(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】軽量で高強度な発泡樹脂粒子積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 5/32 20060101AFI20230927BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230927BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230927BHJP
B29C 44/06 20060101ALI20230927BHJP
B29K 55/00 20060101ALN20230927BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20230927BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
B32B5/32
B32B27/30 B
B29C44/00 G
B29C44/06
B29K55:00
B29K105:04
B29L9:00
(21)【出願番号】P 2019145125
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】508040463
【氏名又は名称】コンフォートフォーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505121028
【氏名又は名称】石山 昌道
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】石山 昌道
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-108870(JP,A)
【文献】特開昭55-152020(JP,A)
【文献】特開2003-072754(JP,A)
【文献】特開昭57-047629(JP,A)
【文献】特開昭55-014264(JP,A)
【文献】実開昭54-013980(JP,U)
【文献】特開昭55-011841(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101198(WO,A1)
【文献】特開2004-345103(JP,A)
【文献】特開2000-313025(JP,A)
【文献】特開2018-44086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B29C 44/00-44/06
B29K
B29L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が異なる2層以上の多層構成を有し、発泡樹脂粒子からなる発泡樹脂粒子積層体であって、
該発泡樹脂粒子積層体を構成する各層は、該発泡樹脂粒子からなる層であり、
層の厚さが1mm以上、50mm以下であり、
該発泡樹脂粒子同士および各層は、接着剤を用いずに融着しており、
該発泡樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂を含有し、
層の厚さ方向に隣接する層の密度の差が、
15kg/m
3以上、80kg/m
3以下であり、
該発泡樹脂粒子積層体の
全体において、幅方向の面内の中央部と端部との密度の差が、0.1kg/m
3以上、15kg/m
3以下であり、
該発泡樹脂粒子積層体の全体の平均の密度が、15kg/m
3以上、65kg/m
3以下である、
発泡樹脂粒子積層体。
【請求項2】
前記発泡樹脂粒子積層体は、少なくとも、密度が65kg/m
3以上、95kg/m
3以下の層、密度が35kg/m
3以上、65kg/m
3未満の層、密度が10kg/m
3以上、35kg/m
3未満の層からなる群から選ばれる2層以上を有する、
請求項1に記載の、発泡樹脂粒子積層体。
【請求項3】
前記発泡樹脂粒子積層体中の前記発泡樹脂粒子の数基準の平均粒子径が0.5mm以上、5mm以下であり、
前記発泡樹脂粒子積層体の厚さは、5mm以上、150mm以下であ
る、
請求項1または2に記載の、発泡樹脂粒子積層体。
【請求項4】
前記発泡樹脂粒子積層体は、3層で構成されており、
前記発泡樹脂粒子積層体の全体は、密度が35kg/m
3以上、50kg/m
3以下であり、厚さが10mm以上、100mm以下であり、
前記3層は、密度が65kg/m
3以上、95kg/m
3以下、厚さが2mm以上、96mm以下の高密度層と、密度が10kg/m
3以上、25kg/m
3以下、厚さが2mm以上、96mm以下の低密度層とが、高密度層/低密度層/高密度層の順で隣接して積層された構成であり、
隣接する層の密度の差が、30kg/m
3以上、70kg/m
3以下である、
請求項1~3の何れか1項に記載の、発泡樹脂粒子積層体。
【請求項5】
前記発泡樹脂粒子積層体は、2層で構成されており、
前記発泡樹脂粒子積層体の全体は、密度が10kg/m
3以上、75kg/m
3以下であり、厚さが10mm以上、100mm以下であり、
前記2層は、密度が65kg/m
3以上、75kg/m
3以下、厚さが2mm以上、98mm以下の層と、密度が10kg/m
3以上、65kg/m
3以下、厚さが2mm以上、98mm以下の層とが隣接して積層された構成であり、
該2層の密度の差が、10kg/m
3以上、80kg/m
3以下である、
請求項1~3の何れか1項に記載の、発泡樹脂粒子積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度、軽量性、断熱性、生産性のバランスに優れた発泡樹脂粒子積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発泡樹脂粒子積層体においては、発泡倍率を操作して強度、密度、断熱性を操作してきたが、高強度にすれば軽量性と断熱性が低下してしまい、これらを両立することが難しく、高強度、軽量性、断熱性、生産性の優れたバランスをとることが困難であった。
物性の異なる発泡樹脂粒子からなる多層を、接着剤層を介して積層されている積層体が提案されているが(特許文献1)、発泡樹脂粒子が接着剤によって溶かされてしまうことがあり、発泡樹脂粒子に含有される樹脂の種類や接着剤との組み合わせが限定されたり、積層体の密度や断熱性や強度が不均一になり易く、生産性に劣り易かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高強度、軽量性、断熱性、生産性のバランスに優れた発泡樹脂粒子積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく、密度が異なる2層以上の多層構成を有し、スチレン系樹脂を含有する発泡樹脂粒子からなる発泡樹脂粒子積層体が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.密度が異なる2層以上の多層構成を有し、発泡樹脂粒子からなる発泡樹脂粒子積層体であって、
該発泡樹脂粒子積層体を構成する各層は、該発泡樹脂粒子からなる層であり、
該発泡樹脂粒子同士および各層は、接着剤を用いずに融着しており、
該発泡樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂を含有し、
隣接する層の密度の差が、7kg/m3以上、80kg/m3以下であり、
該発泡樹脂粒子積層体の中央部と端部との密度の差が、0.1kg/m3以上、15kg/m3以下であり、
該発泡樹脂粒子積層体の全体の平均の密度が、15kg/m3以上、65kg/m3以下である、
発泡樹脂粒子積層体。
2.前記発泡樹脂粒子積層体は、少なくとも、密度が65kg/m3以上、95kg/m3以下の層、密度が35kg/m3以上、65kg/m3未満の層、密度が10kg/m3以上、35kg/m3未満の層からなる群から選ばれる2層以上を有する、
上記1に記載の、発泡樹脂粒子積層体。
3.前記発泡樹脂粒子積層体中の前記発泡樹脂粒子の数基準の平均粒子径が、0.5mm以上、5mm以下であり、
前記発泡樹脂粒子積層体の厚さは、5mm以上、150mm以下であり、
各層の厚さは1mm以上、50mm以下である、
上記1または2に記載の、発泡樹脂粒子積層体。
4.前記発泡樹脂粒子積層体は、3層で構成されており、
前記発泡樹脂粒子積層体の全体は、密度が35kg/m3以上、50kg/m3以下であり、厚さが10mm以上、100mm以下であり、
前記3層は、密度が65kg/m3以上、95kg/m3以下、厚さが2mm以上、96mm以下の高密度層と、密度が10kg/m3以上、25kg/m3以下、厚さが2mm以上、96mm以下の低密度層とが、高密度層/低密度層/高密度層の順で隣接して積層された構成であり、
隣接する層の密度の差が、30kg/m3以上、70kg/m3以下である、
上記1~3の何れかに記載の、発泡樹脂粒子積層体。
5.前記発泡樹脂粒子積層体は、2層で構成されており、
前記発泡樹脂粒子積層体の全体は、密度が10kg/m3以上、75kg/m3以下であり、厚さが10mm以上、100mm以下であり、
前記2層は、密度が65kg/m3以上、75kg/m3以下、厚さが2mm以上、98mm以下の層と、密度が10kg/m3以上、65kg/m3以下、厚さが2mm以上、98mm以下の層とが隣接して積層された構成であり、
該2層の密度の差が、10kg/m3以上、80kg/m3以下である、
上記1~3の何れかに記載の、発泡樹脂粒子積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高強度、軽量性、断熱性、生産性のバランスに優れた発泡樹脂粒子積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の発泡樹脂粒子積層体の層構成の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の発泡樹脂粒子積層体の層構成の別態様の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の発泡樹脂粒子積層体の層構成のさらに別態様の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記の本発明について以下に更に詳しく説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に特定されない。
以下、本願においては、発泡樹脂粒子積層体中で融着しあっている状態の発泡した樹脂粒子を発泡樹脂粒子と記載し、該発泡樹脂粒子の元になった融着前の1粒毎が独立した粒子を予備発泡樹脂粒子と記載し、予備発泡樹脂粒子が発泡する前の1粒毎が独立した粒子を樹脂ビーズと記載する。
なお、本発明においては、粒子の粒子径とは、粒子の長径と短径の平均値を指す。長径と短径は、粒子または積層体の表面または断面の拡大観察によって測定することができる。そして、粒子が真球状であると仮定して、粒子の体積を該粒子径から算出する。
【0009】
≪発泡樹脂粒子積層体≫
本発明の発泡樹脂粒子積層体は、平均密度が異なる2層以上の多層構成を有し、発泡樹脂粒子からなる発泡樹脂粒子積層体である。
発泡樹脂粒子積層体中では発泡樹脂粒子同士が融着されており、発泡樹脂粒子積層体の表面(両表面および側面)から中心部まで、発泡樹脂粒子のみで形成されており、平均密度が異なる層は、密度の異なる発泡樹脂粒子から形成されている。
また、発泡樹脂粒子間および層間は、接着するために接着剤や溶剤は用いられておらず、加熱による融着によって接合している。
本発明の発泡樹脂粒子積層体は、建築材料用途や保冷容器材料用途等の、種々の用途の
断熱材料や軽量構造部材の芯材料として用いることができる。
【0010】
[密度]
発泡樹脂積層体の全体の平均の密度は、15kg/m3以上、65kg/m3以下が好ましく、20kg/m3以上、55kg/m3以下がより好ましい。該密度が上記範囲よりも低いと、発泡樹脂粒子積層体の曲げ強度や圧縮強度が不十分になる虞があり、上記範囲よりも高いと、軽量性が不十分になる虞がある。
そして、発泡樹脂積層体内で隣接する層間の平均密度の差は、7kg/m3以上、80kg/m3以下であることが好ましく、15kg/m3以上、70kg/m3以下であることがより好ましい。上記範囲の平均密度の差を有することによって、相対的に密度の高い層は高強度に強く寄与し、相対的に密度の低い層は軽量化、高断熱性、高クッション性に強く寄与することができる。
そして、発泡樹脂積層体の全体の平均密度および隣接する層間の平均密度の差が上記範囲にあることによって、発泡樹脂積層体は、高強度、軽量性、断熱性、生産性のバランスに優れることができる。
また、発泡樹脂積層体の各層および全体において、平均密度の面内方向のバラツキは小さいことが好ましく、発泡樹脂積層体の全体において、幅方向の面内の中央部と端部との密度の差は、0.1kg/m3以上、15kg/m3以下が好ましく、1kg/m3以上、10kg/m3以下がより好ましい。
面内方向の平均密度の差が上記範囲よりも大きいと、強度や重量のバラツキが大きくなり易く、歩留まりが低下して、生産性が低下し易い。
【0011】
[厚さ]
発泡樹脂粒子積層体の厚さは、5mm以上、150mm以下が好ましく、10mm以上、100mm以下がより好ましい。そして、発泡樹脂積層体を構成する各層の厚さは、1mm以上、50mm以下が好ましく、2mm以上、40mm以下がより好ましい。特に、相対的に密度の高い層の厚さは、2mm以上、15mm以下が好ましく、5mm以上、12mm以下が好ましい。ここで、各層の厚さは、各層の単位範囲内における厚さの平均値を指す。
該厚さが上記範囲よりも薄いと、各々の層を十分な厚さにすることが困難になり易く、上記範囲よりも厚いと、軽量性、生産性が悪化する虞がある。
発泡樹脂粒子積層体の全体および各層の厚さが上記範囲であることによって、高強度、軽量性、断熱性、生産性のバランスに優れることができる。さらに、高クッション性や強靭性を得ることもできる。
【0012】
[幅、長さ]
発泡樹脂粒子積層体の幅や長さに特に制限は無い。一般的な公知の発泡積層体と同じ幅および長さを適用できる。発泡樹脂粒子積層体を連続的に製造する場合には、所望の長さを採用できる。
【0013】
[高強度性]
高強度性とは、応力に対して破壊され難いことであり、本発明においては、例えば、曲げ強度や圧縮強度が高いことで示される。
密度が高い層は高強度を示し易く、その高強度の層が寄与することによって、発泡樹脂粒子積層体全体の強度が向上する。
発泡樹脂粒子積層体の圧縮強度は、10N/cm2以上、50N/cm2以下が好ましく、11N/cm2以上、45N/cm2以下がより好ましい。上記範囲よりも低いと、例えば発泡樹脂粒子積層体を建築用資材用途に用いた場合に、強度が不足する虞があり、上記範囲よりも高いと、軽量性、断熱性、生産性の優れたバランスをとることが困難になり易い。
発泡樹脂粒子積層体の曲げ強度は、10N/cm2以上、150N/cm2以下が好ましく、15N/cm2以上、100N/cm2以下がより好ましい。上記範囲よりも低いと、例えば発泡樹脂粒子積層体を建築用資材用途に用いた場合に、強度が不足する虞があり、上記範囲よりも高いと、軽量性、断熱性、生産性の優れたバランスをとることが困難になり易い。
【0014】
[断熱性]
高断熱性とは熱伝導率が低いことであり、本発明において断熱性とは、発泡樹脂粒子積層体の厚さ方向の断熱性を指す。
発泡樹脂粒子積層体の厚さ方向の熱伝導率は、10×10-3W/(m・K)以上、41×10-3W/(m・K)以下が好ましく、15×10-3W/(m・K)以上、38×10-3W/(m・K)以下がより好ましく、20×10-3W/(m・K)以上、35×10-3W/(m・K)以下が更に好ましい。上記範囲よりも大きいと、発泡樹脂粒子積層体の断熱性が不十分になり易く、上記範囲よりも小さいと高強度、生産性とのバランスをとることが困難になり易い。
【0015】
[高クッション性]
発泡樹脂粒子積層体は、用途によっては、高クッション性に優れることが好ましい。
クッション性は、例えば、発泡樹脂粒子積層体を厚さ方向に5%圧縮して、25℃24時間放置後に厚さが何%復元しているかで表され、高クッション性とは、上記の復元が大きいことを指し、100%が好ましい。
【0016】
≪発泡樹脂粒子≫
発泡樹脂粒子は、発泡樹脂粒子積層体作成時に、予備発泡樹脂粒子が加熱等によって融着し合った状態の樹脂粒子である。発泡樹脂粒子の密度は、予備発泡樹脂粒子よりも小さくてもよく、大きくてもよい。
また、発泡樹脂粒子積層体中の発泡樹脂粒子の数基準の平均粒子径は0.5mm以上、5mm以下が好ましい。
発泡樹脂粒子は、発泡樹脂粒子に加工され得る一般的な熱可塑性樹脂を含有することができる。
該熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ハロゲン化樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ビニル系樹脂、アリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、イオウ系樹脂、ケトン樹脂、イソシアヌレート系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、アイオノマー、液晶ポリマー、及びこれらの共重合体樹脂等を用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いても良いし、2種以上を均一に混合して用いてもよい。また、組成の異なる2種以上の発泡樹脂粒子を併用してもよい。さらには、各層が異なる熱可塑性樹脂を含有する発泡樹脂粒子で形成されていてもよい。
本発明においては、これらの中でも、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂を含有することがより好ましく、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を含有することがより好ましく、ポリスチレン系樹脂含有することがさらに好ましい。
また、発泡樹脂粒子は、必要に応じて、難燃剤、可塑剤、帯電防止材剤、弾性微粒子、分散剤、界面活性剤、着色剤、薬剤等の各種添加剤を含有することができる。
発泡樹脂粒子内の気泡は独立気泡であってもよく、連続気泡であってもよい。
発泡樹脂粒子積層体中の発泡樹脂粒子は発泡樹脂粒子積層体に成型される際に変形されている為に、その形状に制限は無く、球状であってもよく、多面体であってもよい。また、扁平形状であってもよい。
【0017】
発泡樹脂粒子積層体は、密度が7kg/m3以上、100kg/m3以下の発泡樹脂粒子
からなることが好ましく、密度が8kg/m3以上、95kg/m3以下の発泡樹脂粒子からなることがより好ましい。そして、発泡樹脂粒子積層体の各層は、目標とする発泡樹脂積層体の全体の平均の密度、各層の密度、発泡樹脂積層体内で隣接する層間の平均密度の差等に応じて、上記範囲の密度の発泡樹脂粒子から選択された発泡樹脂粒子からなることが好ましい。
このように選択することによって、泡樹脂積層体の全体の平均の密度、発泡樹脂積層体内で隣接する層間の平均密度の差、発泡樹脂積層体の全体の平均密度の面内方向のバラツキを安定させることが容易になる。
一般的な発泡樹脂粒子を用いた積層体においては、発泡樹脂粒子の密度は、予備発泡樹脂粒子の密度と同程度である。しかしながら、本発明の発泡樹脂粒子積層体においては、発泡樹脂粒子の密度は、予備発泡樹脂粒子の密度よりも高いことが好ましい。
例えば、一般的には、樹脂ビーズの密度が1020~1030kg/m3を用いて、約65倍に発泡膨張して密度が約15kg/m3になっている予備発泡樹脂粒子は、積層体中で、約65倍で密度が約15kg/m3の発泡樹脂粒子になり、約23倍に発泡膨張して密度が約43kg/m3になっている予備発泡樹脂粒子は、積層体中で、約23倍で密度が約43kg/m3の発泡樹脂粒子になっている。
しかしながら、本発明においては、約65倍に発泡膨張して密度が約15kg/m3になっている予備発泡樹脂粒子は、積層体中で、約50倍で密度が約21kg/m3の発泡樹脂粒子になり、約23倍に発泡膨張して密度が約43kg/m3になっている予備発泡樹脂粒子は、積層体中で、約15倍で密度が約67kg/m3の発泡樹脂粒子になっていることが好ましい。
上記のように、本発明の発泡樹脂粒子積層体においては、発泡樹脂粒子積層体中に含まれる発泡樹脂粒子は、発泡樹脂粒子の50%以上、85%以下の密度の予備発泡樹脂粒子から形成されたものであることが好ましく、発泡樹脂粒子の60%以上、75%以下の密度の予備発泡樹脂粒子から形成されたものであることがより好ましい。
【0018】
≪予備発泡樹脂粒子≫
予備発泡樹脂粒子は、樹脂ビーズを加熱等によって予備発泡させて得られる樹脂粒子であり、樹脂ビーズよりも小さい密度を有する。
予備発泡樹脂粒子同士は、融着し合わず、粒子毎に独立している。
予備発泡樹脂粒子の発泡倍率は、5倍以上、100倍以下が好ましく、10倍以上、90倍以下がより好ましい。
予備発泡樹脂粒子の密度は、3.5kg/m3以上、85kg/m3以下が好ましく、4kg/m3以上、81kg/m3以下がより好ましく、4.2kg/m3以上、75kg/m3以下がさらに好ましく、4.8kg/m3以上、72kg/m3以下が特に好ましい。そして、この範囲内から、目標とする発泡樹脂積層体中の発泡樹脂粒子の密度に応じて選択されることが好ましい。
【0019】
≪樹脂ビーズ≫
樹脂ビーズは、予備発泡樹脂粒子を作製するための未発泡の樹脂粒子であり、少なくとも熱可塑性樹脂と発泡剤とを含有する。
樹脂ビーズ同士は、融着し合わず、粒子毎に独立している。
樹脂ビーズの形状に特に制限は無く、球状、楕円球状、扁平状、破砕状、円筒状等の何れでもよいが、球状または球状に近いものが好ましい。
樹脂ビーズの密度は、700kg/m3以上、2000kg/m3以下が好ましく、900kg/m3以上、1500kg/m3以下がより好ましく、この範囲内から、目標とする予備発泡樹脂粒子や発泡樹脂積層体中の発泡樹脂粒子の密度に応じて選択されることが好ましい。
【0020】
(ポリスチレン系樹脂)
本発明において、ポリスチレン系樹脂とは、スチレンモノマーおよび/またはパラメチルスチレンを原料とした(共)重合体である。ここで、共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体の何れであってもよい。
共重合体としては、エチレンやプロピレン等のオレフィン系モノマーとの共重合体が好ましい。
上記の共重合体の具体例としては、例えば、スチレン-エチレンブロック共重合体、スチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレンブロック共重合体、アクリルニトリル-アクリレート-スチレン共重合体、アクリルニトリル-エチレン-スチレン共重合体、アクリルニトリル-スチレン共重合体、アクリルニトリル-ブタジエンースチレン共重合体、アクリルニトリル-塩化ビニル-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体、エチレン-塩化ビニル-スチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル-スチレン共重合体等を挙げることができる。
【0021】
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン系モノマーを原料とした(共)重合体である。共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体の何れであってもよい。
具体的なポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリ(メチルペンテン)、ポリプロピレン-EPDM、ポリエチレン-EPDM、イソブチレン-無水レイン酸共重合体等が挙げられる。
【0022】
(ポリウレタン系樹脂)
ポリウレタン系樹脂とは、2個以上の水酸基を有するポリオールと、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとを反応させて得られる、主骨格にウレタン結合を有する樹脂である。
ポリウレタン系樹脂はジオール類やジイソシアネート類によって伸長されていてもよく、カルボキシ基やアミノ基等を有する化合物によって変性されていてもよい。
【0023】
[難燃剤]
難燃剤としては、ハロゲン系化合物、リン系化合物、シリコーン系化合物、水和金属化合物、金属酸化物、炭酸金属塩、窒素系化合物、ホウ素系化合物、その他無機物等が挙げられる。これらの難燃剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
ハロゲン系化合物としては、臭素系、塩素系が好ましく、臭素系が特に好ましい。具体例としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノール類ノボラック型エポキシ樹脂臭素化物、ヘキサブロモフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、塩素化パラフィン、等が挙げられる。これらの中でも、テトラブロモビスフェノールAが特に好ましい。
リン系化合物の具体例としては、赤燐、ポリリン酸アンモニウム、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート等が挙げられる。
水和金属化合物の具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化マグネシウム、等が挙げられる。
金属酸化物の具体例としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化錫、三酸化アンチモン、雲母類、等が挙げられる。
炭酸金属塩の具体例としては、炭酸カルシウム等が挙げられる。
窒素系化合物の具体例としては、メラミン樹脂、シアヌレート系樹脂等が挙げられる。
ホウ素系化合物の具体例としては、メタホウ酸バリウム等が挙げられる。
その他の無機物としては、カオリン、滑石、沸石、ホウ砂、ダイアスポア、石膏等が挙げられる。
【0024】
[可塑剤]
可塑剤としては、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪族一塩基酸エステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤等を挙げることができる。
これらの可塑剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0025】
[着色剤]
着色剤には、一般的な顔料又は染料が用いられる。顔料としては、無機系顔料または有機系顔料があり、具体例としては、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、シアニン系顔料、キナクドリン系顔料などがある。染料では、アゾ系染料、アントラキノン系染料、インジゴイド系染料、スチルベン系染料等を挙げることができる。
これらの着色剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0026】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
これらの紫外線吸収剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0027】
[酸化防止剤]
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等を挙げることができる。
これらの酸化防止剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0028】
[防カビ剤]
防カビ剤としては、10,10’-オキシビスフェノキシアルシン、N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N-ジメチル-N’-フェニルーN’-(フルオロジクロロメチルチオ)-スルファミド、2-メトキカルボニルアミノベンズイミダゾール、2-メトキカルボニルアミノベンゾイミダゾール、チアベンゾール等を挙げることができる。
これらの防カビ剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0029】
[帯電防止剤]
帯電防止剤としては、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、両性系帯電防止剤、非イオン系帯電防止剤、導電性樹脂等を用いることができる。これらの帯電防止剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
カチオン系帯電防止剤の具体例としては、第4級アンモニウムクロライド、第4級アンモニウムサルフェート、第4級アンモニウムナイトレート等が挙げられる。
アニオン系帯電防止剤の具体例としては、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルサルフェート、アルキルホスフェート等が挙げられる。
両性系帯電防止剤の具体例としては、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型、アルキルアラニン型等が挙げられる。
非イオン系帯電防止剤の具体例としては、ポリ(オキシエチレン)アルキルアミン、ポリ(オキシエチレン)アルキルアミド、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、ポリ(オキシエチレン)アルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
導電性樹脂の具体例としては、ポリビニルベンジル型カチオン、ポリアクリル酸型カチオン等が挙げられる。
【0030】
[弾性微粒子]
弾性微粒子はゴム弾性を呈する微粒子である。
弾性微粒子の具体例としては、アクリルビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリプロピレンビーズ等が挙げられる。これらの弾性微粒子は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0031】
≪密度の異なる層の具体例≫
発泡樹脂粒子積層体を形成する密度の異なる層は、例えば、密度の大小によって、便宜上、高密度層、中密度層、低密度層等に分類することができる。
【0032】
(高密度層)
本発明においては、高密度層とは、好ましくは、密度が、65kg/m3以上、95kg/m3以下、より好ましくは、70kg/m3以上、90kg/m3以下の層を指す。
高密度層を構成する発泡樹脂粒子の発泡倍率は、5倍以上、30倍以下が好ましく、10倍以上、20倍以下がより好ましい。
【0033】
(中密度層)
本発明においては、中密度層とは、密度が、35kg/m3以上、65kg/m3未満、好ましくは、40kg/m3以上、60kg/m3以下の層を指す。
また、中密度層の発泡倍率は、35倍より大きく、65倍以下が好ましく、40倍以上、60倍以下がより好ましい。
中密度層を構成する発泡樹脂粒子の発泡倍率は、35倍よりも大きく、65倍以下が好ましく、40倍以上、60倍以下がより好ましい。
【0034】
(低密度層)
本発明においては、低密度層とは、密度が、10kg/m3以上、35kg/m3未満、好ましくは、12kg/m3以上、30kg/m3以下の層を指す。
また、低密度層の発泡倍率は、65倍より大きく、100倍以下が好ましく、70倍以上、90倍以下がより好ましい。
【0035】
≪3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体≫
発泡樹脂粒子積層体が3層以上で構成されている場合とは、発泡樹脂粒子積層体が、密度が異なる2種以上の層によって構成されている場合であり、上記の高密度層、中密度層、低密度層からなる群から選ばれる2種以上の層によって構成されていることが好ましい。
発泡樹脂粒子積層体が3層で構成されている場合は、例えば、高密度層/中密度層/高密度層の組み合わせ、高密度層/低密度層/高密度層の組み合わせ、中密度層/低密度層/中密度層の組み合わせ、低密度層/高密度層/低密度層の組み合わせ等が挙げられる。上記の中でも、相対的に密度の高い層が外側に位置する組み合わせが好ましい。
発泡樹脂粒子積層体が4層以上で構成されている場合は、例えば、高密度層/中密度層/低密度層/高密度層の組み合わせ、高密度層/中密度層/低密度層/中密度層/高密度層の組み合わせ、低密度層/高密度層/中密度層/低密度層の組み合わせ等が挙げられる。上記の中でも、相対的に密度の高い層が外側に位置する組み合わせが好ましい。
ここで、例えば、高密度層が3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体中に複数層ある場合に、それぞれの高密度層は同じ厚さおよび/または密度であってもよく、異なる厚さおよび/または密度であってもよい。中密度層または低密度層についても同様である。
【0036】
3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体の全体の密度は、35kg/m3以上、50kg/m3以下が好ましく、38kg/m3以上、47kg/m3以下がより好ましい。
そして、発泡樹脂積層体内で隣接する層間の平均密度の差は、30kg/m3以上、7
0kg/m3以下であることが好ましく、40kg/m3以上、60kg/m3以下であることがより好ましい。
3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体の全体の厚さは、特に制限は無いが、10mm以上、100mm以下が好ましく、30mm以上、70mm以下がより好ましい。
3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体の圧縮強度は、10N/cm2以上、50N/cm2以下が好ましく、11N/cm2以上、45N/cm2以下がより好ましい。
3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体の曲げ強度は、30N/cm2以上、150N/cm2以下が好ましく、50N/cm2以上、130N/cm2以下がより好ましい。
3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体は、高強度を求められる場合に適用されることが好ましく、高強度を優先して、高強度、軽量性、断熱性、生産性のバランスに優れる為には、密度、厚さ、強度が上記の範囲であることが好ましい。
【0037】
ここで、3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体は、さらに下記の構成を有することによって、上記のバランスの達成を容易にすることができる。
【0038】
3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体の全体の厚さ方向の熱伝導率は、15×10-3W/(m・K)以上、41×10-3W/(m・K)以下が好ましく、20×10-3W/(m・K)以上、38×10-3W/(m・K)以下がより好ましい。上記範囲よりも大きいと、発泡樹脂粒子積層体の断熱性が不十分になり易く、上記範囲よりも小さいと高強度、生産性とのバランスをとることが困難になり易い。
【0039】
3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体を構成する高密度層は、密度が65kg/m3以上、95kg/m3以下が好ましく、70kg/m3以上、85kg/m3以下がより好ましい。該密度が上記範囲よりも低いと、強度が不十分になる虞があり、上記範囲よりも高いと、軽量性、断熱性が不十分になる虞がある。
該高密度層の厚さは、2mm以上、96mm以下が好ましく、5mm以上、80mm以下がより好ましい。該厚さが上記範囲よりも薄いと、発泡樹脂粒子積層体の強度が不十分になる虞があり、上記範囲よりも厚いと、軽量性、断熱性が不十分になる虞がある。
【0040】
3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体を構成する中密度層は、密度が35kg/m3以上、65kg/m3以下が好ましく、40kg/m3以上、60kg/m3以下がより好ましい。該密度が上記範囲よりも低いと、強度が不十分になる虞があり、上記範囲よりも高いと、軽量性、断熱性が不十分になる虞がある。
該中密度層の厚さは、2mm以上、96mm以下が好ましく、5mm以上、80mm以下がより好ましい。該厚さが上記範囲よりも薄いと、相対的に密度が高い層の寄与が小さくなり、強度が不十分になる虞があり、上記範囲よりも厚いと、軽量性、断熱性が不十分になる虞がある。
【0041】
3層以上構成の発泡樹脂粒子積層体を構成する低密度層は、密度が10kg/m3以上、25kg/m3以下が好ましく、12kg/m3以上、20kg/m3以下が好ましい。該密度が上記範囲よりも低いと、強度が不十分になる虞があり、上記範囲よりも高いと、軽量性、断熱性が不十分になる虞がある。
該低密度層の厚さは、2mm以上、96mm以下が好ましく、5mm以上、80mm以下が好ましい。該厚さが上記範囲よりも薄いと、相対的に密度が低い層の寄与が小さくなり、断熱性が不十分になる虞があり、上記範囲よりも厚いと、強度が不十分になる虞がある。
【0042】
≪2層構成の発泡樹脂粒子積層体≫
発泡樹脂粒子積層体が2層で構成されている場合とは、発泡樹脂粒子積層体が、相対的に密度が高い層と低い層とによって構成されている場合であり、上記の高密度層、中密度
層、低密度層からなる群から選ばれる2種以上の層によって構成されていることが好ましい。
発泡樹脂粒子積層体が2層で構成されている場合は、例えば、高密度層/中密度層の組み合わせ、高密度層/低密度層の組み合わせ、中密度層/低密度層の組み合わせが挙げられる。
【0043】
2層構成の発泡樹脂粒子積層体の全体の密度は、10kg/m3以上、75kg/m3以下が好ましく、15kg/m3以上、65kg/m3以下がより好ましい。
そして、発泡樹脂積層体内で隣接する該2層間の平均密度の差は、10kg/m3以上、80kg/m3以下であることが好ましく、20kg/m3以上、70kg/m3以下であることがより好ましい。
2層構成の発泡樹脂粒子積層体の全体の厚さは、特に制限は無いが、5mm以上、150mm以下が好ましく、30mm以上、100mm以下がより好ましい。
2層構成の発泡樹脂粒子積層体の圧縮強度は、10N/cm2以上、50N/cm2以下が好ましく、11N/cm2以上、45N/cm2以下がより好ましい。
2層構成の発泡樹脂粒子積層体の曲げ強度は、10N/cm2以上、100N/cm2以下が好ましく、15N/cm2以上、90N/cm2以下がより好ましい。
2層構成の発泡樹脂粒子積層体は、軽量性を求められる場合に適用されることが好ましく、軽量性を優先して、高強度、軽量性、断熱性、生産性のバランスに優れる為には、密度、厚さ、強度が上記の範囲であることが好ましい。
【0044】
ここで、2層構成の発泡樹脂粒子積層体は、さらに下記の構成を有することによって、上記のバランスの達成を容易にすることができる。
【0045】
2層構成の発泡樹脂粒子積層体の全体の厚さ方向の熱伝導率は、10×10-3W/(m・K)以上、35×10-3W/(m・K)以下が好ましく、15×10-3W/(m・K)以上、33×10-3W/(m・K)以下がより好ましい。上記範囲よりも大きいと、発泡樹脂粒子積層体の断熱性が不十分になり易く、上記範囲よりも小さいと高強度、生産性とのバランスをとることが困難になり易い。
【0046】
2層構成の発泡樹脂粒子積層体を構成する高密度層は、密度が50kg/m3以上、75kg/m3以下が好ましく、65kg/m3以上、70kg/m3以下がより好ましい。該密度が上記範囲よりも低いと、強度が不十分になる虞があり、上記範囲よりも高いと、軽量性、断熱性が不十分になる虞がある。
該高密度層の厚さは、2mm以上、98mm以下が好ましく、5mm以上、80mm以下がより好ましい。該厚さが上記範囲よりも薄いと、発泡樹脂粒子積層体の強度が不十分になる虞があり、上記範囲よりも厚いと、軽量性、断熱性が不十分になる虞がある。
【0047】
2層構成の発泡樹脂粒子積層体を構成する中密度層は、密度が30kg/m3以上、60kg/m3未満が好ましく、35kg/m3以上、55kg/m3以下がより好ましい。該密度が上記範囲よりも低いと、強度が不十分になる虞があり、上記範囲よりも高いと、軽量性、断熱性が不十分になる虞がある。
該中密度層の厚さは、2mm以上、98mm以下が好ましく、5mm以上、80mm以下がより好ましい。該厚さが上記範囲よりも薄いと、相対的に密度が高い層の寄与が小さくなり、強度が不十分になる虞があり、上記範囲よりも厚いと、軽量性、断熱性が不十分になる虞がある。
【0048】
2層構成の発泡樹脂粒子積層体を構成する低密度層は、密度が10kg/m3以上、65kg/m3以下が好ましく、12kg/m3以上、60kg/m3以下がより好ましい。該密度が上記範囲よりも低いと、強度が不十分になる虞があり、上記範囲よりも高いと、
軽量性、断熱性が不十分になる虞がある。
該低密度層の厚さは、3mm以上、140mm以下が好ましく、5mm以上、135mm以下が好ましい。該厚さが上記範囲よりも薄いと、相対的に密度が低い層の寄与が小さくなり、断熱性が不十分になる虞があり、上記範囲よりも厚いと、強度が不十分になる虞がある。
【0049】
≪発泡樹脂粒子積層体の作製方法≫
[予備発泡樹脂粒子の作製]
予備発泡樹脂粒子は、少なくとも、発泡剤と熱可塑性樹脂とを含有する発泡性ビーズを、公知の方法によって予備発泡させて、得ることができる。さらには、発泡速度を調節する目的で発泡助剤を含有させてもよい。
発泡剤は、一般的に使用されている公知の熱分解性または揮発性の発泡剤を用いてもよいが、熱可塑性樹脂の軟化点よりも高い温度で、十分に熱分解または揮発することが好ましい。
例えば、相対的に密度の高い層には、相対的に低い発泡倍率を適用することが好ましい。
予備発泡樹脂粒子を製造するための発泡機には、例えば、常圧バッチ式発泡機、加圧バッチ式発泡機、連続式発泡機、温風式バッチ式発泡機等の、公知の発泡機を用いることができる。
【0050】
(熱分解性発泡剤)
熱分解性発泡剤としては、例えば、アゾ化合物、ニトロソ化合物、スルホニルヒドラジド化合物、アジド化合物、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモン、亜硝酸アンモン等を挙げることができる。これらの熱分解性発泡剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
ニトロソ化合物の具体例としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、ジアゾアミノベンゼン、アゾジカルボンアミドエステル等が挙げられる。
ニトロソ化合物の具体例としては、ジニトロソベンタメチレンテトラミン(DPT)等が挙げられる。
スルホニルヒドラジド化合物の具体例としては、p-トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
アジド化合物の具体例としては、4,4’-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホアジド等が挙げられる。
【0051】
(発泡助剤)
発泡速度を速める発泡助剤としては、金属石鹸、無機塩、酸類等を用いることができる。これらの発泡助剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
金属石鹸の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ、無機塩の具体例としては亜鉛華硝酸亜鉛等が挙げられ、酸類の具体例としてはアジピン酸、しゅう酸等が挙げられる。
発泡速度を遅延する発泡助剤としては、有機酸、有機酸無水物、錫化合物等を用いることができる。
有機酸の具体例としてはマレイン酸、フタル酸等が挙げられ、有機酸無水物の具体例としてはマレイン酸無水物、フタル酸無水物等が挙げられ、錫化合物の具体例としてはジブチル錫マレート、塩化錫等が挙げられる。
【0052】
[発泡樹脂粒子積層体の成形]
発泡樹脂粒子積層体は、各層を目標とする密度と厚さで形成し得るように、層毎に予備発泡樹脂粒子を供給して積み、次いで熱風や蒸気等によって加熱して、必要に応じて加圧して、予備発泡樹脂粒子同士を融着させて、成型し、各層の形成と積層とを同時に行って得ることができる。
上記の発泡樹脂粒子積層体の作製は、バッチ式であってもよく、連続式であってもよい。
ここで、予備発泡樹脂粒子は、上記の加熱中に二次発泡してもよいが、最終的に発泡樹脂粒子積層体中の発泡樹脂粒子の密度は予備発泡樹脂粒子よりも高くなっていることが好ましい。また、必要に応じて、発泡樹脂粒子積層体を乾燥させてもよい。
加熱、加圧、二次発泡、乾燥等のバランスを調節することによって、発泡樹脂粒子の密度を調節したり、発泡樹脂粒子積層体の密度や熱伝導率を調節することができる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0054】
<原材料>
下記の予備発泡樹脂粒子を用いて発泡樹脂粒子積層体を成形し、実施例と比較例を行った。
・予備発泡樹脂粒子1:ポリスチレン系樹脂含有、予備発泡倍率21倍、密度53.6kg/m3。
・予備発泡樹脂粒子2:ポリスチレン系樹脂含有、予備発泡倍率18倍、密度62.5kg/m3。
・予備発泡樹脂粒子3:ポリスチレン系樹脂含有、予備発泡倍率24倍、密度46.9kg/m3。
・予備発泡樹脂粒子4:ポリスチレン系樹脂含有、予備発泡倍率40倍、密度28.0kg/m3。
・予備発泡樹脂粒子5:ポリスチレン系樹脂含有、予備発泡倍率47倍、密度24.0kg/m3。
・予備発泡樹脂粒子6:ポリスチレン系樹脂含有、予備発泡倍率80倍、密度14.0kg/m3。
・予備発泡樹脂粒子7:ポリスチレン系樹脂含有、予備発泡倍率50倍、密度22.4kg/m3。
・予備発泡樹脂粒子8:ポリスチレン系樹脂含有、予備発泡倍率40倍、密度28.1kg/m3。
・予備発泡樹脂粒子9:ポリスチレン系樹脂含有、予備発泡倍率180倍、密度6.2kg/m3。
【0055】
<発泡樹脂粒子積層体の作製と評価>
[実施例1]
上層、中層、下層用の独立した予備発泡樹脂粒子の供給口を備えた押出成型機を用いて、上層用供給口からは予備発泡樹脂粒子1を、中層用供給口からは予備発泡樹脂粒子3を、下層用供給口からは予備発泡樹脂粒子1を、発泡樹脂粒子積層体が高密度層1(予備発泡樹脂粒子1)/低密度層1(予備発泡樹脂粒子3)/高密度層2(予備発泡樹脂粒子1)=約9mm/約27mm/約9mmの層厚構成になるように、各予備発泡樹脂粒子を供給して、蒸気による加熱・加圧を行って成型し、乾燥し、縦1000mm×横1000mmの板状の発泡樹脂粒子積層体を得た。
そして各種評価を行った。
【0056】
[実施例2、参考例3]
表1に記載された層厚構成になるように、予備発泡樹脂粒子の種類と層厚を選択して、実施例1と同様に操作して、発泡樹脂粒子積層体を得て、同様に評価を行った。
【0057】
[参考例4、5]
成型機の中層、下層用の供給口のみを使い、表2に記載された層厚構成になるように、予備発泡樹脂粒子の種類と層厚を選択して、実施例1と同様に操作して、発泡樹脂粒子積層体を得て、同様に評価を行った。
【0058】
[比較例1~3]
成型機の下層用の供給口のみを使い、表2に記載された層厚構成になるように、予備発泡樹脂粒子の種類と層厚を選択して、実施例1と同様に操作して、発泡樹脂粒子積層体を得て、同様に評価を行った。
【0059】
[結果まとめ]
全実施例の発泡樹脂粒子積層体は、低密度(軽量性)と高強度と高断熱性(低熱伝導率)の優れたバランスを示したが、比較例の発泡樹脂粒子積層体は、これらの何れかが劣る結果を示した。
具体的には、比較例1は低密度(軽量性)が劣り、比較例2は低密度(軽量性)と高強度と高断熱性(低熱伝導率)の何れも特に優れることが無く、比較例3は高強度に劣る結果を示した。
【0060】
【0061】
【0062】
<評価方法>
[密度]
(発泡樹脂粒子積層体全体の密度)
発泡樹脂粒子積層体の、左端部、中央部、右端部のそれぞれから100mm×100mmの切片を切り出して試験片とし、JIS A 9521に準拠して、測定された体積と質量から、発泡樹脂粒子積層体の左端部、中央部、右端部の密度を算出し、発泡樹脂粒子積層体全体の密度としてこれらの平均値を算出した。
(発泡樹脂粒子積層体を構成する各層の密度)
発泡樹脂粒子積層体の、左端部、中央部、右端部のそれぞれから100mm×100mmの切片を切り出して、不要な層を削り落として、測定対象の層のみを残して試験片とし、JIS A 9521に準拠して、測定された体積と質量から、各層の左端部、中央部、右端部の密度を算出し、層全体の密度としてこれらの平均値を算出した。
【0063】
[曲げ強度、曲げ弾性率]
発泡樹脂粒子積層体から100mm×350mmの切片を切り出して試験片とし、卓上型テンシロン試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製RTF-1350)を用いて、JIS A 9521に準拠して、支点間距離300mm、試験速度20mm/minの3点曲げ試験により、曲げ強度と曲げ弾性率とを測定した。
2層品の測定においては、相対的に密度の低い層がプランジャーに当たるように試験片をセットして測定した。
【0064】
[圧縮強度、圧縮弾性率]
発泡樹脂粒子積層体から100mm×100mmの切片を切り出して試験片とし、卓上型テンシロン試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製RTF-1350)を用いて、JIS A 9521に準拠して、試験速度5mm/minにより、10%圧縮強度と圧縮弾性率とを測定した。
2層品の測定においては、相対的に密度の高い層がプランジャーに当たるように試験片をセットして測定した。
【0065】
[熱伝導率]
発泡樹脂粒子積層体から切片を切り出して試験片とし、JIS A 1412-2に準拠して、熱伝導率計(英弘精機株式会社製HC-07/200)を用いて、発泡樹脂粒子積層体の20℃における厚み方向の熱電導率を測定した。
【符号の説明】
【0066】
1 発泡樹脂粒子積層体
2 高密度層
3 中密度層
4 低密度層
5 発泡樹脂粒子積層体の表面
6 発泡樹脂粒子