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特許7356311発光装置、波長変換ユニット、及びヘッドライト又は表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】発光装置、波長変換ユニット、及びヘッドライト又は表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/024 20060101AFI20230927BHJP
   H01S 5/02 20060101ALI20230927BHJP
   H01L 33/64 20100101ALI20230927BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20230927BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20230927BHJP
   F21S 41/176 20180101ALI20230927BHJP
   F21S 45/47 20180101ALI20230927BHJP
   F21S 43/16 20180101ALI20230927BHJP
   F21S 43/13 20180101ALI20230927BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20230927BHJP
   F21S 45/10 20180101ALI20230927BHJP
   F21V 29/502 20150101ALI20230927BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230927BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20230927BHJP
   F21Y 115/00 20160101ALN20230927BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20230927BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20230927BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20230927BHJP
【FI】
H01S5/024
H01S5/02
H01L33/64
H01L33/50
H01L33/00 L
F21S41/176
F21S45/47
F21S43/16
F21S43/13
F21S41/16
F21S45/10
F21V29/502 100
G02B5/20
G02B7/00 F
F21Y115:00
F21Y115:30
F21W102:00
F21W103:00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019177695
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021057414
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 聡
(72)【発明者】
【氏名】林 健人
(72)【発明者】
【氏名】河村 有毅
(72)【発明者】
【氏名】村山 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】本林 久良
(72)【発明者】
【氏名】滝口 由朗
(72)【発明者】
【氏名】川西 秀和
(72)【発明者】
【氏名】簗嶋 克典
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-207646(JP,A)
【文献】特開2016-219723(JP,A)
【文献】特開2015-149394(JP,A)
【文献】特開2004-212522(JP,A)
【文献】特開2018-002912(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0121133(US,A1)
【文献】特開2017-033971(JP,A)
【文献】特開2019-134017(JP,A)
【文献】特開2019-160859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0031118(US,A1)
【文献】国際公開第2017/043121(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/038502(WO,A1)
【文献】特開2016-027613(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159268(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子から発せられる光を透過する板状の光透過性放熱部材と、
積層された光散乱層と蛍光体層を有し、前記発光素子から発せられて前記光透過性放熱部材を透過する光を前記光散乱層側から取り込んで、前記蛍光体層において波長を変換する、波長変換部材と、
前記波長変換部材の側面に光反射部材を介して接する高熱伝導部材を含み、前記波長変換部材で生じた熱が逃げる前記光透過性放熱部材の上面に接することにより、前記波長変換部材で生じた熱が前記光反射部材及び前記光透過性放熱部材を介して逃げる、板状の側方放熱部材と、
前記発光素子を収容し、前記光透過性放熱部材、前記波長変換部材、及び前記側方放熱部材を含む波長変換ユニットを支持するパッケージと、
を備え、
前記波長変換部材の側面の前記光透過性放熱部材側の一部又は全体が、前記光透過性放熱部材側に向かって前記波長変換部材の幅が狭くなるような傾斜面を有し、当該傾斜面と前記光透過性放熱部材の上面が光反射性接着材により接着された、
発光装置。
【請求項2】
前記光散乱層の厚さが、50μm以上、200μm以下の範囲内にある、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記蛍光体層の厚さが、50μm以上、100μm以下の範囲内にある、
請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記光散乱層が、前記蛍光体層の材料から、前記蛍光体層に含まれる蛍光体の賦活剤を抜いた材料からなる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記パッケージが、前記光透過性放熱部材及び前記高熱伝導部材と接合された、
請求項1~4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記パッケージの内部の前記発光素子が収容される空間が、前記パッケージと前記波長変換ユニットにより気密封止された、
請求項1~5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記高熱伝導部材と前記パッケージに挟まれたシール部材により前記パッケージの内部が気密封止された、
請求項1~6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
ヘッドライト又は表示装置に用いられる、
請求項1~7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
蛍光体を含む蛍光体層と、前記蛍光体の励起光を散乱するための光散乱層とが積層された波長変換部材と、
前記波長変換部材の前記光散乱層の表面に接する、前記励起光を透過する板状の光透過性放熱部材と、
前記波長変換部材の側面に光反射部材を介して接する高熱伝導部材を含み、前記波長変換部材で生じた熱が逃げる前記光透過性放熱部材の上面に接することにより、前記波長変換部材で生じた熱が前記光反射部材及び前記光透過性放熱部材を介して逃げる板状の側方放熱部材と、
を備え、
前記波長変換部材の側面の前記光透過性放熱部材側の一部又は全体が、前記光透過性放熱部材側に向かって前記波長変換部材の幅が狭くなるような傾斜面を有し、当該傾斜面と前記光透過性放熱部材の上面が光反射性接着材により接着され、
前記光透過性放熱部材の熱伝導率が前記波長変換部材の熱伝導率よりも高く、
前記高熱伝導部材の熱伝導率が前記光透過性放熱部材の熱伝導率よりも高い、
波長変換ユニット。
【請求項10】
前記光散乱層の厚さが、50μm以上、200μm以下の範囲内にある、
請求項に記載の波長変換ユニット。
【請求項11】
前記蛍光体層の厚さが、50μm以上、100μm以下の範囲内にある、
請求項又は10に記載の波長変換ユニット。
【請求項12】
前記光散乱層が、前記蛍光体層の材料から、前記蛍光体層に含まれる蛍光体の賦活剤を抜いた材料からなる、
請求項11のいずれか1項に記載の波長変換ユニット。
【請求項13】
ヘッドライト又は表示装置に用いられる、
請求項12のいずれか1項に記載の波長変換ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、波長変換ユニット、及びヘッドライト又は表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発光装置として、半導体レーザ素子と、半導体レーザ素子の上方に配置され、半導体レーザ素子の出射光を通過させる貫通孔を備えた支持体と、貫通孔内に配置され、半導体レーザ素子の出射光により励起され出射光とは異なる波長の光を発する蛍光体を含む蛍光部材と、蛍光部材及び支持体の下面と接合された透光性の放熱部材と、を備えた発光装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1によれば、蛍光部材の熱を直接的に放熱部材へ逃がす放熱経路に加えて、蛍光部材の熱を支持体を介して間接的に放熱部材へ逃がす放熱経路を確保することで、蛍光部材の放熱性が向上するとされている。
【0004】
また、従来の他の発光装置として、ステムと、半導体レーザと、ケース部と、波長変換部材とを備えるCAN型パッケージの発光装置が知られている(特許文献2参照)。波長変換部材は、蛍光体材料を含有する波長変換領域とそれを保持する保持領域を有し、ケース部の天面中央に設けられた開口部内に固定されている。
【0005】
特許文献2によれば、波長変換領域中の蛍光体で生じた熱は、保持領域を介してケース部に伝わり、放熱されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-216362号公報
【文献】特開2018-2912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、蛍光体を含む波長変換部材の温度の上昇を効果的に抑えるためには、特許文献1や特許文献2の発光装置のように波長変換部材の放熱性を向上させるだけではなく、波長変換部材の発熱を抑えることが求められる。
【0008】
本発明の目的は、蛍光体の温度消光を抑制するため、波長変換部材の発熱量を抑え、かつ波長変換部材の熱を効果的に逃がすことができる構造を有する発光装置、その発光装置を構成する波長変換ユニット、及びその発光装置又は波長変換ユニットを有するヘッドライト又は表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[13]の発光装置、及び[14]~[18]の波長変換ユニット、及び[19]、[20]のヘッドライト又は表示装置を提供する。
【0010】
[1]発光素子と、前記発光素子から発せられる光を透過する板状の光透過性放熱部材と、積層された光散乱層と蛍光体層を有し、前記発光素子から発せられて前記光透過性放熱部材を透過する光を前記光散乱層側から取り込んで、前記蛍光体層において波長を変換する、波長変換部材と、前記波長変換部材の側面に光反射部材を介して接する高熱伝導部材を含み、前記光透過性放熱部材の上面に接する板状の側方放熱部材と、前記発光素子を収容し、前記光透過性放熱部材、前記波長変換部材、及び前記側方放熱部材を含む波長変換ユニットを支持するパッケージと、を備えた、発光装置。
[2]前記光散乱層の厚さが、50μm以上、200μm以下の範囲内にある、上記[1]に記載の発光装置。
[3]前記蛍光体層の厚さが、50μm以上、100μm以下の範囲内にある、上記[1]又は[2]に記載の発光装置。
[4]前記光散乱層が、前記蛍光体層の材料から、前記蛍光体層に含まれる蛍光体の賦活剤を抜いた材料からなる、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の発光装置。
[5]前記パッケージが、前記光透過性放熱部材及び前記高熱伝導部材と接合された、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の発光装置。
[6]前記パッケージの内部の前記発光素子が収容される空間が、前記パッケージと前記波長変換ユニットにより気密封止された、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の発光装置。
[7]前記波長変換部材の側面の前記光透過性放熱部材側の一部又は全体が、前記光透過性放熱部材側に向かって前記波長変換部材の幅が狭くなるような傾斜面を有する、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の発光装置。
[8]前記傾斜面と前記光透過性放熱部材の上面が光反射性接着材により接着された、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の発光装置。
[9]前記側方放熱部材が、前記光透過性放熱部材の上面及び前記高熱伝導部材の下面に接し、かつ波長変換部材の側面に直接又は光反射材を介して接する板状の放熱部材を含み、前記高熱伝導部材の熱伝導率が前記放熱部材の熱伝導率よりも高く、前記放熱部材の熱伝導率が、前記光透過性放熱部材の熱伝導率よりも高い、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の発光装置。
[10]前記放熱部材が、前記波長変換部材の側面との間に空隙を設けるための凹部を前記波長変換部材側の側部に有する、上記[9]に記載の発光装置。
[11]前記空隙内に光反射部材が設けられた、上記[10]に記載の発光装置。
[12]前記高熱伝導部材と前記パッケージに挟まれたシール部材により前記パッケージの内部が気密封止された、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載の発光装置。
[13]ヘッドライト又は表示装置に用いられる、上記[1]~[12]のいずれか1項に記載の発光装置。
[14]蛍光体を含む蛍光体層と、前記蛍光体の励起光を散乱するための光散乱層とが積層された波長変換部材と、前記波長変換部材の前記光散乱層の表面に接する、前記励起光を透過する板状の光透過性放熱部材と、前記波長変換部材の側面に光反射部材を介して接する高熱伝導部材を含み、前記光透過性放熱部材の上面に接する板状の側方放熱部材と、を備え、前記光透過性放熱部材の熱伝導率が前記波長変換部材の熱伝導率よりも高く、前記高熱伝導部材の熱伝導率が前記光透過性放熱部材の熱伝導率よりも高い、波長変換ユニット。
[15]前記光散乱層の厚さが、50μm以上、200μm以下の範囲内にある、上記[14]に記載の波長変換ユニット。
[16]前記蛍光体層の厚さが、50μm以上、100μm以下の範囲内にある、上記[14]又は[15]に記載の波長変換ユニット。
[17]前記光散乱層が、前記蛍光体層の材料から、前記蛍光体層に含まれる蛍光体の賦活剤を抜いた材料からなる、上記[14]~[16]のいずれか1項に記載の波長変換ユニット。
[18]ヘッドライト又は表示装置に用いられる、上記[14]~[17]のいずれか1項に記載の波長変換ユニット。
[19]上記[1]~[12]のいずれか1項に記載の発光装置を有する、ヘッドライト又は表示装置。
[20]上記[14]~[17]のいずれか1項に記載の波長変換ユニットを有する、ヘッドライト又は表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蛍光体の温度消光を抑制するため、波長変換部材の発熱量を抑え、かつ波長変換部材の熱を効果的に逃がすことができる構造を有する発光装置、その発光装置を構成する波長変換ユニット、及びその発光装置又は波長変換ユニットを有するヘッドライト又は表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。
図2図2(a)、(b)は、それぞれ波長変換部材が光散乱層と蛍光体層の積層体からなる場合、波長変換部材が蛍光体層のみからなる場合の、波長変換部材の内部の熱の分布を模式的に示す図である。
図3図3は、第1の実施の形態に係る波長変換ユニットの一例の斜視図である。
図4図4は、第1の実施の形態に係る発光装置の変形例の垂直断面図である。
図5図5(a)、(b)は、第1の実施の形態に係る発光装置の変形例の波長変換部材周辺の拡大図である。
図6図6は、第2の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。
図7図7は、第2の実施の形態に係る波長変換ユニットの一例の斜視図である。
図8図8(a)、(b)は、第2の実施の形態に係る発光装置の変形例の波長変換部材周辺の拡大図である。
図9図9(a)~(c)は、第2の実施の形態に係る発光装置の他の変形例の波長変換部材周辺の拡大図である。
図10図10は、第3の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。
図11図11(a)は、光散乱層の表面に均一にレーザー光を照射した場合の光散乱層の温度分布を示す。図11(b)は、光散乱層の表面の中心近傍に集中してレーザー光を照射した場合の光散乱層の温度分布を示す。
図12図12(a)は、蛍光体層の厚さとレーザー光を照射したときの蛍光体層の温度との関係を示すグラフである。また、図12(b)は、蛍光体層の厚さと波長変換部材から取り出される光の明るさとの関係を示すグラフである。
図13図13(a)は、光散乱層の厚さとレーザー光を照射したときの蛍光体層の温度との関係を示すグラフである。また、図13(b)は、光散乱層の厚さと波長変換部材から取り出される光の明るさとの関係を示すグラフである。
図14図14(a)~(c)は、波長変換部材から取り出される光の角度とCIE1931色度図の色度座標Cyとの関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1の実施の形態〕
(発光装置の構成)
図1は、第1の実施の形態に係る発光装置1の垂直断面図である。発光装置1は、発光素子20と、発光素子20から発せられる光を透過する板状の光透過性放熱部材11と、積層された光散乱層12aと蛍光体層12bを有し、発光素子20から発せられて光透過性放熱部材11を透過する光を光散乱層12a側から取り込んで、蛍光体層12bにおいて波長を変換する、波長変換部材12と、波長変換部材12の側面に光反射部材14を介して接する高熱伝導部材13と、発光素子20を収容するパッケージ21と、を備える。
【0014】
高熱伝導部材13及び光反射部材14は、波長変換部材12の熱を側方へ逃がすための、光透過性放熱部材11の上面に接する板状の側方放熱部材を構成する。
【0015】
光透過性放熱部材11、波長変換部材12、高熱伝導部材13、及び光反射部材14は、波長変換ユニット100を構成し、波長変換ユニット100は、パッケージ21に支持される。波長変換ユニット100を、発光素子20などが収容されたパッケージ21の開口部に取り付けることにより、発光装置1を形成することができる。
【0016】
また、発光装置1において、光透過性放熱部材11の熱伝導率が波長変換部材12の熱伝導率よりも高いことが好ましい。また、高熱伝導部材13の熱伝導率が光透過性放熱部材11の熱伝導率よりも高いことが好ましい。
【0017】
波長変換部材12を構成する蛍光体層12bは、発光素子20から発せられた光(励起光)を吸収して蛍光を発する蛍光体を含む層である。蛍光体層12bは、例えば、アルミナ、ガラス、樹脂などからなるベース材に蛍光体粒子が含まれる部材、又は蛍光体の焼結体である。
【0018】
蛍光体層12bに含まれる蛍光体は、特に限定されないが、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体、αサイアロン蛍光体、BOS(バリウム・オルソシリケート)蛍光体などの黄色系蛍光体を用いてもよいし、これらの黄色系蛍光体にβサイアロン蛍光体などの緑色蛍光体と(Ca,Sr)Si:Eu、CaAlSiN:Euなどの赤色蛍光体を混合して用いてもよい。
【0019】
波長変換部材12を構成する光散乱層12aは、発光素子20から発せられた光(蛍光体層12bに含まれる蛍光体の励起光)を蛍光体層12bに達する前に散乱させ、発光装置1の発する光の視野角依存性を低減することができる。光散乱層12aは、蛍光体を含まない。
【0020】
例えば、蛍光体層12bが蛍光体の焼結体からなる場合、蛍光体層12bの材料から、蛍光体層12bに含まれる蛍光体の賦活剤(発光中心となる不純物)を抜いた材料を光散乱層12aの材料として用いることができる。具体的には、例えば、蛍光体層12bがCeを賦活剤とするYAG蛍光体とアルミナの焼結体からなる場合、Ceを含まないYAGとアルミナの焼結体を光散乱層12aの材料として用いることができる。
【0021】
また、波長変換部材12は、アルミナなどの透明散乱材からなる光散乱層12aと蛍光体層12bと張り合わせたものであってもよい。
【0022】
波長変換部材12の形成においては、光散乱層12aと蛍光体層12bのグリーンシート(焼結前の柔軟性を有する状態のシート)を張り合わせた状態で焼結させ、一体化させることができる。蛍光体層12bを構成する蛍光体から賦活剤を抜いた材料を光散乱層12aの材料として用いる場合、光散乱層12aと蛍光体層12bの線膨張係数がほぼ等しいため、線膨張係数差に起因する変形や破損を抑えることができる。また、賦活剤が蛍光体層12bから光散乱層12aへ拡散して濃度グラデーションが生じ、蛍光体層12bと光散乱層12aの界面が消失する。これによって、蛍光体層12bと光散乱層12aの界面での反射による、波長変換部材12から発光素子20側へ戻る光(戻り光)の発生を抑えることができる。
【0023】
図2(a)、(b)は、それぞれ波長変換部材12が光散乱層12aと蛍光体層12bの積層体からなる場合、波長変換部材12が蛍光体層12bのみからなる場合の、波長変換部材12の内部の熱の分布を模式的に示す図である。
【0024】
図2(a)、(b)中の矢印Aは、発光素子20から発せられた光の経路を模式的に表している。波長変換部材12の内部の発熱領域Bは、蛍光体が光を吸収して発熱する領域のうち、特に発熱量の大きな領域を模式的に表している。また、矢印Cは、特に熱伝導率の高い部材である高熱伝導部材13へ発熱領域Bから移動する熱の経路を模式的に表している。
【0025】
波長変換部材12が光散乱層12aと蛍光体層12bの積層体からなる場合、図2(a)に示されるように、光透過性放熱部材11を透過した光は、光散乱層12a内で拡散された後、蛍光体層12bへ進入する。このため、蛍光体層12bの比較的広い範囲で光の吸収が生じ、発熱領域B内の単位体積あたりの発熱量が小さくなる。また、発熱領域Bが比較的広いため、高熱伝導部材13との距離が小さく、高熱伝導部材13へ効率的に熱を逃がすことができる。
【0026】
一方、波長変換部材12が蛍光体層12bのみからなる場合、図2(b)に示されるように、光透過性放熱部材11を透過した光は、そのまま蛍光体層12bに吸収される。このため、蛍光体層12bの比較的狭い範囲で光の吸収が生じ、発熱領域B内の単位体積あたりの発熱量が大きくなる。また、発熱領域Bが比較的狭いため、高熱伝導部材13との距離が大きく、高熱伝導部材13へ効率的に熱を逃がすことが難しい。
【0027】
上記のような理由から、波長変換部材12を光散乱層12aと蛍光体層12bの積層体で構成することにより、蛍光体層12bの温度の上昇を抑え、温度消光を抑制することができる。
【0028】
光散乱層12aが厚いほど蛍光体層12bの温度が低下するが、一方で、取り出される光の明るさが低下する傾向がある。光散乱層12aの厚さは、例えば、50μm以上、200μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0029】
また、蛍光体層12bは厚いほど蛍光体層12bの温度が低下するが、一方で、取り出される光の明るさが低下する傾向がある。蛍光体層12bの厚さは、例えば、50μm以上、100μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0030】
波長変換部材12の平面形状は、典型的には四角形であるが、円形や四角形以外の多角形であってもよい。波長変換部材12は、例えば、シリコーン系接着材などの透明接着材(図示しない)により、光透過性放熱部材11の上面に接着される。
【0031】
発光素子20は、蛍光体層12bに含まれる蛍光体の励起光源として機能する。発光素子20は、台座23に設置された状態で、パッケージ21に実装されている。発光素子20から発せられた光は、ミラーなどの光反射部材22により反射された後、光透過性放熱部材11を透過して、波長変換部材12に進入する。なお、光反射部材22を用いずに、発光素子20から発せられた光を光透過性放熱部材11へ直接照射してもよい。発光装置1は、複数の発光素子20や光反射部材22を備えていてもよい。
【0032】
発光素子20は、LD(レーザーダイオード)やLED(発光ダイオード)である。発光装置1の蛍光体層12bの温度上昇を抑える効果は、出力の大きいLDを発光素子20として用いる場合に、特に重要である。
【0033】
発光素子20の発光波長は特に限定されず、蛍光体層12bの材料(吸収波長)や発光装置1から取り出す光の色などに応じて適宜選択される。例えば、発光素子20が青色光を発し、蛍光体層12bが黄色の蛍光を発する場合は、蛍光体層12bに波長変換されずに取り出される一部の青色光と黄色の蛍光の混合光である白色光を発光装置1から取り出すことができる。
【0034】
光透過性放熱部材11は、サファイアなどの、発光素子20から発せられる光を透過する板状の材料からなる。発光素子20から発せられた光は、光透過性放熱部材11を透過して、波長変換部材12中へ進行する。
【0035】
光透過性放熱部材11の上面は、波長変換部材12の下面に接しており、波長変換部材12の蛍光体層12bで生じた熱を光透過性放熱部材11へ逃がすことができる。
【0036】
高熱伝導部材13は、光透過性放熱部材11よりも熱伝導性が高い板状の部材であり、例えば、放熱シートやメタルプレートを高熱伝導部材13として用いることができる。メタルプレートは、例えば、SUS(stainless steel)、Cu、Alからなるものを用いることができる。また、光透過性放熱部材11やパッケージ21との熱膨張率差を低減するため、CMC(Cu/Mo/Cu積層体)、Cu/AlN/Cu積層体などのクラッド材や、含浸カーボンなどをメタルプレートの材料として用いることができる。また、グラファイトシートのような異方性の熱伝導特性を有する材料を高熱伝導部材13として用いて、面内方向の熱伝導性を高めることもできる。
【0037】
高熱伝導部材13は、光反射部材14を介して波長変換部材12の側面に接しており、波長変換部材12の蛍光体層12bで生じた熱を高熱伝導部材13へ逃がすことができる。また、波長変換部材12から光透過性放熱部材11へ伝わった熱をさらに高熱伝導部材13へ逃がすこともできる。
【0038】
光反射部材14は、波長変換部材12の側面に接し、波長変換部材12の側面からの光漏れを防ぎ、光取出効率を向上させることができる。光反射部材14は、例えば、ガラスやシリコーン樹脂などからなるベース材にアルミナ、TiO、BNなどの反射フィラーを添加した材料からなる。光反射部材14の熱伝導率は、高いほどよい。
【0039】
パッケージ21は、AlN、アルミナ、Si、Siなどの、熱伝導性に優れ、発光素子20から発せられる光や波長変換部材12で波長変換された光を透過しない材料からなることが好ましい。
【0040】
パッケージ21は、接着材24を介して光透過性放熱部材11に熱的に接合される。熱的に接合とは、空気層などの熱伝導率の低い断熱層を介さない接合をいう。このため、波長変換部材12の蛍光体層12bから光透過性放熱部材11へ逃がした熱を、さらにパッケージ21へ逃がすことができる。接着材24は、例えば、はんだ、AgやCuなどの焼結金属、ガラスフリットなどからなり、特に、熱伝導性に優れるAuSnはんだ、Cuを基材としたはんだなどからなることが好ましい。
【0041】
また、パッケージ21は、接着材25を介して高熱伝導部材13に接合される。このため、波長変換部材12の蛍光体層12bから高熱伝導部材13へ逃がした熱を、さらにパッケージ21へ逃がすことができる。接着材25は、例えば、接着剤、粘着シート、はんだからなり、特に、熱伝導性に優れるAuSnはんだ、Cuを基材としたはんだなどからなることが好ましい。
【0042】
発光装置1においては、パッケージ21と波長変換ユニット100により、パッケージ21の内部の発光素子20や光反射部材22が収容される空間を気密封止することができる。この気密封止により、水分や樹脂部材から発生したシロキサンガスによる発光素子20や光反射部材22の汚染を抑えることができる。
【0043】
具体的には、接着材24は環状であって、パッケージ21と光透過性放熱部材11を隙間なく接合することにより、パッケージ21の内部の発光素子20や光反射部材22が収容される空間を、パッケージ21、光透過性放熱部材11、及び接着材24により気密封止することができる。
【0044】
さらに、接着材25によりパッケージ21と高熱伝導部材13を隙間なく接合することにより、発光素子20が収容される空間を二重に気密封止し、より効果的に発光素子20や光反射部材22の汚染を抑えることができる。
【0045】
波長変換部材12の上面の高さは、高熱伝導部材13の上面の高さ以上であることが好ましい。典型的には、波長変換部材12の上面と高熱伝導部材13の上面の高さがほぼ同じであり、略同一面を形成していることが好ましい。これは、例えば、発光装置1の上にレンズを設置して発光装置1から発せられる光を集める場合に、高熱伝導部材13に遮られることによる光のロス(損失)を防ぐためである。また、波長変換部材12の上面が高熱伝導部材13の上面よりも低い場合、波長変換部材12の発光面にレンズを近付けることができず、光のロスが生じるという問題もある。
【0046】
図3は、波長変換ユニット100の一例の斜視図である。光透過性放熱部材11上に高熱伝導部材13が積層され、高熱伝導部材13の有する孔13a内に波長変換部材12が設置される。高熱伝導部材13と波長変換部材12は、どちらを先に光透過性放熱部材11上に固定してもよい。高熱伝導部材13と波長変換部材12を光透過性放熱部材11上に固定した後、孔13a内の波長変換部材12の周囲の空間にスラリー状の光反射部材14の材料を流し込み、これを焼結して光反射部材14を形成する。なお、図3に示される例では、孔13aの平面形状は円形であるが、矩形であってもよい。孔13aの平面形状を矩形とすることにより、光透過性放熱部材11や波長変換部材12からの高熱伝導部材13による熱引き性能をより高めることができる。
【0047】
図4は、発光装置1の変形例の垂直断面図である。図4に示されるように、光透過性放熱部材11の代わりに、板状の基材15a(光透過性放熱部材11に相当)の下面と上面にそれぞれAR(Anti-Reflection)膜15bとDBR(Distributed Bragg Reflector)膜15cが設けられた光透過性放熱部材15を用いてもよい。
【0048】
AR膜15bは、光透過性放熱部材15の下面における発光素子20から発せられた光の反射を抑えることができる。AR膜15bはナノインプリントのような周期構造体であってもよい。また、DBR膜15cは、発光素子20から発せられる光を透過し、波長変換部材12の蛍光体層12bから発せられる蛍光を反射する特性を有する。AR膜15bとDBR膜15cを用いることにより、発光装置1の光取出効率を向上させることができる。なお、光透過性放熱部材15において、AR膜15bとDBR膜15cのいずれか一方を用いてもよい。
【0049】
AR膜15bとDBR膜15cは、その機能を十分に発揮するため、基材15aの鏡面加工された平滑な面上に設けられる。
【0050】
図5(a)、(b)、(c)は、発光装置1の変形例の波長変換部材12周辺の拡大図である。
【0051】
図5(a)に示されるように、波長変換部材12は、下側の一部又は全体が下側(光透過性放熱部材11側)に向かって細くなるテーパー形状を有していてもよい。すなわち、波長変換部材12の側面の下側の一部又は全体が、下側に向かって波長変換部材12の幅が狭くなるような傾斜面12cを有していてもよい。
【0052】
この場合、波長変換部材12中を下側に向かって進行する光を傾斜面12cによって反射し、波長変換部材12から発光素子20側への戻り光を低減することができる。これによって、発光装置1の光取出効率を向上させることができる。また、傾斜面12cを設けることにより、側面が垂直である場合よりも光反射部材14との接触面積が大きくなるため、光反射部材14を介して高熱伝導部材13へ熱を逃がしやすくなる。
【0053】
また、図5(b)に示されるように、シリコーン系接着材などの接着材にTiOやBNなどの反射フィラーを添加した光反射性接着材16を、波長変換部材12の傾斜面12cと光透過性放熱部材11の上面を接着するように用いてもよい。光反射性接着材16を用いることにより、波長変換部材12からの戻り光をより低減することができる。
【0054】
また、図5(c)に示されるように、波長変換部材12の上部の外縁部に、底部が光散乱層12aにまで達する窪み12dを設けることにより、蛍光体層12bの幅を光散乱層12aの幅よりも小さくしてもよい。これによって、蛍光体層12bからの熱が光散乱層12aに拡がりながら伝わり、また、蛍光体層12bの面積に対する光散乱層12aと光透過性放熱部材11の接触面積が大きくなるため、放熱性が向上する。また、光反射部材14が窪み12d内に入り込むことにより、波長変換部材12の剥離が防がれ、発光装置1の信頼性が向上する。
【0055】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態に係る発光装置2は、主に、後述する放熱部材17をさらに備える点において、第1の実施の形態に係る発光装置1と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の部材については、同じ符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0056】
(発光装置の構成)
図6は、第2の実施の形態に係る発光装置2の垂直断面図である。発光装置2は、光透過性放熱部材11と高熱伝導部材13の間に板状の放熱部材17を備える。放熱部材17の側面は波長変換部材12の側面に接し、上面は高熱伝導部材13の下面に接し、下面は光透過性放熱部材11の上面に接する。
【0057】
放熱部材17の導電率は、光透過性放熱部材11の導電率よりも高く、高熱伝導部材13の導電率は、放熱部材17の導電率よりも高い。放熱部材17の材料として、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、銅、アルミニウムを用いることができる。
【0058】
波長変換部材12から放熱部材17に伝わった熱は、高熱伝導部材13へ逃がすことができる。放熱部材17を有する発光装置2は、放熱部材17を有しない発光装置1と比較して、波長変換部材12の蛍光体層12bの放熱性に優れる。これは、波長変換部材12の側面から放熱部材17へ直接放熱することができるため、放熱面積が大きくなることによると考えられる。
【0059】
高熱伝導部材13、光反射部材14、及び放熱部材17は、波長変換部材12の熱を側方へ逃がすための、光透過性放熱部材11の上面に接する板状の側方放熱部材を構成する。
【0060】
光透過性放熱部材11、波長変換部材12、高熱伝導部材13、光反射部材14、及び放熱部材17は、波長変換ユニット200を構成し、波長変換ユニット200は、パッケージ21に支持される。波長変換ユニット200を、発光素子20などが収容されたパッケージ21の開口部に取り付けることにより、発光装置2を形成することができる。
【0061】
発光装置2は、第1の実施の形態に係る発光装置1と同様に、AR膜15bとDBR膜15c、又はこれらのいずれか一方を備えた光透過性放熱部材15を光透過性放熱部材11の代わりに用いてもよい。
【0062】
図7は、波長変換ユニット200の一例の斜視図である。波長変換部材12は、例えば、放熱部材17が有する波長変換部材12がちょうど収まる形状の孔の中に嵌め込まれる。例えば、放熱部材17がセラミックからなる場合、放熱部材17のグリーンシートに波長変換部材12を埋め込み、焼結することにより、波長変換部材12を囲む放熱部材17を形成することができる。
【0063】
図8(a)、(b)は、発光装置2の変形例の波長変換部材12周辺の拡大図である。
【0064】
図8(a)に示されるように、放熱部材17の波長変換部材12側の側部に、波長変換部材12の側面との間に空隙Dを設けるための凹部17aが形成されていてもよい。空隙D中の空気の屈折率は波長変換部材12の屈折率よりも小さいため、波長変換部材12の側面での光の反射効率を向上させることができる。なお、波長変換部材12の側面に空気層を隣接させるため、波長変換部材12と光透過性放熱部材11を接着する接着材(図示しない)が空隙Dを埋めないようにすることが求められる。
【0065】
また、図8(a)に示されるように、波長変換部材12の凹部17aと併せて波長変換部材12に傾斜面12cを設けることにより、波長変換部材12の側面での光の反射効率をより向上させることができる。
【0066】
また、図8(b)に示されるように、波長変換部材12と放熱部材17の間の空隙D内に、ミラーなどの光反射部材18を設けてもよい。波長変換部材12の側面から空隙Dへ漏れ出た光を光反射部材18で波長変換部材12へ向けて反射することができるため、発光装置2の光取出効率をより向上させることができる。光反射部材18は波長変換部材12と離れていても接触していてもよい。また、接合材などにより傾斜面12cに接合されていてもよい。
【0067】
図9(a)、(b)は、発光装置2の他の変形例の波長変換部材12周辺の拡大図である。
【0068】
図9(a)に示されるように、波長変換部材12と放熱部材17の間に高放熱光反射材19を設けてもよい。これにより、波長変換部材12の側面での光の反射効率を向上させ、発光装置2の光取出効率を向上させることができる。一方、通常、高放熱光反射材19の熱伝導率は放熱部材17の熱伝導率よりも低いため、発光装置2の光取出効率と波長変換部材12の放熱性のいずれかを重視するかによって高放熱光反射材19を用いるか否かを選択することができる。
【0069】
高放熱光反射材19は、例えば、SiO、ガラス、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの透明材料からなる結合材料にTiOやBNなどの反射フィラーを添加した材料からなる。高放熱光反射材19の熱伝導率は、5W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0070】
また、図9(b)、図9(c)に示されるように、波長変換部材12の周囲に高放熱光反射材19を形成した後、これを放熱部材17に嵌め込んでもよい。
【0071】
図9(b)は、周囲に高放熱光反射材19が形成された波長変換部材12を放熱部材17の孔17bに嵌め込む様子を示す模式図である。図9(c)は、周囲に高放熱光反射材19が形成された波長変換部材12を放熱部材17の孔17bに嵌め込んだ後、放熱部材17と高放熱光反射材19の上に高熱伝導部材13と光反射部材14を形成した状態を示す。
【0072】
波長変換部材12の周囲に形成された高放熱光反射材19は、図9(b)、図9(c)に示されるように、下側(光透過性放熱部材11側)に向かって細くなるテーパー形状を有する。また、放熱部材17の孔17bは、高放熱光反射材19のテーパー形状に対応するテーパー形状を有する。
【0073】
この場合、例えば、高放熱光反射材19のグリーンシートに波長変換部材12を埋め込み、焼結した後、高放熱光反射材19をテーパー形状に切断することにより、図9(b)に示されるような、周囲に高放熱光反射材19が形成された波長変換部材12を形成することができる。
【0074】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態に係る発光装置3は、高熱伝導部材とパッケージでシール部材を挟み込むことによるシール構造を有する点において、第2の実施の形態に係る発光装置2と異なる。なお、第2の実施の形態と同様の部材については、同じ符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0075】
(発光装置の構成)
図10は、第3の実施の形態に係る発光装置3の垂直断面図である。発光装置3においては、高熱伝導部材13がパッケージ21の上方及び側方を覆うようなカップ状の形状を有し、その開口部の縁から外周側に張り出した、パッケージ21に固定するための固定部13bを有する。また、高熱伝導部材13は、例えば、SUS、Cu、Al、CMC(Cu/Mo/Cu積層体)、Cu/AlN/Cu積層体、含浸カーボンなどからなる。パッケージ21は、シール部材26を収容するための凹部21aと、底部近傍から外周側に張り出した、高熱伝導部材13を固定するための被固定部21bを有する。
【0076】
シール部材26は、例えば、フッ素樹脂などからなる環状のパッキンであり、高熱伝導部材13とパッケージ21により厚さ方向に適度に圧縮されることにより、シール機能を発揮する。シール部材26の位置は特に限定されないが、図10に示されるように、高熱伝導部材13の天板(パッケージ21の上方を覆う板状部分)に接触する位置に設けられることが好ましい。
【0077】
パッケージ21の被固定部21bと、高熱伝導部材13の固定部13bは、例えば、溶接、はんだ接合、かしめなどにより接合される。
【0078】
第2の実施の形態に係る発光装置2においては、光透過性放熱部材11、放熱部材17、接着材24の厚さの公差内でのばらつきにより、波長変換部材12の上面の高さと高熱伝導部材13の上面の高さが一致しない場合がある。発光装置3においては、シール部材26を用いることにより、光透過性放熱部材11、放熱部材17、接着材24の厚さにばらつきがある場合であっても、高熱伝導部材13の上面の高さを調整し、波長変換部材12の上面の高さと一致させることができる。また、シール部材26を用いることにより、発光装置3が振動を受けた場合や、高熱伝導部材13やパッケージ21が熱応力を受けた場合にも、パッケージ21の内部の気密性を確保しやすい。
【0079】
(実施の形態の効果)
上記の第1~3の実施の形態に係る発光装置1、2、3によれば、波長変換部材12に光散乱層12aを用いることにより蛍光体層12bの発熱量を抑え、かつ高熱伝導部材13などの波長変換部材12の周辺部材により蛍光体層12bの熱を効果的に逃がすことができるため、蛍光体層12bに含まれる蛍光体の温度消光を効果的に抑制することができる。発光装置1、2、3、及びこれらに含まれる波長変換ユニット100、200は、例えば、光源装置、ヘッドライト、表示装置などへ適用することができる。
【実施例1】
【0080】
光散乱層12aへのレーザー光の照射状態と温度分布との関係をシミュレーションにより調べた。このシミュレーションにおいては、波長変換部材12の厚さを200μm、光散乱層12aの厚さを150μmとした。
【0081】
図11(a)は、光散乱層12aの表面に均一にレーザー光を照射した場合の光散乱層12aの温度分布を示す。図11(b)は、光散乱層12aの表面の中心近傍に集中してレーザー光を照射した場合の光散乱層12aの温度分布を示す。
【0082】
図11(a)の光散乱層12aにおける最も温度の高い領域Tmaxの温度は100.9℃であり、最も温度の低い領域Tminの温度は76.8℃であり、全体の平均温度は92.0℃であった。
【0083】
図11(b)の光散乱層12aにおける最も温度の高い領域Tmaxの温度は167.8℃であり、最も温度の低い領域Tminの温度は72.2℃であり、全体の平均温度は93.4℃であった。
【0084】
図11(a)、(b)によれば、光散乱層12aの表面に均一にレーザー光を照射した方が、温度の上昇を抑えることができる。このことは、発光装置1、2の波長変換部材12において、発光素子20から発せられた光を光散乱層12aにより蛍光体層12bに達する前に拡散させることが、光散乱層12aの温度上昇を抑えるために有効であることを示している。
【実施例2】
【0085】
波長変換部材12にレーザー光を照射したときの、光散乱層12a及び蛍光体層12bの厚さと蛍光体層12bの温度及び波長変換部材12から取り出される光の明るさをシミュレーションにより調べた。
【0086】
このシミュレーションにおいては、波長変換部材12の平面形状を0.5mm×1.0mmの長方形とした。
【0087】
図12(a)は、光散乱層12aの厚さを150μmに固定して蛍光体層12bの厚さを0~250mmの間で変化させたときの、蛍光体層12bの厚さとレーザー光を照射したときの蛍光体層12bの温度の室温(25℃)からの上昇量との関係を示すグラフである。また、図12(b)は、光散乱層12aの厚さを150μmに固定して蛍光体層12bの厚さを0~250mmの間で変化させたときの、蛍光体層12bの厚さと波長変換部材12から取り出される光の明るさ(光束)との関係を示すグラフである。
【0088】
図12(a)、(b)によれば、蛍光体層12bは厚いほど蛍光体層12bの温度が低下するが、一方で、取り出される光の明るさが低下する。蛍光体層12bが薄くなると蛍光体層12bに占める蛍光体粒子の割合が大きくなるため、蛍光体粒子分布の均一性が低下する。特に、蛍光体層12bの厚さが50μm未満である場合、蛍光体粒子の局所的な分布が生じて色むらや局所加熱の要因となるおそれがある。このため、蛍光体層12bの厚さは、50μm以上であることが好ましい。
【0089】
図13(a)は、蛍光体層12bの厚さを50μmに固定して光散乱層12aの厚さを0~250mmの間で変化させたときの、光散乱層12aの厚さとレーザー光を照射したときの蛍光体層12bの温度の室温(25℃)からの上昇量との関係を示すグラフである。また、図13(b)は、蛍光体層12bの厚さを50μmに固定して光散乱層12aの厚さを0~250mmの間で変化させたときの、光散乱層12aの厚さと波長変換部材12から取り出される光の明るさ(光束)との関係を示すグラフである。
【0090】
図13(a)、(b)によれば、光散乱層12aが厚いほど蛍光体層12bの温度が低下するが、一方で、取り出される光の明るさが低下する。図13(a)に示されるように、光散乱層12aの厚さが50μm未満の場合、蛍光体層12bの温度上昇量が115℃を超える。この場合、一般的な環境試験温度である85℃にて環境試験を行うと、蛍光体層12bの温度が200℃を超えて、蛍光体層12bを構成している樹脂が溶解し、蛍光体層12bの波長変換機能が失われる。このため、光散乱層12aの厚さは50μm以上であることが好ましい。さらに、光散乱層12aの波長変換機能を十分に発揮させるためには、蛍光体層12bの温度上昇量がおよそ100℃以下であることが求められるため、光散乱層12aの厚さは、150μm以上であることがより好ましい。
【0091】
光散乱層12aと蛍光体層12bから構成される波長変換部材12の厚さは、スクライブとブレイキングによる波長変換部材12の加工が可能な厚さであることが好ましい。波長変換部材12の厚さが300μmを超えると、スクライブによりマイクロクラックを発生させることが難しくなり、精密な加工が困難になる。また、厚さが300μmを超える波長変換部材12を精密に加工するには、ダイシングを用いなければならないが、回転するダイシングブレードを圧接することで、光散乱層12aと蛍光体層12bの接合箇所が剥がれるおそれや、チッピングが発生するおそれがある。このため、波長変換部材12の厚さは、300μm以下であることが好ましい。光散乱層12aと蛍光体層12bの厚さは、それぞれ波長変換部材12の厚さが300μmを超えないような厚さであることが好ましく、例えば、光散乱層12aの厚さが200μm以下、蛍光体層12bの厚さが100μm以下であることが好ましい。
【0092】
次に、波長変換部材12にレーザー光を照射したときの、光散乱層12a及び蛍光体層12bの厚さと波長変換部材12から取り出される光の色度の角度依存性との関係をシミュレーションにより調べた。
【0093】
このシミュレーションにおいては、波長変換部材12の平面形状を0.5mm×1.0mmの長方形とし、厚さを200μmとした。
【0094】
図14(a)~(c)は、波長変換部材12から取り出される光の角度とCIE1931色度図の色度座標Cyとの関係を示している。図14(a)~(c)においては、波長変換部材12の光取り出し面に直交する方向の角度を0°としている。図14(a)~(c)の縦軸のΔCyは、角度が0°であるときの色度座標Cyからの色度座標Cyの変化量である。
【0095】
図14(a)は、蛍光体層12bのみからなる波長変換部材12の特性を示す。図14(b)は、厚さ100μmの光散乱層12aと厚さ100μmの蛍光体層12bからなる波長変換部材12の特性を示す。また、図14(c)は、厚さ150μmの光散乱層12aと厚さ50μmの蛍光体層12bからなる波長変換部材12の特性を示す。
【0096】
図14(a)~(c)は、波長変換部材12の光散乱層12aが厚くなるほど色度の角度依存性が小さくなることを示している。波長変換部材12に光散乱層12aを用いることにより、散乱効果により、蛍光体層12bへのレーザー光の照射面積が拡大し、レーザー光の配光がランバーシャンに近づく。また、光散乱層12aが厚いほど、よりランバーシャンに近づくため、ランバーシャンの配向特性を有する蛍光体層12bから発せられる蛍光との重ね合わせにより、色度の角度依存性が小さくなる。
【実施例3】
【0097】
図1に示される構成を有する第1の実施の形態に係る発光装置1と、図9(a)に示される構成を有する第2の実施の形態に係る発光装置2における、波長変換部材12にレーザー光を照射したときの蛍光体層12bの温度をシミュレーションにより求め、比較した。
【0098】
このシミュレーションにおいては、波長変換部材12が蛍光体層12bのみからなるものとして、その平面形状を0.5mm×1.0mmの長方形とし、厚さを200μmとした。波長変換部材12と高放熱光反射材19が収容される放熱部材17の孔の平面形状を直径1.5mmの円形とした。波長変換部材12と光反射部材14が収容される高熱伝導部材13の孔の平面形状を直径1.5mmの円形とした。また、光透過性放熱部材11、波長変換部材12、高熱伝導部材13、光反射部材14、放熱部材17、高放熱光反射材19の熱伝導率をそれぞれ25W/(m・K)、25W/(m・K)、85W/(m・K)、5W/(m・K)、16W/(m・K)、4W/(m・K)とした。
【0099】
シミュレーションの結果、図1に示される構成を有する発光装置1においては、波長変換部材12(蛍光体層12b)の最高温度は、レーザー光を照射することにより、25℃から152.1℃に上昇した。一方、図9(a)に示される構成を有する発光装置2においては、波長変換部材12(蛍光体層12b)の最高温度は、レーザー光を照射することにより、25℃から125.3℃に上昇した。
【0100】
図1に示される構成を有する発光装置1における波長変換部材12の温度上昇値(127.1℃)に対する図9(a)に示される構成を有する発光装置2波長変換部材12の温度上昇値(100.3℃)は0.79であり、放熱部材17と高放熱光反射材19を用いることにより温度上昇値が79%に減少することがわかった。
【0101】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態及び実施例の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0102】
また、上記の実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0103】
1、2、3 発光装置
11、15 光透過性放熱部材
12 波長変換部材
12a 光散乱層
12b 蛍光体層
13 高熱伝導部材
14 光反射部材
15b AR膜
15c DBR膜
17 放熱部材
17a 凹部
18 光反射部材
19 高放熱光反射材
20 発光素子
21 パッケージ
100、200 波長変換ユニット
図1
図2
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