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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】自律走行作業装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230927BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20230927BHJP
   A47L 7/00 20060101ALI20230927BHJP
   A47L 11/24 20060101ALI20230927BHJP
   A47L 11/30 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
G05D1/02 H
A47L9/28 E
A47L7/00 A
A47L11/24
A47L11/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019100317
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020194415
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】長田 翔一
(72)【発明者】
【氏名】下郡 祐美子
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112917(JP,A)
【文献】特開2017-204061(JP,A)
【文献】特開平9-94006(JP,A)
【文献】特開2018-85065(JP,A)
【文献】特開2014-219723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
A47L 9/28
A47L 7/00
A47L 11/24
A47L 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前に記憶した作業プランに基づいて自律的に走行し自動的に作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置であって、
装置本体と、
前記装置本体を作業エリア内で走行させる走行部と、
前記装置本体の前記作業エリア内の走行経路上で作業を行う作業部と、
該自律走行作業装置の学習走行作業を行うとき、前記走行部の走行データと前記作業部の作業データとを含む前記作業プランを作成するプラン作成部と、
前記プラン作成部が作成した前記作業プランを前記自動走行作業のために記憶する記憶部と、
前記装置本体と障害物との距離が所定の必要離間距離未満になる箇所の前記走行データに対応するデータとして、前記装置本体と前記障害物との前記必要離間距離を維持しながら前記装置本体が前記障害物を回避して走行する回避データを作成する回避データ作成部と、
を備え
前記作業プランに基づいて前記自動走行作業を行うとき、該作業プランに含まれない前記障害物である不定障害物と前記装置本体との距離が所定の回避距離に到達した場合、前記作業プランに拘らず、前記装置本体と前記不定障害物との前記必要離間距離を維持しながら、走行速度が最も遅い安全速度で前記装置本体が前記不定障害物を回避して走行する回避走行を自動的に行う回避制御部を備え、
前記回避データ作成部は、前記回避走行に従って元の前記作業プランを補正して前記回避データを作成し、このとき、元の前記作業プランの走行速度に従って前記学習走行作業時の速い走行速度を維持して前記回避データに設定し、前記回避走行で回避する前記不定障害物に関連付けて前記回避データを前記記憶部に記憶させ、
前記回避制御部は、前記不定障害物と前記装置本体との距離が所定の回避距離に到達したとき、前記不定障害物に関連付けられた前記回避データが前記記憶部に記憶されていた場合には、前記記憶部から該回避データを読み出し、該回避データに基づいて前記回避走行を行うことを特徴とする自律走行作業装置。
【請求項2】
前記プラン作成部は、前記学習走行作業が完了したとき、前記回避データを用いて前記作業プランの前記走行データを補正して前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項3】
前記回避制御部は、前記作業プランに基づいて前記自動走行作業を行うとき、前記学習走行作業において該作業プランを作成したときに検出されなかった障害物であって、該自動走行作業において検出された障害物を前記不定障害物とすることを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項4】
前記回避制御部は、前記不定障害物と前記装置本体との距離が所定の回避距離に到達したとき、前記不定障害物に関連付けられた前記回避データが前記記憶部に記憶されていない場合には、前記装置本体と前記不定障害物との距離を計測して前記必要離間距離を維持するように制御することで前記回避走行を行ことを特徴とする請求項に記載の自律走行作業装置。
【請求項5】
前記必要離間距離は、前記作業プランの前記走行データに基づく前記装置本体の走行速度が速い程、長く設定されることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項6】
前記学習走行作業を行うとき、前記装置本体と前記障害物との距離が前記必要離間距離未満になった場合、障害物接近通知を出力することを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事前に記憶した作業プランに基づいて自律的に走行し自動的に作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律走行作業装置は、手動操作により走行および作業(清掃)を行いながら自動走行作業(自動走行清掃)のために走行データおよび作業データ(清掃データ)を記憶する学習走行作業を行う学習走行モードと、記憶した走行データおよび作業データに従って走行および作業を制御する自動走行作業を行う自動走行モードとを切り替えて動作するように構成される。自律走行作業装置は、例えば、産業用(業務用)の清掃ロボット(自律走行清掃装置)として構成されて、ショッピングモール等の商業施設の床面の清掃作業を行うために用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1の自律型移動ユニット(自律走行作業装置)は、走行不可能な所定経路の一部分を求め、所定経路の第1の経路点を、一部分と第1の経路点との距離を考慮する、少なくとも1つの所定の距離判定部を使用して求め、所定経路の第2の経路点で終了し、且つ、少なくとも一時的に遮断された部分経路を含む第1の経路点で始まる拡張部分を求め、拡張部分をプログラミングし、拡張部分を所定経路内の第1の経路点に挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2004-538566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自律走行作業装置には、スーパーマーケット等の商業施設での清掃作業の運用を想定して、作業領域内でカートを押して通過する買い物客等の未知の障害物を効率よく迂回するように構成された自律走行清掃装置がある。一方、商業施設では、清掃作業を営業時間外に実施することもあり、その場合、作業領域内に存在する未知の障害物は、買い物客に限らず、店舗の前に置かれた鉢植えや看板、商品を納めたダンボールやイベント用の機材も想定される。これらの障害物は不定期に作業領域内に存在し、買い物客のように短時間で通り過ぎることはないが、数日後には存在しなくなっている場合がある。しかしながら、従来の自律走行作業装置は、作業領域内を通過する障害物や、不定期に配置される障害物の両方について効率よく回避走行することができない。
【0006】
例えば、上記した自律型移動ユニットによれば、作業領域内を通過する障害物に対して、移動点に移動して障害物の存在を確認する動作を行うが、不定期に配置される障害物を効率的に迂回することはできない。また、不定期に配置される障害物を検知する度に、障害物との距離を確認しながら移動する迂回動作を行うと、時間が掛かり、効率的に清掃作業を行うことができない。また、上記した自律型移動ユニットは、プログラミングにより走行経路を作成するので、何らかのミスによって障害物(壁を含む)との距離が安全距離未満となる走行経路が作成されることがある。このように作成した走行経路に基づいて自動走行作業を行うと、障害物が近すぎるためにエラーが発生して移動できなくなったり、障害物との接触を避けるため走行速度を減速したりするので、走行時間が長くなるため、走行時間を抑えた効率的な走行データ(作業プラン)を作成することができない。
【0007】
本発明は、上記したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、作業領域内の障害物を効率的に回避して自動走行作業を行うことができる自律走行作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の自律走行作業装置は、事前に記憶した作業プランに基づいて自律的に走行し自動的に作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置であって、装置本体と、前記装置本体を作業エリア内で走行させる走行部と、前記装置本体の前記作業エリア内の走行経路上で作業を行う作業部と、該自律走行作業装置の学習走行作業を行うとき、前記走行部の走行データと前記作業部の作業データとを含む前記作業プランを作成するプラン作成部と、前記プラン作成部が作成した前記作業プランを前記自動走行作業のために記憶する記憶部と、前記装置本体と障害物との距離が所定の必要離間距離未満になる箇所の前記走行データに対応するデータとして、前記装置本体と前記障害物との前記必要離間距離を維持しながら前記装置本体が前記障害物を回避して走行する回避データを作成する回避データ作成部と、を備え、前記作業プランに基づいて前記自動走行作業を行うとき、該作業プランに含まれない前記障害物である不定障害物と前記装置本体との距離が所定の回避距離に到達した場合、前記作業プランに拘らず、前記装置本体と前記不定障害物との前記必要離間距離を維持しながら、走行速度が最も遅い安全速度で前記装置本体が前記不定障害物を回避して走行する回避走行を自動的に行う回避制御部を備え、前記回避データ作成部は、前記回避走行に従って元の前記作業プランを補正して前記回避データを作成し、このとき、元の前記作業プランの走行速度に従って前記学習走行作業時の速い走行速度を維持して前記回避データに設定し、前記回避走行で回避する前記不定障害物に関連付けて前記回避データを前記記憶部に記憶させ、前記回避制御部は、前記不定障害物と前記装置本体との距離が所定の回避距離に到達したとき、前記不定障害物に関連付けられた前記回避データが前記記憶部に記憶されていた場合には、前記記憶部から該回避データを読み出し、該回避データに基づいて前記回避走行を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の自律走行作業装置によれば、装置本体と障害物とが必要離間距離を維持するように回避データを作成するので、学習モードや自動モードに拘らず、装置本体が障害物に衝突する危険を抑制し、装置本体が障害物に近接した場合に発生するエラーを抑制することができる。従って、自律走行作業装置は、障害物との接触を避けるための減速が抑制されるので、走行時間が長くなることがなく、効率的な走行データ(作業プラン)を作成することができる。そのため、作業領域内の障害物を効率的に回避して自動走行作業を行うことができる自律走行作業装置を提供することが可能となる。
また、本発明の第1の自律走行作業装置によれば、学習走行作業において作業プランを作成したときに検出されなかった障害物であって、自動走行作業で新たに不定障害物を検出した場合でも、不定障害物と必要離間距離を維持する回避走行を安全速度で行い、また、この回避走行時の回避データを元の作業プランの走行速度で作成する。そのため、作業プランを変更しないので、不定障害物が除外された場合には、元の作業プランを用いて自動走行作業を行うことができ、また、回避走行時の回避データを参照することが可能となる。
また、本発明の第1の自律走行作業装置によれば、自動走行作業において不定障害物の初回回避走行を行って回避データを作成すると、次回以降の自動走行作業において同じ不定障害物を検出した場合には、初回回避走行で作成した回避データを用いて反復回避走行を行うことにより、初回回避走行を再現することができる。なお、不定障害物が一旦除外された後、再度同じ位置に配置された場合には、同じ回避データを用いることが可能である。従って、不定障害物を配置したり除外したりしても、作業プランを再作成する必要がなく、作業時間を抑えて効率的に自動走行作業を行うことができる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第2の自律走行作業装置は、前記プラン作成部は、前記学習走行作業が完了したとき、前記回避データを用いて前記作業プランの前記走行データを補正して前記記憶部に記憶させるとよい。
【0011】
本発明の第2の自律走行作業装置によれば、学習走行作業時に壁等の障害物に近づくような操作ミスがあった場合でも、作業プランを作成するときには、障害物と必要離間距離を維持するように走行データが補正される。そのため、操作ミスがあった場合でも、作業プランの再作成をする必要がなく、作業時間を抑えた効率的な作業プランに補正して、自動走行作業に利用することが可能となる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第3の自律走行作業装置は、前記回避制御部は、前記作業プランに基づいて前記自動走行作業を行うとき、前記学習走行作業において該作業プランを作成したときに検出されなかった障害物であって、該自動走行作業において検出された障害物を前記不定障害物とする
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第4の自律走行作業装置は、前記回避制御部は、前記不定障害物と前記装置本体との距離が所定の回避距離に到達したとき、前記不定障害物に関連付けられた前記回避データが前記記憶部に記憶されていない場合には、前記装置本体と前記不定障害物との距離を計測して前記必要離間距離を維持するように制御することで前記回避走行を行とよい。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第5の自律走行作業装置は、前記必要離間距離は、前記作業プランの前記走行データに基づく前記装置本体の走行速度が速い程、長く設定されるとよい。
【0017】
本発明の第5の自律走行作業装置によれば、走行速度に応じて障害物に接触する危険性をより低下することができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第6の自律走行作業装置は、前記学習走行作業を行うとき、前記装置本体と前記障害物との距離が前記必要離間距離未満になった場合、障害物接近通知を出力するとよい。
【0019】
本発明の第6の自律走行作業装置によれば、学習走行作業時に操作者は障害物からの必要離間距離を正確に把握することができる。また、走行速度の変化に伴って必要離間距離が変化する場合でも、必要離間距離未満になる可能性を低下することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、自律走行作業装置は、作業領域内の障害物を効率的に回避して自動走行作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の構成を示す概要図である。
図2】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃で作成された清掃プランの例を示す表である。
図4】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部およびモード選択画面の例を示す正面図である。
図5】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃で作成された清掃プランおよび自動走行清掃で用いられる回避データの例を示す表である。
図6】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃時に取得した走行データの補正の例を示す概要図である。
図7】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、自動走行清掃時の不定障害物の回避動作の例を示す概要図である。
図8】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃時に作成される走行データおよび自動走行清掃時に作成した回避データの示す走行経路の例を示す概要図である。
図9】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃で取得した走行データの補正を伴う動作の例を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、自動走行清掃時の不定障害物の回避走行を伴う動作の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な具体例であって、種々の好ましい技術を開示しているが、本発明の技術範囲はこれらの態様に限定されるものではない。
【0023】
本発明の実施形態による自律走行作業装置1について説明する。図1に示すように、自律走行作業装置1は、各部を収容するための装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3と、走行部3の手動操作を受け付ける走行操作部4とを備える。自律走行作業装置1は、所定の作業を実行する作業機構(作業部)を装置本体2に搭載することができ、例えば、装置本体2の下方の床面FLの清掃作業を実行する清掃部5を作業部として備えて、自律走行清掃装置として機能する。自律走行作業装置1は、例えば、ショッピングモール等の商業施設、オフィス、ホテル、病院、学校、工場等の全部または一部の領域を清掃エリア(作業エリア)として、清掃エリアの床面FLを清掃の対象とする。
【0024】
また、自律走行作業装置1は、装置本体2と周囲の壁や人や置物等の障害物との位置関係を計測する計測部6と、所定距離内の障害物を検知する障害物検知部7とを備える。また、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各種機能の操作や表示のためのタッチパネル18(図4参照)からなる操作表示部8と、自律走行作業装置1の各部に電力を供給し、バッテリー(図示せず)の残量監視や充電を制御するための電源部9とを備える。更に、自律走行作業装置1は、図2にも示すように、自律走行作業装置1の各部および各種機能(走行部3による走行、清掃部5による清掃作業、計測部6による計測等)を統括制御する制御部10と、走行部3の走行データや清掃部5の清掃データ(作業データ)からなる清掃プラン(作業プラン)を記憶する記憶部11とを備える。
【0025】
次に、自律走行作業装置1の動作の概要を説明する。
【0026】
自律走行作業装置1は、手動操作による走行および自動操作による自律的な走行が可能な車両であって、学習走行モード、自動走行モードおよび手動走行モードの何れかの動作モードに切り替えられて動作する。
【0027】
自律走行作業装置1は、学習走行モードおよび手動走行モードでは、学習走行清掃(学習走行作業)および手動走行清掃(手動走行作業)をそれぞれ行って、操作者による走行操作部4や操作表示部8の手動操作に応じて手動走行や手動清掃(手動作業)を行う。学習走行清掃では、更に、学習走行に伴って清掃エリアの環境地図を作成して記憶すると共に、学習走行時の走行経路や走行状態を示す走行データと、学習清掃時の清掃状態を示す清掃データとを取得して走行データおよび清掃データを含む清掃プランを記憶する。清掃プランには、学習走行時の環境地図が関連付けられて記憶される。
【0028】
自律走行作業装置1は、自動走行モードでは自動走行清掃(自動走行作業)を行って、学習走行清掃で記憶された清掃プランのうち、操作者に選択された清掃プランを再現するように、清掃プランおよび対応する環境地図に基づいて、制御部10による自動操作に応じて自動走行および自動清掃(自動作業)を行う。
【0029】
清掃プラン(作業プラン)は、図3(1)および(2)や図5(1)に示すように、走行データおよび清掃データを所定のステップ毎に関連付けて構成される。清掃プランのステップは、学習走行清掃において、所定の時間間隔毎(例えば、25m/s毎)に設定されてもよく、あるいは、自律走行作業装置1の所定の移動距離(例えば、0.5m毎)に設定されてもよい。
【0030】
走行データは、例えば、走行部3の走行経路上の自己位置データ(環境地図上の自己位置を示すX座標およびY座標、開始位置の向きに対する角度)、操舵フラグ(直進、左折、右折)、進行方向への走行速度[m/s]および旋回速度[deg/s]を含み、走行データに基づいて走行経路を図化することができる。走行速度や旋回速度は、速度の数値をそのまま記憶してよく、あるいは、複数段階の速度の何れかに切り替えられて設定され、走行速度の段階的な速度を数字(例えば、0~7の8段階)に換算して記憶してもよい。
【0031】
清掃データは、例えば、清掃部5の清掃部材12のパッド圧、洗浄液供給部13の供給水量(散水量)および吸引部14の吸引量(吸引強さ)を含む。パッド圧は、清掃部材12を床面FLに押し付ける力であり、供給水量は、洗浄液供給部13によって床面FLに供給(散水)される洗浄液(作業液)の量であり、吸引量は、吸引部14によって床面FLから洗浄後の汚水を吸引する際の吸引ブロア(図示せず)の稼働強度である。なお、パッド圧、供給水量および吸引量は、複数段階の強度の何れかに切り替えられて設定され、パッド圧、供給水量および吸引量の段階的な強度を数字(例えば、0~2の3段階や、0~4の5段階等)に換算して記憶してよい。なお、清掃データは、清掃部材12の作動/停止、回転速度を含んでもよい。
【0032】
また、清掃プランには、ステップ毎に、自律走行作業装置1から最も近い障害物(最短障害物)の方向および距離を示す最短障害物情報が含まれる。最短障害物情報は、清掃プランの走行データや環境地図に基づいて、制御部10(清掃プラン作成部22)によって作成される。
【0033】
更に、清掃プランには、ステップ毎に、未知の障害物(不定障害物)を回避するか否かを示す障害物回避フラグ(図示せず)が含まれる。障害物回避フラグは、初期値は0に設定されていて、制御部10(再現制御部23)によって変更される。不定障害物は、学習走行清掃において清掃プランを作成したときに検出されなかった障害物であって、自動走行清掃において検出された障害物であり、不定障害物を回避するステップでは、障害物回避フラグは1に設定され、それ以外のステップでは0に設定される。即ち、障害物回避フラグが1に設定されているステップが、回避走行区間となる。なお、清掃プランには、上記した以外の情報、例えば、学習走行清掃開始からの経過時間が、ステップ毎に含まれてもよい。
【0034】
次に、自律走行作業装置1の各部を説明する。
【0035】
走行部3は、装置本体2の下部に設けられていて、駆動輪として1つの前輪3aを備え、補助輪として一対の後輪3bを備える。前輪3aは、進行方向前側で装置幅方向中央に設けられ、走行駆動用モータ(図示せず)と前輪回転用エンコーダ(図示せず)とを備える。走行部3は、走行駆動用モータを駆動して前輪3aを回転させることで装置本体2を前進させ、前輪3aの回転を停止させることで装置本体2を停止させる。走行駆動用モータの駆動を制御することで、自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度が調整(加減速)される。なお、走行部3は、走行駆動用モータが前輪3aを逆転させることで装置本体2を後退させてもよい。
【0036】
また、前輪3aは、操舵軸(図示せず)と操舵用モータ(図示せず)と操舵回転用エンコーダ(図示せず)とを備える。走行部3は、操舵用モータを駆動して操舵軸を回転させることで前輪3aの向きを変えて装置本体2を操舵し、前輪3aの向きを変えながら装置本体2を前進させることで、自律走行作業装置1(走行部3)を左折(左旋回)や右折(右旋回)させる。操舵用モータの駆動を制御することで、自律走行作業装置1(走行部3)の操舵角が調整される。
【0037】
一対の後輪3bは、進行方向後側で装置幅方向(左右方向)に間隔を空けて設けられ、それぞれ走行距離を回転量から把握するためのエンコーダ(図示せず)を備える。一対の後輪3bは、前輪3aの駆動による装置本体2の移動に応じて従動回転する。自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度の調整(加減速)と操舵は、後輪3bに備えられたエンコーダを用いて後輪3bの各々の回転量をフィードバックしながら走行駆動用モータと操舵用モータを制御することで行われてもよい。
【0038】
なお、本実施形態では、駆動輪の前輪3aと補助輪の後輪3bとを備える例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、例えば、他の実施形態では、補助輪の前輪3aと一対の駆動輪の後輪3bとを備えてもよい。
【0039】
走行部3は、動作モードが学習走行モードまたは手動走行モードに設定されている場合、操作者による走行操作部4の手動操作に応じて動作する。また、走行部3は、動作モードが自動走行モードに設定されている場合、操作者に選択された清掃プランの走行データに応じて、制御部10(再現制御部23)に制御されて自動的に動作する。
【0040】
走行操作部4は、装置本体2の後上側に設けられ、操作者が手動操作可能なハンドル(図示せず)およびスロットル(図示せず)を備える。なお、走行操作部4は、動作モードが学習走行モードまたは手動走行モードに設定されている間は、操作者による手動操作を受け付けるが、自動走行モード設定されている間は、緊急停止ボタン17の操作以外の操作者による手動操作を受け付けないように構成される。
【0041】
走行操作部4は、操作者によるハンドルの操舵量を電気信号に変換し、電気信号を操舵用モータに出力して駆動させることで、前輪3aの操舵軸を回転させて装置本体2を左折(左旋回)または右折(右旋回)させる。走行操作部4のハンドルの操舵量に応じて自律走行作業装置1(走行部3)の操舵角が調整される。具体的には、ハンドル操作時の操舵回転用エンコーダのパルス数をカウントすることで、ハンドルの操舵量をパルス数に置き換え、このパルス数に合わせて操舵用モータを制御することで自律走行作業装置1の操舵角を調整することができる。操舵角(deg)は、走行部3の進行方向を基準(0度)にして、進行方向に対して左旋回をプラスの角度で示し、進行方向に対して右旋回をマイナスの角度で示す。なお、操舵角は、可変抵抗器を用いて電気信号に変換して検出してもよい。
【0042】
また、走行操作部4は、操作者によるスロットルの回動量(開度)を電気信号に変換し、電気信号を走行駆動用モータに出力して駆動させることで、前輪3aを回転させて装置本体2を進行方向に前進させる。走行操作部4のスロットルの回動量に応じて自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度が調整される。
【0043】
清掃部5は、装置本体2の下部に設けられ、清掃設定に従って装置本体2の下方の床面FLを清掃するように構成される。清掃設定は、動作モードが学習走行モードまたは手動走行モードに設定されている場合、操作者によって操作表示部8を介して手動で設定される。また、清掃設定は、動作モードが自動走行モードに設定されている場合、操作者に選択された清掃プランの清掃データに基づいて、制御部10(再現制御部23)に制御されて自動で設定される。
【0044】
清掃部5は、例えば、洗浄液を用いて床面FLを清掃する湿式の清掃機構で構成され、床面FLに接触して床面FLを清掃する清掃部材12と、洗浄液を床面FLに供給する洗浄液供給部13と、床面FLを清掃した使用後の洗浄液、即ち、汚水を吸引する吸引部14とを備える。また、清掃部5は、清掃部材12を床面FL上で回転させる清掃部材用モータ(図示せず)と、清掃部材12を床面FLに対して上下方向に移動させる清掃部材用アクチュエータ(図示せず)とを備える。更に、清掃部5は、吸引部14で吸引された汚水を回収する汚水回収部(図示せず)を備える。
【0045】
清掃部材12は、装置本体2の内部から下方に突出した清掃シャフト(図示せず)に対して着脱可能に取り付けられる。清掃部材用モータが清掃シャフトを回転させると、清掃部材12は清掃シャフトを回転軸として回転し、清掃部材用アクチュエータが清掃シャフトを上下方向に移動させると、清掃部材12も上下方向に移動する。
【0046】
清掃部材12は、一対の洗浄パッドや一対の洗浄ブラシ等で構成され、一対の洗浄パッドまたは一対の洗浄ブラシは、進行方向略中央で装置幅方向(左右方向)に並んで取り付けられる。左側の洗浄パッドまたは洗浄ブラシが上方視時計回りに回転し、右側の洗浄パッドまたは洗浄ブラシが上方視反時計回りに回転して、幅方向中央側で前方から後方へ向かうように回転する。これにより、一対の洗浄パッドまたは一対の洗浄ブラシの前方の汚水や塵埃を幅方向中央側に収集しつつ後方へ排出する。
【0047】
洗浄液供給部13は、洗浄液を収容する洗浄液タンクや、この洗浄液タンクに接続された供給ポンプを備えていて、供給ポンプを用いて洗浄液タンクから床面FLに洗浄液を供給して散布する。洗浄液供給部13は、例えば、供給ポンプに電圧を印加して供給ポンプのインペラ(羽根車)を回転させることで洗浄液を供給する。この電圧を変更してインペラの回転数を調整することで、洗浄液の供給水量が調整される。例えば、電圧と洗浄液の供給水量との相関データを予め記憶部11に記憶しておくことで、所定の供給水量を要求された場合に、この供給水量に対応する電圧を取得し、取得した電圧を供給水ポンプに印加することで、要求された供給水量に調整される。
【0048】
吸引部14は、吸引ブロアで構成される。汚水回収部は、スキージ15と、汚水ダクト(図示せず)と、汚水タンク(図示せず)とを備えていて、スキージ15は、清掃部材12より後方で床面FLに接地して設けられる。汚水回収部は、清掃部材12から後方に排出される汚水をスキージ15で受け止めて収集し、吸引部14は、汚水ダクトに接続されていて、スキージ15が収集した汚水を汚水ダクトへ吸引する。汚水回収部において、汚水ダクトへ吸引された汚水は、汚水ダクトに接続された汚水タンクへ回収される。
【0049】
このような清掃部5は、洗浄液供給部13が床面FLに洗浄液を散布しながら、清掃部材12の洗浄パッドまたは洗浄ブラシを清掃部材用モータが回転させると共に清掃部材用アクチュエータが床面FLに付勢して押し付けることで、床面FLを洗浄し、洗浄後の汚水を汚水回収部が回収する。
【0050】
計測部6は、装置本体2と周囲の壁や人や置物等の障害物との位置情報(例えば、装置本体2の進行方向に対する角度や距離)を計測するレーザーレンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)6a等を備える。計測部6は、装置本体2が走行している間、例えば、所定のタイミング毎(例えば、25m/s毎)に障害物との位置情報を計測する。
【0051】
障害物検知部7は、装置本体2から所定距離内の壁や人や置物等の障害物の有無を検知する超音波センサや装置本体2付近の床面FLの段差を検知する赤外線センサ等の障害物センサ7aを備える。障害物検知部7は、装置本体2が走行している間、常時稼働していてよい。
【0052】
操作表示部8は、装置本体2の後上側で走行操作部4の近傍に設けられ、図4に示すように、キースイッチ16と、緊急停止ボタン17と、タッチパネル18とを備え、操作表示部8の各部は、制御部10に接続されている。操作表示部8は、装置本体2に取り付けられる操作表示パネル等で構成されてよく、あるいは、装置本体2に対して着脱可能に装着されるタブレット端末等で構成されてもよい。なお、タブレット端末等で構成される操作表示部8は、無線通信を介して制御部10に接続されて、自律走行作業装置1を遠隔操作可能となる。
【0053】
キースイッチ16は、オン、オフを切替可能に構成されている。キースイッチ16をオンに切り替えることで、電源部9から各部に電力が供給されて自律走行作業装置1が稼働する一方、キースイッチ16をオフに切り替えることで、電源部9から各部への電力供給が停止されて自律走行作業装置1の稼働が停止する。緊急停止ボタン17は、操作されることで、自律走行作業装置1の各部の動作(特に、自動走行清掃)を強制的に停止(制動)する。
【0054】
タッチパネル18は、制御部10からの制御信号に応じて様々な画面を表示し、各画面でのタッチ操作に基づく操作信号を制御部10へと送信する。例えば、キースイッチ16をオンにして自律走行作業装置1を稼働すると、タッチパネル18は、図4に示すように、動作モードを選択可能なモード選択画面30を表示する。
【0055】
モード選択画面30には、清掃部材12の着脱を行うためのパッド装着ボタン31や、学習ボタン32、自動ボタン33および手動ボタン34が操作可能に表示される。学習ボタン32、自動ボタン33または手動ボタン34が操作されると、動作モードが学習走行モード、自動走行モードまたは手動走行モードにそれぞれ切り替えられる。学習走行モードまたは手動走行モードの場合、タッチパネル18は、手動走行や手動清掃に関するデータを設定操作可能なデータ設定画面(図示せず)を表示する。自動走行モードの場合、タッチパネル18は、例えば、清掃プランを選択操作可能な清掃プラン選択画面(図示せず)を表示する。
【0056】
データ設定画面は、手動走行清掃時や学習走行清掃時において、走行部3の走行速度、清掃部5の清掃部材12による清掃の稼働/停止およびパッド圧、洗浄液供給部13による洗浄液供給の稼働/停止および供給水量、吸引部14による吸引の稼働/停止および吸引量等を設定可能に構成される。また、データ設定画面は、学習走行モードにおいて、学習走行清掃の開始、中止、完了、記憶等を操作可能に構成される。
【0057】
清掃プラン選択画面は、記憶部11に記憶されている各清掃プランを選択可能に構成され、また、選択された清掃プランの自動走行清掃の開始、一時停止、中止等を操作可能に構成される。なお、選択された清掃プランの自動走行清掃が開始されると、タッチパネル18は、自動走行清掃の実行中を示す画面を表示する。
【0058】
電源部9は、装置本体2内部に搭載されたバッテリー(電源)および充電回路を備え、外部電源に接続することでバッテリーが充電され、また、自律走行作業装置1の各部へと電力を供給する。電源部9は、バッテリーの残量を示す信号を制御部10へと出力してもよい。
【0059】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等のコンピュータで構成され、図2に示すように、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリ等を含む記憶部11に接続されている。また、制御部10は、上記の走行部3、走行操作部4、清掃部5、計測部6、障害物検知部7、操作表示部8および電源部9等の自律走行作業装置1の各部に接続されている。
【0060】
記憶部11は、自律走行作業装置1の各部および各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御部10が、記憶部11に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各部および各種機能を統括制御する。例えば、制御部10は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、モード切替部20、地図作成部21、清掃プラン作成部22(プラン作成部)、再現制御部23、障害物判断部24、回避制御部25および回避データ作成部26として動作する。これにより、自律走行作業装置1は、事前に記憶されたプログラムに従って自律的に走行し自動で作業することができる。
【0061】
また、記憶部11は、清掃プラン作成部22によって作成される1つ以上の清掃プランを記憶すると共に、各清掃プランに対応する環境地図も記憶する。更に、記憶部11は、回避データ作成部26によって反復回避走行のために作成される回避データを記憶すると共に、回避データに対応する障害物検出地図も記憶する。回避データは、清掃プランの環境地図(清掃エリア)に含まれない未知の障害物(不定障害物)を回避して走行するためのデータであり、1つ以上の不定障害物のそれぞれに対して1つ以上作成されてよい。なお、回避データは、図5(2)および(3)に示すように、走行データと同様に構成され、複数のステップを含み、各ステップは、自己位置データ、操舵フラグ、進行方向への走行速度および旋回速度を含む。回避データのステップ間隔は、清掃プランのステップ間隔と同じでよい。
【0062】
モード切替部20は、動作モードを学習走行モード、自動走行モードおよび手動走行モードの何れかに切り替える。モード切替部20は、例えば、上記したモード選択画面30において、学習ボタン32、自動ボタン33および手動ボタン34の操作に応じて動作モードを学習走行モード、自動走行モードおよび手動走行モードにそれぞれ切り替える。
【0063】
地図作成部21は、学習走行モードにおいて学習走行清掃が行われる間、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いて、リアルタイムで自己位置の推定と環境地図の作成とを行う。
【0064】
具体的には、地図作成部21は、所定の清掃エリアの学習走行清掃の間に、計測部6の計測結果である装置本体2と障害物との位置情報に基づいて、所定の時間間隔毎または所定の距離間隔毎に、装置本体2の周囲の局所地図を作成する。また、地図作成部21は、局所地図と走行部3の各エンコーダによる検出結果(走行部3の移動量)とに基づいて、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置(座標)を推定する。
【0065】
そして、地図作成部21は、学習走行清掃を完了する際に、各局所地図をつなぎ合わせる(合成する)ことで清掃エリアの環境地図を作成する。また、地図作成部21は、局所地図中の自己位置(計測部6が計測した各位置情報)をつなぎ合わせる(合成する)ことで環境地図上の走行経路を作成する。
【0066】
清掃プラン作成部22は、学習走行モードにおいて学習走行清掃が行われる間、清掃プランのステップ間隔毎に、走行部3の走行データおよび清掃部5の清掃データを取得して記憶部11に一時的に記憶しておく。清掃プラン作成部22は、操作表示部8の操作に応じて学習走行清掃が開始されると、走行データおよび清掃データの取得を開始する。
【0067】
清掃プラン作成部22は、例えば、走行データとして、計測部6が計測した位置情報に基づいて自己位置データ(X座標およびY座標、角度)を取得する。また、走行部3の前輪3aの前輪回転用エンコーダで前輪3aの走行回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の走行速度を取得する。更に、走行部3の前輪3aの操舵回転用エンコーダで前輪3aの操舵回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の旋回速度を取得する。
【0068】
清掃プラン作成部22は、例えば、清掃データとして、清掃部5の清掃部材12のパッド圧、洗浄液供給部13の供給水量および吸引部14の吸引量について、操作表示部8の操作に応じて設定された段階的な強度を取得する。
【0069】
また、清掃プラン作成部22は、操作表示部8の操作に応じて学習走行清掃が完了すると、走行データおよび清掃データの取得を停止し、記憶部11に一時的に記憶していた走行データおよび清掃データをステップ毎に関連付けて清掃プラン(作業プラン)を作成する。そして、清掃プラン作成部22は、作成した清掃プランを、同じ学習走行清掃で地図作成部21が作成した環境地図と関連付けて記憶部11に記憶する。
【0070】
また、清掃プラン作成部22は、作成した清掃プランの走行データおよび環境地図に基づいて、ステップ毎に、自律走行作業装置1から最も近い障害物(最短障害物)を検出し、最短障害物の方向を検出すると共に最短障害物の最短距離を算出する。例えば、最短障害物は、自律走行作業装置1の進行方向に対して左側または右側に存在する壁等の障害物である。清掃プラン作成部22は、ステップ毎の最短障害物の方向および最短距離を最短障害物情報として清掃プランに記憶する。
【0071】
更に、清掃プラン作成部22は、清掃プランの各ステップについて、回避データ作成部26が走行データに基づいて回避データを作成した場合には、回避データを用いて走行データを補正する。このとき、清掃プラン作成部22は、最短障害物情報の最短距離が所定の必要離間距離未満であるステップの走行データを、回避データを用いて補正することで、自律走行作業装置1が最短障害物に対して必要離間距離を維持するように走行データが補正される。換言すれば、清掃プランの走行データが自律走行作業装置1と最短障害物との必要離間距離を確保するように、回避データが回避データ作成部26によって設定されている。
【0072】
例えば、図6(1)に示すように、学習走行清掃において、自律走行作業装置1が障害物の壁面WAに近接して、壁面WAとの距離が必要離間距離L1未満になることがある。このとき、壁面WAが自律走行作業装置1の最短障害物であり、必要離間距離L1が0.8mに設定されている場合、図3(1)に示すように、走行データのステップ31~35において、自律走行作業装置1と壁面WAとが必要離間距離L1未満になっている。このような走行データを、自律走行作業装置1と壁面WAとの必要離間距離L1を確保する回避データで補正すると、図3(2)に示すように、走行データのステップ31~35において、自律走行作業装置1と壁面WAとが必要離間距離L1に維持される。このとき、図6(2)に示すように、補正後の走行データに示される走行経路は、自律走行作業装置1と壁面WAとを必要離間距離L1に維持することになる。
【0073】
なお、学習走行清掃で作成した清掃プランを補正する際に用いる必要離間距離は、ステップ毎に走行速度に応じて変更され、例えば、走行速度が速い程、長く設定されてよい。例えば、学習走行清掃時の走行速度が2.0m/sのステップでは、必要離間距離が0.8mに設定され、走行速度が0.5m/sのステップでは、必要離間距離が0.4mに設定されてよい。
【0074】
再現制御部23は、動作モードが自動走行モードの場合に、操作表示部8の操作に応じて清掃プランが選択されると、選択された清掃プランを記憶部11から読み出し、この清掃プランの走行データおよび清掃データに基づいて、走行部3および清掃部5を制御して自動走行清掃を行う。このとき、再現制御部23は、清掃プランに対応する環境地図上の自律走行作業装置1の自己位置を推定しながら自動走行清掃を実行する。例えば、再現制御部23は、地図作成部21を利用してSLAM等の技術を用いて局所地図を作成し、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置を推定して、局所地図を環境地図にマッチングさせることで、環境地図上の自己位置を推定する。そして、再現制御部23は、再現プランの走行データのステップ毎の自己位置データと、環境地図上で推定される自己位置を合わせて走行部3を制御しつつ、清掃部5の清掃データに基づいてステップ毎に清掃作業を制御する。
【0075】
また、再現制御部23は、自動走行清掃を実行中に、障害物判断部24によって自律走行作業装置1の周囲の障害物を判断させる。例えば、図7(1)に示すように、学習走行清掃において障害物がない状態で清掃プランおよび環境地図が作成された場合でも、図7(2)に示すように、自動走行清掃時に、清掃プランに含まれなかった障害物(不定障害物)が存在することがある。この不定障害物が自律走行作業装置1の進行方向に配置されていると、自律走行作業装置1の進行に伴って自律走行作業装置1が不定障害物に接近して、不定障害物と自律走行作業装置1との距離が減少していく。再現制御部23は、不定障害物と自律走行作業装置1との距離が所定の回避距離に到達したとき(回避距離以下になったとき)、清掃プランに基づく自動走行清掃を中断し、回避制御部25によって回避走行を実行させる。なお、回避距離は、例えば、自律走行作業装置1の進行方向前側で計測部6により計測された距離であって、計測部6と進行方向前側にある不定障害物とを最短の直線で結んだ距離でよい。
【0076】
なお、回避走行では、図7(2)に示すように、元の清掃プランの走行データが示す走行経路の進行方向に自律走行作業装置1を進行させつつ不定障害物を迂回するので、走行経路上の回避開始点(回避開始ステップ)から回避終了点(回避終了ステップ)までの回避走行区間では、清掃プランのステップは実行されない。再現制御部23は、その未実行ステップの障害物回避フラグが0であれば1に設定する。再現制御部23は、回避終了点で回避走行が終了すると、自律走行作業装置1が清掃プランの走行経路に復帰するので、清掃プランに基づく自動走行清掃を再開する。また、過去の自動走行清掃で障害物回避フラグが1に設定されたステップについて、今回の自動走行清掃で不定障害物が検出されなければ回避走行を行わずに自動走行清掃を継続するので、再現制御部23は、そのステップの障害物回避フラグを0に設定する。
【0077】
障害物判断部24は、手動走行清掃、学習走行清掃および自動走行清掃の実行中に、計測部6による計測結果に基づいて、自律走行作業装置1の周囲の障害物を判断する。例えば、障害物判断部24は、学習走行清掃時に、自律走行作業装置1と障害物との距離が所定の必要離間距離未満になった場合、操作表示部8による表示やスピーカ(図示せず)による音声出力によって、自律走行作業装置1が障害物に近接したことを示す障害物接近通知を出力する。学習走行清掃では、走行操作部4の操作に応じて走行速度を変更することができるところ、走行速度が速くなると、障害物との接触危険性を低下するために必要離間距離が短くなるように設定される。そのため、障害物と必要離間距離を維持して走行していても、走行速度を上昇することで、必要離間距離未満になることがある。これに対して、障害物接近通知を出力することで、操作者は、走行速度に応じて変化する必要離間距離を正確に把握することができる。
【0078】
また、障害物判断部24は、清掃プランの自動走行清掃時に、その清掃プランに対応する環境地図に含まれない障害物を不定障害物として検出する。障害物判断部24は、検出した不定障害物と自律走行作業装置1との距離を検出すると共に、検出した距離が回避距離に到達したか否か(回避距離以下か否か)を判定する。なお、回避距離は、必要離間距離と同じに設定されてもよい。
【0079】
更に、障害物判断部24は、清掃プランの自動走行清掃時に、自律走行作業装置1と不定障害物との距離が回避距離に到達したと判定すると、回避制御部25の回避走行のために、その不定障害物に対応する回避データを記憶部11から検索する。障害物判断部24は、例えば、自動走行清掃時に回避距離に到達するまでに地図作成部21で作成される局所地図と、不定障害物に関連付けられて記憶部11に記憶される障害物検出地図とのマッチングを行うことで、回避データの検索を行う。
【0080】
回避制御部25は、清掃プランの自動走行清掃において、障害物判断部24によって自律走行作業装置1と不定障害物との距離が回避距離に到達したと判定されると、清掃プランに拘らず、回避走行を実行するように走行部3を制御する。なお、回避制御部25は、回避走行では、障害物をより安全に回避させるように清掃部5による清掃を実施しなくてもよい。
【0081】
回避制御部25は、障害物判断部24が不定障害物に対応する回避データを障害物判断部24が記憶部11から検索できなかった場合、その不定障害物について初回の回避走行(初回回避走行)を実行する。例えば、回避制御部25は、初回回避走行を行う場合、図7(2)に示すように、自律走行作業装置1と不定障害物との間の距離を計測部6によって計測しつつ必要離間距離を維持するように確認しながら自律走行作業装置1が不定障害物を回避して走行するように走行部3を制御する。
【0082】
このとき、回避制御部25は、元の清掃プランの走行データに基づく走行経路および進行方向を基準にして、自律走行作業装置1を進行方向に進行させながら不定障害物から必要離間距離以上離間するように走行部3を制御する。初回回避走行時の走行速度は、障害物との衝突等の危険を抑制するために、最も低い安全速度に設定される。回避走行経路は、図7(2)に示すように、走行経路を基準にして必要離間距離を維持しながら不定障害物を迂回し、不定障害物を経過すると元の清掃プランの走行経路上に復帰する経路となる。回避制御部25は、初回回避走行を行う自律走行作業装置1が、元の清掃プランの走行経路上に復帰すると、初回回避走行を終了し、その回避終了ステップから再現制御部23による自動走行清掃が継続する。
【0083】
一方、回避制御部25は、障害物判断部24が不定障害物に対応する回避データを記憶部11から検索できた場合、その回避データを記憶部11から読み出し、回避データに基づく回避走行(反復回避走行)を実行する。例えば、回避制御部25は、反復回避走行を行う場合、再現制御部23による自動走行清掃と同様にして、回避データの各ステップに基づいて走行部3を制御する。即ち、回避制御部25は、地図作成部21を利用して局所地図を作成し、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置を推定し、局所地図を環境地図にマッチングさせて環境地図上の自己位置を推定する。そして、回避制御部25は、回避データのステップ毎の自己位置データと、環境地図上で推定される自己位置を合わせて走行部3を制御する。
【0084】
反復回避走行では、回避データによって初回回避走行が再現され、不定障害物を自動的に回避する。回避制御部25による反復回避走行が終了すると、自律走行作業装置1が元の清掃プランの走行経路上に復帰しているので、その回避終了ステップから再現制御部23による自動走行清掃が継続する。
【0085】
回避データ作成部26は、学習走行清掃が完了して清掃プラン作成部22が清掃プランを作成するとき、学習走行清掃において取得した走行データに基づいて回避データを作成する。この場合の回避データは、元の清掃プランの走行データを補正するデータである。例えば、回避データ作成部26は、各ステップの最短障害物情報の最短距離が必要離間距離未満であるか否かを判定する。そして、回避データ作成部26は、最短距離が必要離間距離未満となるステップで自律走行作業装置1に最短障害物を回避させるために、そのステップの最短障害物情報の最短距離を必要離間距離に維持するように回避データを作成する。なお、この場合の回避データは、最短距離と必要離間距離との差で設定されてよく、あるいは、必要離間距離が設定されてもよい。
【0086】
また、回避データ作成部26は、回避制御部25が不定障害物に対して初回回避走行を行うとき、学習走行清掃と同様にして、初回回避走行が行われる間、ステップ間隔毎に、走行部3の走行データを取得して記憶部11に一時的に記憶しておく。そして、回避データ作成部26は、初回回避走行が終了すると、走行データの取得を停止し、記憶部11に一時的に記憶していた走行データを回避データとして作成する。この場合の回避データは、自動走行清掃の走行データに代えて、反復回避走行時の自律走行作業装置1の走行を制御するデータである。
【0087】
例えば、図5(1)に示すような清掃プランの走行データにおいて、ステップ30とステップ36との間に不定障害物が存在する場合に、回避制御部25は、回避開始ステップ30から回避終了ステップ36までの回避走行区間のステップを実行せずに、初回回避走行を実行する。
【0088】
この初回回避走行によって、図5(2)に示すように、不定障害物を回避する回避走行経路の回避データが取得される。初回回避走行時の走行速度は、安全速度に設定されているが、反復回避走行のために作成される回避データでは、図5(3)に示すように、元の清掃プランの走行速度(回避走行区間の前後のステップの走行速度)に従って、学習走行清掃時の速い走行速度を維持して設定することにより、自動走行清掃と反復回避走行とを移行する際に滑らかに走行することができる。あるいは、図5(2)に示すような遅い安全速度を維持して回避データを生成してもよいが、その場合、必要離間距離は短く設定される。
【0089】
なお、回避データ作成部26は、障害物判断部24が不定障害物を検出してから自律走行作業装置1が回避距離に到達するまでの間に地図作成部21によって作成した局所地図を合わせて障害物検出地図として作成しておく。そして、回避データ作成部26は、不定障害物に対して作成した回避データと障害物検出地図とを関連付けて記憶部11に記憶する。
【0090】
なお、回避データ作成部26によって反復回避走行のために作成された回避データ(回避走行経路)および障害物検出地図は、元の清掃プランの走行データ(走行経路)および環境地図に対して別階層に記憶部11に記憶される。図8(1)~(3)に示すように、回避データおよび障害物検出地図は、走行データおよび環境地図に対して重ねられるように、回避制御部25によって用いられてよい。例えば、図8(1)に示すように、学習走行清掃において不定障害物がない状態で走行データおよび環境地図が作成されている。
【0091】
その後、図8(2)に示すように、自動走行清掃において、障害物判断部24が不定障害物Aを検出し、不定障害物Aに関連付けられた回避データおよび障害物検出地図を記憶部11から検索する。この場合、回避制御部25は、不定障害物Aに関連付けられた回避データおよび障害物検出地図を、走行データおよび環境地図に重ねるように清掃プランを一時的に変更すれば、再現制御部23は、変更された清掃プランに基づいて自動走行清掃を行うと、不定障害物Aを回避することができる。このとき、一時的に変更された清掃プランは、記憶部11に記憶されず、記憶部11では元の清掃プランが維持される。なお、不定障害物Aが取り除かれた場合、不定障害物Aに関連付けられた回避データおよび障害物検出地図は検索されなくなるので、再現制御部23は、元の清掃プランに基づいて自動走行清掃を行うことができる。
【0092】
同様にして、図8(3)に示すように、自動走行清掃において、障害物判断部24が不定障害物Bを検出し、不定障害物Bに関連付けられた回避データおよび障害物検出地図を記憶部11から検索する。この場合、回避制御部25は、不定障害物Bに関連付けられた回避データおよび障害物検出地図を、走行データおよび環境地図に重ねるように清掃プランを一時的に変更すれば、再現制御部23は、変更された清掃プランに基づいて自動走行清掃を行うと、不定障害物Bを回避することができる。なお、自律走行作業装置1は、当日行った自動走行清掃に関する内容を通知する通知機能を備えていても良い。自動走行清掃において、初回回避走行や反復回避走行が行われた場合は、それら回避走行の実施についても通知機能で通知されて良い。
【0093】
上記した自律走行作業装置1の学習走行清掃において走行データの補正を伴う動作を図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0094】
自律走行作業装置1を学習モードに設定して学習走行清掃を実行すると(ステップS1)、清掃プラン作成部22は、各ステップの走行部3の走行データおよび清掃部5の清掃データを取得し(ステップS2)、走行データおよび清掃データを記憶部11に一時的に記憶する(ステップS3)。
【0095】
その後、学習走行清掃が完了すると(ステップS4)、清掃プラン作成部22は、各ステップの最短障害物からの最短距離を算出する。また、回避データ作成部26は、各ステップの最短距離が必要離間距離未満であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0096】
最短距離が必要離間距離以上であるステップについて(ステップS5:NO)、回避データ作成部26は、回避データを作成しないので、そのステップの走行データは補正されずに、走行データを含む清掃プランが記憶部11に記憶される(ステップS6)。
【0097】
一方、最短距離が必要離間距離未満であるステップについて(ステップS5:YES)、回避データ作成部26は、回避データを作成するので、清掃プラン作成部22は、回避データを用いて走行データを補正し(ステップS7)、補正後の走行データを含む清掃プランが記憶部11に記憶される(ステップS6)。
【0098】
上記した自律走行作業装置1の自動走行清掃において回避走行を伴う動作を図10のフローチャートを参照しながら説明する。
【0099】
自律走行作業装置1を自動モードに設定して清掃プランを選択し(ステップS11)、再現制御部23が清掃プランに基づく自動走行清掃を開始すると(ステップS12)、自動走行清掃の実行中に、障害物判断部24が、計測部6の計測結果に基づいて、自律走行作業装置1の周囲の障害物を判断する。
【0100】
このとき、障害物判断部24が清掃プランに含まれない不定障害物を検出しなければ(ステップS13:NO)、自動走行清掃を継続し、自動走行清掃を終了する停止位置に到達すると(ステップS14)、再現制御部23は自動走行清掃を終了する(ステップS15)。
【0101】
一方、障害物判断部24が走行経路の進行方向前方に不定障害物を検出すると(ステップS13:YES)、自律走行作業装置1が不定障害物の回避距離に到達するまで(ステップS16:NO)、再現制御部23は自動走行清掃を継続する。そして、自律走行作業装置1が回避距離に到達すると(ステップS16:YES)、障害物判断部24がその不定障害物に関連付けられた回避データを記憶部11から検索する(ステップS17)。
【0102】
不定障害物の回避データを検索できなかった場合(ステップS17:NO)、回避制御部25は、その不定障害物について初回回避走行を実行し、不定障害物との必要離間距離を確認しながら自律走行作業装置1の走行を制御する(ステップS18)。このとき、回避データ作成部26は、初回回避走行時の走行データを回避データとして取得して、不定障害物に関連付けて記憶部11に記憶する(ステップS19)。
【0103】
一方、不定障害物の回避データを検索できた場合(ステップS17:YES)、回避制御部25は、記憶部11から回避データを読み出し(ステップS20)、その不定障害物について反復回避走行を実行し、その回避データに基づいて自律走行作業装置1の走行を制御する(ステップS21)。このとき、例えば、回避制御部25は、回避データを元の清掃プランに差し込み、再現制御部23に、回避データが差し込まれた清掃プランの自動走行清掃を実行させてもよい。
【0104】
上記のように、本実施形態によれば、事前に記憶した清掃プラン(作業プラン)に基づいて自律的に走行し自動的に清掃(作業)する自動走行清掃(自動走行作業)を実行可能な自律走行作業装置1は、装置本体2と、装置本体2を清掃エリア(作業エリア)内で走行させる走行部3と、装置本体2の清掃エリア内の走行経路上で清掃(作業)を行う清掃部5(作業部)と、自律走行作業装置1の学習走行清掃(学習走行作業)を行うとき、走行部3の走行データと清掃部5の清掃データ(作業データ)とを含む清掃プランを作成する清掃プラン作成部22(プラン作成部)と、清掃プラン作成部22が作成した清掃プランを自動走行清掃のために記憶する記憶部11と、装置本体2と障害物との距離が所定の必要離間距離未満になる箇所の走行データに対応するデータとして、装置本体2と障害物との必要離間距離を維持しながら装置本体2が障害物を回避して走行する回避データを作成する回避データ作成部26と、を備える。
【0105】
このような構成により、自律走行作業装置1では、装置本体2と障害物とが必要離間距離を維持するように回避データを作成するので、学習モードや自動モードに拘らず、装置本体2が障害物に衝突する危険を抑制し、装置本体2が障害物に近接した場合に発生するエラーを抑制することができる。従って、自律走行作業装置1は、障害物との接触を避けるための減速が抑制されるので、走行時間が長くなることがなく、効率的な走行データ(作業プラン)を作成することができる。そのため、作業領域内の障害物を効率的に回避して自動走行清掃を行うことができる自律走行作業装置1を提供することが可能となる。
【0106】
また、本実施形態では、清掃プラン作成部22は、学習走行清掃が完了したとき、回避データを用いて清掃プランの走行データを補正して記憶部11に記憶させる。
【0107】
このような構成により、自律走行作業装置1では、学習走行清掃時に壁等の障害物に近づくような操作ミスがあった場合でも、清掃プランを作成するときには、障害物と必要離間距離を維持するように走行データが補正される。そのため、操作ミスがあった場合でも、清掃プランの再作成をする必要がなく、清掃時間を抑えた効率的な清掃プランに補正して、自動走行清掃に利用することが可能となる。
【0108】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、清掃プランに基づいて自動走行清掃を行うとき、清掃プランに含まれない障害物である不定障害物と装置本体2との距離が所定の回避距離に到達した場合、清掃プランに拘らず、装置本体2と不定障害物との必要離間距離を維持しながら装置本体2が不定障害物を回避して走行する回避走行を自動的に行う回避制御部25を備え、回避データ作成部26は、回避走行に従って回避データを作成し、不定障害物に関連付けて記憶部11に記憶させる。
【0109】
このような構成により、自律走行作業装置1では、学習走行清掃において清掃プランを作成したときに検出されなかった障害物であって、自動走行清掃で新たに不定障害物を検出した場合でも、不定障害物と必要離間距離を維持する回避走行を行い、また、この回避走行時の回避データを作成する。そのため、清掃プランを変更しないので、不定障害物が除外された場合には、元の清掃プランを用いて自動走行清掃を行うことができ、また、回避走行時の回避データを参照することが可能となる。
【0110】
また、本実施形態では、回避制御部25は、不定障害物と装置本体2との距離が所定の回避距離に到達したとき、不定障害物に関連付けられた回避データが記憶部11に記憶されていない場合には、装置本体2と不定障害物との距離を計測して必要離間距離を維持するように制御することで初回回避走行を行い、一方、不定障害物に関連付けられた回避データが記憶部11に記憶されていた場合には、記憶部11から回避データを読み出し、回避データに基づいて反復回避走行を行う。
【0111】
このような構成により、自律走行作業装置1は、自動走行清掃において不定障害物の初回回避走行を行って回避データを作成すると、次回以降の自動走行清掃において同じ不定障害物を検出した場合には、初回回避走行で作成した回避データを用いて反復回避走行を行うことにより、初回回避走行を再現することができる。なお、不定障害物が一旦除外された後、再度同じ位置に配置された場合には、同じ回避データを用いることが可能である。従って、不定障害物を配置したり除外したりしても、清掃プランを再作成する必要がなく、清掃時間を抑えて効率的に自動走行清掃を行うことができる。
【0112】
また、本実施形態では、必要離間距離は、清掃プランの走行データに基づく装置本体2の走行速度が速い程、長く設定される。
【0113】
このような構成により、自律走行作業装置1は、走行速度に応じて障害物に接触する危険性をより低下することができる。
【0114】
また、本実施形態では、学習走行清掃を行うとき、装置本体2と障害物との距離が必要離間距離未満になった場合、障害物接近通知を出力する。
【0115】
このような構成により、自律走行作業装置1は、学習走行清掃時に操作者は障害物からの必要離間距離を正確に把握することができる。また、走行速度の変化に伴って必要離間距離が変化する場合でも、必要離間距離未満になる可能性を低下することができる。
【0116】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自律走行作業装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、自律的に走行し自動で作業することが可能な自律走行作業装置とそれと一体的に構成した業務用の自動床面洗浄・清掃装置等に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 自律走行作業装置
2 装置本体
3 走行部
5 清掃部(作業部)
10 制御部
11 記憶部
20 モード切替部
21 地図作成部
22 清掃プラン作成部(プラン作成部)
23 再現制御部
24 障害物判断部
25 回避制御部
26 回避データ作成部
図1
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