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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】無線周波数トランシーバ
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/40 20150101AFI20230927BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20230927BHJP
   H04B 1/30 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H04B1/40
H04B1/04 Z
H04B1/30
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019078419
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2019205159
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】18168031.5
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519024245
【氏名又は名称】シバース ワイヤレス アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】マッツ カールソン
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-166957(JP,A)
【文献】特開2010-109401(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0204986(US,A1)
【文献】特表2009-540672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/38-1/58
H04B 1/04
H04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機(2)と、周波数ダウンコンバータを構成する全複素ミキサ(5)を備える受信機(3)と、前記送信機をキャリブレートするとともに前記受信機のキャリブレーションを省略するように配置された同相及び直交インバランスキャリブレーションモジュール(4)と、を備え、
前記受信機は、初期のRF信号処理を行う第1の受信機モジュール(6)と、周波数ダウンコンバートされた信号の引き続きの信号処理を行う第2の受信機モジュール(7)と、を備え、前記全複素ミキサ(5)は、前記第1の受信機モジュール及び前記第2の受信機モジュールに接続された無線周波数トランシーバ。
【請求項2】
送信機(2)と、周波数ダウンコンバータを構成する全複素ミキサ(5)を備える受信機(3)と、前記送信機をキャリブレートするとともに前記受信機のキャリブレーションを省略するように配置された同相及び直交インバランスキャリブレーションモジュール(4)と、を備え、
前記全複素ミキサ(5)は、無線信号同相入力部及び無線信号直交入力部(43,44)と、余弦信号入力部(37)と、正弦信号入力部(38)と、第1のミキサ(31a)、第2のミキサ(31b)、第3のミキサ(31c)及び第4のミキサ(31d)と、減算器(32)と、加算器(33)と、同相信号出力部(35)と、直交信号出力部(36)と、を備え、前記第1のミキサ及び前記第2のミキサは、前記無線信号同相入力部に接続され、前記第3のミキサ及び前記第4のミキサは、前記無線信号直交入力部に接続され、前記第1のミキサ及び前記第4のミキサは、前記余弦信号入力部に更に接続され、前記第2のミキサ及び前記第3のミキサは、前記正弦信号入力部に更に接続され、前記減算器は、前記第1のミキサ、前記第3のミキサ及び前記同相信号出力部に接続され、前記加算器は、前記第2のミキサ、前記第4のミキサ及び前記直交信号出力部に接続された無線周波数トランシーバ。
【請求項3】
送信機(2)と、周波数ダウンコンバータを構成する全複素ミキサ(5)を備える受信機(3)と、前記送信機をキャリブレートするとともに前記受信機のキャリブレーションを省略するように配置された同相及び直交インバランスキャリブレーションモジュール(4)と、を備え、
前記受信機は、初期のRF信号処理を行う第1の受信機モジュール(6)と、周波数ダウンコンバートされた信号の引き続きの信号処理を行う第2の受信機モジュール(7)と、を備え、前記全複素ミキサ(5)は、前記第1の受信機モジュール及び前記第2の受信機モジュールに接続され、
前記全複素ミキサ(5)は、無線信号同相入力部及び無線信号直交入力部(43,44)と、余弦信号入力部(37)と、正弦信号入力部(38)と、第1のミキサ(31a)、第2のミキサ(31b)、第3のミキサ(31c)及び第4のミキサ(31d)と、減算器(32)と、加算器(33)と、同相信号出力部(35)と、直交信号出力部(36)と、を備え、前記第1のミキサ及び前記第2のミキサは、前記無線信号同相入力部に接続され、前記第3のミキサ及び前記第4のミキサは、前記無線信号直交入力部に接続され、前記第1のミキサ及び前記第4のミキサは、前記余弦信号入力部に更に接続され、前記第2のミキサ及び前記第3のミキサは、前記正弦信号入力部に更に接続され、前記減算器は、前記第1のミキサ、前記第3のミキサ及び前記同相信号出力部に接続され、前記加算器は、前記第2のミキサ、前記第4のミキサ及び前記直交信号出力部に接続された無線周波数トランシーバ。
【請求項4】
前記送信機(2)から前記受信機(3)へのループバック接続(15)を備える請求項1~3のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバ。
【請求項5】
前記送信機(2)並びに前記同相及び直交インバランスキャリブレーションモジュール(19)に接続した包絡線検波器(18)を備える請求項1~3のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバ。
【請求項6】
前記無線周波数トランシーバは、ダイレクトコンバージョントランシーバ(45)である請求項1~5のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバを備えるビーム形成トランシーバ無線周波数集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数(RF)トランシーバの分野に関連し、特に、RFトランシーバの同相及び直交(IQ)インバランスの補償に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイレクトコンバージョントランシーバ及び一つ以上の中間周波数段を用いるトランシーバのアップコンバータ及びダウンコンバータの意図した信号品質を維持するためにI信号とQ信号の間の振幅及び位相不整合を小さくする必要があることがよく知られている。I信号とQ信号の間の90°の位相差及び等しい振幅を実現するために、キャリブレーションが必要とされる。多くの種々のキャリブレーション手順が市販の製品に用いられてきた。これらの種々のキャリブレーション手順は、文献及び刊行物に十分に記載されている。例えば、書籍である高速無線システムのRF不完全性(RF Imperfections in High-rate Wireless Systems)(ISBN978-1-4020-6902-4)は、139~140頁にIQインバランスキャリブレーションを詳しく説明している。
【0003】
IQ不完全性が受信(ダウンコンバータ)回路と送信(アップコンバータ)回路の両方で見られるので、受信機と送信機の両方のキャリブレーションが行われる。
【0004】
送信機をキャリブレートするために、既知であるとともに良好に制御された入力刺激がシステムのモデムによって又はRF ICの他の手段によって提供される必要がある。入力刺激は、送信機の入力部に与えられ、結果的に生じる誤差は、送信機の出力部で測定される。同様に、受信機をキャリブレートするために、入力刺激は、受信機の入力部に与えられ、結果的に生じる誤差は、受信機の出力部で測定される。ダイレクトコンバージョントランシーバシステムのIQインバランスのキャリブレーションの典型的な手順は、以下のような受信機のIQインバランスのキャリブレーションとそれに続く送信機のIQインバランスのキャリブレーションからなる。
【0005】
一連のRF音が生成されるとともに受信機のRF部の入力部に供給される。その後、RF音は、ベースバンドにダウンコンバートされ、対応するIQインバランスが、例えば、FTT(高速フーリエ変換)解析によって又は相互相関器によってデジタル領域で検出される。IQインバランスが既知であるとき、IQインバランスを許容レベルまで低減させるために補正パラメータが受信機に供給される。
【0006】
受信機が上述されたようにキャリブレートされると、受信機を、以下のように送信機をキャリブレートするのに用いることができる。一連の複合音がモデムで生成されるとともにIQベースバンド信号として送信機のアップコンバータに供給される。アップコンバートされた信号をアンテナに送信する代わりに、アップコンバートされた信号は、オンチップのループバック接続を介して受信機の入力部に供給される。その後、送信機からの信号は、ベースバンドにダウンコンバートされ、対応するIQインバランスが、例えば、FTT解析によって又は相互相関器によってデジタル領域で検出される。受信機がキャリブレートされた後に受信機を理想的なものとみなすことができるので、検出されたIQインバランスは、送信機の不完全性に関連する。最終的には、IQインバランスを許容レベルまで低減させるために補正パラメータが送信機に供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したキャリブレーションルーチンは、実行するのに幾分時間がかかる。その結果、手順を簡単化するのが有利である。
【0008】
従来のIQインバランスキャリブレーションを簡単化するのが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題によりよく対処するために、発明の第1の態様において、送信機と、周波数ダウンコンバータを構成する全複素ミキサを備える受信機と、送信機のみをキャリブレートするように配置された同相及び直交インバランスキャリブレーションモジュールと、を備える無線周波数トランシーバを提供する。本発明によれば、全複素ミキサを受信機に含めることによって、送信機のIQインバランスのキャリブレーションだけを行えばよく、受信機のIQインバランスのキャリブレーションを省略できることが実現されるとともに示された。また、IQインバランスのキャリブレーションプロセスを簡易化することは、追加される回路の複雑さを上回る。
【0010】
無線周波数トランシーバの一実施の形態によれば、無線周波数トランシーバは、送信機から受信機へのループバック接続を備える。
【0011】
無線周波数トランシーバの一実施の形態によれば、無線周波数トランシーバは、受信機並びに同相及び直交インバランスキャリブレーションモジュールに接続した包絡線検波器を備える。
【0012】
無線周波数トランシーバの一実施の形態によれば、受信機は、初期のRF信号処理を行う第1の受信機モジュールと、周波数ダウンコンバートされた信号の引き続きの信号処理を行う第2の受信機モジュールと、を備え、全複素ミキサは、第1の受信機モジュール及び第2の受信機モジュールに接続される。
【0013】
無線周波数トランシーバの一実施の形態によれば、全複素ミキサは、無線信号同相入力部及び無線信号直交入力部と、余弦信号入力部と、正弦信号入力部と、第1のミキサ、第2のミキサ、第3のミキサ及び第4のミキサと、減算器と、加算器と、同相信号出力部と、直交信号出力部と、を備え、第1のミキサ及び第4のミキサは、無線周波数入力部及び余弦信号入力部に接続され、第2のミキサ及び第4のミキサは、無線周波数信号入力部及び正弦信号入力部に接続され、減算器は、第1のミキサ、第3のミキサ及び同相信号出力部に接続され、加算器は、第2のミキサ、第4のミキサ及び直交信号出力部に接続される。
【0014】
無線周波数トランシーバの一実施の形態によれば、無線周波数トランシーバは、ダイレクトコンバージョントランシーバである。
【0015】
本発明の他の態様によれば、上述した無線周波数トランシーバを備えるビーム形成トランシーバ無線周波数集積回路を提供する。
【0016】
発明を、添付図面を参照しながら更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明によるRFトランシーバの実施の形態の略ブロック図である。
図2】本発明によるRFトランシーバの実施の形態の略ブロック図である。
図3】本発明によるRFトランシーバの実施の形態の略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、RFトランシーバ1の第1の実施の形態は、送信機2と、受信機3と、送信機2及び受信機3に接続されるとともに送信機2のみをキャリブレートするように配置された同相及び直交(IQ)インバランスキャリブレーションモジュール4と、を備える。受信機3は、周波数ダウンコンバータとしての全複素ミキサ5を備える。RFトランシーバの全複素ミキサ5の使用は、例えば、米国特許出願公開第2006/0281429号明細書からそれ自体知られているが、RFトランシーバの全複素ミキサ5は、IQインバランスキャリブレーションモジュールと組み合わせて用いられず、特に受信機のIQインバランスのキャリブレーションを除去するとともに送信機のIQインバランスのキャリブレーションのみを行うためのものではない。
【0019】
受信機3は、初期のRF信号処理を行う第1の受信機モジュール6と、I及びQフィルタ34と、を備え、第1の受信機モジュール6は、I及びQフィルタ34を介して全複素ミキサ5の入力部に接続され、受信機3は、ダウンコンバートされた信号の引き続きの信号処理を行う第2の受信機モジュール7を備え、第2の受信機モジュールは、全複素ミキサ5の出力部に接続される。同様に、送信機2は、信号増幅のような初期の送信処理を行う第1の送信機モジュール8と、第1の送信機モジュール8の出力部に接続されたアップコンバータ9と、最終的な信号処理を行うとともにアップコンバータ9の出力部に接続された第2の送信機モジュール10と、を備える。第2の送信機モジュール10の出力端子11は、送信アンテナ素子に接続され、それに対し、第1の受信機モジュール6の入力端子12は、受信アンテナ素子に接続される。
【0020】
RFトランシーバは、送信機2及び受信機3に接続されたI及びQセパレータ13を更に備える。特に、I及びQセパレータは、余弦信号及び正弦信号のような90°位相シフトした信号を生成し、これらの信号を全複素ミキサ5及びアップコンバータ9に供給する。
【0021】
RFトランシーバ1は、ここでは別のトランシーバモジュール14によって図示した当業者に周知の電源回路、自動利得制御回路等のような種々の追加の回路を更に備える。
【0022】
RFトランシーバ1を、スーパーヘテロダイン受信機及び送信機を有するトランシーバのようなダイレクトコンバージョントランシーバ及び中間周波数の一つ以上の段を有するトランシーバとすることができる。上述したモジュールは、これらの種々のオプションに必要な回路をそれぞれ有する。
【0023】
さらに、本実施の形態において、アップコンバータ9の出力側及び全複素ミキサ5の入力側に接続されたループバック接続15が存在する。ループバック接続15は、IQインバランスキャリブレーションに用いられる。IQインバランスキャリブレーションモジュール4は、第1の受信機モジュール8の入力部に接続された複合音生成器16と、第2の受信機モジュール7の出力部に接続されたIQインバランスアナライザ17と、を備える。ループバック接続の位置が多くのあり得る位置の単なる一例であることに留意されたい。送信機側において、ループバック接続を、アップコンバータ9の出力部と送信アンテナの間の任意に位置に接続することができ、受信機側において、ループバック接続を、受信アンテナと全複素ミキサ5の入力部の間の任意の位置に接続することができる。
【0024】
RFトランシーバの第1の実施の形態は、IQインバランスキャリブレーションについて次のように動作する。複合音生成器16は、ベースバンド周波数の複合信号である一連の複合音を生成する。一連の複合音は、ベースバンドI信号及びベースバンドQ信号として、信号増幅のような初期の送信処理を行うための第1の送信モジュール8と、周波数アップコンバージョン及び組み合わせてRF送信信号にするためのアップコンバータ9とに供給される。RF送信信号は、アップコンバータ9の出力部から第2の送信モジュール10に供給されるとともにループバック接続を介して受信機側に供給され、RF受信信号に加えられる。組み合わされたRF信号は、I及びQフィルタ34を介して全複素ミキサ5の入力部に供給され、全複素ミキサ5は、RF信号をI信号及びQ信号に分ける。I信号及びQ信号は、周波数ダウンコンバートするとともに第2の受信モジュールを通過した後にIQインバランスアナライザ17に供給される。複素ミキサ5が理想的又は少なくとも無視できる程度に非理想的であるので、IQインバランスアナライザ17によって検出されるインバランスは、送信機の不完全性によるものである。IQインバランスキャリブレーションモジュール4は、必要な場合には適切に送信機を調整する。IQインバランス解析は、典型的には、IQインバランスアナライザ17に対する入力信号のFFT(高速フーリエ変換)を行うソフトウェア実現アルゴリズムによって行われる。
【0025】
図2に示すRFトランシーバ25の第2の実施の形態は、IQインバランスキャリブレーション部を除いて第1の実施の形態に対応する。本実施の形態において、ループバック構造の代わりに、アップコンバータ9の出力側に接続されるとともにIQインバランスキャリブレーションモジュール19に接続された包絡線検波モジュール18を設ける。代替的に包絡線検波モジュール18を所望に応じてアップコンバータ9の後及び送信アンテナの前の任意の位置に接続できることに留意されたい。本実施の形態において、IQインバランスキャリブレーションモジュール19は、第1の送信機モジュール8に接続された複合音生成器20と、包絡線検波モジュール18に接続されたIQインバランスアナライザ21と、を備える。本実施の形態の利点は、ループバック接続が回避されることである。これは、受信機が理想的であると考えられるので、すなわち、全複素ミキサ5のためにI信号及びQ信号に関して安定していると考えられるので可能である。しかしながら、本実施の形態の欠点は、包絡線検波モジュール18で用いられる包絡線検波器がしばしば十分に優れた性能で実現するのが困難であることである。
【0026】
第2の実施の形態の動作は、次の通りである。一連の複合音を、複合音生成器20によって生成し、I信号及びQ信号として第1の送信機モジュール8に供給した後にアップコンバータ9に供給する。アップコンバータからのRF信号出力は、包絡線検波器18に供給される。包絡線検波器18の出力信号は、必要に応じてIQインバランスを決定するIQインバランスアナライザ21に供給される。その後、IQインバランスキャリブレーションモジュール19は、送信機を適切に調整する。
【0027】
図3は、第1の実施の形態をダイレクトコンバージョントランシーバ45に適用する例を示す。本例において、第1の受信機モジュール6は、受信アンテナ素子(図示せず)にそれぞれ対応するとともに各々が増幅回路27,28及び位相調整器を有する複数の受信信号経路26を備える。第1の受信機モジュール6は、全ての受信信号経路26に接続された加算器30を更に備える。全複素ミキサ5は、四つのミキサ素子31a~31dと、減算器32と、加算器33と、FR I信号入力部43と、RF Q信号入力部44と、I信号出力部35と、Q信号出力部36と、余弦信号入力部37と、正弦信号入力部38と、を備える。RF I信号入力部は、ミキサ素子31a~31dの第1のミキサ素子31a及び第2のミキサ素子31bに接続され、それに対し、RF Q信号入力部は、ミキサ素子31a~31dの第3のミキサ素子31c及び第4のミキサ素子31dに接続される。正弦信号入力部37は、第1のミキサ素子31a及び第4のミキサ素子31dに接続され、余弦信号入力部38は、第2のミキサ素子31b及び第3のミキサ素子31cに接続される。第1のミキサ素子31aの出力部及び第3のミキサ素子31cの出力部が減算器32に接続されるとともに第2のミキサ素子31bの出力部及び第4のミキサ素子31dの出力部が加算器33に接続されるように、ミキサ素子31a~31dの出力部は、対で減算器32及び加算器33にそれぞれ接続される。当業者によって理解できるように、加算器及び減算器の他の組合せ及び接続も実現可能である。
【0028】
I及びQセパレータ13は、周波数合成器39と、全複素ミキサ5の余弦信号入力部37及び正弦信号入力部38に接続されるとともにアップコンバータ9の対応する入力部に接続された余弦信号出力部41及び正弦信号出力部42を有する正弦信号及び余弦信号生成器40と、を備える。
【0029】
本発明は、IFトランシーバ、すなわち、受信したRF周波数を中間周波数にダウンコンバートするとともに送信機が少なくとも一つのIF段も備えるトランシーバにも適用できる。図1に示す第1の実施の形態及び図2に示す第2の実施の形態は、IFトランシーバ及びダイレクトコンバージョントランシーバとして実装可能であり、この場合、全複素ミキサは、一つ以上のIF段の一つ以上のダウンコンバータとして用いられる。
【0030】
図1及び図3に示す第1の実施の形態において、好適には、全てのパーツは単一のRF-ICに集積される。同じことが図2に示すRFトランシーバの第2の実施の形態にも当てはまる。
【0031】
本発明の無線周波数トランシーバは、ビーム形成トランシーバ無線周波数集積回路において有利に用いられる。
【0032】
したがって、キャリブレーションが送信機だけに行わるためにキャリブレーションの時間が減少するので、IQインバランスを短時間でキャリブレートすることができ、これによって、トランシーバが有用なデータを送信/受信するのに利用できる時間を増やすことができる。さらに、多くのシステムにおいて、受信モードの時間はしばしば送信モードの時間より著しく長い。そのようなシステムにおいて、全複素ミキサを用いることによって不要になる受信機のキャリブレーションが省略され、受信に利用できる時間が増える。受信モードにおけるIQ誤差のキャリブレーションのために生成されるRF信号が必要でなくなり、これによって、回路の実装を簡単化する。
【0033】
発明を図示するとともに上述した明細書で説明したが、そのような図示及び説明は、実例又は例示と考えるべきであり、限定的なものではない。発明は、開示した実施の形態に限定されない。
【0034】
開示した実施の形態の他の変形を、請求項に係る発明を実施する際に図面、開示及び添付した特許請求の範囲の学習から当業者によって理解できるとともに実現することができる。特許請求の範囲において、用語「備える」は、他の構成要素又はステップを除外するものではなく、「一つ」は複数を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが特許請求の範囲で列挙した複数のアイテムの機能を実行してもよい。所定の手段を互いに異なる従属項に列挙したという事実は、これらの手段の組合せを有利に用いることができないことを意味しない。特許請求の範囲の引用符号を、範囲を限定するものとして解釈すべきでない。
本明細書に開示される発明は以下を含む。
[態様1]
送信機(2)と、周波数ダウンコンバータを構成する全複素ミキサ(5)を備える受信機(3)と、前記送信機をキャリブレートするとともに前記受信機のキャリブレーションを省略するように配置された同相及び直交インバランスキャリブレーションモジュール(4)と、を備える無線周波数トランシーバ。
[態様2]
前記送信機(2)から前記受信機(3)へのループバック接続(15)を備える態様1に記載の無線周波数トランシーバ。
[態様3]
前記受信機(3)並びに前記同相及び直交インバランスキャリブレーションモジュール(4)に接続した包絡線検波器(18)を備える態様1に記載の無線周波数トランシーバ。
[態様4]
前記受信機は、初期のRF信号処理を行う第1の受信機モジュール(6)と、周波数ダウンコンバートされた信号の引き続きの信号処理を行う第2の受信機モジュール(7)と、を備え、前記全複素ミキサ(5)は、前記第1の受信機モジュール及び前記第2の受信機モジュールに接続された態様1~3のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバ。
[態様5]
前記全複素ミキサ(5)は、無線信号同相入力部及び無線信号直交入力部(43,44)と、余弦信号入力部(37)と、正弦信号入力部(38)と、第1のミキサ(31a)、第2のミキサ(31b)、第3のミキサ(31c)及び第4のミキサ(31d)と、減算器(32)と、加算器(33)と、同相信号出力部(35)と、直交信号出力部(36)と、を備え、前記第1のミキサ及び前記第4のミキサは、無線周波数入力部及び前記余弦信号入力部に接続され、前記第2のミキサ及び前記第4のミキサは、無線周波数信号入力部及び前記正弦信号入力部に接続され、前記減算器は、前記第1のミキサ、前記第3のミキサ及び前記同相信号出力部に接続され、前記加算器は、前記第2のミキサ、前記第4のミキサ及び前記直交信号出力部に接続された態様1~4のいずれか一つに記載の無線周波数トランシーバ。
[態様6]
前記無線周波数トランシーバ(45)は、ダイレクトコンバージョントランシーバである態様1~4のいずれか一つに記載の無線周波数トランシーバ。
[態様7]
態様1~5のいずれか一つに記載の無線周波数トランシーバを備えるビーム形成トランシーバ無線周波数集積回路。
図1
図2
図3