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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】環境試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
G01N17/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019198211
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021071389
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】今井 信吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩和
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-146795(JP,A)
【文献】国際公開第2007/017945(WO,A1)
【文献】特開2016-090031(JP,A)
【文献】大串 哲朗,新技術・新製品 ロータス型ポーラス銅を使用した高性能水冷ヒートシンクの開発,まてりあ Materia Japan,日本,2006年,第45巻,第3号,pp.228-230
【文献】株式会社ロータスマテリアル研究所,低コストで、効率的な熱電交換が可能な「流体透過型熱変換装置」技術,NEDOベンチャービジネスマッチング会(企業情報詳細),No.8,2019年01月25日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
F28D 1/03
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料体が配置される試験室と、
前記試験室に熱風又は冷風を供給する温調室と、を備えており、
前記温調室内に、複数の貫通孔を有する一又は複数の板状である金属成形体が、蓄熱器又は蓄冷器として配置され
前記一の金属成形体又は前記複数の金属成形体のうち少なくとも1つは、前記貫通孔が面方向に貫通するように設けられていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
試料体が配置される試験室と、
前記試験室に熱風又は冷風を供給する温調室と、を備えており、
前記温調室内に、複数の貫通孔を有する一又は複数の板状である金属成形体が、蓄熱器又は蓄冷器として配置され、
前記一の金属成形体又は前記複数の金属成形体のうち少なくとも1つは、前記貫通孔が面方向と交差する厚み方向に貫通するように設けられ、
前記一の金属成形体又は前記複数の金属成形体は、環境試験装置の運転時において、気体が、前記一の金属成形体又は前記複数の金属成形体の面方向と交差する方向に主として流れるように配置されていることを特徴とする環境試験装置
【請求項3】
前記温調室内に、複数の金属成形体が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項4】
前記温調室内に、複数の金属成形体が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の環境試験装置。
【請求項5】
環境試験装置の運転時において、気体が、前記複数の金属成形体の面方向と交差する方向に主として流れることを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項6】
環境試験装置の運転時において、気体が、前記複数の金属成形体の面方向に沿った方向に主として流れることを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項7】
前記複数の金属成形体は、扇状に配置されていることを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載の環境試験装置。
【請求項8】
前記複数の金属成形体は、扇状に配置されており、
前記複数の金属成形体のそれぞれは厚み方向に前記貫通孔が設けられたものであり、
環境試験装置の運転時において、気体が、前記複数の金属成形体の面方向と交差する方向に主として流れることを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項9】
前記複数の金属成形体のそれぞれに係る複数の前記貫通孔の貫通方向が共通であることを特徴とする請求項3~8のいずれか1項に記載の環境試験装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験物を所定の環境下に置いて試験を行う環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品や素材等の性能や耐久性を試験する装置として、環境試験装置が知られている。環境試験装置の一つに、特許文献1に開示された様な冷熱衝撃試験装置がある。特許文献1に開示された冷熱衝撃試験装置では、高温に調整された気体を試験室に導入して高温雰囲気下に試験物を晒す高温さらし運転、低温に調整された気体を試験室に導入して低温雰囲気下に試験物を晒す低温さらし運転、及び、試験物を常温に保持する常温さらし運転の3つのうちの2つ以上を順に実施し、試験物に熱衝撃を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-88730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された環境試験装置は、予冷室である低温槽に蓄冷器を備え、予冷運転時に冷気の冷熱を蓄冷器に貯めることができる。そのため、試験室を低温さらし運転に切り替えた際に試験室内の温度を迅速に所望温度まで低下させることができ、温度復帰時間の短縮が可能となっている。しかしながら、予冷に要する時間を短くすること、及び、試験室の温度復帰時間をさらに短縮することが求められている。これは特許文献1の技術を応用して高温槽内に蓄熱器を配置した場合においても同様である。
【0005】
本発明の目的は、予熱又は予冷に要する時間を短縮することができ、しかも試験室の温度復帰時間が短い環境試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の環境試験装置は、試料体が配置される試験室と、前記試験室に熱風又は冷風を供給する温調室とを備えている。そして、前記温調室内に、複数の貫通孔を有する一又は複数の金属成形体が、蓄熱器又は蓄冷器として配置されている。
【0007】
金属成形体に複数の貫通孔が設けられているため、金属成形体に複数の貫通孔が設けられていない場合と比較して、金属成形体への蓄熱又は蓄冷、及び、金属成形体からの放熱又は放冷の速度は非常に速い。したがって、複数の貫通孔を有する金属成形体が温調室内に蓄熱器又は蓄冷器として配置されていることによって、予熱又は予冷に要する時間を短くすることができると共に、試験室の温度復帰時間の大幅な短縮が可能となる。なお、複数の貫通孔を有する金属成形体を用いたことによる効果の大小は、気体の流れる向きと貫通孔の延在方向とのなす角度に依存するが、この角度がどのような大きさであっても、複数の貫通孔を有さない金属成形体を蓄熱器や蓄冷器として用いる場合に比べて効果が大きくなる。
【0008】
本発明において、前記温調室内に、それぞれが板状である複数の金属成形体が配置されていることが好ましい。複数の金属成形体のそれぞれが板状であるので、単位重量当たりの表面積が大きくなって、金属成形体への蓄熱又は蓄冷、及び、金属成形体からの放熱又は放冷の効率が向上し、予熱又は予冷に要する時間をさらに短くすることができると共に、温度復帰時間のより大幅な短縮が可能となる。
【0009】
本発明において、前記複数の金属成形体のうち少なくとも1つは、前記貫通孔が厚み方向に貫通するように設けられていることが好ましい。板状である金属成形体の厚み方向に貫通孔が延在している。したがって、蓄熱又は蓄冷及び放熱又は放冷の効率がさらに向上し、予熱又は予冷に要する時間をさらに短くすることができると共に、温度復帰時間のさらなる大幅な短縮が可能となる。なお、前記複数の金属成形体のすべてが、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有していてもよい。
【0010】
本発明において、前記複数の金属成形体のうち少なくとも1つは、前記貫通孔が面方向に貫通するように設けられていてもよい。板状である金属成形体の面方向に貫通孔が延在している。なお、前記複数の金属成形体のすべてが、面方向に貫通する複数の貫通孔を有していてもよい。また、前記複数の金属成形体の一部が面方向に貫通する複数の貫通孔を有し、前記複数の金属成形体の一部又は残り全部が、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有していてもよい。
【0011】
本発明において、前記複数の金属成形体のそれぞれに係る複数の前記貫通孔の貫通方向が共通であることが好ましい。複数の金属成形体のそれぞれにおいてすべての貫通孔の延在方向が同じとなるように配列するので、気体の整流作用が得られる。
【0012】
環境試験装置の運転時において、気体が、前記複数の金属成形体の面方向と交差する方向に主として流れるようにしてよい。ここで、環境試験装置の運転時は、温調室から試験室への熱風又は冷風の供給時、及び、温調室内での予冷又は予熱時を意味する。なお、本発明において、「空気がA方向に主として流れる」とは、空気流全体の50%以上がA方向に流れることをいう。
【0013】
環境試験装置の運転時において、気体が、前記複数の金属成形体の面方向に沿った方向に主として流れるようにしてよい。金属成形体による圧損が小さくなるために、上流端と下流端での気体の流速の差が比較的小さくなる。したがって、送風機の最大出力低減及び小型化を図ることができる。
【0014】
前記複数の金属成形体は、扇状に配置されていてよい。これによって、気体を所望の方向に整流することができる。
【0015】
また、前記複数の金属成形体が扇状に配置されている場合において、前記複数の金属成形体のそれぞれは厚み方向に前記貫通孔が設けられたものであり、環境試験装置の運転時において、気体が、前記複数の金属成形体の面方向と交差する方向に主として流れるようにしてよい。各金属成形体を厚み方向に貫通した貫通孔に気体を流すことで、気体が流れる向きを変更することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
予熱又は予冷に要する時間を短くすることができると共に、試験室の温度復帰時間の大幅な短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る環境試験装置の外観を示す斜視図である。
図2図1に示す環境試験装置内に配置された断熱筐体の断面図である。
図3図2に示す蓄熱ユニットの横断面図である。
図4図2に示す蓄冷ユニットの横断面図である。
図5図3に示す複数のロータス型ポーラス金属成形体の斜視図である。
図6】第1変形例の環境試験装置における複数のロータス型ポーラス金属成形体の斜視図である。
図7】第2変形例の環境試験装置における複数のロータス型ポーラス金属成形体の斜視図である。
図8】第3変形例の環境試験装置における複数のロータス型ポーラス金属成形体の斜視図である。
図9】第4変形例の環境試験装置における複数のロータス型ポーラス金属成形体の上面図である。
図10】第5変形例の環境試験装置における複数のロータス型ポーラス金属成形体の上面図である。
図11】第6変形例の環境試験装置における複数のロータス型ポーラス金属成形体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(全体構成)
以下、本発明の一実施形態に係る環境試験装置について、図面を参照しつつ説明する。冷熱衝撃試験装置である本実施形態に係る環境試験装置1を図1に示す。環境試験装置1の外郭を構成する筐体13内には、破線で示す断熱筐体2が配置されている。断熱筐体2の内部は、図2に示すように3部屋に分かれている。具体的には、断熱筐体2の内部は、試料体が載置される試験室3と、試験室3に熱風を送る温調室である高温室5と、試験室3に冷風を送る温調室である低温室6とに分かれている。本実施形態では、図2に示すように、試験室3の上部に高温室5が配置され、下部に低温室6が配置されている。試験室3は、筐体13の正面に取り付けられた開閉扉50を介してアクセス可能となっている。
【0019】
試験室3と高温室5との間には、これらを互いに連通させる2つの通気口7a、7bが設けられている。同様に試験室3と低温室6との間には、これらを互いに連通させる2つの通気口8a、8bが設けられている。そして試験室3の通気口7a、7b、8a、8b近傍には、それぞれ、室間の気体の往来を制限するダンパー10a、10b、11a、11bが取り付けられている。ダンパー10a、10bを開けることにより、試験室3と高温室5との間に高温側空気循環路が形成される。ダンパー11a、11bを開けることにより、試験室3と低温室6との間に低温側空気循環路が形成される。
【0020】
試験室3は、常温環境、高温環境及び低温環境のうちから選択された2以上の環境が繰り返し再現される空間である。常温環境は常温さらし運転時に、高温環境は高温さらし運転時に、そして、低温環境は低温さらし運転時に、それぞれ生成される。試験室3内には、雰囲気温度を検知する試験室内温度センサー12が配置されている。
【0021】
高温室5は、室内の気体を予め設定した予熱温度まで加熱し、その加熱した気体を試験室3との間で循環させる機能を備えた部分である。高温室5には、気体を加熱する加熱ヒーター15と、気体を循環させる高温側送風機16と、蓄熱ユニット18と、高温室5内の雰囲気温度を検知する高温側温度センサー17とが配置されている。
【0022】
蓄熱ユニット18は、後述する複数のロータス型ポーラス金属成形体18a(金属成形体の一例、図3参照)を有している。
【0023】
低温室6は、室内の気体を予め設定した予冷温度まで冷却し、その冷却した気体を試験室3との間で循環させる機能を備えた部分である。低温室6には、気体を冷却する冷却器20と、気体を循環させる低温側送風機21と、冷却した気体の温度を微調整する調整用ヒーター23と、蓄冷ユニット24と、低温室6内の雰囲気温度を検知する低温側温度センサー25とが配置されている。
【0024】
蓄冷ユニット24は、ロータス型ポーラス金属成形体18aと同じ材料からなる複数のロータス型ポーラス金属成形体24a(金属成形体の一例、図4参照)を有している。
【0025】
(蓄熱ユニット)
図3に示すように、蓄熱ユニット18は、蓄熱器としての5つのロータス型ポーラス金属成形体18aを有している。5つのロータス型ポーラス金属成形体18aのそれぞれはアルミニウム又は銅からなる板状の部材であり、その面方向が隣り合うロータス金属成形体18aの面方向と互いに平行になるように、5つのロータス型ポーラス金属成形体18aが前記面方向と直交する方向(図3において矢印Aで示す)に一直線上に配置されている。
【0026】
各ロータス型ポーラス金属成形体18aには、その厚み方向である方向Aに延在する複数の気孔H(貫通孔の一例)が形成されている。本実施形態においては、5つのロータス型ポーラス金属成形体18aは、気孔Hの開口が存在する端面同士が対向するように一直線上に位置している。ロータス型ポーラス金属(またはロータス金属(lotus metal))は、ポーラス金属の一種としてJIS H 7009に規定されており、多数の細長い気孔が同一方向に配列したものである。各気孔Hが熱溜まりとして機能し、気孔H内の気体を風として迅速に移動させることができるために、各ロータス型ポーラス金属成形体18aは蓄熱量が多く、しかも蓄熱及び放熱速度が非常に速い。例えばアルミニウム塊と比較した場合、蓄熱量は数10倍から数100倍であり、蓄熱及び放熱速度は数100倍である。
【0027】
なお、実際には非常に多数の気孔Hが形成されているが、本願図面においては、模式的に気孔Hを拡大して数個だけ描いている。なお、各ロータス型ポーラス金属成形体18aに形成される多数の気孔Hの中には、実際には方向Aに沿ってロータス型ポーラス金属成形体18aを貫通しないものがあり得るが、図3においては、すべての気孔Hが方向Aに沿ってロータス型ポーラス金属成形体18aを貫通しているように描いている。
【0028】
(蓄冷ユニット)
図4に示すように、蓄冷ユニット24は、蓄冷器としての5つのロータス型ポーラス金属成形体24aを有している。5つのロータス型ポーラス金属成形体24aのそれぞれはアルミニウム又は銅からなる板状の部材であり、その面方向が隣り合うロータス金属成形体24aの面方向と互いに平行になるように、5つのロータス型ポーラス金属成形体24aが前記面方向と直交する方向(図4において矢印Aで示す)に一直線上に配置されている。
【0029】
各ロータス型ポーラス金属成形体24aには、その厚み方向である方向Aに延在する複数の気孔H(貫通孔の一例)が形成されている。本実施形態において、5つのロータス型ポーラス金属成形体24aは、気孔Hの開口が存在する端面同士が対向するように一直線上に位置している。各気孔Hが熱溜まりとして機能し、気孔H内の気体を風として迅速に移動させることができるために、各ロータス型ポーラス金属成形体24aは蓄冷量が多く、しかも蓄冷及び放冷速度が非常に速い。例えばアルミニウム塊と比較した場合、蓄冷量は数10倍から数100倍であり、蓄冷及び放冷速度は数100倍である。なお、図3と同様、実際には非常に多数の気孔Hが形成されているが、図4においては模式的に気孔Hを拡大して数個だけ描いている。また、図4においてはすべての気孔Hが方向Aに沿ってロータス型ポーラス金属成形体24aを貫通しているように描いている。
【0030】
(高温さらし運転)
高温さらし運転時には、高温側ダンパー10a、10bを開いて低温側ダンパー11a、11bを閉じる。そして、高温室5内の気体を試験室3に導入し、試験室内温度センサー12で検知される試験室3内の気体の温度が高温側試験温度(例えば150℃)になるよう、加熱ヒーター15及び高温側送風機16を駆動して気体を高温側空気循環路に循環させる。このとき、蓄熱ユニット18内において、気体はロータス型ポーラス金属成形体18aの厚み方向に主として流れる。そして、図5において太矢印で示すように、比較的多くの気体が気孔Hを通過してロータス型ポーラス金属成形体18aをその厚み方向に貫通するように流れる。なお、後述するようにロータス型ポーラス金属成形体18aは予熱されている。その後、加熱ヒーター15及び高温側送風機16が制御されて、試験室3内の気体の温度が、高温さらし運転期間が終了するまで高温側試験温度付近に維持される。なお、高温さらし運転の直前は低温さらし運転であってもよいし、常温さらし運転であってもよい。常温さらし運転においては、高温側ダンパー10a、10b及び低温側ダンパー11a、11bを閉じ、常温さらし用ダンパー(図示せず)を開いて外気を導入する。
【0031】
高温さらし運転期間が開始されると、低温室6において、蓄冷ユニット24内の複数のロータス型ポーラス金属成形体24aの予冷が始まる。具体的には、低温側温度センサー25で検知される低温室6内の気体が所定予冷温度に達するまで、冷却器20及び低温側送風機21を駆動して、気体が低温室6内を循環するようにする。このとき、蓄冷ユニット24内において、気体はロータス型ポーラス金属成形体24aの厚み方向に主として流れる。そして、図5に示したのと同様に、比較的多くの気体が気孔Hを通過してロータス型ポーラス金属成形体24aをその厚み方向に貫通するように流れる。その後、冷却器20、調整用ヒーター23及び低温側送風機21が制御されて、低温室6内の気体の温度は、高温さらし運転期間が終了するまで所定予冷温度付近に維持される。
【0032】
本実施形態では、ロータス型ポーラス金属成形体18aを蓄熱器として用いているので、高温さらし運転が開始されてから試験室3内の気体が高温側試験温度に達するまでの時間つまり温度復帰時間が、例えば蓄熱器として単なる金属(アルミニウム)塊又は複数の気孔に方向性がない単なるポーラス金属成形体を用いた場合と比較して、非常に短くなる。これは、予熱されたロータス型ポーラス金属成形体18aからの放熱速度が非常に速いからである。また、試験室3内の気体が早期に高温側試験温度に達し、早期に加熱ヒーター15を常に駆動させておく必要が無くなるので、省エネルギーを図ることができる。
【0033】
本実施形態では、ロータス型ポーラス金属成形体24aを蓄冷器として用いているので、高温さらし運転期間が開始されてから低温室6内の気体が所定予冷温度に達するまでの時間が、例えば蓄冷器として単なる金属(アルミニウム)塊又は複数の貫通孔が設けられていない金属成形体を用いた場合と比較して、非常に短くなる。これは、ロータス型ポーラス金属成形体24aへの蓄冷速度が非常に速いからである。また、低温室6内の気体が早期に所定予冷温度に達し、早期に冷却器20、調整用ヒーター23及び低温側送風機21を常に駆動させておく必要が無くなるので、省エネルギーを図ることができる。
【0034】
(低温さらし運転)
低温さらし運転時には、低温側ダンパー11a、11bを開いて高温側ダンパー10a、10bを閉じる。そして、試験室内温度センサー12で検知される試験室3内の気体の温度が低温側試験温度(例えば-60℃)になるよう、冷却器20及び低温側送風機21を駆動し、気体を低温側空気循環路に循環させる。このとき、蓄冷ユニット24内において、気体はロータス型ポーラス金属成形体24aの厚み方向に主として流れる。このときも、図5に示したのと同様に、比較的多くの気体が気孔Hを通過してロータス型ポーラス金属成形体24aをその厚み方向に貫通するように流れる。なお、上述したようにロータス型ポーラス金属成形体24aは予冷されている。その後、冷却器20、調整用ヒーター23及び低温側送風機21が制御されて、試験室3内の気体の温度が、低温さらし運転期間が終了するまで低温側試験温度付近に維持される。なお、低温さらし運転の直前は高温さらし運転であってもよいし、常温さらし運転であってもよい。
【0035】
低温さらし運転期間が開始されると、高温室5において、蓄熱ユニット18内の複数のロータス型ポーラス金属成形体18aの予熱が始まる。すなわち、高温側温度センサー17で検知される高温室5内の気体が所定予熱温度に達するまで、加熱ヒーター15及び高温側送風機16を駆動して、気体が高温室5内を循環するようにする。このとき、蓄熱ユニット18内において、空気はロータス型ポーラス金属成形体18aの厚み方向に主として流れる。そして、図5に示したのと同様に、比較的多くの気体が気孔Hを通過してロータス型ポーラス金属成形体18aをその厚み方向に貫通するように流れる。その後、加熱ヒーター15及び高温側送風機16が制御されて、高温室5内の気体の温度が、低温さらし運転期間が終了するまで所定予熱温度付近に維持される。
【0036】
本実施形態では、ロータス型ポーラス金属成形体24aを蓄冷器として用いているので、低温さらし運転が開始されてから試験室3内の気体が低温側試験温度に達するまでの時間つまり温度復帰時間が、例えば蓄冷器として単なる金属(アルミニウム)塊又は複数の気孔に方向性がない単なるポーラス金属成形体を用いた場合と比較して、非常に短くなる。これは、予冷されたロータス型ポーラス金属成形体24aからの放冷速度が非常に速いからである。また、試験室3内の気体が早期に低温側試験温度に達するので、早期に冷却器20を常に駆動させておく必要が無くなって、省エネルギーを図ることができる。
【0037】
本実施形態では、ロータス型ポーラス金属成形体18aを蓄熱器として用いているので、低温さらし運転期間が開始されてから高温室5内の気体が所定予熱温度に達するまでの時間が、例えば蓄熱器として単なる金属(アルミニウム)塊又は複数の貫通孔が設けられていない金属成形体を用いた場合と比較して、非常に短くなる。これは、ロータス型ポーラス金属成形体18aへの蓄熱速度が非常に速いからである。また、高温室5内の気体が早期に所定予熱温度に達し、早期に加熱ヒーター15及び高温側送風機16を常に駆動させておく必要が無くなるので、省エネルギーを図ることができる。
【0038】
(その他の効果)
本実施形態に係る環境試験装置1によるその他の効果について説明する。上述したように、本実施形態では、ロータス型ポーラス金属成形体18aを用いることで、高温さらし運転時において試験室3内の気体が高温側試験温度に達するまでの時間、及び、低温さらし運転時において高温室5内の気体が所定予熱温度に達するまでの時間を非常に短くできる。したがって、加熱ヒーター15の最大出力を低下させても、試験室3内の気体を所望時間内に高温側試験温度とすること及び高温室5内の気体を所望時間内に所定予熱温度とすることが可能となり、省エネルギーを図ることができる。そしてこれに伴って、加熱ヒーター15の小型化と環境試験装置1の小型化を実現することも可能となる。
【0039】
また、上述したように、ロータス型ポーラス金属成形体24aを用いることで、低温さらし運転時において試験室3内の気体が低温側試験温度に達するまでの時間、及び、高温さらし運転時において低温室6内の気体が所定予冷温度に達するまでの時間を非常に短くできる。したがって、冷却器20の最大出力を低下させても、試験室3内の気体を所望時間内に低温側試験温度とすること及び低温室6内の空気を所望時間内に所定予冷温度とすることが可能となり、省エネルギーを図ることができる。そしてこれに伴って、冷却器20の小型化と環境試験装置1の小型化を実現することも可能となる。
【0040】
しかも、ロータス型ポーラス金属成形体18a、24aの気孔Hに気体を通過させることによって、整流された空気が排出されるので、加熱ヒーター15及び冷却器20に供給される空気の流れが均一となって、加熱ヒーター15及び冷却器20での熱交換効率を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、複数のロータス型ポーラス金属成形体18a、24aのそれぞれが板状であるので、板状でない場合と比較して単位重量当たりの表面積が大きい。したがって、ロータス型ポーラス金属成形体18a、24aへの蓄熱又は蓄冷、及び、ロータス型ポーラス金属成形体18a、24aからの放熱又は放冷の効率が向上する。そのため、予熱又は予冷に要する時間をさらに短くすることができると共に、温度復帰時間のより大幅な短縮が可能である。
【0042】
本実施形態では、5つのロータス型ポーラス金属成形体18aの厚み方向が共通であって、これらが気孔Hの開口がある端面同士が対向するように、厚み方向に一直線上に位置しているため、空気は5つのロータス型ポーラス金属成形体18aをすべて貫通するように流れる割合が高くなる。5つのロータス型ポーラス金属成形体24aについても同様である。これによって、蓄熱又は蓄冷及び放熱又は放冷の効率がさらに大幅に向上する。また、空気の整流作用の面でも優れている。
【0043】
(第1変形例)
次に、上述した実施形態の第1変形例について説明する。第1変形例は蓄熱ユニット及び蓄冷ユニットだけが上述した実施形態と異なるので、以下上述した実施形態との相違点を中心に説明する。
【0044】
第1変形例においては、図6に示すように、蓄熱器としての5つのロータス型ポーラス金属成形体31aを有している。5つのロータス型ポーラス金属成形体31aのそれぞれはアルミニウム又は銅からなる板状の部材であり、その面方向が隣り合うロータス型ポーラス金属成形体31aの面方向と互いに平行になるように、5つのロータス型ポーラス金属成形体31aが前記面方向と直交する方向(図6において矢印Aで示す方向)に一直線上に配置されている。各ロータス型ポーラス金属成形体31aには、その厚み方向に延在する複数の気孔Hが形成されている。したがって、第1変形例において、5つのロータス型ポーラス金属成形体31aは、気孔Hの開口が存在する端面同士が対向するように一直線上に位置していることになる。なお、図示は省略するが、蓄冷ユニット内の5つのロータス型ポーラス金属成形体も、5つのロータス型ポーラス金属成形体31aと同様の向きに配置され、同様に複数の気孔Hが形成されている。
【0045】
第1変形例に係る環境試験装置の高温さらし運転時又は低温さらし運転時に、気体は、図6において太矢印で示すように、ロータス型ポーラス金属成形体31aの面方向(図6において矢印Bで示す方向)に主として流れる。このときも、一部の気体が気孔Hを通過してロータス型ポーラス金属成形体31aをその厚み方向に貫通するように流れる。これは蓄冷ユニットにおいても同様である。
【0046】
第1変形例でも上述した実施形態において得られる効果の少なくとも一部を得ることができる。さらに、気体が主としてロータス型ポーラス金属成形体31aの面方向に流れるため、ロータス型ポーラス金属成形体31aによる圧損が小さくなる。したがって、蓄熱ユニット内の上流端と下流端での空気の流速の差が比較的小さくなって送風機16、21の最大出力低減及び小型化を図ることができる。なお、図6に示した方向Aは、図3図5に示した方向Aと同じでも異なっていてもどちらでもよい。
【0047】
(第2変形例)
次に、上述した実施形態の第2変形例について説明する。第2変形例は蓄熱ユニット及び蓄冷ユニットだけが上述した実施形態と異なるので、以下上述した実施形態との相違点を中心に説明する。
【0048】
第2変形例においては、図7に示すように、蓄熱器としての5つのロータス型ポーラス金属成形体32aを有している。5つのロータス型ポーラス金属成形体32aのそれぞれはアルミニウム又は銅からなる板状の部材であり、その面方向が隣り合うロータス型ポーラス金属成形体32aの面方向と互いに平行になるように、5つのロータス型ポーラス金属成形体32aが前記面方向と直交する方向(図7において矢印Aで示す方向)に一直線上に配置されている。つまり、第2変形例において、5つのロータス型ポーラス金属成形体32aは、厚み方向と直交する主面同士が対向するように一直線上に位置している。各ロータス型ポーラス金属成形体32aには、その面方向の一つである水平な方向Bに延在する複数の気孔Hが形成されている。なお、図示は省略するが、蓄冷ユニット内の5つのロータス型ポーラス金属成形体も、5つのロータス型ポーラス金属成形体32aと同様の向きに配置され、同様に複数の気孔Hが形成されている。
【0049】
第2変形例に係る環境試験装置の高温さらし運転時又は低温さらし運転時に、気体は、図7において太矢印で示すように、ロータス型ポーラス金属成形体32aの面方向(方向B)に主として流れる。このときも、一部の気体が気孔Hを通過してロータス型ポーラス金属成形体32aをその厚み方向に貫通するように流れる。これは蓄冷ユニットにおいても同様である。
【0050】
第2変形例でも上述した実施形態において得られる効果の少なくとも一部を得ることができる。第2変形例では、気体が、隣接する2枚のロータス型ポーラス金属成形体32aの間の空間と、ロータス型ポーラス金属成形体32aの面方向に貫通する気孔Hとの両方を流れることになる。したがって、蓄熱又は蓄冷及び放熱又は放冷の優れた効率が得られる。さらに、気体が主としてロータス型ポーラス金属成形体32aの面方向に流れるため、ロータス型ポーラス金属成形体32aによる圧損が小さくなる。したがって、蓄熱ユニット内の上流端と下流端での空気の流速の差が比較的小さくなって送風機16、21の最大出力低減及び小型化を図ることができる。なお、図7に示した方向Aは、図3図5に示した方向Aと同じでも異なっていてもどちらでもよい。
【0051】
(第3変形例)
次に、上述した実施形態の第3変形例について説明する。第3変形例は蓄熱ユニット及び蓄冷ユニットだけが上述した実施形態と異なるので、以下上述した実施形態との相違点を中心に説明する。
【0052】
第3変形例においては、図8に示すように、蓄熱器としての5つのロータス型ポーラス金属成形体33aを有している。5つのロータス型ポーラス金属成形体33aのそれぞれはアルミニウム又は銅からなる板状の部材であり、その面方向が隣り合うロータス型ポーラス金属成形体33aの面方向と互いに平行になるように、5つのロータス型ポーラス金属成形体33aが前記面方向と直交する方向(図8において矢印Aで示す方向)に一直線上に配置されている。つまり、第3変形例において、5つのロータス型ポーラス金属成形体33aは、厚み方向と直交する主面同士が対向するように一直線上に位置していることになる。各ロータス型ポーラス金属成形体33aには、その面方向において斜め(例えば45°)に傾斜(気体の流れ上流側が上で気体の流れ下流側が下)した方向Bに延在する複数の気孔Hが形成されている。なお、模式図である図8において、成形体上面に描かれた気孔Hの開口と成形体側面に描かれた気孔Hの開口とはつながっていることがある。また、図示は省略するが、蓄冷ユニット内の5つのロータス型ポーラス金属成形体も、5つのロータス型ポーラス金属成形体33aと同様の向きに配置され、同様に複数の気孔Hが形成されている。
【0053】
第3変形例では、環境試験装置の高温さらし運転時又は低温さらし運転時に、気体が、図8において太矢印で示すように、主に左上から右下へと斜めに流れる。このときも、一部の空気が気孔Hを通過してロータス型ポーラス金属成形体33aをその厚み方向に貫通するように流れる。これは蓄冷ユニットにおいても同様である。
【0054】
第3変形例でも上述した第2変形例において得られる効果の少なくとも一部を得ることができる。なお、図8に示した方向Aは、図3図5に示した方向Aと同じでも異なっていてもどちらでもよい。
【0055】
(第4変形例)
次に、上述した実施形態の第4変形例について説明する。第4変形例は蓄熱ユニット及び蓄冷ユニットだけが上述した実施形態と異なるので、以下上述した実施形態との相違点を中心に説明する。
【0056】
第4変形例において、蓄熱ユニットは、上面図である図9に示すように、蓄熱器としての5つのロータス型ポーラス金属成形体34aを有している。5つのロータス型ポーラス金属成形体34aのそれぞれはアルミニウム又は銅からなる板状の部材である。5つのロータス型ポーラス金属成形体34aは1つの平面上に直立するように配置されている。つまり、5つのロータス型ポーラス金属成形体34aの厚み方向は、いずれも、一平面に対して平行である。さらに、5つのロータス型ポーラス金属成形体34aは、扇状に配置されている。つまり、隣接した2つのロータス型ポーラス金属成形体34aの厚み方向の角度変化量は方向も含めていずれの隣接した2つについても同じとなっている。
【0057】
本実施形態において、図9から分かるように、隣接した2つのロータス型ポーラス金属成形体34aの左端同士が離隔しかつその距離が右端同士の距離よりも小さくなるように、5つのロータス型ポーラス金属成形体34aの厚み方向の向きが決定されている。図9に示す例では、中央のロータス型ポーラス金属成形体34aだけが、図9において矢印Aで示す方向(図3図5に示した方向Aと同じ方向であるが、異なっていてもよい)を面方向として含んでいる。
【0058】
各ロータス型ポーラス金属成形体34aには、図3及び図5に示したような厚み方向に延在する複数の気孔Hが形成されている。なお、図示は省略するが、蓄冷ユニット内の5つのロータス型ポーラス金属成形体も、5つのロータス型ポーラス金属成形体34aと同様の向きに配置され、同様に複数の気孔Hが形成されている。別の変形例として、各ロータス型ポーラス金属成形体34aには、図7又は図8に示したような面方向に延在する複数の気孔Hが形成されていてもよい。
【0059】
第4変形例に係る環境試験装置の高温さらし運転時又は低温さらし運転時に、気体は、図9において太矢印で示すように、5つのロータス型ポーラス金属成形体34aのそれぞれの表面に沿って通気口7bから加熱ヒーター15に向かって主として流れる。本実施形態では、気体流を下流に行くほど拡げることができる。このときも、一部の気体が気孔Hを通過してロータス型ポーラス金属成形体34aを貫通するように流れる。これは蓄冷ユニットにおいても同様である。
【0060】
第4変形例でも上述した第1変形例において得られる効果の少なくとも一部を得ることができる。
【0061】
(第5変形例)
次に、上述した実施形態の第5変形例について説明する。第5変形例は蓄熱ユニット及び蓄冷ユニットだけが上述した実施形態と異なるので、以下上述した実施形態との相違点を中心に説明する。
【0062】
第5変形例において、蓄熱ユニットは、上面図である図10に示すように、蓄熱器としての5つのロータス型ポーラス金属成形体35aを有している。5つのロータス型ポーラス金属成形体35aのそれぞれはアルミニウム又は銅からなる板状の部材である。5つのロータス型ポーラス金属成形体35aは1つの平面上に直立するように配置されている。つまり、5つのロータス型ポーラス金属成形体35aの厚み方向は、いずれも、一平面に対して平行である。さらに、5つのロータス型ポーラス金属成形体35aは、扇状に配置されている。つまり、隣接した2つのロータス型ポーラス金属成形体35aの厚み方向の角度変化量は方向も含めていずれの隣接した2つについても同じとなっている。
【0063】
本実施形態において、図10から分かるように、隣接した2つのロータス型ポーラス金属成形体35aの右端同士が離隔しかつその距離が左端同士の距離よりも小さくなるように、5つのロータス型ポーラス金属成形体35aの厚み方向の向きが決定されている。図10に示す例では、中央のロータス型ポーラス金属成形体35aだけが、図10において矢印Aで示す方向(図3図5に示した方向Aと同じ方向であるが、異なっていてもよい)を面方向として含んでいる。
【0064】
各ロータス型ポーラス金属成形体35aには、図3及び図5に示したような厚み方向に延在する複数の気孔Hが形成されている。なお、図示は省略するが、蓄冷ユニット内の5つのロータス型ポーラス金属成形体も、5つのロータス型ポーラス金属成形体35aと同様の向きに配置され、同様に複数の気孔Hが形成されている。別の変形例として、各ロータス型ポーラス金属成形体35aには、図7又は図8に示したような面方向に延在する複数の気孔Hが形成されていてもよい。
【0065】
第5変形例に係る環境試験装置の高温さらし運転時又は低温さらし運転時に、気体は、図10において太矢印で示すように、5つのロータス型ポーラス金属成形体35aのそれぞれの表面に沿って通気口7bから加熱ヒーター15に向かって主として流れる。本実施形態では、気体流を下流に行くほど窄めることができる。このときも、一部の気体が気孔Hを通過してロータス型ポーラス金属成形体35aを貫通するように流れる。これは蓄冷ユニットにおいても同様である。
【0066】
第5変形例でも上述した第1変形例において得られる効果の少なくとも一部を得ることができる。
【0067】
(第6変形例)
次に、上述した実施形態の第6変形例について説明する。第6変形例は蓄熱ユニット及び蓄冷ユニットだけが上述した実施形態と異なるので、以下上述した実施形態との相違点を中心に説明する。
【0068】
第6変形例において、蓄熱ユニットは、側面図である図11に示すように、蓄熱器としての10個のロータス型ポーラス金属成形体36aを有している。10個のロータス型ポーラス金属成形体36aのそれぞれはアルミニウム又は銅からなる板状の部材である。10個のロータス型ポーラス金属成形体36aは1つの平面上に直立するように配置されている。つまり、10個のロータス型ポーラス金属成形体36aの厚み方向は、いずれも、一平面に対して平行である。さらに、10個のロータス型ポーラス金属成形体36aは、扇状に配置されている。つまり、隣接した2つのロータス型ポーラス金属成形体36aの厚み方向の角度変化量は方向も含めていずれの隣接した2つについても同じとなっている。
【0069】
さらに、本実施形態において、図11から分かるように、隣接した2つのロータス型ポーラス金属成形体36aの右端同士が接触するように、10個のロータス型ポーラス金属成形体36aの厚み方向の向きが決定されている。図11に示す例では、通気口7bに最も近い下端に配置されたロータス型ポーラス金属成形体36aだけが、図9において矢印Aで示す方向(図3図5に示した方向Aと同じ方向であるが、異なっていてもよい)を面方向として含んでいる。
【0070】
各ロータス型ポーラス金属成形体36aには、図3及び図5に示したような厚み方向に延在する複数の気孔Hが形成されている。なお、図示は省略するが、蓄冷ユニット内の10個のロータス型ポーラス金属成形体も、10個のロータス型ポーラス金属成形体36aと同様の向きに配置され、同様に複数の気孔Hが形成されている。
【0071】
第6変形例に係る環境試験装置の高温さらし運転時又は低温さらし運転時に、気体は、図11において太矢印で示すように、通気口7bに最も近い下端に配置されたロータス型ポーラス金属成形体36aを厚み方向に貫通し、順次隣接するロータス型ポーラス金属成形体36aを厚み方向に貫通して上端にあるロータス型ポーラス金属成形体36aから加熱ヒーター15に向かって主として流れる。したがって、本実施形態では、気体流の向きをほぼ直角に変更することができる。これは蓄冷ユニットにおいても同様である。
【0072】
第6変形例でも上述した実施形態において説明した効果の少なくとも一部を得ることができる。
【0073】
(変形例)
以上、本発明の好適な一実施形態及び幾つかの変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0074】
上述した実施形態に係る環境試験装置は蓄熱器及び蓄冷器の両方を有しているが、本発明において、環境試験装置は蓄熱器及び蓄冷器の一方だけを有しており、それが一又は複数のロータス型ポーラス金属成形体で構成されていてもよい。また、温調室である高温室及び低温室はいずれか一方だけが設けられていてもよい。
【0075】
上述した実施形態及び変形例では、「複数の貫通孔を有する金属形成体」としてロータス型ポーラス金属成形体を用いたが、複数の貫通孔を有するものであれば、これ以外の金属成形体以外を用いてもよい。たとえば、発泡金属(ポーラス金属)に貫通孔を空けたものでもよい。貫通孔はロータス型ポーラス金属のように気泡を用いて作製されたものに限らず、ドリルなどの機械的方法で作製されたものであってもよい。また、複数の貫通孔のすべてが同じ方向に延在している必要はなく、延在方向が異なる貫通孔が設けられていてもよい。
【0076】
蓄熱ユニット及び蓄冷ユニットの位置は、高温室及び低温室内の気体の流れる個所であれば、図2に示した位置以外のどこであってもよい。複数のロータス型ポーラス金属成形体が一直線上ではなくランダムに配置されていてもよい。ロータス型ポーラス金属成形体は1つだけでもよい。また、ロータス型ポーラス金属成形体は板状でなくてもよい。また、蓄熱ユニット又は蓄冷ユニット内における気体の流れる方向は、ロータス型ポーラス金属成形体の面方向及び厚み方向だけではなく、面方向と交差する任意の方向であってもよい。複数のロータス型ポーラス金属成形体を用いる場合、一平面上に並べる形態ではなく、段差を設けて並べる構成としてもよい。
【0077】
・複数のロータス型ポーラス金属成形体は、同じ形状でなくてもよく、それぞれ異なる大きさや厚みであってもよい。
・金属成形体は、一又は複数の開口が設けられたハウジングに収容されていてもよい。開口には整流板があってもよいし、なくてもよい。
図3から図6に示したような厚み方向に延在する複数の気孔Hは、厚み方向に対して水平に貫通していなくてもよく、たとえば気孔Hを正面から見て、左右や上下に角度がついて貫通していてもよい。
図7に示したような面方向に延在する複数の気孔Hは、面方向に対して水平に貫通していなくてもよく、たとえば気孔Hを正面から見て、左右や上下に角度がついて貫通していてもよい。
図8に示したような面方向に延在する複数の気孔Hは、厚み方向に対して垂直に貫通していなくてもよい(厚み方向に角度がついて貫通してもよい)。
図9から図11の気孔Hの貫通の角度についても、どのような方向であってもよい。
図9から図11で説明した変形例では、隣接した2つの金属成形体の厚み方向の角度変化量は方向も含めていずれの隣接した2つについても同じとしているが、厚み方向の角度変化量が異なっていてもよい。
図8までの例では複数の金属成形体に係るすべての貫通孔の方向を共通としているが、複数の金属成形体のそれぞれに係る複数の貫通孔の貫通方向だけを共通とし、ある金属成形体に共通の貫通方向と別の金属成形体に共通の貫通方向とが異なる方向としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 環境試験装置
2 断熱筐体
3 試験室
5 高温室
6 低温室
7a、7b、8a、8b 通気口
10a、10b、11a、11b ダンパー
12 試験室内温度センサー
15 加熱ヒーター
16 高温側送風機
17 高温側温度センサー
18 蓄熱ユニット
18a、31a、32a、33a、34a、35a、36a ロータス型ポーラス金属成形体(金属成形体)
20 冷却器
21 低温側送風機
23 調整用ヒーター
24 蓄冷ユニット
25 低温側温度センサー
24a ロータス型ポーラス金属成形体(金属成形体)
H 気孔(貫通孔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11