(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】油性洗浄組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20230927BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230927BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230927BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230927BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230927BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/92
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/34
A61Q1/14
(21)【出願番号】P 2019061790
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】黒木 純子
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190841(JP,A)
【文献】特開2011-126809(JP,A)
【文献】特開2017-178868(JP,A)
【文献】特開2014-152108(JP,A)
【文献】特開2016-013974(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0151159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D);
(A)一般式(1)で示されるグリセリン誘導体
Gly-[O-(PO)
l-(EO)
m-(BO)
nH]
3式(1)
(式(1)中、Glyはグリセリンから水酸基を除いた残基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基であり、l及びmはそれぞれPO及びEOの平均付加モル数であり、(l+m)は1~30の値であり、質量比(PO/EO)は1/5~5/1であって、BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、nはBOの平均付加モル数であって、1~5の値である。)
(B)
コメヌカ油、アボカド油、オリーブ油、オリーブスクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、杏仁油、ククイナッツ油、ゴマ油、サフラワー油、アーモンド油、大豆油、ホホバ油、ラベンダー油、マカデミアンナッツ油、ローズヒップ油、ヒマワリ油、メドウフォーム油、カロットオイル、ツバキ油から選択される一種又は二種以上の植物油
(C)
炭素数12~22の分岐脂肪酸、常温常圧下で液状であり、かつ分子内に分岐構造を少なくとも一つ以上有する脂肪酸エステル、
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸PG(ジカプリン酸プロピレングリコール)からなる群から選択される一種又は二種以上
(D)エタノール
を含有し、
前記成分(A)の含有質量が1~30質量%であり、
前記成分(B)の含有質量が1~60質量%であり、
前記成分(D)の含有質量が1~20質量%である、油性洗浄組成物。
【請求項2】
次の成分(A)~(D);
(A)一般式(1)で示されるグリセリン誘導体
Gly-[O-(PO)
l-(EO)
m-(BO)
nH]
3式(1)
(式(1)中、Glyはグリセリンから水酸基を除いた残基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基であり、l及びmはそれぞれPO及びEOの平均付加モル数であり、(l+m)は1~30の値であり、質量比(PO/EO)は1/5~5/1であって、BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、nはBOの平均付加モル数であって、1~5の値である。)
(B)コメヌカ油、アボカド油、オリーブ油、オリーブスクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、杏仁油、ククイナッツ油、ゴマ油、サフラワー油、アーモンド油、大豆油、ホホバ油、ラベンダー油、マカデミアンナッツ油、ローズヒップ油、ヒマワリ油、メドウフォーム油、カロットオイル、ツバキ油から選択される一種又は二種以上の植物油
(C)炭素数12~22の分岐脂肪酸、常温常圧下で液状であり、かつ分子内に分岐構造を少なくとも一つ以上有する脂肪酸エステル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸PG(ジカプリン酸プロピレングリコール)からなる群から選択される一種又は二種以上
(D)エタノール
を含有し、
前記成分(A)と前記成分(B)の含有質量割合(A)/(B)が0.1~6であり、
前記成分(B)の含有質量が1~60質量%であり、
前記成分(D)の含有質量が1~20質量%である、油性洗浄組成物。
【請求項3】
前記成分(A)の含有質量が5~20質量%である請求項1
又は2に記載の油性洗浄組成物。
【請求項4】
前記成分(C)がイソステアリン酸、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸PG、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシルからなる群から選択される一種又は二種以上である請求項1
~3のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【請求項5】
前記成分(A)と前記成分(B)の含有質量割合(A)/(B)が0.2~2.2である請求項1~
4のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【請求項6】
前記成分(A)と前記成分(D)の含有質量割合(A)/(D)が0.45~6.5である請求項1~
5のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【請求項7】
さらに、成分(E)トリプロピレングリコールを含有する請求項1~
6のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【請求項8】
界面活性剤を実質的に含まない請求項1~
7のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【請求項9】
水を実質的に含まない請求項1~
8のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【請求項10】
拭き取り用であることを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性洗浄組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メイク汚れを除去するための洗浄剤としては、主にクレンジング化粧料が挙げられ、クレンジング化粧料としては、主にはクレンジングオイルなどの油性洗浄剤、クレンジングクリームなどの乳化型洗浄剤、水性成分と油性成分がそれぞれに連続した相をなすバイコンテニュアス構造タイプの洗浄剤、クレンジングローションやクレンジングジェルなどの水性洗浄剤に大別することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このうち、油性、乳化型、バイコンテュアス構造タイプの洗浄剤は、大量に配合されている液状油性成分や界面活性剤がメイク汚れを溶かし込み、汚れを浮かせるためメイク除去能に優れることが多いものの、洗い上がりに油膜によるべたつきが強く、使用感に優れない場合や、水または湯で洗い流す動作を行うが必要であり、使用場所が制限されたり、簡便性に欠ける場合があった。
【0004】
一方で、油性成分の含有量が少ないことが多く、界面活性剤と水性媒体を主成分とすることが多い水性クレンジング料は、みずみずしく、すっきりとした使用感に優れ、拭き取りでの使用が可能であることがあるものの、洗浄力は、単に界面活性剤の洗浄力に依存することが多く、クレンジング力が満足に得られない場合や、メイクと馴染ませた後に拭き取りにくく、過度な拭き取り動作が肌荒れ等を引き起こす場合があった。
【0005】
加えて、近年では、自然派志向の高まりから、できるだけ合成界面活性剤を含まない液状化粧水や液状オイルで肌を拭き取るようにしてメイク汚れを洗浄したいという消費者ニーズも増えてきている。
上述の市場背景を元に、各種技術が開発されており、例えば、特定の中鎖脂肪酸ポリグリセリンを含有することを特徴とする化粧料組成物に関する技術(例えば、特許文献1)や、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルおよび両性界面活性剤を特定量含有することを特徴とする水性拭き取りクレンジング化粧料に関する技術(例えば、特許文献2)が開発されている。
また、特定の界面活性剤等を含有するバイコンティニュアス構造を有する皮膚洗浄剤組成物に関する技術(例えば、特許文献3)が開発されている。
【0006】
【文献】特開2014-210744号公報
【文献】特開2014-201561号公報
【文献】特開2013-32348号公報
【0007】
特許文献1及び2は、水性洗浄剤に特定の界面活性剤を配合する技術であり、クレンジング力が十分ではない場合や、馴染ませた後の拭き取りやすさが未だ十分ではないという場合があった。また、クレンジング力を向上するために、異なる界面活性剤を配合した場合などにおいて、経時安定性、後肌のべたつきのなさに優れない場合もあった。
特許文献3は、クレンジング力には優れる場合があるものの、後肌のべたつきのなさや馴染ませた後の拭き取りやすさに優れない場合があった。
【0008】
すなわち、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、および、馴染ませた後の拭き取りやすさに優れた油性洗浄組成物は、未だ知られていない状況である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情を鑑み、本発明者は、上記課題を解決するために、
次の成分(A);一般式(1)で示されるグリセリン誘導体
Gly-[O-(PO)l-(EO)m-(BO)nH]3 式(1)
(式(1)中、Glyはグリセリンから水酸基を除いた残基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基であり、l及びmはそれぞれPO及びEOの平均付加モル数であり、(l+m)は1~30の値であり、質量比(PO/EO)は1/5~5/1であって、BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、nはBOの平均付加モル数であって、1~5の値である。)
を、成分(B)植物油に溶解させ、洗浄料を得ることを試みたものの、析出による白濁や分離等が生じ、経時安定性に優れない場合や、クレンジング力および馴染ませた後の拭き取りやすさに優れないがあった。そこで、本発明者は、鋭意検討した結果、さらに、成分(C)分岐脂肪酸、脂肪酸エステルからなる群から選択される一種又は二種以上、および成分(D)エタノールを含有させることで、経時安定性が非常に良好となり、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさに優れることを見出して、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、以下の[1]~[9]を提供する。
[1]
次の成分(A)~(D);
A)一般式(1)で示されるグリセリン誘導体
Gly-[O-(PO)l-(EO)m-(BO)nH]3 式(1)
(式(1)中、Glyはグリセリンから水酸基を除いた残基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基であり、l及びmはそれぞれPO及びEOの平均付加モル数であり、(l+m)は1~30の値であり、質量比(PO/EO)は1/5~5/1であって、BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、nはBOの平均付加モル数であって、1~5の値である。)
(B)植物油
(C)分岐脂肪酸、脂肪酸エステルからなる群から選択される一種又は二種以上
(D)エタノール
を含有する油性洗浄組成物。
【0011】
[2]
前記成分(A)の含有質量が5~20質量%である[1]に記載の油性洗浄組成物。
【0012】
[3]
前記成分(C)がイソステアリン酸、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸PG、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシルからなる群から選択される一種又は二種以上である[1]又は[2]のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【0013】
[4]
前記成分(A)と前記成分(B)の含有質量割合(A)/(B)が0.2~2.2である[1]~[3]のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【0014】
[5]
前記成分(A)と前記成分(D)の含有質量割合(A)/(D)が0.45~6.5である[1]~[4]のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【0015】
[6]
さらに、成分(E)トリプロピレングリコールを含有する[1]~[5]のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【0016】
[7]
界面活性剤を実質的に含まない[1]~[6]のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【0017】
[8]
水を実質的に含まない[1]~[7]のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【0018】
[9]
拭き取り用であることを特徴とする[1]~[8]のいずれか一項に記載の油性洗浄組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明の油性洗浄組成物は、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。また、%で表記する数値は、特に記載した場合を除き、質量を基準にした値である。
【0021】
<成分(A)>
本発明における、成分(A)のグリセリン誘導体は、一般式(1)で表されるものである。
Gly-[O-(PO)l-(EO)m-(BO)nH]3 式(1)
(式(1)中、Glyはグリセリンから水酸基を除いた残基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基であり、l及びmはそれぞれPO及びEOの平均付加モル数であり、(l+m)は1~30の値であり、質量比(PO/EO)は1/5~5/1であって、BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、nはBOの平均付加モル数であって、1~5の値である。)
すなわち、グリセリンにプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドを合計でグリセリンに対して3~90モル当量の割合で付加させた後に、炭素数4のアルキレンオキシドをグリセリンに対して3~15モル当量の割合で付加させて得ることが可能である。成分(A)のグリセリン誘導体は、一度POとEOとの付加物を合成した後、炭素数4のアルキレンオキシドをブロック状で付加することにより得ることが可能である。
【0022】
プロピレンオキシド(PO)およびエチレンオキシド(EO)の質量比(PO/EO)は1/5~5/1であり、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの付加形態は、ランダム状でもブロック状でもよい。プロピレンオキシド(PO)およびエチレンオキシド(EO)の質量比(PO/EO)が1/5未満の場合、メイク除去能が低くなり、5/1を超える場合は、後肌のべたつき感が生じる。
【0023】
プロピレンオキシド(PO)およびエチレンオキシド(EO)の平均付加モル数は、合計3~90モル、すなわちl+mが1~30の範囲にあることが好ましい。POおよびEOの平均付加モル数が合計で3モル未満、すなわちl+mが1未満であれば、後肌のべたつきのなさに優れない場合がある。平均付加モル数が合計で90モル、すなわちl+mが30を超えると、クレンジング力に優れない場合がある。
【0024】
炭素数4のアルキレンオキシド(BO)の平均付加モル数は、3~15モル、すなわちnが1~5の範囲にあることが好ましい。BOの平均付加モル数が3モル、すなわちnが1未満であれば、クレンジング力に優れない場合がある。平均付加モル数が15モル、すなわちnが5を超えると、後肌のべたつきのなさに優れない場合がある。
【0025】
炭素数4のアルキレンオキシドとしては、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシド(テトラヒドロフラン)などが挙げられる。これらの中で、入手の容易さ、反応制御の容易さなどの点から、1,2-ブチレンオキシドが好ましい。
【0026】
グリセリンにこれらのアルキレンオキシドを付加させる場合、アルカリ触媒、相関移動触媒、ルイス酸触媒などを用いて付加反応を行う。一般的には、水酸化カリウムなどのアルカリ触媒を用いることが好ましい。
【0027】
成分(A)としては、具体的には、(EO)の平均付加モル数が8、(PO)の平均付加モル数が5、(BO)の平均付加モル数が3であるものが挙げられ、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3BO)(8EO)(5PO)が、メイク除去能を向上させる点から好ましい。市販品としては、ウィルブライドS-753D(日油社製)を使用することができる。なお、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3BO)(8EO)(5PO)は、INCI(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients)名では、PEG/PPG/ポリブチレングリコール―8/5/3グリセリンとも表記できる。
【0028】
本発明にかかる油性洗浄組成物において、成分(A)を含有しない場合には、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさに優れない場合がある。
【0029】
本発明における成分(A)の含有量は特に限定されないが、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさの点から、油性洗浄組成物全量に対し、1~30質量%(以下、単に%と略す)が好ましく、2~20%がより好ましく、5~15%がさらにより好ましく、7~12%が特により好ましい。
【0030】
<成分(B)>
本発明における成分(B)は、植物油であり、通常化粧料等に用いられるものでれば、特に限定されない。特に限定されないが、具体的には、アボガド油、オリーブ油、オリーブスクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、杏仁油、ククイナッツ油、ゴマ油、サフラワー油、アーモンド油、大豆油、ホホバ油、ラベンダー油、マカデミアンナッツ油、ローズヒップ油、ヒマワリ油、メドウフォーム油、カロットオイル、ツバキ油等が挙げられ、これらの中から選択される一種又は二種以上を用いることができる。
【0031】
成分(B)は、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさの点から、コメヌカ油、オリーブ油、メドウフォーム油、マカデミアンナッツ油、サフラワー油、ヤシ油からなる群から選択される一種又は二種以上であることが好ましく、コメヌカ油、オリーブ油、メドウフォーム油から選ばれる一種又は二種以上がより好ましく、コメヌカ油、オリーブ油からなる群から選択される一種又は二種以上であることがさらにより好ましい。
【0032】
本発明にかかる油性洗浄組成物において、成分(B)を含有しない場合には、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさに優れない場合がある。
【0033】
本発明における成分(B)の含有量は特に限定されないが、経時安定性、後肌のべたつきのなさの点から、油性洗浄組成物全量に対し、1~60%が好ましく、5~40%がより好ましく、10~30%がさらにより好ましい。
【0034】
<成分(C)>
本発明における成分(C)は、分岐脂肪酸、脂肪酸エステルからなる群から選択される一種又は二種以上である。
【0035】
本発明における成分(C)の分岐脂肪酸は、分岐構造を有する脂肪酸である。成分(C)として、特に限定されずに、通常化粧料等に使用されるものを、用いることができる。成分(C)として、特に限定されないが、具体的には、炭素数4~26の分岐脂肪酸が挙げられ、さらに詳細には、イソ酪酸、イソ吉草酸、2-エチル酪酸、エチルメチル酢酸、イソヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸、イソヘキサコサン酸、18-メチルエイコサン酸等が挙げられ、これらの中から選択される一種又は二種以上を用いることができる。これらのうち、経時安定性、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさの点から、成分(C)の分岐脂肪酸としては、炭素数12~22であるものが好ましく、イソステアリン酸がより好ましい。
【0036】
本発明における成分(C)の脂肪酸エステルは、脂肪酸とアルコールとのエステルである。成分(C)の脂肪酸エステルの脂肪酸としては、特に分岐構造の有無は問わない。特に限定されずに、通常化粧料等に使用されるものを、用いることができるが、具体的には、イソステアリン酸イソセチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、オクタン酸セチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリル、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸2-ヘキシルデシル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソプロピルミリステート、2-オクチルドデシルオレエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸へキシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、トリオクタノイン、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸PG(ジカプリン酸プロピレングリコール)、イソノナン酸イソトリデシル等が挙げられ、これらの中から選択される一種又は二種以上を用いることができる。
【0037】
本発明における成分(C)の脂肪酸エステルとして、特に限定されないが、経時安定性、馴染ませた後の拭き取りやすさの点から、成分(C)の脂肪酸エステルは常温常圧下で液状であることが好ましく、常温常圧下で液状であり、かつ、分子内に分岐構造を少なくとも一つ以上有することがより好ましい。
【0038】
本発明における成分(C)は、特に限定されないが、経時安定性、馴染ませた後の拭き取りやすさの点から、イソステアリン酸、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸PG、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシルからなる群から選択される一種又は二種以上であることが好ましく、イソステアリン酸、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸PGからなる群から選択される一種又は二種以上であることがより好ましい。
【0039】
本発明にかかる油性洗浄組成物において、成分(C)を含有しない場合には、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさに優れない場合がある。
【0040】
本発明における成分(C)の含有量は、特に限定されないが、経時安定性、クレンジング力の点から、油性洗浄組成物全量に対し、10~80%が好ましく、20~60%がより好ましく、25~50%がさらにより好ましい。
【0041】
<成分(D)>
本発明における成分(D)のエタノールは、特に限定されず、化粧料成分として許容されるものを用いることができる。
【0042】
本発明にかかる油性洗浄組成物において、成分(D)を含有しない場合には、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさに優れない場合がある。
【0043】
本発明における成分(D)の含有量は、特に限定されないが、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさの点から、油性洗浄組成物全量に対し、1~20%が好ましく、2~10%がより好ましく、4~7%がさらにより好ましい。
【0044】
<成分(E)>
本発明における成分(E)は、トリプロピレングリコールである。本発明において、成分(E)は、必須成分ではないものの、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさの点から、本発明にかかる油性洗浄組成物に含有されることが好ましい。本発明において、トリプロピレングリコールをTPGと称する場合がある。
【0045】
本発明における成分(E)のトリプロピレングリコールは、下記一般式(2)で表される化合物であり、INCI(International Nomenclature of Cosmetic Ingredient)名で「PPG-3」として収載される成分である。
H(OCH2CH(CH3))nOH 式(2)
(式(2)中、nは平均3である。)
【0046】
成分(E)の含有量は、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさの点から、油性洗浄組成物全量に対し、1~10%が好ましく、3~7%が好ましい。
【0047】
成分(E)は、油剤との親和性がプロピレングリコールの2量体よりも高く、油剤に対し良好な相溶性を示す性質を有し得る。市販品としては、ニューポール(登録商標)PP-200(三洋化成工業社製)、アデカ カーポール DL-30(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0048】
前記成分(A)と前記成分(B)の含有質量割合(A)/(B)は、特に限定されないが、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさの点から、0.1~5が好ましく、0.166~4がより好ましく、0.2~2.2がさらにより好ましく、0.4~2.2が特により好ましく、0.5~2.0がさらに特により好ましい。前記成分(A)と前記成分(B)が特定の比率である場合に、本発明にかかる油性洗浄組成物において、前記成分(A)の凝集状態、溶解状態等が好ましくなり、前記成分(A)が好適に機能したと考えられる。
【0049】
前記成分(A)と前記成分(D)の含有質量割合(A)/(D)は、特に限定されないが、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさの点から、0.4~12が好ましく、0.45~6.5がより好ましく、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさの点で、0.8~2.5が特により好ましく、1~2がさらに特により好ましい。前記成分(A)と前記成分(D)が特定の比率である場合に、本発明にかかる油性洗浄組成物において、前記成分(D)が好適に機能し、前記成分(A)の凝集状態、溶解状態等が好ましくなり、前記成分(A)が好適に機能したと考えられる。
【0050】
本発明にかかる油性洗浄組成物は、前記成分(A)~(D)の必須成分に加え、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分を含有することができる。すなわち、他の成分として、前記成分(A)~(D)以外の成分である、油剤、油ゲル化剤、粉体およびそれらの表面処理物、界面活性剤、水、水性成分(前記成分(E)を含む)、紫外線吸収剤、保湿剤、酸化防止剤、防腐剤、色素、香料等、通常化粧料等に用いられる成分を含有することができる。
【0051】
界面活性剤としては、特に限定されず、化粧料成分として許容されるものを用いることができる。具体的には、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。より具体的には、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0052】
本発明における油性洗浄組成物は、特に限定されないが、界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。本発明でいう「実質的に含まない」とは、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでいても良いことを意味するものである。本発明における油性洗浄組成物において、含有される界面活性剤の含有量は、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさの点から、油性洗浄組成物全量に対し、5%以下が好ましく、1%がより好ましく、0.5%以下がさらにより好ましく、0.1%以下が特により好ましく、0%がさらに特により好ましい。
【0053】
水としては、特に限定されず、化粧料成分として許容されるものを用いることができる。具体的には、脱イオン水、蒸留水、精製水、温泉水や、ローズ水、ラベンダー水等の植物由来の水蒸気蒸留水等が挙げられる。
【0054】
本発明にかかる油性洗浄組成物は、特に限定されないが、水を実質的に含まないことが好ましい。本発明でいう「実質的に含まない」とは、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでいても良いことを意味するものである。本発明における油性洗浄組成物において、含有される水の含有量は、経時安定性、クレンジング力、馴染ませた後の拭き取りやすさの点から、油性洗浄組成物全量に対し、3%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらにより好ましく、0.1%以下が特により好ましく、0%がさらに特により好ましい。
【0055】
油剤としては、前記成分(B)、(C)以外の成分として、特に限定されず、化粧料成分として許容されるものを用いることができる。特に限定されないが、具体的には、高級アルコール、炭化水素油、シリコーンなどの油剤を使用できる。例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2-デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、シトステロール、ラノステロール、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)等の高級アルコール類、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等の炭化水素類、ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ等のロウ類、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、硬化油、タートル油、豚脂、馬脂、ミンク油、肝油、卵黄油等の動物油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン等のラノリン類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、グリセリン変性ポリシロキサン、高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、シリコーン樹脂、シリコンゴム、シリコーンレジン等が挙げられる。
【0056】
粉体としては、特に限定されず、化粧料成分として許容されるものを用いることができる。例えば、通常の化粧料に使用されるものであれば、その形状(球状、針状、板状、等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができ、より具体的には、無機粉体としては、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、合成雲母、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、モンモリロナイト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン等;有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、テトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロンパウダー、6ナイロンパウダー、スチレン・アクリル酸共重合体パウダー、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体パウダー、ビニル樹脂パウダー、尿素樹脂パウダー、フェノール樹脂パウダー、フッ素樹脂パウダー、ケイ素樹脂パウダー、アクリル樹脂パウダー、メラミン樹脂パウダー、エポキシ樹脂パウダー、ポリカーボネイト樹脂パウダー、微結晶繊維パウダー、ラウロイルリジン等;有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γー酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した複合粉体等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等;金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等;タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等から選ばれる粉体で、これらの粉体を複合化したり、油剤やシリコーン、又はフッ素化合物等で表面処理を行なった粉体でも良い。
【0057】
本発明にかかる油性洗浄組成物の、前記成分(B)、(C)を含めた油剤の含有量は、特に限定されないが、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさの点から、油性洗浄組成物全量に対し、20~90%であることが好ましく、30~85%であることがより好ましい。
【0058】
本発明にかかる油性洗浄組成物の形態は、特に限定されず、前記必須成分またはその他の成分との併用や容器の機構により、低粘度~高粘度の液状、ジェル状、固形状等とすることができる。
【0059】
本発明にかかる油性洗浄組成物の透過率は、特に限定されないが、経時安定性の点から、660nmの光の波長領域での透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらにより好ましい。前記透過率は、光路長10mm×光路幅10mmのガラスセルに本発明品の100質量部に水を1質量部加えて混合したものを充填し、分光光度計「UV-2500PC UV-VIS REDCORDING SPECTROPHOTOMETER」(SHIMADZU社製)にて測定される。なお、リファレンスには精製水を使用する。
【0060】
本発明にかかる油性洗浄組成物の剤型は、特に限定されないが、例えば風呂場、洗面所等での使用が想定される洗浄料、マッサージ料、クレンジング等の化粧料が好ましく、クレンジング化粧料がより好ましい。
【0061】
従来より、メイクアップ料や皮脂等を除去するための洗浄料やクレンジング料等として、拭き取り用、あるいは洗い流し用のものがある。洗い流し用のものとしては、肌等の上でメイキャップ料や皮脂等となじませた後、水または湯で洗い流す動作を行い得る。
これに対し、拭き取り用としては、洗い流しの動作が特に不要であり、肌等の上でメイキャップ料や皮脂等となじませ、拭き取る動作を行い得る。拭き取り用は、水や湯を必要としないため、使用する場所を選ばないという点から簡便であり、好ましい。
【0062】
通常に洗浄料やクレンジング料等として、用いられた組成物を、拭き取り用として使用する場合には、拭き取りという肌等へ対して力をかけづらい使用方法を伴うことから「クレンジング力に劣る」といった課題や、洗い流しの動作が特に不要となるため、肌等へ適用した後に組成物が残り、「後肌のべたつきのなさに劣る」といった課題や、メイキャップ料と馴染ませた後に拭き取りにくく、場合によっては、過度な拭き取り動作が肌荒れ等を引き起こすように、「馴染ませた後の拭き取りやすさに劣る」といった課題が挙げられる。
【0063】
しかしながら、本発明にかかる油性洗浄組成物は、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさの点に優れる点で、拭き取り用であることが好ましい。
【0064】
本発明にかかる油性洗浄組成物において、使用方法は、特に限定されないが、油性洗浄組成物を含浸体に染み込ませたものを、肌等の上でメイキャップ料や皮脂等となじませ、拭き取ることや、油性洗浄組成物を含浸体に染み込ませずに、肌等の上でメイキャップ料や皮脂等となじませ、その後、コットンやシート等で拭き取ることが可能である。
拭き取り用油性洗浄組成物としての使用方法としては、クレンジング力、後肌のべたつきのなさの点から、油性洗浄組成物を含浸体に染み込ませたものを、肌等の上でメイキャップ料や皮脂等となじませ、拭き取ることが好ましい。
【0065】
本発明にかかる油性洗浄組成物に用いられる含浸体としては、特に限定されないが、コットン、シートから選択される一種又は二種以上であることが好ましい。
前記コットンとしては、特に限定されず、通常の化粧料等の使用に用いられるものを使用することができる。コットンの市販品としては、特に限定されないが、例えば、コーセー ピュア&ソフト コットン、コーセー フェイシャルケア コットンなどが挙げられる。
【0066】
前記シートのシート基剤としては、特に限定されないが、織布、不織布が好ましい。前記シート基剤は、使用感、加工のし易さ等の観点から、不織布が好ましい。
上記不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スティッチボンド不織布などが挙げられる。上記シート基材には、エンボス加工処理を施すことも可能である。
上記シート基材の目付は、特に限定されないが、ふき心地の観点から、30~90g/m2が好ましく、35~80g/m2がより好ましい。
【0067】
前記織布や不織布を構成する繊維としては、特に限定されず、例えば、天然繊維、合成繊維、半天然繊維などが挙げられる。
上記天然繊維としては、綿、パルプ、シルク、セルロース、麻、リンター、カボックなどが挙げられる。
上記半天然繊維としては、レーヨン、アセテートなどが挙げられる。
上記合成繊維としては、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等)、アクリル繊維などが挙げられる。
【0068】
前記シート基材は、織布や不織布等の種類に応じて、公知の製造方法により製造することができる。
【0069】
本発明において、上記シート基材に対する、含浸された本発明の油性洗浄組成物の質量割合は、特に限定されないが、上記シート基材1.0質量部に対して、本発明の油性洗浄組成物が1.0~9.0質量部であることが好ましく、2.0~7.0質量部であることがより好ましい。
【0070】
上記シート化粧料は、容器に充填して、製品として販売される。上記容器としては、例えば、袋体(包装袋)、箱状容器などが挙げられる。
上記容器の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂、アルミニウム等の金属などが挙げられる。
【実施例】
【0071】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。含有量は特記しない限り、その成分が含有される系に対する質量%で示す。
【0072】
実施例1~18及び比較品1~8:油性洗浄組成物
下記表1~3に示す処方の油性洗浄組成物を調製し、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさについて下記の方法により評価した。その結果も併せて表1~3に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
(注1) ウィルブライド S-753D(日油社製)
(注2) ユニルーブ 50MB-168(日油社製)
(注3) LIPONIC EG-1(LIPO CHEMICALS社製)
(注4) Mファインオイル COG-7M(ミヨシ油脂社製)
(注5) こめサラダ油(築野食品工業社製)
(注6) Mファインオイル CCT-1(ミヨシ油脂社製)
【0077】
(評価項目)
イ.経時安定性
ロ.クレンジング力
ハ.後肌のべたつきのなさ
ニ.馴染ませた後の拭き取りやすさ
【0078】
(評価方法)
[イ. 経時安定性]
〔評価方法〕
経時安定性は試料を樹脂製透明ボトルに充填して密閉し、50℃に設定した恒温槽に入れ、1週間静置した外観を目視で確認し、以下の判定基準に従って判定した。
(判定):(安定性試験結果)
◎ : 層分離がなく、白濁が全く見られない
○ : 層分離がなく、わずかに白濁が認められる
△ : 層分離がなく、とても白濁している
× : 層分離する
【0079】
[ロ.クレンジング力]
[ハ.後肌のべたつきのなさ]
〔評価方法〕
クレンジング力及び後肌のべたつきのなさは、下記に示すメイクアップ料をした化粧品評価専門パネル10名が、調製した油性洗浄組成物2.0gを含浸させたコットン(製品名:コーセー ピュア&ソフト コットン、材質:コットン100%、サイズ:60mm×70mm)を用いて、メイク料を拭き取り評価した。下記絶対評価にて5段階に評価し評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
〔評価項目(ロ)~(ハ)に用いたメイクアップ料〕
口紅:製品名 エスプリーク リッチフォンデュ ルージュ RO661(コーセー社製)
ファンデーション:製品名 エスプリーク ピュアスキンパクト UV OC-410(コーセー社製)
マスカラ:製品名 エスプリーク フルインプレッション マスカラ BK001(コーセー社製)
[ロ.クレンジング力]
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える
○ :3点を超える4点以下
△ :2点を超える3点以下
× :2点以下
[ハ.後肌のべたつきのなさ]
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:べたつきを感じない
4点:ほとんどべたつきを感じない
3点:ややべたつきを感じる
2点:べたつきを感じる
1点:非常にべたつきを感じる
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える :非常に良好
○ :3点を超える4点以下 :良好
△ :2点を超える3点以下 :やや不良
× :2点以下 :不良
【0080】
[ニ.馴染ませた後の拭き取りやすさ]
〔評価方法〕
馴染ませた後の拭き取りやすさは、化粧品評価専門パネル10名が、下記に示すアイライナーを5cm腕に塗布した後、調製した油性洗浄組成物2.0gを含浸させたコットン(製品名:コーセー ピュア&ソフト コットン、材質:コットン100%、サイズ:60mm×70mm)を用いて、メイクアップ量を拭き取る際にかかる時間によって評価した。下記絶対評価にて5段階に評価し評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
〔評価項目(ニ)に用いたアイライナー〕
アイライナー:製品名 ファシオ パワフルステイ ジェルライナー(コーセー社製)
[ニ.馴染ませた後の拭き取りやすさ]
絶対評価基準
(評点):(評価)
6点:3秒以下
5点:3秒を超えて6秒以下
4点:6秒を超えて9秒以下
3点:9秒を超えて12秒以下
2点:12秒を超えて15秒以下
1点:15秒を超える
5段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎◎:5点を超える
◎ :4点を超える5点以下
○ :3点を超える4点以下
△ :2点を超える3点以下
× :2点以下
【0081】
(製造方法)
成分1~14を室温で均一に混合溶解する。
【0082】
表1~3の結果から明らかなように、実施例1~18の油性洗浄剤組成物は、比較例1~8に比べ、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさにおいて優れたものであった。
これに対して成分(A)を含有しない比較例1は、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさにおいて、優れなかった。
また、成分(A)を含有せず、PPG-38ブテス-37を含有した比較例2は、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさにおいて、優れなかった。
また、成分(A)を含有せず、グリセレス-26を含有した比較例3は、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさにおいて、優れなかった。
また、成分(A)を含有せず、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルを含有した比較例4は、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさにおいて、優れなかった。
また、成分(B)を含有しない比較例5は、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさにおいて、優れなかった。
また、成分(C)を含有しない比較例6は、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさにおいて、優れなかった。
また、成分(C)を含有しない比較例7は、経時安定性、クレンジング力、馴染ませた後の拭き取りやすさにおいて、優れなかった。
また成分(D)を含有しない比較例8は、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさに優れなかった。
【0083】
実施例19:油性クレンジングオイル
(成分) (%)
1.PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン(注1) 8.0
2.PPG-38ブテス-37(注2) 2.0
3.オリーブ油 30
4.トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(注6) 残量
5.エタノール 10
6.トリプロピレングリコール 3.0
7.プロピレングリコール 1.0
8.ホホバ油 1.0
9.グリチルレチン酸ステアリル 0.1
10.アスタキサンチン 0.001
11.セラミド3 0.1
12.トコフェロール 0.001
【0084】
(製造方法)
A:成分1~12を70℃で均一に混合溶解する。
B:Aを室温まで冷却し、油性クレンジングオイルを得た。
【0085】
実施例19の油性クレンジングオイルは、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさにおいて優れたものであった。また、各評価においては、上述の評価方法から、コットンの種類を変更し、コットン(製品名:コーセー フェイシャルケア コットン)に変更した点以外は、同様とした。
【0086】
実施例20:油性クレンジングオイル
(成分) (%)
1.PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン(注1) 5.0
2.グリセレス-26(注3) 2.0
3.オリーブスクワラン 10
4.トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(注6) 残量
5.エタノール 10
6.トリプロピレングリコール 3.0
7.デカメチルシクロペンタシロキサン 1.0
8.ホホバ油 1.0
9.オレイルアルコール 0.1
10.フェノキシエタノール 0.001
11.イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(8E.O.)(HLB=10)
5.0
12.水 1.0
【0087】
(製造方法)
A:成分1~12を70℃で均一に混合溶解する。
B:Aを室温まで冷却し、油性クレンジングオイルを得た。
【0088】
実施例20の油性クレンジングオイルは、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさにおいて優れたものであった。また、各評価においては、上述の評価方法から、コットンの種類を変更し、コットン(製品名:コーセー フェイシャルケア コットン)に変更した点以外は、同様とした。
【0089】
実施例21:油性皮脂除去シート
(成分) (%)
1.PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン(注1) 10
2.流動パラフィン 2.0
3.スクワラン 10
4.イソステアリン酸 残量
5.エタノール 3.0
6.トリプロピレングリコール 9.0
7.リンゴ酸ジイソステアリル 1.0
8.ラベンダー油 1.0
9.ローズヒップ油 0.1
10.フェノキシエタノール 0.001
11.ペンタオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(40E.O.)(HLB=9))
1.0
12.水 0.2
【0090】
(製造方法)
A:成分1~12を70℃で均一に混合溶解する。
B:Aを室温まで冷却し、その後、不織布(材質:ナイロン繊維、サイズ:80mm×40mm、目付:20~100g/m2)に対し、含浸(シート基材1.0質量部に対して、本発明の油性洗浄組成物が1.5質量部)させ、油性皮脂除去シートを得た。
【0091】
実施例21の油性皮脂除去シートは、経時安定性、クレンジング力、後肌のべたつきのなさ、馴染ませた後の拭き取りやすさにおいて優れたものであった。