(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】硫化物系全固体電池用ラミネートシート及びそれを用いたラミネートパック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/141 20210101AFI20230927BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20230927BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230927BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230927BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20230927BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20230927BHJP
H01M 50/126 20210101ALI20230927BHJP
B32B 9/00 20060101ALN20230927BHJP
B32B 15/08 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
H01M50/141
B32B7/02
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/0585
H01M50/105
H01M50/126
B32B9/00 A
B32B15/08 A
(21)【出願番号】P 2019089908
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-02-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】安田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】関谷 直美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 周
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-296174(JP,A)
【文献】特開2009-073010(JP,A)
【文献】特開2015-220106(JP,A)
【文献】特表2018-506832(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163514(WO,A1)
【文献】特開2013-257981(JP,A)
【文献】特開2011-134544(JP,A)
【文献】国際公開第2014/007215(WO,A1)
【文献】特開2005-116322(JP,A)
【文献】特開2015-089644(JP,A)
【文献】国際公開第2011/099129(WO,A1)
【文献】特開2015-179618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
B32B 7/02
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 10/0585
B32B 9/00
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有
し、かつ
前記吸収層は、その両面にスキン層を有する、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項2】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸収層の、前記バリア層とは反対側の面に、シーラント層を更に有する、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項3】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸湿剤は、ゼオライト、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、シリカゲル、塩化カルシウム、生石灰、及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項4】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸収層は、硫化物系ガス吸収剤を更に含む、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項5】
前記硫化物系ガス吸収剤は、銅、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、亜鉛、銀、カルシウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項
4に記載のラミネートシート。
【請求項6】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸収層は、前記外部側用面から前記内部側用面に向かって、この順に積層されている、吸湿層及び硫化物系ガス吸収層を有する、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項7】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸収層は、前記外部側用面から前記内部側用面に向かって、この順に積層されている、硫化物系ガス吸収層及び吸湿層を有する、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項8】
前記バリア層の、前記吸収層とは反対側の面に、基材層を更に有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載のラミネートシート。
【請求項9】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有するラミネートシートを
、1つ具備しており、かつ
前記ラミネートシートが前記内部側用面を内側にして折り曲げられて、前記内部側用面の周縁部がヒートシールされることによって袋状にされている、
硫化物系全固体電池用ラミネートパック。
【請求項10】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有するA面用ラミネートシート
と、
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、B面用バリア層及びB面用シーラント層を有するB面用ラミネートシートと
を具備しており、かつ
前記A面用ラミネートシートの前記内部側用面と、
前記B面用ラミネートシートの前記B面用シーラント層とが互いに対向して、
前記A面用ラミネートシートの前記内部側用面と
前記B面用ラミネートシートの前記B面用シーラント層との周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている、
硫化物系全固体電池用ラミネートパック。
【請求項11】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有するラミネートシートを
、2つ以上
、具備しており、かつ
前記内部側用面同士が互いに対向して、前記内部側用面の周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている、
硫化物系全固体電池用ラミネートパック。
【請求項12】
請求項
9~
11のいずれか一項に記載の硫化物系全固体電池用ラミネートパック、及び
硫化物系全固体電池
を具備している、ラミネート電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化物系全固体電池用ラミネートシート及びそれを用いたラミネートパックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー密度が高い二次電池が注目されている。特に、電解液を固体電解質層に変えて、電池を全固体化した全固体電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないため、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
【0003】
このような全固体電池として、特に、出力電流を向上できる観点から、固体電解質として硫化物系固体電解質を用いた硫化物系全固体電池が注目されている。
【0004】
しかしながら、硫化物系全固体電池では、硫化物系固体電解質は、硫化物系固体電解質が水分と接触すると、硫化水素等の硫化物系のガスが発生してしまい、硫化物系全固体電池が劣化してしまう問題がある。
【0005】
この問題の対策として、例えば特許文献1では、硫化物系固体電解質材料を用いた全固体リチウム二次電池であって、少なくとも前記硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に、実質的に水分を含まない前記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層が形成された酸化物層含有発電素子を有することを特徴とする全固体リチウム二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、硫化物系全固体電池をラミネートパックで収容する際に水分等がラミネートパック内に侵入してしまった場合や、硫化物系全固体電池を収容しているラミネートパックの側面の封止口から外部の水分等が侵入してしまった場合、又は硫化物系全固体電池を収容しているラミネートパックにピンホールが発生して、ピンホールから水分等がラミネートパック内に侵入してしまった場合等、ラミネートパックの内部に水が浸入してしまった場合、水分が硫化物系固体電解質と反応する可能性がある。
【0008】
なお、硫化物系ガスの発生に対する対策として、ラミネートパックの内部に硫化物系ガス吸収層を設けることが考えられる。
【0009】
しかしながら、本発明者らは、硫化物系ガス吸収剤自体が水分を吸着して、保持しており、それによって、硫化物系ガス吸収剤が保持していた水分を放出して、状況によっては、硫化物系固体電解質に水分を与えてしまい、その結果、更に硫化物系ガスが発生する可能性があることを見出した。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、硫化物系ガスの発生を抑制できる硫化物系全固体電池用ラミネートシート及びそれを用いたラミネートパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、以下の手段により、上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
〈態様1〉
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有する、硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
〈態様2〉
前記吸収層は、硫化物系ガス吸収剤を更に含む、態様1に記載のラミネートシート。
〈態様3〉
前記吸収層は、前記外部側用面から前記内部側用面に向かって、この順に積層されている、吸湿層及び硫化物系ガス吸収層を有する、態様1に記載のラミネートシート。
〈態様4〉
前記吸収層は、前記外部側用面から前記内部側用面に向かって、この順に積層されている、硫化物系ガス吸収層及び吸湿層を有する、態様1に記載のラミネートシート。
〈態様5〉
前記吸収層は、その両面にスキン層を有する、態様1~4のいずれか一項に記載のラミネートシート。
〈態様6〉
前記バリア層の、前記吸収層とは反対側の面に、基材層を更に有する、態様1~5のいずれか一項に記載のラミネートシート。
〈態様7〉
前記吸収層の、前記バリア層とは反対側の面に、シーラント層を更に有する、態様1~6のいずれか一項に記載のラミネートシート。
〈態様8〉
前記吸湿剤は、ゼオライト、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、シリカゲル、塩化カルシウム、生石灰、及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、態様1~7のいずれか一項に記載のラミネートシート。
〈態様9〉
前記硫化物系ガス吸収剤は、銅、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、亜鉛、銀、カルシウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、態様2~8のいずれか一項に記載のラミネートシート。
〈態様10〉
態様1~9のいずれか一項に記載のラミネートシートを1つ具備しており、かつ
前記ラミネートシートが前記内部側用面を内側にして折り曲げられて、前記内部側用面の周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている、
硫化物系全固体電池用ラミネートパック。
〈態様11〉
A面用ラミネートシートとしての態様1~9のいずれか一項に記載のラミネートシートと、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、B面用バリア層及びB面用シーラント層を有するB面用ラミネートシートとを具備しており、かつ
前記A面用ラミネートシートの前記内部側用面と、前記B面用シーラント層とが互いに対向して、前記内部側用面と前記B面用シーラント層との周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている、
硫化物系全固体電池用ラミネートパック。
〈態様12〉
態様1~9のいずれか一項に記載のラミネートシートを2つ以上具備しており、かつ
前記内部側用面同士が互いに対向して、前記内部側用面の周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている、
硫化物系全固体電池用ラミネートパック。
〈態様13〉
態様10~12のいずれか一項に記載の硫化物系全固体電池用ラミネートパック、及び
硫化物系全固体電池
を具備している、ラミネート電池。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硫化物系ガスの発生を抑制できる硫化物系全固体電池用ラミネートシート及びそれを用いたラミネートパックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の硫化物系全固体電池用ラミネートシートの層構成の一形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、吸収層が多層の構造である場合の、吸収層の形態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明のラミネートパックのA面及びB面の形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において、同一又は相当する部分には同一の参照符号を付し、重複説明は省略する。実施の形態の各構成要素は、全てが必須のものであるとは限らず、一部の構成要素を省略可能な場合もある。ただし、以下の図に示される形態は本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。
【0016】
《硫化物系全固体電池用ラミネートシート》
本発明の硫化物系全固体電池用ラミネートシートは、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有する。
【0017】
以下、「本発明の硫化物系全固体電池用ラミネートシート」を単に「本発明のラミネートシート」又は「ラミネートシート」とも称する。
【0018】
ここで、「外部側用面」とは、ラミネートシートから形成されたラミネートパックに硫化物系全固体電池を収容する場合に、ラミネートパックの外側に向いて使用する面である。また、「内部側用面」とは、ラミネートシートから形成されたラミネートパックに硫化物系全固体電池を収容する場合に、ラミネートパックの内部の硫化物系全固体電池に向いて使用する面である。
【0019】
例えば、
図1は、本発明の硫化物系全固体電池用ラミネートシートの層構成の一形態を示す概略図である。
図1に示されているように、本発明のラミネートシート100は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層10、及び吸湿剤を含む吸収層11を有する。
【0020】
本発明は、硫化物系ガスが発生する根本的な原因である水分に着目して、吸湿剤を含む吸収層を含むことによって、硫化物系全固体電池を収容しているラミネートパックの内部の水分を吸収して除去するものである。すなわち、本発明のラミネートシートによれば、ラミネートパックの外部から内部への水分の侵入を防止するだけではなく、ラミネートパックの内部に侵入してしまった水分を除去することもできる。
【0021】
以下では、本発明のラミネートシートを構成する各層について、詳細に説明する。
【0022】
〈バリア層〉
バリア層は、水分や水蒸気等のガスの透過、特にラミネートパックの外部から内部への水蒸気の侵入を防止するための層である。
【0023】
バリア層は、特に限定されず、例えば金属箔、及び金属又は金属酸化物の蒸着膜からなる群より選択される少なくとも1つを含んでよい。より具体的には、バリア層は、例えばアルミニウム箔、合金アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ・アルミナ二元蒸着フィルム、及びポリフッ化ビニリデンコーティング膜等の有機物コーティング膜からなる群より選択される少なくとも1つを含んでよい。また、バリア性及び取り扱い性を両立させやすくする観点から、バリア層は、アルミニウム箔、合金アルミニウム箔、及びアルミニウム蒸着フィルムからなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、アルミニウム箔を含むことがより好ましい。
【0024】
バリア層は、透明、半透明、又は不透明のいずれであってもよい。
【0025】
バリア層の厚さは、特に限定されず、強度及びバリア性を確保する観点から、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが好ましく、また、取り扱い性を向上させる観点から、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが好ましい。
【0026】
〈吸収層〉
吸収層は、吸湿剤及びバインダーを必須的に含む層である。また、吸収層は、随意の成分、例えば硫化物系ガス吸収剤を更に含むことができる。硫化物系ガス吸収剤を含むことによって、例えば硫化物系全固体電池を収容しているラミネートパックの内部に硫化物系ガスが発生してしまった場合には、発生された硫化物系ガスを吸収することができる。なお、硫化物系ガス吸収剤は、吸湿剤と同じ層に含まれてもよく、異なる層に含まれてもよい。
【0027】
吸収層は、単層の構造であってもよく、多層の構造であってもよい。
【0028】
(単層の構造)
吸収層が単層の構造である場合、上述したように、吸収層は、吸湿剤及びバインダー、又は吸収剤、硫化物系吸収剤、及びバインダーを含むことができる。
【0029】
1.吸湿剤
吸湿剤としては、水分を化学的にかつ/又は物理的に吸着できるものであれば、特に限定されない。
【0030】
吸湿剤は、例えば、ゼオライト、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、シリカゲル、塩化カルシウム、生石灰、及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含んでよい。
【0031】
また、ゼオライトとしては、天然ゼオライトであってもよく、合成ゼオライトであってもよい。また、合成ゼオライトとしては、親水性ゼオライトであってよい。合成ゼオライトの具体例としては、例えばユニオン昭和株式会社製のモレキュラーシーブ(商品名)3A、4A、5A、及び13X等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0032】
吸収層において、吸湿剤の含有量(質量部)は、バインダー100質量部に対して、混練性及び吸湿性能を考慮して、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、35質量部以上、40質量部以上、45質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上、90質量部以上、100質量部以上又は110質量部以上であってよく、また、500質量部以下、300質量部以下、200質量部以下、又は150質量部以下であってよい。
【0033】
2.硫化物系ガス吸収剤
硫化物系ガス吸収剤としては、硫化物系ガスを化学的にかつ/又は物理的に吸着できるものであれば、特に限定されない。
【0034】
ここで、硫化物系ガスとしては、特に限定されず、例えば硫化物系全固体電池の硫化物系電解質から生じうる硫化物系ガスであってよい。より具体的には、例えば硫化水素ガス、又はメルカプタン系ガス等であってよい。
【0035】
硫化物系ガスを物理的に吸着できる硫化物系ガス吸収剤は、例えば活性炭が挙げられるが、これに限定されない。
【0036】
硫化物系ガスを化学的に吸着できる硫化物系ガス吸収剤は、銅、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、亜鉛、銀、カルシウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1つを含むことができ、またこれらの金属単体を含む化合物、例えばこれらの金属塩、又はこれらの金属ケイ酸塩を含むことができる。
【0037】
銅、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、亜鉛、銀、カルシウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1つの金属ケイ酸塩を用いる場合、金属とケイ素の元素組成(モル)比が、金属/ケイ素=0.60~0.80の範囲であってよい。
【0038】
また、上記のような金属ケイ酸塩は、金属塩とケイ酸アルカリ塩とを反応させて製造することができる。金属塩としては、銅、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、亜鉛、銀、カルシウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1つの金属の、硫酸、塩酸、硝酸等の無機塩、及び/又はギ酸、酢酸、シュウ酸等の有機塩を用いることができる。これらのうち、金属としては銅(I)、銅(II)、亜鉛(I)であることが好ましい。また、ケイ酸塩としては、M2O・nSiO2・xH2O(ここで、式中Mは1価アルカリ金属を表し、nは1以上、かつxは0以上である。)の式のケイ酸アルカリ塩であってよい。
【0039】
また、硫化物系ガス吸収剤としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば東亞合成株式会社製のケスモン(登録商標):NS-10C、NS-10Z、NS-10J、NS-20、NS-40M、NS-20C、TNS-100、TNS-110、及びTNS-200等が挙げられる。
【0040】
吸収層において、硫化物系ガス吸収剤を含む場合の硫化物系ガス吸収剤の含有量(質量部)は、バインダー100質量部に対して、混練性及びガス吸着性能を考慮して、0.1質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、5質量部以上又は10質量部以上であることが好ましく、また500質量部以下、300質量部以下、100質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、又は30質量部以下であることが好ましい。
3.バインダー
バインダーとしては、特に限定されず、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又はこれらの混合物であってよい。
【0041】
熱可塑性樹脂としては、例えばエチレン―(メタ)アクリル系モノマー共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、及びこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
エチレン―(メタ)アクリル系モノマー共重合体とは、エチレンと(メタ)アクリル系モノマーとを少なくとも含む単量体組成物を共重合して得られる樹脂である。単量体組成物中の(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、2重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上であり、50重量%以下、40重量%以下、又は30重量%以下とすることができる。一般に、(メタ)アクリル系モノマーの含有量が高い場合、得られる樹脂の軟化温度が低くなり、(メタ)アクリル系モノマーの含有量が低い場合、得られる樹脂の密度が低くなる。最終の用途によって、適切な(メタ)アクリル系モノマー含有量の樹脂を選択することができる。
【0043】
ここで、適切な(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0044】
具体的なエチレン―(メタ)アクリル系モノマー共重合体の例としては、エチレン―アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン―メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン―エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン―メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン―メタクリレート共重合体(EMMA)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)とは、エチレンと酢酸ビニルとを少なくとも含む単量体組成物を共重合して得られる樹脂である。単量体組成物中の酢酸ビニル含有量は、2重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上であり、50重量%以下、40重量%以下、又は30重量%以下とすることができる。一般に、酢酸ビニル含有量が高い場合、得られる樹脂の結晶化度が低くなり、酢酸ビニル含有量が低い場合、得られる樹脂の密度が低くなる。最終の用途によって、適切な酢酸ビニル含有量の樹脂を選択することができる。
【0046】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はポリブテン等が挙げられる。
【0047】
ポリエチレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂である。かかるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレンを用いてもよく、エチレンと、カルボキシル基又はエステル基を有するエチレン系モノマーとの共重合体を用いてもよい。
【0048】
また、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂である。かかるポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
また、熱可塑性樹脂として芳香族ビニル-ジエン系共重合体、及びオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いてもよい。
【0050】
芳香族ビニル-ジエン系共重合体は、芳香族ビニルモノマー由来の繰返し単位及びジエンモノマー由来の繰返し単位を有する共重合体を意味する。このような芳香族ビニル-ジエン系共重合体としては、例えば特開2014-200751号公報に挙げられているものを用いることができる。
【0051】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、高温で流動化して成形が可能であり、常温ではゴム弾性を示す材料である。
【0052】
熱硬化性樹脂としては、随意の樹脂を用いることができ、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
吸収層の厚みは、特に限定されず、水分の吸着性能、成形性、及び弾性の観点から、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、又は100μm以上であることが好ましく、また300μm以下、200μm以下、100μm以下、80μm以下、又は50μm以下であることが好ましい。
【0054】
(多層の構造)
吸収層が多層の構造である場合、吸収層は、例えば下記(1)~(5)に示されている形態をとることができるが、これらに限定されない。
【0055】
(1)第1の形態
吸収層は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、吸湿層及び硫化物系ガス吸収層を有してよい。
【0056】
なお、本発明において、「吸湿層」とは、少なくとも吸湿剤を含んでいる層、特に吸湿剤の含有率が最も高い層である。また、「硫化物系ガス吸収層」とは、少なくとも硫化物系ガス吸収剤を含んでいる層、特に硫化物系ガス吸収剤の含有率が最も高い層である。なお、任意の層の中に、吸湿剤及び硫化物系ガス吸収剤を同時に含んでいる場合には、「吸湿層」としてもよく、「硫化物系ガス吸収層」としてもよい。
【0057】
例えば、
図2(a)に示されているように、吸収層21は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、吸湿層21a及び硫化物系ガス吸収層21bを有する。
【0058】
このような形態を有する吸収層を用いることによって、特に、硫化物系全固体電池を収容しているラミネートパックの外部から内部への水分の侵入を防止することができる。
【0059】
(2)第2の形態
吸収層は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、硫化物系ガス吸収層及び吸湿層を有してよい。
【0060】
例えば、
図2(b)に示されているように、吸収層31は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、硫化物系ガス吸収層31b及び吸湿層31aを有する。
【0061】
このような形態を有する吸収層を用いることによって、特に、硫化物系全固体電池を収容しているラミネートパックの側面の封止口から内部への水分の侵入を防止することができる。
【0062】
(3)第3の形態
吸収層は、その両面にスキン層を有してよい。
【0063】
スキン層は、吸湿層に含まれる吸湿剤又は任意の硫化物系ガス吸収剤等の脱落を防止すること、又はラミネートパックの強度を向上することができる。したがって、この観点から、吸収層は、その両面にスキン層を更に有することが好ましい。
【0064】
したがって、第3の形態として、吸収層は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、第1のスキン層、吸湿層、及び第2のスキン層を有してよい。
【0065】
例えば、
図2(c)に示されているように、吸収層41は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、第1のスキン層41c、吸湿層41a、及び第2のスキン層41dを有する。
【0066】
このような形態を有する吸収層を用いることによって、特に、硫化物系全固体電池を収容しているラミネートパックの外部から内部への水分の侵入を防止することができる。また、吸湿層に含まれる吸湿剤の脱落を防止することができる。
【0067】
(4)第4の形態
更に、上述した吸収層の両面にスキン層を有する場合には、吸収層は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、第1のスキン層、吸湿層、硫化物系ガス吸収層、及び第2のスキン層を有してよい。
【0068】
例えば、
図2(d)に示されているように、吸収層51は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、第1のスキン層51c、吸湿層51a、硫化物系ガス吸収層51b、及び第2のスキン層51dを有する。
【0069】
このような形態を有する吸収層を用いることによって、特に、硫化物系全固体電池を収容しているラミネートパックの外部から内部への水分の侵入を防止することができる。また、吸湿層に含まれる吸湿剤及び硫化物系ガス吸収層に含まれる硫化物系ガス吸収剤の脱落を防止することができる。
【0070】
(5)第5の形態
また、上述した吸収層の両面にスキン層を有する場合には、吸収層は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、第1のスキン層、硫化物系ガス吸収層、吸湿層、及び第2のスキン層を有してよい。
【0071】
例えば、
図2(e)に示されているように、吸収層61は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、第1のスキン層61c、硫化物系ガス吸収層61b、吸湿層61a、及び第2のスキン層61dを有する。
【0072】
このような形態を有する吸収層を用いることによって、特に、硫化物系全固体電池を収容しているラミネートパックの側面の封止口から内部への水分の侵入を防止することができる。また、吸湿層に含まれる吸湿剤及び硫化物系ガス吸収層に含まれる硫化物系ガス吸収剤の脱落を防止することができる。
【0073】
なお、上述した第4の形態及び第5の形態において、吸湿層及び硫化物系ガス吸収層は、それぞれの両面にスキン層を有してもよい。すなわち、吸収層は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、第1のスキン層、吸湿層、第2のスキン層、第3のスキン層、硫化物系ガス吸収層、及び第4のスキン層を有してもよく、又は第1のスキン層、硫化物系ガス吸収層、第2のスキン層、第3のスキン層、吸湿層、及び第4のスキン層を有してもよい(図示せず)。
【0074】
上述した「吸湿層」、「硫化物系ガス吸収層」、「スキン層」については、以下で詳細に説明する。
【0075】
1.吸湿層
吸湿層は、少なくとも吸湿剤及びバインダーを含む。したがって、吸湿層は、上述した吸収層が単層の構造である場合を適宜参照することができる。
【0076】
2.硫化物系ガス吸収層
硫化物系ガス吸収層は、少なくとも硫化物系ガス吸収剤及びバインダーを含む。
【0077】
硫化物系ガス吸収剤に関しては、上述した硫化物系ガスを化学的にかつ/又は物理的に吸着できるものであれば、特に限定されない。また、バインダーに関しては、上述した吸収層に用いられるバインダーを適宜採用できる。
【0078】
硫化物系ガス吸収層において、硫化物系ガス吸収剤の含有量(質量部)は、バインダー100質量部に対して、混練性及びガス吸着性能を考慮して、0.1質量部以上、1質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上又は50質量部以上であることが好ましく、また500質量部以下、300質量部以下、100質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、又は30質量部以下であることが好ましい。
【0079】
硫化物系ガス吸収層の厚みは、特に限定されず、ガスの吸着性能、成形性、及び弾性の観点から、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、又は100μm以上であることが好ましく、また300μm以下、200μm以下、100μm以下、80μm以下、又は50μm以下であることが好ましい。
【0080】
3.スキン層
スキン層は、それと隣接する層(例えば吸収層、吸湿層及び/又は硫化物系ガス球種層)に融着されていてもよい。例えば、吸収層の両面にスキン層を有する場合には、それぞれの層は、吸湿層と共に押出しして製造することができる。
【0081】
スキン層を構成する材料としては、上述した吸収層に用いられるバインダーを適宜採用できる。
【0082】
スキン層の厚さは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は7μm以上であることができ、また50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は15μm以下であることができる。
【0083】
〈その他の層〉
本発明のラミネートシートは、上述した層以外に、その他の層を更に含んでよい。例えば基材層、又はシーラント層等を更に有してよい。
【0084】
(基材層)
本発明のラミネートシートは、バリア層の、吸収層とは反対側の面に、基材層を更に有してよい。基材層は、上述したバリア層を保護することができる。
【0085】
基材層としては、耐衝撃性、耐摩耗性等に優れた熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド等を単独で、又は2種類以上組み合わせて複層で使用することができる。この基材層は、延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよい。
【0086】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては、吸収層に関して挙げたポリエチレン系樹脂を用いることができ、ポリプロピレン系樹脂としては、第一の耐熱層に関して挙げたポリプロピレン系樹脂を用いることができる。
【0087】
ビニル系ポリマーとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。
【0088】
ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0089】
ポリアミドとしては、例えばナイロン(登録商標)6、ナイロンMXD6等のナイロン等が挙げられる。
【0090】
基材層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、バリア層を良好に保護する観点から好ましく、また55μm以下、50μm以下、又は45μm以下であることが、取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0091】
(シーラント層)
本発明のラミネートシートは、吸収層の、バリア層とは反対側の面に、シーラント層を更に有してよい。
【0092】
シーラント層は、ヒートシールに用いられる層である。よって、本発明のラミネートシートをラミネートパックに用いる場合に、このシーラント層を、硫化物系全固体電池に最も接近するラミネートパックの最内層に配置して、ヒートシールすることによって、ラミネートパックを得ることができるものであってよい。なお、本発明において、別個のシーラント層を有さない場合、ラミネートパックの最内層として配置される層、例えば吸収層、又はスキン層等をシーラント層として用いることができる。
【0093】
シーラント層を構成する材料は、上述した吸収層に用いられるバインダーに関して説明した熱可塑性材料であってよく、特に、例えば、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン触媒によるポリエチレン、エチレンの繰返し単位とアクリルの繰返し単位とを有する共重合樹脂、若しくはエチレンの繰返し単位とアクリル以外の繰返し単位とを有する共重合樹脂、又はこれらの組合せであってよいが、これらに限定されない。これらの樹脂は、例えば、延伸又は無延伸フィルム、押出積層用の溶融樹脂、ホットメルト用の塗料等の形態であってよい。
【0094】
また、シーラント層としては、市販のイージーピール樹脂又はイージーピールシーラントフィルムを用いてもよい。
【0095】
シーラント層の厚さは、特に限定されず、溶融によって強固なシールを形成するとの観点から、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、又は50μm以上であることが好ましく、また、取り扱い性を向上させる観点から、100μm以下、80μm以下、又は50μm以下であることが好ましい。
【0096】
〈接着剤〉
本発明のラミネートシートにおける各層間は、適当な接着剤によって固定されていることが好ましい。
【0097】
この場合の接着剤は、積層フィルムの製造方法に応じて当業者が適宜に選択することができる。例えば、ドライラミネート用のウレタン系接着剤等であってよい。
【0098】
より具体的は、接着剤として、例えば三井化学株式会社製のタケラック(登録商標)A-525Sとタケネート(登録商標)A-52との組合せ、タケラック(登録商標)A-520とタケネート(登録商標)A-50との組合せ、タケラック(登録商標)A-525とタケネート(登録商標)A-52との組合せ、及びタケラック(登録商標)A-525Sとタケネート(登録商標)A-50との組合せ等を用いられるが、これらに限定されない。
【0099】
接着剤の量は、ラミネートシート単位面積当たりの接着材料として、層間ごとに、例えば0.5g/m2以上とすることができ、好ましくは1g/m2以上、又は3g/m2以上である。一方でこの接着剤の量は、例えば10g/m2以下とすることができ、好ましくは5g/m2以下である。
【0100】
《ラミネートシートの製造方法》
本発明のラミネートシートの製造方法は、特に限定されず、例えば上述したラミネートシートの各層を構成する材料を、必要に応じて溶融混錬し、製膜し、そして各層を積層することによって製造することができる。
【0101】
溶融混錬は、バッチ式混練機又は連続混練機等を用いて行うことができる。より具体的には、溶融混錬は、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、ヘンシェルミキサー、又はミキシングロール等を用いて行うことができる。溶融混錬の温度は、特に限定されず、各層を構成する材料に応じて適宜設定することができ、例えば50℃以上、80℃以上、100℃以上、150℃以上、又は200℃以上であってよく、また、350℃以下、300℃以下、又は200℃以下であってよい。溶融混錬の時間は、特に限定されず、例えば1分以上、5分以上、10分以上、20分以上、30分以上、又は60分以上であってよく、また48時間以下、24時間以下、12時間以下、又は2時間以下であってよい。
【0102】
製膜は、例えばインフレーション法、Tダイ法、カレンダー法、キャスティング法、熱プレス成形、押出成形又は射出成形等により行うことができる。
【0103】
積層は、サンドラミネート法等の押出ラミネート法、ヒートシール法、熱プレス成形、又はドライラミネート等により行うことができる。
【0104】
また、共押出インフレーション法及び共押出Tダイ法等の共押出法により、製膜及び積層を同時に行ってもよい。
【0105】
《硫化物系全固体電池用ラミネートパック》
本発明はまた、硫化物系全固体電池用ラミネートパックを提供する。
【0106】
本発明のラミネートパックは、上述したラミネートシートを1つ用いて袋状に形成されていてもよい。すなわち、本発明のラミネートパックは、ラミネートシートを1つ具備しており、かつラミネートシートが内部側用面を内側にして折り曲げられて、内部側用面の周縁部がヒートシールされることによって袋状にされている、硫化物系全固体電池用ラミネートパックであってよい。
【0107】
本発明のラミネートパックは、上述したラミネートシートと、他のラミネートシートとを併用して袋状に形成されていてもよい。
【0108】
したがって、上述したラミネートシートを「A面用ラミネートシート」とし、他のラミネートシートを「B面用ラミネートシート」とするとき、本発明のラミネートパックは、A面用ラミネートシートとしての上述したラミネートシートと、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、B面用バリア層及びB面用シーラント層を有するB面用ラミネートシートとを具備しており、かつA面用ラミネートシートの内部側用面と、B面用シーラント層とが互いに対向して、内部側用面とB面用シーラント層との周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている、硫化物系全固体電池用ラミネートパックであってよい。
【0109】
なお、B面用バリア層及びB面用シーラント層は、上述したA面に用いられる「バリア層」及び「シーラント層」を適宜に参照してよい。また、B面用ラミネートシートは、例えば上述した基材層等のその他の層を更に有してもよい。例えば、B面用ラミネートシートは、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、B面用基材層、B面用バリア層、及びB面用シーラント層を有してよい。
【0110】
本発明のラミネートパックはまた、上述したラミネートシートを2つ以上用いて袋状に形成されていてもよい。すなわち、本発明のラミネートパックは、ラミネートシートを2つ以上具備しており、かつ内部側用面同士が互いに対向して、内部側用面の周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている、硫化物系全固体電池用ラミネートパックであってよい。
【0111】
なお、ラミネートシートを2つ以上用いて、ラミネートパックを形成する場合には、2つ以上のラミネートシートの構成は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0112】
例えば、
図3(a)及び(b)に示されているように、ラミネートパックのA面及びB面として、2つの異なるラミネートを用いてラミネートパックを形成することができる。
【0113】
より具体的には、
図3(a)では、A面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層70a、及び吸収層71を有するラミネートシートを用いており、また、この吸収層71は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、吸湿層71a及び硫化物系ガス吸収層71bを有する。また、B面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層70b、及びシーラント層72を有するラミネートシートを用いる。この場合、本発明のラミネートパックは、内部側用面同士、すなわち硫化物系ガス吸収層71b及びシーラント層72のそれぞれの内部側用面同士が互いに対向して、硫化物系ガス吸収層71b及びシーラント層72のそれぞれの内部側用面同士の周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている、ラミネートパックであってよい。
【0114】
また、
図3(b)では、A面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層80a、及び吸収層81を有するラミネートシートを用いており、また、この吸収層81は、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、吸湿層81a及び硫化物系ガス吸収層81bを有する。また、B面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層80b、及び硫化物系ガス吸収層81bを有するラミネートシートを用いる。この場合、本発明のラミネートパックは、内部側用面同士、すなわち2つの硫化物系ガス吸収層81bの内部側用面同士が互いに対向して、2つの硫化物系ガス吸収層81bのそれぞれの内部側用面同士の周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている、ラミネートパックであってよい。
【0115】
ここで、上述したいずれのラミネートパックの場合も、内部側用面の周縁部の大きさは、加熱及び/又は加圧してヒートシールできる程度の大きさとして設定してよい。
【0116】
また、本発明のラミネートパックの内部側用面をヒートシールすることによって、硫化物系全固体電池を密封する三方シールタイプ、四方シールタイプ、又はピローパウチタイプのいずれであってよい。
【0117】
《ラミネート電池》
本発明は、上述したラミネートパック及び硫化物系全固体電池を具備している、ラミネート電池を提供する。
【0118】
本発明のラミネート電池は、本発明のラミネートパックを使用する以外は、硫化物系全固体電池を含む公知の形態を採用することができる。
【実施例】
【0119】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0120】
〈吸湿層の作製〉
下記の吸湿剤とバインダーを用いて溶融混錬法より押出機でマスターバッチを作製した。
吸湿剤(53質量部):親水性ゼオライト(モレキュラーシーブ3A;ユニオン昭和株式会社製)
バインダー(47質量部):エチレン―メタクリル酸共重合体(熱可塑性樹脂)。
【0121】
上記得られたマスターバッチを吸湿層とし、かつ、直鎖状低密度ポリエチレンを第1のスキン層及び第2のスキン層として、空冷方式インフレーションによる共押出成形にて、以下の順に積層されている2種3層の吸湿層を作製した:
第1のスキン層(10μm)/吸湿層(30μm)/第2のスキン層(10μm)。
【0122】
〈硫化物系ガス吸収層の作製〉
バインダーとしてのポリエチレン50質量部と、ガス吸収剤としてのケスモンNS-20C(東亞合成株式会社製)50質量部とを配合し、バンバリーミキサーにより混錬物を作製した。なお、混錬温度は150℃であり、混錬時間は10分間であった。
【0123】
上記作製した混錬物2質量部とポリエチレン98質量部を混合しガス吸収剤含有層とし、かつ直鎖状低密度ポリエチレンを第1のスキン層及び第2のスキン層として、インフレーション機にて、以下の順に積層されている2種3層の硫化物系ガス吸収層を作製した:
第1のスキン層(10μm)/硫化物系ガス吸収層(50μm)/第2のスキン層(10μm)。
【0124】
〈吸湿剤及び硫化物系ガス吸収剤を含む吸収層の作製〉
下記の吸湿剤と硫化物系ガス吸収剤とバインダーを用いて溶融混錬法より押出機でマスターバッチを作製した。
吸湿剤(53質量部):親水性ゼオライト(モレキュラーシーブ3A;ユニオン昭和株式会社製)
硫化物系ガス吸収剤(1質量部):ケスモンNS-20C(東亞合成株式会社製)
バインダー(46質量部):エチレン―メタクリル酸共重合体(熱可塑性樹脂)。
【0125】
上記得られたマスターバッチを吸湿剤及び硫化物系ガス吸収剤を含む吸収層とし、かつ、直鎖状低密度ポリエチレンを第1のスキン層及び第2のスキン層として、空冷方式インフレーションによる共押出成形にて、以下の順に積層されている2種3層の吸湿剤及び硫化物系ガス吸収剤を含む吸収層を作製した:
第1のスキン層(10μm)/吸湿剤及び硫化物系ガス吸収剤を含む吸収層(30μm)/第2のスキン層(10μm)。
【0126】
〈評価サンプルの作製〉
表1に示されているラミネートシートの構成にしたがい、各実施例及び比較例のラミネートシートを作製した後、2つのラミネートシートを用いてヒートシールして、ラミネートパックとして四方袋を作製した。なお、温度23℃湿度20%の環境下で各実施例及び比較例のラミネートパックの中に湿度データロガーを入れ、四方のシール部分の幅を1mmにカットした。
【0127】
各実施例及び比較例のラミネートパックの構成の詳細について、以下に説明する。
【0128】
《実施例1》
ラミネートパックのA面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、基材層、バリア層、及び吸湿層を有するラミネートシートを用いて、また、ラミネートパックのB面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、基材層、バリア層、及びシーラント層を有するラミネートシートを用いて、実施例1のラミネートパックを作製した。
【0129】
ここで、バリア層として、アルミニウム箔を用い;基材層として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用い;シーラント層として、ポリエチレン(PE)を用いた。
【0130】
また、各層の間はいずれも、ドライラミネートによって積層された。ドライラミネートの接着剤として、三井化学株式会社製のタケラック(登録商標)A-525Sとタケネート(登録商標)A-50との組合せを用いて、この接着剤と酢酸エチルとを所定の配合比で混ぜ、塗布量3g/m2となるようにハンドコーターにて各層の間に塗布した後、圧着させた。
【0131】
《実施例2》
ラミネートパックのA面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、基材層、バリア層、硫化物系ガス吸収層、及び吸湿層を有するラミネートシートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のラミネートパックを作製した。
【0132】
なお、バリア層と硫化物系ガス吸収層との間は、実施例1と同様にラミネートした。
【0133】
《実施例3》
ラミネートパックのA面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、基材層、バリア層、吸湿層、及び硫化物系ガス吸収層を有するラミネートシートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のラミネートパックを作製した。
【0134】
なお、吸湿層と硫化物系ガス吸収層との間は、実施例1と同様にラミネートした。
【0135】
《実施例4》
10cm×10cmの上記2種3層の硫化物系ガス吸収層のみを内包したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のラミネートパックを作製した。
【0136】
《実施例5》
ラミネートパックのB面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、基材層、バリア層、及び硫化物系ガス吸収層を有するラミネートシートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のラミネートパックを作製した。
【0137】
なお、バリア層と硫化物系ガス吸収層との間は、実施例1と同様にラミネートした。
【0138】
《実施例6》
ラミネートパックのA面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、基材層、バリア層、吸湿剤及び硫化物系ガス吸収剤を含む吸収層を有するラミネートシートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6のラミネートパックを作製した。
なお、バリア層と硫化物系ガス吸収層との間は、実施例1と同様にラミネートした。
【0139】
《比較例1》
ラミネートパックのA面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、基材層、バリア層、及びシーラント層を有するラミネートシートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例のラミネートパックを作製した。
【0140】
《比較例2》
ラミネートパックのA面として、外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、基材層、バリア層、及び硫化物系ガス吸収層を有するラミネートシートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例のラミネートパックを作製した。
【0141】
なお、バリア層と硫化物系ガス吸収層との間は、実施例1と同様にラミネートした。
【0142】
《評価》
上記で作製した各実施例及び比較例のラミネートパックサンプルを、60℃90%(相対湿度)の環境に2週間置き、2週間後にラミネートパック中の湿度データロガーを取り出して、ログの値を確認した。その結果は表1に示す。
【0143】
【0144】
表1から明らかであるように、実施例1~5のラミネートパックは、いずれも2週間後内部湿度0%であった。すなわち、本発明のラミネートシートを用いたラミネートパックの内部には、水分が存在しない又は存在しにくい環境である。したがって、本発明のミネートシート及びそれを用いたラミネートパックは、硫化物系ガスの発生を抑制できることが分かった。
【0145】
これに対して、比較例1及び2のラミネートパックは、いずれも2週間後の内部湿度が40%であった。このようにラミネートパックの中に硫化物系ガスが発生する根本的な原因である水分が存在したため、硫化物系ガスの発生を抑制できないことが分かった。
【0146】
《参考例》
以下の参考例によれば、硫化物系ガス吸収剤自体は、硫化物系ガスのみならず、水分を吸収する能力を有することが分かった。
【0147】
(1)ケスモンNS-20C(東亞合成株式会社製)を秤量して(この重量をaとする)ディスポカップに入れ再び秤量した(この重量をbとする)。
【0148】
(2)上記のケスモンNS-20Cとカップを40℃90%(相対湿度)環境の高温高湿槽に入れて所定時間ごとに秤量した(この重量をcとする)。
【0149】
(3)次の式で重量増加率を計算した。
重量増加率=(c-b+a)/a
【0150】
【0151】
表2に示されているように、ケスモンNS-20Cを用いた場合、3つのサンプルの平均で約6時間後から最大で自重30%の水分を吸着することが分かった。
【符号の説明】
【0152】
10、70a、70b、80b バリア層
11、21、31、41、51、61、71、81 吸収層
21a、31a、41a、51a、61a、71a、81a 吸湿層
21b、31b、51b、61b、71b、81b 硫化物系ガス吸収層
41c、41d、51c、51d、61c、61d スキン層
72 シーラント層
100 ラミネートシート