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  • 特許-複合パッドの製造ライン及び製造方法 図1
  • 特許-複合パッドの製造ライン及び製造方法 図2
  • 特許-複合パッドの製造ライン及び製造方法 図3
  • 特許-複合パッドの製造ライン及び製造方法 図4
  • 特許-複合パッドの製造ライン及び製造方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】複合パッドの製造ライン及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20230927BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230927BHJP
   B32B 41/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B23P21/00 307E
G01B11/00 H
B32B41/00
B23P21/00 303B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019213897
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021084156
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】田島 智宣
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 拓也
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-188212(JP,A)
【文献】特開2003-039253(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198430(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0188664(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 21/00
G01B 11/00
B32B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の第1パッドと第2パッドとを重ね合わせて複合パッドを製造する製造ラインであって、
前記第1パッドが、一枚毎に分離されて重ね合せ面を上に向けられかつ前記重ね合せ面に接着材を塗布された状態で配置される第1撮影部と、
前記第2パッドが、一枚毎に分離されて配置される第2撮影部と、
前記第1撮影部上の前記第1パッドの第1画像と、前記第2撮影部上の前記第2パッドの第2画像とを撮影する撮像装置と、
前記第2パッドを保持可能な組付装置と、
前記第1画像及び前記第2画像から前記第1撮影部上の前記第1パッドの位置及び向きと前記第2撮影部上の前記第2パッドの位置及び向きとを演算する画像解析部と、
前記第2パッドが前記第2撮影部上から搬送されて、前記第1撮影部上の前記第1パッドに対して予め定められた位置及び向きに重ねられるように、前記画像解析部の演算結果に基づいて前記組付装置を制御する制御部と、を備える複合パッドの製造ライン。
【請求項2】
前記第1パッド及び前記第2パッドの少なくとも一方を搬送するベルトコンベアを備えると共に、前記第1撮影部及び前記第2撮影部の少なくとも一方は、前記ベルトコンベアの一部として備えられ、
前記ベルトコンベアのうち前記第1撮影部又は前記第2撮影部となる部分は、透光性を有するベルトと、前記ベルトを下方から照射するバックライトとを有する請求項1に記載の複合パッドの製造ライン。
【請求項3】
前記第1パッドは、前記第1撮影部上で前記第2パッドによって全体を上方から覆い隠される大きさをなしている請求項1又は2に記載の複合パッドの製造ライン。
【請求項4】
前記第1パッドは、軟質ウレタンフォームであり、
前記第2パッドは、表皮材である請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の複合パッドの製造ライン。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の複合パッドの製造ラインを使用して複合パッドを製造する複合パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パッド同士を重ね合わせて複合パッドを製造する複合パッドの製造ライン及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の複合パッドとして、例えば車両用のシートの表皮を複数に分割してなる表皮用パッドの裏面にウレタンパッドを貼り合わせたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-309048号公報(図1図3,段落[0008])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パッドは、機械部品に比べて曲げ変形し易く、パッド同士の位置合わせが困難であるため、貼り合わせ作業に熟練を要した。そこで、熟練を要さずにパッド同士の貼り合わせを行うことが可能な技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、シート状の第1パッドと第2パッドとを重ね合わせて複合パッドを製造する製造ラインであって、前記第1パッドが、一枚毎に分離されて重ね合せ面を上に向けられかつ前記重ね合せ面に接着材を塗布された状態で配置される第1撮影部と、前記第2パッドが、一枚毎に分離されて配置される第2撮影部と、前記第1撮影部上の前記第1パッドの第1画像と、前記第2撮影部上の前記第2パッドの第2画像とを撮影する撮像装置と、前記第2パッドを保持可能な組付装置と、前記第1画像及び前記第2画像から前記第1撮影部上の前記第1パッドの位置及び向きと前記第2撮影部上の前記第2パッドの位置及び向きとを演算する画像解析部と、前記第2パッドが前記第2撮影部上から搬送されて、前記第1撮影部上の前記第1パッドに対して予め定められた位置及び向きに重ねられるように、前記画像解析部の演算結果に基づいて前記組付装置を制御する制御部と、を備える複合パッドの製造ラインである。
【0006】
請求項2の発明は、前記第1パッド及び前記第2パッドの少なくとも一方を搬送するベルトコンベアを備えると共に、前記第1撮影部及び前記第2撮影部の少なくとも一方は、前記ベルトコンベアの一部として備えられ、前記ベルトコンベアのうち前記第1撮影部又は前記第2撮影部となる部分は、透光性を有するベルトと、前記ベルトを下方から照射するバックライトとを有する請求項1に記載の複合パッドの製造ラインである。
【0007】
請求項3の発明は、前記第1パッドは、前記第1撮影部上で前記第2パッドによって全体を上方から覆い隠される大きさをなしている請求項1又は2に記載の複合パッドの製造ラインである。
【0008】
請求項4の発明は、前記第1パッドは、軟質ウレタンフォームであり、前記第2パッドは、表皮材である請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の複合パッドの製造ラインである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の複合パッドの製造ラインを使用して複合パッドを製造する複合パッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1,4及び5の複合パッドの製造ライン及び複合パッドの製造方法では、第1パッドは、一枚毎に分離されて重ね合せ面を上に向けられかつ重ね合せ面に接着材を塗布された状態で第1撮影部に配置される。一方、第2パッドは、一枚毎に分離されて第2撮影部に配置される。そして、第1撮影部上の第1パッドの第1画像と第2撮影部上の第2パッドの第2画像とが撮像装置にて撮影され、それら第1画像及び第2画像に基づいて、画像解析部が、第1撮影部上の第1パッドの位置及び向きと、第2撮影部上の第2パッドの位置及び向きを演算する。そして、その演算結果に基づいて制御部にて制御される組付装置が、第2パッドを吸引して第2撮影部上から搬送し、第1撮影部上の第1パッドに重ねて貼り合わせる。このように本開示の製造ラインでは、第1と第2のパッドを位置決め用の部材に押し付けることなく、組付装置の位置制御によって互いに位置決めして重ね合わせる。また、組付装置は、第2パッドを吸引して搬送するので曲げ変形が防がれる。これらにより本開示の複合パッドの製造ライン及び製造方法では、熟練を要さずに安定した品質で第1と第2のパッドの貼り合わせることができる。特に、請求項3の開示のように、第2パッドが第1パッドより大きく、第1パッドが第2パッドによって全体を上方から覆い隠された状態に貼り合わされる場合は、両パッドを貼り合わせる直前に目視確認を行えないので、人が作業するとパッド同士の位置ずれが生じ得る。
【0011】
請求項2の複合パッドの製造ラインでは、第1撮影部又は第2撮影部となるベルトコンベアのベルトが透光性を有し、それらベルトがバックライトにて下方から照射されるので、第1と第2の画像において第1と第2の各パッドの外形が明確になる。これにより、画像解析部の演算精度が向上する。
【0012】
<付記>
上記請求項1~4の構成をさらに以下の限定事項1~3にて限定してもよい。
[限定事項1]
途中部分が前記第1撮影部になった第1コンベアラインと、
前記第1コンベアラインの上流側端部に配置され、前記第1パッドが前記重ね合わせ面を上にして1枚毎に分離された状態で載置される第1パッド載置部と、
前記第1コンベアラインのうち前記第1パッド載置部と前記第1撮影部との間に配置されて、前記第1パッドの前記重ね合わせ面に接着材を塗布する接着材塗布装置と、
前記第1コンベアラインのうち前記第1撮影部より下流側に配置され、前記第2パッドを前記第1パッドに押し付ける加圧装置と、を備える。
【0013】
上記限定事項1の複合パッドの製造ラインは、第1コンベアラインの上流側端部の第1パッド載置部に第1パッドが載置されると、その下流側の接着材塗布装置により第1パッドに接着材が塗布されて第1撮影部まで搬送される。これにより、接着材を塗布された第1パッドを効率よく第1撮影部に配置することができる。また、第1パッド載置部において、第1パッドの上に第2パッドが貼り合わされた後は、加圧装置が第2パッドを第1パッドに押し付けるので、第1パッドと第2パッドとの接着が安定する。
【0014】
[限定事項2]
上記限定事項1に記載の複合パッドの製造ラインにおいて、
下流側端部が前記第2撮影部になった第2コンベアラインと、
前記第2コンベアラインの上流側端部に設けられ、前記接着材を塗布されていない前記第2パッドが前記重ね合わせ面を下にして1枚毎に分離された状態で載置される第2パッド載置部と、を備える。
【0015】
限定事項2の複合パッドの製造ラインでは、第2コンベアラインの上流側端部の第2パッド載置部に第2パッドが載置するだけで、組付装置の可動域の第2撮影部に第2パッドを効率よく配置することができる。
【0016】
[限定事項3]
上記限定事項2に記載の複合パッドの製造ラインにおいて、
前記第1パッド載置部又は前記第2パッド載置部の少なくとも一方のパッド載置部の隣に配置されて、前記第1パッド及び前記第2パッドの一方のパッドが積み上げられるパッド積上部と、
前記パッド積上部の前記パッドを吸引して搬送し、前記パッド載置部に載置する載置装置とを有する。
【0017】
限定事項3の複合パッドの製造ラインでは、第1パッド載置部又は第2パッド載置部の少なくとも一方のパッド載置部への第1パッド又は第2パッドの載置を載置装置が行うので、人件費の削減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の実施形態に係る(A)複合パッド、(B)表皮パッド、(C)クッションパッドの各平面図
図2】車両シートの斜視図
図3】複合パッドの製造ラインの平面図
図4】複合パッドの製造ラインの制御部のブロック図
図5】第1画像と第2画像の概念図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図5を参照して複合パッド93の製造ライン10(図3参照。以下、単に「製造ライン10」という)の実施形態について説明する。図1(A)には、本実施形態の製造ライン10にて製造される複合パッド93の一例が示されている。
【0020】
ここで、複合パッドとは、「表皮パッドとウレタンシートからなるウレタンパッドを貼り合せた積層体であって複数分割されているもの」を意味する。そして、本実施形態の複合パッド93は、図1(B)に示した表皮パッド92(特許請求の範囲の「第2パッド」に相当し、車両用シートの表皮であって複数分割されているもの)の裏面に、図1(C)に示したクッションパッド91(特許請求の範囲の「第1パッド」に相当し、車両用シートの表皮材の裏面に積層される発泡体(ウレタンフォーム)シートであって複数分割されているもの)を貼り合わせてなる。また、本実施形態の製造ライン10は、形状が異なる複数種類の複合パッド93を製造可能であり、それら複数種類の複合パッド93がパッチワークのように繋ぎ合わされて図2に示した車両用シート99の表皮98になる。
【0021】
各表皮パッド92は、例えば、人工皮革、天然皮革、織布等のシートから打ち抜かれて製造され、クッションパッド91は、例えば、軟質ウレタンフォームシートから打ち抜かれて製造される。また、図1(B)に示すように、表皮パッド92の外周の複数位置には、複数の切り込み92Aが形成されている。さらに、図1(A)に示されているように、クッションパッド91は表皮パッド92より小さい略相似形をなしている。そして、設計上、クッションパッド91の重心と表皮パッド92の重心とが一致し、クッションパッド91の輪郭線と表皮パッド92の輪郭線との間に略一定の間隔があけられ、複数の切り込み92Aより内側にクッションパッド91が配置された状態で貼り合わされて複合パッド93になる。
【0022】
図3に示すように、本実施形態の製造ライン10には、準備工程部100と、貼合工程部101と、仕上工程部102とがベルトコンベア12に沿って備えられている。準備工程部100では、クッションパッド91と表皮パッド92とがベルトコンベア12上に載置される。その際、クッションパッド91は、貼り合わせ面に接着剤を塗布されかつその貼り合わせ面を上に向けた状態にしてベルトコンベア12の幅方向の一方寄り位置に載置される。一方、表皮パッド92は、貼り合わせ面を下に向けた状態にしベルトコンベア12の幅方向の他方寄り位置に載置される。そして、クッションパッド91と表皮パッド92とが横並びされた状態でベルトコンベア12によって搬送される。
【0023】
貼合工程部101は、ベルトコンベア12の近傍に、撮像装置16と組立装置20とを備えてなる。また、本実施形態では、貼合工程部101に備えたベルトコンベア12のうち幅方向の一方寄りのクッションパッド91が配置される部分が、特許請求の範囲の第1撮影部15に相当し、ベルトコンベア12の幅方向の他方寄りの表皮パッド92が配置される部分が、特許請求の範囲の第2撮影部45に相当する。そして、撮像装置16は、ベルトコンベア12が停止した状態で、第1撮影部15上のクッションパッド91と第2撮影部45上の表皮パッド92とを併せて撮影する。即ち、本実施形態では、撮像装置16が特許請求の範囲の「第1撮像装置」と「第2撮像装置」とを兼ねている。
【0024】
組付装置20は、広く普及している産業用ロボットであって、その先端部には、図示しない吸引ツールが着脱可能に取り付けられている。吸引ツールは、支持フレームから複数の吸引パイプが垂下した構造をなしている。各吸引パイプは、蛇腹構造をなしかつ下端部がテーパー状に拡径した吸引部になっている。そして、吸引パイプ内が負圧状態にされ、組立装置20がティーチングプレイバックによって動作し、表皮パッド92を吸引してベルトコンベア12から持ち上げ、ベルトコンベア12上のクッションパッド91に対して貼り合わせる。このティーチングプレイバックの制御で使用される複数のティーチングポイントの一部が、撮像装置16が撮影した画像から演算される後述の補正データにて補正される。
【0025】
図4には、製造ライン10の制御部10Aが示されている。制御部10Aには、製造ライン10全体を統括して制御するメインコントローラ81が備えられ、そのメインコントローラ81には、組付装置20のコントローラ82と、ベルトコンベア12を駆動制御部84等が接続されている。
【0026】
各組付装置20のコントローラ82は、特許請求の範囲の「制御部」に相当し、撮像装置制御部85を備えている。撮像装置制御部85は、第1撮像装置16にて撮影された画像を取得してその画像データをデータ記憶部85Aに取り込む。
【0027】
撮像装置制御部85に備えた画像解析部85Bは、例えば、図5に示すように、データ記憶部85Aの画像データによって再現される画像Gを、クッションパッド91全体が含まれる第1画像G1と、表皮パッド92の全体が含まれる第2画像G2とに分割する。そして、第1撮影部15上におけるクッションパッド91の位置と向きとを演算すると共に、第2撮影部45上における表皮パッド92の位置と向きとを演算する。
【0028】
具体的には、第1画像G1には直交2軸の第1座標が設定されると共に、第2画像G2には、直交2軸の第2座標が設定されている。また、第1画像G1には、クッションパッド91が第1撮影部15の正規の位置に正規の向きで載置された場合のクッションパッド91の重心の位置データP10(以下、「基準位置データP10」という)と、クッションパッド91の重心から予め設定されたクッションパッド91の代表点に向かうベクトルデータV10(以下、「基準ベクトルデータV10」という)とが設定されている。それと同様に、第2画像G2にも、表皮パッド92が第2撮影部45の正規の位置に正規の向きで載置された場合の表皮パッド92の基準位置データP20と基準ベクトルデータV20とが設定されている。
【0029】
そして、第1及び第2の画像G1,G2には、実際のクッションパッド91と表皮パッド92とが、上記した正規の位置及び向きからずれた状態で映り込む。その一例として、図5には上述の基準となる架空のクッションパッド91及び表皮パッド92が二点鎖線で示され、実際のクッションパッド91及び表皮パッド92が実線で示されている。
【0030】
画像解析部85Bは、公知な画像処理方法により、第2画像G2に写り込んでいる表皮パッド92の重心の位置データP22を演算すると共に、表皮パッド92の重心から予め設定された表皮パッド92の代表点に向かうベクトルデータV22とを演算する。そして、画像解析部85Bは、基準位置データP20に対する位置データP22の差分である位置補正データと、基準ベクトルデータV20に対するベクトルデータV22の交差角である向き補正データとを前述の補正データとして求める。
【0031】
すると、コントローラ82のデータ補正部82Aが、上述した補正データを使用して、組付装置20の吸引ツールが第2撮影部45上の表皮パッド92を吸引するときのティーチングポイントのデータを補正する。これにより、組付装置20が表皮パッド92を吸引する度に、第2撮影部45上の表皮パッド92の位置及び向きに応じて吸引ツール60の位置及び向きが微調整され、載置装置46の吸引ツール60に吸引されたときのその吸引ツール60に対する表皮パッド92の位置及び向きが一定(同じ)になる。
【0032】
また、画像解析部85B及びデータ補正部82Aは、上述した各クッションパッド91に係る補正データも表皮パッド92に係る補正データと同様にして演算する。そして、その補正データを使用して、組付装置20が表皮パッド92を各クッションパッド91に貼り合わせるときのティーチングポイントのデータも補正する。これにより、組付装置20が表皮パッド92を各クッションパッド91に貼り合わせる度に、第1撮影部15上のクッションパッド91の位置及び向きに応じた位置・向きに吸引ツール60の位置及び向きが微調整されて、クッションパッド91に対して貼り合わされる表皮パッド92の位置及び向きが一定(同じ)になる。
【0033】
以上のようにして、クッションパッド91と表皮パッド92とが張り合わされて複合パッド93となり、貼合工程部101から前述の仕上工程部102へと搬送される。仕上工程部102では、複合パッド93が上下から加圧される。これにより、クッションパッド91と表皮パッド92との接着が強化される。そして、複合パッド93は。図示しない乾燥用のラックに移動される。そして、複合パッド93が一定期間乾燥されて完成する。
【0034】
本実施形態の製造ライン10の構成に関する説明は以上である。次に、本実施形態の製造ライン10及び複合パッド93の製造方法による作用効果について説明する。製造ライン10及び製造方法では、前述したように第1撮影部15上のクッションパッド91の第1画像G1と第2撮影部45上の表皮パッド92の第2画像G2とが撮像装置16にて撮影され、それら第1画像G1及び第2画像G2に基づいて、画像解析部85Bが、第1撮影部15上のクッションパッド91の位置及び向きと、第2撮影部45上の表皮パッド92の位置及び向きを演算して補正データを求める。そして、それら補正データを使用してコントローラ82により制御される組付装置20が、表皮パッド92をクッションパッド91に重ねて貼り合わせる。
【0035】
このように本実施形態の製造ライン10では、クッションパッド91と表皮パッド92とを位置決め用の部材に押し付けることなく、組付装置20の位置制御によって互いに位置決めして重ね合わせる。また、組付装置20は、表皮パッド92を吸引して搬送するので曲げ変形が防がれる。これらにより本実施形態の複合パッド93の製造ライン10及び製造方法では、熟練を要さずに安定した品質でクッションパッド91と表皮パッド92(以下、適宜、「両パッド91,92」という)パッドの貼り合わせることができる。
【0036】
特に、本実施形態の複合パッド93は、表皮パッド92がクッションパッド91より大きく、クッションパッド91が表皮パッド92によって全体を上方から覆い隠された状態に貼り合わされるので、両パッド91,92を貼り合わせる直前の目視確認を行えず、人が貼り合わせ作業すると位置ずれが生じ得る。
【0037】
また、人が目視確認を行いながら貼り合わせ作業を行うには、パッド91,92のうち大きい方の表皮パッド92を作業台に載置し、その上に小さい方のクッションパッド91を載置することになる。しかしながら、この場合には、接着剤が塗布されたクッションパッド91をひっくり返す必要があり、作業者の手が汚れ、ひいてはパッド91,92や設備を汚す恐れがある。
【0038】
これらに対し、本実施形態の製造ライン10では、コントローラ82が両パッド91,92を貼り合わせる直前の相互の位置を制御データ上で認識しているのでパッド91,92同士の位置ずれや汚れが抑えられ、複合パッド93の品質が向上しかつ安定する。また、人件費が抑えられて、車両用シート99の製造コストを下げることもできる。
【0039】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態の製造ライン10は、車両用シート99の複合パッド93を製造するためのものであったが、車両用シート99以外の自動車の内装部品やそれ以外の部品の製造に製造ライン10を使用してもよい。
【0040】
(2)前記実施形態の製造ライン10で張り合わされた両パッド91,92は、略相似形をなしていたが、両パッドは全く異なる形状であってもよく、両パッドが互いに部分的に重なった状態で貼り合わされるものであってもよい。
【0041】
(3)前記実施形態の組付装置20及び載置装置46の機構は、上記したものに限定されるものではない。例えば、スカラータイプの産業ロボット(水平多関節ロボット)や直交軸タイプの産業ロボットを使用してもよい。
【0042】
(4)前記実施形態では、貼り付けられる前のクッションパッド91と表皮パッド92とを撮像装置16により一度に撮影していたが、撮像装置16をクッションパッド91用と表皮パッド92用とに分けて2台設けて、クッションパッド91と表皮パッド92とを別々に撮影してもよい。
【0043】
(5)前記実施形態では、ベルトコンベア12の上にクッションパッド91と表皮パッド92とが横並びに載置されていたが、クッションパッド91と表皮パッド92とを別々のベルトコンベアで搬送する構成としてもよい。具体的には、ベルトコンベア12には、クッションパッド91のみが載置され、ベルトコンベア12とは別に設けたベルトコンベアにて表皮パッド92を組付装置20の近傍まで搬送してもよい。この場合、ベルトコンベア12上で撮影したクッションパッド91の画像と、別のベルトコンベア上で撮影した表皮パッド92の画像とから上述した補正データを作成すればよい。
【符号の説明】
【0044】
10 製造ライン
12 ベルトコンベア
15 第1撮影部
16 撮像装置(第1撮像装置、第2撮像装置)
20 組付装置
45 第2撮影部
82 ロボットコントローラ(制御部)
82A データ補正部
84 駆動制御部
85 撮像装置制御部
85A データ記憶部
85B 画像解析部
91 クッションパッド
92 表皮パッド
93 複合パッド
99 車両用シート(自動車の内装部品)
G1 第1画像
G2 第2画像
図1
図2
図3
図4
図5