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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】紙ワイパー製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20230927BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20230927BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20230927BHJP
   A47L 13/16 20060101ALI20230927BHJP
   A47K 10/20 20060101ALN20230927BHJP
   B65D 5/02 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
B65D83/08 G
D21H27/00 F
D21H27/30 B
A47L13/16 A
A47K10/20 B
B65D5/02 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019177358
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021054445
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】林 生弥
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135225(JP,A)
【文献】特開2018-154360(JP,A)
【文献】特開2018-188747(JP,A)
【文献】特開2018-203263(JP,A)
【文献】特開2018-076123(JP,A)
【文献】登録実用新案第3002269(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/08
D21H 27/00
D21H 27/30
A47L 13/16
A47K 10/20
B65D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポップアップ方式で折り畳まれた紙ワイパーと、前記紙ワイパーを収納し、取出口から前記紙ワイパーを取り出す収納箱と、を備える紙ワイパー製品であって、
前記紙ワイパーは、木材パルプ、及び古紙パルプから選ばれる少なくとも1種を構成原料とし、その引張強度がMD方向で2800gf/25mm以上3800gf/25mm以下かつCD方向で1400gf/25mm以上2400gf/25mm以下、製品紙厚が2.30mm/10プライ以上3.00mm/10プライ以下、製品密度が3プライ以上として0.080g/cm以上0.120g/cm以下であり、
前記収納箱は、段ボールを基材とし、基材の厚みが1.0mm以上4.0mm以下であり、
前記取出口の横幅は前記紙ワイパーの横幅に対して60%長さ以上70%長さ以下、縦幅は前記紙ワイパーの縦幅に対して45%長さ以上55%長さ以下であり、
前記紙ワイパーが、前記紙ワイパーよりも厚みの小さい薄葉紙を2~6プライ(枚)重ね合わせたものであり、その坪量が40g/m 以上140g/m 以下である、ことを特徴とする、紙ワイパー製品。
【請求項2】
前記紙ワイパーの吸水性が550g/m以上である、請求項1に記載の紙ワイパー製品。
【請求項3】
前記紙ワイパーがエンボス加工品である、請求項1又は2に記載の紙ワイパー製品。
【請求項4】
前記紙ワイパーの前記構成原料が古紙パルプを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の紙ワイパー製品。
【請求項5】
前記紙ワイパーが、その全量に対して60重量%以上100重量%以下の前記古紙パルプを含む、請求項4に記載の紙ワイパー製品。
【請求項6】
前記収納箱の高さが35cm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の紙ワイパー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙ワイパーをポップアップ方式で取出し可能に収納箱に収納した紙ワイパー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙ワイパーは、拭き取り性能、液体吸収性能などに優れることから、例えば、実験室や製造現場などにおいて、各種機器、装置、床面などの清掃作業などに広く使用されている。従来から、ティシュペーパーの収納と同様に(特許文献1、2参照)、紙ワイパーをいわゆるポップアップ方式に折り畳んだ積層体を収納箱に収納し、収納箱の天面に紙ワイパーの取出口を設けた紙ワイパー製品が普及している。
【0003】
紙ワイパーを収納箱に収納する利点としては、帯での包装形態に比べ、定位置、定管理に適している点、剥き出しになっていないため衛生的である点、収納箱に入れたまま持ち運ぶことで、使用場所を移動しやすい点などが挙げられる。
【0004】
紙ワイパーは、木材パルプ、古紙パルプ、非木材パルプ、それらの2種以上の混合物などの構成原料から製造され、拭き取り性能、液体吸収性能などの観点から、ティシューよりも坪量、紙厚が高く嵩張るものになる。このため、紙ワイパーを収納する収納箱は、背が高くかつ長細いものになりがちである。また、収納箱の材質も強度やコストなどの観点から段ボールが一般的である。すなわち、紙ワイパーの収納には、背の高い段ボール製収納箱(以下「段ボールカートン」とも称す)が用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-281155号公報
【文献】特開2005-225563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、背の高い段ボールカートンにポップアップ方式で紙ワイパーを収納すると、取り出すときに紙ワイパーが破れ易いという問題がある。これは、ティシュー製収納箱などよりも、段ボールカートンの方が紙ワイパーの取り出し抵抗が高いことが一因と考えられる。さらに、紙ワイパーの残量が減った状態で紙ワイパーを取り出すときに、紙ワイパーの積層体が段ボールカートンの下部に落ち込んでポップアップできなくなるドロップバックや段ボールカートンの倒れ易さ(不安定さ)などの問題もある。
【0007】
また、構成原料に古紙パルプを配合した紙ワイパーは、木材パルプを100%使用したものに比べ破れやすい。
【0008】
紙ワイパーを取り出すときの破れやすさや、ドロップバックを解決するには、紙ワイパーの強度を高くすることが考えられる。しかしながら、紙力増強剤などを配合して強度を高くすると、紙ワイパー自体の柔軟性や吸水性能の低下などの好ましくない効果が現われる。また、紙ワイパーの残量が少なくなった状態で、中の紙ワイパーを取り出したときの段ボールカートンの倒れ易さ(不安定さ)を改善するには、紙ワイパーと段ボールカートンとの抵抗が小さい事が求められる。
【0009】
本発明の目的は、収納箱から取り出したときの紙ワイパーの破れやすさ、ドロップバック、収納箱の倒れ易さが改善された紙ワイパー製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、好ましい実施形態として、下記(1)~(8)の紙ワイパー製品を提供する。
(1)ポップアップ方式で折り畳まれた紙ワイパーと、紙ワイパーを収納し、開口部から紙ワイパーを取り出す収納箱と、を備える紙ワイパー製品であって、紙ワイパーは、木材パルプ、及び古紙パルプから選ばれる少なくとも1種を構成原料とし、その引張強度がMD方向で2800gf/25mm以上3800gf/25mm以下かつCD方向で1400gf/25mm以上2400gf/25mm以下、製品紙厚が2.30mm/10プライ以上3.30mm/10プライ以下、製品密度が3プライ以上として0.080g/cm以上0.120g/cm以下であり、収納箱は、段ボールを基材とし、基材の厚みが1.0mm以上4.0mm以下であり、取出口の横幅は紙ワイパーの横幅に対して60%長さ以上70%長さ以下、縦幅は紙ワイパーの縦幅に対して45%長さ以上55%長さ以下であることを特徴とする、紙ワイパー製品。
(2)紙ワイパーが、紙ワイパーよりも厚みの小さい薄葉紙を2プライ(枚)以上15プライ(枚)以下重ね合わせたものであり、薄葉紙1プライ(枚)の坪量が15g/cm以上45g/cm以下である、上記(1)の紙ワイパー製品。
(3)紙ワイパーが、紙ワイパーよりも厚みの小さい薄葉紙を2~6プライ(枚)重ね合わせたものであり、その坪量が40g/cm以上140g/cm以下である、上記(1)又は(2)の紙ワイパー製品。
(4)紙ワイパーの吸水性が550g/m以上である、上記(1)~(3)のいずれかの紙ワイパー製品。
(5)紙ワイパーがエンボス加工品である、上記(1)~(4)のいずれかの紙ワイパー製品。
(6)紙ワイパーの構成原料が古紙パルプを含む、上記(1)~(5)のいずれかの紙ワイパー製品。
(7)紙ワイパーが、その全量に対して80重量%以下の古紙パルプを含む、上記(6)の紙ワイパー製品。
(8)収納箱の高さが35cm以下である、上記(1)~(7)のいずれかの紙ワイパー製品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、収納箱から取り出した時の紙ワイパーの破れやすさ、ドロップバック、収納箱の倒れ易さが改善された、紙ワイパー製品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)本発明に係る紙ワイパー製品の一実施形態の外観を模式的に示す斜視図、(b)本発明に係る紙ワイパー製品の一実施形態の使用時の外観を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示す収納箱の展開平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態である紙ワイパー製品1について詳細に説明する。図1(a)本発明の紙ワイパー製品1の外観を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は紙ワイパー製品1の使用時の外観を模式的に示す斜視図である。なお、図1中、矢印Xで示されるX方向、矢印Yで示されるY方向、及び矢印Zで示されるZ方向は、それぞれ、収納箱10の幅方向(又は短手方向)、幅方向に対して直交する収納箱10の長手方向、並びに幅方向及び長手方向に対してそれぞれ直交する収納箱10の高さ方向である。
【0014】
図1に示す紙ワイパー製品1は、破断させることにより取出口2aが形成されるミシン目部21を有する収納箱10と、取出口2aから取り出し可能なポップアップ方式の積層体(不図示)として収納箱10内に収納された紙ワイパー6と、を備える。
【0015】
より具体的には、図1に示すように、収納箱10は、ミシン目部21で囲まれた領域を有する頂面部2、これに対向する底面部3、頂面部2と底面部3とを連結する左右の側面部4、4’、5、5’により区画された直方体状の箱体である。また、収納箱10の内部空間には、ポップアップ方式に積層された紙ワイパー6が収納されており、ミシン目部21で囲まれかつ略円盤状の平面形状を有する領域の破断により形成される取出口2aから紙ワイパー6を収納箱10の外部へ取り出すことができる(図1(b))。
【0016】
図2は、収納箱10の展開平面図である。図2に示す収納箱10は、後述するように所定の厚みを有する段ボール製基材から構成され、例えば、頂面部2、底面部3及び左右の側面部4、4’、5、5’の各フラップを折り曲げ、各フラップの当接部分をホットメルト接着材などで接着することにより作製される。収納箱10の基材となる段ボールは、例えば、古紙、バージンパルプ、これらの混合物などから構成される。
【0017】
段ボール製基材の厚みは、1.0mm以上4.0mm以下、好ましくは2.0mm以上3.0mm以下である。前記範囲の厚みを有する段ボールを基材として用いることにより、収納箱10の強度を保持しながら、収納箱10の高さを40mm以下、好ましくは35mm以下とすることができる。その結果、後述する紙ワイパー6の改質と相俟って、ドロップバッグの発生が顕著に少なくなり、また、紙ワイパー6の残量が少なくなった状態で、紙ワイパー6を取り出したときの、収納箱10の倒れ易さ(不安定さ)を改善することができる。
【0018】
本実施形態では、収納箱10の立体形状は略直方体状であるが、複数の面及び紙ワイパー6を収納可能な内部空間を有する立体形状であれば特に制限されず、例えば、立方体状、円柱状、頂面部2及び頂面部2に略平行に離隔して対向する底面部3が長円状、4つの角が丸まった角丸長方形状などである立体形状などが挙げられる。これらの中でも、直方体状が好ましく、頂面部2において長辺方向が幅方向よりも2倍以上長い直方体状がより好ましい。
【0019】
取出口2a(又はミシン目部21)の平面形状は本実施形態では円盤状であるが、これに限定されず、例えば、一方向に長い長方形やひし形、長円などが挙げられる。ミシン目部21を手指、ペーパーナイフ、ナイフ、などで破断することにより、ミシン目部21とほぼ同じ形状、及びほぼ同じ寸法を有し、収納箱内の紙ワイパー6を収納箱から外部に取り出すための取出口2aが形成される。
【0020】
紙ワイパー6の積層体を収納箱10に収納した状態で、取出口2aの横幅(Y方向の最大幅)は紙ワイパー6の横幅(Y方向の最大幅)に対して60%長さ以上70%長さ以下、好ましくは65%長さ以上68%長さ以下とし、かつ取出口2aの縦幅(X方向の最大幅)は紙ワイパー6の縦幅(X方向の最大幅)に対して45%長さ以上55%長さ以下、好ましくは48%長さ以上52%長さ以下とする。取出口2aの横幅、及び縦幅をそれぞれ前記範囲に設定することにより、主に、紙ワイパー6の残量が少なくなった状態で、紙ワイパー6を取り出したときの、収納箱10の倒れ易さ(不安定さ)を顕著に改善することができる。
【0021】
本実施形態では頂面部2に1つのミシン目部21が設けられているが、これに限定されず、複数のミシン目部21が1つの面に設けられてもよく、複数のミシン目部21が複数の面に設けられてもよい。
【0022】
収納箱10の高さ(Z方向の長さ)は特に限定されないが、例えば、ドロップバック、紙ワイパー6を取り出すときの収納箱10の倒れ易さなどを改善する観点などから、好ましくは40cm以下、より好ましくは35cm以下とすることができる。本発明で使用する紙ワイパー6は、後述するように、嵩高いものであるが、製品密度が比較的低いことから、収納箱10の高さを低くしても、紙ワイパー6の収納量の減少を抑制できる。また、紙ワイパー6と収納箱10との接触抵抗が比較的小さいことから、収納箱10の高さを40cmを超える範囲としても、ドロップダウンの発生や、紙ワイパー6を取り出すときの収納箱10の倒れなどは従来技術に比べて抑制される。
【0023】
収納箱10の一実施形態では、幅寸法(X方向の長さ)、長さ寸法(Y方向の長さ)及び高さ寸法(Z方向の長さ)は適宜選択できるが、一例をあげれば、幅寸法が10cm以上20cm以下である場合、長さ寸法が30cm以上40cm以下、及び高さ寸法が20cm以上40cm以下である。
【0024】
収納箱10は、図1(b)に示すように、取出口2aのY方向(長手方向)に沿うスリット30を有し、ミシン目部21の内面にその外周の少なくとも一部が接着されたフィルム部材(好ましくは透明性フィルム部材)22をさらに備えていてもよい。フィルム部材22は、ミシン目部21を破断させ、取出口2aを形成したときに、収納箱10の頂面部2の表面に露出し、スリット30を介して紙ワイパー6が取り出される。なお、フィルム部材22は紙ワイパー6の収納箱10には必須のものではない。
【0025】
次に、紙ワイパー6について説明する。本実施形態では、紙ワイパー6は、ポップアップ方式に取出口2aから取出し可能に積層された積層体として収納箱10に収納されている。
【0026】
本実施形態の紙ワイパー6は、薄葉紙を複数枚、好ましくは2プライ(枚)以上10プライ(枚)以下、より好ましくは3プライ(枚)以上6プライ(枚)以下を重ね合わせたものであるが、これに限定されず、1プライ(枚)であっても10プライを超えてもよい。ここで薄葉紙1プライの坪量は特に限定はないが、通常は15g/cm以上45g/cm以下、好ましくは20g/cm以上38g/cm以下、より好ましくは25g/cm以上36g/cm以下である。また、紙ワイパー6の坪量は、紙ワイパー6を構成する薄葉紙のプライ(枚)数によって変わるが、例えばプライ数が3である場合は、通常40g/cm以上140g/cm以下、好ましくは60g/cm以上120g/cm以下、より好ましくは70g/cm以上110g/cm以下である。紙ワイパー6の坪量が上記範囲にあることにより、複数枚の薄葉紙から構成される紙ワイパー6の引張強度、製品紙厚、及び製品密度を所定範囲に調整することが容易になる。
【0027】
引張強度、製品紙厚、及び製品密度を所定の範囲に調整し、収納箱10から取り出した時の紙ワイパー6の破れやすさ、ドロップバック、収納箱10の倒れ易さを改善する観点からは、本実施形態の紙ワイパー6としては、上記薄葉紙を2~6プライ(枚)重ね合わせたものであり、その坪量が40g/cm以上140g/cm以下であるものが好ましい。
【0028】
本実施形態では、紙ワイパー6のMD方向及びCD方向の各引張強度を設定する。MD方向の引張強度(以下「DMD」とも称す)は2800gf/25mm以上3800gf/25mm以下、好ましくは3200gf/25mm以上3500gf/25mm以下である。CD方向の引張強度(以下「DCD」とも称す)は1400gf/25mm以上2400gf/25mm以下、好ましくは1700gf/25mm以上2100gf/25mm以下である。紙ワイパー6の製品紙厚は、紙ワイパー6を10プライ(枚)重ねた状態で、230mm以上3.00mm以下、好ましくは2.60mm以上2.70mm以下とする。
【0029】
このように、紙ワイパー6を高強度(高引張強度)化し、かつ低密度で嵩高い紙質に設計することにより、段ボール製の収納箱10との摩擦抵抗も低減化し、例えば、紙ワイパー6を収納箱10から取り出すときの破れ易さを改善し、ドロップバックの発生を顕著に低減できる。その結果、収納箱10の高さを35cm以下にすることも可能になり、収納箱10の紙ワイパー6を取り出すときの安定性も向上し、紙ワイパー製品1の使用範囲及び使用方法が一層増加する。
【0030】
また、紙ワイパー6の製品密度は、紙プライ6を3プライ(枚)以上重ねた状態で、0.080g/cm以上0.120g/cm以下、好ましくは0.950g/cm以上1.050g/cm以下である。
【0031】
このように、紙ワイパー6を低密度にすることにより、紙ワイパー6を嵩高くしても、収納箱10の高さを大きくする必要がなくなり、また、収納箱10への紙ワイパー6の収納量が減ることを防止できる。すなわち、紙ワイパー6が低密度であることにより、紙ワイパー6が嵩高いものであっても、収納箱10を必要以上に高くする必要がなくなる。さらに、前述のように、紙ワイパー6を高強度及び低密度に設計したことで、紙ワイパー6が適度な柔軟性や吸水性能を保持し、使用感が非常に良好なものになる。
【0032】
また、本発明では、紙ワイパー6の引張強度を高めつつ、製品紙厚及び製品密度を所定の範囲とすることにより、紙ワイパー6の吸水性を高めることができる。本発明では、紙ワイパー6の吸水性は500g/m以上になり、好ましくは550g/m以上1000g/m以下、より好ましくは550g/m以上800g/m以下とすることができる。これにより、紙ワイパー6の清掃性能を向上させることができる。
【0033】
紙ワイパー6は、木材パルプ、及び古紙パルプから選ばれる少なくとも1種を構成原料として、常法に従って製造できる。木材パルプには、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)などがある。古紙パルプを含む構成原料から作製された紙ワイパー6は、木材パルプ100%からなる構成原料から作製されたものに比べ、破れ易いことが知られている。しかしながら、本発明では、後述するように紙ワイパー6の所定の特性を所定範囲とすることにより、構成原料が古紙パルプを含んでいても、紙ワイパー6の強度を高め、収納箱10から取り出すときの破れを防止することができる。紙ワイパー6の破れなどを防止する観点などから、古紙パルプを含む構成原料における、古紙パルプ含有量は構成原料全量の60重量%以上100重量%以下であることが好ましい。本実施形態の紙ワイパー6は、その特性を損なわない範囲で、木材パルプ及び古紙パルプ以外の構成材料を含むことができる。このような構成原料としては、例えば、非木材パルプや、填料、合成繊維、天然繊維などがある。
【0034】
紙ワイパー6は、この分野の周知技術に従い、例えば、構成原料から作製された原紙ウエブを所定の条件でカレンダー成形することにより得ることができる。紙ワイパー6の引張強度は、例えば、構成原料として使用する古紙パルプ及び木材パルプの使用割合(重量%)を適宜選択することにより調整できる。また、紙ワイパー6の、製品坪量、製品密度、及び製品紙厚は、例えば、原紙ウエブのカレンダー成形条件及び必要に応じてエンボス加工条件を選択することにより調整できる。
【0035】
本実施形態の紙ワイパー6は、エンボス加工を施したエンボス加工品であってもよい。エンボス加工品の形態は特に限定されないが、例えば、紙ワイパー6の一方及び他方の表面にそれぞれエンボス凸部及びそれに対応するエンボス凹部が形成された形態などが挙げられる。エンボス加工の方法としても特に限定されないが、例えば、エンボスロールを用いる方法などが挙げられる。エンボスパターンの形状や密度、エンボス面積率、エンボスエッジ率などは適宜選択できる。紙ワイパー6にエンボス加工を施すことにより、例えば、紙ワイパー6の嵩高さが増し、ドロップバックの発生をより一層低減化できる。
【実施例
【0036】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
(実施例1~9及び比較例1~9)
古紙パルプと木材パルプとの混合割合(重量%)を変更することにより、表1に示す坪量(g/m)を有する薄葉紙を3プライ(枚)重ね合わせ、表1、及び表2に示す各種物性を有する紙ワイパーを製造した。得られた紙ワイパーについて、比較例4、8を除いてエンボス加工を施した。エンボス加工は、エンボス加工機により、マッチドエンボス加工を施し、密度4.8個/cm~14.0個/cm、エンボス面積率30%~60%、エッジ率が0.7mm/mmのエンボスパターンを形成した。得られた紙ワイパーについて、坪量、MD方向及びCD方向の引張強度、製品紙厚、並びに製品密度を次のようにして測定した。結果を表1及び表2に併記する。
【0038】
また、得られた紙ワイパーをポップアップ方式の積層体とし、収納箱に収納した。収納箱としては、厚み2.5mm、1.0mm又は4.0mmの段ボールを基材として用い、図2に示す形状を有し、長手方向(X方向)、幅方向(Y方向)、及び高さ方向(Z方向)の各寸法がそれぞれ13cm、35cm、及び35cmのものを組み立てた。このとき、円盤状の平面形状を有する取出口(ミシン目部の破断により取出口になる領域)の横方向(X方向)、及び幅方向(Y方向)の長さを適宜選択し、取出口横幅と紙ワイパー横幅との長さ比率である横幅比率(%)、及び取出口縦幅と紙ワイパー縦幅との長さ比率である縦幅比率(%)を、表1、及び表2に示す値とした。
【0039】
[試験方法]
(坪量)
紙ワイパーの坪量(g/m)をJIS P 8124に基づいて測定し、得られた測定値から薄葉紙1枚の坪量(g/m)を算出した。
【0040】
(製品密度)
所定プライの紙ワイパーの製品密度をJIS P8124に基づいて測定した。
【0041】
(製品紙厚)
紙ワイパーを10プライ重ね合わせて製品紙厚を測定した。測定は、シックネスゲージ(商品名:ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」、(株)尾崎製作所製)を用いて実施した。測定条件は、測定荷重250gf、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に紙ワイパーを置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。測定を10回行ない、平均値を求めた。
【0042】
(引張強度)
DMD(MD方向の引張強度)及びDCD(CD方向の引張強度)を、JIS P8113に基づいて測定した。
なお、製品密度、製品紙厚、及び引張強度の測定は、JIS P8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0043】
(吸水性[TWA:Total Water Absorbency])
紙ワイパーを76mm×76mmの正方形に切断して試料を作製し、試料の乾燥重量を測定した。次に、この試料を蒸留水中に2分間浸漬した後、水蒸気飽和状態(RH100%)の容器中で、試料の1つの角部を上側の頂部とし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態で吊るし、30分放置して水切り後の重量を測定した。得られた測定値から、試料1mあたりの保水量(g/m)を求めた。保水量が400g/m以上のものを優れている、400g/m未満を劣っていると評価した。なお、表1及び表2には、保水量(g/m)と共に、試料1gあたりの保水量(g/g)をも示した。
【0044】
柔軟性(紙ワイパーの柔軟性)、破れ易さ(収納箱から紙ワイパーを取り出すときの破れ易さ)、ドロップバッグ、及び収納箱の倒れ易さ(残量が少ない状態で紙ワイパーを取り出すときの収納箱の安定性)について、モニター数10名で下記の官能試験を実施した。
【0045】
(柔軟性)
10名のモニターが紙ワイパーの触感を調べ、以下の基準で評価した。
〇:優れる(9名以上が柔らかいと回答)
△:実用上の問題なし(8名~6名が柔らかいと回答)
×:劣る(柔らかいとの回答が5名以下)
【0046】
(破れ易さ)
10名のモニターが、紙ワイパーを収納箱から30回ずつ取り出した時、紙ワイパーの破断の有無を調べ、以下の基準で評価した。
〇:優れる(破断無し)
△:実用上の問題なし(1名~2名が破断)
×:劣る(3名以上が破断)
【0047】
(ドロップバッグ)
10名のモニターが、紙ワイパーを収納箱から30回ずつ取り出した時、ドロップバッグ発生の有無を調べ、以下の基準で評価した。
〇:優れる(ドロップバック無し)
△:実用上の問題なし(1名~2名がドロップバックあり)
×:劣る(3名以上がドロップバックあり)
【0048】
(倒れ易さ)
10名のモニターが、紙ワイパーを収納箱から30回ずつ取り出した時、収納箱の転倒の有無(収納箱の倒れ易さ)を調べ、以下の基準で評価した。
〇:優れる(転倒無し)
△:実用上の問題なし(1名~2名が転倒あり)
×:劣る(3名以上が転倒あり)
【0049】
以上の吸水性試験、及び官能試験の評価結果を表1、及び表2に示す。なお、表1、及び表2において、取出口横幅と紙ワイパー横幅と長さ比率(%)を横幅比率と称し、取出口縦幅と紙ワイパー縦幅との長さ比率(%)を縦幅比率と称す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1と表2との対比から、所定の製品紙厚、及び製品密度を有することにより、高い引張強度を有していても、高い吸水性、及び柔軟性を有する紙ワイパーが得られることが判る。また、該紙ワイパーを用い、収納箱を構成する基材として所定厚みの段ボールを用い、かつ収納箱の取出口と紙ワイパーとの横幅比率(%)、及び縦幅比率(%)を所定の比率とすることにより、紙ワイパーを取り出すときの破れ易さや、残量が減少した状態で紙ワイパーを取り出すときの紙ワイパー積層体の収納箱下部への落ち込み(ドロップバック)、収納箱の倒れ易さが顕著に改善されることが判る。
【0053】
なお、比較例4の紙ワイパーは、官能試験では「×」の評価結果はないものの、吸水性が低い結果となった。
【0054】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
1 紙ワイパー製品
2 頂面部
2a 取出口
3 底面部
4、4’、5、5’ 側面部
6 紙ワイパー
10 収納箱
21 ミシン目部
22 フィルム部材
30 スリット
図1
図2