(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】車両用収納装置
(51)【国際特許分類】
B60R 7/04 20060101AFI20230927BHJP
E05F 5/00 20170101ALI20230927BHJP
【FI】
B60R7/04 C
E05F5/00 A
(21)【出願番号】P 2019140095
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】508309887
【氏名又は名称】森六テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】藤原 祐次
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-147223(JP,A)
【文献】特開2002-178818(JP,A)
【文献】特開2007-308047(JP,A)
【文献】特開2002-331875(JP,A)
【文献】特開2003-227268(JP,A)
【文献】特開2018-034630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/00-7/14
E05F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面が開口し内部に収納物を収納可能な収納部本体と、
この収納部本体に軸部材を介してスイング可能に支持され前記開口の少なくとも一部を開閉可能な蓋体と、
この蓋体を開方向に付勢している付勢部材と、
前記蓋
体に支持され、前記付勢部材の付勢力を減衰可能な第1ダンパ及び第2ダンパと、
前記収納部本
体に設けられ、前記第1ダンパに
前記蓋体の全閉位置から全開位置まで前記付勢部材の付勢力を伝達可能な第1伝達部材と、
前記収納部本
体に設けられ、前記蓋体の所定の開度位置から全開位置まで前記付勢部材の付勢力を伝達可能な第2伝達部材と、を有し、
前記付勢部材の付勢力は、前記全閉位置から前記所定の開度位置までは前記蓋体が開方向にスイング可能であると共に、前記所定の開度位置において前記蓋体のスイングが止まるように設定され、
前記第1伝達部材は、前記蓋体の全閉位置から全開位置までに対応して前記第1ダンパに噛み合う第1伝達部材ギヤ部を含み、
前記第2伝達部材は、前記蓋体の所定の開度位置から全開位置までに対応して前記第2ダンパに噛み合う第2伝達部材ギヤ部と、前記蓋体の全閉位置から所定の開度位置までに対応して前記第2ダンパに噛み合わず前記第2ダンパに減衰力を発生させない非伝達部と、を含むことを特徴とする車両用収納装置。
【請求項2】
一面が開口し内部に収納物を収納可能な収納部本体と、
この収納部本体に軸部材を介してスイング可能に支持され前記開口の少なくとも一部を
開閉可能な蓋体と、
この蓋体を開方向に付勢している付勢部材と、
前記収納部本体、又は、前記蓋体のどちらか一方に支持され、前記付勢部材の付勢力を
減衰可能な第1ダンパ及び第2ダンパと、
前記収納部本体、又は、前記蓋体のうち、前記第1ダンパが支持されたのとは他方に設
けられ、前記第1ダンパに前記蓋体の全閉位置から全開位置まで前記付勢部材の付勢力を
伝達可能な第1伝達部材と、
前記収納部本体、又は、前記蓋体のうち、前記第2ダンパが支持されたのとは他方に設
けられ、前記蓋体の所定の開度位置から全開位置まで前記付勢部材の付勢力を伝達可能な
第2伝達部材と、を有し、
前記付勢部材の付勢力は、前記全閉位置から前記所定の開度位置までは前記蓋体が開方
向にスイング可能であると共に、前記所定の開度位置において前記蓋体のスイングが止ま
るように設定され、
前記第1伝達部材は、前記蓋体の全閉位置から全開位置までに対応して前記第1ダンパ
に噛み合う第1伝達部材ギヤ部を含み、
前記第2伝達部材は、前記蓋体の所定の開度位置から全開位置までに対応して前記第2
ダンパに噛み合う第2伝達部材ギヤ部と、前記蓋体の全閉位置から所定の開度位置までに
対応して前記第2ダンパに噛み合わず前記第2ダンパに減衰力を発生させない非伝達部と
、を含み、
前記第1伝達部材、及び、前記第2伝達部材は、前記収納部本体に一体的に形成され、
前記第1ダンパ、及び、前記第2ダンパは、前記蓋体に支持され、
前記蓋体は、前記軸部材に支持されている一対の蓋体ヒンジ部を有し、
前記第1ダンパ、前記第2ダンパ、前記第1伝達部材、及び、前記第2伝達部材は、前記一対の蓋体ヒンジ部によって、側面が覆われていることを特徴とす
る車両用収納装置。
【請求項3】
一面が開口し内部に収納物を収納可能な収納部本体と、
この収納部本体に軸部材を介してスイング可能に支持され前記開口の少なくとも一部を
開閉可能な蓋体と、
この蓋体を開方向に付勢している付勢部材と、
前記収納部本体、又は、前記蓋体のどちらか一方に支持され、前記付勢部材の付勢力を
減衰可能な第1ダンパ及び第2ダンパと、
前記収納部本体、又は、前記蓋体のうち、前記第1ダンパが支持されたのとは他方に設
けられ、前記第1ダンパに前記蓋体の全閉位置から全開位置まで前記付勢部材の付勢力を
伝達可能な第1伝達部材と、
前記収納部本体、又は、前記蓋体のうち、前記第2ダンパが支持されたのとは他方に設
けられ、前記蓋体の所定の開度位置から全開位置まで前記付勢部材の付勢力を伝達可能な
第2伝達部材と、を有し、
前記付勢部材の付勢力は、前記全閉位置から前記所定の開度位置までは前記蓋体が開方
向にスイング可能であると共に、前記所定の開度位置において前記蓋体のスイングが止ま
るように設定され、
前記第1伝達部材は、前記蓋体の全閉位置から全開位置までに対応して前記第1ダンパ
に噛み合う第1伝達部材ギヤ部を含み、
前記第2伝達部材は、前記蓋体の所定の開度位置から全開位置までに対応して前記第2
ダンパに噛み合う第2伝達部材ギヤ部と、前記蓋体の全閉位置から所定の開度位置までに
対応して前記第2ダンパに噛み合わず前記第2ダンパに減衰力を発生させない非伝達部と
、を含み、
前記第1伝達部材と前記第2伝達部材とが前記軸部材の両端に1つずつ配置されている
ことを特徴とする車両用収納装置。
【請求項4】
前記第1ダンパと前記第2ダンパとは、対向して設けられている、請求項1~3のいず
れか1項に記載の車両用収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員が荷物を収納することができる車両用収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の車両には、コンソールボックスと称する乗員が荷物を収納可能な車両用収納装置が搭載されている。車両用収納装置に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、車両用収納装置は、上面が開口し内部に収納物を収納可能な収納部本体と、収納部本体にスイング可能に支持され開口を開閉可能な蓋体と、蓋体を開方向に付勢している付勢部材と、収納部本体に固定されているロータリーダンパと、蓋体と共に回転可能に設けられ蓋体の所定の開度位置から全開位置までロータリーダンパに噛み合う扇形ギヤと、を備えている。
【0004】
閉じ状態にある蓋体のロックを解除すると、付勢部材の付勢力によって蓋体は、開方向にスイングする。スイングした蓋体が所定の開度に達すると、扇形ギヤがロータリーダンパに噛み合う。ロータリーダンパの減衰力によって蓋体のスイングが止まる。ロータリーダンパの減衰力が発生している領域において、蓋体のがたつきを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献に示されるような車両用収納装置によれば、閉じ状態からロックを解除すると、付勢部材の付勢力によって蓋体が勢いよくスイングする。扇形ギヤがダンパに勢いよく接触することにより、接触音が生じたり、反動によって蓋体が閉じ方向にスイングすることがある。
【0007】
本発明は、商品性の高い車両用収納装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、一面が開口し内部に収納物を収納可能な収納部本体と、
この収納部本体に軸部材を介してスイング可能に支持され前記開口の少なくとも一部を開閉可能な蓋体と、
この蓋体を開方向に付勢している付勢部材と、
前記収納部本体、又は、前記蓋体のどちらか一方に支持され、前記付勢部材の付勢力を減衰可能な第1ダンパ及び第2ダンパと、
前記収納部本体、又は、前記蓋体のうち、前記第1ダンパが支持されたのとは他方に設けられ、前記第1ダンパに蓋体の全閉位置から全開位置まで前記付勢部材の付勢力を伝達可能な第1伝達部材と、
前記収納部本体、又は、前記蓋体のうち、前記第2ダンパが支持されたのとは他方に設けられ、前記蓋体の所定の開度位置から全開位置まで前記付勢部材の付勢力を伝達可能な第2伝達部材と、
前記付勢部材の付勢力は、前記全閉位置から前記所定の開度位置までは前記蓋体が開方向にスイング可能であると共に、前記所定の開度位置において前記蓋体のスイングが止まるように設定されていることを特徴とする車両用収納装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、第1伝達部材に接続された第1ダンパによって付勢部材の付勢力を減衰可能であると共に、第2伝達部材に第2ダンパが接続された際に付勢部材の付勢力をさらに減衰することが可能である。加えて、付勢部材の付勢力は、全閉位置から所定の開度位置までは蓋体が開方向にスイング可能であると共に、所定の開度位置において蓋体のスイングが止まるように設定されている。このため、蓋体のスイング時において、全閉位置から全開位置まで、常に第1ダンパによって減衰力を発生させることが可能である。全閉位置から所定の開度位置まで、蓋体が付勢部材の付勢力によってスイングすると、第2伝達部材に第2ダンパが接続される。これにより、第2ダンパによっても減衰力を発生させることが可能となり、蓋体の付勢力によるスイングは止められる。所定の開度位置から全開位置までは、乗員の手によって蓋体をスイングさせることが可能である。所定の開度位置と全開位置との間で乗員が蓋体から手を離すと、蓋体は手を離した位置に保持される。第2伝達部材に第2ダンパが接続される際、第1ダンパが発生させている減衰力によって、第2伝達部材と第2ダンパとが勢いよく接触することを抑制することができる。常に減衰力を発生させることが可能な第1ダンパと、蓋体が所定の開度位置から全開位置に達するまでの間のみ減衰力を発生させることが可能な第2ダンパとの2種類のダンパを用いることにより、静粛性に優れた商品性の高い車両用収納装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例による車両用収納装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示された車両用収納装置の要部を示す斜視図である。
【
図7】
図7Aは、蓋体が所定の開度位置に位置する際の車両用収納装置について説明する図、
図7Bは、
図7Aの7B部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、左右とは車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
<実施例>
【0012】
図1を参照する。車両用収納装置10は、例えば、車両用コンソールボックスに適用される。このような車両用収納装置10は、左右の前席の間であって車室内の前部中央に配置される。
【0013】
車両用収納装置10は、車室の前端から後方に延びる一対の側壁部11、11と、これらの側壁部11、11の後端を繋いでいる後壁部12と、これらの側壁部11、11及び後壁部12によって囲われ乗員の荷物を収納可能な収納部20と、この収納部20の蓋体23を閉じた状態に保つためのロック機構30と、を有する。
【0014】
図2及び
図3を参照する。収納部20は、上面が開口し内部に収納物を収納可能な収納部本体21と、この収納部本体21の後部を左右方向に貫通している軸部材22と、この軸部材22を介して収納部本体21にスイング可能に支持されている蓋体23と、軸部材22上に設けられ蓋体23を開方向に付勢している2つのコイルばね24、24(付勢部材24、24)と、蓋体23の右後部に支持されコイルばね24、24の付勢力を減衰可能な第1ダンパ25と、蓋体23の左後部に支持されコイルばね24、24の付勢力を減衰可能な第2ダンパ26と、収納部本体21の右後部に一体的に形成され第1ダンパ25にコイルばね24、24の付勢力を伝達可能な第1伝達部材27と、収納部本体21の左後部に一体的に形成され第2ダンパ26にコイルばね24、24の付勢力を伝達可能な第2伝達部材28と、を有している。
【0015】
図4を参照する。ロック機構30は、側壁部11に支持され乗員がロックを解除する際に押すボタン31と、このボタン31に一体的に形成されボタン31から後方に延びているロッド部32と、このロッド部32の後方に設けられている棒状のロック軸部33と、このロック軸部33にスイング可能に支持され上端が蓋体23に係止されているスイング板部34と、ロック軸部33に固定されスイング板部34をロッド部32に向かって付勢しているロックばね部35と、を有している。
【0016】
収納部本体21には、例えば、樹脂成形品が用いられる。
図3を併せて参照する。収納部本体21は、底に位置する本体底面部21aと、この本体底面部21aの左右の側部からそれぞれ立ち上げられている本体側壁部21b、21bと、本体底面部21aから立ち上げられていると共に本体側壁部21b、21bの前端を繋いでいる本体前壁部21cと、本体底面部21aから立ち上げられていると共に本体側壁部21b、21bの後端を繋いでいる本体後壁部21dと、を有する。
【0017】
軸部材22は、第1伝達部材27及び第2伝達部材28を介して収納部本体21に支持された丸棒状の部材である。軸部材22は、第1伝達部材27、第2伝達部材28、及び、蓋体23を貫通している。
【0018】
図2を参照する。蓋体23は、軸部材22によってスイング可能に支持されている左右の蓋体ヒンジ部23a、23aと、これらの蓋体ヒンジ部23a、23aの前部に一体的に形成され収納部本体21の開口を覆うことが可能な蓋体本体部23bと、を有している。
【0019】
図4を参照する。さらに蓋体23は、スイング板部34に係止可能であって爪状に形成された蓋体爪部23cを有している。蓋体爪部23cは、蓋体本体部23bに一体的に形成されている。
【0020】
図2を参照する。コイルばね24、24は、1部材によって構成することも可能である。また、コイルばね24、24は、3部材以上に分割されたものによって構成することも可能である。さらに、コイルばね以外の部材であっても、蓋体23を開方向に付勢することができるものであれば、付勢部材として用いることができる。
【0021】
図3及び
図5を参照する。第1ダンパ25は、ロータリーダンパによって構成されている。第1ダンパ25は、右の蓋体ヒンジ部23aに固定されていると共に内部にオイルが充填されている第1ダンパ本体部25aと、この第1ダンパ本体部25aに回転可能に支持されたギヤであって第1伝達部材27に噛み合っている第1ダンパギヤ部25bと、を有している。
【0022】
第1ダンパギヤ部25bは、左右の蓋体ヒンジ部23a、23aの間に位置している。第1ダンパ25は、蓋体23が全閉位置から全開位置まで回転するのに合わせて軸部材22を中心に回転する。
図5に示されるように、蓋体23が全開位置までスイングすると、第1ダンパ25は、二点鎖線で示される位置まで回転する。
【0023】
なお、
図5に示す状態において、蓋体23は、全閉位置に位置している。
【0024】
図3及び
図6を参照する。第2ダンパ26は、ロータリーダンパによって構成されている。第2ダンパ26は、左の蓋体ヒンジ部23aに固定されていると共に内部にオイルが充填されている第2ダンパ本体部26aと、この第2ダンパ本体部26aに回転可能に支持されたギヤであって第2伝達部材28に噛み合っている第2ダンパギヤ部26bと、を有している。
【0025】
第2ダンパギヤ部26bは、左右の蓋体ヒンジ部23a、23aの間に位置している。第2ダンパ26は、蓋体23が全閉位置から全開位置まで回転するのに合わせて軸部材22を中心に回転する。
図6に示されるように、蓋体23が全開位置までスイングすると、第2ダンパ26は、二点鎖線で示される位置まで回転する。
【0026】
なお、
図6に示す状態において、蓋体23は、全閉位置に位置している。
【0027】
図5を参照する。第1伝達部材27は、本体後壁部21dの後方において、収納部本体21に一体的に形成されている。第1伝達部材27は、左右の蓋体ヒンジ部23aの間に位置している。つまり、第1ダンパ25及び第1伝達部材27は、左右の蓋体ヒンジ部23aによって、側面が覆われている。
【0028】
第1伝達部材27には、第1ダンパギヤ部25bに噛み合い可能に形成されたギヤ状の第1伝達部材ギヤ部27aが形成されている。第1伝達部材27は、第1リブ27bを介して本体後壁部21dに接続されている。
【0029】
第1伝達部材ギヤ部27aは、第1ダンパ25の軌道に沿って形成されている。第1伝達部材ギヤ部27aは、蓋体23が全閉位置に位置する状態から全開位置に位置する状態に至るまで第1ダンパギヤ部25bに噛み合うよう、第1ダンパ25の移動する領域に対応させて形成されている。
【0030】
図6を参照する。第2伝達部材28は、本体後壁部21dの後方において、収納部本体21に一体的に形成されている。第2伝達部材28は、左右の蓋体ヒンジ部23aの間に位置している。つまり、第2ダンパ26及び第2伝達部材28は、左右の蓋体ヒンジ部23aによって、側面が覆われている。
【0031】
第2伝達部材28には、第2ダンパギヤ部26bに噛み合い可能に形成されたギヤ状の第2伝達部材ギヤ部28aが形成されている。第2伝達部材28は、第2リブ28bを介して本体後壁部21dに接続されている。
【0032】
第2伝達部材ギヤ部28aは、第2ダンパ26の軌道に沿って形成されている。第2伝達部材ギヤ部28aは、蓋体23が所定の開度位置に位置する状態から全開位置に位置する状態に至るまで第2ダンパギヤ部26bに噛み合うよう、第2ダンパ26の移動する領域に対応させて形成されている。蓋体23の所定の開度位置については、後述する。
【0033】
図5を併せて参照する。第1伝達部材27に対して第1ダンパギヤ部25bが形成される領域と、第2伝達部材28に対して第2ダンパギヤ部26bが形成される領域とを比較すると、第1ダンパギヤ部25bの形成される領域の方が広い。このため、第1ダンパギヤ が第1伝達部材ギヤ部27aに噛み合っている領域の一部において、第2ダンパギヤ部26bは、第2伝達部材ギヤ部28aに噛み合っていない。この部位を、コイルばね24、24(
図3参照)の付勢力が伝達されない非伝達部28cという。非伝達部28cは、蓋体23の全閉位置に対応する位置から所定の開度位置に対応する位置まで形成されている。つまり、蓋体23の全閉位置から所定の開度位置までは、第2ダンパ26は、減衰力を発生しない。
【0034】
以上に説明した車両用収納装置10の作用について説明する。
【0035】
図4を参照する。乗員がボタン31を後方に向かって押すと、ボタン31と共にロッド部32が後退する。ロッド部32が後退することにより、スイング板部34の下部は、ロック軸部33を中心に後方にスイングする。このとき、スイング板部34の上部は、ロック軸部33を中心に前方にスイングする。スイング板部34の上部が前方にスイングすると、スイング板部34と蓋体爪部23cとのロック状態が解除される。蓋体23は、コイルばね24、24(
図3参照)によって開方向に付勢されているため、上方に向かってスイングする。
【0036】
図5を参照する。蓋体23が上方に向かってスイングする際、第1ダンパ25も軸部材22を中心に回転する。この際、第1ダンパギヤ部25bが第1伝達部材ギヤ部27aに噛み合っていることにより、第1ダンパギヤ部25bが回転する。第1ダンパギヤ部25bが回転することにより、第1ダンパ25は、減衰力を発生する。この減衰力は、蓋体23が開方向へスイングする力に対する抵抗となる。
【0037】
ここで、コイルばね24、24(
図3参照)の付勢力は、第1ダンパ25が発生する減衰力よりも大きい。このため、減衰力を発生させつつ、蓋体23は、開方向にスイングする。
【0038】
図7A及び
図7Bを参照する。蓋体23が所定の開度位置までスイングすると、第2ダンパギヤ部26bが第2伝達部材ギヤ部28aに噛み合う。第2ダンパギヤ部26bの回転方向に力が加わることにより、第2ダンパ26は、減衰力を発生させる。これにより、蓋体23は、所定の開度位置において止まる。換言すれば、コイルばね24、24の付勢力は、所定の開度位置において蓋体23のスイングが止まるように設定されている。
【0039】
所定の開度位置から全開位置までは、乗員の手によって蓋体23をスイングさせることが可能である。所定の開度位置と全開位置との間で乗員が蓋体23から手を離すと、蓋体は手を離した位置に保持される。
【0040】
収納部本体21の開口を閉じる際には、乗員は、全閉位置まで蓋体23をスイングさせる。
図4に示されるように、蓋体爪部23cがスイング板部34に係止され、蓋体23は、全閉位置に保持される。
【0041】
以上に説明した車両用収納装置10は、以下の効果を奏する。
【0042】
車両用収納装置10は、第1伝達部材27に接続された第1ダンパ25によってコイルばね24、24の付勢力を減衰可能であると共に、第2伝達部材28に第2ダンパ26が接続された際にコイルばね24、24の付勢力をさらに減衰することが可能である。加えて、コイルばね24、24の付勢力は、全閉位置から所定の開度位置までは蓋体23が開方向にスイング可能であると共に、所定の開度位置において蓋体23のスイングが止まるように設定されている。このため、蓋体23のスイング時において、全閉位置から全開位置まで、常に第1ダンパ25によって減衰力を発生させることが可能である。全閉位置から所定の開度位置まで、蓋体23がコイルばね24、24の付勢力によってスイングすると、第2伝達部材28に第2ダンパ26が接続される。これにより、第2ダンパ26によっても減衰力を発生させることが可能となり、蓋体23の付勢力によるスイングは止められる。第2伝達部材28に第2ダンパ26が接続される際、第1ダンパ25が発生させている減衰力によって、第2伝達部材28と第2ダンパ26とが勢いよく接触することを抑制することができる。常に減衰力を発生させることが可能な第1ダンパ25と、蓋体23が所定の開度位置から全開位置に達するまでの間のみ減衰力を発生させることが可能な第2ダンパ26との2種類のダンパを用いることにより、静粛性に優れた商品性の高い車両用収納装置10を提供することができる。
【0043】
第2伝達部材28は、蓋体23の所定の開度位置から全開位置までに対応して第2ダンパ26に噛み合う第2伝達部材ギヤ部28aを含む。つまり、第2ダンパ26は、ギヤを介して第2伝達部材28に連結される。ギヤの形成される範囲によって、所定の開度位置を容易に設定することができる。
【0044】
第1伝達部材27、及び、第2伝達部材28は、収納部本体21に一体的に形成されていると共に、第1ダンパ25、及び、第2ダンパ26は、蓋体23に支持されている。固定側の収納部本体21に第1伝達部材27、及び、第2伝達部材28を一体的に形成することにより、より強度を高めることができる。第1伝達部材27、及び、第2伝達部材28の強度を高めることにより第1ダンパ25及び第2ダンパ26からより確実に減衰力を発生させることができる。
【0045】
加えて、収納部本体21の本体後壁部21d(壁部21d)及び第1伝達部材27は、第1リブ27bによって繋がれている。また、収納部本体21の本体後壁部21d(壁部21d)及び第2伝達部材28は、第2リブ28bによって繋がれている。これにより、第1伝達部材27及び第2伝達部材28の強度を高めることができる。
【0046】
さらに、蓋体23は、収納部本体21の開口を開閉する蓋体本体部23bから軸部材22に向かって延び、軸部材22が貫通している一対の蓋体ヒンジ部23a、23aを有している。これらの蓋体ヒンジ部23a、23aの間に、第1ダンパ25、第2ダンパ26、第1伝達部材27、及び、第2伝達部材28は、位置している。蓋体ヒンジ部23a、23aによってこれらの部材を覆うことにより、意匠性を高めると共に、保護性を高めることができる。
【0047】
尚、本発明による車両用収納装置は、コンソールボックスに適用される例を基に説明したが、グローブボックス等にも適用することができ、これらの形式のものに限られるものではない。また、適用される部位によって、収納部本体の開口は、後面や前面や側面に形成することもできる。
【0048】
第1ダンパと、第2ダンパとは、異なる特性のロータリーダンパを採用することもできるし、同じ特性のロータリーダンパを採用することもできる。異なる特性のダンパを採用した場合には、それぞれのダンパによって発生する減衰力を異ならせることができる。例えば、第2ダンパにより大きな減衰力を発生させるロータリーダンパを採用することができる。これにより、設計の自由度を高めることができる。
【0049】
また、第1ダンパ及び第2ダンパは、収納部本体に支持されていてもよい。このとき、第1伝達部材及び第2伝達部材は、蓋体に設けられる。さらに、第1ダンパ又は第2ダンパのどちらか一方を収納部本体に設け、他方を蓋体に設けることもできる。このとき、第1伝達部材は、収納部本体又は蓋体のうち、第1ダンパが設けられたのとは他方の部材に設けられる。また、第2伝達部材は、収納部本体又は蓋体のうち、第2ダンパが設けられたのとは他方の部材に設けられる。
【0050】
本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の車両用収納装置は、乗用車両のコンソールボックスに好適である。
【符号の説明】
【0052】
10…車両用収納装置
21…収納部本体
22…軸部材
23…蓋体
24…コイルばね(付勢部材)
25…第1ダンパ
26…第2ダンパ
27…第1伝達部材
28…第2伝達部材、28a…第2伝達部材ギヤ部