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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】測定システムおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20230927BHJP
【FI】
G03B5/00 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019130885
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021015239
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】小松 亮二
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/121581(WO,A1)
【文献】特開2017-211487(JP,A)
【文献】特開2012-163718(JP,A)
【文献】特開2019-009479(JP,A)
【文献】特開2012-068349(JP,A)
【文献】特開2002-013484(JP,A)
【文献】特開2003-278665(JP,A)
【文献】特開2019-008329(JP,A)
【文献】特開2019-020501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00-5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体と、支持機構を介して前記可動体を移動可能に支持する支持体と、駆動用コイルおよび駆動用磁石を有し前記支持体に対して前記可動体を移動させる磁気駆動機構とを備える測定対象製品の前記可動体の共振周波数を測定する測定システムであって、
前記可動体の変位を検知するための変位検知機構と、前記変位検知機構から出力される出力電圧が入力される計測器とを備え、
前記計測器は、前記可動体の共振周波数の測定時に、正弦波状に変動する入力電圧の周波数を掃引しながら前記駆動用コイルに前記入力電圧を印加する電圧印加部と、前記入力電圧の位相と前記出力電圧の位相との差である位相差を算出する位相差算出部とを備え、
前記可動体の共振周波数の測定時に、前記電圧印加部は、所定の掃引開始周波数の前記入力電圧を前記駆動用コイルに印加するとともに、前記掃引開始周波数の前記入力電圧が前記駆動用コイルに印加されたときに前記位相差算出部で算出される前記位相差が90°未満である場合には、前記位相差が90°に近づくように周波数が高くなる方向に周波数を掃引しながら前記駆動用コイルに前記入力電圧を印加し、前記掃引開始周波数の前記入力電圧が前記駆動用コイルに印加されたときに前記位相差算出部で算出される前記位相差が90°を超えている場合には、前記位相差が90°に近づくように周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら前記駆動用コイルに前記入力電圧を印加し、前記位相差算出部で算出される前記位相差が90°を跨いだ時点で前記駆動用コイルへの前記入力電圧の印加を停止し、
前記掃引開始周波数は、前記可動体の共振周波数の設計上の範囲の中心値であることを特徴とする測定システム。
【請求項2】
可動体と、支持機構を介して前記可動体を移動可能に支持する支持体と、駆動用コイルおよび駆動用磁石を有し前記支持体に対して前記可動体を移動させる磁気駆動機構とを備える測定対象製品の前記可動体の共振周波数を測定する測定システムであって、
前記可動体の変位を検知するための変位検知機構と、前記変位検知機構から出力される出力電圧が入力される計測器とを備え、
前記計測器は、前記可動体の共振周波数の測定時に、正弦波状に変動する入力電圧の周波数を掃引しながら前記駆動用コイルに前記入力電圧を印加する電圧印加部と、前記入力電圧の位相と前記出力電圧の位相との差である位相差を算出する位相差算出部とを備え、
前記可動体の共振周波数の測定時に、前記電圧印加部は、前記可動体の共振周波数の設計上の範囲の上限よりも高い所定の掃引開始周波数の前記入力電圧を前記駆動用コイルに印加するとともに、周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら前記駆動用コイルに前記入力電圧を印加し、前記位相差算出部で算出される前記位相差が90°を跨いだ時点で前記駆動用コイルへの前記入力電圧の印加を停止することを特徴とする測定システム。
【請求項3】
前記変位検知機構は、前記支持体に対する前記可動体の位置を検知するために前記測定対象製品の内部に設置される位置検知機構であり、前記測定対象製品の一部分を構成していることを特徴とする請求項1または2記載の測定システム。
【請求項4】
前記位置検知機構は、ホール素子を有するホールセンサであり、前記駆動用磁石の磁力を検知可能な位置で前記可動体および前記支持体のいずれか一方に取り付けられ、
前記駆動用磁石は、前記可動体および前記支持体のいずれか他方に取り付けられていることを特徴とする請求項記載の計測システム。
【請求項5】
前記計測器は、前記出力電圧の電圧値を検知する電圧検知部を備え、
前記可動体の共振周波数の測定前に、前記電圧印加部は、前記支持体に対する前記可動体の移動範囲の限界まで前記可動体を移動させるための駆動電圧を前記駆動用コイルに印加し、前記電圧検知部は、前記支持体に対する前記可動体の移動範囲の一方の限界まで前記可動体が移動したときの前記出力電圧の電圧値である最大電圧値と、前記支持体に対する前記可動体の移動範囲の他方の限界まで前記可動体が移動したときの前記出力電圧の電圧値である最小電圧値とを検知し、
前記可動体の共振周波数の測定時に、前記電圧印加部は、前記出力電圧の電圧値が前記最大電圧値と前記最小電圧値との平均値となるときの前記駆動電圧の電圧値を全振幅の中心とする正弦波状の前記入力電圧を前記駆動用コイルに印加することを特徴とする請求項または記載の計測システム。
【請求項6】
前記可動体の共振周波数の測定時に、前記電圧印加部は、前記出力電圧の電圧値が前記最大電圧値と前記最小電圧値との平均値となるときの前記駆動電圧の電圧値を全振幅の中心とする正弦波状の前記入力電圧であって、前記掃引開始周波数の前記入力電圧を前記駆動用コイルに印加し、前記電圧検知部は、このときの前記出力電圧の飽和の有無を確認し、前記出力電圧が飽和している場合、前記電圧印加部は、前記出力電圧が飽和しないように前記入力電圧の振幅を小さく設定することを特徴とする請求項記載の計測システム。
【請求項7】
前記可動体の共振周波数の測定後に、前記電圧印加部は、前記出力電圧の電圧値が前記最大電圧値と前記最小電圧値との平均値となるときの前記駆動電圧の電圧値を全振幅の中心とする正弦波状の前記入力電圧であって、前記位相差算出部で算出される前記位相差が90°になったときの周波数の前記入力電圧を前記駆動用コイルに印加し、前記電圧検知部は、このときの前記出力電圧の振幅の大きさを確認することを特徴とする請求項または記載の計測システム。
【請求項8】
前記測定対象製品は、像振れ補正機能を有する振れ補正機能付き光学ユニット、または、触覚で振動を認知させる触覚デバイスであることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の計測システム。
【請求項9】
可動体と、支持機構を介して前記可動体を移動可能に支持する支持体と、駆動用コイルおよび駆動用磁石を有し前記支持体に対して前記可動体を移動させる磁気駆動機構とを備える測定対象製品の前記可動体の共振周波数を測定する測定方法であって、
前記可動体の変位を検知するための変位検知機構と、前記変位検知機構から出力される出力電圧が入力される計測器とを用いるとともに、前記計測器は、前記可動体の共振周波数の測定時に、正弦波状に変動する入力電圧の周波数を掃引しながら前記駆動用コイルに前記入力電圧を印加する電圧印加部と、前記入力電圧の位相と前記出力電圧の位相との差である位相差を算出する位相差算出部とを備え、
前記測定方法では、前記可動体の共振周波数の測定時に、前記電圧印加部は、所定の掃引開始周波数の前記入力電圧を前記駆動用コイルに印加するとともに、前記掃引開始周波数の前記入力電圧が前記駆動用コイルに印加されたときに前記位相差算出部で算出される前記位相差が90°未満である場合には、前記位相差が90°に近づくように周波数が高くなる方向に周波数を掃引しながら前記駆動用コイルに前記入力電圧を印加し、前記掃引開始周波数の前記入力電圧が前記駆動用コイルに印加されたときに前記位相差算出部で算出される前記位相差が90°を超えている場合には、前記位相差が90°に近づくように周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら前記駆動用コイルに前記入力電圧を印加し、前記位相差算出部で算出される前記位相差が90°を跨いだ時点で前記駆動用コイルへの前記入力電圧の印加を停止し、
前記掃引開始周波数は、前記可動体の共振周波数の設計上の範囲の中心値であることを特徴とする測定方法。
【請求項10】
可動体と、支持機構を介して前記可動体を移動可能に支持する支持体と、駆動用コイルおよび駆動用磁石を有し前記支持体に対して前記可動体を移動させる磁気駆動機構とを備える測定対象製品の前記可動体の共振周波数を測定する測定方法であって、
前記可動体の変位を検知するための変位検知機構と、前記変位検知機構から出力される出力電圧が入力される計測器とを用いるとともに、前記計測器は、前記可動体の共振周波数の測定時に、正弦波状に変動する入力電圧の周波数を掃引しながら前記駆動用コイルに前記入力電圧を印加する電圧印加部と、前記入力電圧の位相と前記出力電圧の位相との差である位相差を算出する位相差算出部とを備え、
前記測定方法では、前記可動体の共振周波数の測定時に、前記電圧印加部は、前記可動体の共振周波数の設計上の範囲の上限よりも高い所定の掃引開始周波数の前記入力電圧を前記駆動用コイルに印加するとともに、周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら前記駆動用コイルに前記入力電圧を印加し、前記位相差算出部で算出される前記位相差が90°を跨いだ時点で前記駆動用コイルへの前記入力電圧の印加を停止することを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体の共振周波数を測定するための測定システムおよび測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手振れ等による光学像の振れを補正するための像振れ補正機能を有する振れ補正機能付き光学ユニットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の光学ユニットは、レンズが搭載される光学モジュールを有する揺動体と、揺動体を揺動可能に支持する揺動支持機構と、揺動支持機構を介して揺動体を支持する固定体とを備えている。また、この光学ユニットは、揺動体を揺動させる磁気駆動機構と、揺動する揺動体を基準姿勢に復帰させるためのバネ部材とを備えている。磁気揺動機構は、固定体に固定される駆動用磁石と、揺動体に固定される駆動用コイルとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-20501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の光学ユニットが組立後に工場から出荷される前には、一般に、個々の光学ユニットごとに揺動体の共振周波数が測定される。揺動体の共振周波数を測定するときには、たとえば、光学式の変位計を用いて揺動体の変位を検知する。また、揺動体の共振周波数を測定するときには、一般に、予め設定された掃引開始周波数から掃引終了周波数まで入力電圧の周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加する。掃引開始周波数から掃引終了周波数までの周波数の範囲には、揺動体の共振周波数が含まれている。
【0005】
また、揺動体の共振周波数を測定するときには、一般に、掃引開始周波数から掃引終了周波数まで入力電圧の周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加したときの変位計の出力電圧に基づいてボード線図を作成し、作成したボード線図に基づいて共振周波数を特定する。しかしながら、従来の共振周波数の測定方法では、掃引開始周波数から掃引終了周波数までの周波数の範囲の全域において入力電圧の周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加する必要があるため、共振周波数の測定時間が長くなる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、可動体の共振周波数を測定するための測定システムにおいて、可動体の共振周波数の測定時間を短縮することが可能な測定システムを提供することにある。また、本発明の課題は、可動体の共振周波数を測定するための測定方法において、可動体の共振周波数の測定時間を短縮することが可能となる測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の測定システムは、可動体と、支持機構を介して可動体を移動可能に支持する支持体と、駆動用コイルおよび駆動用磁石を有し支持体に対して可動体を移動させる磁気駆動機構とを備える測定対象製品の可動体の共振周波数を測定する測定システムであって、可動体の変位を検知するための変位検知機構と、変位検知機構から出力される出力電圧が入力される計測器とを備え、計測器は、可動体の共振周波数の測定時に、正弦波状に変動する入力電圧の周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加する電圧印加部と、入力電圧の位相と出力電圧の位相との差である位相差を算出する位相差算出部とを備え、可動体の共振周波数の測定時に、電圧印加部は、所定の掃引開始周波数の入力電圧を駆動用コイルに印加するとともに、掃引開始周波数の入力電圧が駆動用コイルに印加されたときに位相差算出部で算出される位相差が90°未満である場合には、位相差が90°に近づくように周波数が高くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加し、掃引開始周波数の入力電圧が駆動用コイルに印加されたときに位相差算出部で算出される位相差が90°を超えている場合には、位相差が90°に近づくように周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加し、位相差算出部で算出される位相差が90°を跨いだ時点で駆動用コイルへの入力電圧の印加を停止し、掃引開始周波数は、可動体の共振周波数の設計上の範囲の中心値であることを特徴とする。
【0008】
また、上記の課題を解決するため、本発明の測定方法は、可動体と、支持機構を介して可動体を移動可能に支持する支持体と、駆動用コイルおよび駆動用磁石を有し支持体に対して可動体を移動させる磁気駆動機構とを備える測定対象製品の可動体の共振周波数を測定する測定方法であって、可動体の変位を検知するための変位検知機構と、変位検知機構から出力される出力電圧が入力される計測器とを用いるとともに、計測器は、可動体の共振周波数の測定時に、正弦波状に変動する入力電圧の周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加する電圧印加部と、入力電圧の位相と出力電圧の位相との差である位相差を算出する位相差算出部とを備え、測定方法では、可動体の共振周波数の測定時に、電圧印加部は、所定の掃引開始周波数の入力電圧を駆動用コイルに印加するとともに、掃引開始周波数の入力電圧が駆動用コイルに印加されたときに位相差算出部で算出される位相差が90°未満である場合には、位相差が90°に近づくように周波数が高くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加し、掃引開始周波数の入力電圧が駆動用コイルに印加されたときに位相差算出部で算出される位相差が90°を超えている場合には、位相差が90°に近づくように周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加し、位相差算出部で算出される位相差が90°を跨いだ時点で駆動用コイルへの入力電圧の印加を停止し、掃引開始周波数は、可動体の共振周波数の設計上の範囲の中心値であることを特徴とする。
【0009】
本発明では、可動体の共振周波数の測定時に、電圧印加部は、所定の掃引開始周波数の入力電圧を駆動用コイルに印加するとともに、掃引開始周波数の入力電圧が駆動用コイルに印加されたときに位相差算出部で算出される位相差が90°未満である場合には、位相差が90°に近づくように周波数が高くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加し、掃引開始周波数の入力電圧が駆動用コイルに印加されたときに位相差算出部で算出される位相差が90°を超えている場合には、位相差が90°に近づくように周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加し、位相差算出部で算出される位相差が90°を跨いだ時点で駆動用コイルへの入力電圧の印加を停止している。
【0010】
すなわち、本発明では、電圧印加部は、従来のように、予め設定された掃引開始周波数から掃引終了周波数までの周波数の範囲の全域において入力電圧の周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加してはいない。また、位相差算出部で算出される位相差が90°となるときの入力電圧の周波数が可動体の共振周波数となることは、一般に知られているため、本発明では、予め設定された掃引開始周波数から掃引終了周波数までの周波数の範囲の全域において入力電圧の周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加しなくても、可動体の共振周波数を特定することが可能になる。したがって、本発明では、可動体の共振周波数の測定時間を短縮することが可能になる。
【0011】
また、本発明では、掃引開始周波数は、可動体の共振周波数の設計上の範囲の中心値であるため、可動体の実際の共振周波数により近い周波数を掃引開始周波数として設定することが可能になる。したがって、掃引開始周波数の入力電圧を駆動用コイルに印加した後、周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加したときに位相差算出部で算出される位相差が90°を跨ぐまでの時間を短縮することが可能になる。その結果、可動体の共振周波数の測定時間をより短縮することが可能になる。
【0012】
さらに、上記の課題を解決するため、本発明の測定システムは、可動体と、支持機構を介して可動体を移動可能に支持する支持体と、駆動用コイルおよび駆動用磁石を有し支持体に対して可動体を移動させる磁気駆動機構とを備える測定対象製品の可動体の共振周波数を測定する測定システムであって、可動体の変位を検知するための変位検知機構と、変位検知機構から出力される出力電圧が入力される計測器とを備え、計測器は、可動体の共振周波数の測定時に、正弦波状に変動する入力電圧の周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加する電圧印加部と、入力電圧の位相と出力電圧の位相との差である位相差を算出する位相差算出部とを備え、可動体の共振周波数の測定時に、電圧印加部は、可動体の共振周波数の設計上の範囲の上限よりも高い所定の掃引開始周波数の入力電圧を駆動用コイルに印加するとともに、周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加し、位相差算出部で算出される位相差が90°を跨いだ時点で駆動用コイルへの入力電圧の印加を停止することを特徴とする。
【0013】
また、上記の課題を解決するため、本発明の測定方法は、可動体と、支持機構を介して可動体を移動可能に支持する支持体と、駆動用コイルおよび駆動用磁石を有し支持体に対して可動体を移動させる磁気駆動機構とを備える測定対象製品の可動体の共振周波数を測定する測定方法であって、可動体の変位を検知するための変位検知機構と、変位検知機構から出力される出力電圧が入力される計測器とを用いるとともに、計測器は、可動体の共振周波数の測定時に、正弦波状に変動する入力電圧の周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加する電圧印加部と、入力電圧の位相と出力電圧の位相との差である位相差を算出する位相差算出部とを備え、測定方法では、可動体の共振周波数の測定時に、電圧印加部は、可動体の共振周波数の設計上の範囲の上限よりも高い所定の掃引開始周波数の入力電圧を駆動用コイルに印加するとともに、周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加し、位相差算出部で算出される位相差が90°を跨いだ時点で駆動用コイルへの入力電圧の印加を停止することを特徴とする。
【0014】
本発明では、可動体の共振周波数の測定時に、電圧印加部は、可動体の共振周波数の設計上の範囲の上限よりも高い所定の掃引開始周波数の入力電圧を駆動用コイルに印加するとともに、周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加し、位相差算出部で算出される位相差が90°を跨いだ時点で駆動用コイルへの入力電圧の印加を停止している。すなわち、本発明では、電圧印加部は、従来のように、予め設定された掃引開始周波数から掃引終了周波数までの周波数の範囲の全域において入力電圧の周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加してはいない。
【0015】
また、位相差算出部で算出される位相差が90°となるときの入力電圧の周波数が可動体の共振周波数となることは、一般に知られているため、本発明では、予め設定された掃引開始周波数から掃引終了周波数までの周波数の範囲の全域において入力電圧の周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加しなくても、可動体の共振周波数を特定することが可能になる。したがって、本発明では、可動体の共振周波数の測定時間を短縮することが可能になる。
【0016】
また、本発明では、掃引開始周波数が可動体の共振周波数の設計上の範囲の上限よりも高い周波数となっているため、掃引開始周波数が可動体の共振周波数の設計上の範囲の下限よりも低い周波数になっている場合と比較して、掃引開始周波数の入力電圧を駆動用コイルに印加した後、周波数を掃引しながら駆動用コイルに入力電圧を印加したときに位相差算出部で算出される位相差が90°を跨ぐまでの時間を短縮することが可能になる。その結果、本発明では、可動体の共振周波数の測定時間をより短縮することが可能になる。
【0017】
本発明において、変位検知機構は、支持体に対する可動体の位置を検知するために測定対象製品の内部に設置される位置検知機構であり、測定対象製品の一部分を構成していることが好ましい。このように構成すると、可動体の共振周波数の測定を行う工程において、可動体の変位を検知するための変位検知機構を別途設置する必要がなくなる。したがって、可動体の共振周波数の測定を行う工程の設備費を低減することが可能になる。
【0018】
本発明において、位置検知機構は、ホール素子を有するホールセンサであり、駆動用磁石の磁力を検知可能な位置で可動体および支持体のいずれか一方に取り付けられ、駆動用磁石は、可動体および支持体のいずれか他方に取り付けられていることが好ましい。このように構成すると、支持体に対して可動体を移動させるための駆動用磁石を用いて、支持体に対する可動体の位置を検知することが可能になる。したがって、測定対象製品の構成を簡素化することが可能になる。
【0019】
本発明において、計測器は、出力電圧の電圧値を検知する電圧検知部を備え、可動体の共振周波数の測定前に、電圧印加部は、支持体に対する可動体の移動範囲の限界まで可動体を移動させるための駆動電圧を駆動用コイルに印加し、電圧検知部は、支持体に対する可動体の移動範囲の一方の限界まで可動体が移動したときの出力電圧の電圧値である最大電圧値と、支持体に対する可動体の移動範囲の他方の限界まで可動体が移動したときの出力電圧の電圧値である最小電圧値とを検知し、可動体の共振周波数の測定時に、電圧印加部は、出力電圧の電圧値が最大電圧値と最小電圧値との平均値となるときの駆動電圧の電圧値を全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧を駆動用コイルに印加することが好ましい。
【0020】
このように構成すると、可動体の共振周波数の測定時の、出力電圧の振幅を大きくすることが可能になるため、入力電圧に対して線形性の高い出力電圧を得ることが可能になる。したがって、測定対象製品の一部分を構成している安価でかつ検知精度の低い位置検知機構の出力信号を用いて可動体の共振周波数を測定しても、ノイズの影響を低減することが可能になり、その結果、可動体の共振周波数の測定精度を高めることが可能になる。
【0021】
本発明において、可動体の共振周波数の測定時に、電圧印加部は、出力電圧の電圧値が最大電圧値と最小電圧値との平均値となるときの駆動電圧の電圧値を全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧であって、掃引開始周波数の入力電圧を駆動用コイルに印加し、電圧検知部は、このときの出力電圧の飽和の有無を確認し、出力電圧が飽和している場合、電圧印加部は、出力電圧が飽和しないように入力電圧の振幅を小さく設定することが好ましい。このように構成すると、可動体の共振周波数の測定時に、出力電圧が飽和しない程度の大きさまで出力電圧の振幅を大きくすることが可能になり、その結果、可動体の共振周波数を精度良く測定することが可能になる。
【0022】
本発明において、可動体の共振周波数の測定後に、電圧印加部は、出力電圧の電圧値が最大電圧値と最小電圧値との平均値となるときの駆動電圧の電圧値を全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧であって、位相差算出部で算出される位相差が90°になったときの周波数の入力電圧を駆動用コイルに印加し、電圧検知部は、このときの出力電圧の振幅の大きさを確認することが好ましい。このように構成すると、可動体の共振周波数の測定後に、可動体の共振周波数を精度良く測定できたのか否かを確認することが可能になる。
【0023】
すなわち、出力電圧の電圧値が最大電圧値と最小電圧値との平均値となるときの駆動電圧の電圧値を全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧であって位相差算出部で算出される位相差が90°になったときの周波数の入力電圧を駆動用コイルに印加したときの出力電圧の振幅の大きさが所定値を超えている場合や所定値未満となっている場合には、可動体の共振周波数の測定精度が低くなるため、可動体の共振周波数の測定後に出力電圧の振幅の大きさを確認することで、可動体の共振周波数の測定後に、可動体の共振周波数を精度良く測定できたのか否かを確認することが可能になる。
【0024】
本発明において、たとえば、測定対象製品は、像振れ補正機能を有する振れ補正機能付き光学ユニット、または、触覚で振動を認知させる触覚デバイスである。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明では、可動体の共振周波数を測定するための測定システムにおいて、可動体の共振周波数の測定時間を短縮することが可能になる。また、本発明では、可動体の共振周波数を測定するための測定方法において、可動体の共振周波数の測定時間を短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態にかかる測定システムの構成を説明するためのブロック図である。
図2図1に示す測定システムによって可動体の共振周波数が測定される測定対象製品の概略平面図である。
図3図2のE-E断面の概略断面図である。
図4図2に示す可動体の共振周波数の測定方法を説明するためのグラフである。
図5図2に示す可動体の共振周波数の測定方法のフローを説明するためのフローチャートである。
図6図2に示す可動体の共振周波数の測定方法を説明するためのグラフである。
図7】本発明の他の実施の形態にかかる可動体の共振周波数の測定方法のフローを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
(測定システムの構成および測定対象製品の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる測定システム1の構成を説明するためのブロック図である。図2は、図1に示す測定システム1によって可動体3の共振周波数が測定される測定対象製品2の概略平面図である。図3は、図2のE-E断面の概略断面図である。以下の説明では、図2図3に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0029】
本形態の測定システム1は、測定対象製品2の可動体3の共振周波数を測定するためのシステムである。本形態の測定対象製品2は、像振れ補正機能を有する振れ補正機能付き光学ユニットである。また、測定対象製品2は、携帯電話等の携帯機器、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等に搭載される小型かつ薄型のカメラであり、可動体3として、レンズおよび撮像素子を有するカメラモジュールを備えている。以下の説明では、測定対象製品2を「光学ユニット2」とし、可動体3を「カメラモジュール3」とする。
【0030】
光学ユニット2は、カメラモジュール3に加えて、板バネ6を介してカメラモジュール3を移動可能に支持する支持体4と、支持体4に対してカメラモジュール3を移動させる磁気駆動機構5とを備えている。本形態では、支持体4は、板バネ6を介してカメラモジュール3を揺動可能に支持しており、磁気駆動機構5は、手振れ等の振れを補正するために支持体4に対してカメラモジュール3を揺動させる。また、光学ユニット2は、支持体4に対するカメラモジュール3の位置を検知するための位置検知機構8、9を備えている。本形態の板バネ6は、支持機構である。
【0031】
カメラモジュール3が揺動していないときのカメラモジュール3の光軸Lの方向(光軸方向)は、上下方向と略一致している。撮像素子は、カメラモジュール3の下端側に取り付けられており、上側に配置される被写体が撮影される。カメラモジュール3は、たとえば、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となる直方体状に形成されている。また、カメラモジュール3は、たとえば、下方向へ突出する略円錐形状の支点部材11を備えている。なお、カメラモジュール3は、レンズを光軸方向へ移動させるレンズ駆動機構を備えていても良い。
【0032】
支持体4は、光学ユニット2の前後左右の4つの側面を構成する略四角筒状の筒部4aと、光学ユニット2の下面を構成する底部4bとを有する底付きの略四角筒状に形成されている。カメラモジュール3は、支持体4の中に収容されている。支点部材11の頂点は、底部4bの上面に接触しており、支点部材11の頂点は、支持体4に対するカメラモジュール3の揺動の支点となっている。板バネ6は、カメラモジュール3の下端側に固定される可動側固定部と、支持体4の下端側に固定される固定側固定部と、可動側固定部と固定側固定部とを繋ぐ複数本の腕部とを備えており、固定側固定部に対して腕部が撓むことで、カメラモジュール3の揺動動作が可能となっている。
【0033】
磁気駆動機構5は、前後方向を揺動の軸方向として光軸Lが左右方向へ傾くようにカメラモジュール3を揺動させてカメラモジュール3の振れを補正する揺動機構14と、左右方向を揺動の軸方向として光軸Lが前後方向へ傾くようにカメラモジュール3を揺動させてカメラモジュール3の振れを補正する揺動機構15とを備えている。光学ユニット2は、前後方向を揺動の軸方向とするカメラモジュール3の揺動範囲を規制するためのストッパ部材(図示省略)と、左右方向を揺動の軸方向とするカメラモジュール3の揺動範囲を規制するためのストッパ部材(図示省略)とを備えている。
【0034】
揺動機構14は、たとえば、2個のシート状コイル16と2個の駆動用磁石17とを備えている。揺動機構15は、たとえば、2個のシート状コイル18と2個の駆動用磁石19とを備えている。シート状コイル16は、微細な銅配線からなる駆動用コイル20がフレキシブルプリント基板(FPC)21上に形成されることで構成されるフレキシブルプリントコイル(FPコイル)である。同様に、シート状コイル18は、微細な銅配線からなる駆動用コイル22がフレキシブルプリント基板(FPC)23上に形成されることで構成されるFPコイルである。駆動用磁石17、19は、たとえば、略長方形の平板状に形成されている。
【0035】
シート状コイル16(すなわち、FPC21)は、支持体4の筒部4aの左右の側面部の内側面に取り付けられている。シート状コイル18(すなわち、FPC23)は、筒部4aの前後の側面部の内側面に取り付けられている。駆動用磁石17は、左右方向で駆動用コイル20と対向するように、カメラモジュール3の左右の側面に取り付けられている。駆動用磁石19は、前後方向で駆動用コイル22と対向するように、カメラモジュール3の前後の側面に取り付けられている。
【0036】
位置検知機構8、9は、ホール素子を有するホールセンサである。位置検知機構8は、FPC21に実装され、位置検知機構9は、FPC23に実装されている。すなわち、位置検知機構8、9は、FPC21、23を介して支持体4に取り付けられている。また、位置検知機構8、9は、光学ユニット2の内部に設置されている。位置検知機構8は、駆動用磁石17の磁力を検知可能な位置に配置され、位置検知機構9は、駆動用磁石19の磁力を検知可能な位置に配置されている。
【0037】
前後方向を揺動の軸方向としてカメラモジュール3が揺動すると、位置検知機構8の出力電圧Voが変動し、左右方向を揺動の軸方向としてカメラモジュール3が揺動すると、位置検知機構9の出力電圧Voが変動する。本形態では、前後方向を揺動の軸方向とするカメラモジュール3の揺動方向において支持体4に対するカメラモジュール3の相対位置が位置検知機構8の出力電圧Voに基づいて検知され、左右方向を揺動の軸方向とするカメラモジュール3の揺動方向において支持体4に対するカメラモジュール3の相対位置が位置検知機構9の出力電圧Voに基づいて検知される。
【0038】
測定システム1は、位置検知機構8、9から出力される出力電圧Voが入力される計測器26を備えている。また、本形態では、光学ユニット2の一部分を構成する位置検知機構8、9は、測定システム1の一部分も構成している。すなわち、本形態の測定システム1は、計測器26と、位置検知機構8、9とを備えている。本形態の位置検知機構8、9は、可動体であるカメラモジュール3の変位を検知するための変位検知機構である。
【0039】
計測器26は、各種の情報が表示される表示部27を備えている。表示部27は、たとえば、液晶ディスプレイである。また、計測器26は、カメラモジュール3の共振周波数の測定時に、正弦波状に変動する入力電圧Viの周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加する電圧印加部28を備えている。さらに、計測器26は、位置検知機構8、9の出力電圧Voの電圧値を検知する電圧検知部29と、入力電圧Viの位相と出力電圧Voの位相との差である位相差を算出する位相差算出部30と、入力電圧Viの振幅と出力電圧Voの振幅との比であるゲインを算出するゲイン算出部31とを備えている。
【0040】
(カメラモジュールの共振周波数の測定方法)
図4は、図2に示すカメラモジュール3の共振周波数の測定方法を説明するためのグラフである。図5は、図2に示すカメラモジュール3の共振周波数の測定方法のフローを説明するためのフローチャートである。図6は、図2に示すカメラモジュール3の共振周波数の測定方法を説明するためのグラフである。
【0041】
共振周波数の入力電圧Viが駆動用コイル20または駆動用コイル22に印加されると、位相差算出部30で算出される位相差が90°となり(具体的には、入力電圧Viの位相に対する出力電圧Voの位相の遅れが90°となり)、ゲイン算出部31で算出されるゲインが最大値となることが一般的に知られている(図4参照)。本形態では、位置検知機構8と駆動用コイル20とを用いて、以下のように、前後方向を揺動の軸方向としてカメラモジュール3が揺動するときのカメラモジュール3の共振周波数が測定される。
【0042】
なお、左右方向を揺動の軸方向としてカメラモジュール3が揺動するときのカメラモジュール3の共振周波数は、位置検知機構8および駆動用コイル20に代えて位置検知機構9および駆動用コイル22を用いることで、前後方向を揺動の軸方向としてカメラモジュール3が揺動するときのカメラモジュール3の共振周波数と同様に測定される。そのため、以下では、左右方向を揺動の軸方向としてカメラモジュール3が揺動するときのカメラモジュール3の共振周波数の測定方法の説明は省略する。
【0043】
前後方向を揺動の軸方向としてカメラモジュール3が揺動するときのカメラモジュール3の共振周波数を測定する際には、まず、カメラモジュール3の共振周波数の測定前に、電圧印加部28は、支持体4に対するカメラモジュール3の移動範囲の限界(すなわち、支持体4に対するカメラモジュール3の揺動範囲の限界)までカメラモジュール3を移動させるための駆動電圧を駆動用コイル20に印加する(ステップS1)。
【0044】
具体的には、電圧印加部28は、ステップS1において、前後方向を揺動の軸方向とするカメラモジュール3の揺動範囲を規制するためのストッパ部材にカメラモジュール3が接触するまでカメラモジュール3を移動させるための駆動電圧を駆動用コイル20に印加する。また、電圧印加部28は、ステップS1において、図6(A)に示すように、三角波状に変動する駆動電圧を駆動用コイル20に印加する。
【0045】
また、電圧検知部29は、支持体4に対するカメラモジュール3の揺動範囲の一方の限界までカメラモジュール3が移動したときの出力電圧Vo(具体的には、位置検知機構8の出力電圧Vo)の電圧値である最大電圧値Vmax(図6(B)参照)と、支持体4に対するカメラモジュール3の揺動範囲の他方の限界までカメラモジュール3が移動したときの出力電圧Voの電圧値である最小電圧値Vmin(図6(B)参照)とを検知する(ステップS2)。
【0046】
その後、カメラモジュール3の共振周波数の測定が開始される。カメラモジュール3の共振周波数の測定時には、電圧印加部28は、出力電圧Voの電圧値が最大電圧値Vmaxと最小電圧値Vminとの平均値((Vmax+Vmin)/2)となるときの駆動電圧の電圧値Va(図6(B)参照)を全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧Vi(図6(C)参照)であって、所定の掃引開始周波数の入力電圧Viを駆動用コイル20に印加する(ステップS3)。また、電圧検知部29は、このときの出力電圧Voの飽和の有無を確認する(ステップS4)。
【0047】
本形態では、ステップS3において駆動用コイル20に印加される入力電圧Viの掃引開始周波数は、カメラモジュール3の共振周波数の設計上の範囲の中心値である。カメラモジュール3の共振周波数の設計上の範囲は、板バネ6のバネ定数およびカメラモジュール3の重量等に基づいて、設計計算あるいはシミュレーションによって予め算出されている。また、ステップS3で駆動用コイル20に印加される入力電圧Viの振幅の大きさは、設計上、出力電圧Voが飽和しない大きさであって、かつ、出力電圧Voの大きさが可能な限り大きくなるように設定されている。
【0048】
なお、たとえば、駆動用コイル20に電圧が印加されていない状態でもカメラモジュール3が傾いているいわゆる初期チルトがある場合や、位置検知機構8の出力電圧Voがオフセットしている場合等には、出力電圧Voの電圧値が最大電圧値Vmaxと最小電圧値Vminとの平均値((Vmax+Vmin)/2)となるときの駆動電圧の電圧値Vaは0ボルトにならない。
【0049】
ステップS4において、出力電圧Voが飽和していない場合には、位相差算出部30は、ステップS3において、電圧値Vaを全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧Viであって掃引開始周波数の入力電圧Viが駆動用コイル20に印加されたときに位相差算出部30で算出される位相差が90°であるのか否かを判断する(ステップS5)。ステップS5において、位相差が90°でない場合には、位相差算出部30は、ステップS3において、電圧値Vaを全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧Viであって掃引開始周波数の入力電圧Viが駆動用コイル20に印加されたときに位相差算出部30で算出される位相差が90°未満であるのか否かを判断する(ステップS6)。
【0050】
ステップS6において、位相差が90°未満である場合には、電圧印加部28は、位相差が90°に近づくように周波数が高くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイル20に入力電圧Viを印加し、位相差算出部30で算出される位相差が90°を跨いだ時点で駆動用コイル20への入力電圧Viの印加を停止する(ステップS7、S8、S9)。たとえば、ステップS6において、位相差が90°未満のα°(図4参照)である場合、ステップS7において、電圧印加部28は、位相差が90°に近づくように周波数が高くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイル20に入力電圧Viを印加する。
【0051】
一方、ステップS6において、位相差が90°を超えている場合には、電圧印加部28は、位相差が90°に近づくように周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイル20にVi入力電圧を印加し、位相差算出部30で算出される位相差が90°を跨いだ時点で駆動用コイル20への入力電圧Viの印加を停止する(ステップS10、S11、S9)。たとえば、ステップS6において、位相差が90°を超えるβ°(図4参照)である場合、ステップS10において、電圧印加部28は、位相差が90°に近づくように周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイル20に入力電圧Viを印加する。
【0052】
その後、電圧印加部28は、位相差算出部30で算出される位相差が90°となったときの周波数を共振周波数と特定する(ステップS12)。ステップS12で共振周波数が特定されると、カメラモジュール3の共振周波数の測定が終了する。また、ステップS4において、出力電圧Voが飽和している場合には、電圧印加部28が、出力電圧Voが飽和しないように入力電圧Viの振幅を小さく設定してから(ステップS13)、ステップS3に戻る。また、ステップS5において、位相差が90°である場合には、ステップS12に進む。
【0053】
また、カメラモジュール3の共振周波数の測定後、電圧印加部28は、電圧値Vaを全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧Viであって位相差算出部30で算出される位相差が90°になったときの周波数(すなわち、共振周波数)の入力電圧Viを駆動用コイル20に印加する(ステップS14)。また、電圧検知部29は、このときの出力電圧Voの振幅の大きさを確認する(ステップS15)。
【0054】
その後、電圧検知部29は、ステップS15で確認された出力電圧Voの振幅の大きさが所定の規格範囲に収まっているのか否かを判断する(ステップS16)。ステップS16において、出力電圧Voの振幅の大きさが所定の規格範囲に収まっている場合には、そのまま、カメラモジュール3の共振周波数の測定が終了する。たとえば、ステップS15で確認された出力電圧Voの振幅の大きさが、最大電圧値Vmaxと最小電圧値Vminとの差の60%~90%の範囲に収まっている場合には、そのまま、カメラモジュール3の共振周波数の測定が終了する。一方、ステップS16において、出力電圧Voの振幅の大きさが所定の規格範囲から外れている場合には、電圧印加部28が入力電圧Viの振幅を再設定してから(ステップS17)、ステップS3に戻る。
【0055】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、電圧印加部28は、掃引開始周波数の入力電圧Viが駆動用コイル20、22に印加されたときに位相差算出部30で算出される位相差が90°未満である場合に、位相差が90°に近づくように周波数が高くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加し、掃引開始周波数の入力電圧Viが駆動用コイル20、22に印加されたときに位相差算出部30で算出される位相差が90°を超えている場合に、位相差が90°に近づくように周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加し、位相差算出部30で算出される位相差が90°を跨いだ時点で駆動用コイル20、22への入力電圧Viの印加を停止している。
【0056】
すなわち、本形態では、電圧印加部28は、従来のように、予め設定された掃引開始周波数から掃引終了周波数までの周波数の範囲の全域において周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加してはいない。また、位相差算出部30で算出される位相差が90°となるときの入力電圧Viの周波数がカメラモジュール3の共振周波数となるため、本形態では、予め設定された掃引開始周波数から掃引終了周波数までの周波数の範囲の全域において周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加しなくても、カメラモジュール3の共振周波数を特定することが可能になる。したがって、本形態では、カメラモジュール3の共振周波数の測定時間を短縮することが可能になる。
【0057】
また、本形態では、掃引開始周波数は、カメラモジュール3の共振周波数の設計上の範囲の中心値となっているため、カメラモジュール3の実際の共振周波数により近い周波数を掃引開始周波数として設定することが可能になる。したがって、本形態では、掃引開始周波数の入力電圧Viを駆動用コイル20、22に印加した後、周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加したときに位相差算出部30で算出される位相差が90°を跨ぐまでの時間を短縮することが可能になる。その結果、本形態では、カメラモジュール3の共振周波数の測定時間をより短縮することが可能になる。
【0058】
本形態では、光学ユニット2の一部分を構成する位置検知機構8、9を用いて、カメラモジュール3の共振周波数の測定を行っている。そのため、本形態では、カメラモジュール3の共振周波数の測定を行う工程において、カメラモジュール3の変位を検知するための変位検知機構を別途設置する必要がない。したがって、本形態では、カメラモジュール3の共振周波数の測定を行う工程の設備費を低減することが可能になる。
【0059】
本形態では、カメラモジュール3の共振周波数の測定時に、出力電圧Voの電圧値が最大電圧値Vmaxと最小電圧値Vminとの平均値となるときの駆動電圧の電圧値Vaを全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧Viを駆動用コイル20、22に印加している。そのため、本形態では、カメラモジュール3の共振周波数の測定時の、出力電圧Voの振幅を大きくすることが可能になり、入力電圧Viに対して線形性の高い出力電圧Voを得ることが可能になる。したがって、本形態では、光学ユニット2の一部分を構成している安価でかつ検知精度の低い位置検知機構8、9の出力信号Voを用いてカメラモジュール3の共振周波数を測定しても、ノイズの影響を低減することが可能になり、その結果、カメラモジュール3の共振周波数の測定精度を高めることが可能になる。
【0060】
本形態では、カメラモジュール3の共振周波数の測定時に、出力電圧Voの電圧値が最大電圧値Vmaxと最小電圧値Vminとの平均値となるときの駆動電圧の電圧値Vaを全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧Viであって掃引開始周波数の入力電圧Viを駆動用コイル20、22に印加したときの出力電圧Voの飽和の有無を確認し、出力電圧Voが飽和している場合、出力電圧Voが飽和しないように入力電圧Viの振幅を小さく設定している。そのため、本形態では、カメラモジュール3の共振周波数の測定時に、出力電圧Voが飽和しない程度の大きさまで出力電圧Voの振幅を大きくすることが可能になり、その結果、カメラモジュール3の共振周波数を精度良く測定することが可能になる。
【0061】
本形態では、カメラモジュール3の共振周波数の測定後に、出力電圧Voの電圧値が最大電圧値Vmaxと最小電圧値Vminとの平均値となるときの駆動電圧の電圧値Vaを全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧Viであって位相差算出部30で算出される位相差が90°になったときの周波数の入力電圧Viを駆動用コイル20、22に印加したときの出力電圧Voの振幅の大きさを確認している。そのため、本形態では、カメラモジュール3の共振周波数の測定後に、カメラモジュール3の共振周波数を精度良く測定できたのか否かを確認することが可能になる。
【0062】
すなわち、電圧値Vaを全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧Viであって位相差算出部30で算出される位相差が90°になったときの周波数の入力電圧Viを駆動用コイル20、22に印加したときの出力電圧Voの振幅の大きさが所定値を超えている場合や所定値未満となっている場合には、カメラモジュール3の共振周波数の測定精度が低くなるため、カメラモジュール3の共振周波数の測定後に出力電圧Voの振幅の大きさを確認することで、カメラモジュール3の共振周波数の測定後に、カメラモジュール3の共振周波数を精度良く測定できたのか否かを確認することが可能になる。
【0063】
(カメラモジュールの共振周波数の測定方法の変形例)
図7は、本発明の他の実施の形態にかかるカメラモジュール3の共振周波数の測定方法のフローを説明するためのフローチャートである。
【0064】
上述した形態において、ステップS3で駆動用コイル20、22に印加される入力電圧Viの掃引開始周波数は、カメラモジュール3の共振周波数の設計上の範囲の中心値以外の周波数であっても良い。たとえば、ステップS3で駆動用コイル20、22に印加される入力電圧Viの掃引開始周波数は、カメラモジュール3の共振周波数の設計上の範囲の上限よりも高い所定の周波数であっても良い。
【0065】
具体的には、ステップS3で駆動用コイル20、22に印加される入力電圧Viの掃引開始周波数は、カメラモジュール3の共振周波数の設計上の範囲の上限よりも明らかに高い(大幅に高い)所定の周波数であっても良い。この場合には、図7に示すように、ステップS3の後、電圧印加部28は、周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加し、位相差算出部30で算出される位相差が90°を跨いだ時点で駆動用コイル20、22への入力電圧Viの印加を停止する(ステップS21、S8、S9)。
【0066】
この変形例では、カメラモジュール3の共振周波数の測定時に、電圧印加部28は、カメラモジュール3の共振周波数の設計上の範囲の上限よりも高い所定の掃引開始周波数の入力電圧Viを駆動用コイル20、22に印加するとともに、周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧を印加し、位相差算出部30で算出される位相差が90°を跨いだ時点で駆動用コイル20、22への入力電圧Viの印加を停止しており、従来のように、予め設定された掃引開始周波数から掃引終了周波数までの周波数の範囲の全域において周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加してはいない。
【0067】
また、位相差算出部30で算出される位相差が90°となるときの入力電圧Viの周波数がカメラモジュール3の共振周波数となるため、この変形例では、予め設定された掃引開始周波数から掃引終了周波数までの周波数の範囲の全域において周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加しなくても、カメラモジュール3の共振周波数を特定することが可能になる。したがって、この変形例では、カメラモジュール3の共振周波数の測定時間を短縮することが可能になる。
【0068】
また、この変形例では、掃引開始周波数がカメラモジュール3の共振周波数の設計上の範囲の上限よりも高い周波数となっているため、掃引開始周波数がカメラモジュール3の共振周波数の設計上の範囲の下限よりも低い周波数になっている場合と比較して、掃引開始周波数の入力電圧Viを駆動用コイル20、22に印加した後、周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加したときに位相差算出部30で算出される位相差が90°を跨ぐまでの時間を短縮することが可能になる。したがって、カメラモジュール3の共振周波数の測定時間をより短縮することが可能になる。
【0069】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0070】
上述した形態において、駆動用磁石17、19が支持体4に取り付けられ、位置検知機構8、9およびシート状コイル16、18がカメラモジュール3に取り付けられていても良い。また、上述した形態において、駆動用コイル20、22は、たとえば、略長方形の枠状に巻回されて形成された空芯コイルであっても良い。
【0071】
上述した形態において、位置検知機構8、9は、たとえば、発光素子と受光素子とを有する反射型の光学式センサであっても良い。この場合には、たとえば、位置検知機構8、9は、カメラモジュール3の底面に取り付けられており、位置検知機構8、9の発光素子は、支持体4の底部4bの上面に取り付けられたミラーに向かって光を射出する。ただし、上述した形態のように、位置検知機構8、9がホールセンサである場合には、支持体4に対してカメラモジュール3を移動させるための駆動用磁石17、19を用いて、支持体4に対するカメラモジュール3の位置を検知することが可能になるため、光学ユニット2の構成を簡素化することが可能になる。
【0072】
上述した形態において、測定システム1は、位置検知機構8、9とは別に、カメラモジュール3の変位を検知するための変位検知機構を備えていても良い。この場合には、変位検知機構は、たとえば、光学ユニット2の外部に配置される光学式の変位計等である。また、上述した形態において、計測器26は、ゲイン算出部31を備えていなくても良い。さらに、上述した形態において、測定対象製品2は、振れ補正機能付き光学ユニット以外の製品であっても良い。たとえば、測定対象製品2は、触覚で振動を認識させる触覚デバイスであっても良い。この触覚デバイスは、たとえば、特開2015-230602号公報や特開2019-46009号公報等に開示されている。
【0073】
なお、上述のステップS3において、電圧値Vaを全振幅の中心とする正弦波状の入力電圧Viであって掃引開始周波数の入力電圧Viが駆動用コイル20、22に印加されたときに位相差算出部30で算出される位相差が90°の近辺である場合(たとえば、80°~100°である場合)には、周波数が高くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加するとともに、周波数が低くなる方向に周波数を掃引しながら駆動用コイル20、22に入力電圧Viを印加して、位相差算出部30で算出される位相差が90°を跨ぐときの入力電圧Viの周波数(すなわち、共振周波数)を測定しても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 測定システム
2 光学ユニット(振れ補正機能付き光学ユニット、測定対象製品)
3 カメラモジュール(可動体)
4 支持体
5 磁気駆動機構
6 板バネ(支持機構)
8、9 位置検知機構(変位検知機構)
17、19 駆動用磁石
20、22 駆動用コイル
26 計測器
28 電圧印加部
29 電圧検知部
30 位相差算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7