IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキョーニシカワ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用距離センサの取付構造 図1
  • 特許-車両用距離センサの取付構造 図2
  • 特許-車両用距離センサの取付構造 図3
  • 特許-車両用距離センサの取付構造 図4
  • 特許-車両用距離センサの取付構造 図5
  • 特許-車両用距離センサの取付構造 図6
  • 特許-車両用距離センサの取付構造 図7
  • 特許-車両用距離センサの取付構造 図8
  • 特許-車両用距離センサの取付構造 図9
  • 特許-車両用距離センサの取付構造 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】車両用距離センサの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/00 20060101AFI20230927BHJP
   B60R 11/00 20060101ALI20230927BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20230927BHJP
【FI】
B60J1/00 Z
B60R11/00
G01S17/931
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019143835
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021004024
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2019118114
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田坂 進
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-274717(JP,A)
【文献】国際公開第2018/015312(WO,A1)
【文献】特表2019-507340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0329066(US,A1)
【文献】特開2017-129419(JP,A)
【文献】特開2017-181480(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122396(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0216768(US,A1)
【文献】特開2018-149916(JP,A)
【文献】特開2019-166964(JP,A)
【文献】特表2022-515426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00 - 1/20
B60R 9/00 - 11/06
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)の車室の前側又は後側に設けられたウインドパネル(3,5)に車室側から距離センサ(15,29)を取り付けた車両用距離センサの取付構造であって、
上記ウインドパネル(3,5)は、樹脂製であり、
上記ウインドパネル(3,5)の上部には、車外側に膨出する凹部(11)が形成され、当該凹部(11)の少なくとも一部が、その外側の面を少なくとも前外側及び左右斜め前側に向けるか、又は少なくとも後外側及び左右斜め後側に向けた透光性の窓部(13)を構成し、上記ウインドパネル(3,5)の凹部(11)周りには、車室側に突出する突出片部(9f)が一体に形成され、
上記距離センサ(15,29)の少なくとも一部が、上記凹部(11)内に収容され、上記距離センサ(15,29)には、上記突出片部(9f)が下側から当接し、かつ上記距離センサ(15,29)は、その検出面を上記窓部(13)に車室側から対向させることが可能であることを特徴とする車両用距離センサの取付構造。
【請求項2】
請求項に記載の車両用距離センサの取付構造であって
上記ウインドパネル(3,5)は、透光性のパネル本体(7)と、当該パネル本体(7)の車室側の面の外周縁部に2色成形により形成された不透光性の枠部(9)とを有し、
上記突出片部(9f)は、上記枠部(9)に一体に形成されていることを特徴とする車両用距離センサの取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用距離センサの取付構造であって
上記ウインドパネル(3,5)は、車幅方向中央に向かって車外側に湾曲し、
上記凹部(11)は、上記ウインドパネル(3,5)の車幅方向中央の上部に形成され、上記窓部(13)は、車幅方向中央に向かって前外側又は後外側に湾曲し、かつ前外側又は後外側に膨出する断面半円弧状の湾曲壁部(7e)を有し、
上記距離センサ(15,29)は、上記検出面を上記湾曲壁部(7e)の周方向全体に車室側から対向させることが可能であることを特徴とする車両用距離センサの取付構造。
【請求項4】
請求項に記載の車両用距離センサの取付構造であって
上記距離センサ(15,29)は、上記検出面を、上記湾曲壁部(7e)の一部に車室側から対向させた状態で当該湾曲壁部(7e)の周方向に回動させることにより、上記湾曲壁部(7e)の周方向全体に車室側から対向させることを特徴とする車両用距離センサの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室の前側又は後側に設けられたウインドパネルに車室側から距離センサを取り付けた車両用距離センサの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車の車室の前側又は後側に設けられたウインドパネルに車室側から距離センサを取り付けた車両用距離センサの取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-175447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような車両用距離センサの取付構造において、ウインドパネル全体を略平坦な形状とした場合、距離センサ全体をウインドパネル全体よりも車室側に配置する必要があるので、距離センサの左右斜め前外側又は左右斜め後外側に、ピラー等の車体の一部、車室内の物等が位置し、距離センサの車幅方向の検出範囲を広くできない場合がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より広範囲にある物体を距離センサによって認識できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、ウインドパネルにおける距離センサの配設箇所を車外側に膨出させたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、第1の発明は、自動車の車室の前側又は後側に設けられたウインドパネルに車室側から距離センサを取り付けた車両用距離センサの取付構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上記ウインドパネルは、樹脂製であり、上記ウインドパネルの上部には、車外側に膨出する凹部が形成され、当該凹部の少なくとも一部が、その外側の面を少なくとも前外側及び左右斜め前側に向けるか、又は少なくとも後外側及び左右斜め後側に向けた透光性の窓部を構成し、上記ウインドパネルの凹部周りには、車室側に突出する突出片部が一体に形成され、上記距離センサの少なくとも一部が、上記凹部内に収容され、上記距離センサには、上記突出片部が下側から当接し、かつ上記距離センサは、その検出面を上記窓部に車室側から対向させることが可能であることを特徴とする。
【0009】
の発明は、第の発明に係る車両用距離センサの取付構造であって、上記ウインドパネルは、透光性のパネル本体と、当該パネル本体の車室側の面の外周縁部に2色成形により形成された不透光性の枠部とを有し、上記突出片部は、上記枠部に一体に形成されていることを特徴とする。
【0010】
の発明は、第1又は第2の発明に係る車両用距離センサの取付構造であって、上記ウインドパネルは、車幅方向中央に向かって車外側に湾曲し、上記凹部は、上記ウインドパネルの車幅方向中央の上部に形成され、上記窓部は、車幅方向中央に向かって前外側又は後外側に湾曲し、かつ前外側又は後外側に膨出する断面半円弧状の湾曲壁部を有し、上記距離センサは、上記検出面を上記湾曲壁部の周方向全体に車室側から対向させることが可能であることを特徴とする。
【0011】
の発明は、第の発明に係る車両用距離センサの取付構造であって、上記距離センサは、上記検出面を、上記湾曲壁部の一部に車室側から対向させた状態で当該湾曲壁部の周方向に回動させることにより、上記湾曲壁部の周方向全体に車室側から対向させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、距離センサの検出位置が上記ウインドパネルの凹部非形成領域よりも前外側又は後外側となるので、距離センサ全体をウインドパネルの凹部非形成領域よりも車室側に配置する場合に比べ、左右斜め前外側又は左右斜め後外側から距離センサに入射する光が車体の一部、車室内の物等に遮られにくい。したがって、より広範囲にある物体を距離センサによって認識できる。
【0013】
また、距離センサがウインドパネルの一部に車外側から覆われて目立ちにくいので、距離センサを自動車のルーフ上に設ける場合に比べ、自動車の外観見栄えを向上できる。
【0014】
また、距離センサ全体をウインドパネルの凹部非形成領域よりも車室側に配置する場合に比べ、距離センサの検出位置を前外側又は後外側に設定できるので、エンジンルーム又はトランクルームがウインドパネルの前外側又は後外側に配設されている場合に、エンジンルームの前外側又はトランクルームの後外側の死角を狭くできる。
【0015】
また、突出片部がウインドパネルに一体に形成されているので、別部材としての突出片部をウインドパネルに取り付ける手間が必要ない。また、距離センサを下側から支持するための支持部材や当該支持部材の取付用の部品が不要となるのでその分だけ部品点数を減らすことができ、コストを削減できる。
【0016】
また、距離センサを突出片部に上側から当接させるだけで上下方向に位置決めできるので、距離センサの位置決め作業が容易になる。
【0017】
また、別部材としての突出片部をウインドパネルに取り付ける場合に比べ、突出片部の位置がばらつきにくいので、距離センサを突出片部によって精度良く上下方向に位置決めできる。
【0018】
の発明によれば、突出片部が不透光性の枠部の一部を構成し、突出片部が目立たないので、突出片部周りの車外側及び車室側からの見栄えが良い。
【0019】
の発明によれば、距離センサの検出位置が上記ウインドパネルの凹部非形成領域よりも前外側又は後外側となるので、車幅方向両外側から距離センサに入射する光が車室内の物に遮られない。したがって、車幅方向両外側の物体をより確実に認識できる。
【0020】
の発明によれば、互いに異なる方向を向いた複数の検出面を設けなくても、距離センサの検出範囲を180度以上にできるので、検出面を減らし、コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る車両用距離センサの取付構造が適用された自動車の側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用距離センサの取付構造が適用された自動車の平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両用距離センサの取付構造が適用された自動車の正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両用距離センサの取付構造が適用された自動車の背面図である。
図5図2のV部拡大図である。
図6図5のVI-VI線における断面図である。
図7図5のVII-VII線における断面図である。
図8】LIDARの斜視図である。
図9】カバー部材の斜視図である。
図10】安全運転支援システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0023】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る取付構造が適用されたステーションワゴンタイプの自動車1を示す。当該自動車1の車室の前側には、図3にも示すように、上側に向かって車室側(後側)に傾斜し、かつ車幅方向中央に向かって車外側(前側)に湾曲する樹脂製の前側ウインドパネル3が配設されている。一方、当該自動車1の車室の後側には、図4にも示すように、上側に向かって車室側(前側)に若干傾斜し、かつ車幅方向中央に向かって車外側(後側)に湾曲する樹脂製の後側ウインドパネル5が配設されている。また、自動車1の車体の前端面の車幅方向中央には、前側ミリ波レーダー6aが配設されている。一方、自動車1の車体の後端面の下端部には、4つの後側ミリ波レーダー6bが車幅方向に間隔を空けて配設されている。
【0024】
前側ウインドパネル3は、透光性を有する樹脂製の略矩形板状の前側パネル本体7を備えている。前側パネル本体7の上端縁よりも若干下側の位置には、図5~7に示すように、車外側に膨出する(凹む)凹状部7aが形成されている。当該凹状部7aは、板面を上下方向に向けた板状の上壁部7bを有し、この上壁部7bは、その円弧を前側に向けた半円形状の半円板部7cと、当該半円板部7cの後端部から当該半円板部7cの直径と同じ幅で後側に延びる延出板部7dとで構成されている。当該半円板部7cの前端縁には、車幅方向中央に向かって前側に湾曲する湾曲壁部7eが下側に向けて延設されている。詳しくは、湾曲壁部7eは、上下方向に延びる中心軸C周りに延び、かつ前側(前外側)に膨出する断面半円弧状をなしている。また、延出板部7dの車幅方向両側には、その板面を車幅方向に向けた板状の側壁部7fが下側に延設され、上記湾曲壁部7eと連続している。当該湾曲壁部7e及び側壁部7fの下端縁は、車室側(後側)に向かって上側に傾斜している。前側パネル本体7の凹状部7aを除く領域は、上側に向かって車室側(後側)に若干傾斜し、かつ車幅方向中央に向かって車外側(前側)に大きく湾曲している。
【0025】
当該前側パネル本体7の車室側の面の外周縁部には、2色成形により略矩形環状の不透光性の樹脂製の枠部9が一体に形成されている。当該枠部9は、略一定の厚さで略矩形環状をなす枠部本体9aを有している。当該枠部本体9aの上部の車幅方向中央部には、下側に向かって延出する延出部9bが形成されている。当該延出部9bは、下側に向かって徐々に幅狭となる等脚台形状をなしている。当該延出部9bの車幅方向中央部における下端縁から若干上側に離れた部分が、上記前側パネル本体7の凹状部7aと重なっている。枠部本体9aにおける前側パネル本体7の凹状部7aと重なる領域と、前側パネル本体7の凹状部7aとで、車外側に膨出し、かつ車内側から見て凹んだ形状をなす凹部11が構成されている。当該凹部11は、前側ウインドパネル3の上部に位置している。また、当該延出部9bの車幅方向中央には、第1開口部9cが上記前側パネル本体7の湾曲壁部7eの周方向全体、及び側壁部7fの前端部と重なるように形成され、当該第1開口部9cから車室側に露出する前側パネル本体7が、透光性を有する第1窓部13を構成している。したがって、当該第1窓部13は、上記湾曲壁部7e及び側壁部7fの前端部によって構成されている。第1窓部13の外側の面は、前側(前外側)、左右斜め前側、及び車幅(左右)方向両側に向いている。また、枠部本体9aの第1開口部9c(第1窓部13)の車幅方向両外側には、ボス部9dが突設され、当該ボス部9dの先端面には、第1締結孔9eが形成されている。また、枠部本体9aの第1開口部9cの下端縁には、平面視でその円弧を前側に向けた半円形状をなし、かつ車室側に突出する板状の突出片部9fが一体に形成されている。当該突出片部9fの車幅方向中央の先端部には、他の領域よりも厚肉な厚肉部9gが下側に膨出するように形成されている。当該突出片部9fの先端面の車幅方向中央、すなわち厚肉部9gの車室側端面には、第2締結孔9hが形成されている。また、突出片部9fの前端部(基端部)の上面の車幅中央には、車体前後方向に延びる第1凸条部9iが一体に突設されている。また、枠部本体9aにおける前側パネル本体7の半円板部7cと重なる領域の前端部の下面の車幅方向中央には、車体前後方向に延びる第2凸条部9jが一体に突設され、第1凸条部9iに上方から対向している。また、延出部9bの第1開口部9cの車幅方向両外側には、図2及び図3に示すように、矩形状の第2開口部9kが形成され、当該第2開口部9kから車室側に露出する前側パネル本体7が、透光性を有する第2窓部14を構成している。
【0026】
上記前側ウインドパネル3の凹部11には、図8に示すように、略円柱状の距離センサとしての前側LIDAR(Laser imaging Detection and Ranging)15が、その外周面の周方向一部を凹部11内から上記第1窓部13を介して車外側に向けた状態で車室側から取り付けられている。当該前側LIDAR15の後側下端部を除く部分が、上記前側ウインドパネル3の凹部11内に収容されている。また、当該前側LIDAR15の下面における前側略半分の領域には、上記前側ウインドパネル3の突出片部9fが下側から当接している。当該前側LIDAR15は、その外表面を構成する筐体17を備え、当該筐体17の周壁の上下両端部を除く領域が、全体に亘って透光性を有する透光部17aを構成している。当該筐体17の周壁の上下両端部、及び当該筐体17の上下両底壁は、不透光性を有する不透光部17bを構成している。筐体17の周壁の上端部には、筒状のコード取付部17cが外側に向けて一体に突設されている。筐体17の上下両底壁の外側の面における前端部の車幅方向中央には、車体前後方向に延びる溝部17dが形成され、これら溝部17dに上記前側ウインドパネル3の第1凸条部9i及び第2凸条部9jを嵌合させることで、前側LIDAR15の周方向への回動が規制されている。
【0027】
筐体17の内部には、図10に示すレーザー15a、検出装置15b、回動機構15c、及び制御装置15dが1つずつ収容されている。これらレーザー15a、検出装置15b、回動機構15c、及び制御装置15dは、コード18を介して外部の機器と接続されている。コード18は、筐体17のコード取付部17cに挿通されている。レーザー15aは、筐体17の透光部17aを介して筐体17の外側に向けて赤外線を出射する。検出装置15bは、レーザー15aにより出射された赤外線の反射光を筐体17の透光部17aを介して検出する。レーザー15aの出射面及び検出装置15bの検出面は、共通の方向を向いている。回動機構15cは、レーザー15a及び検出装置15bを上記中心軸C周りに回動させることにより、レーザー15aの出射面及び検出装置15bの検出面を、湾曲壁部7eの一部又は側壁部7fの前端部に対向させた状態で上記前側ウインドパネル3の湾曲壁部7eの周方向に回動させる。上記レーザー15a及び検出装置15bの作動範囲は、レーザー15aの出射面及び検出装置15bの検出面が、湾曲壁部7e全体及び側壁部7fの前端部に対向する範囲となるように予め設定される。作動範囲の設定作業は、筐体17の溝部17dに前側ウインドパネル3の第1凸条部9i及び第2凸条部9jを嵌合させた状態で行われる。これにより、作動範囲の設定後に前側LIDAR15の回動によって前側LIDAR15の車幅方向の検出範囲が所望の範囲からずれるのを防止できる。したがって、レーザー15aの出射面及び検出装置15bの検出面は、第1窓部13の周方向全体、すなわち湾曲壁部7eの周方向全体と側壁部7fの前端部とに車室側から対向することが可能である。図2に示すように、前側LIDAR15の車幅方向の検出範囲を示す角度は、180度を超えるα1となる。また、図1中、前側LIDAR15の車体前方における上下方向の検出範囲を示す角度をβ1で示す。また、図3中、前側LIDAR15の車幅方向外側における上下方向の検出範囲を示す角度をγ1で示す。制御装置15dの機能については、後述する。
【0028】
また、前側ウインドパネル3の枠部9のボス部9d、及び突出片部9fの先端面には、図9にも示す樹脂製のカバー部材19が上記前側LIDAR15を後側、下側及び車幅方向両側から覆うように取り付けられている。当該カバー部材19は、上記前側LIDAR15を後側から覆い、かつ板面を車体前後方向に向けた車幅方向に長い略長方形板状の後板部19aを備えている。後板部19aの上端縁の中央には、下側に凹むU字状の切欠凹部19bが形成され、当該切欠凹部19bの周縁には全周に亘って、後側に突出する平面視U字状の突条部19cが一体に形成されている。また、後板部19aの車幅方向両端縁の中央には、車幅方向外側に突出する凸部19dが一体に形成されている。各凸部19dには、車体前後方向に貫通する第1ネジ挿通孔19eが形成されている。当該後板部19aの下端部には、板面を上下方向に向けた車幅方向に長い略長方形板状の下板部19fが一体に延設されている。当該下板部19fは、上記前側LIDAR15の下面の後側略半分の領域を下側から覆っている。また、後板部19aの車幅方向両端縁における上端部を除く部分には、前側に向かって幅狭となる三角形板状の側板部19hが前側に向かって延設されている。当該側板部19hの下端縁の前端部を除く部分は、下板部19fの車幅方向両端縁に一体に連結されている。当該側板部19hは、上記前側LIDAR15の凹部11に収容されていない部分、すなわち前側LIDAR15の後側下端部を車幅方向両側から覆っている。また、上記下板部19fの前端縁の中央部には、板面を車体前後方向に向けた延出板部19iが下側に向けて一体に延設されている。当該延出板部19iには、第2ネジ挿通孔19jが車体前後方向に貫通するように形成されている。
【0029】
上記カバー部材19の第1ネジ挿通孔19eを上記前側ウインドパネル3の第1締結孔9eに後側から対応させて、これら第1ネジ挿通孔19e及び第1締結孔9eにネジ21を後側から挿通して締結させるとともに、当該カバー部材19の第2ネジ挿通孔19jを上記前側ウインドパネル3の第2締結孔9hに後側から対応させて、これら第2ネジ挿通孔19j及び第2締結孔9hにネジ21を後側から挿通して締結させることにより、上記カバー部材19が前側ウインドパネル3に取り付けられている。また、上記切欠凹部19bには、前側LIDAR15のコード取付部17cが内側から嵌合している。また、上記カバー部材19の側板部19hの上端面が、上記前側ウインドパネル3の凹部11の車幅方向両外側の枠部9に車室側から対向している。
【0030】
また、前側ウインドパネル3の両第2窓部14の車室側には、ステレオカメラ23がそのレンズを両第2窓部14に車室側から対向させた状態で配設されている。
【0031】
さらに、前側ウインドパネル3における枠部9よりも内側の前側パネル本体7の右側下端部には、図2に示すように、GPS(Global Positioning System)25が車室側から取り付けられている。
【0032】
また、後側ウインドパネル5は、透光性を有する樹脂製の略矩形板状の後側パネル本体27を備えている。後側パネル本体27の上端縁よりも若干下側の位置には、上記凹状部7aが車外側に凹むように形成されている。また、後側パネル本体27の車室側の面の外周縁部には、上記枠部9が略一定の厚さで一体に形成されている。したがって、当該枠部9における後側パネル本体27の凹状部7aと重なる領域と、後側パネル本体27の凹状部7aとで、後側ウインドパネル5の凹部11が構成されている。また、後側ウインドパネル5の第1窓部13の外側の面は、後側(後外側)、左右斜め後側、及び車幅(左右)方向両側に向いている。そして、後側ウインドパネル5の凹部11にも、前側ウインドパネル3と同様に、上記前側LIDAR15と同じ構成の後側LIDAR29が取り付けられ、後側ウインドパネル5の枠部9には、前側ウインドパネル3と同様に、上記カバー部材19が取り付けられている。なお、後側ウインドパネル5の枠部9には、第2窓部14が形成されていない。図2に示すように、後側LIDAR29の車幅方向の検出範囲を示す角度は、180度を超えるα2となる。また、図1中、後側LIDAR29の車体後方における上下方向の検出範囲を符号β2で示す。また、図4中、後側LIDAR29の車幅方向外側における上下方向の検出範囲を符号γ2で示す。
【0033】
また、上記前側ミリ波レーダー6a、後側ミリ波レーダー6b、前側LIDAR15、ステレオカメラ23、GPS25、及び後側LIDAR29は、図10に示す安全運転支援システム100を構成する。前側LIDAR15及び後側LIDAR29の制御装置15dは、3次元計測部31と第1ネットワーク制御部33とを備える。3次元計測部31は、レーザー15aによって所定の赤外線が出射されたタイミング、及び当該所定の赤外線に対応する反射光が検出装置15bによって検出されたタイミングに基づいて、対象と各LIDAR15,29との距離を決定する。第1ネットワーク制御部33は、3次元計測部31によって決定された距離を車両制御ネットワーク35を介して運転制御システム37に送信する。
【0034】
また、前側ミリ波レーダー6a、後側ミリ波レーダー6b、ステレオカメラ23、及びGPS25も、それぞれが得た情報を車両制御ネットワーク35を介して運転制御システム37に送信する。
【0035】
運転制御システム37は、第2ネットワーク制御部39と、物体検出部41と、車両制御判定部43とを備えている。第2ネットワーク制御部39は、前側LIDAR15、後側LIDAR29、前側ミリ波レーダー6a、後側ミリ波レーダー6b、ステレオカメラ23、及びGPS25によって得られた情報を受信する。物体検出部41は、第2ネットワーク制御部39によって受信されたこれらの情報に基づいて、車体の前後に存在する人や物を検出し、検出した人や物の位置を推定する。車両制御判定部43は、物体検出部41によって推定された人や物の位置に基づいて、アクセル45、ブレーキ47及びハンドル49をどのように制御するかを判定し、判定結果を車両制御ネットワーク35を介してアクセル45、ブレーキ47、及びハンドル49のうちの対応箇所に送信する。アクセル45、ブレーキ47、及びハンドル49は、車両制御判定部43の判定結果に応じて作動する。
【0036】
したがって、本実施形態によれば、前側LIDAR15の検出位置が前側ウインドパネル3の凹部11非形成領域よりも前側となるので、前側LIDAR15全体を前側ウインドパネル3の凹部11非形成領域よりも車室側に配置する場合に比べ、左右斜め前側から前側LIDAR15に入射する光が車幅方向両側の枠部9、Aピラー、及び車室内の物に遮られにくい。したがって、より広範囲にある物体を前側LIDAR15によって認識できる。
【0037】
同様に、後側LIDAR29の検出位置が後側ウインドパネル5の凹部11非形成領域よりも後側となるので、後側LIDAR29全体を後側ウインドパネル5の凹部11非形成領域よりも車室側に配置する場合に比べ、左右斜め後側から後側LIDAR29に入射する光が車幅方向両側の枠部9、Cピラー、及び車室内の物に遮られにくい。したがって、より広範囲にある物体を後側LIDAR29によって認識できる。
【0038】
また、前側LIDAR15及び後側LIDAR29が前側ウインドパネル3及び後側ウインドパネル5の一部に車外側から覆われて目立ちにくいので、前側LIDAR15及び後側LIDAR29を自動車1のルーフ上に設ける場合に比べ、自動車1の外観見栄えを向上できる。
【0039】
また、前側LIDAR15全体を前側ウインドパネル3の凹部11非形成領域よりも車室側に配置する場合に比べ、前側LIDAR15の検出位置をより前側に設定できるので、エンジンルームの前側の死角を狭くし、前側LIDAR15の車体前方における上下方向の検出範囲を示す角度β1を大きくできる。
【0040】
また、突出片部9fが前側ウインドパネル3及び後側ウインドパネル5に一体に形成されているので、別部材としての突出片部9fを前側ウインドパネル3及び後側ウインドパネル5に取り付ける手間が必要ない。また、前側LIDAR15及び後側LIDAR29を下側から支持するための支持部材や当該支持部材の取付用の部品が不要となるのでその分だけ部品点数を減らすことができ、コストを削減できる。
【0041】
また、前側LIDAR15及び後側LIDAR29を突出片部9fに上側から当接させるだけで上下方向に位置決めできるので、前側LIDAR15及び後側LIDAR29の位置決め作業が容易になる。
【0042】
また、別部材としての突出片部9fを前側ウインドパネル3及び後側ウインドパネル5に取り付ける場合に比べ、突出片部9fの位置がばらつきにくいので、前側LIDAR15及び後側LIDAR29を突出片部9fによって精度良く上下方向に位置決めできる。
【0043】
また、突出片部9fが不透光性の枠部9の一部を構成し、突出片部9fが目立たないので、突出片部9f周りの車外側及び車室側からの見栄えが良い。
【0044】
また、前側LIDAR15の検出位置が前側ウインドパネル3の凹部11非形成領域よりも前側となるので、車幅方向両外側から前側LIDAR15に入射する光が車室内の物に遮られない。したがって、車幅方向両外側の物体をより確実に認識できる。
【0045】
同様に、後側LIDAR29の検出位置が後側ウインドパネル5の凹部11非形成領域よりも後側となるので、車幅方向両外側から後側LIDAR29に入射する光が車室内の物に遮られない。したがって、車幅方向両外側の物体をより確実に認識できる。
【0046】
また、前側LIDAR15及び後側LIDAR29が、その検出面を、湾曲壁部7eの周方向に回動させることにより、湾曲壁部7eの周方向全体に車室側から対向させるので、互いに異なる方向を向いた複数の検出面を設けなくても、検出範囲を180度以上にできる。したがって、検出面を減らし、コストを削減できる。
【0047】
なお、本実施形態では、前側LIDAR15及び後側LIDAR29に1つの検出面を設けて回動させたが、固定された複数の検出面を互いに異なる方向に向けて設けてもよい。また、前側LIDAR15及び後側LIDAR29の検出装置15bを広角カメラとしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、第1窓部13を、湾曲壁部7e及び側壁部7fの一部で構成したが、湾曲壁部7eだけで構成してもよい。また、第1窓部13が、その外側の面を少なくとも前外側及び左右斜め前側に向けるか、又は少なくとも後外側及び左右斜め後側に向けていれば、第1窓部13を湾曲壁部7eの周方向一部だけで構成してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、第1窓部13を凹部11の一部で構成したが、凹部11全体で構成してもよい。
【0050】
また、本実施形態では、枠部9の突出片部9fを、枠部本体9aの第1開口部9cの下端縁、すなわち第1窓部13の下端縁に形成したが、第1窓部13とLIDAR15,29との位置関係によっては、凹部11周りの他の位置に形成してもよい。
【0051】
また、本実施形態では、前側ウインドパネル3の凹部11内に前側LIDAR15の一部を収容したが、前側LIDAR15の全部を収容してもよい。また、後側ウインドパネル5の凹部11内に後側LIDAR29の一部を収容したが、後側LIDAR29の全部を収容してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、前側ウインドパネル3及び後側ウインドパネル5に第1凸条部9i及び第2凸条部9jを形成するとともに、前側LIDAR15及び後側LIDAR29の筐体17の上下両底壁にこれらに嵌合する溝部17dを形成した。しかし、前側ウインドパネル3及び後側ウインドパネル5に第1凸条部9i及び第2凸条部9jのいずれか一方の凸条部だけを形成するとともに、筐体17の一方の底壁に、上記一方の凸条部に嵌合する溝部17dを形成してもよい。また、筐体17の少なくとも一方の底壁に凸条部を形成し、前側ウインドパネル3及び後側ウインドパネル5に当該凸条部に嵌合する溝部を形成してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、ステーションワゴンタイプの自動車1に本発明を適用したが、本発明は、セダンタイプの自動車1にも適用できる。かかる場合、後側LIDAR29全体を、後側ウインドパネル5の凹部11非形成領域よりも車室側に配置する場合に比べ、後側LIDAR29の検出位置をより後側に設定できるので、トランクルームの後側の死角を狭くできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、自動車の車室の前側又は後側に設けられたウインドパネルに車室側から距離センサを取り付けた車両用距離センサの取付構造として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 自動車
3 前側ウインドパネル
5 後側ウインドパネル
7 前側パネル本体
湾曲壁部
9 枠部
9f 突出片部
11 凹部
13 第1窓部
15 前側LIDAR(距離センサ)
29 後側LIDAR(距離センサ)
C 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10