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特許7356225圧縮機始動操作の管理方法、および輸送用冷却システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】圧縮機始動操作の管理方法、および輸送用冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20230927BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
F25B1/00 304W
F25B1/00 341P
F25D11/00 101D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019003249
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2019124452
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】62/616,175
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003493
【氏名又は名称】キャリア コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CARRIER CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド エル.センフ ジュニアー
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0007597(US,A1)
【文献】特開2013-178046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機始動操作の管理方法であって、
圧縮機の上流に配置されたバルブを制御して、前記圧縮機の始動の間、冷媒の飽和吸引温度を、周囲の温度未満に低減することを備え、
前記低減することが、前記バルブを動的に制御することにより、前記冷媒の前記飽和吸引温度を、前記周囲の温度から閾値の温度差だけ下げ、それによりオイルに対する前記冷媒の可溶性を所定のレベル以下にすることを備え、
前記閾値の温度差が、少なくとも華氏30度である、管理方法。
【請求項2】
前記バルブが吸引調整バルブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バルブが電子蒸発器膨張バルブである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記冷媒の前記飽和吸引温度が、前記冷媒の圧力を前記バルブで調整することによって低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
輸送用冷却ユニットに関する圧縮機始動操作の管理方法であって、
圧縮機を囲む周囲の温度を判定することと、
前記圧縮機を始動することと、
冷媒ライン内の、前記圧縮機の上流に配置されたバルブを動的に制御することであって、前記バルブを動的に制御することにより、冷媒の圧力を調整して、前記冷媒の飽和吸引温度を、前記周囲の温度から閾値の温度差だけ下げ、それによりオイルに対する前記冷媒の可溶性を所定のレベル以下にすることを備えた、前記動的に制御することと、を備え、
前記閾値の温度差が、少なくとも華氏30度である、管理方法。
【請求項6】
前記バルブが吸引調整バルブである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記バルブが電子蒸発器膨張バルブである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、前記周囲の温度が閾値の周囲の温度未満である場合に実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記閾値の周囲の温度が、華氏120度以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
圧縮機、前記圧縮機の下流の凝縮器、前記凝縮器の下流の膨張デバイス、及び前記膨張デバイスの下流の蒸発器、ならびに、前記圧縮機から前記凝縮器に、前記膨張デバイス及び前記蒸発器を通り、そして前記圧縮機に戻るように循環する冷媒と、
冷媒ラインの、前記圧縮機の上流に配置されたバルブを調整する制御モジュールであって、前記バルブの調整により、前記冷媒の圧力を調整して、前記冷媒の飽和吸引温度を、周囲の温度から閾値の温度差だけ下げ、それによりオイルに対する前記冷媒の可溶性を所定のレベル以下にするように構成され、前記閾値の温度差が、少なくとも華氏30度である、制御モジュールと、
を備えた、輸送用冷却システム。
【請求項11】
前記バルブが吸引調整バルブである、請求項10に記載の輸送用冷却システム。
【請求項12】
前記バルブが電子蒸発器膨張バルブである、請求項10に記載の輸送用冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年1月11日に出願された、米国特許仮出願第62/616,175号の優先権を主張する。この仮出願の開示は、本明細書で参照することにより、その全体が組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、輸送用冷却システムに関し、より詳細には、圧縮機始動システム、及び、輸送用冷却システムに利用される高度に可溶性の冷媒とオイルとの組合せの方法に関する。
【背景技術】
【0003】
トラック、トレーラー、コンテナ、または同様の一貫輸送ユニットで使用される、絶縁されたボックスなどの閉じたエリアの制御に使用される輸送用冷却システムは、閉じたエリアから熱を吸収し、ボックスの外部の環境に熱を放出することによって機能する。輸送用冷却システムは、一般に、冷媒蒸気を加圧するための圧縮機と、圧縮機からの加圧された蒸気を冷却し、それにより、冷媒の状態を気体から液体に変化させるための凝縮器とを含んでいる。周囲の空気は、凝縮器内の冷媒コイルを越えて吹き付けられて、熱交換を達成する場合がある。輸送用冷却システムは、蒸発器内の冷媒を含むコイルを越えて戻ってくる空気を取り出すか押し出すことにより、ボックスの外に熱を取り出すための蒸発器をさらに含んでいる。このステップは、蒸発器を通って流れるいずれの残りの液体冷媒をも気化させ、この冷媒は次いで、吸引調整バルブ(「SMV」)を通して取り出され、圧縮機内に戻されて、回路が完結し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新たな環境に優しい冷媒が、様々な要請(たとえば、規定)を満たすために開発されている。これら新しい冷媒のいくつかは、以前に採用されている冷媒(たとえば、R134a、R404aなど)に比べると、輸送用冷却システムの特定の用途にはあまり適切ではない。具体的には、圧縮機開発におけるテストにより、周囲温度が低く、蒸発気体の流れる量が少ない始動条件では、新たなオイルにおける冷媒の可溶性が非常に高く、オイルの粘性を低下させることが示されている。粘性の低下は、ベアリング、ならびに、たとえば、スクロール、オルダム継手、カプラ、及びブッシングなどの他の潤滑構成要素などの様々な構成要素の故障に繋がる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示されているのは、圧縮機始動操作の管理方法であって、圧縮機の上流に配置されたバルブを制御して、圧縮機の始動の間、冷媒の飽和吸引温度を、周囲の温度未満に低減することを含む、管理方法である。
【0006】
上述の特徴の1つまたは複数に加えるか、代替形態として、さらなる実施形態は、バルブが吸引調整バルブであることを含む場合がある。
【0007】
上述の特徴の1つまたは複数に加えるか、代替形態として、さらなる実施形態は、バルブが電子蒸発器膨張バルブであることを含む場合がある。
【0008】
上述の特徴の1つまたは複数に加えるか、代替形態として、さらなる実施形態は、冷媒の飽和吸引温度が、周囲の温度の、少なくとも華氏30度低くされることを含む場合がある。
【0009】
上述の特徴の1つまたは複数に加えるか、代替形態として、さらなる実施形態は、冷媒の飽和吸引温度が、冷媒の圧力をバルブで調整することによって低減されることを含む場合がある。
【0010】
やはり開示されているのは、輸送用冷却ユニットに関する圧縮機始動操作の管理方法である。本方法は、圧縮機を囲む周囲の温度を判定することを含んでいる。本方法は、圧縮機を始動することをも含んでいる。本方法は、冷媒ライン内に、圧縮機の上流に配置されたバルブを動的に制御することであって、バルブを動的に制御することにより、冷媒の圧力を調整して、冷媒の飽和吸引温度を、閾値の温度差だけ、周囲の温度未満に低減する、動的に制御することをさらに含んでいる。
【0011】
上述の特徴の1つまたは複数に加えるか、代替形態として、さらなる実施形態は、バルブが吸引調整バルブであることを含む場合がある。
【0012】
上述の特徴の1つまたは複数に加えるか、代替形態として、さらなる実施形態は、バルブが電子蒸発器膨張バルブであることを含む場合がある。
【0013】
上述の特徴の1つまたは複数に加えるか、代替形態として、さらなる実施形態は、閾値の温度差が、少なくとも華氏30度であることを含む場合がある。
【0014】
上述の特徴の1つまたは複数に加えるか、代替形態として、さらなる実施形態は、方法が、周囲の温度が閾値の周囲の温度未満である場合に実施されることを含む場合がある。
【0015】
上述の特徴の1つまたは複数に加えるか、代替形態として、さらなる実施形態は、閾値の周囲の温度が、華氏120度以下であることを含む場合がある。
【0016】
さらに開示されているのは、圧縮機、圧縮機の下流の凝縮器、凝縮器の下流の膨張デバイス、及び膨張デバイスの下流の蒸発器、ならびに、圧縮機から凝縮器に、膨張デバイス及び蒸発器を通り、そして圧縮機に戻るように循環する冷媒を含む、輸送用冷却システムである。やはり含まれるのは、冷媒ラインの、圧縮機の上流に配置されたバルブを調整する制御モジュールであって、バルブの調整により、冷媒の圧力を調整して、冷媒の飽和吸引温度を、閾値の温度差だけ、周囲の温度未満に低減する、制御モジュールである。
【0017】
上述の特徴の1つまたは複数に加えるか、代替形態として、さらなる実施形態は、バルブが吸引調整バルブであることを含む場合がある。
【0018】
上述の特徴の1つまたは複数に加えるか、代替形態として、さらなる実施形態は、バルブが電子蒸発器膨張バルブであることを含む場合がある。
【0019】
本開示は、実施例として、限定ではなく、添付図面に説明される。この添付図面では、同様の参照符号が、同様の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】輸送用冷却システムの図である。
図2】輸送用冷却ユニットの概略図を図示する。
図3】輸送用冷却ユニットの圧縮機の立面図である。
図4】温度に対する冷媒の可溶性のプロットである。
図5】輸送用冷却ユニットのための圧縮機始動操作の管理方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、輸送用冷却システムの実施形態を示す図である。図1に示すように、輸送用冷却システム100は、コンテナ12内の閉じた空間に結合した輸送用冷却ユニット10を含むことができる。図1に示すように、輸送用冷却ユニット10は、コンテナ12(たとえば、閉じた容量のカーゴ)内の所定の熱環境を維持するように構成されている。
【0022】
図1では、輸送用冷却ユニット10は、コンテナ12の一方の端部で接続されている。代替的に、輸送用冷却ユニット10は、コンテナ12の1つの側部の所定の位置に結合され得るか、2つ以上の側部に結合され得る。一実施形態では、複数の輸送用冷却ユニットを単一のコンテナ12に結合することができる。代替的には、単一の輸送用冷却ユニット10は、複数のコンテナ12に結合することができる。輸送用冷却ユニット10は、第1の温度で空気を誘導し、第2の温度で空気を排出するように作動することができる。一実施形態では、輸送用冷却ユニット10からの排出空気が、誘導された空気よりも高温となり、それにより、輸送用冷却ユニット10が、コンテナ12内の空気を暖めるために採用されるようになっている。一実施形態では、輸送用冷却ユニット10からの排出空気が、誘導された空気よりも低温となり、それにより、輸送用冷却ユニット10が、コンテナ12内の空気を冷やすために採用されるようになっている。輸送用冷却ユニット10は、返還温度Tr(たとえば、第1の温度)を有するコンテナ12からの空気を誘導し、また、供給温度Ts(たとえば、第2の温度)を有するコンテナ12への空気を排出することができる。
【0023】
一実施形態では、輸送用冷却ユニット10は、継続的に、または繰り返し、輸送用冷却ユニット10に関する条件または操作を監視するための、1つまたは複数のセンサ(有線または無線)を含むことができる。図1に示すように、例示的センサには、それぞれ輸送用冷却ユニット10に、供給温度Tsを提供することができる輸送用冷却ユニット10の第1の温度センサ24と、返還温度Trを提供することができる輸送用冷却ユニット10の第2の温度センサ22と、を含むことができる。
【0024】
輸送用冷却システム100は、温度、湿度、及び/または化学種の濃度が制御された空気を、コンテナ12内など、カーゴが貯蔵される閉じたチャンバ内に提供することができる。当業者には既知であるように、輸送用冷却システム100(たとえば、コントローラ220)は、大量の様々なカーゴを伴い、すべての種類の周囲の条件下で、対応するレンジ内の複数の環境的パラメータまたはすべての環境的パラメータを制御することが可能である。
【0025】
図2は、輸送用冷却ユニットの実施形態を示す図である。図2に示すように、輸送用冷却ユニット200は、たとえば、食品及び医療用品(たとえば、生鮮品または冷凍品)などの、温度が制御された環境を必要とする物品の輸送または貯蔵のために使用される、トレーラー、一貫輸送コンテナ、鉄道の気動車、船舶などで使用することができる、コンテナ(図示せず)に操作可能に結合することができる。コンテナは、そのような物品の輸送/貯蔵のための閉じた容量を含むことができる。閉じた容量は、コンテナの外部(たとえば、周囲の雰囲気または状況)から絶縁された内部の雰囲気を有する閉じた空間である場合がある。
【0026】
図2に示すように、圧縮機210は、スクロール型圧縮機とすることができるが、往復動圧縮機またはスクリュ圧縮機などの他の圧縮機が、本開示の範囲を制限することなく、可能である。モータ(図示せず)が、圧縮機210を駆動するために使用され得る。たとえば、モータは、同期発電機、商業的な電源サービス、外部の発電システム(たとえば、船上)、発電機などによって駆動される、組み込まれた電動モータとすることができる。圧縮機210は、多段圧縮デバイスとすることができる。
【0027】
圧縮機210を出る高温高圧の冷媒蒸気は、空冷式の凝縮器230に送ることができる。空冷式の凝縮器230は、空気、通常は凝縮器ファン232によって吹き付けられる空気を受領する、複数の凝縮器コイルフィン及びチューブ234を含むことができる。凝縮器230を通して潜熱を除去することにより、冷媒は、高圧/高温の液体に凝縮し、低温での動作の間、過剰な液体冷媒のためのストレージを提供することができる、レシーバ236に流れる。レシーバ236から、冷媒は、冷媒を清潔かつ乾燥した状態に維持することができるフィルタ乾燥機238に流れ得る。
【0028】
ユニット200は、エコノマイザを含むことができる。エコノマイザデバイス240は、冷媒のサブクーリングを増大させることができる。エコノマイザデバイス240が作動すると、バルブ242が開いて、冷媒を、圧縮機210の中間流入ポート212の上流に位置する検知バルブ246を有する予備の膨張バルブ244に通すことができる。バルブ244は、バルブ246で測定した温度に応じて制御することができ、また、エコノマイザの逆流熱交換器248に進む冷媒を膨張及び冷却する役割を果たすことができる。逆流熱交換器248は、液体冷媒をさらに過冷却することができる。
【0029】
冷媒は、エコノマイザデバイス240のエコノマイザ熱交換器248から、電子蒸発器膨張バルブ(「EVXV」)250に流れる。液体冷媒がEVXV250のオリフィスを通過すると、液体冷媒の少なくともいくらかが気化し得る。冷媒はこうして、蒸発器260のチューブまたはコイル264を通って流れる。蒸発器260は、返還空気295(たとえば、ボックスまたはコンテナから戻ってくる空気)から熱を吸収し、その吸収の内に、蒸発器260内の残りの液体冷媒のいくらかまたはすべてを気化させることができる。返還空気295は、好ましくは、少なくとも1つの蒸発器ファン262により、チューブまたはコイル264を越えて取り出されるか押し出される。冷媒蒸気は、蒸発器260から、吸引調整バルブ(「SMV」)275を通して取り出すことができ、圧縮機210に戻される。
【0030】
輸送用冷却ユニット200内の多くのポイントが、コントローラ220によって監視及び制御され得る。コントローラ220は、マイクロプロセッサ222及び関連するメモリ224を含むことができる。コントローラ220のメモリ224は、限定ではないが、ユニット200またはボックス内の様々な位置に関する温度の設定ポイント、圧力の限界、電流の限界、エンジン速度の限界、及び、ユニット200または冷却システムの任意の様々な他の所望の操作パラメータまたは限界を含む、ユニット200内の様々な操作パラメータに関する、オペレータまたはオーナーにより予め選択された所望の値を含むことができる。一実施形態では、コントローラ220は、マイクロプロセッサ222及びメモリ224、アナログデジタルコンバータ229を含むことができる、入力/出力(I/O)ボード228を含むマイクロプロセッサボードを含むことができる。I/Oは、システムの様々なポイントからの温度の入力値及び圧力の入力値、AC電流の入力値、DC電流の入力値、電圧入力値、及び湿度レベルの入力値を受信することができる。さらに、I/Oボード228は、コントローラ220からの信号または電流を受信し、次いで、たとえばEVXV250及び/またはSMV275などの、ユニット200内の様々な外部または周囲のデバイスを制御するための駆動回路または電界効果トランジスタ(「FET」)、及びリレーを含むことができる。
【0031】
コントローラ220によって監視される例示的センサ及び/または変換器の中には、マイクロプロセッサ222に、蒸発器の返還空気の温度に係る可変の抵抗値を入力する返還空気温度(RAT)センサ268を含むことができる。周囲の空気の温度の値(たとえば、凝縮器230の前方で読み取られた値)をマイクロプロセッサ222に提供することができる周囲の空気の温度(AAT)センサ270。圧縮機の吸引温度に係る可変の抵抗値をマイクロプロセッサに入力することができる、圧縮機吸引温度(CST)センサ272。圧縮機210のドーム内の圧縮機排出温度を検出することができる、圧縮機排出温度(CDT)センサ274。蒸発器260の流出温度の値及び蒸発器の流出圧力を検出することができる、蒸発器流出温度(EVOT)センサ281及び蒸発器流出圧力(EVOP)変換器282。圧縮機吸引圧力(CSP)変換器278により、マイクロプロセッサ222に、圧縮機210の圧縮機吸引値に係る可変電圧値を提供することができる。マイクロプロセッサ222に、圧縮機210の圧縮機排出値に係る可変電圧値を提供することができる圧縮機排出圧力(CDP)変換器280。さらに、直流センサ286及び交流センサ288(それぞれ、CT1及びCT2)が、圧縮機210によって取り出された電流を検出することができる。
【0032】
一実施形態では、マイクロプロセッサ222は、当業者に理解されているアルゴリズムを使用して、蒸発器コイルの蒸発器の過熱ESHを計算するために、EVOPセンサ282及びEVOTセンサ281からの入力を使用することができる。マイクロプロセッサ222は、こうして、計算された蒸発器の過熱値ESHを、予め選択された、所望の過熱値、または、メモリ224内に貯蔵することができる設定ポイントと比較することができる。マイクロプロセッサ222は、こうして、所望の過熱設定(たとえば、単位容量を最大化するための、所定の過熱値、条件が選択された過熱値、または、最小の過熱値)に近づけるか維持するために、実際の蒸発器の過熱値ESHと、所望の蒸発器の過熱値ESHとの間の差異に応じて、EVXV250を作動させることができる。マイクロプロセッサ222は、維持されるか制御され得、また、作動流体の逆流(たとえば、液体冷媒の圧縮機内への退避)を低減するか防止する、過熱の所定の設定、または、最小の設定で作動するようにプログラムされている場合がある。所定の、または最小の設定値は、ユニット200の容量及び特定の構成に応じて変化する。たとえば、そのような操作値は、当業者による実験を通して判定することができる。一実施形態では、そのようなレベルの過熱は、このため、「ベースの実施態様(base implementation)」の過熱、または、ベースの設定として使用される場合がある。この設定から、過熱のオフセットを、様々な作動条件及び/または周囲の条件の事象において形成することができる。
【0033】
ここで図3を参照すると、圧縮機210がより詳細に示されている。圧縮機210は、本体部分290と、圧縮機排水受け292とを含んでいる。圧縮機210は、吸引ライン296から流体を受領するための、少なくとも1つの流入部294を含んでいる。圧縮機210は、排出ライン299から流体を排出するための、少なくとも1つの流出部298をも含んでいる。図示のように、液体冷媒は、圧縮機210が作動していない状態の間に、圧縮機排水受け292内に収集され、オイルを包含する圧縮機210に「溢れる」場合がある。冷媒は、その内部でオイルと混合され、混合物を希釈する。混合冷媒が、環境の規定を満たすために開発されてきたが、これら混合冷媒の可溶性は、低い周囲温度の、蒸発量が少ない溢れた始動条件でオイルに対し高度に可溶性である。可溶性が増大すると、ポリオールエステル(POE)オイルなどのオイルの粘性を望ましくなく低減する。
【0034】
ここで図4を参照すると、オイルと、混合冷媒との2つの可溶性のカーブにより、オイルの、オイルの粘性の品質が、流体排水受けの温度と、低い周囲温度の状況における飽和した冷媒の温度との間のより大である差異で向上されることが示されている。具体的には、一方のカーブ300は、華氏45度の温度の飽和した冷媒に関する様々な可溶性における可溶性カーブを示している。他方のカーブ302は、華氏-30度の温度の飽和した冷媒に関する様々な可溶性における可溶性カーブを示している。
【0035】
流体排水受けの温度は、周囲の温度を参照することによってわかる。この温度は、図4で示す方程式に「Sump」として言及され、図4の水平軸に沿って示されている。図4に示す方程式におけるSSTとの用語は、カーブ300及びカーブ302の一定の飽和冷媒の温度に言及するものであり、具体的には、カーブ300に関しては華氏45度であり、カーブ302に関しては華氏-30度である。実施例として、カーブ302上では、周囲が華氏40度で、排水受けの温度と、飽和した冷媒の温度との間の温度差は、華氏70度である。このことは、圧縮機を始動し、システムが作動するための良好なゾーンとして特徴付けられるものとして示されている。カーブ302に沿う華氏30度の温度差は、圧縮機の始動及びシステムの作動のための限界のゾーンとして示されている。カーブ302に沿う華氏10度のみの温度差は、圧縮機の始動及びシステムの作動のための不適当なゾーンとして特徴付けられるものとして示されている。したがって、上述のように、排水受けの温度と飽和した冷媒の温度との間の温度差が大きくなると、圧縮機の始動及びシステムの動作のための条件がより良好になる。カーブ300は、「不適当」であるか「限界の」ゾーンにある例示的な温度差すべてを示している。
【0036】
溢れた条件において圧縮機の始動を管理する方法の実施形態が、本明細書に記載されている。本方法は、排水受けの温度と、飽和した冷媒の温度との間の温度差を増大させて、図4のカーブ(複数可)の図示のシフトを達成する。図5に示す方法は、図2及び図3の輸送用冷却ユニット200に実施され得、このユニットを使用して記載される。しかし、本方法は、そのような特定の実施形態に限定されることは意図していない。
【0037】
本方法は、全体として、図5において符号400で参照されている。方法400は、溢れた圧縮機の始動操作を管理することを含んでいる。この方法は、圧縮機210の始動の間、圧縮機210の上流に配置されたバルブ(EVXV250またはSMV275)を制御して、冷媒の飽和吸引温度を周囲の温度未満に低下させることを含んでいる。図示の実施形態では、ブロック402は、コントローラ220が、圧縮機210を囲む周囲の温度を判定することを示している。ブロック404は、圧縮機210の始動を示している。いくつかの実施形態では、バルブ(複数可)250及び/または275は、ブロック403で示すように、圧縮機を始動する前は閉じられている。ブロック406は、冷媒ライン内に、圧縮機210の上流に配置されたバルブ250及び/または275を動的に制御することを示している。バルブの一方または両方を動的に制御することにより、冷媒の圧力を調整して、冷媒の飽和吸引温度を、閾値の温度差だけ、周囲の温度未満に低減する。閾値の温度差を満たすことにより、冷媒の可溶性が、図4に示す「良好な」ゾーン内か付近に低減されることが確実になる。いくつかの実施形態では、閾値の温度差は、少なくとも華氏30度であるが、特定の用途及び条件に依存することになる。
【0038】
方法400は、圧縮機が「溢れた」状況であり、周囲の温度が低い(すなわち、コールドスタート)場合に、特に有利である。たとえば、いくつかの実施形態では、本方法は、周囲の温度が華氏120度未満である場合に利用される場合があるが、より高いかより低い温度が考えられる。
【0039】
冷媒の可溶性を低減することにより、冷媒-オイルの混合物の粘性が所望のように増大する。増大した粘性により、軽視された状態よりむしろ、より望ましい粘性の特性に、オイルを戻す圧縮機の信頼性が向上し、それにより、始動時及び最初の作動条件における圧縮機内の、加圧された、境界層の潤滑状況が向上する。本方法は、上述の新しい混合冷媒の、新たに発見された制限を考慮する。
【0040】
各実施形態は、1つまたは複数の技術を使用して実施され得る。いくつかの実施形態では、装置またはシステムが、1つまたは複数のプロセッサと、メモリ貯蔵命令とを含む場合があり、メモリ貯蔵命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行される場合に、装置またはシステムに、本明細書に記載の1つまたは複数の方法論的作用を実施させる。当業者に既知である様々な機械的構成要素が、いくつかの実施形態で使用される場合がある。
【0041】
各実施形態は、1つまたは複数の装置、システム、及び/または方法として実施され得る。いくつかの実施形態では、命令は、一時的及び/または一時的ではないコンピュータ可読媒体などの、1つまたは複数のコンピュータプログラム製品またはコンピュータ可読媒体に貯蔵される場合がある。命令は、実行される場合、エンティティ(たとえば、プロセッサ、装置、またはシステム)に、本明細書に記載の1つまたは複数の方法論的作用を実施させる場合がある。
【0042】
本開示が、限られた数の実施形態のみに関して詳細に記載されているが、本開示が、そのような開示の実施形態に限定されないことは、容易に理解されるものとする。むしろ、本開示は、前述されていないが、本開示の範囲と同等の、任意の数の変形形態、変更形態、置換形態、または、均等の構成を組み込むように変更することができる。さらに、様々な実施形態を記載してきたが、本開示の態様が、記載の実施形態のいくつかのみを含む場合があることを理解されたい。したがって、本開示は、前述の記載によって限定されるものとは見られないが、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5