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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ラベル用粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230927BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20230927BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230927BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J11/08
G09F3/10 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019096275
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020189932
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鉄本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝和
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-256672(JP,A)
【文献】特開2016-117785(JP,A)
【文献】特開2009-126934(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056499(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の片面に設けられた粘着剤層とを少なくとも備え、
前記粘着剤層は、エマルション型粘着剤とエマルション型粘着付与剤とを含むエマルション型粘着剤組成物から形成され、
前記エマルション型粘着剤が、アクリル系エマルション型粘着剤を含み、
前記エマルション型粘着付与剤の粘着付与樹脂は、ロジン樹脂から選択される種以上を含み、
前記2種以上のロジン樹脂は、軟化点が90℃以上110℃以下のロジン樹脂を含み、
前記粘着剤層のバイオマス度が11.5%以上24.8%未満である、ラベル用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層のバイオマス度が11.5%以上20.0%以下である、請求項1に記載のラベル用粘着シート。
【請求項3】
前記アクリル系エマルション型粘着剤の含有量が、前記エマルション型粘着剤の全量基準で、95~100質量%である、請求項1又は2に記載のラベル用粘着シート。
【請求項4】
前記ロジン樹脂の合計含有量が、前記粘着付与樹脂の全量基準で、95~100質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のラベル用粘着シート。
【請求項5】
打ち抜き加工されたラベルとして用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載のラベル用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着シートの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物には、有機溶剤型の粘着剤組成物が用いられていた。しかし、塗工の際に有機溶剤が揮発することが問題であった。また、粘着シートの粘着剤層に有機溶剤がわずかに残存することも問題であった。
一方、エマルション型の粘着剤組成物は、有機溶剤型の粘着剤組成物に比べて、環境面、安全面、及び衛生面等の観点において優れている。
そのため、近年では、粘着シートの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物として、エマルション型の粘着剤組成物を用いることが多くなってきている。
【0003】
また、近年、地球温暖化等の環境問題が重視されており、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出抑制の規制が強化されている。かかる観点から、例えば特許文献1では、植物由来の成分等を配合することによって、化石資源系材料の使用量を減らし、焼却処分時等に温室効果ガスの排出量を低減することができる粘着シートも提案されている。詳細に説明すると、植物由来の成分等(以下、「バイオマス材料」ともいう)は、燃焼等によって温室効果ガスである二酸化炭素を放出するが、当該二酸化炭素は、元をたどれば、典型的には植物の成長過程で光合成により大気中から吸収したものであるため、大気中の二酸化炭素の増加を実質的にもたらさない。つまり、バイオマス材料は、地球環境において比較的短期間のうちに循環することによって、炭素の増減を実質的にもたらさないカーボンニュートラルな材料とみなすことができる。そして、バイオマス材料がカーボンニュートラルな材料であることによって、バイオマス材料を配合し、化石資源系材料の使用量を減らした粘着シートは、焼却処分時等に、化石資源系材料に由来する二酸化炭素の排出量、換言すれば、比較的短期間のうちには再生が困難な材料に由来する二酸化炭素の排出量が低減され、焼却処分時等に温室効果ガスの排出量が低減されるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/056499号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エマルション型の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートは、ポリオレフィンに対し、十分な粘着性を確保し難い。ポリオレフィンは、食品等の容器及び包装等に用いられることが多い。そのため、エマルション型の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートの汎用性を高める観点から、エマルション型の粘着剤組成物に、粘着付与剤を配合し、ポリオレフィンに対する十分な粘着性を確保することが考えられる。
【0006】
また、焼却処分時等に温室効果ガスの排出を抑制する観点から、エマルション型の粘着剤組成物に、粘着付与剤として、焼却処分時等に大気中の二酸化炭素の増加を実質的にもたらさないカーボンニュートラルな材料である植物由来の樹脂を用いて、粘着剤層のバイオマス度を高めることも考えられる。
【0007】
ここで、粘着シートには、ポリオレフィンに対する粘着性を確保することや、粘着剤層のバイオマス度を高めることに加えて、更に付与すべき特性が存在する。
【0008】
具体的には、粘着シートを貼付する対象となる被着体は、曲面を有するものが多い。そのため、特に曲面に対する貼付性に優れる粘着シートも求められる。
【0009】
また、粘着シートをラベルとして用いる場合、当該ラベルは、ラベリングマシン等を用いて貼付されることが多い。その際、ラベルのタックを向上させることによって、ラベリングマシンにより被着体にラベルを瞬時に貼付することが可能となる。これにより、被着体にラベルを貼付する工程の速度を向上させて、生産性を向上させることができる。また、上記のように、ポリオレフィンは、食品等の容器及び包装等、多岐に渡って用いられることが多い。そのため、ポリオレフィンに対しても、ラベルのタックを十分に確保することが求められる。
【0010】
しかしながら、これらのような要求を全て満足する粘着シートは、未だ検討されていない。
【0011】
そこで、本発明は、ポリオレフィンに対しても十分な粘着力を発揮することができ、曲面貼付性に優れると共にポリオレフィンに対するタックも十分に確保されており、しかも、粘着剤層のバイオマス度も高められた、ラベル用の粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため、本発明者等が鋭意検討した結果、エマルション型粘着剤とエマルション型粘着付与剤とを含むエマルション型粘着剤組成物から形成された粘着剤層のバイオマス度を特定の範囲に調整した粘着シートが、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、下記[1]~[5]に関する。
[1]基材と、前記基材の片面に設けられた粘着剤層とを少なくとも備え、前記粘着剤層は、エマルション型粘着剤とエマルション型粘着付与剤とを含むエマルション型粘着剤組成物から形成され、前記エマルション型粘着付与剤の粘着付与樹脂は、ロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含み、前記粘着剤層のバイオマス度が2.9%以上24.8%未満である、ラベル用粘着シート。
[2]前記粘着剤層のバイオマス度が2.9%以上20.0%以下である、上記[1]に記載のラベル用粘着シート。
[3]前記エマルション型粘着剤が、アクリル系エマルション型粘着剤を含む、上記[1]又は[2]に記載のラベル用粘着シート。
[4]前記粘着付与樹脂が、軟化点が80℃以上170℃以下のロジン樹脂から選択される1種以上を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載のラベル用粘着シート。
[5]打ち抜き加工されたラベルとして用いられる、上記[1]~[4]のいずれかに記載のラベル用粘着シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリオレフィンに対しても十分な粘着力を発揮することができ、曲面貼付性に優れると共にポリオレフィンに対するタックも十分に確保されており、しかも、粘着剤層のバイオマス度も高められた、ラベル用の粘着シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一態様のラベル用粘着シートの断面図である。
図2】本発明の別の態様のラベル用粘着シートの断面図である。
図3】(A)はラベル連続体の平面図であり、(B)はラベル連続体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[ラベル用粘着シートの態様]
本発明の粘着シートは、基材と、前記基材の片面に設けられた粘着剤層とを少なくとも備え、前記粘着剤層は、エマルション型粘着剤とエマルション型粘着付与剤とを含むエマルション型粘着剤組成物から形成され、前記エマルション型粘着付与剤の粘着付与樹脂は、ロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上であり、前記粘着剤層のバイオマス度が2.9%以上24.8%未満である。
前記粘着剤層のバイオマス度が2.9%未満であると、ポリオレフィンに対する粘着力を十分に確保することができず、曲面貼付性にも劣る。
また、前記粘着剤層のバイオマス度が24.8%以上であると、曲面貼付性に劣る。
前記粘着剤層のバイオマス度が2.9%以上24.8%未満であると、ポリオレフィンに対しても十分な粘着力を発揮することができ、曲面貼付性に優れると共にポリオレフィンに対するタックも十分に確保されており、しかも、粘着剤層のバイオマス度も高められた、ラベル用の粘着シートとすることができる。
ここで、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、本発明の一態様のラベル用粘着シートは、粘着剤層のバイオマス度が、好ましくは2.9%以上20.0%以下、より好ましくは2.9%以上18.7%以下である。
また、ポリオレフィンに対するタックをより向上させやすくする観点から、本発明の一態様のラベル用粘着シートは、粘着剤層のバイオマス度が、好ましくは2.9%以上15.0%以下、より好ましくは2.9%以上11.5%以下である。
なお、本明細書において、「粘着剤層のバイオマス度」は、下記式(A)から算出される値である。
(粘着剤層のバイオマス度)=(X/Y)×100 ・・・(A)
式(A)において、「X」は、エマルション型粘着剤組成物中の植物由来成分の固形分質量である。本発明では、当該植物由来成分として、植物由来のエマルション型粘着付与剤を含み、その固形分が「X」に該当する。「Y」は、エマルション型粘着剤組成物中のエマルション型粘着付与剤の固形分質量及びエマルション型粘着剤の固形分質量の総量である。
【0016】
[ラベル用粘着シートの構成]
本発明の一態様のラベル用粘着シートの断面図を図1及び図2に示す。
図1に示すラベル用粘着シート1aは、基材2の片面に粘着剤層3が直接積層された積層構造を有する。
ここで、本発明の一態様のラベル用粘着シートは、図2に示すラベル用粘着シート1bように、基材2と粘着剤層3と剥離ライナー4とがこの順で積層された積層構造を有していてもよい。この場合、ラベル用粘着シートの使用時に、ラベル用粘着シートから剥離ライナー4を剥がし、表出した粘着剤層3を被着体に貼付する。
但し、本発明の一態様のラベル用粘着シートの構成は、これらに限定されるものではない。例えば、基材2と粘着剤層3との間には、他の層が設けられていてもよい。当該他の層としては、例えばプライマー層等が挙げられる。
また、当該他の層として、意匠性に優れたラベル用粘着シートとする観点から、金属光沢層が設けられていてもよい。金属光沢層としては、例えば、金属蒸着膜、金属箔、及び金属粒子等の金属光沢粒子を含む印刷インキを用いて公知の印刷法にて形成された金属光沢印刷層等が挙げられる。
【0017】
次に、本発明の一態様のラベル用粘着シートとして、ラベル連続体10を図3に示す。図3(A)はラベル連続体10の平面図であり、図3(B)はラベル連続体10の断面図である。
ラベル連続体10は、平面方形などの形状に打ち抜かれた、基材12と、その裏面に設けられた粘着剤層13とからなるラベル11が、長尺帯状の剥離ライナー14の表面に適宜間隔をおいて複数枚仮着されている。なお、図3に示すラベル連続体10は、ラベルを1列に連ねたラベル連続体であるが、ラベルの列は2列以上であってもよい。なお、ラベルの形状は、方形には限定されず、ラベルの用途に応じて多角形、円形、及び楕円形等の適宜の形状としてもよい。
【0018】
[エマルション型粘着剤組成物]
本発明のラベル用粘着シートの粘着剤層は、エマルション型粘着剤とエマルション型粘着付与剤とを含むエマルション型粘着剤組成物から形成される。
以下、エマルション型粘着剤とエマルション型粘着付与剤について、詳細に説明する。
【0019】
<エマルション型粘着剤>
エマルション型粘着剤は、重合体を乳化させて水中に分散させた水系粘着剤であり、例えば、アクリル系エマルション、天然ゴムラテックス、及び合成ゴムラテックス等を粘着基剤としたエマルション型粘着剤が知られている。
これらの中でも、アクリル系エマルションを粘着基剤としたアクリル系エマルション型粘着剤を用いることが好ましい。
本発明の一態様では、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、アクリル系エマルション型粘着剤の含有量は、エマルション型粘着剤の全量基準で、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、より更に好ましくは95~100質量%、更になお好ましくは100質量%である。
以下、アクリル系エマルション型粘着剤について、詳細に説明する。
【0020】
(アクリル系エマルション型粘着剤)
アクリル系エマルション型粘着剤は、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキルアルコールとのエステル単量体を重合させて得られる、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が主成分として水に分散された粘着剤である。
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味し、他の類似の用語についても同様である。例えば、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル」を意味する。
また、本明細書において、「主成分」とは、構成成分の全量基準で、その含有量が50質量%を超える成分を意味する。
【0021】
(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキルアルコールとのエステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、及びメタクリル酸ラウリル等から選択される1種以上が挙げられる。
これらの中でも、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方が主成分として用いられることが好ましい。
本発明の一態様において、前記エステル単量体であるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの合計含有量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の全構成単位基準で、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、より更に好ましくは95~100質量%である。
【0022】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、前記エステル単量体と共重合可能なビニル系単量体を共重合させてもよい。
但し、前記エステル単量体100質量部に対し、20質量部以下の割合でビニル系単量体が共重合されることが好ましく、10質量部以下の割合でビニル系単量体が共重合されることがより好ましく、5質量部以下の割合でビニル系単量体が共重合されることが更に好ましい。
【0023】
前記エステル単量体と共重合可能なビニル系単量体は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸グリシジル、及びメタクリル酸グリシジル等のビニル基含有単量体;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、及びイタコン酸等のカルボキシル基含有単量体;アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、及びメタクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の水酸基含有単量体;並びにアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピロリドン等の窒素含有単量体;等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシル基含有単量体が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0024】
前記エステル単量体又は前記エステル単量体と前記ビニル系単量体とは、重合開始剤を用いて重合又は共重合される。ここで、水は分散媒としても働き、重合又は共重合されて得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体又は(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が界面活性剤により分散される。これらが水に分散されることにより、アクリル系エマルション型粘着剤が生成される。
【0025】
なお、界面活性剤は、従来公知のアニオン系、ノニオン系、及びカチオン系の乳化剤並びに合成高分子乳化剤の中から適宜選択して用いることが出来る。
これらの中でも、耐水粘着力を向上させる観点から、反応性乳化剤を用いることが好ましい。なお、「反応性乳化剤」とは、反応性の官能基を分子中に有している乳化剤のことであり、乳化重合の過程でミセル内のポリマーと化学的に結合し得る乳化剤を意味する。
【0026】
反応性乳化剤としては、例えば、下記一般式(I)~(VII)で表される構造の化合物から選択される1種以上が挙げられる。
【0027】
【化1】


【化2】


【化3】

【化4】


【化5】


【化6】


【化7】

【0028】
なお、上記記一般式(I)~(VII)において、Rはアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはアルキレン基であり、Xは水素原子又はスルホン酸塩基を示す。また、n、m、及びkは、1以上の整数であり、且つ、m+k=3である。
【0029】
反応性乳化剤の具体例としては、市販品として、旭電化株式会社製のアデカリアソープSE-20N(アニオン系)、アデカリアソープSE-10N(アニオン系)、アデカリアソープNE-10(ノニオン系)、アデカリアソープNE-20(ノニオン系)、アデカリアソープNE-30(ノニオン系)、アデカリアソープNE-40(ノニオン系)、アデカリアソープSDX-730(アニオン系)、及びアデカリアソープSDX-731(アニオン系)、三洋化成株式会社製のエレミノールJS-2(アニオン系)及びエレミノールRS-30(アニオン系)、花王株式会社製のラテムルS-180A(アニオン系)及びラテムルS-180(アニオン系)、第一工業製薬株式会社製のアクアロンBC-05(アニオン系)、アクアロンBC-10(アニオン系)、アクアロンBC-20(アニオン系)、アクアロンHS-05(アニオン系)、アクアロンHS-10(アニオン系)、アクアロンHS-20(アニオン系)、アクアロンRN-10(ノニオン系)、アクアロンRN-20(ノニオン系)、アクアロンRN-30(ノニオン系)、アクアロンRN-50(ノニオン系)、ニューフロンティアS-510(アニオン系)、及びニューフロンティアA-229E(アニオン系)、東邦化学工業株式会社製のフォスフィノールTX(アニオン系)等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
反応性乳化剤の使用量は、前記エステル単量体100質量部又は前記エステル単量体と前記ビニル系単量体との合計量100質量部に対し、通常0.5~4.5質量部、好ましくは0.5~3.0質量部、より好ましくは0.5~2.0質量部である。
【0031】
重合開始剤は、例えば、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、及びt-ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル;等が用いられる。なお、比較的低温で重合を行なう場合には、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、及びピロリン酸ナトリウム等の還元剤を併用してレドックス重合させることも可能である。
【0032】
なお、前記エステル単量体又は前記エステル単量体と前記ビニル系単量体との重合又は共重合に際し、重合体の分子量を調整するために、連鎖移動剤及び分子量調整剤の少なくとも一方を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、ドデシルメルカプタン及びラウリルメルカプタン等が挙げられる。
また、分子量調整剤としては、例えば、α-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0033】
ここで、生成されるアクリル系エマルション型粘着剤を安定させる観点から、アクリル系エマルション型粘着剤に保護コロイドを添加してもよい。
保護コロイドとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等の水溶性の高分子化合物が用いられる。
【0034】
また、必要に応じて、アクリル系エマルション型粘着剤に架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、ヒドラジド系化合物、イソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、アルコキシシラン系化合物、アミン系化合物、及び金属キレート系化合物等が挙げられる。
【0035】
<エマルション型粘着付与剤>
エマルション型粘着付与剤は、粘着付与樹脂を乳化させて水中に分散させた水系粘着付与剤である。
当該粘着付与樹脂は、ロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含む。
エマルション型粘着付与剤を構成する粘着付与樹脂が、植物由来の樹脂であるロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含むことによって、粘着剤層のバイオマス度が向上する。したがって、粘着剤層のバイオマス度が高められた、粘着シートを提供することが可能となる。
なお、本発明の一態様において、粘着付与樹脂として、ロジン樹脂及びテルペン樹脂以外の他の粘着付与樹脂(例えば、石油樹脂等)を含んでいてもよい。但し、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ロジン樹脂及びテルペン樹脂の合計含有量は、粘着付与樹脂の全量基準で、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、より更に好ましくは95~100質量%、更になお好ましくは100質量%である。
以下、ロジン樹脂及びテルペン樹脂について、詳細に説明する。
【0036】
(ロジン樹脂)
ロジン樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、及びトール油ロジン等の未変性ロジン;未変性ロジンを水添化、不均化、重合、及び化学修飾等から選択される1種以上の処理により変性した変性ロジン;各種ロジン誘導体等が挙げられる。
ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジン又は変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンエステル類;未変性ロジン又は変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類、又は不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;未変性ロジン又は変性ロジンを、アクリル酸、フマル酸、又はマレイン酸等の酸類で変性した酸変性ロジン類;ロジンエステル類を、アクリル酸、フマル酸、又はマレイン酸等の酸類で変性した酸変性ロジンエステル類等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせ用いてもよい。
【0037】
ここで、本発明の一態様では、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、粘着付与樹脂は、軟化点が80℃以上170℃以下のロジン樹脂から選択される1種以上を含むことが好ましい。ここで、ロジン樹脂の合計含有量は、本発明の効果を更に発揮させやすくする観点から、粘着付与樹脂の全量基準で、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、より更に好ましくは95~100質量%、更になお好ましくは100質量%である。
また、ポリオレフィンに対するタックをより向上させる観点、さらにはジッピングを抑制しやすくする観点から、ロジン樹脂の軟化点は、80℃以上150℃以下であることが好ましく、90℃以上140℃以下であることがより好ましく、90℃以上130℃以下であることが更に好ましく、90℃以上125℃以下であることがより更に好ましく、90℃以上120℃以下であることが更になお好ましく、90℃以上115℃以下であることが一層好ましく、90℃以上110℃以下であることがより一層好ましい。
なお、曲面貼付性をより向上させる観点から、ロジン樹脂の軟化点は、85℃超であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。
ロジン樹脂の軟化点は、例えば、ロジンの重合度、重合ロジンとロジン単量体との混合割合等によって調整することができる。
具体的には、ロジンの重合度を高める程、ロジン樹脂の軟化点は高くなり、逆に、ロジンの重合度を低下させる程、軟化点は低くなる。
また、重合ロジンとロジン単量体との総量に占める重合ロジンの割合を高める程、ロジン樹脂の軟化点は高くなり、逆に、重合ロジンの割合を低下させる程、軟化点は低くなる。
なお、本明細書において、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207:2006に基づく環球法に準拠して測定される値を意味する。
【0038】
なお、ロジン樹脂は、安定性の観点から、エステル化されていることが好ましい。すなわち、ロジン樹脂は、未変性ロジン又は変性ロジンをエステル化させることで生成されるエステルであることが好ましい。
エステル化に用いるアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及び1、6-ヘキサンジオール等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール及びジグリセリン等の4価アルコール;ジペンタエリスリトール等の6価アルコール;並びにトリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-イソブチルジエタノールアミン、及びN-n-ブチルジエタノールアミン等のアミノアルコール等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせ用いてもよい。
【0039】
ここで、本発明の一態様において、打ち抜き加工時におけるラベルの側面からの糊の浸み出し及び抜き刃の汚染を抑制する観点から、軟化点が50℃以下のロジン樹脂の含有量は少ないことが好ましい。具体的には、軟化点が50℃以下のロジン樹脂の含有量は、粘着付与樹脂の全量基準で、好ましくは20質量%未満、より好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%未満、より更に好ましくは1質量%未満、更になお好ましくは軟化点が50℃以下のロジン樹脂を含まないことである。
【0040】
(テルペン樹脂)
テルペン樹脂としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、及びリモネン重合体等の未変性テルペン重合体;テルペン重合体をフェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、及び炭化水素変性等から選択される1種以上の処理により変性した変性テルペン重合体等が挙げられる。変性テルペン重合体の例としては、テルペンフェノール樹脂及び芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせ用いてもよい。
【0041】
なお、未変性テルペン重合体とは、α-ピネン、β-ピネン、及びリモネンから選択される1種以上のモノテルペンを、触媒の存在下においてカチオン重合させることにより生成される重合体である。なお、モノテルペンに代えて、ジテルペン等の他のテルペン類をカチオン重合させることにより生成される重合体を粘着付与樹脂として用いることも可能である。
【0042】
なお、テルペンフェノール樹脂とは、テルペンをフェノール及びホルマリン等と縮合させることにより生成される樹脂である。芳香族変性テルペン樹脂とは、テルペンモノマーと芳香族モノマーとを共重合させることにより生成される樹脂、又はテルペンに存在する炭素6 員環をベンゼン環変性させた樹脂である。
【0043】
ここで、本発明の一態様において、打ち抜き加工時におけるラベルの側面からの糊の浸み出し及び抜き刃の汚染を抑制する観点から、軟化点が50℃以下のテルペン樹脂の含有量は少ないことが好ましい。具体的には、軟化点が50℃以下のテルペン樹脂の含有量は、粘着付与樹脂の全量基準で、好ましくは20質量%未満、より好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%未満、より更に好ましくは1質量%未満、更になお好ましくは軟化点が50℃以下のテルペン樹脂を含まないことである。
軟化点が50℃以下のテルペン樹脂としては、例えば、未変性テルペン重合体等が挙げられる。
【0044】
(ロジン樹脂とテルペン樹脂との含有量比)
本発明の一態様において、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ロジン樹脂とテルペン樹脂との含有量比[(ロジン樹脂)/(テルペン樹脂)]は、質量比で、好ましくは30/70~100/0、より好ましくは50/50~100/0、更に好ましくは70/30~100/0、より更に好ましくは80/20~100/0、更になお好ましくは80/20超~100/0、一層好ましくは90/10~100/0、より一層好ましくは95/5~100/0、更に一層好ましくは100/0である。
【0045】
(エマルション型粘着付与剤の調製)
エマルション型粘着付与剤は、粘着付与樹脂を乳化させることにより調製される。
ここで、複数の粘着付与樹脂を用いてエマルション型粘着付与剤を調製する場合、複数の粘着付与樹脂のそれぞれを別々に乳化させる(以下、「単独乳化」ともいう)ようにしてもよいし、複数の粘着付与樹脂を溶融混合又は溶解混合して得られる混合樹脂を乳化させる(以下、「混合乳化」ともいう)ようにしてもよい。
【0046】
なお、「溶融混合」とは、複数の粘着付与樹脂を加熱溶融しながら混合することを意味する。
また、「溶解混合」とは、複数の粘着付与樹脂を溶剤に溶解させて混合溶液として混合することを意味する。
このような溶融混合または溶解混合に、従来公知のいかなる方法を適用してもよい。
【0047】
粘着付与樹脂を乳化させる乳化剤としては、従来公知の乳化剤を用いることが可能である。例えば、アニオン系、ノニオン系、及びカチオン系の乳化剤並びに合成高分子乳化剤の1種以上を用いることが可能である。但し、アニオン系及びノニオン系の乳化剤の少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0048】
乳化剤の使用量は、粘着剤層の耐水性を向上させる観点から、粘着付与樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0049】
なお、粘着付与樹脂の乳化には、従来公知の乳化法を適用することが可能である。例えば、溶剤型乳化法、無溶剤型乳化法、又は転相乳化法等が適用される。
【0050】
「溶剤型乳化法」とは、粘着付与樹脂を有機溶剤に溶解させる第1の工程、乳化剤を水に混合した乳化水を第1の工程で得られた溶液に予備混合することにより粗粒子の水性エマルションを生成する第2の工程、粗粒子の水性エマルションを微細乳化させる第3の工程、及び微細乳化した水性エマルションから常圧または減圧下で第1の工程で溶媒として用いた有機溶剤を除去する第4の工程により乳化を実行する方法である。
【0051】
なお、第1の工程における有機溶剤としては、トルエン及びキシレン等の芳香族系溶剤、メチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、又はメチレンクロライド等の塩素系炭化水素溶剤等が挙げられる。
【0052】
また、第3の工程における微細乳化は、ミキサー、コロイドミル、高圧乳化機、高圧吐出型乳化機、高剪断型乳化分散機等を用いて実行される。なお、粘度を適切な範囲に調整すると共にエマルションの貯蔵安定性及び機械安定性を良好なものとする観点から、微細乳化により粘着付与樹脂の水性エマルションの平均粒子径は0.10~0.50μmに調整されることが好ましい。
【0053】
「無溶剤型乳化法」とは、粘着付与樹脂を常圧又は加圧下において溶融させる第1の工程、乳化剤を水に混合した乳化水を第1 の工程で溶融させた粘着付与樹脂に予備混合することにより粗粒子の水性エマルションを生成する第2の工程、及び粗粒子の水性エマルション
を微細乳化させる第3の工程により乳化を実行する方法である。
【0054】
「転相乳化法」は、「溶剤型」と「無溶剤型」とに分類される。
「溶剤型」の転相乳化法は、粘着付与樹脂を有機溶剤に溶解させる第1の工程、第1の工程で得られた溶液を攪拌しながら、乳化剤を水に混合した乳化水を徐々に加えて油中水型エマルションを生成する第2の工程、油中水型エマルションを水中油型エマルションに相反転させる第3の工程、及び水中油型エマルションから常圧または減圧下で第1の工程で溶媒として用いた有機溶剤を除去する第4の工程により乳化を実行する方法である。
「無溶剤型」の転相乳化法は、粘着付与樹脂を常圧又は加圧下において溶融させる第1の工程、溶融させた混合樹脂を攪拌しながら、乳化剤を水に混合した乳化水を徐々に加えて油中水型エマルションを生成する第2の工程、および油中水型エマルションを水中油型エマルションに相反転させる第3の工程により乳化を実行する方法である。
【0055】
ここで、エマルション型粘着付与剤は、市販品を用いてもよい。具体例を挙げると、粘着付与樹脂がロジン樹脂であるエマルション型粘着付与剤としては、荒川化学工業株式会社製のスーパーエステルE-720、スーパーエステルE-730-55、スーパーエステルE-788、スーパーエステルE-900-NT、スーパーエステルE-910NT、スーパーエステルE-865、スーパーエステルE-865-NT、スーパーエステルNS-100H、及びスーパーエステルNS-121、並びに、ハリマ化成グループ株式会社製のハリエスターSK-370N及びハリエスターSK-218NS等が挙げられる。また、粘着付与樹脂がテルペン樹脂であるエマルション型粘着付与剤としては、荒川化学工業株式会社製のタマノルE-100、タマノルE-300-NT、及びタマノルE-200-NT等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせ用いてもよい。
【0056】
<エマルション型粘着剤に対するエマルション型粘着付与剤の配合比率>
本発明の一態様において、ラベル用粘着シートの粘着剤層に用いられるエマルション型粘着剤組成物は、エマルション型粘着剤100質量部(固形分)に対して、エマルション型粘着付与剤(固形分)を3.0質量部以上33.0質量部未満添加することにより調製することが好ましい。
エマルション型粘着剤100質量部(固形分)に対して、エマルション型粘着付与剤(固形分)が3.0質量部未満であると、エマルション型粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、ポリオレフィンに対する粘着力が十分に確保されず、曲面貼付性にも劣る。
また、エマルション型粘着剤100質量部(固形分)に対して、エマルション型粘着付与剤(固形分)が33.0質量部以上であると、エマルション型粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、曲面貼付性に劣る。
エマルション型粘着剤100質量部(固形分)に対して、エマルション型粘着付与剤(固形分)が3.0質量部以上33.0質量部未満であると、粘着剤層のバイオマス度が2.9%以上24.8%未満に調整され、ポリオレフィンに対しても十分な粘着力を発揮することができ、曲面貼付性に優れると共にポリオレフィンに対するタックも十分に確保されており、しかも、粘着剤層のバイオマス度も高められた、ラベル用の粘着シートとすることができる。
ここで、本発明の一態様では、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、エマルション型粘着剤100質量部(固形分)に対して、エマルション型粘着付与剤(固形分)が、好ましくは3.0質量部以上25.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以上23.0質量部以下である。
また、本発明の一態様では、ポリオレフィンに対するタックをより向上させやすくする観点から、エマルション型粘着剤100質量部(固形分)に対して、エマルション型粘着付与剤(固形分)が、好ましくは3.0質量部以上17.6質量部以下、より好ましくは3.0質量部以上13.0質量部以下である。
【0057】
<基材>
次に、本発明のラベル用粘着シートが備える基材について説明する。
本発明のラベル用粘着シートが備える基材としては、紙類、合成紙、及び合成樹脂フィルム等が挙げられる。
なお、基材は、単層であってもよく、2以上を積層した複層であってもよい。
【0058】
基材として用いられる紙類としては、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、ホイル紙、感熱紙、熱転写紙等が挙げられる。
【0059】
基材として用いられる合成紙としては、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル等の樹脂から構成された合成紙が挙げられる。
ここで、合成紙としては、市販品を用いてもよく、例えば、東洋紡株式会社製の「クリスパー(登録商標)」、株式会社ユポ・コーポレーション製の「ユポ(登録商標)」等が挙げられる。
【0060】
基材として用いられる合成樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体が好ましい。
ここで、基材として合成樹脂フィルムを用いる場合、粘着剤層との密着性を向上させる観点から、基材を構成する合成樹脂フィルムの表面に対して、コロナ処理法等による表面処理、又はプライマー層を設けてもよい。
また、合成樹脂フィルムのいずれか一方の面には、アルミ蒸着、錫蒸着等の金属調光沢層を設けてもよい。
【0061】
なお、合成樹脂フィルムには、さらに紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、充填剤、及び着色剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0062】
基材の厚さは、用途に応じて適宜設定されるが、好ましくは5~1000μm、より好ましくは10~700μm、更に好ましくは20~500μm、より更に好ましくは30~300μmである。
【0063】
なお、本発明の一態様のラベル用粘着シートにおいて、印刷の際に、インク等の密着を良好とする観点から、基材の粘着剤層とは反対側の表面上に、さらに易接着層等を有してもよい。また、本発明の一態様のラベル用粘着シートへの印刷方式は特に限定されず、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、デジタル印刷、及びレーザー印刷等が挙げられる。
【0064】
<ラベル用粘着シートの各種物性>
(ステンレス鋼に対する常温粘着力)
本発明の一態様の粘着シートは、後述する実施例に記載の方法で測定したステンレス鋼(SUS304鋼板、360番研磨)に対する常温粘着力が、好ましくは5.0N/25mm以上、より好ましくは6.0N/25mm以上、更に好ましくは6.5N/25mm以上である。また、通常15N/25mm以下である。
【0065】
(ポリオレフィンに対する常温粘着力)
本発明の一態様の粘着シートは、後述する実施例に記載の方法で測定したポリオレフィン(ポリエチレン板)に対する常温粘着力が、好ましくは3.0N/25mm以上、より好ましくは4.0N/25mm以上、更に好ましくは4.5N/25mm以上である。また、通常10N/25mm以下である。
【0066】
(ループタック試験におけるタック測定値)
本発明の一態様の粘着シートは、後述する実施例に記載の方法で測定したポリオレフィン(ポリエチレン板)に対するループタック試験におけるタック測定値が、好ましくは1.0N/25mm以上、より好ましくは2.0N/25mm以上、更に好ましくは3.0N/25mm以上、より更に好ましくは4.0N/25mm以上、更になお好ましくは4.7N/25mm以上である。また、通常10N/25mm以下である。
【0067】
(曲面貼付性)
本発明の一態様の粘着シートは、後述する実施例に記載の方法で測定した曲面貼付性(ポリエチレン製丸棒から剥がれた粘着シートの端からの長さ)が、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下、更に好ましくは0.5mm以下である。
【0068】
<ラベル用粘着シートの製造方法>
本発明のラベル用粘着シートの製造方法は、特に限定されないが、例えば、基材に前述のエマルション型粘着剤組成物が塗工されることにより、粘着剤層が形成される。エマルション型粘着剤組成物を基材シートに塗工する方法には、例えばロールコーティング法、ナイフコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、カーテンコーティング法等の従来公知の方法が適用可能である。
粘着剤層の厚さは、通常5~100μm、好ましくは10~60μmの範囲である。
【0069】
本発明のラベル用粘着シートの製造方法の一態様においては、このようにして形成された粘着剤層の上に、剥離ライナーを設けることが好ましい。剥離ライナーとしては、例えばグラシン紙のような高密度原紙、クレーコート紙、クラフト紙、上質紙などの紙にポリエチレン樹脂などをラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィンなどのプラスチックフィルムに、フッ素樹脂やシリコーンなどの剥離剤を乾燥質量で0.1~3g/m程度になるように塗布し、熱硬化や紫外線硬化などによって剥離層を設けたものなどが挙げられる。剥離ライナーの厚さについては特に制限はないが、通常25~200μmの範囲である。
また、本発明のラベル用粘着シートの製造方法の他の態様として、例えば、剥離ライナーに前述のエマルション型粘着剤組成物を塗工して粘着剤層を形成し、当該粘着剤層と基材とを貼り合わせて、基材と、粘着剤層と、剥離ライナーとをこの順で積層した積層構造を有するラベル用粘着シートを製造するようにしてもよい。
【0070】
次に、図3に示すラベル連続体の製造方法の一態様を説明する。
まず、長尺帯状の剥離ライナーの表面に粘着剤層と基材を積層して、ラベル連続体のロール状の原反を準備する。各層の積層方法は、前述のとおりである。
ラベル面に印刷が必要なときは、このロール状の原反を印刷機にセットし、ラベルを繰り出しながら、基材側に印刷を行う。
次に、ロータリーダイカットユニットなどの型抜き具を用いて、基材と粘着剤層を打ち抜き、ラベルとならない不要部の基材と粘着剤層は除去する。
このようにして、長尺帯状の剥離ライナーの表面に、流れ方向に所定の間隔をおいて複数枚のラベルが仮着されたラベル連続体が製造される。この際、上述した態様のように、軟化点が50℃以下の粘着付与樹脂の含有量が少ない場合には、打ち抜き加工時におけるラベルの側面からの糊の浸み出し及び抜き刃の汚染を抑制することができる。
【0071】
<ラベル用粘着シートの用途>
本発明のラベル用粘着シートは、ポリオレフィンに対しても十分な粘着力を発揮することができ、曲面貼付性に優れると共にポリオレフィンに対するタックも十分に確保されており、しかも、粘着剤層のバイオマス度も高められている。したがって、被着体が曲面を有するポリオレフィン製の容器や包装等であっても、しっかりと貼付することができる。また、ラベリングマシンによりポリオレフィン製の被着体にラベルを瞬時に貼付することが可能となる。これにより、被着体にラベルを貼付する工程の速度を向上させて、生産性を向上させることができる。しかも、粘着剤層に植物由来の成分を配合することによって、粘着剤層のバイオマス度が高められ、化石資源系材料の使用量が相対的に低減されている。そのため、粘着剤層中において、焼却処分時等に大気中の二酸化炭素の増加を実質的にもたらさないカーボンニュートラルな材料の割合を増やし、化石資源系材料のように比較的短期間のうちには再生が困難な材料の割合を低減することができる。したがって、焼却処分時等に温室効果ガスである二酸化炭素の排出量を低減できるという利点も有する。
また、エマルション型粘着剤組成物から形成した粘着剤層を有していることから、安全面、衛生面、及び環境面においても優れる。
したがって、本発明のラベル用粘着シートは、食品用の容器(例えば卵ケース等)及び包装、文房具、化粧品容器、台所用品用の容器、及びバス用品用の容器等のような、曲面を有する被着体の表示ラベルやアイキャッチラベル(アテンションシール、ポップラベル、及びポップシート等)として好適に用いることができる。また、本発明のラベル用粘着シートは、OA機器用ラベル、値札シール、運送ダンボール用ラベル、電子機器用のラベル、及び物流管理ラベル等としても好適に用いることができる。
【実施例
【0072】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
[物性値の測定方法]
本実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0074】
(1)各層の厚さの測定
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
【0075】
[実施例1~7及び比較例1~2]
実施例1~7及び比較例1~2の粘着シートを、以下に説明する手順で作製した。
なお、実施例1~7及び比較例2で用いたエマルション型粘着付与剤を以下に示す。
(エマルション型粘着付与剤)
・エマルション型粘着付与剤1:製品名「ハリエスター」、品番「SK-218NS」、ハリマ化成グループ株式会社製、粘着付与樹脂:ロジン樹脂、粘着付与樹脂の軟化点:100℃
・エマルション型粘着付与剤2:製品名「スーパーエステル」、品番「E-730-55」、荒川化学工業株式会社製、粘着付与樹脂:ロジン樹脂、粘着付与樹脂の軟化点:125℃
・エマルション型粘着付与剤3:製品名「スーパーエステル」、品番「E-788」、荒川化学工業株式会社製、粘着付与樹脂:ロジン樹脂、粘着付与樹脂の軟化点:160℃
【0076】
<実施例1>
(1)エマルション型粘着剤の製造
エマルション型粘着剤の製造には、攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下漏斗を備えた反応釜を用いた。反応釜において、イオン交換水55質量部を攪拌しながら80℃まで昇温した。そして、イオン交換水の温度が80℃に到達した段階で、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1質量部を添加し、過硫酸アンモニウム水溶液を調製した。
また、過硫酸アンモニウム水溶液とは別に、アクリル酸2-エチルヘキシル60質量部、アクリル酸ブチル38質量部、及びアクリル酸2質量部と、アニオン系の反応性乳化剤(製品名「ニューフロンティアA-229E」、第一工業製薬株式会社製)1質量部と、中和のための25%アンモニウム水適当量と、過硫酸アンモニウム0.4質量部とを、イオン交換水43質量部に加えてミキサーで攪拌し、プレエマルションを得た。
次いで、反応釜内の温度を80℃に保ちながら、過硫酸アンモニウム水溶液にプレエマルションを2時間かけて滴下した。そして、プレエマルションの滴下が完了してから1時間経過時及び2時間経過時に過硫酸をそれぞれ1質量部づつ添加して、重合反応を完結させることにより、アクリル系エマルション粘着剤を製造した。
【0077】
(2)エマルション型粘着剤組成物の調製
上記(1)で製造したアクリル系エマルション型粘着剤と、エマルション型粘着付与剤1、2、及び3とを、表1に示す配合量で混合し、エマルション型粘着剤組成物を調製した。
なお、表1に示すアクリル系エマルション型粘着剤とエマルション型粘着付与剤の配合量は、固形分換算での配合量を意味する。
【0078】
(3)粘着シートの作製
上記(2)で得られたエマルション型粘着剤組成物を、厚さ70μmのグラシン剥離紙の上に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmとなるように塗布した。
塗布後、90℃で1分間乾燥させた後、ポリプロピレン合成紙(製品名「SGP80」、株式会社ユポ・コーポレーション製、厚さ:80μm)に貼り合わせ、粘着シートを作製した。
【0079】
<実施例2>
エマルション型粘着付与剤1の配合量を20.0質量部に増やしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0080】
<実施例3>
エマルション型粘着付与剤1を配合せず、エマルション型粘着付与剤2の配合量を10.5質量部に増やしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0081】
<実施例4>
エマルション型粘着付与剤1を配合せず、エマルション型粘着付与剤2の配合量を20.5質量部に増やしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0082】
<実施例5>
エマルション型粘着付与剤1を配合せず、エマルション型粘着付与剤3の配合量を12.5質量部に増やしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0083】
<実施例6>
エマルション型粘着付与剤1を配合せず、エマルション型粘着付与剤3の配合量を22.5質量部に増やしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0084】
<実施例7>
エマルション型粘着付与剤1を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0085】
<比較例1>
エマルション型粘着付与剤1、2、及び3をいずれも配合しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0086】
<比較例2>
エマルション型粘着付与剤1の配合量を30質量部に増やしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0087】
[評価]
実施例1~7及び比較例1~2の粘着シートについて、常温粘着力、ループタック、及び曲面貼付性を評価した。
【0088】
(1)常温粘着力
粘着シートを25mm×300mmに切断し、試験片とした。
当該試験片から、剥離ライナーを剥離し、被着体に、23℃、50%RH環境下で貼付した。圧着は、質量2000gのローラを、1往復することにより行った。被着体は、ステンレス鋼板(SUS304鋼板、360番研磨)又はポリエチレン板とした。
そして、粘着シートを被着体に貼付した直後に、粘着シートを被着体から、23℃、50%RH環境下で、速度300mm/minで、180°方向に剥離させたときの剥離強度を測定し、これを常温粘着力とした。
試験条件は、JIS Z0237:2009に準拠した。
【0089】
(2)ループタック試験
粘着シートを、25mm×300mm(両端におけるつかみ部25mmずつを含む)に切断し、試験片とした。次いで、試験片の剥離ライナーを剥がし、測定面(粘着剤層表面)を外側にし、両端の基材面同士が接するようにしてループ形状とし、引張試験機(株式会社オリエンテック製、万能引張試験機)の上部つかみに両端のつかみ部を挟んで、ループ形状の試験片を吊り下げた。
次いで、被着体であるポリエチレン板を引張試験機の下部つかみに水平に設置した後、上部つかみからポリエチレン板までの距離が60mmになるまで上部つかみを降下させて、15秒経過後に上部つかみを300mm/minで引き上げ、その時の引き剥がし強度をピーク値をループタック値とした。
なお、ループタック試験は、23℃、50%RH環境下で実施した。
【0090】
(3)曲面貼付性
実施例1~7及び比較例1~2の粘着シートの基材としての合成紙の表面(粘着剤層とは反対側の表面)に、ポリプロピレン製のラミネート用粘着フィルム(ポリプロピレン層の厚さ:20μm)を貼付し、曲面貼付時により浮きが生じやすい条件とした試験用の粘着シートを作製した。
そして、当該試験用の粘着シートを25mm幅とし、径10mmのポリエチレン製丸棒に、円周の7/10が蔽われるように切断し(試験用の粘着シートの長さ:10mm×π×7/10=22mm)、23℃、50%RH環境下にて貼付した後、60℃、50%RH環境下にて3日間放置した後の浮き(ポリエチレン製丸棒から剥がれた粘着シートの端からの長さ:片側)を測定した。
【0091】
結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示す結果から、以下のことがわかる。
実施例1~7の粘着シートは、ステンレス鋼等の金属に対する常温粘着力だけでなく、ポリエチレン板等のポリオレフィンに対しても優れた常温粘着力を有することがわかる。しかも、曲面貼付性を優れたものとできると共に、ポリエチレン板を用いた際のループタック値も十分に確保できており、ポリオレフィンに対するタックも十分に確保できていることがわかる。しかも、エマルション型粘着付与剤の粘着付与樹脂は植物由来の樹脂であり、粘着剤層のバイオマス度を高めることができる。
これらに対し、比較例1のようにエマルション型粘着付与剤を用いない場合には、ステンレス鋼に対する常温粘着力及びポリエチレンに対する常温粘着力に劣り、曲面貼付性も大きく劣ることがわかる。
また、比較例2のように、粘着剤層のバイオマス度が24.8%以上である場合には、曲面貼付性が大きく劣ることがわかる。
【符号の説明】
【0094】
1 ラベル用粘着シート
2 基材
3 粘着剤層
4 剥離ライナー
図1
図2
図3