り返し単位の両端に前記繰り返し単位とは化学的構造が異なる末端反応基を有する物質であってもよい。このような酵素結合体の製造過程においては、その非ペプチド性重合体の両末端反応基を介して遊離酵素及び遊離免疫グロブリンFc領域とそれぞれ化学反応を起こし、その化学反応により末端反応基が変換されて生じる共有結合により非ペプチド性重合体の繰り返し単位が酵素及びFc領域に連結された酵素結合体が得られる。すなわち、本発明の前記具体例においては、非ペプチド性重合体が製造過程を経て酵素結合体内の非ペプチド性重合体連結部に変換される。
【0062】
本発明の酵素結合体に含まれる酵素は、特に限定されるものではなく、本発明の酵素結合体に製造することにより、非結合体形態の酵素より生体内持続時間を延長させるという利点を有する酵素であればよい。本発明の一実施形態において、その酵素結合体は治療学的酵素の結合体である。
【0063】
具体的には、前記酵素は、β-グルコシダーゼ(beta-glucosidase)、β-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase)、ガラクトース-6-スルファターゼ(Galactose-6-sulfatase)、酸性セラミダーゼ(acid ceramidase)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(acid sphingomyelinase)、ガラクトセレブロシダーゼ(galactocerebrosidsase)、アリールスルファターゼA(arylsulfatase A)、β-ヘキソサミニダーゼ(beta-hexosaminidase)A、β-ヘキソサミニダーゼ(beta-hexosaminidase)B、ヘパリン-N-スルファターゼ(heparin N-sulfatase)、α-D-マンノシダーゼ(alpha-D-mannosidase)、β-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)、N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ(N-acetylgalactosamine-6 sulfatase)、リソソーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase)、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ(alpha-N-acetylglucosaminidase, NAGLU)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(Chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(Uricase)、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(Platelet-Activating Factor Acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、アセチル-CoA-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA-glucosaminide N-acetyltransferse)、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ(N-acetylglucosamine-6-sulfatase)、ガラクトサミン6-スルファターゼ(galactosamine 6-sulfatase, GALN)、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、α-フコシダーゼ(α-fucosidase)、β-マンノシダーゼ(β-mannosidase)、α-ノイラミニダーゼ(α-neuraminidase, sialidase)、N-アセチル-グルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(N-acetyl-glucosamine-1-phosphotransferase)、ムコリピン1(mucolipin-1)、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(α-N-acetyl-galactosaminidase)、N-アスパルチル-β-グルコサミニダーゼ(N-aspartyl-β-glucosaminidase)、LAMP-2、シスチノシン(Cystinosin)、シアリン(Sialin)、セラミダーゼ(ceramidase)、酸性β-グルコシダーゼ(acid-β-glucosidase)、ガラクトシルセラミダーゼ(galactosylceramidase)、NPC1、カテプシンA(cathepsin A, protective protein)、SUMF1、リソソーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase, LIPA)及びトリペプチジルペプチダーゼ1(Tripeptidyl peptidase 1)からなる群から選択される酵素結合体であってもよく、リソソーム蓄積症を治療できる酵素であれば、酵素の由来や種類に制限なく本発明に用いることができる。
【0064】
本発明の他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)Aと免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を提供する。
【0065】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのアリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を提供する。
【0066】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイズロニダーゼ(iduronidase)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を提供する。
【0067】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された、酵素結合体を提供する。
【0068】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイミグルセラーゼ(imiglucerase)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を提供する。
【0069】
本発明における「治療学的酵素」又は「酵素」とは、酵素の不足、欠乏、機能異常などにより発生する疾患を治療するための酵素であり、酵素補充療法(enzyme replacement therapy)、投与などにより前記疾患を有する個体を治療できる酵素を意味する。具体的には、リソソーム酵素の不足、欠乏などにより発生するリソソーム蓄積症の治療のための酵素であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0070】
本発明における「リソソーム(lysosome)」とは、細胞質に存在する小器官の一つであり、加水分解酵素を多く含んでおり、体内で巨大分子、細菌などの異物を分解し、前記分解された産物が細胞の他の部分でリサイクルされるように助ける小器官である。前記リソソームの機能は複数の酵素により行われるが、変異や不足などにより特定酵素が機能を喪失すると、リソソームの分解機能が喪失されることとなり、結局は分解されなければならない巨大分子などが細胞内に蓄積されて細胞の損傷などが誘発され、それによる疾患が発症する。
【0071】
本発明における「リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)」とは、このようなリソソーム機能の喪失による希少遺伝性疾患を意味し、欠陥のある酵素を補充する酵素補充療法(enzymatic replacement therapy)が必須である。本発明においては、「リソソーム蓄積病」と混用される。前記リソソーム蓄積症は欠損した酵素によって分類され、(i)スフィンゴ脂質症(sphingolipidosis)、(ii)ムコ多糖症(mucopolysaccharidosis)(iii)グリコーゲン蓄積症(glycogen storage disease)、(iv)ムコリピド症(mucolipidosis)、(v)オリゴ糖症(oligosaccharidosis)、(vi)脂質症(lipidosis)、(vii)リソソーム輸送疾患(lysosomal transport disease)などに分類される。
【0072】
以下、リソソーム蓄積症をその分類に応じて詳細に説明する。
【0073】
本発明における「スフィンゴ脂質症」とは、スフィンゴ脂質の糖側鎖又はコリン側鎖を加水分解するリソソーム酵素の遺伝性欠乏症である。ガラクトセレブロシダーゼ(galactocerebrosidsase)の欠乏によるクラッベ(Krabbe)病、α-ガラクトシダーゼA(alpha-galactosidase A)の欠乏によるファブリー病(Fabry disease)、スフィンゴミエリナーゼ(Sphingomyelinase)の欠乏によるニーマン・ピック(Niemann-pick)病、グルコセレブロシダーゼ(Glucocerebrosidase)の欠乏によるゴーシェ(Gaucher’s disease)病、ヘキソサミニダーゼ(Hexosaminidase A)の欠乏によるテイ・サックス病(Tay-Sachs disease)、ファーバー(Farber)病などそれぞれの蓄積脂質分布による疾患が含まれる。X染色体遺伝性疾患であるファブリー病を除いて、常染色体劣性遺伝性疾患に該当する。
【0074】
本発明における「ファブリー病(Fabry disease, (Fabry’s disease))」とは、リソソームにある加水分解酵素(α-ガラクトシダーゼA)の活性不足による糖脂質の先天性代謝異常を示す疾患であり、X染色体劣性で遺伝する遺伝性疾患である。幼児期は無症状であるが、児童期以降は四肢疼痛、皮膚発疹などが現れ、思春期以降は心血管病変、腎臓障害が現れる。治療方法としては、酵素補充療法や遺伝子治療などが研究されている。
【0075】
本発明における「ゴーシェ病(Gaucher’s disease)」とは、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)酵素が遺伝子異常により欠乏して生じる先天性脂質代謝異常症であり、常染色体性(1番染色体)劣性遺伝性疾患である。古い細胞が肝臓、脾臓、骨髄に蓄積されて問題を引き起こす。酷い場合は肺、目、腎臓、心臓及び神経系にまで転移して深刻な合併症を引き起こすことが知られている。治療方法としては、酵素補充療法や遺伝子治療などが研究されている。
【0076】
本発明における「ムコ多糖症(mucopolysaccharidosis, MPS)」とは、粘液性多糖の遺伝性分解酵素欠乏症であり、糖鎖分解酵素、スルファターゼ、アセチルトランスフェラーゼの欠乏などが原因として知られている。ガルゴイリズム(gargoylism)ともいう。主症状は、尿に粘液性多糖が過剰排泄されることである。現在は6つの病型に分類されており、I型はハーラー症候群(Hurler syndrome)、シャイエ症候群(Scheie syndrome)であり、II型はハンター症候群(Hunter syndrome)であり、III型はサンフィリッポ症候群(Sanfilippo syndrome)A、B、C、D型であり、IV型はモルキオ症候群(Morquio syndrome)A、B型であり、VI型はマロトー・ラミー症候群(Maroteaux-Lamy syndrome)であり、VII型はスライ症候群(Sly syndrome)である。
【0077】
本発明における「ハーラー症候群(Hurler syndrome)」とは、ムコ多糖分解酵素(α-L-iduronidase)の欠乏により発生するMPS(mucopolysaccharidosis)I型疾患であり、常染色体劣性遺伝性疾患であると共に希少遺伝性疾患である。ハンター症候群と似た症状を示すが、症状がより深刻に現れ、ほとんどが10才以前に死亡する。知能障害、難聴、肝臓肥大、脾臓肥大、低い鼻、厚い唇、大きい舌などの外形的特徴、重度の骨格奇形などのハンター症候群と同様の症状に角膜混濁症状を伴う。
【0078】
本発明における「マロトー・ラミー症候群(Maroteaux-Lamy syndrome)」とは、MPS(mucopolysaccharidosis)VI型疾患であり、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)の分解に必要なアリールスルファターゼB(Arylsulfatase B, N-acetylgalactosamine-4-sulfatase)の不足により発生する常染色体劣性遺伝性疾患である。骨、心臓弁膜、脾臓、肝臓、角膜などに前記酵素の不足により分解されないデルマタン硫酸が沈着して現れる疾患である。
【0079】
本発明における「グリコーゲン蓄積症(糖原病,glycogen storage disease)」とは、グリコーゲンが蓄積される炭水化物の先天性代謝異常疾患であり、I~VII型があることが知られている。リソソーム蓄積症と関係のあるグリコーゲン蓄積症は第II型(ポンペ病,Pompe disease)及びIIIb型(ダノン病,Danon disease)である。
【0080】
グリコーゲン蓄積症第II型は、酸性マルターゼ欠損症(acid maltase deficiency)又はポンペ病(Pompe disease, Pompe’s disease)ともいい、リソソーム酵素の一つであるα-グルコシダーゼ(α-1, 4-glucosidase, acid alpha-glucosidase)の欠乏により生じる疾患であり、肝臓、腎臓の肥大、筋力低下、舌肥大、心臓肥大、呼吸困難などを引き起こし、数カ月以内に死亡することが知られている。
【0081】
本発明における「リソソーム蓄積症治療のための治療学的酵素結合体(conjugate)」又は「酵素結合体」とは、前記リソソーム蓄積症の治療効果を有する酵素が非ペプチド性重合体連結部を介して免疫グロブリンFc領域に連結されたものであり、前記酵素によるリソソーム蓄積症の予防又は治療効果が得られる。
【0082】
本発明の酵素結合体は、治療学的酵素の半減期を延長させることのできる物質を前記酵素に連結するので、持続性が増加するという効果を有する。よって、本発明の「酵素結合体」は「持続型結合体」と混用される。
【0083】
また、本発明の酵素結合体は、酵素補充療法(enzymatic replacement therapy, ERT)の薬物として用いられてもよい。前記酵素補充療法は、疾患の原因となる欠乏又は不足酵素を補充することにより、低下した酵素機能を回復させて疾患を予防又は治療することができる。
【0084】
具体的には、本発明のFc領域に連結された酵素結合体は、前記Fc領域がFcRnに結合されるので、Fc領域が連結されていない酵素よりトランスサイトーシス(transcytosis)が増加するという効果を有する。
【0085】
FcRnを媒介とする増加したトランスサイトーシスは、酵素がFc領域に連結されているため大きい分子を形成するにもかかわらず、細胞内吸収率を維持するように助けるだけでなく、治療酵素が酵素活性を長く維持しつつ体内に吸収され、酵素自体の機能が行えるようにすることにより、リソソーム蓄積症の治療を可能にする。
【0086】
一方、治療学的酵素類、特にリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)に用いられるERT酵素類は、生体内利用率(BA, bioavailability)が低いので静脈注射(iv, intravenous)で投与しなければならないという欠点があり、このような静脈注射は毎回患者が病院に行かなければならないという不便さがある。また、このような静脈注射は、アレルギータイプの過敏性反応を誘発し、高頻度により薬物注入に伴う反応(infusion reaction)をもたらす。
【0087】
本発明の酵素結合体は、FcRn結合部位によるトランスサイトーシス(transcytosis)により生体内利用率を高めるので、静脈注射ではなく皮下注射を可能にし、このような投与方法の変化は、自己注射を可能にして患者の利便性を向上させ、薬物注入に伴う反応を減少させて副作用を最小限に抑えることができる。
【0088】
また、治療学的酵素類、特にリソソーム蓄積症に用いられる酵素補充療法(ERT)のための酵素は、特定組織に蓄積された老廃物を除去しなければならないので、各組織への均一な分布が非常に重要である。しかし、現在用いられているERT酵素類は主に肝臓に多く分布しているので、様々な臓器に分布する薬物の開発が必須である。
【0089】
本発明の酵素結合体は、延長された血中半減期とFcRn結合部位によるトランスサイトーシス(transcytosis)により肝臓以外の様々な組織、特に骨髄、脾臓、腎臓などでも生体内濃度が高い優れた分布を示すので、治療学的効率を最大化させることができる。特に、本発明の酵素結合体は高い骨髄標的性を示す。骨髄組織は骨の内部に存在する柔軟な構造の組織であるので、骨髄組織への標的性を増大させることにより、酵素補充療法による骨髄での薬理作用によりさらなる効果を期待することができ、リソソーム蓄積症を効果的に治療することができる。
【0090】
特に、前記リソソーム蓄積症は様々な臓器で発生し、特に骨髄における疾患は、骨の異常症状又は骨の生成抑制、骨髄で必ず生成されなければならない赤血球生成ホルモンと血小板生成ホルモンの生成抑制により貧血など様々な副作用を引き起こすが、現在商用化されている酵素治療剤は骨髄の分布が非常に低いので、これらの副作用が頻繁に発生する。このような面から、本発明の酵素結合体は、高い骨髄標的性を示すことにより、酵素補充療法の優れた治療剤となる。
【0091】
よって、本発明の酵素結合体は、免疫グロブリンFc領域とFcRnとの結合により、免疫グロブリンFc領域が結合していない酵素よりトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性が増加したものであってもよい。
【0092】
本発明の酵素結合体に含まれる治療学的酵素は、リソソーム蓄積症に対する治療効果を有するものであれば限定されるものではないが、具体的には次の酵素であってもよい。
【0093】
本発明における「α-ガラクトシダーゼA(alpha-galactosidase A)」とは、アガルシダーゼ(aglasidase)ともいい、ファブリー病(Fabry disease)に関係する酵素であり、糖脂質又は糖タンパク質の末端α-ガラクトシル部分(terminal alpha-galactosyl moieties)をガラクトース及びグルコースに加水分解する酵素である。本発明における前記α-ガラクトシダーゼAは、α-ガラクトシダーゼ又はアガルシダーゼ(agalsidase)と混用される。前記α-ガラクトシダーゼ又はアガルシダーゼは、アガルシダーゼα又はアガルシダーゼβであってもよい。
【0094】
本発明における「イミグルセラーゼ(imiglucerase)」とは、グルコシルセラミド加水分解酵素の活性を有する酵素であり、糖脂質の代謝過程の中間体であるグルコセレブロシドのβ-グリコシド結合(β-glucosidic linkage)を加水分解する酵素であり、ヒトβ-グルコセレブロシダーゼ(beta-glucocerebrosidase)の組換え形態である。ゴーシェ病(Gaucher’s disease)に関係することが知られている。
【0095】
本発明における「イズロニダーゼ(iduronidase)」とは、L-イズロニダーゼ(L-iduronidase)、α-L-イズロニダーゼ(alpha-L-iduronidase, IDUA)、ラロニダーゼ(laronidase)ともいい、デルマタン硫酸やヘパラン硫酸などのグリコサミノグリカンの加水分解に関与する。本発明における前記イズロニダーゼはラロニダーゼ(laronidase)と混用される。
【0096】
本発明における「アリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)」とは、肝臓、膵臓、腎臓のリソソームに存在するアリールスルファターゼ酵素であり、グリコサミノグリカンを分解することにより、サルフェートを加水分解する役割を果たす。前記アリールスルファターゼBは、ムコ多糖症VI型(Maroteaux-Lamy syndrome)に関係することが知られている。本発明におけるアリールスルファターゼBはガルスルファーゼ(galsulfase)と混用される。
【0097】
本発明における「α-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)」とは、デンプン又は二糖類をグルコースに分解するグルコシダーゼの一種であり、この酵素の欠乏によりポンペ病が発生する。本発明における前記α-グルコシダーゼは、アルグルコシダーゼ(alglucosidase)又は酸性α-グルコシダーゼ(Acid alpha-glucosidase, GAA)と混用される。
【0098】
本発明の一実施例においては、リソソーム蓄積症治療のための酵素である、アガルシダーゼ、イミグルセラーゼ、ガルスルファーゼ及びラロニダーゼをそれぞれ免疫グロブリンFc領域及び非ペプチド性重合体に連結した結合体を製造し(実施例3)、各酵素結合体のin vitro及びin vivo活性を確認した(実施例4~8)。
【0099】
その結果、各酵素結合体の酵素は、Fc領域との結合にもかかわらず、酵素活性を保持しながらも、半減期、トランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性が全て増加することが確認された。
【0100】
本発明の酵素結合体に含まれる前記治療学的酵素は、天然のものを用いてもよく、一部で構成されたフラグメント、又は一部のアミノ酸の置換(substitution)、付加(addition)、欠失(deletion)、修飾(modification)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変が行われた酵素の誘導体(analog)も天然酵素と同等の活性を有するものであれば本発明に用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
前記酵素誘導体には当該酵素のバイオシミラーやバイオベターの形態が含まれるが、例えば、公知酵素と発現宿主の差異、グリコシル化の様相と程度の差異、特定位置の残基が当該酵素の基準配列に対して100%の置換でない場合はその置換の程度の差異も、本発明の酵素結合体に用いることができるバイオシミラー酵素に該当する。前記酵素は、遺伝子組換えにより動物細胞、大腸菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞、生きている動物などから生産することができ、生産方法はこれらに限定されるものではなく、商業的に利用可能な酵素であってもよい。
【0102】
また、前記酵素又はその誘導体と80%以上、具体的には90%以上、より具体的に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%以上の相同性を有するアミノ酸配列が含まれてもよく、前記酵素は組換え技術により微生物から得られるか、商業的に利用可能なものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0103】
本発明における「相同性(homology)」とは、野生型(wild type)タンパク質のアミノ酸配列又はそれをコードする塩基配列と類似する程度を示すものであり、本発明のアミノ酸配列又は塩基配列と前記パーセント以上同一である配列を有する配列を含む。このような相同性は、2つの配列を肉眼で比較して決定することもできるが、比較対象となる配列を並べて相同性の程度を分析するバイオインフォマティクスアルゴリズム(bioinformatic algorithm)を用いて決定することもできる。前記2つのアミノ酸配列間の相同性は百分率で表すことができる。有用な自動化されたアルゴリズムは、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, Madison, W, USA)のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTAコンピュータソフトウェアモジュールで用いることができる。前記モジュールで自動化された配列アルゴリズムには、Needleman & Wunsch、Pearson & Lipman及びSmith & Waterman配列アルゴリズムが含まれる。他の有用な配列に対するアルゴリズムと相同性の決定は、FASTP、BLAST、BLAST2、PSIBLAST及びCLUSTAL Wが含まれるソフトウェアで自動化されている。
【0104】
前記酵素又はその誘導体の配列及びそれをコードする塩基配列の情報は、NCBIなどの公知のデータベースから得られる。
【0105】
本発明における「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域、重鎖定常領域1(CH1)及び軽鎖定常領域1(CL1)を除いた残りの部分を意味し、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)領域をさらに含むこともある。特に、免疫グロブリンFc領域全体及びその一部を含むフラグメントであってもよく、本発明における免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリンフラグメントと混用されてもよい。
【0106】
天然Fcは重鎖定常領域1においてAsn297部位に糖鎖が存在するが、大腸菌由来の組換えFcは糖鎖が存在しない形態で発現する。Fcから糖鎖が除去されると、重鎖定常領域1に結合するFcγ受容体1、2、3と補体(c1q)の結合力が低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が低減又は除去される。
【0107】
本発明における「免疫グロブリン定常領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域、重鎖定常領域1(CH1)及び軽鎖定常領域(CL)を除いたものであり、重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)(又は重鎖定常領域4(CH4)を含む)部分を含むFcフラグメントを意味するものであり、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含むこともある。また、本発明の免疫グロブリン定常領域は、天然のものと実質的に同等又は向上した効果を有するものであれば、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域のみを除き、一部又は全部の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域(CL)を含む拡張された免疫グロブリン定常領域であってもよい。さらに、CH2及び/又はCH3に相当する非常に長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。すなわち、本発明の免疫グロブリン定常領域は、(1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、(2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、(3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、(4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、(5)1つ又は2つ以上の定常領域ドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ、(6)重鎖定常領域各ドメインと軽鎖定常領域の二量体であってもよい。免疫グロブリンFcフラグメントをはじめとする定常領域は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドであるので、薬物のキャリアとして安全に用いることができる。また、免疫グロブリンFcフラグメントは、免疫グロブリン分子全体に比べて相対的に分子量が少ないので、結合体の作製、精製及び収率面で有利なだけでなく、アミノ酸配列が抗体毎に異なるため、高い非均質性を示すFab部分を除去することにより、物質の同質性が非常に高くなり、血中抗原性を誘発する可能性が低くなるという効果も期待することができる。
【0108】
一方、免疫グロブリン定常領域は、ヒト起源、又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、ヒト起源であることが好ましい。また、免疫グロブリン定常領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来、又はそれらの組み合わせ(combination)もしくはそれらのハイブリッド(hybrid)による定常領域からなる群から選択されてもよい。ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来であることが好ましく、リガンド結合タンパク質の半減期を延長させることが知られているIgG由来であることが最も好ましい。本発明における免疫グロブリンFc領域は、同一起源のドメインからなる単鎖免疫グロブリンで構成された二量体又は多量体であってもよい。
【0109】
本発明における「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する際に、同一起源の単鎖免疫グロブリン定常領域(好ましくはFc領域)をコードするポリペプチドが異なる起源の単鎖ポリペプチドに結合することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgE Fcフラグメントからなる群から選択される少なくとも2つのフラグメントから二量体又は多量体を作製することができる。
【0110】
本発明における「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖免疫グロブリン定常領域(好ましくはFc領域)内に、少なくとも2つの異なる起源の免疫グロブリン定常領域に相当する配列が存在することを意味する。本発明においては、様々な形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなる群から選択される1つ~4つのドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジ領域をさらに含んでもよい。
【0111】
IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けられ、本発明においては、それらの組み合わせ又はそれらのハイブリダイゼーションも可能である。具体的には、IgG2及びIgG4サブクラスであり、より具体的には、補体依存性細胞傷害(CDC, Complementdependent cytotoxicity)などのエフェクター機能(effector function)のほとんどないIgG4のFc領域であってもよい。
【0112】
また、免疫グロブリン定常領域は、天然糖鎖、天然のものに比べて増加した糖鎖、天然のものに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリン定常領域糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法、微生物を用いた遺伝工学的手法などの通常の方法が用いられてもよい。ここで、免疫グロブリン定常領域から糖鎖が除去された免疫グロブリン定常領域は、補体(c1q)の結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が低減又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、糖鎖が除去されるか、非グリコシル化された免疫グロブリン定常領域は、薬物のキャリアとしての本来の目的に適する。よって、より具体的には、ヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc領域、すなわちヒト非グリコシル化IgG4 Fc領域を用いることができる。ヒト由来のFc領域は、ヒト生体において抗原として作用し、それに対する新規な抗体を生成するなどの好ましくない免疫反応を起こす非ヒト由来のFc領域に比べて好ましい。
【0113】
また、本発明の免疫グロブリン定常領域には、天然アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体(mutant)も含まれる。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322又は327~331番目のアミノ酸残基が修飾に適した部位として用いられてもよい。また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去された誘導体、天然FcからN末端のいくつかのアミノ酸が欠失された誘導体、天然FcのN末端にメチオニン残基が付加された誘導体など様々な種類の誘導体が用いられてもよい。さらに、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えばC1q結合部位が除去されてもよく、ADCC部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリン定常領域の配列誘導体を作製する技術は、特許文献1、2などに開示されている。
【0114】
分子の活性を全体的に変化させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は当該分野において公知である(非特許文献2)。最も一般的な交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミル化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0115】
前述した免疫グロブリン定常領域誘導体は、本発明の免疫グロブリン定常領域と同じ生物学的活性を示すが、免疫グロブリン定常領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させた誘導体であってもよい。また、このような免疫グロブリン定常領域は、ヒト、及びウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離した天然のものから得てもよく、形質転換された動物細胞もしくは微生物から得られた組換えたもの又はその誘導体であってもよい。ここで、天然のものから取得する方法においては、全免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離し、その後タンパク質分解酵素で処理することにより得ることができる。パパインで処理するとFab及びFcに切断され、ペプシンで処理するとpF’c及びF(ab)2に切断される。これらは、サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離することができる。
【0116】
ヒト由来の免疫グロブリン定常領域、微生物から得られた組換え免疫グロブリン定常領域であることが好ましい。
【0117】
本発明における「非ペプチド性重合体」とは、繰り返し単位が少なくとも2つ結合された生体適合性重合体を含み、「非ペプチド性リンカー」と混用される。前記繰り返し単位はペプチド結合を除く任意の共有結合により互いに連結される。本発明における非ペプチド性重合体は、末端に反応基を含み、結合体を構成する他の構成要素との反応により結合体を形成することができる。
【0118】
本発明における「非ペプチド性重合体連結部(linkage moiety)」とは、両末端に反応基を有する非ペプチド性重合体が各反応基を介して免疫グロブリンFc領域及び治療学的酵素に結合して形成した結合体内の一構成要素を意味する。
【0119】
具体的な一実施形態において、前記酵素結合体は、両末端に免疫グロブリンFc領域及び治療学的酵素に結合される反応基を含む非ペプチド性重合体を介して免疫グロブリンFc領域及び治療学的酵素が互いに共有結合的に連結されたものであってもよい。
【0120】
具体的には、特にこれらに限定されるものではないが、前記非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(polylactic acid)やPLGA(polylactic-glycolic acid)などの生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。より具体的な実施形態において、前記非ペプチド性重合体はポリエチレングリコールであってもよいが、これに限定されるものではない。また、当該分野に公知のこれらの誘導体や当該分野の技術水準で容易に作製できる誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0121】
本発明に用いられる非ペプチド性重合体の分子量は、0超~200kDaの範囲、具体的には1~100kDaの範囲、より具体的には1~50kDaの範囲、さらに具体的には1~20kDaの範囲、さらに具体的には3.4kDa~10kDaの範囲、さらに具体的には約3.4kDaであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0122】
具体的な一実施形態において、前記非ペプチド性重合体の両末端は、それぞれ免疫グロブリンFc領域のアミノ基又はチオール基、及び治療学的酵素のアミノ基又はチオール基に結合することができる。
【0123】
具体的には、前記非ペプチド性重合体は、両末端にそれぞれ免疫グロブリンFc及び治療学的酵素に結合される反応基、例えば治療学的酵素又は免疫グロブリンFc領域のN末端もしくはリシンに位置するアミノ基、又はシステインのチオール基に結合される反応基を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0124】
より具体的には、前記非ペプチド性重合体の反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0125】
前記アルデヒド基の例として、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
前記スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルカルボキシメチル、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド又はスクシンイミジルカーボネートが用いられてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0127】
前記非ペプチド性重合体は、前記反応基を介して免疫グロブリンFc及び治療学的酵素に連結され、非ペプチド性重合体連結部に変換されてもよい。
【0128】
また、アルデヒド結合による還元性アルキル化で生成された最終産物は、アミド結合により連結されたものよりはるかに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHではN末端に選択的に反応し、高いpH、例えばpH9.0の条件ではリシン残基と共有結合を形成することができる。
【0129】
本発明の非ペプチド性重合体の末端反応基は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。前記非ペプチド性重合体は、末端にアルデヒド反応基を有するものであってもよく、また前記非ペプチド性重合体は、末端にそれぞれアルデヒド基及びマレイミド反応基を有するものであってもよく、末端にそれぞれアルデヒド基及びスクシンイミド反応基を有するものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0130】
一例として、一末端にはマレイミド基、他の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を有してもよい。他の例として、一末端にはスクシンイミジル基、他の末端にはプロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を有してもよい。
【0131】
プロピオン側の末端にヒドロキシ反応基を有するポリ(エチレングリコール)を非ペプチド性重合体として用いる場合、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前述した様々な反応基として活性化するか、商業的に入手可能な修飾された反応基を有するポリ(エチレングリコール)を用いることにより、本発明の酵素結合体を製造することができる。
【0132】
具体的な一実施形態において、前記非ペプチド性重合体の反応基が治療学的酵素のシステイン残基、より具体的にはシステインの-SH基に連結されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0133】
マレイミド-PEG-アルデヒドを用いる場合、マレイミド基は治療学的酵素の-SH基にチオエーテル(thioether)結合により連結することができ、アルデヒド基は免疫グロブリンFcの-NH2基に還元的アルキル化反応により連結することができるが、これに限定されるものではなく、これは一例にすぎない。
【0134】
このような還元的アルキル化により、PEGの一末端に位置する酸素原子に免疫グロブリンFc領域のN末端アミノ基が-CH2CH2CH2-の構造を有するリンカー官能基を介して互いに連結され、-PEG-O-CH2CH2CH2NH-免疫グロブリンFcのような構造を形成することができ、チオエーテル結合により、PEGの一末端が治療学的酵素のシステインに位置する硫黄原子に連結された構造を形成することができる。前記チオエーテル結合は化学式(2)の構造を有するものであってもよい。
【0135】
・・・・(2)
【0136】
しかし、前記例に特に限定されるものではなく、これは一例にすぎない。
【0137】
また、前記結合体において、非ペプチド性重合体の反応基が免疫グロブリンFc領域のN末端に位置する-NH2に連結されたものであってもよいが、これは一例にすぎない。具体的には、本発明の治療学的酵素は、反応基を有する非ペプチド性重合体にN末端を介して連結されてもよい。
【0138】
本発明における「N末端」とは、ペプチドのアミノ末端を意味し、本発明の目的上、非ペプチド性重合体に結合することができる位置を意味する。例えば、これに限定されるものではないが、N末端の最末端のアミノ酸残基だけでなく、N末端周辺のアミノ酸残基が全て含まれてもよく、具体的には最末端から1~20番目のアミノ酸残基が含まれてもよい。
【0139】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症治療のための治療学的酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0140】
具体的には、前記酵素は前述した通りである。
【0141】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)Aと免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0142】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのアリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0143】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイズロニダーゼ(iduronidase)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0144】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0145】
本発明のさらに他の態様は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイミグルセラーゼ(imiglucerase)と免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体連結部を介して連結された酵素結合体を含むリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0146】
本発明における「リソソーム」、「リソソーム蓄積症」、「α-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)A」、「アリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)」、「イズロニダーゼ(iduronidase)」、「α-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)」、「イミグルセラーゼ(imiglucerase)」、「免疫グロブリンFc領域」、「非ペプチド性重合体連結部」、「酵素結合体」は前述した通りである。
【0147】
本発明における「予防」とは、前記リソソーム蓄積症治療のための治療学的酵素又はそれを含む組成物の投与によりリソソーム蓄積症の発症を抑制又は遅延させるあらゆる行為を意味し、「治療」とは、前記酵素又はそれを含む組成物の投与によりリソソーム蓄積症の症状を好転又は有利に変化させるあらゆる行為を意味する。
【0148】
本発明における「投与」とは、任意の適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は、特にこれらに限定されるものではないが、前記組成物を生体内標的に送達できるものであれば、一般的なあらゆる経路で投与することができ、例えば腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与などが挙げられる。
【0149】
本発明のリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)予防又は治療用薬学的組成物は、リソソーム蓄積症の原因となる欠乏又は不足酵素をリソソーム蓄積症の個体に投与することにより、リソソーム酵素の機能を回復させてリソソーム蓄積症を治療する効果を有する。
【0150】
本発明の具体的な一態様は、トランスサイトーシス(transcytosis)、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性を増加させる薬学的組成物を提供する。
【0151】
本発明の薬学的組成物は、治療学的酵素がFc領域に連結された酵素結合体とFcRn受容体の固有結合により前記酵素結合体が細胞膜を容易に通過できるようにすると共に、血管から組織へより効果的に到達できるようにする。
【0152】
よって、トランスサイトーシス(transcytosis)、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性が増加するという効果を有し、優れたリソソーム蓄積症治療効果を発揮する。
【0153】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含んでもよい。このような薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤は、非自然的に発生したものであってもよい。前記担体は、特にこれらに限定されるものではないが、経口投与の場合は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを用いることができ、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して用いることができ、局所投与用の場合は基剤、賦形剤、滑沢剤、保存剤などを用いることができる。
【0154】
本発明における「薬学的に許容」とは、治療効果を示す程度の十分な量と副作用を起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康状態、性別、薬物に対する感受性、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、同時に用いられる薬物などの医学分野における公知の要素により当業者が容易に決定することができる。
【0155】
本発明の組成物の剤形は、前述したような薬学的に許容される担体と混合して様々な形態に製造することができる。例えば、経口投与の場合は、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー剤などの形態に製造することができ、注射剤の場合は、使い捨てアンプル又は複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル剤、徐放性製剤などに剤形化することができる。
【0156】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油などが挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、滑沢剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0157】
さらに、本発明の薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液剤、非水性溶剤、凍結乾燥剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれかの剤形を有してもよい。
【0158】
さらに、前記組成物は、薬学的分野における通常の方法による患者の体内投与に適した単位投与型の製剤、具体的にはタンパク質医薬品の投与に有用な製剤形態に剤形化し、当業界で通常用いる投与方法を用いて経口、又は皮膚、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄膜腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、消化管内、局所、舌下、膣内もしくは直腸経路を含む非経口投与経路で投与することができるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
さらに、前記結合体は、生理食塩水や有機溶媒のように薬剤に許容された様々な担体(carrier)と混合して用いることができ、安定性や吸収性を向上させるために、グルコース、スクロース、デキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸(ascorbic acid)、グルタチオンなどの抗酸化剤(antioxidants)、キレート剤、低分子タンパク質、他の安定化剤(stabilizers)などを薬剤として用いることができる。
【0160】
本発明の薬学的組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重、疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類により決定される。
【0161】
本発明の組成物の総有効量は、単回投与量(single dose)で患者に投与してもよく、複数回投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与してもよい。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度に応じて有効成分の含有量を変えてもよい。具体的には、本発明の結合体の総用量は、1日体重1kg当たり約0.0001mg~500mgであることが好ましい。しかし、前記結合体の用量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌、排泄率などの様々な要因を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるので、これらを考慮すると、当該分野における通常の知識を有する者であれば、前記本発明の組成物の特定の用途に応じた適切な有効投与量を決定することができるであろう。本発明による薬学的組成物は、本発明の効果を奏するものであれば、その剤形、投与経路及び投与方法が特に限定されるものではない。
【0162】
本発明のさらに他の態様は、前記酵素結合体を含む薬学的組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、リソソーム蓄積症の予防又は治療方法を提供する。
【0163】
具体的な態様として、α-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)A酵素結合体を含む薬学的組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、リソソーム蓄積症の予防又は治療方法を提供する。
【0164】
また、アリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)酵素結合体を含む薬学的組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、リソソーム蓄積症の予防又は治療方法を提供する。
【0165】
さらに、イズロニダーゼ(iduronidase)酵素結合体を含む薬学的組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、リソソーム蓄積症の予防又は治療方法を提供する。
【0166】
さらに、α-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)酵素結合体を含む薬学的組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、リソソーム蓄積症の予防又は治療方法を提供する。
【0167】
さらに、イミグルセラーゼ(imiglucerase)酵素結合体を含む薬学的組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、リソソーム蓄積症の予防又は治療方法を提供する。
【0168】
前記酵素結合体、それを含む組成物、リソソーム蓄積症、予防及び治療は前述した通りである。
【0169】
本発明における「個体」とは、リソソーム蓄積症の疑いのある個体であり、前記リソソーム蓄積症の疑いのある個体は、当該疾患が発症したか、発症する可能性のある、ヒトをはじめとしてマウス、家畜などが含まれる哺乳動物を意味するが、本発明の結合体又はそれを含む前記組成物で治療可能な個体は限定されることなく含まれる。
【0170】
本発明の方法は、前記結合体を含む薬学的組成物を薬学的有効量で投与することを含んでもよい。適切な総1日使用量は正しい医学的判断の範囲内で担当医により決定され、1回又は数回に分けて投与することができる。しかし、発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては他の製剤が用いられるか否か、具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食餌、投与時間、投与経路、組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と共に又は同時に投与される薬物をはじめとする様々な因子や、医薬分野で周知の類似の因子に応じて異なる量であることが好ましい。
【0171】
本発明のさらに他の態様は、前記酵素結合体を含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用組成物を提供する。
【0172】
具体的な態様として、α-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)A酵素結合体を含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用組成物を提供する。
【0173】
また、アリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)酵素結合体を含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用組成物を提供する。
【0174】
さらに、イズロニダーゼ(iduronidase)酵素結合体を含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用組成物を提供する。
【0175】
さらに、α-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)酵素結合体を含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用組成物を提供する。
【0176】
さらに、イミグルセラーゼ(imiglucerase)酵素結合体を含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用組成物を提供する。
【0177】
本発明のさらに他の態様は、前記酵素結合体又はそれを含む組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加方法を提供する。
【0178】
具体的な態様として、α-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)A酵素結合体又はそれを含む組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加方法を提供する。
【0179】
また、アリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)酵素結合体又はそれを含む組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加方法を提供する。
【0180】
さらに、イズロニダーゼ(iduronidase)酵素結合体又はそれを含む組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加方法を提供する。
【0181】
さらに、α-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)酵素結合体又はそれを含む組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加方法を提供する。
【0182】
さらに、イミグルセラーゼ(imiglucerase)酵素結合体又はそれを含む組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、酵素のトランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加方法を提供する。
【0183】
前記酵素結合体、それを含む組成物、トランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性は前述した通りである。
【0184】
本発明のさらに他の態様は、前記酵素結合体における、リソソーム蓄積症の予防又は治療用途を提供する。
【0185】
具体的な態様として、α-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)A酵素結合体における、リソソーム蓄積症の予防又は治療用途を提供する。
【0186】
また、アリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)酵素結合体における、リソソーム蓄積症の予防又は治療用途を提供する。
【0187】
さらに、イズロニダーゼ(iduronidase)酵素結合体における、リソソーム蓄積症の予防又は治療用途を提供する。
【0188】
さらに、α-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)酵素結合体における、リソソーム蓄積症の予防又は治療用途を提供する。
【0189】
さらに、イミグルセラーゼ(imiglucerase)酵素結合体における、リソソーム蓄積症の予防又は治療用途を提供する。
【0190】
前記酵素結合体、リソソーム蓄積症、予防及び治療は前述した通りである。
【0191】
本発明のさらに他の態様は、前記酵素結合体又はそれを含む組成物の酵素における、トランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用途を提供する。
【0192】
具体的な態様として、α-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)A酵素結合体又はそれを含む組成物の酵素における、トランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用途を提供する。
【0193】
また、アリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)酵素結合体又はそれを含む組成物の酵素における、トランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用途を提供する。
【0194】
さらに、イズロニダーゼ(iduronidase)酵素結合体又はそれを含む組成物の酵素における、トランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用途を提供する。
【0195】
さらに、α-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)酵素結合体又はそれを含む組成物の酵素における、トランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用途を提供する。
【0196】
さらに、イミグルセラーゼ(imiglucerase)酵素結合体又はそれを含む組成物の酵素における、トランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性の増加用途を提供する。
【0197】
前記酵素結合体、それを含む組成物、トランスサイトーシス、生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性は前述した通りである。
【0198】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のための治療学的酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記酵素と非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、化学式(1)で表される酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0199】
X-La-F・・・(1)
【0200】
ここで、Xはリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のための酵素であり、Lは非ペプチド性重合体であり、aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、FはXの生体内半減期を延長させることのできる物質である。
【0201】
具体的には、前記酵素は前述した通りである。
【0202】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)A酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記酵素と非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、化学式(1)で表される酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0203】
X-La-F・・・(1)
【0204】
ここで、Xはリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-ガラクトシダーゼ(alpha-galactosidase)A酵素であり、Lは非ペプチド性重合体であり、aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、FはXの生体内半減期を延長させることのできる物質である。
【0205】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのアリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記酵素と非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、化学式(1)で表される酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0206】
X-La-F・・・(1)
【0207】
ここで、Xはリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのアリールスルファターゼB(arylsulfatase B, ARSB)酵素であり、Lは非ペプチド性重合体であり、aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、FはXの生体内半減期を延長させることのできる物質である。
【0208】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイズロニダーゼ(iduronidase)酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記酵素と非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、化学式(1)で表される酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0209】
X-La-F・・・(1)
【0210】
ここで、Xはリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイズロニダーゼ(iduronidase)酵素であり、Lは非ペプチド性重合体であり、aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、FはXの生体内半減期を延長させることのできる物質である。
【0211】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記酵素と非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、化学式(1)で表される酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0212】
X-La-F・・・(1)
【0213】
ここで、Xはリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのα-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)酵素であり、Lは非ペプチド性重合体であり、aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、FはXの生体内半減期を延長させることのできる物質である。
【0214】
本発明のさらに他の態様は、(a)リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイミグルセラーゼ(imiglucerase)酵素と非ペプチド性重合体を連結するステップと、(b)前記酵素と非ペプチド性重合体が連結された連結体を、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質に連結するステップとを含む、化学式(1)で表される酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0215】
X-La-F・・・(1)
【0216】
ここで、Xはリソソーム蓄積症(lysosomal storage disease, LSD)治療のためのイミグルセラーゼ(imiglucerase)酵素であり、Lは非ペプチド性重合体であり、aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、FはXの生体内半減期を延長させることのできる物質である。
【0217】
本発明において、前記Fは、高分子重合体、脂肪酸、コレステロール、アルブミン及びそのフラグメント、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体フラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカライド(saccharide)、ヘパリン及びエラスチンからなる群から選択されるものであってもよく、より具体的には、前記FcRn結合物質は免疫グロブリンFc領域であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0218】
前記Fは、Xに共有化学結合又は非共有化学結合により互いに結合されたものであってもよく、Lを介して、Xに共有化学結合、非共有化学結合又はそれらの組み合わせにより互いに結合されたものであってもよい。
【0219】
また、前記Lは、ペプチド性重合体又は非ペプチド性重合体であってもよい。
【0220】
前記Lがペプチド性重合体である場合、1つ以上のアミノ酸を含んでもよく、例えば1個~1000個のアミノ酸を含んでもよいが、特にこれらに限定されるものではない。本発明において、FとXを連結するために、公知の様々なペプチドリンカーが本発明に用いられ、例えば[GS]xリンカー、[GGGS]xリンカー、[GGGGS]xリンカーなどが挙げられ、ここで、xは1以上の自然数であってもよい。しかし、前記例に限定されるものではない。
【0221】
前記Lがペプチド性重合体である場合、前記非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよく、より具体的には、ポリエチレングリコールであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0222】
また、前記(a)ステップにおける非ペプチド性重合体の反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択されるものであってもよく、より具体的には、前記アルデヒド基は、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基であってもよく、前記スクシンイミド誘導体は、スクシンイミジルカルボキシメチル、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド又はスクシンイミジルカーボネートであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0223】
また、前記非ペプチド性重合体は、末端にアルデヒド反応基を有するものであってもよく、両末端にそれぞれアルデヒド基及びマレイミド反応基を有するものであってもよく、両末端にそれぞれアルデヒド基及びスクシンイミド反応基を有するものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0224】
また、本発明の具体的な態様は、前記酵素のN末端に非ペプチド性重合体連結部が結合された結合体を分離するステップをさらに含む、酵素結合体を製造する方法を提供する。
【0225】
本発明の製造方法により製造された酵素結合体は、治療学的酵素をFc領域に連結させることにより、前記Fc領域とFcRn受容体の固有結合により酵素結合体が細胞膜を容易に通過できるようにすると共に、血管から組織へより効果的に到達できるようにする。
【0226】
このような酵素の増加したトランスサイトーシス、生体利用率及び組織分布性は、全て酵素結合体に含まれる、リソソーム蓄積症の治療のための酵素が体内で酵素活性を保持しつつ効果的な標的疾患の治療効果を発揮できるように作用する。
【0227】
また、本発明の酵素結合体は、酵素又はその誘導体(analog)の半減期を延長させるものであってもよい。
【0228】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は本発明をより具体的に説明するためのものにすぎず、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0229】
酵素の生産
持続型酵素を生産するために、動物細胞発現ベクターを導入した動物細胞を培養して精製した。
【0230】
本発明において、結合体の製造のために用いた酵素は、アガルシダーゼβ(Agalsidase beta)、イミグルセラーゼ(Imiglucerase)、ガルスルファーゼ(Galsufase)及びラロニダーゼ(Laronidase)である。
【実施例2】
【0231】
酵素結合体の製造-1
免疫グロブリンFc領域に非ペプチド性重合体を結合して精製した。
【0232】
実施例1で精製した酵素のN末端に非ペプチド性重合体を共有結合させた。ここで、非ペプチド性重合体は、両側にアルデヒド(aldehyde, -CHO)基を有する線状(linear)重合体であり、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol, (CH2CH2O)n)骨格(backbone)を有する。骨格の数によって非ペプチド性重合体の大きさが決定され、非ペプチド性重合体の反応基であるアルデヒド(aldehyde, -CHO)は、タンパク質の構成要素であるリシン(lysine)基の-NH2又はN末端の-NH2と共有結合する。非ペプチド性重合体のアルデヒド(aldehyde, -CHO)基は特定反応条件下でN末端の-NH2と特異的に反応し、反応後の精製過程によりN末端に特異的に共有結合した非ペプチド性重合体酵素を得る。
【実施例3】
【0233】
酵素結合体の製造-2
実施例2で精製した非ペプチド性重合体に結合した免疫グロブリンFc領域に実施例1で精製した酵素を結合させた。
【0234】
前記酵素は、非ペプチド性重合体の結合位置によって活性が異なりうる。すなわち、非ペプチド性重合体と酵素の位置特異的結合により体内半減期又は活性が向上しうる。よって、本発明の酵素の構造に応じて、非ペプチド性重合体を結合させる位置を特定して結合体を製造する。
【0235】
実施例3-1:アガルシダーゼ(Agalsidase)と免疫グロブリンFcをポリエチレングリコールで連結した結合体の製造
アガルシダーゼβを含む結合体を次のように製造した。
【0236】
前述したように作製したアルデヒド-ポリエチレングリコール(Mw=10000Da)-アルデヒド(ALD-PEG-ALD)(SUNBRIGHT DE-100AL2, NOF CORPORATION, Japan)リンカーをアガルシダーゼのN末端に結合させるために、アガルシダーゼβとALD-PEG-ALDのモル比を1:50とし、アガルシダーゼβの濃度を10mg/mLとして4℃で約2時間反応させた。ここで、反応は100mMリン酸ナトリウム、pH5.6で行い、還元剤として20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応液から、10mMリン酸ナトリウム(pH6.0)バッファーと塩化ナトリウムの濃度勾配を用いたSource 15Q(GE, 米国)カラムを用いて、未反応のアガルシダーゼとモノ結合したアガルシダーゼβを精製した。
【0237】
次に、前述したように精製したポリエチレングリコールリンカーに結合されたアガルシダーゼβと免疫グロブリンFcフラグメントのモル比を1:10とし、総タンパク質濃度を10mg/mLとして4~8で12~16時間反応させた。ここで、反応液はリン酸カリウム(pH6.0)であり、還元剤として20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応終了後に、前記反応液を10mMリン酸ナトリウム(pH6.0)バッファーと塩化ナトリウムの濃度勾配を用いたSource 15Q(GE, 米国)カラムと、20mMトリス(pH7.5)、5%(v/v)グリセリンとクエン酸塩(pH4.0)、塩化ナトリウム、10%グリセリンバッファーの濃度勾配を用いたProtein A(GE, 米国)に適用し、最後に塩化ナトリウムを含むリン酸ナトリウムバッファーを用いたSuperdexTM 200(GE, 米国)に適用し、アガルシダーゼβに免疫グロブリンFcがポリエチレングリコールリンカーにより共有結合で連結された結合体を精製した。具体的には、実施例2で精製した非ペプチド性重合体酵素と免疫グロブリンFc領域を非ペプチド性重合体の未反応の他方のアルデヒド(aldehyde, -CHO)基と免疫グロブリンFc領域のN末端の-NH2基に共有結合させ、共有結合反応後の精製により酵素結合体の製造を完了した。
【0238】
最終的に製造されたアガルシダーゼ-ポリエチレングリコールリンカー-免疫グロブリンFc結合体は、アガルシダーゼが2本の鎖からなる免疫グロブリンFcの一方の鎖にポリエチレングリコールリンカーで連結された形態である。
【0239】
実施例3-2:イミグルセラーゼ(Imiglucerase)と免疫グロブリンFcをポリエチレングリコールで連結した結合体の製造
イミグルセラーゼを含む結合体を次のように製造した。
【0240】
アルデヒド-ポリエチレングリコール(Mw=10000Da)-アルデヒド(ALD-PEG-ALD)(SUNBRIGHT DE-100AL2, NOF CORPORATION, Japan)リンカーをイミグルセラーゼのN末端に結合させるために、イミグルセラーゼとALD-PEG-ALDのモル比を1:50とし、イミグルセラーゼの濃度を1mg/mLとして25℃で約1時間反応させた。ここで、反応は100mMリン酸カリウム(Potassium phosphate)、pH6.0で行い、還元剤として20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応液から、20mMリン酸ナトリウム(Sodium phosphate)(pH6.0)、2.5%(v/v)グリセリンを含むバッファーと塩化ナトリウムの濃度勾配を用いたSource 15S(GE, 米国)カラムを用いて、未反応のイミグルセラーゼとモノ結合したイミグルセラーゼを精製した。
【0241】
次に、前述したように精製されたポリエチレングリコールリンカーに結合されたイミグルセラーゼと免疫グロブリンFcフラグメントのモル比を1:50とし、総タンパク質濃度を40mg/mLとして4~8で12~16時間反応させた。ここで、反応液は100mMリン酸カリウム(Potassium phosphate)(pH6.0)であり、還元剤として20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応終了後に、前記反応液を10mMクエン酸塩(Sodium citrate)(pH5.0)バッファーと塩化ナトリウム(Sodium chloride)の濃度勾配を用いたSource 15S(GE, 米国)カラムと、20mMトリス(Tris)(pH7.5)、5%(v/v)グリセリンと100mMクエン酸ナトリウム(Sodium citrate)(pH3.7)、塩化ナトリウム、10%グリセリンバッファーの濃度勾配を用いたProtein A(GE, 米国)に適用し、最後に塩化ナトリウムを含む50mMクエン酸ナトリウムバッファー(pH6.1)を用いたSuperdexTM 200(GE, 米国)に適用し、イミグルセラーゼに免疫グロブリンFcがポリエチレングリコールリンカーにより共有結合で連結された結合体を精製した。
【0242】
具体的には、前述したように精製した非ペプチド性重合体酵素と免疫グロブリンFc領域を非ペプチド性重合体の未反応の他方のアルデヒド(aldehyde, -CHO)基と免疫グロブリンFc領域のN末端の-NH2基に共有結合させ、共有結合反応後の精製により酵素結合体の製造を完了した。
【0243】
最終的に製造されたイミグルセラーゼ-ポリエチレングリコールリンカー-免疫グロブリンFc結合体は、イミグルセラーゼ単量体が2本の鎖からなる免疫グロブリンFcの一方の鎖にポリエチレングリコールリンカーで連結された形態である。
【0244】
実施例3-3:ガルスルファーゼ(Galsulfase)と免疫グロブリンFcをポリエチレングリコールで連結した結合体の製造
ガルスルファーゼを含む結合体を次のように製造した。
【0245】
アルデヒド-ポリエチレングリコール-アルデヒド(Aldehyde-Polyethyleneglycol-Aldehdye, 10kDa)(SUNBRIGHT DE-100AL2, NOF CORPORATION, Japan)リンカーをガルスルファーゼのN末端に結合させるために、ガルスルファーゼとALD-PEG-ALDのモル比を1:20とし、ガルスルファーゼの濃度を1mg/mLとして25℃で約2時間反応させた。ここで、反応は12mMリン酸ナトリウム(Sodium phosphate)、150mM塩化ナトリウム、pH5.8で行い、還元剤として20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応液から、20mMトリス(Tris, pH7.0)バッファーと塩化ナトリウムの濃度勾配を用いたSource 15Q(GE, 米国)カラムと、1.8M硫酸アンモニウムで平衡化したSource ISO(GE, 米国)カラムを用いて、未反応のガルスルファーゼとモノPEGガルスルファーゼを精製した。
【0246】
次に、前述したように精製されたポリエチレングリコールリンカーに結合されたガルスルファーゼと免疫グロブリンFcフラグメントのモル比を1:20とし、総タンパク質濃度を50mg/mLとして4~8で12~16時間反応させた。ここで、反応液はリン酸カリウム(Potassium phosphate, pH6.0)であり、還元剤として20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応終了後に、前記反応液をトリス(Tris, pH7.0)バッファーと塩化ナトリウム(Sodium chloride)の濃度勾配を用いたSource 15Q(GE, 米国)カラムと、20mMトリス(Tris, pH7.0)、5%(v/v)グリセリン(Glycerol)とクエン酸塩(Sodium citrate, pH3.0)、10%グリセリン(Glycerol)バッファーの濃度勾配を用いたProtein A(GE, 米国)に適用し、最後に1.8M硫酸アンモニウム(Ammonium sulfate)で平衡化されたSource ISO(GE, 米国)カラムを用いて、ガルスルファーゼに免疫グロブリンFcがポリエチレングリコールリンカーにより共有結合で連結された結合体を精製した。
【0247】
具体的には、前述したように精製した非ペプチド性重合体酵素と免疫グロブリンFc領域を非ペプチド性重合体の未反応の他方のアルデヒド(aldehyde, -CHO)基と免疫グロブリンFc領域のN末端の-NH2基に共有結合させ、共有結合反応後の精製により酵素結合体の製造を完了した。
【0248】
最終的に製造されたガルスルファーゼ-ポリエチレングリコールリンカー-免疫グロブリンFc結合体は、ガルスルファーゼ単量体が2本の鎖からなる免疫グロブリンFcの一方の鎖にポリエチレングリコールリンカーで連結された形態である。
【0249】
実施例3-4:ラロニダーゼ(Laronidase)と免疫グロブリンFcをポリエチレングリコールで連結した結合体の製造
ラロニダーゼを含む結合体を次のように製造した。
【0250】
10kDaのアルデヒド-ポリエチレングリコール-アルデヒド(10kDa,ALD-PEG-ALD)リンカー(SUNBRIGHT DE-100AL2, NOF CORPORATION, Japan)をラロニダーゼのN末端に結合させるために、ラロニダーゼと10kDaのALD-PEG-ALDのモル比を1:100とし、ラロニダーゼの濃度を0.58mg/mLとして4~8℃で約16時間反応させた。ここで、反応は100mMリン酸カリウム(Potassium phosphate)、pH6.0で行い、還元剤として10mMシアノ水素化ホウ素ナトリウム(Sodium cyanoborohydride, SCB)を添加した。反応液から、リン酸カリウム(pH6.0)と塩化ナトリウム(Sodium chloride)の濃度勾配を用いたSource 15S(GE, 米国)カラムと、リン酸カリウム(pH6.0)と硫酸アンモニウム(Ammonium sulfate)の濃度勾配を用いたSource 15ISO(GE, 米国)を用いて、ポリエチレングリコールリンカーにモノ結合されたラロニダーゼを精製した。
【0251】
次に、前述したように精製されたポリエチレングリコールリンカーに結合されたラロニダーゼと免疫グロブリンFcフラグメントのモル比を1:10とし、総タンパク質濃度を20mg/mLとして4~8で約14時間反応させた。ここで、反応液は100mMリン酸カリウム(Potassium phosphate)、pH6.0であり、還元剤として10mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応終了後に、前記反応液をリン酸カリウム(pH6.0)バッファーと塩化ナトリウム(Sodium chloride)の濃度勾配を用いたSource 15S(GE, 米国)カラムに適用し、最後に20mMトリス(pH7.5)、5%(v/v)グリセリン(Glycerol)と100mMクエン酸塩(Citric acid monohydrate)(pH3.7)、10%グリセリン及び100mMクエン酸塩(pH4.0)、10%グリセリンバッファーの濃度勾配を用いたProtein A(GE, 米国)に適用し、ラロニダーゼに免疫グロブリンFcがポリエチレングリコールリンカーにより共有結合で連結された結合体を精製した。
【0252】
具体的には、前述したように精製した非ペプチド性重合体酵素と免疫グロブリンFc領域を非ペプチド性重合体の未反応の他方のアルデヒド(aldehyde, -CHO)基と免疫グロブリンFc領域のN末端の-NH2基に共有結合させ、共有結合反応後の精製により酵素結合体の製造を完了した。
【0253】
最終的に製造されたラロニダーゼ-ポリエチレングリコールリンカー-免疫グロブリンFc結合体は、ラロニダーゼ単量体が2本の鎖からなる免疫グロブリンFcの一方の鎖にポリエチレングリコールリンカーで連結された形態である。
【実施例4】
【0254】
酵素結合体の薬物動力学実験
本発明者らは、前記実施例で製造した酵素結合体の薬物動力学を調査することにより結合体の効果を確認しようとした。
【0255】
実施例4-1:イミグルセラーゼ(imiglucerase)持続性結合体のPK確認
本発明者らは、前記実施例で製造したイミグルセラーゼ持続性結合体のPK活性を確認した。
【0256】
各群において採血時点当たり3匹のICRマウス(mouse)でイミグルセラーゼ(Imiglucerase, 対照群)と前記実施例で製造したイミグルセラーゼ持続型結合体の血液内安定性及び薬物動力学係数を比較した。
【0257】
具体的には、対照群と試験群にイミグルセラーゼを基準に各1.5mg/kgずつ静脈内注射し、その後静脈内注射投与群において注射後0、2、5、10、20及び60分後に採血し、血清中のタンパク質量をイミグルセラーゼに対する抗体を用いてELISA方法で測定した。
【0258】
薬物動力学分析の結果、イミグルセラーゼ持続型結合体は対照群に比べて血中半減期、AUC(area under curve)がどちらも増加し、特に血中半減期は4倍以上増加した。前記AUCは、薬物分子の体内取り込みの程度を示す。
【0259】
実施例4-2:アガルシダーゼ持続性結合体のPK確認
各群において採血時点当たり1又は3匹のICRマウス(mouse)でアガルシダーゼβ(Agalsidase beta, 対照群)と前記実施例で製造したアガルシダーゼβ持続型結合体の血液内安定性及び薬物動力学係数を比較した。
【0260】
具体的には、対照群と試験群にアガルシダーゼを基準に各1.0mg/kgずつ静脈内及び皮下注射した。対照群静脈内及び皮下注射投与群は注射後0、0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4、8、24及び48時間後に採血した。試験群静脈内注射群は注射後0、0.25、0.5、1、2、4、8、24、48、72、96、120、144、168時間後に採血し、皮下注射投与群は注射後0、1、2、4、8、24、48、72、96、120、144及び168時間後に採血した。血清中のタンパク質量をアガルシダーゼに対する抗体を用いてELISA方法で測定した。
【0261】
アガルシダーゼβ持続性結合体の場合、対照群に比べて血中半減期、Cmax、AUCが全て増加した。また、アガルシダーゼβのBAが3.3%であるのに対して、アガルシダーゼβ持続性結合体は58.2%と約18倍以上も高い生体利用率を示すことが確認された(図1)。
【0262】
maxは最高薬物濃度を意味し、AUC(area under curve)は薬物分子の体内取り込みの程度を意味し、BA(Bioavailability)は生体内利用率を意味する。
【0263】
本発明者らは、製造された各酵素結合体のIn vitro活性を次のように確認しようとした。
【実施例5】
【0264】
アガルシダーゼ酵素結合体の活性確認
実施例5-1:アガルシダーゼ持続型結合体のIn vitro酵素活性
アガルシダーゼβの持続型結合体の製造による酵素活性の変化を測定すべくin vitro酵素活性測定を行った。
【0265】
具体的には、酵素基質として知られる4-Nitrophenyl-a-D-galactopyranosideをアガルシダーゼβ及びアガルシダーゼβ持続型結合体と37℃で20分間反応させ、その後最終的に生成された4-Nitrophenolの吸光度を測定することにより、当該物質の酵素活性を測定した。
【0266】
その結果、アガルシダーゼβとアガルシダーゼβ持続型結合体の酵素比活性(specific activity)がそれぞれ63.6μmol/min/μg、56.3μmol/min/μgであることが確認された。結論として、遊離アガルシダーゼβに比べて、アガルシダーゼβ持続型結合体の酵素活性は88.6%とアガルシダーゼβ持続型結合体の製造による酵素活性の減少は僅かであることが確認された(図2)。
【0267】
実施例5-2:アガルシダーゼ持続型結合体の細胞内吸収活性
アガルシダーゼβはマンノース-6-リン酸受容体(M6PR, mannose-6-phosphate receptor)により細胞に吸収されて作用するので、アガルシダーゼβ持続型結合体の製造が細胞吸収活性に影響を及ぼすか否かを次のように確認した。
【0268】
具体的には、まずM6PRが発現することが知られているCCD986SK cell(human skin fibroblast)をアガルシダーゼβ及びアガルシダーゼβ持続型結合体でそれぞれ処理し、その後37℃で細胞内吸収を誘導した。24時間後に、細胞内存在するアガルシダーゼβ及びアガルシダーゼβ持続型結合体を酵素活性測定法により確認した。
【0269】
その結果、アガルシダーゼβ持続型結合体の細胞内吸収活性(Kuptake=29.3nM)は、アガルシダーゼβの細胞内吸収活性(Kuptake=13.7nM)の約47%であることが確認された。このようなM6PRの結合及び細胞内吸収活性の減少(vs.アガルシダーゼβ)は持続型結合体のsteric hindranceの影響であり、持続型結合体の製造による結合(conjugation)で改善されたPKにより補償される(図3)。
【0270】
実施例5-3:アガルシダーゼ持続型結合体のM6P受容体結合力の確認
アガルシダーゼβ及びアガルシダーゼβ持続型結合体のmannose phosphate 6受容体(M6PR)結合力の確認のために、surface plasmon resonance(BIACORE T200, GE healthcare)を用いて分析した。
【0271】
具体的には、M6PRをCM5 chipにアミンカップリングで固定化した。その後、アガルシダーゼをHBS-EPバッファーで200nM~12.5nMになるように希釈し、M6PRを固定化したチップに10分間結合させてから6分間解離させ、その結合力をBIAevaluation softwareで計算した。アガルシダーゼβ持続型結合体の相対的な結合力をアガルシダーゼと比較して数値化した。
【0272】
その結果、アガルシダーゼβ持続型結合体はアガルシダーゼβの約68%の受容体結合力を有することが確認された(表1)。アガルシダーゼβ持続型結合体のM6PRに対する結合力が相対的に低いのは、生理活性ポリペプチドがFc領域と融合タンパク質を形成すると一般的に自己受容体に対する結合力が低下する傾向を示すのと同じ原因であると考えられる。本発明の作用原理についての特定の理論に束縛されるものではなく、単に発明の理解を助けるために説明すると、免疫グロブリンFcとアガルシダーゼβが共有結合されることにより、アガルシダーゼ部位が立体障害(steric hindrance)を受けて受容体に対する結合速度定数(association rate constant, ka)が減少したからであると考えられる。一度結合された持続型結合体の場合、受容体における解離速度定数(dissociation rate constant, kd)は結合体を形成しない遊離アガルシダーゼと差がないことが確認された。
【0273】
【表1】
【0274】
本発明のアガルシダーゼβ持続型結合体の活性を確認した結果をまとめると次の通りである。
【0275】
【表2】
【実施例6】
【0276】
イミグルセラーゼ酵素結合体の活性確認
実施例6-1:イミグルセラーゼ持続型結合体のIn vitro酵素活性
イミグルセラーゼ(Imiglucerase, 対照群)と前述したように製造したイミグルセラーゼ持続型結合体(試験群)のIn vitro酵素活性を比較した。
【0277】
具体的には、酵素活性の測定のために、p-Nitrophenyl β-D-glucopyranosideを基質として用いて、酵素作用により生成されたpNP(p-Nitrophenol)を定量して単位時間当たりに生成される産物の量を計算することにより比活性(Specific activity)を示した。対照群と試験群をイミグルセラーゼを基準にそれぞれ0.1μg/mLの濃度で処理した。基質は20、16、12、8、4、2、1及び0mMで処理し、37℃で45分間反応させた。最終的に生成されたpNPの量は、405nmで吸光度を測定することにより定量した。定量したpNPの濃度、反応体積及び反応時間を用いてμmole/min/mgを計算し、Michaelis-Menten式のx値には処理した基質の濃度を代入し、y値にはその計算した値を代入して最終的に酵素活性のVmax(μmole/min/mg=U/mg)値を算出した。
【0278】
その結果、イミグルセラーゼとイミグルセラーゼ持続型結合体の酵素活性がそれぞれ48.5U/mg、45.2U/mgであることが確認された。結論として、対照群に比べて、イミグルセラーゼ持続型結合体の酵素活性は93%であり、免疫グロブリンFc結合による酵素活性の減少はないことが確認された(図4)。
【0279】
実施例6-2:イミグルセラーゼ持続型結合体のM6P受容体結合力の確認
M6PRに対する結合力を確認するために、SPR(surface Plasmon resonance, BIACORE T200)を用いて、イミグルセラーゼ(対照群)と前述したように製造したイミグルセラーゼ持続型結合体(試験群)の結合力を確認した。M6PRはRnd systemsから購入し、CM5チップにアミン結合法を用いて固定化し、その後対照群は100nM~6.24nM、試験群は200nM~12.5nMの濃度で流してその結合力を確認した。
【0280】
pH7.5のHEPESバッファー(HBS-EP)をランニングバッファー(running buffer)として用いて、全ての試験物質はランニングバッファーで希釈して欠陥を誘導し、解離もランニングバッファーで行った。チップに固定化したM6PRに試験物質を10分間流して結合を誘導し、その後6分間の解離過程を経た。
【0281】
その後、異なる濃度の対照群又は試験群を結合させるために、M6PRに結合した結合体に5mM NaoH/50mM NaClを約30秒間流した。M6PRとイミグルセラーゼ又はイミグルセラーゼ持続型結合体との結合力は、BIAevaluationプログラムを用いて分析した。Ka(association rate constant)、Kd(dissociation rate constant)及びKD(affinity constant)は1:1 Langmuir binding modelを用いて算出した。
【0282】
その結果、免疫グロブリンFc結合による解離定数に大差はないが、結合定数に差が生じることが確認された。よって、対照群に比べて、試験群の結合力が約22%に減少する結果を示した(表3)。イミグルセラーゼ持続型結合体のM6PRに対する結合力が相対的に低いのは、生理活性ポリペプチドがFc領域と融合タンパク質を形成すると一般的に自己受容体に対する結合力が低下する傾向を示すのと同じ原因であると考えられる。本発明の作用原理についての特定の理論に束縛されるものではなく、単に発明の理解を助けるために説明すると、免疫グロブリンFcとイミグルセラーゼが共有結合されることにより、イミグルセラーゼ部位が立体障害(steric hindrance)を受けて受容体に対する結合速度定数(association rate constant, ka)が減少したからであると考えられる。一度結合された持続型結合体の場合、受容体における解離速度定数(dissociation rate constant, kd)は結合体を形成しない遊離イミグルセラーゼと差がないことが確認された(表3)。
【0283】
【表3】
【0284】
本発明のイミグルセラーゼ持続型結合体の活性を確認した結果をまとめると次の通りである。
【0285】
【表4】
【実施例7】
【0286】
ガルスルファーゼ酵素結合体の活性確認
実施例7-1:ガルスルファーゼ持続型結合体のIn vitro酵素活性
ガルスルファーゼ(Galsulfase, 対照群)と前述したように製造したガルスルファーゼ持続型結合体(試験群)のIn vitro酵素活性を比較した。
【0287】
具体的には、酵素活性の測定のために、4-Methylumbelliferyl sulfate(4-MUS)を基質として用いて、37℃で20分間の酵素作用により生成された4-Methylumbelliferone(4-MU)の蛍光を測定することにより、当該物質の酵素活性を測定した。
【0288】
その結果、ガルスルファーゼとガルスルファーゼ持続型結合体の酵素活性がそれぞれ72.3μmole/min/mg、81.3μmole/min/mgであることが確認された。結論として、対照群に比べて、ガルスルファーゼ持続型結合体の酵素活性は112%であり、免疫グロブリンFc結合による酵素活性の減少はないことが確認された(図5)。
【0289】
実施例7-2:ガルスルファーゼ持続型結合体のM6P受容体結合力の確認
M6PRに対する結合力を確認するために、SPR(surface Plasmon resonance, BIACORE T200)を用いて、ガルスルファーゼ(Galsulfase, 対照群)と前述したように製造したガルスルファーゼ持続型結合体(試験群)の結合力を確認した。
【0290】
具体的には、M6PRはRnd systemsから購入し、CM5チップにアミン結合法を用いて固定化し、その後試験物質を100nM~6.24nMの濃度で流してその結合力を確認した。
【0291】
pH7.5のHEPESバッファー(HBS-EP)をランニングバッファー(running buffer)として用いて、全ての試験物質はランニングバッファーで希釈して欠陥を誘導し、解離もランニングバッファーで行った。チップに固定化したM6PRに試験物質を10分間流して結合を誘導し、その後6分間の解離過程を経た。その後、異なる濃度の対照群又は試験群を結合させるために、M6PRに結合した結合体に5mM NaoH/50mM NaClを約30秒間流した。M6PRとガルスルファーゼ又はガルスルファーゼ持続型結合体との結合力は、BIAevaluationプログラムを用いて分析した。Ka(association rate constant)、Kd(dissociation rate constant)及びKD(affinity constant)は1:1 Langmuir binding modelを用いて算出した。
【0292】
その結果、免疫グロブリンFc結合による解離定数に大差はないが、結合定数に差が生じることが確認された。よって、対照群に比べて、試験群の結合力が約25%に減少する結果を示した(表5)。ガルスルファーゼ持続型結合体のM6PRに対する結合力が相対的に低いのは、生理活性ポリペプチドがFc領域と融合タンパク質を形成すると一般的に自己受容体に対する結合力が低下する傾向を示すのと同じ原因であると考えられる。本発明の作用原理についての特定の理論に束縛されるものではなく、単に発明の理解を助けるために説明すると、免疫グロブリンFcとガルスルファーゼが共有結合されることにより、ガルスルファーゼ部位が立体障害(steric hindrance)を受けて受容体に対する結合速度定数(association rate constant, ka)が減少したからであると考えられる。一度結合された持続型結合体の場合、受容体における解離速度定数(dissociation rate constant, kd)は結合体を形成しない遊離ガルスルファーゼと差がないことが確認された(表5)。
【0293】
【表5】
【0294】
本発明のガルスルファーゼ持続型結合体の活性を確認した結果は次の通りである。
【0295】
【表6】
【実施例8】
【0296】
イズロニダーゼ酵素結合体の活性確認
実施例8-1:イズロニダーゼ持続型結合体のIn vitro酵素活性
イズロニダーゼ持続型結合体の製造による酵素活性の変化を測定すべくin vitro酵素活性測定を行った。
【0297】
具体的には、酵素基質として知られる4-methylumbelliferyl alpha-L-iduronide(4-MUI)をイズロニダーゼ(Iduronidase)及びイズロニダーゼ持続型結合体と37℃で30分間反応させた。最終的に生成された4-Methylumbelliferone(4MU)の蛍光を測定することにより、当該物質の酵素活性を測定した。
【0298】
その結果、イズロニダーゼとイズロニダーゼ持続型結合体の酵素比活性(specific activity)がそれぞれ127.5±15.8μmol/min/mg、132.2±24.3μmol/min/mgであることが確認された。結論として、イズロニダーゼに比べて、イズロニダーゼ持続型結合体の酵素活性は105.7±32.2%と持続型結合体の製造による結合(conjugation)に伴う酵素活性の減少はないことが確認された(図6)。
【0299】
実施例8-2:イズロニダーゼ持続型結合体のM6P受容体結合力の確認
M6PRに対する結合力を確認するために、SPR(surface Plasmon resonance, BIACORE T200)を用いて、イズロニダーゼ(Iduronidase, 対照群)と前述したように製造したイズロニダーゼ持続型結合体(試験群)の結合力を確認した。
【0300】
具体的には、M6PRはRnd systemsから購入し、CM5チップにアミン結合法を用いて固定化し、その後対照群は50nM~3.125nM、試験群は100nM~6.25nMの濃度で流してその結合力を確認した。
【0301】
pH7.5のHEPESバッファー(HBS-EP)をランニングバッファー(running buffer)として用いて、全ての試験物質はランニングバッファーで希釈して欠陥を誘導し、解離もランニングバッファーで行った。チップに固定化したM6PRに試験物質を10分間流して結合を誘導し、その後6分間の解離過程を経た。その後、異なる濃度の対照群又は試験群を結合させるために、M6PRに結合した結合体に5mM NaoH/50mM NaClを約30秒間流した。M6PRとイズロニダーゼ又はイズロニダーゼ持続型結合体との結合力は、BIAevaluationプログラムを用いて分析した。Ka(association rate constant)、Kd(dissociation rate constant)及びKD(affinity constant)は1:1 Langmuir binding modelを用いて算出した。
【0302】
その結果、免疫グロブリンFc結合による解離定数と結合定数の両方に差が生じることが確認された。よって、対照群に比べて、試験群の結合力が約13%に減少する結果を示した。
【0303】
イズロニダーゼ持続型結合体のM6PRに対する結合力が相対的に低いのは、生理活性ポリペプチドがFc領域と融合タンパク質を形成すると一般的に自己受容体に対する結合力が低下する傾向を示すのと同じ原因であると考えられる。本発明の作用原理についての特定の理論に束縛されるものではなく、単に発明の理解を助けるために説明すると、免疫グロブリンFcとイズロニダーゼが共有結合されることにより、イズロニダーゼ部位が立体障害(steric hindrance)を受けて受容体に対する結合速度定数(association rate constant, ka)が減少したからであると考えられる(表7)
【0304】
【表7】
【0305】
本発明の実施例で製造したイズロニダーゼ持続型結合体の活性を確認した結果は次の通りである。
【0306】
【表8】
【0307】
前記結果は、本発明の酵素結合体が従来の他の治療的酵素に比べてトランスサイトーシス、体内生体利用率、組織分布性及び骨髄標的性に優れ、リソソーム蓄積症の画期的な治療剤として用いられることを示唆するものである。
【0308】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、前記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、前記詳細な説明ではなく後述する特許請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6