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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ポリエステル繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/84 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
D01F6/84 301D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019565509
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 KR2018006322
(87)【国際公開番号】W WO2018222017
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】10-2017-0069239
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ プヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム スンギ
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨジン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-512315(JP,A)
【文献】特表2014-507531(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125860(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0062234(KR,A)
【文献】特開平11-323658(JP,A)
【文献】特開2006-214057(JP,A)
【文献】特表2012-524173(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0037588(KR,A)
【文献】特開昭50-014818(JP,A)
【文献】特開昭50-018722(JP,A)
【文献】特表2002-512289(JP,A)
【文献】特表2015-518915(JP,A)
【文献】特開2010-215770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0281230(US,A1)
【文献】国際公開第2005/075539(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 6/62
D01F 6/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)テレフタル酸を含むジカルボン酸と、全体ジカルボン酸100モルに対して1モル~25モルのイソソルビドおよび65モル~200モルのエチレングリコールを含むジオールとのエステル化反応段階;
(b)前記エステル化反応生成物を重縮合反応し、
テレフタル酸を含むジカルボン酸とイソソルビドを含むジオールとが重合され、ジカルボン酸から誘導された酸部分およびジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有するポリエステル樹脂であって、ジオールから誘導された全体ジオール部分に対してイソソルビドから誘導されたジオール部分が1~20モル%であり、ジエチレングリコールから誘導されたジオール部分が2~5モル%であるポリエステル樹脂を製造する段階;
(c)前記(b)段階で得たポリエステル樹脂を240℃~310℃で溶融放射する段階;および
(d)前記(c)段階で得た溶融放射された未延伸糸をポリエステル樹脂のガラス転移温度以上で延伸する段階を含み、
前記(a)段階において、前記ジカルボン酸:前記ジオールの初期混合モル比は1:1.01以上1.05未満に調整され、
前記(b)段階は、前記重縮合反応生成物がオルトクロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させて35℃で測定した固有粘度が0.45dl/g~0.75dl/gに達するように前記重縮合反応を行い、
前記(b)段階後(c)段階前に、(b0-1)重縮合反応で製造されたポリマーを結晶化する段階;および(b0-2)オルトクロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させて35℃で測定した固有粘度が(b)段階で得た樹脂の固有粘度より0.05~0.40dl/g高い値に達するように結晶化されたポリマーを固相重合する段階をさらに含む、
ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項2】
前記(b)重縮合反応前に、前記(a)エステル化反応で得た生成物を400~1mmHg減圧条件で0.2~3時間放置してイソソルビドを含む未反応物を除去する段階をさらに含む、
請求項に記載のポリエステル繊維の製造方法。
【請求項3】
前記(d)段階で未延伸糸を延伸比3倍以上に延伸する、
請求項に記載のポリエステル繊維の製造方法。
【請求項4】
前記(d)段階は、80℃~220℃で行われる、
請求項に記載のポリエステル繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2017年6月2日付韓国特許出願第10-2017-0069239号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれている。
【0002】
本発明は、ポリエステル繊維、その製造方法および前記ポリエステル繊維から製造された成形体に関する。
【背景技術】
【0003】
代表的な合成繊維の材料としてはポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアラミドなどが広く使われてきた。
【0004】
ナイロン6やナイロン66およびナイロン6/66等のポリアミド樹脂で構成されるポリアミド繊維は柔軟で強靭であるため釣り糸や漁網糸などに使われてきた。しかし、ナイロン6、ナイロン66あるいはナイロン6/66で構成されるポリアミド繊維は比重が1.14で海水の比重と類似する。したがって、ポリアミド繊維で製造される釣り糸、漁網糸などが海に自然に沈まない問題があり、海水に長時間接触すると引張強度、結節強度などが低下するという問題がある。また、高透明性を確保するために高価な添加剤を使用することが求められる。
【0005】
一方、ポリエステル樹脂に代表されるPET(polyethylene terephthalate)は安い価格および優れた物理的特性を有しており、比重が1.33で高いが、結晶性が高いため加工時高い温度が求められ、太さが一定以上になる釣り糸のような成形体の透明性の確保が不可能な問題がある。また、紙機械のためのペルトのような用途の場合、アルカリ薬品に対する一定水準以上の抵抗性が求められるが、PETはアルカリ薬品に露出時、時間経過とともに強度が低下して交換周期が短い短所がある。
【0006】
一方、一般的に繊維に特定色相を付与した成形体を製造するための方法は一般ポリエステル繊維を染めた後製織する方法と製織後に染める二つの方法があるが、このような二つの方法は染色工程中に吸着程度が異なり最終生産物に対する染色が均一に行われない問題がある。
【0007】
これにより、釣り糸、漁網糸に使われる繊維は、速い沈下速度、海水に対する高い抵抗性、高い結節強度、高透明性などを有することが求められている。また、紙機械のためのペルトを提供するために、アルカリに対して高い安定性を有して交換周期を増やすことのできる素材開発が必要である。したがって、沈下速度を増加させ得、耐塩水性、耐化学性、染色性に優れて高い結節強度維持率の特性を有する繊維に対する研究がより必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリエステル繊維およびその製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記ポリエステル繊維から製造される成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、発明の一実施形態によれば、テレフタル酸あるいはその誘導体を含むジカルボン酸あるいはその誘導体とイソソルビドを含むジオールが重合され、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有するポリエステル樹脂から形成されたポリエステル繊維であって、前記ポリエステル樹脂は、ジオールから誘導された全体ジオール部分に対してイソソルビドから誘導されたジオール部分を1~20モル%で含み、ジエチレングリコールから誘導されたジオール部分を2~5モル%で含み、前記ポリエステル樹脂のオリゴマー含有量が1.3%以下であり、前記ポリエステル樹脂から得た厚さ6mmの試験片に対してASTM D1003-97により測定されたヘイズが3%未満である、ポリエステル繊維が提供される。
【0011】
発明の他の一実施形態によれば、前記ポリエステル繊維の製造方法と前記ポリエステル繊維から製造される成形体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によるポリエステル繊維は、低いオリゴマー含有量を有して厚さ6mmの試験片で製作されて3%未満のヘイズを示すポリエステル樹脂で形成され、耐塩水性、耐化学性、耐光性、染色性などがいずれも優れ、良好な結節強度を示し、高透明度を維持する成形体を提供することができる。したがって、前記ポリエステル繊維を使用すると、釣り糸、漁網糸、紙機械のためのペルト(pelt)、ロープ、ラケット用ガット(gut)、カーペット、じゅうたん、マットおよび衣類、3Dプリンタなどの多様な用途に適合した成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の具体的な実施形態によるポリエステル繊維とその製造方法およびこれより製造される成形体などについて説明する。
【0014】
本明細書で特別な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。そして、明確に反対の意味が記載されていない限り、単数形態は複数形態を含む。明細書で使われる「含む」ことの意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0015】
また、本明細書で繊維は、長繊維であるフィラメントと短繊維であるステープルをいずれも含む意味で使われる。
【0016】
発明の一実施形態によれば、テレフタル酸あるいはその誘導体を含むジカルボン酸あるいはその誘導体とイソソルビドを含むジオールが重合され、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有するポリエステル樹脂から形成されたポリエステル繊維であって、前記ポリエステル樹脂は、ジオールから誘導された全体ジオール部分に対してイソソルビドから誘導されたジオール部分を1~20モル%で含み、ジエチレングリコールから誘導されたジオール部分を2~5モル%で含み、
前記ポリエステル樹脂のオリゴマー含有量が1.3重量%以下であり、前記ポリエステル樹脂から得た厚さ6mmの試験片に対してASTM D1003-97により測定されたヘイズが3%未満である、ポリエステル繊維が提供される。
【0017】
本発明者らは高い比重と耐塩水性が求められる釣り糸および漁網糸、耐アルカリ性が求められる紙機械のためのペルトを提供するための合成繊維の研究を重ねた結果、未延伸糸の物性を調整して窮極的に所望する物性の成形体を提供できることを見出して発明を完成した。
【0018】
具体的には、特定含有量のイソソルビドが導入されており、低いオリゴマー含有量を有するポリエステル樹脂でポリエステル繊維を形成すると、高い比重および優れた機械的特性を示し、優れた耐塩水性、耐化学性(耐アルカリ性)、耐光性、染色性を有して高透明度を示す成形体を提供できることを見出した。
【0019】
ポリエステル樹脂に代表されるPETの場合、高分子鎖の規則性が高く、速い結晶化速度によってヘイズが発生しやすいため高透明性が求められる用途への適用は制限された。特に、従来のポリエステル樹脂は厚い太さで成形するとヘイズが発生しやすいため高透明性が求められる用途への適用には制限あった。
【0020】
このような問題点を解決するために従来の高分子主鎖にイソソルビドを導入させる方法が紹介された。しかし、イソソルビドに由来した残基は高分子鎖の規則性を低くして樹脂の結晶化速度を低下させた。十分な透明度を確保するために、ポリエステル樹脂はイソソルビドから誘導されたジオール部分を多量含まなければならないが、多量のイソソルビドから誘導されたジオール部分により結晶性樹脂として機能できない問題がもたらされた。非結晶性樹脂は分子構造の規則性が低いため延伸による成形が不可能である問題がある。このような問題のため高分子主鎖に導入され得るイソソルビドの含有量には制約があった。
【0021】
本発明の一実施形態によるポリエステル繊維は、このような制約にもかかわらず、全体ジオール部分に対して1~20モル%、3~20モル%、3~18モル%、5~20モル%、5~15モル%、9~20モル%、あるいは9~15モル%、あるいは6~12モル%のイソソルビドから誘導されたジオール部分を含むポリエステル樹脂で形成され、優れた透明度はもちろん耐塩水性、耐化学性、耐光性および染色性を向上させ得、優れた機械的特性を示すことができる。
【0022】
より具体的には、本発明の一実施形態によるポリエステル繊維は、厚さ6mmの試験片で製作された時ASTM D1003-97により測定されたヘイズが3%未満、2.5%未満、2%未満、1.5%未満あるいは1.0%未満であるポリエステル樹脂から形成され得る。本発明の一実施形態によるポリエステル繊維は、厚さ6mmの試験片で製作された時全くヘイズが観察されないポリエステル樹脂から形成され得るので、前記ヘイズの下限は0%であり得る。
【0023】
また、前記ポリエステル繊維を形成するポリエステル樹脂は、オルトクロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させて35℃で測定した固有粘度が0.45~1.5dl/g、0.50~1.2dl/g、0.60~1.0dl/gあるいは0.65~0.98dl/gであり得る。仮に、固有粘度が前記範囲未満であれば成形時の外観不良が発生し得、十分な機械的強度を確保できず、高延伸により所望する物性を発現することが難しい。また、固有粘度が前記範囲を超えると成形時の溶融物の粘度増加によって圧縮機の圧力が上昇して放射工程が円滑でなく、圧力上昇を解消するために圧縮機の温度を上昇させる場合、熱による変形のため物性が低下し得、延伸工程で延伸張力が上昇して工程上問題が発生し得る。
【0024】
一方、前記ポリエステル繊維は、カーボンブラック、紫外線遮断剤、帯電防止剤、衝撃補強剤、酸化防止剤および微細粒子からなる群より選ばれた1種以上の添加剤をさらに含み得る。前記添加剤を添加する方式は、特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂の製造時に添加するかあるいは添加剤の高濃度のマスターバッチを製作してこれを希釈して混合するなどの方法を用いることができる。
【0025】
以下、このようなポリエステル繊維の製造方法について詳細に説明する。
【0026】
前記ポリエステル繊維は、(a)テレフタル酸あるいはその誘導体を含むジカルボン酸あるいはその誘導体と、全体ジカルボン酸あるいはその誘導体100モルに対して1モル~25モルのイソソルビドおよび65モル~200モルのエチレングリコールを含むジオールのエステル化反応またはエステル交換反応段階;
(b)前記エステル化またはエステル交換反応生成物を重縮合反応し、
テレフタル酸あるいはその誘導体を含むジカルボン酸あるいはその誘導体とイソソルビドを含むジオールが重合され、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有するポリエステル樹脂であって、ジオールから誘導された全体ジオール部分に対してイソソルビドから誘導されたジオール部分が1~20モル%であり、ジエチレングリコールから誘導されたジオール部分が2~5モル%であるポリエステル樹脂を製造する段階;
(c)前記(b)段階で得たポリエステル樹脂を240℃~310℃で溶融放射する段階;および
(d)前記(c)段階で得た溶融放射された未延伸糸をポリエステル樹脂のガラス転移温度以上で延伸する段階を含む方法により前記ポリエステル繊維を製造することができる。
【0027】
前記製造方法において、前記(b)段階は、前記重縮合反応生成物がオルトクロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させて35℃で測定した固有粘度が0.45dl/g~0.75dl/gに達するように前記重縮合反応を行い得、これに対してその後の段階を行い得る。
【0028】
また、前記(c)段階では比較的低温でポリエステル樹脂を溶融放射して高分子の熱分解を最小化して高分子の長鎖構造を維持し得る。具体的には、前記(c)段階は、240℃~310℃あるいは250℃~300℃の温度で行われ得る。仮に、溶融放射温度が240℃未満であれば、高分子が溶融しない問題があり、310℃を超えると高分子の熱分解が増加して繊維の成形時に繊維が簡単に切れて所望する物性が発現されず、原糸の表面損傷により全般的な物性低下を招き得る。
【0029】
前記(c)段階で得た溶融放射された未延伸糸は使用されたポリエステル樹脂のガラス転移温度以下に冷却され得る。以後、未延伸糸を前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上の温度で延伸し得る。具体的には、未延伸糸の延伸工程は、80℃~220℃あるいは90℃~210℃の温度で行われ得る。前記(c)段階では未延伸糸を高倍率で延伸し得る。具体的には、前記未延伸糸を延伸比3倍以上あるいは4倍以上に延伸し得る。
【0030】
前記ポリエステル繊維の製造方法において、ポリエステル樹脂は上述した(a)エステル化反応またはエステル交換反応段階;および(b)重縮合反応段階により製造し得る。
【0031】
ここで、ポリエステル樹脂は、バッチ(batch)式、半連続式または連続式で製造され得、前記エステル化反応あるいはエステル交換反応と重縮合反応は不活性気体雰囲気下で行われることが好ましく、前記ポリエステル樹脂とその他添加剤の混合は単純混合であるか、押出による混合であり得る。
【0032】
さらに必要に応じて、固相重合反応を次いで行うことができる。具体的には、本発明の一実施形態によるポリエステル樹脂の製造方法は、(b)段階後(c)段階前に(b0-1)重縮合反応(溶融重合)で製造されたポリマーを結晶化する段階;および(b0-2)オルトクロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させて35℃で測定した固有粘度が(b)段階で得た樹脂の固有粘度より0.05~0.40dl/g高い値に達するように結晶化されたポリマーを固相重合する段階をさらに含み得る。
【0033】
本明細書において「ジカルボン酸あるいはその誘導体」の用語は、ジカルボン酸とジカルボン酸の誘導体のうち選ばれる1種以上の化合物を意味する。そして、「ジカルボン酸の誘導体」は、ジカルボン酸のアルキルエステル(モノメチル、モノエチル、ジメチル、ジエチルまたはジブチルエステルなど炭素数1~4の低級アルキルエステル)あるいはジカルボン酸の無水物を意味する。これにより、例えば、テレフタル酸あるいはその誘導体は、テレフタル酸;モノアルキルあるいはジアルキルテレフタレート;およびテレフタル酸無水物のようにジオールと反応してテレフタロイルの部分(terephthaloyl moiety)を形成する化合物を通称する。
【0034】
前記(i)ジカルボン酸あるいはその誘導体としては主にテレフタル酸あるいはその誘導体を使用する。具体的には、(i)ジカルボン酸あるいはその誘導体としてはテレフタル酸あるいはその誘導体を単独で使用し得る。また、(i)ジカルボン酸あるいはその誘導体としてはテレフタル酸あるいはその誘導体と、テレフタル酸あるいはその誘導体以外のジカルボン酸あるいはその誘導体として炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体および炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体からなる群より選ばれた1種以上を混合して使用し得る。前記炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体にはイソフタル酸、ジメチルイソフタレート、フタル酸、ジメチルフタレート、フタル酸無水物、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ジメチル2,6-ナフタレンジカルボキシレートなどのジアルキルナフタレンジカルボキシレート、ジフェニルジカルボン酸などポリエステル樹脂の製造に通常使用される芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体が含まれ得る。前記炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体には1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸、ジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチル1,3-シクロヘキサンジカルボキシレートなどのシクロヘキサンジカルボキシレート、セバシン酸、コハク酸、イソデシルコハク酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸などポリエステル樹脂の製造に通常使用される線状、分枝状または環状脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体が含まれ得る。
【0035】
前記(i)ジカルボン酸あるいはその誘導体は、テレフタル酸あるいはその誘導体を全体(i)ジカルボン酸あるいはその誘導体に対して50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上あるいは90モル%以上で含み得る。そして、前記(i)ジカルボン酸あるいはその誘導体はテレフタル酸あるいはその誘導体以外のジカルボン酸あるいはその誘導体を全体(i)ジカルボン酸あるいはその誘導体に対して0~50モル%、0モル%超50モル%以下あるいは0.1~40モル%で含み得る。このような含有量の範囲内で適切な諸般物性を実現するポリエステル樹脂を製造することができる。
【0036】
一方、前記イソソルビド(isosorbide、1,4:3,6-dianhydroglucitol)は製造されたポリエステル樹脂のジオールから誘導された全体ジオール部分に対してイソソルビドから誘導されたジオール部分が1~20モル%、あるいは6~12モル%になるように使用される。
【0037】
ポリエステル樹脂の合成中にイソソルビドの一部が揮発されるか反応しない場合もあり得るので、ポリエステル樹脂に上述した含有量のイソソルビドを導入するために、イソソルビドは全体ジカルボン酸あるいはその誘導体100モルに対して1モル~25モル、あるいは6.5モル~25モルで使用され得る。
【0038】
仮に、イソソルビドの含有量が前記範囲を超えると黄変現象が発生し得、結晶性が顕著に減少して延伸工程に不利であり、前記範囲未満であれば十分な耐塩水性、耐化学性および機械的強度を示すことができずヘイズが発生し得る。しかし、イソソルビドの含有量を上述した範囲に調整して厚さ6mmの試験片に製作された時高透明度を示すポリエステル樹脂を提供することができ、これを用いて優れた耐塩水性、耐化学性、耐光性および透明性を有するポリエステル繊維を提供することができる。
【0039】
ポリエステル樹脂に導入されたジエチレングリコールから誘導されたジオール部分の含有量は、ポリエステル樹脂の製造のために使用されたエチレングリコールの含有量に直接的に比例するものではない。しかし、ポリエステル樹脂のジオールから誘導された全体ジオール部分に対してジエチレングリコールから誘導されたジオール部分が2~5モル%になるようにエチレングリコールを全体ジカルボン酸あるいはその誘導体100モルに対して65モル~200モルを、あるいは80モル~200モルで使用し得る。
【0040】
仮に、ポリエステル樹脂に導入されたジエチレングリコールから誘導されたジオール部分の含有量が前記範囲を超えると十分な耐熱性を示すことができず、前記範囲未満であればヘイズが発生し得る。逆に、ジエチレングリコールから誘導されたジオール部分の含有量が前記範囲に至らない場合、機械的物性が十分でない。
【0041】
前記ポリエステル樹脂は、全体ジオール部分に対して上述したイソソルビドおよびジエチレングリコールから誘導されたジオール部分および残量の脂肪族ジオールから誘導されたジオール部分を含み得る。前記脂肪族ジオールは炭素数2~12の脂肪族ジオールであり得、前記脂肪族ジオールの具体的な例としては、トリエチレングリコール、プロパンジオール(1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオールなど)、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール(1,6-ヘキサンジオールなど)、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロブタンジオールなどの線状、分枝状または環状脂肪族ジオールを例示することができる。前記ジオールには前記イソソルビドの他に前記羅列されたジオールが単独または二つ以上が配合された形態で含まれ得、例えば、前記イソソルビドに前記エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが単独または二つ以上配合された形態で含まれ得る。前記ジオールにおいて、イソソルビド以外のジオールはエチレングリコールであり得る。イソソルビドおよびエチレングリコールの他に物性改善のために使用される他のジオールの含有量は例えば、全体ジオールに対して、0~50モル%あるいは0.1~30モル%に調整され得る。
【0042】
一方、前記ポリエステル樹脂を製造するために、ジカルボン酸あるいはその誘導体に対して、ジオールのモル比が1.01以上になるようにジカルボン酸あるいはその誘導体と(ii)ジオールを反応器に投入し得る。また、前記ジオールは必要に応じて重合反応前に一度に反応器に供給されるかあるいは数回にわたって重合反応中に投入され得る。
【0043】
より具体的な一例によれば、反応初期にジカルボン酸あるいはその誘導体と、ジオールの最初投入量を特定範囲に調整して特定の分子量分布を充足するポリエステル樹脂を製造することができ、これを用いて一実施形態のポリエステル繊維およびそれに含まれるポリエステル樹脂をより効果的に得ることができる。
【0044】
一例として、ジカルボン酸あるいはその誘導体としてジカルボン酸を使用する場合は、前記ジカルボン酸に対して、ジオールの初期混合モル比を1:1.01~1.05に調整し得、前記ジカルボン酸あるいはその誘導体としてジカルボン酸アルキルエステルあるいはジカルボン酸無水物などの誘導体を使用する場合は、ジカルボン酸あるいはその誘導体に対して、ジオールの初期混合モル比を1:2.0~1:2.1に調整し得る。
【0045】
このような初期混合モル比は、反応器での重合反応開始時点での混合モル比を意味し得、反応途中には必要に応じてジカルボン酸あるいはその誘導体および/またはジオールがさらに追加されることもできる。
【0046】
一方、前記(a)エステル化反応またはエステル交換反応では触媒が使用され得る。このような触媒としては、ナトリウム、マグネシウムのメチラート(methylate);Zn、Cd、Mn、Co、Ca、Ba、Tiなどの酢酸塩、ホウ酸塩、脂肪酸塩、炭酸塩、アルコキシ塩;金属Mg;Pb、Zn、Sb、Geなどの酸化物などを例示することができる。
【0047】
前記(a)エステル化反応またはエステル交換反応は、バッチ(batch)式、半連続式または連続式で行われ得、それぞれの原料は別に投入されるが、ジオールにジカルボン酸あるいはその誘導体を混合したスラリー形態で投入することが好ましい。
【0048】
前記(a)エステル化反応またはエステル交換反応開始前のスラリーにあるいは反応完了後の生成物に重縮合触媒、安定剤、呈色剤、結晶化剤、酸化防止剤、分岐剤(branching agent)等を添加することができる。
【0049】
しかし、上述した添加剤の投入時期がこれに限定されるものではなく、ポリエステル樹脂の製造段階のうち任意の時点に投入されることもできる。前記重縮合触媒としては、通常のチタニウム、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ系化合物などを一つ以上適切に選択して使用し得る。有用なチタニウム系触媒としては、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、ラクテートチタネート、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセチックエステルチタネート、イソステアリルチタネート、チタニウムジオキシド、チタニウムジオキシド/シリコンジオキシド共重合体、チタニウムジオキシド/ジルコニウムジオキシド共重合体などを例示することができる。また、有用したゲルマニウム系触媒としてはゲルマニウムジオキシドおよびそれを用いた共重合体などがある。重縮合触媒の添加量は中心金属原子を基準に最終ポリマー(ポリエステル樹脂)重量に対して1ppm~300ppmに調整され得る。
【0050】
前記安定剤としては、一般的にリン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェートなどのリン系化合物を使用し得、その添加量はリン原子を基準に最終ポリマー(ポリエステル樹脂)の重量に対して10~5000ppmである。前記安定剤の添加量が10ppm未満であれば、安定化効果が不十分であり、ポリマーの色相が黄色く変わるおそれがあり、5000ppmを超えると所望する高重合度のポリマーが得られないおそれがある。また、ポリマーの色相を向上させるために添加される呈色剤としては、酢酸コバルト、コバルトプロピオネートなどのコバルト系呈色剤を例示し得、その添加量はコバルト原子を基準に最終ポリマー(ポリエステル樹脂)の重量に対して1~300ppmである。必要に応じて、有機化合物呈色剤としてアントラキノン(Anthraquinone)系化合物、ペリノン(Perinone)系化合物、アゾ(Azo)系化合物、メチン(Methine)系化合物などを使用し得、市販される製品としてはClarient社のPolysynthren Blue RLSあるいはClarient社のSolvaperm Red BBなどのトナーを使用し得る。前記有機化合物呈色剤の添加量は最終ポリマー重量に対して0~50ppmに調整し得る。仮に、呈色剤を前記範囲を逸脱した含有量で使用するとポリエステル樹脂の黄色を十分に分けられないか物性を低下させ得る。
【0051】
前記結晶化剤としては結晶核剤、紫外線吸収剤、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂などを例示することができる。前記酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファート系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤あるいはこれらの混合物などを例示することができる。前記分岐剤としては3以上の官能基を有する通常の分岐剤として、例えば、無水トリメリット酸(trimellitic anhydride)、トリメチロールプロパン(trimethylol propane)、トリメリト酸(trimellitic acid)あるいはこれらの混合物などを例示することができる。
【0052】
前記(a)エステル化反応またはエステル交換反応は、150~300℃あるいは200~270℃の温度および0~10.0kgf/cm(0~7355.6mmHg)、0~5.0kgf/cm(0~3677.8mmHg)あるいは0.1~3.0kgf/cm(73.6~2206.7mmHg)の圧力条件で実施され得る。ここで括弧の外に記載された圧力はゲージ圧力を意味し(kgf/cm単位で記載)、括弧内に記載された圧力は絶対圧力を意味する(mmHg単位で記載)。
【0053】
前記反応温度および圧力が前記範囲を逸脱する場合、ポリエステル樹脂の物性が低下するおそれがある。前記反応時間(平均滞留時間)は通常1~24時間あるいは2~8時間であり、反応温度、圧力、使用するジカルボン酸あるいはその誘導体に対してジオールのモル比に応じて変わる。
【0054】
前記エステル化またはエステル交換反応により得た生成物は、重縮合反応によりさらに高い重合度のポリエステル樹脂に製造され得る。一般的に、前記重縮合反応は、150~300℃、200~290℃あるいは250~290℃の温度および0.01~400mmHg、0.05~100mmHgあるいは0.1~10mmHgの減圧条件で行われる。ここで圧力は絶対圧力の範囲を意味する。前記0.01~400mmHgの減圧条件は、重縮合反応の副産物であるグリコールなどと未反応物であるイソソルビドなどを除去するためである。前記0.01~400mmHgの減圧条件は重縮合反応の副産物であるグリコールなどと未反応物であるイソソルビドなどを除去するためである。したがって、前記減圧条件が前記範囲を逸脱する場合、副産物および未反応物の除去が不十分であるおそれがある。また、前記重縮合反応温度が前記範囲を逸脱する場合、ポリエステル樹脂の物性が低下するおそれがある。前記重縮合反応は、所望する固有粘度に達するまで必要な時間、例えば、平均滞留時間1~24時間行われる。
【0055】
ポリエステル樹脂内に残留するイソソルビドなどの未反応物の含有量を減少させる目的でエステル化反応あるいはエステル交換反応の末期あるいは重縮合反応の初期、すなわち樹脂の粘度が十分に高くない状態で真空反応を意図的に長く維持して末反応原料を系外に流出させ得る。樹脂の粘度が高くなると、反応器内に残留している原料が系外に抜け出にくくなる。一例として、重縮合反応前にエステル化反応あるいはエステル交換反応により得た反応生成物を約400~1mmHgあるいは約200~3mmHg減圧条件で0.2~3時間放置してポリエステル樹脂内に残留するイソソルビドなどの未反応物を効果的に除去することができる。この時、前記生成水の温度はエステル化反応あるいはエステル交換反応温度と重縮合反応温度と同じであるかあるいはその間の温度に調整され得る。
【0056】
上記の真空反応の制御により未反応原料を系外に流出させる工程内容を追加することで、ポリエステル樹脂内に残留するイソソルビドなどの未反応物の含有量を減少させることができ、その結果、一実施形態の物性を満たすポリエステル繊維およびこれに含まれるポリエステル樹脂をさらに効果的に得ることができる。
【0057】
一方、すでに前述したように、重縮合反応後ポリマーの固有粘度は、0.45~0.75dl/gであることが適当である。
【0058】
特に、前述した(b0-1)結晶化段階および(b0-2)固相重合段階を採用すると、重縮合反応後ポリマーの固有粘度を0.45~0.75dl/g、0.45~0.70dl/gあるいは0.50~0.70dl/gに調整することができる。仮に、重縮合反応後固有粘度が0.45dl/g未満の場合、固相重合反応での反応速度が顕著に低くなり、分子量分布が非常に広いポリエステル樹脂が得られ、固有粘度が0.75dl/gを超える場合、溶融重合中の溶融物の粘度上昇に伴い攪拌機と反応器との間での剪断応力(Shear Stress)によってポリマーの変色可能性が増加し、アセトアルデヒドのような副反応物質も増加する。一方、高い固有粘度を有するように重縮合反応を行い、固相重合段階に導入すると均一な分子量分布のポリエステル樹脂を得ることができるので、耐化学性および透明性をより向上させることができる。
【0059】
一方、前述した(b0-1)結晶化段階および(b0-2)固相重合段階を採用しないと、重縮合反応後ポリマーの固有粘度を0.65~0.75dl/gに調整することもできる。仮に、固有粘度が0.65dl/g未満であれば、低分子量の高分子によって結晶化速度が上昇して優れた耐熱性と透明性を有するポリエステル樹脂を提供することが難しく、固有粘度が0.75dl/gを超えると溶融重合中の溶融物の粘度上昇に伴い攪拌機と反応器との間での剪断応力(Shear Stress)によってポリマーの変色可能性が増加し、アセトアルデヒドのような副反応物質も増加する。
【0060】
前記(a)および(b)段階により一実施形態によるポリエステル繊維を形成できるポリエステル樹脂を製造することができる。そして、必要に応じて(b)重縮合反応後に(b0-1)結晶化段階および(b0-2)固相重合段階をさらに行い、より高い重合度を有するポリエステル樹脂を提供することができる。
【0061】
具体的には、前記(b0-1)結晶化段階では(b)重縮合反応により得たポリマーを反応器の外に吐出して粒子化する。粒子化する方法は、ストランド状に押出後冷却液で固化後カッターで切断するストランドカッティング法や、ダイ穴を冷却液に浸漬させ、冷却液の中に直接押し出してカッターで切断するアンダーウォーターカッティング法を用いることができる。一般的にストランドカッティング法では冷却液の温度を低く維持してストランドがうまく固化される場合にのみカッティングに問題がない。アンダーウォーターカッティング法では冷却液の温度をポリマーに合わせて維持し、ポリマーの形状を均一にした方が良い。しかし、結晶性ポリマーの場合、吐出中の結晶化を誘導するためにわざと冷却液の温度を高く維持することもできる。
【0062】
一方、粒子化されたポリマーを追加的に水洗浄することも可能である。水洗浄時水の温度はポリマーのガラス転移温度と同じであるかあるいは約5~20℃程度低いことが好ましく、それ以上の温度では融着が発生し得るため好ましくない。吐出時結晶化を誘導したポリマーの粒子であればガラス転移温度より高い温度でも融着が発生しないので、結晶化程度に応じて水の温度を設定することができる。粒子化されたポリマーの水洗浄により末反応原料のうち水に溶解する原料の除去が可能である。粒子が小さいほど粒子の重量に対する表面積が広くなるので、粒子の大きさは小さいほど有利である。このような目的を達成するために粒子は約14mg以下の平均重量を有するように製造されることができる。
【0063】
粒子化されたポリマーは固相重合反応中の融着を防止するために結晶化段階を経る。大気、不活性ガス、水蒸気、水蒸気含有不活性ガスの雰囲気または溶液の中での進行が可能であり、110℃~180℃あるいは120℃~180℃で結晶化処理をする。温度が低いと粒子の結晶が生成される速度が過度に遅くなって、温度が高いと結晶が作られる速度より粒子の表面が溶融する速度が速く粒子同士がくっ付いて融着を発生させる。粒子が結晶化されることによって粒子の耐熱性が上昇するので、結晶化をいくつかの段階に分けて段階別に温度を上昇させて結晶化することも可能である。
【0064】
固相重合反応は窒素、二酸化炭素、アルゴンなど不活性ガス雰囲気下または400~0.01mmHgの減圧条件および180~220℃の温度で平均滞留時間1時間以上、好ましくは10時間以上の間行われ得る。このような固相重合反応により分子量が追加的に上昇し、溶融反応で反応されず残存している原料物質と反応中に生成された環状オリゴマー、アセトアルデヒドなどが除去され得る。
【0065】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂を提供するためには固有粘度が(b)重縮合反応段階で得た樹脂の固有粘度より0.05~0.40dl/g高い値に達するまで固相重合を行い得る。仮に、固相重合反応後樹脂の固有粘度と固相重合反応前樹脂の固有粘度との間の差が0.05dl/g未満であれば十分な重合度向上効果を得ることができず、固相重合反応後樹脂の固有粘度と固相重合反応前樹脂の固有粘度との間の差が0.40dl/gを超えると分子量分布が広くなり、十分な耐熱性を示すことができずオリゴマー含有量が相対的に増加してヘイズが高く発生する可能性が高くなる。
【0066】
前記固相重合反応は、樹脂の固有粘度が固相重合反応前樹脂の固有粘度より0.05~0.40dl/g高く、0.70dl/g以上、0.70~1.0dl/g、あるいは0.70~0.98dl/gの値に達するまで行い得る。このような範囲の固有粘度に達するまで固相重合すると高分子の分子量分布が狭くなって成形時結晶化速度を低くし得る。これにより、透明度を低下させず、かつ耐熱性および結晶化度を向上させることができる。仮に、固相重合反応後樹脂の固有粘度が前記範囲未満であれば低分子量のオリゴマーによる結晶化速度の増加によって優れた透明性を有するポリエステル繊維を提供することが難しい。
【0067】
上述した方法により製造されたポリエステル樹脂はジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分(acid moiety)およびジオールから誘導されたジオール部分(diol moiety)が繰り返される構造を有する。本明細書において、酸部分(acid moiety)およびジオール部分(diol moiety)は、ジカルボン酸あるいはその誘導体およびジオールが重合され、これらから水素、ヒドロキシ基またはアルコキシ基が除去されて残った残基(residue)をいう。
【0068】
特に、前記ポリエステル樹脂は上述した方法により製造され、ジオールから誘導された全体ジオール部分に対してイソソルビドから誘導されたジオール部分が1~20モル%であり、ジエチレングリコールから誘導されたジオール部分が2~5モル%であり、前記ポリエステル樹脂のオリゴマー含有量が1.3重量%以下であり、前記ポリエステル樹脂から得た厚さ6mmの試験片に対してASTM D1003-97により測定されたヘイズが3%未満である特性を有する。これにより、前記ポリエステル樹脂から形成されたポリエステル繊維は前述したように優れた耐塩水性、耐化学性、耐光性および染色性を示し、向上した機械的強度と透明性を示すことができる。
【0069】
前記ポリエステル樹脂は、多くはジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分とジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有するか、副反応によりジオールが他のジオールと反応してジオールから誘導されたジオール部分同士が連結された構造が含まれている。しかし、上述した方法によれば、このような副反応を顕著に減少させることができる。一例として、前記ポリエステル樹脂内の全体ジオール由来の残基に対してジエチレングリコール由来の残基は上述した含有量で含まれ得る。前記ポリエステル樹脂はこのような範囲のジエチレングリコール由来の残基を含むことによって十分なガラス転移温度を示し得る。
【0070】
前記ポリエステル繊維を形成するポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が約12,000~50,000g/molあるいは15,000~40,000g/mol程度であり得る。前記ポリエステル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が45,000~250,000g/molあるいは50,000~225,000g/mol程度であり得る。また、前記ポリエステル樹脂の分子量分布(PDI)は2.5~4.5あるいは2.8~4.0であり得る。
【0071】
仮に、重量平均分子量が前記範囲未満であれば機械的物性、例えば、引張強度、結節強度などが低下し得、前記範囲を超えると融点が高まることによって加工性が低下し得、放射時圧力が上昇して放射工程が円滑でない。
【0072】
前記ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が82℃~105℃程度であり得る。このような範囲内で黄変現象なしにポリエステル樹脂の諸般物性を良好に現わすことができる。
【0073】
前記ポリエステル樹脂は、示差走査熱量計(DSC)の測定条件によって結晶化温度(Tc)と融点(Tm)が存在するか存在しない。ガラス転移温度(Tg)が82℃~90℃範囲のポリエステル樹脂は、結晶化温度(Tc)が120℃~200℃あるいは130℃~190℃程度であり得る。ガラス転移温度(Tg)が90℃~105℃あるいは92℃~105℃範囲のポリエステル樹脂は、結晶化温度(Tc)が測定されないか130℃~190℃あるいは140℃~180℃程度であり得る。このような範囲内で前記ポリエステル樹脂は適切な結晶化速度を有して固相重合反応が可能であり、成形後高透明度を示すことができる。
【0074】
本発明の一実施形態によるポリエステル繊維は、上述したポリエステル樹脂から形成されて23℃で測定された密度が1.3~1.4g/mであり得る。これにより、前記ポリエステル繊維は海水より高い約1.3以上の比重を示し得るため、これより製造される釣り糸あるいは漁網が自然に水の中に沈んで当業界の要求を満たすことができる。
【0075】
前記ポリエステル繊維は、3.0g/d以上、3.0~5.0g/d、あるいは3.2~4.5g/dの引張強度を示すことができる。また、前記ポリエステル繊維は14%以上、14%~50%あるいは15%~50%の伸び率を示すことができる。これにより、前記ポリエステル繊維から製造される成形体は十分な靱性(toughness)と適切なモジュラスを発現することができる。
【0076】
前記ポリエステル繊維は、オーバーハンドノット(Over Hand Knot)方法で測定した結節強度が2.0g/d以上、2.0~4.0g/d、あるいは2.1~4.0g/dであり得る。そして、前記ポリエステル繊維は引張強度に対する結節強度の百分率で計算される結節強度維持率が40%以上、40%~80%、50%~80%、60%~80%、65%~80%、65%~75%あるいは68%~75%であり得る。
【0077】
前述したように本発明の一実施形態によるポリエステル繊維は、優れた耐塩水性、耐化学性、耐光性および染色性を示し、向上した機械的強度と透明度によって多様な分野に活用することができ、特に高い比重および高い耐塩水性が求められる釣り糸および漁網糸、並びに高い耐化学性(耐アルカリ性)が求められる紙機械のためのペルト(pelt)用途に有用であると期待される。さらに、前記ポリエステル繊維は上述した優れた特性によりロープ、ラケット用ガット(gut)、カーペット、じゅうたん、マットおよび衣類などの用途にも有用であると期待される。さらに進んで、前記ポリエステル繊維は4mm以下の直径を有するポリエステルフィラメント繊維の形態を有することにより、3Dプリンタ用の用途にも有用であると期待される。
【0078】
一方、本発明の他の一実施形態によれば、前記ポリエステル繊維から製造される成形体が提供される。前記成形体は釣り糸、漁網糸、ペルト(pelt)、ロープ、ラケット用ガット(gut)、カーペット、じゅうたん、マット、衣類、または、3Dプリンタ用樹脂成形品などであり得る。
【0079】
以下、発明の具体的な実施例により発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例示として提示されるものであり、発明の権利範囲はこれによっていかなる意味でも限定されない。
【0080】
下記の物性は、次のような方法により測定された。
【0081】
(1)固有粘度(IV):試料をo-chlorophenolに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させた後Ubbelohde粘度管を用いて試料の固有粘度を測定した。具体的には、粘度管の温度を35℃に維持し、粘度管の特定の内部区間の間を溶媒(solvent)が通過するのにかかる時間(efflux time)tと溶液(solution)が通過するのにかかる時間tを求めた。以後、t値とt値を式1に代入して比粘度(specific viscosity)を算出し、算出された比粘度値を式2に代入して固有粘度を算出した。
【0082】
【数1】
【0083】
前記式2において、AはHuggins定数として0.247、cは濃度値として1.2g/dlの値がそれぞれ用いられた。
【0084】
(2)ガラス転移温度(glass transition temperature;Tg):実施例および比較例で製造したポリエステル樹脂のTgをDSC(differential scanning calorimetry)により測定した。測定装置としてはMettler Toledo社のDSC 1モデルを用いた。具体的には、分析に用いるポリエステル樹脂試料を除湿乾燥機(MORETTO社のモデル名D2T)を用いて120℃の窒素雰囲気下で5~10時間乾燥した。したがって、Tgは試料内に残留する水分含有量が500ppm未満の状態で測定された。乾燥された試料約6~10mgを取ってアルミニウムパンに満たし、常温で280℃まで10℃/minの速度で加熱して(1次スキャン)、280℃で3分間アニーリング(annealing)した。以後、試料を常温まで急速冷却させた後、再び常温で280℃まで10℃/minの速度で加熱して(2次スキャン)DSC曲線を得た。そして、Mettler Toledo社で提供する関連プログラム(STAReソフトウェア)のDSCメニューにあるglass transition機能によりDSC 2次スキャンでTg値を分析した。この時、Tgは2次スキャン時に得たDSC曲線が昇温過程のうち初めて階段状に変化する所で曲線の最大傾斜が現れる温度に規定され、スキャンの温度範囲はプログラムが計算するmidpointの-20℃~15℃から15℃~20℃に設定された。
【0085】
(3)繊維の太さ
実施例および比較例で製造したポリエステル繊維とナイロン6繊維の長径および短径を光学顕微鏡(Optical Microscope)を用いて測定した後平均値で表示した。
【0086】
(4)オリゴマー含有量
実施例および比較例で製造したポリエステル繊維とナイロン6繊維の試料0.3gを150℃のo-chlorophenol 15mLに15分間溶解させた後、常温でクロロホルム9mLを追加した。GPCはTosoh製品であり、RI detectorを用いて試料の分子量を測定した。全体面積から1000以下の分子量面積を求めてオリゴマー含有量を測定した。
【0087】
(5)密度(23℃で測定)
実施例および比較例で製造したポリエステル繊維とナイロン6繊維の23℃での密度は密度勾配管を用いて測定した。一定範囲の密度を測定できるように密度が互いに異なる二つの溶液を順次混合して目盛りがあるガラス管の中に入れて製造した後確認された密度を有するガラス玉を浮遊させて検量曲線を作成した。密度勾配管に測定試験片を沈めて浮遊高さを測定して検量線を基に密度を比例的に計算した。
【0088】
(6)伸び率
実施例および比較例で製造したポリエステル繊維とナイロン6繊維に対してZwick/Roell社のZ011モデルUTM万能試験機を用いて200mm/minの速度条件で測定して試験片が切断された時の伸び率を測定した。
【0089】
(7)引張強度
実施例および比較例で製造したポリエステル繊維とナイロン6繊維に対してZwick/Roell社のZ011モデルUTM万能試験機を用いて200mm/minの速度条件で切断強力(kgf)を繊度に分けて引張強度と規定した。
【0090】
(8)結節強度
実施例および比較例で製造したポリエステル繊維とナイロン6繊維に対して繊維の中央の部分に結び目を作った後引張強度と同様の方法により切断時の強度を測定した。
【0091】
(9)結節強度維持率
引張強度に対する結節強度の百分率で結節強度維持率を評価した。
結節強度維持率(%)=結節強度/引張強度*100
【0092】
(10)耐塩水性
実施例および比較例で製造したポリエステル繊維とナイロン6繊維をそれぞれ10%のNaCl溶液に入れて常温で120時間浸漬させた後UTM Instronを用いて強力を測定した。浸漬前強力(初期強力)に対する浸漬後強力の比率(浸漬後強力/初期強力*100)で耐塩水性を評価した。
【0093】
(11)耐化学性
実施例および比較例で製造したポリエステル繊維とナイロン6繊維をそれぞれ20%のNaOH溶液あるいは20%のKOH溶液に入れて常温で120時間浸漬させた後UTM Instronを用いて強力を測定した。浸漬前強力(初期強力)に対する浸漬後強力の比率(浸漬後強力/初期強力*100)でNaOHに対する耐化学性およびKOHに対する耐化学性を評価した。
【0094】
(12)耐光性
実施例および比較例で製造したポリエステル繊維とナイロン6繊維を50℃で50時間紫外線(340nm、0.55W/m)に露出させた後UTM Instronを用いて強力を測定した。露出前強力(初期強力)に対する露出後強力の比率(露出後強力/初期強力*100)で耐光性を評価した。
【0095】
(13)ヘイズ(Haze)
実施例および比較例で製造したポリエステル樹脂およびナイロン6樹脂を用いて実施例および比較例の繊維の太さと同じ厚さの試験片を準備し、ASTM D1003-97測定法でMinolta社のCM-3600A測定機を用いて前記試験片のHazeを測定した。
【0096】
(14)吸収率
実施例および比較例で製造したポリエステル繊維とナイロン6繊維のそれぞれから10gの繊維を採取して24時間蒸溜水に浸漬させて常温に放置した後105~110℃のオーブンで重量変化がない時まで乾燥させた。24時間常温に放置した繊維(乾燥前繊維)の重量と乾燥された繊維の重量を測定して以下の式により吸収率を計算した。
吸収率(%)=(乾燥前繊維の重量-乾燥された繊維の重量)/乾燥された繊維の重量*100
【0097】
実施例1:ポリエステル樹脂およびポリエステル繊維の製造
カラムと、水によって冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器に3284gのテレフタル酸(19.7mol)、1067gのエチレングリコール(17.2mol)、347gのイソソルビド(2.3mol)、42gのジエチレングリコール(0.4mol)を投入し、触媒として1.0gのGeO、安定剤としてリン酸(phosphoric acid)1.46g、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate)0.7gを使用した。次いで、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cmだけ高い加圧状態にした(絶対圧力:1495.6mmHg)。
【0098】
そして、反応器の温度を220℃まで90分にわたって上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にわたって上げた。その次、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持してエステル化反応を行った。この過程でカラムとコンデンサを経て650gの副産物が流出された。
【0099】
エステル化反応が完了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0100】
そして、反応器の圧力を常圧状態で5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にわたって低くし、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にわたって上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持しながら重縮合反応を実施した。前記重縮合反応は反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.61dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望する水準に達すると、混合物を反応器の外部に吐出してストランド(Strand)化し、これを冷却液で固化後平均重量が12~14mg程度になるように粒子化した。
【0101】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。以後、前記反応器に窒素を50L/min速度で流した。この時、反応器の温度を常温で140℃まで40℃/時間の速度で上げて、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃で維持した。前記固相重合反応は反応器内の粒子の固有粘度(IV)が0.98dl/gになるまで行った。
【0102】
このように製造されたポリエステル樹脂を約250℃~300℃で溶融させた後放射して冷却させた。そして、これを4倍の延伸比で延伸してΦ3.5mm太さのポリエステル繊維を製造した。
【0103】
実施例2:ポリエステル樹脂およびポリエステル繊維の製造
カラムと、水によって冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器に3284gのテレフタル酸(19.8mol)、1065gのエチレングリコール(18.7mol)、231gのイソソルビド(1.6mol)42gのジエチレングリコール(0.4mol)を投入し、触媒として1.0gのGeO、安定剤としてリン酸(phosphoric acid)1.46g、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate)0.7gを使用した。次いで、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cmだけ高い加圧状態にした(絶対圧力:1495.6mmHg)。
【0104】
そして、反応器の温度を220℃まで90分にわたって上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にわたって上げた。その次、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持してエステル化反応を行った。この過程でカラムとコンデンサを経て700gの副産物が流出された。
【0105】
エステル化反応が完了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0106】
そして、反応器の圧力を常圧状態で5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にわたって低くし、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にわたって上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持しながら重縮合反応を実施した。前記重縮合反応は反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.6dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望する水準に達すると、混合物を反応器の外部に吐出してストランド(Strand)化し、これを冷却液で固化後平均重量が12~14mg程度になるように粒子化した。
【0107】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。以後、前記反応器に窒素を50L/min速度で流した。この時、反応器の温度を常温で140℃まで40℃/時間の速度で上げて、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃で維持した。前記固相重合反応は反応器内の粒子の固有粘度(IV)が0.75dl/gになるまで行った。
【0108】
このように製造されたポリエステル樹脂を約250℃~300℃で溶融させた後放射して冷却させた。そして、これを4倍の延伸比で延伸してΦ0.5mm太さのポリエステル繊維を製造した。
【0109】
実施例3:ポリエステル樹脂およびポリエステル繊維の製造
カラムと、水によって冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器に3284gのテレフタル酸(19.7mol)、1067gのエチレングリコール(17.2mol)、347gのイソソルビド(2.3mol)、63gのジエチレングリコール(0.6mol)を投入し、触媒として1.0gのGeO、安定剤としてリン酸(phosphoric acid)1.46g、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate)0.7gを使用した。次いで、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cmだけ高い加圧状態にした(絶対圧力:1495.6mmHg)。
【0110】
そして、反応器の温度を220℃まで90分にわたって上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にわたって上げた。その次、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持してエステル化反応を行った。この過程でカラムとコンデンサを経て700gの副産物が流出されたことを確認した後に反応器に221gのエチレングリコール(3.5mol)をさらに添加した。
【0111】
エステル化反応が完了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0112】
そして、反応器の圧力を常圧状態で5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にわたって低くし、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にわたって上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持しながら重縮合反応を実施した。前記重縮合反応は反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.55dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望する水準に達すると、混合物を反応器の外部に吐出してストランド(Strand)化し、これを冷却液で固化後平均重量が12~14mg程度になるように粒子化した。
【0113】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。以後、前記反応器に窒素を50L/min速度で流した。この時、反応器の温度を常温で140℃まで40℃/時間の速度で上げて、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃で維持した。前記固相重合反応は反応器内の粒子の固有粘度(IV)が0.98dl/gになるまで行った。
【0114】
このように製造されたポリエステル樹脂を約250℃~300℃で溶融させた後放射して冷却させた。そして、これを4倍の延伸比で延伸してΦ0.5mm太さのポリエステル繊維を製造した。
【0115】
比較例1:ポリアミド樹脂およびポリアミド繊維の製造
ポリアミド樹脂でUBE社のNylon 5034MTX1樹脂を使用し、実施例1と同様の方法でΦ3.5mm太さのポリアミド繊維を製造した。
【0116】
比較例2:ポリエステル樹脂およびポリエステル繊維の製造
カラムと、水によって冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器に2873gのテレフタル酸(17.3mol)、1679gのエチレングリコール(27.0mol)、329gのイソソルビド(2.3mol)37gのジエチレングリコール(0.3mol)を投入し、触媒として1.0gのGeO、安定剤としてリン酸(phosphoric acid)1.46g、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate)0.7gを使用した。次いで、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cmだけ高い加圧状態にした(絶対圧力:1495.6mmHg)。
【0117】
そして、反応器の温度を220℃まで90分にわたって上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にわたって上げた。その次、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持してエステル化反応を行った。この過程でカラムとコンデンサを経て750gの副産物が流出された。
【0118】
エステル化反応が完了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0119】
そして、反応器の圧力を常圧状態で5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にわたって低くし、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にわたって上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持しながら重縮合反応を実施した。前記重縮合反応は反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.4dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望する水準に達すると、混合物を反応器の外部に吐出してストランド(Strand)化し、これを冷却液で固化後平均重量が12~14mg程度になるように粒子化した。
【0120】
このように製造されたポリエステル樹脂を約250℃~300℃で溶融させた後放射して冷却させた。そして、これを4倍の延伸比で延伸してΦ1.0mm太さのポリエステル繊維を製造した。
【0121】
実施例4~6、比較例3および4:ポリエステル樹脂およびポリエステル繊維の製造
先に、実施例4~6および比較例3は、ジカルボン酸あるいはその誘導体とジオールの初期投入モル比を実施例1と同様に制御し、比較例4はジカルボン酸あるいはその誘導体とジオールの初期投入モル比を比較例2と同一に制御した。
【0122】
さらに、エチレングリコール、イソソルビドおよびジエチレングリコールの総投入量を制御し、ポリエステル樹脂に導入されたイソソルビドおよびジエチレングリコールから誘導されたジオール部分の含有量は下記表1のように調整し、その他重縮合反応/固相重合反応の目標固有粘度値および繊維の太さを表1のように調整したことを除いた残りの条件は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂およびポリエステル繊維を製造した。
【0123】
試験例:ポリエステル繊維の評価
実施例1~6および比較例1~4で製造したポリエステル樹脂の製造条件および物性を上述した方法により評価し、その結果を表1に記載した。
【0124】
【表1】
【0125】
ISB含有量:ポリエステル樹脂に含まれた全体ジオール由来の残基に対するイソソルビド由来の残基のモル比
DEG含有量:ポリエステル樹脂に含まれた全体ジオール由来の残基に対するジエチレングリコール由来の残基のモル比
Tg:ポリエステル樹脂のTg
前記実施例1および5と比較例1および3を参照すると、繊維の太さは同一であるが、互いに異なる物性を示すことが確認される。具体的には、ポリアミド樹脂から製造された比較例1のナイロン6繊維は、初期引張強度は高い方であるが結節強度および結節強度維持率が低く、吸収率が高く、塩水に露出した時の強度維持率が急激に低下(耐塩水性劣化)することが確認される。そして、ポリエチレンテレフタレートで製造された比較例3のポリエステル繊維は、高分子鎖の規則性が高いため成形後にヘイズが発生してアルカリ溶液に脆弱である(耐化学性劣化)ことが確認される。これに対し、実施例1および5のポリエステル樹脂は、低いオリゴマー含有量でヘイズと結節強度維持率、耐塩水性、耐化学性、耐光性がいずれも優れることが確認される。
【0126】
前記実施例2と比較例4を参照すると、ポリエステル樹脂の最終固有粘度と繊維の太さは同一であるが、比較例4のようにポリエステル樹脂に導入されたイソソルビドの含有量が20モル%を超えると延伸による配向が起きない。これにより、比較例4のポリエステル樹脂としては延伸比3倍以上の繊維を成形することができず、前記試験例に記載された物性を評価することができなかった。
【0127】
前記実施例4および比較例2を参照すると、ポリエステル樹脂に同じ含有量でイソソルビドが導入されても、製造過程でジオールの初期投入モル比が適切な範囲を逸脱し、ジエチレングリコールの含有量が適切な含有量を逸脱することにより、ポリエステル樹脂の最終固有粘度が相異になり、その結果、比較例2で機械的物性が十分でないことが確認される。
【0128】
したがって、耐塩水性、耐化学性、耐光性などがいずれも優れて良好な結節強度を示し、高透明度を維持するポリエステル繊維を提供するには、ジオールの初期投入/混合比率が適切な範囲で制御されるなどの特定の工程条件下で製造され、ポリエステル樹脂に導入されるイソソルビドから誘導されたジオール部分とジエチレングリコールから誘導されたジオール部分の含有量が特定範囲を満たし、前記ポリエステル樹脂のオリゴマー含有量が1.3重量%以下であり、前記ポリエステル樹脂から得た厚さ6mmの試験片に対してASTM D1003-97により測定されたヘイズが3%未満でなければならないことが確認される。
【0129】
本発明の一実施形態によるポリエステル繊維は、前述したように優れた特性を示し、釣り糸、漁網糸、紙機械のためのペルト(pelt)、ロープ、ラケット用ガット(gut)、カーペット、じゅうたん、マット、衣類、3dプリンタなどの用途に用いられるのに効果的であることを確認することができた。