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  • 特許-骨代謝改善剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】骨代謝改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20230927BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20230927BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/899
A61P19/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019074154
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020172457
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】321006774
【氏名又は名称】DM三井製糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】古田 到真
(72)【発明者】
【氏名】坂崎 未季
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109125341(CN,A)
【文献】特開2002-338490(JP,A)
【文献】国際公開第2007/037249(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104957602(CN,A)
【文献】特表2010-503417(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0357583(US,A1)
【文献】特表2015-528448(JP,A)
【文献】国際公開第2019/028506(WO,A1)
【文献】宮崎耕平 他,バガスからの有用物質製造の技術実証,精糖技術研究会講演要旨,2018年05月10日,116th,5-8
【文献】古田到真 他,国内製糖工場廃棄物からの有価物製造におけるGHG削減技術実証,精糖技術研究会誌,2017年,Vol.63,pp.7-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61P 21/
A61P 19/
A23L 33/
A61K 36/899
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バガスの分解抽出物を有効成分として含有する、骨代謝改善剤であって、
前記バガスの分解抽出物は、バガスの分解処理により得られる分解処理液を、固定担体としての合成吸着剤を充填したカラムに通液し、該合成吸着剤に吸着された成分を、エタノール及び水の混合溶媒で溶出させて得られる画分であり、
前記分解処理は、アルカリ処理、水熱処理、酸処理、亜臨界水処理及び爆砕処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の分解処理であり、
前記合成吸着剤は、無置換基型の芳香族系樹脂であり、
前記カラムの温度は20~60℃であり、
前記混合溶媒のエタノール及び水の体積比(エタノール/水)は50/50~60/40である、骨代謝改善剤。
【請求項2】
バガスの分解抽出物を有効成分として含有する、骨形成促進剤であって、
前記バガスの分解抽出物は、バガスの分解処理により得られる分解処理液を、固定担体としての合成吸着剤を充填したカラムに通液し、該合成吸着剤に吸着された成分を、エタノール及び水の混合溶媒で溶出させて得られる画分であり、
前記分解処理は、アルカリ処理、水熱処理、酸処理、亜臨界水処理及び爆砕処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の分解処理であり、
前記合成吸着剤は、無置換基型の芳香族系樹脂であり、
前記カラムの温度は20~60℃であり、
前記混合溶媒のエタノール及び水の体積比(エタノール/水)は50/50~60/40である、骨形成促進剤。
【請求項3】
バガスの分解抽出物を有効成分として含有する、骨吸収抑制剤であって、
前記バガスの分解抽出物は、バガスの分解処理により得られる分解処理液を、固定担体としての合成吸着剤を充填したカラムに通液し、該合成吸着剤に吸着された成分を、エタノール及び水の混合溶媒で溶出させて得られる画分であり、
前記分解処理は、アルカリ処理、水熱処理、酸処理、亜臨界水処理及び爆砕処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の分解処理であり、
前記合成吸着剤は、無置換基型の芳香族系樹脂であり、
前記カラムの温度は20~60℃であり、
前記混合溶媒のエタノール及び水の体積比(エタノール/水)は50/50~60/40である、骨吸収抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨代謝改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は骨芽細胞(骨を作る細胞)による「骨形成」と破骨細胞(骨を壊す細胞)による「骨吸収」を繰り返される骨代謝により再構築(骨リモデリング)されており、骨量はこの2つの細胞のバランスによって保たれている。骨芽細胞は脂肪や筋肉の細胞などと同様に間葉系幹細胞由来であるが、破骨細胞は赤血球及び白血球と同様に血球系の細胞由来である。
【0003】
骨代謝は、骨芽細胞の表面にRANKLという膜たんぱく質が現れることにより開始される。RANKLが血球系の細胞であるRANKという受容体に結合すると、血球系の細胞が破骨細胞へと分化する。分化・成熟した破骨細胞は骨を壊し(骨吸収)、その後骨芽細胞が吸収された分と同量の骨を形成する。しかし、老化や卵巣機能の低下等の要因によって骨代謝のバランス(骨吸収と骨形成のバランス)が崩れ、骨量(骨密度)が低下することにより、骨折、骨粗しょう症、骨軟化症等の骨関連疾患が生じる。
【0004】
そこで、骨形成及び骨吸収を含む骨代謝を改善することより、骨関連疾患の抑制に役立つ成分が求められている。例えば特許文献1には、アサイー抽出物及びマタタビ抽出物の少なくともいずれかを有効成分とする骨形成促進剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-150240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規な骨代謝改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはin vitro試験によって、バガスの分解抽出物が骨代謝改善効果を有することを見出した。
【0008】
本発明の一側面は、バガスの分解抽出物を有効成分として含有する、骨代謝改善剤を提供する。
【0009】
バガスの分解抽出物は、アルカリ処理、水熱処理、酸処理、亜臨界水処理及び爆砕処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の分解処理により得られる分解処理液であってよい。
【0010】
バガスの分解抽出物は、分解処理液を、固定担体を充填したカラムに通液することより得られる画分であってもよい。固定担体は、好ましくは、合成吸着剤又はイオン交換樹脂である。
【0011】
固定担体が合成吸着剤である場合、バガスの分解抽出物は、該合成吸着剤に吸着された成分を、水、メタノール、エタノール及びこれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒で溶出させることにより得られる画分であってもよい。
【0012】
合成吸着剤は、好ましくは、芳香族系樹脂、アクリル酸系メタクリル樹脂、又はアクリロニトリル脂肪族系樹脂である。
【0013】
バガスの分解抽出物は、分解処理液を、固定担体としての合成吸着剤を充填したカラムに通液し、該合成吸着剤に吸着された成分を、エタノール及び水の混合溶媒で溶出させて得られる画分であってよく、この場合、合成吸着剤は、無置換基型の芳香族系樹脂であり、カラムの温度は20~60℃であり、混合溶媒のエタノール及び水の体積比(エタノール/水)は50/50~60/40であってもよい。
【0014】
本発明の他の一側面は、バガスの分解抽出物を有効成分として含有する、骨形成促進剤を提供する。
【0015】
本発明の更なる他の一側面は、バガスの分解抽出物を有効成分として含有する、骨吸収抑制剤を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、新規な骨代謝改善剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】試験例2について、破骨細胞の顕微鏡観察結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明の骨代謝改善剤は、骨代謝の改善作用を有する。骨代謝の改善作用は、骨形成(新たな骨の形成)を促進する作用、及び過度な骨吸収(骨の破壊)を抑制する作用の少なくとも1種であってよい。これにより、骨形成と骨吸収とのバランスを好適に調整することができ、結果として骨の再構築を進行させやすくすることができる。すなわち、本発明は、骨形成促進剤、及び骨吸収抑制剤を提供するということができ、骨形成及び骨吸収のバランス調整剤を提供するということもできる。
【0020】
骨形成促進剤における骨形成の促進は、骨芽細胞の分化を促進する作用に基づくものであってよい。すなわち、本明細書における骨形成促進剤は、骨芽細胞分化促進剤ということもできる。また、骨吸収抑制剤における骨吸収の抑制は、破骨細胞の分化を抑制する作用に基づくものであってよい。すなわち、本明細書における骨吸収抑制剤は、破骨細胞分化抑制剤ということもできる。
【0021】
一実施形態に係る骨形成促進剤は、バガスの分解抽出物を有効成分として含有する。バガスの分解抽出物には、p-クマル酸、フェルラ酸、カフェ酸及びバニリン等のフェニルプロパノイド、並びにリグニン及びその分解物からなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれていることが好ましい。
【0022】
「バガス」とは、典型的には原料糖製造工程における製糖過程で排出されるバガスをいう。原料糖工場における製糖過程で排出されるバガスには、最終圧搾機を出た最終バガスだけではなく、第1圧搾機を含む以降の圧搾機に食い込まれた細裂甘蔗をも含む。好適なバガスは、原料糖工場において圧搾工程により糖汁を圧搾した後に排出されるバガスである。当該バガスは、甘蔗の種類、収穫時期等により、その含まれる水分、糖分及びそれらの組成比が異なるが、本発明においては、これらのバガスを任意に用いることができる。さらに、本実施形態では、原料のバガスとして、原料糖工場と同様に、例えば黒糖製造工場において排出される甘蔗圧搾後に残るバガス、又は実験室レベルの小規模な実施により甘蔗から糖液を圧搾した後のバガスも用いることができる。
【0023】
バガスの分解抽出物は、一実施形態において、バガス(及び/又はその加工物)の分解処理液であってよい。分解処理液は、アルカリ処理、水熱処理、酸処理、亜臨界水処理及び爆砕処理からなる群から選ばれる少なくとも1種の分解処理により得ることができる。本明細書におけるバガスの分解処理は、リグニン、セルロース、及び/又はヘミセルロースの化学構造の一部又は全部が壊れることが必要である。分解処理は、バガスの分解抽出物を得やすい観点から、好ましくはアルカリ処理又は水熱処理である。
【0024】
アルカリ処理は、バガスにアルカリ性溶液を接触させる処理であってよい。アルカリ性溶液を接触させる方法としては、例えば、アルカリ性溶液をバガスに振りかける方法、バガスをアルカリ性溶液に浸漬させる方法等が挙げられる。バガスをアルカリ性溶液に浸漬させる方法においては、バガス及びアルカリ性溶液の混合物を撹拌しながら浸漬させてもよい。
【0025】
アルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液等が挙げられる。アルカリ性溶液は、これらの溶液を1種単独で又は2種以上を混合して用いられてよい。アルカリ性溶液は、安価であり、食品製造工程で容易に用いられる観点から、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液である。
【0026】
アルカリ性溶液の温度(液温)は、分解処理の処理時間を短縮する観点から、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、更に好ましくは130℃以上である。アルカリ性溶液の温度は、分解処理液に多糖類を残存させないようにする観点から、好ましくは250℃以下であり、より好ましくは200℃以下であり、更に好ましくは150℃以下である。
【0027】
アルカリ処理は、常圧下で行われてよく、加圧して行われてもよい。加圧する場合、圧力は、0.1MPa以上、又は0.2MPa以上であってよく、4.0MPa以下、1.6MPa以下、又は0.5MPa以下であってよい。
【0028】
水熱処理は、バガスに高温の水又は水蒸気を高圧下で接触させる処理であってよい。水熱処理は、より具体的には、例えば、バガスの固形物濃度が0.1~50%となるように水を加え、高温・高圧条件下で分解処理を行う方法であってもよい。水又は水蒸気の温度は130~250℃であることが好ましく、加える圧力は、各温度の水の飽和水蒸気圧よりも、更に0.1~0.5MPa高い圧力であることが好ましい。
【0029】
酸処理は、バガスに酸性溶液を接触させる処理であってよい。酸性溶液としては、希硫酸等が挙げられる。バガスに酸性溶液を接触させる方法、酸処理における酸溶液の温度、酸処理における圧力条件は、上述したアルカリ処理における方法又は条件と同様であってよい。
【0030】
亜臨界水処理は、バガスに亜臨界水を接触させる処理であってよい。バガスに亜臨界水を接触させる方法は、上述したアルカリ処理における方法と同様であってよい。亜臨界水処理の条件は特に制限されないが、亜臨界水の温度を160~240℃とし、処理時間を1~90分間とすることが好ましい。
【0031】
爆砕処理は、水熱処理により、バガスに含まれる不溶性キシランをある程度分解させた後、耐圧反応容器に設けられたバルブを一気に開放すること等によって、瞬間的に大気圧に放出することによりバガスを粉砕する処理であってよい。
【0032】
分解処理液においては、上述した分解処理の後、固形分及び液分を分離する処理がなされてもよい。この場合、分離後に得られた液分を分解処理液とすることができる。固形分及び液分を分離する方法は、ストレーナー、ろ過、遠心分離、デカンテーション等による分離であってよい。
【0033】
分解処理液においては、膜分離により多糖類等の高分子成分が除去されてもよい。この場合、膜分離後の液分を分解処理液とすることができる。分離膜は、限外濾過膜(UF膜)であれば特に限定されない。限外濾過膜の分画分子量は、好ましくは2500~50000であり、より好ましくは2500~5000である。
【0034】
限外濾過膜の素材としては、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)、再生セルロース、セルロース、セルロースエステル、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリ四フッ化エチレン等を使用することができる。
【0035】
限外濾過膜による濾過方式は、デッドエンド濾過、又はクロスフロー濾過であってよいが、膜ファウリング抑制の観点から、クロスフロー濾過であることが好ましい。
【0036】
限外濾過膜の膜形態としては、平膜型、スパイラル型、チューブラー型、中空糸型等、適宜の形態のものが使用できる。より具体的には、SUEZ社のGEシリーズ、GHシリーズ、GKシリーズ、PWタイプ、HWSUFタイプ、KOCH社のHFM-180、HFM-183、HFM-251、HFM-300、HFK-131、HFK-328、MPT-U20、MPS-U20P、MPS-U20S、Synder社のSPE1、SPE3、SPE5、SPE10、SPE30、SPV5、SPV50、SOW30、旭化成株式会社製のマイクローザ(登録商標)UFシリーズの分画分子量3,000から10,000に相当するもの、日東電工株式会社製のNTR7410、NTR7450等が挙げられる。
【0037】
バガスの分解抽出物は、他の実施形態において、上述した分解処理液を、固定担体を充填したカラムに通液することより得られる画分であってもよい。分解処理液をカラムに通液することにより、分解処理液中の骨代謝改善作用を有する成分(有効成分)が固定担体に吸着され、糖類及び無機塩類の大部分がそのまま流出する。すなわち、バガスの分解抽出物は、上述した分解処理液を、固定担体を充填したカラムに通液して、固定担体に吸着した画分であってよい。
【0038】
上述した分解処理液をカラムに通液する場合、分解処理液は、カラムに直接通液することができ、また、水で任意の濃度に調整して、カラムに通液することもできる。分解処理液においては、カラムの通液前にpHを調整してもよい。吸着率を向上させる観点から、固定担体が合成吸着剤の場合、分解処理液は、pH6以下に調整されていることが好ましい。分解処理液のpHは、4.5を超え6以下であってもよい。固定担体がイオン交換樹脂の場合、分解処理液は、pH5以上に調整されていることが好ましい。
【0039】
固定担体は、好ましくは、合成吸着剤又はイオン交換樹脂のいずれかである。
【0040】
合成吸着剤は、好ましくは合成多孔質吸着剤である。合成吸着剤(合成多孔質吸着剤)としては、有機系樹脂が好ましく用いられる。有機系樹脂は、好ましくは、芳香族系樹脂、アクリル酸系メタクリル樹脂、及びアクリロニトリル脂肪族系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0041】
芳香族系樹脂としては、例えば、スチレン-ジビニルベンゼン系樹脂が挙げられる。芳香族系樹脂としては、疎水性置換基を有する芳香族系樹脂、無置換基型の芳香族系樹脂、無置換基型に特殊処理をした芳香族系樹脂等の多孔質性樹脂も挙げられ、このうち、無置換基型の芳香族系樹脂又は無置換基型に特殊処理をした芳香族系樹脂が好ましい。
【0042】
合成吸着剤で市販のものとしては、ダイヤイオン(商標)HP-10、HP-20、HP-21、HP-30、HP-40、HP-50(以上、無置換基型の芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);SP-825、SP-800、SP-850、SP-875、SP-70、SP-700(以上、無置換基型に特殊処理を施した芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);SP-900(芳香族系樹脂、商品名、三菱ケミカル株式会社製);アンバーライト(商標)XAD-2、XAD-4、XAD-16、XAD-2000(以上、芳香族系樹脂、いずれも商品名、株式会社オルガノ製);ダイヤイオン(商標)SP-205、SP-206、SP-207(以上、疎水性置換基を有する芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);HP-2MG、EX-0021(以上、疎水性置換基を有する芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);アンバーライト(商標)XAD-7、XAD-8(以上、アクリル酸エステル樹脂、いずれも商品名、株式会社オルガノ製);ダイヤイオン(商標)HP1MG、HP2MG(以上、アクリル酸メタクリル樹脂、いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);セファデックス(商標)LH20、LH60(以上、架橋デキストランの誘導体、いずれも商品名、ファルマシア バイオテク株式会社製)等が挙げられる。中でも、無置換基型の芳香族系樹脂(例えば、HP-20)又は無置換基型に特殊処理を施した芳香族系樹脂(例えば、SP-850)が好ましい。
【0043】
カラムに充填する合成吸着剤の量は、カラムの大きさ、合成吸着剤の種類等によって適宜決定することができる。
【0044】
固定担体として合成吸着剤を用いる場合、分解処理液を通液するときの通液速度は、カラムの大きさ、溶出溶媒の種類、合成吸着剤の種類等によって適宜変更が可能であるが、好ましくは、SV=1~30時間-1である。なお、SV(Space Velocity、空間速度)は、1時間当たり樹脂容量の何倍量の液体を通液するかという単位である。
【0045】
合成吸着剤に吸着された吸着成分(有効成分)は、溶媒(溶出溶媒)により溶出させることができる。吸着成分をより効率よく回収する観点から、吸着成分を溶出させる前に、カラムに残留する糖類及び無機塩類を水洗により洗い流すことが好ましい。この場合、溶出させた成分をバガスの分解抽出物とすることができる。
【0046】
固定担体として合成吸着剤を用いる場合、溶出溶媒は、水、メタノール、エタノール及びこれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。溶出溶媒は、アルコール及び水の混合溶媒が好ましく、エタノール及び水の混合溶媒がより好ましく、吸着成分が室温においてより効率よく溶出可能となる観点から、体積比が50/50~60/40(エタノール/水)であるエタノール及び水の混合溶媒が更に好ましい。
【0047】
固定担体として合成吸着剤を用いる場合、溶出する際のカラムの温度(カラム温度)は室温であってよいが、室温よりもカラム温度を高温にすることにより、エタノール及び水の混合溶媒においてエタノールの混合割合を減らすことができ、吸着成分をより効率的に溶出させることができる。温度は、好ましくは20~60℃であり、より好ましくは40~60℃である。カラム内は常圧条件下であっても、加圧条件下であってもよい。
【0048】
固定担体として合成吸着剤を用いる場合、溶出速度は、カラムの大きさ、溶出溶媒の種類、合成吸着剤の種類等によって適宜設定することが可能であるが、好ましくは、SV=0.1~10時間-1である。
【0049】
イオン交換樹脂は、樹脂の形態に基づいて、ゲル型樹脂と、ポーラス型、マイクロポーラス型又はハイポーラス型等の多孔性樹脂とに分類されるが、特に制限はない。イオン交換樹脂は、好ましくは陰イオン交換樹脂である。陰イオン交換樹脂としては、強塩基性陰イオン交換樹脂又は弱塩基性陰イオン交換樹脂が用いられてよい。アルカリ処理液を原料として使用する場合、好ましくは、強塩基性陰イオン交換樹脂が用いられるが、その他の処理による分解処理液を原料とする場合は特に制限はない。
【0050】
市販の強塩基性陰イオン交換樹脂としては、ダイヤイオン(商標)PA306、PA308、PA312、PA316、PA318L、HPA25、SA10A、SA12A、SA11A、SA20A、UBA120(以上、三菱ケミカル株式会社製)、アンバーライト(商標)IRA400J、IRA402Bl、IRA404J、IRA900J、IRA904、IRA458RF、IRA958、IRA410J、IRA411、IRA910CT(以上、オルガノ株式会社製)、ダウエックス(商標)マラソンA、マラソンMSA、MONOSPHERE550A、マラソンA2(以上、ダウケミカル日本株式会社製)等が挙げられる。
【0051】
カラムに充填するイオン交換樹脂の量は、カラムの大きさ、イオン交換樹脂の種類等によって適宜決定できるが、分解処理液の固形分に対して2~10,000倍湿潤体積量であることが好ましく、5~500倍湿潤体積量であることがより好ましい。
【0052】
通液条件は、前処理液の種類、イオン交換樹脂の種類等により適宜設定することが可能である。好ましくは、流速はSV=0.3~30時間-1であり、通液する液量はイオン交換樹脂の100~300体積%であり、カラム温度は40~90℃である。カラム内は常圧又は加圧された状態であってもよい。
【0053】
固定担体としてイオン交換樹脂を用いる場合、バガスの分解抽出物は、イオン交換樹脂を充填したカラムに通液し、塩、酸、アルコール又はこれらの混合物の水溶液等の溶離液で溶出させることで得られる画分であってもよい。この場合、溶離液は脱気処理されていてもよい。
【0054】
バガスの分解抽出物は、一実施形態においては、上述した分解処理液又は画分を濃縮した濃縮物であってもよい。濃縮方法は公知の方法であってよく、例えば、減圧下での溶媒留去、凍結乾燥等の方法であってよい。濃縮を行う場合、分解処理液又は画分を15~30倍に濃縮して、濃縮後の成分をバガスの分解抽出物とすることができる。
【0055】
バガスの分解抽出物は、例えば、次のようにして得ることができる。バガスに、固形物濃度が0.1~50%となるように1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して100℃で煮沸を行い、分解処理液(アルカリ処理液)を得る。分解処理液を分画分子量2500~5000のUF膜にて限外濾過を行い、得られた濾過液を酸性に調整してから、無置換基型の芳香族系樹脂を充填したカラムに、カラム温度20~60℃にて通液する。その後、カラムに吸着された成分を、カラム温度20~60℃にて、体積比が50/50~60/40(エタノール/水)のエタノール及び水の混合溶媒(溶出溶媒)で溶出させ、エタノール及び水の混合溶媒での溶出開始時点から集めた溶出液の量が該芳香族系樹脂の45倍湿潤体積量以内に溶出する画分を回収する。回収された画分(骨代謝改善作用を有する成分を含む画分)を集め、慣用の手段(減圧下での溶媒留去、凍結乾燥等)により濃縮して、バガスの分解抽出物を得ることができる。このようにして得られたバガスの分解抽出物は、固形分が30質量%以上になるように濃縮した液状又は粉末状の抽出物として保存することができる。抽出物の保存は、当該抽出物が液状の場合、冷蔵で行うことが好ましい。
【0056】
バガスの分解抽出物は、他の例として、例えば、次のようにして得ることもできる。すなわち、バガスに固形物濃度が0.1~50%となるように加水して、130~250℃の水により、0.2~4.0MPaの圧力下で水熱処理を行い、濾過による固液分離で分解処理液(水熱処理液)を得る。得られた水熱処理液について、無置換基型に特殊処理を施した芳香族系樹脂を充填したカラムに、温度20~60℃にて通液した後、カラムに吸着された成分を、カラム温度20~60℃にて、体積比が50/50~60/40(エタノール/水)のエタノール及び水の混合溶媒(溶出溶媒)で溶出させ、エタノール及び水の混合溶媒での溶出開始時点から集めた溶出液の量が該芳香族系樹脂の5倍湿潤体積量以内に溶出する画分を回収する。回収された画分(骨代謝改善作用を有する成分を含む画分)を集め、慣用の手段(減圧下での溶媒留去、凍結乾燥等)により濃縮して、バガスの分解抽出物を得ることができる。このようにして得られたバガスの分解抽出物は、固形分が30質量%以上になるように濃縮した液状又は粉末状の抽出物として保存することができる。抽出物の保存は、当該抽出物が液状の場合、冷蔵で行うことが好ましい。
【0057】
上述した各実施形態におけるバガスの分解抽出物は、液状又は粉末状であってよい。粉末状のバガスの分解抽出物は、例えば、液状のバガス分解抽出物を用いて、スプレードライ法、凍結乾燥法、流動層造粒法、賦形剤を用いた粉末化法等により製造することができる。
【0058】
骨代謝改善剤は、食品組成物、医薬品又は医薬部外品として用いることができる。食品組成物は、例えば、健康食品、特定保健用食品、機能性食品、栄養機能食品、サプリメント等の形態で提供されてもよい。すなわち本発明によれば、骨代謝改善用食品組成物、骨代謝改善用医薬品、又は骨代謝改善用医薬部外品が提供されるということもできる。
【0059】
骨代謝改善剤は、有効成分であるバガスの分解抽出物のみからなってもよく、食品組成物、医薬部外品又は医薬品に使用可能な素材を更に含有してもよい。食品組成物、医薬部外品又は医薬品に使用可能な素材としては、特に制限されるものではないが、例えば、アミノ酸、タンパク質、炭水化物、油脂、甘味料、ミネラル、ビタミン、香料、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等が挙げられる。
【0060】
タンパク質としては、例えば、ミルクカゼイン、ホエイ、大豆タンパク、小麦タンパク、卵白等が挙げられる。炭水化物としては、例えば、コーンスターチ、セルロース、α化デンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン等が挙げられる。油脂としては、例えば、サラダ油、コーン油、大豆油、ベニバナ油、オリーブ油、パーム油等が挙げられる。甘味料としては、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK等の人工甘味料、ステビア甘味料等が挙げられる。ミネラルとしては、例えば、カルシウム、カリウム、リン、ナトリウム、マンガン、鉄、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの塩類等が挙げられる。ビタミンとしては、例えば、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB類、ビオチン、ナイアシン等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、デキストリン、デンプン、乳糖、結晶セルロース等が挙げられる。結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸、乳酸、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。基剤としては、例えば、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0061】
骨代謝改善剤が他の素材を配合する場合、有効成分であるバガスの分解抽出物の含有量は、後述する骨代謝改善剤の形態、使用目的等に応じて適宜設定すればよいが、骨代謝改善効果をより一層有効に発揮する観点から、好ましくは、固形分として0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下である。
【0062】
骨代謝改善剤の形状は制限されず、固体(粉末、顆粒等)、液体(溶液、懸濁液等)、ペースト等のいずれの形状であってもよく、散剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤等のいずれの剤形であってもよい。
【0063】
骨代謝改善剤は経口投与がされてよく、静脈投与等の非経口投与がされてもよい。
【0064】
骨代謝改善剤が経口投与される場合、投与量としては、例えば、バガスの分解抽出物が1回当たり50μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、100μg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、150μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、バガスの分解抽出物が1日当たり150μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、300μg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、450μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、バガスの分解抽出物が1回当たり1000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、800mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、600mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。また、バガスの分解抽出物が1日当たり3000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、2000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、1000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。この範囲であれば、十分な血中濃度を達成することができ、骨代謝改善作用をより効果的に発現することができる。
【0065】
骨代謝改善剤が、非経口投与される場合、投与量としては、例えば、バガスの分解抽出物が1回当たり50μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、150μg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、250μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、バガスの分解抽出物が1日当たり100μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、300μg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、500μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、バガスの分解抽出物が、1回当たり2000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、1500mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、1000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。また、バガスの分解抽出物が1日当たり4000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、3000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、2000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。この範囲であれば、十分な血中濃度を達成することができ、骨代謝改善作用をより効果的に発現することができる。
【0066】
本実施形態の骨代謝改善剤は、ヒト、又は動物に使用することができる。骨代謝改善剤を動物へ使用する場合、飼料、飼料添加物として用いることができる。飼料としては、ドッグフード、キャットフード等のコンパニオン・アニマル用飼料、家畜用飼料、家禽用飼料、養殖魚介類用飼料等が挙げられる。「飼料」には、動物が栄養目的で経口的に摂取するもの全てが含まれる。より具体的には、養分含量の面から分類すると、粗飼料、濃厚飼料、無機物飼料、特殊飼料の全てを包含し、また公的規格の面から分類すると、配合飼料、混合飼料、単体飼料の全てを包含する。また、給餌方法の面から分類すると、直接給餌する飼料、他の飼料と混合して給餌する飼料、又は飲料水に添加し栄養分を補給するための飼料の全てを包含する。
【0067】
上述した骨代謝改善剤は、ヒト又はヒト以外の動物の骨代謝を改善することができるため、骨折、骨粗しょう症、骨軟化症等の骨関連疾患の予防用、治療用として用いられることもできる。
【0068】
一実施形態に係る骨形成促進剤及び骨吸収抑制剤の具体的な態様は、上述した骨代謝改善剤における態様と同様であってよい。すなわち、一実施形態に係る骨形成促進剤、又は骨吸収抑制剤は、上述した骨代謝改善剤に関する説明において、「骨代謝改善剤」を「骨形成促進剤」又は「骨吸収抑制剤」と読み替えたものであってよい。
【実施例
【0069】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。バガスの分解抽出物は、以下、単に「抽出物」と表現することがある。
【0070】
<バガスの分解抽出物の製造>
[製造例1]
サトウキビの搾りかすであるバガス15kg(含水率50質量%)及び0.5%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液100Lを混合し、150℃の条件でアルカリ処理を行った。アルカリ処理後の混合液を固形分と液分に分離して、液分を約100L得た。分画分子量2500のUF膜(SUEZ社、GH8040F30)を用いて限外濾過を行い、濾過液80Lを得た。合成吸着剤(三菱ケミカル株式会社製、HP-20)1リットルを樹脂塔(内径80mm、高さ400mm)に充填し、これに上記の濾過液を、pHを6に調整してから流速10リットル/時間(SV=10.0(時間-1))で通液した。
【0071】
続いて、5リットルの精製水を、流速10リットル/時間(SV=10.0(時間-1))で樹脂塔に通液して洗浄した。次に、溶出溶媒として60%エタノール水溶液(エタノール/水=60/40(体積/体積))2リットルを、流速2リットル/時間(SV=2.0(時間-1))で樹脂塔に通液した。続けて、2リットルの精製水を流速2リットル/時間(SV=2.0(時間-1))で樹脂塔に通液し、合成吸着剤に吸着した成分を溶出させた。樹脂塔から溶出した画分を、ロータリーエバポレーターにて約10倍の濃度に減圧濃縮したのち、一晩凍結乾燥して、バガスの分解抽出物として、茶褐色の粉末20gを得た。これを抽出物Aとした。
【0072】
[製造例2]
サトウキビの搾りかすであるバガス30kg(含水率50質量%)を、200℃、1.8MPaの熱水100Lで水熱処理を行った。前処理後の混合液を固形分と液分とに分離して、液分を約88L得た。分画分子量2500のUF膜(SUEZ社、GH8040F30)を用いて限外濾過を行い、濾過液70Lを得た。合成吸着剤(三菱ケミカル株式会社製、SP-850)1Lを樹脂塔(内径80mm、高さ400mm)に充填し、これに上記の濾過液のうち25Lを、流速20L/時間(SV=20.0(時間-1))で通液した。
【0073】
続いて、3.3Lの精製水を、流速20L/時間(SV=20.0(時間-1))で樹脂塔に通液して洗浄した。次に、溶出溶媒として60%エタノール水溶液(エタノール/水=60/40(体積/体積))2Lを、流速2L/時間(SV=2.0(時間-1))で樹脂塔に通液した。続けて、2Lの精製水を流速2L/時間(SV=2.0(時間-1))で樹脂塔に通液し、合成吸着剤に吸着した成分を溶出させた。樹脂塔から溶出した画分を、ロータリーエバポレーターにて約10倍の濃度に減圧濃縮したのち、一晩凍結乾燥して、バガスの分解抽出物として、茶褐色の粉末40gを得た。これを抽出物Wとした。
【0074】
<試験例1:骨芽細胞分化促進試験>
[材料]
試験例1では、下記に示す材料を用いた。
(細胞)
マウス頭蓋冠由来細胞MC3T3-E1(理研セルバンク、RCB1126)
【0075】
(培地)
α-MEM培地、10%FBS、抗生物質添加
【0076】
(試験試薬)
α-MEM培地(フェノールレッドフリー、製品番号41061-029、インビトロジェン社)
ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液(製品番号26253-84、ナカライテスク株式会社)
0.25%トリプシン-EDTA混合溶液(製品番号32777-44、ナカライテスク株式会社)
ダルベッコPBS(-)(製品番号05913、日水製薬株式会社)
アルカリホスファターゼ活性測定キット(LabAssay ALP、製品番号291-58601、和光純薬工業株式会社)
タンパク質質量測定キット(Micro BCA Protein Assay Reagent Kit、製品番号23235、PIERCE社)
細胞溶解・タンパク質抽出試薬(Cell-LyEX1、製品番号300-34761、和光純薬工業株式会社)
10%中性緩衝ホルマリン液(製品番号062-01661、和光純薬工業株式会社)
Calcein AM(製品番号PK-CA707-80011、PromoKine社)
組換え骨形成タンパク質(Bone Morphogenetic Protein-2(BMP-2)、R&DSystems社)
【0077】
[細胞前培養]
MC3T3-E1細胞を、増殖培地を用いてT-75フラスコ(75cmU字型カントネック細胞培養用フラスコ、コーニング社)にて起眠させた。T-75フラスコをCOインキュベーター(5%CO、37℃、湿潤)内に入れ、C2C12細胞を培養した。培地交換は一日おきに行い、80%コンフルエントに到達した時点で細胞を回収し、これを試験に用いた。
【0078】
[骨芽細胞分化促進試験]
MC3T3-E1細胞における骨芽細胞分化促進を、骨芽細胞の分化マーカーのひとつであるアルカリホスファターゼ(ALP)活性を指標として確認した。
前培養したMC3T3-E1細胞を1.2×10セル/0.2mL/ウェルとなるよう培地で調整し、48ウェルプレートに播種した。翌日、100μg/mLの抽出物A含む培地(実施例1-1)、100μg/mLの抽出物Wと1%(v/v)エタノールを含む培地(実施例1-2)、抽出物を含まない培地(比較例1-1)、抽出物を含まず、1%(v/v)エタノールを含む培地(比較例1-2)、あるいは、BMP-2を含有する培地(陽性対照1)に置換し、それぞれ7日間、14日間、及び21日間培養した。各日数培養後に、細胞をPBSで1回洗浄し、プレートごと冷凍保存した。培地は、3~4日間毎に交換した。
【0079】
冷凍保存後の細胞をPBSで洗浄後、100μL/ウェルの細胞溶解剤(2mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を含むCell-LyEX1)で溶解した。プレートを室温下で30分間撹拌後、遠心し、その上清を5倍希釈した溶液を測定用サンプルとした。細胞中のALP量はアルカリホスファターゼ活性測定キット(LabAssay ALP)を用いて測定した。本キットでは、一定時間内に生成された単位タンパク質量当たりのp-ニトロフェノール量からALP活性を測定する。溶液中のタンパク質量はMicro BCA Protein Assay Reagent Kitで測定した。試験は5回実施し、ALP活性の平均値(n=5)を算出した。結果を表1に示す。
【0080】
表1に示すように、バガスの分解抽出物を含有しない比較例1-1、及び比較例1-2と比較して、バガスの分解抽出物を含有する実施例1-1及び実施例1-2のサンプルではALP活性が増加していた。ALP活性が高いほど、骨芽細胞の分化が促進されているといえる。また、比較例1-2との有意差検定(StudentのT検定による両側検定)を行ったところ、実施例1-1及び実施例1-2のサンプルは、培養14日目又は21日目において、比較例1-2の試験サンプルと比較して有意にALP活性が増加した。陽性対照1においてもALP活性が増加したことから、試験は問題なく行われたといえる。
【0081】
【表1】

*)比較例1-2に対して、p<0.01で有意な増加
**)比較例1-2に対して、p<0.001で有意な増加
【0082】
<試験例2:破骨細胞分化抑制試験1>
[材料]
試験例2では、下記に示す材料を用いた。
(細胞)
ヒト破骨前駆細胞(コスモバイオ株式会社 PT-267 Lot.RBW-F-OSH-HBV)
【0083】
(培地)
ヒト破骨細胞培養用メディウム、OSCMHB、コスモバイオ株式会社
【0084】
(試験試薬)
メラトニン(M5250、Sigma-Aldrich社)
TRAP染色キット(AK04F、PMC社)
【0085】
[破骨細胞分化抑制試験]
上記の培地を用いて、抽出物Aの250μg/mL溶液を調製し、これを試験液とした(実施例2-1)。
ヒト破骨前駆細胞を96ウェルの培養プレートに、約0.3×10cells/50μl/ウェルとなるように播種した。ここに試験液を50μlL/ウェル添加して、37℃、5%CO下の条件で7日間培養した。TRAP染色キットを用いて培養した細胞をTRAP染色し、顕微鏡による観察を行った。同様に、試験液を添加しない培地(比較例2-1)、陽性対照としてメラトニンを1000μM含む培地(陽性対照2)においても、同様に試験を行った。顕微鏡の観察結果を図1に示す。図1(a)が実施例2-1、図1(b)が比較例2-1、図1(c)が陽性対照2の観察結果である。
【0086】
図1に示すように、実施例2-1では、多核化した成熟破骨細胞の減少が認められた。一方、バガスの分解抽出物を含まない比較例2-1においては、破骨細胞の減少は認められなかった。陽性対照2においても破骨細胞の減少が認められたことから、試験は問題なく行われたといえる。
【0087】
<試験例3:破骨細胞分化抑制試験2>
破骨細胞は成熟すると細胞同士が融合し、多核化することが知られている。そこで、破骨細胞の単核細胞の割合を測定し、破骨細胞分化抑制効果を確認した。
【0088】
実施例2-1と同様の培養条件で、表2に示す濃度の抽出物Aを含む培地(実施例3-1)、抽出物を含まない培地(比較例3-1)、又は陽性対象として表2に示す濃度のメラトニンを含む培地(陽性対照3-1~3-2)を用いて、ヒト破骨前駆細胞をそれぞれ培養した。顕微鏡視野内の単核細胞数を視野内の全細胞数で除することにより、単核細胞の割合(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0089】
表2に示すように、バガスの分解抽出物を含有しない比較例3-1と比較して、バガスの分解抽出物を含有する実施例3-1の単核の割合が増加していた。単核細胞の割合が高いほど、破骨細胞の分化が抑制されているといえる。陽性対照3-1~3-2においても単核細胞の割合が増加していたことから、試験は問題なく行われたといえる。
【0090】
【表2】
図1