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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】床版撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20230927BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20230927BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D19/12
E01D22/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020024582
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021127665
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 試験日 :令和1年9月19日及び20日 試験場所 :大興物産株式会社・横浜機材センター内
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 克哉
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】山中 宏之
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄紀
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-238905(JP,A)
【文献】特開2019-073948(JP,A)
【文献】特開平06-136722(JP,A)
【文献】特開2001-081731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 24/00
E01D 19/12
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の桁上に設置された床版を複数のブロックに分割し、床版撤去装置と撤去用昇降機を用いて前記複数のブロックを撤去する床版撤去方法であって、
前記床版撤去装置は、
撤去対象ブロックに連結可能に形成され、前記撤去対象ブロックを前記桁から剥離する駆動部と、
前記駆動部を支持する梁材と、を備え、
前記撤去用昇降機は、
前記床版上を移動可能な移動体と、
前記移動体に立設された支柱と、
前記支柱に支持され前記撤去用昇降機の前後方向に延びる主桁と、
前記主桁に取り付けられた昇降部と、を備え、
床版撤去方法は、
前記撤去対象ブロックを前記橋梁の長手方向に跨ぐように、前記撤去対象ブロックに隣接する別のブロックと、ブロックが既に撤去された前記桁と、の間に前記床版撤去装置の前記梁材を架け渡し、
前記駆動部を前記撤去対象ブロックに連結し、
前記駆動部を駆動して前記撤去対象ブロックを前記桁から剥離し、
前記撤去用昇降機の前記昇降部を駆動して前記床版撤去装置を前記撤去対象ブロックと共に吊り上げて、その後、搬送車両の荷台の上方で、前記昇降部を駆動して前記床版撤去装置と前記撤去対象ブロックを降下させて前記搬送車両に搭載する、
床版撤去方法
【請求項2】
前記床版撤去装置は、
前記駆動部から延び、前記駆動部の駆動により上昇する吊り具と、
前記吊り具に取り外し可能に設けられ、前記吊り具を前記撤去対象ブロックに留めて前記駆動部と前記撤去対象ブロックとを連結する留め具と、を更に備え、
床版撤去方法は、前記搬送車両の荷台に前記床版撤去装置と前記撤去対象ブロックとを搭載した状態で前記吊り具から前記留め具を取り外し、前記駆動部と前記撤去対象ブロックとの連結を解除する、
請求項1に記載の床版撤去方法。
【請求項3】
橋梁の桁上に設置された床版を複数のブロックに分割し、床版撤去装置と撤去用昇降機を用いて前記複数のブロックを撤去する床版撤去方法であって、
前記床版撤去装置は、
撤去対象ブロックに連結可能に形成された梁材と、
前記梁材を上昇させて前記撤去対象ブロックを前記桁から剥離する第1駆動部及び第2駆動部と、を備え、
前記撤去用昇降機は、
前記床版上を移動可能な移動体と、
前記移動体に立設された支柱と、
前記支柱に支持され前記撤去用昇降機の前後方向に延びる主桁と、
前記主桁に取り付けられた昇降部と、を備え、
床版撤去方法は、
前記撤去対象ブロックに隣接する別のブロックに前記床版撤去装置の前記第1駆動部を載置すると共に、ブロックが既に撤去された前記桁に前記床版撤去装置の前記第2駆動部を載置し、
前記梁材を前記撤去対象ブロックに連結し、
前記第1駆動部及び前記第2駆動部を駆動して前記梁材を上昇させて前記撤去対象ブロックを前記桁から剥離し、
前記撤去用昇降機の前記昇降部を駆動して前記床版撤去装置を前記撤去対象ブロックと共に吊り上げて、その後、搬送車両の荷台の上方で、前記昇降部を駆動して前記床版撤去装置と前記撤去対象ブロックを降下させて前記搬送車両に搭載する、
床版撤去方法
【請求項4】
前記床版撤去装置は、
前記梁材に取付けられ、前記第1駆動部および前記第2駆動部の駆動により上昇する吊り具と、
前記吊り具に取り外し可能に設けられ、前記吊り具を前記撤去対象ブロックに留めて前記梁材と前記撤去対象ブロックとを連結する留め具と、を更に備え、
床版撤去方法は、前記搬送車両の荷台に前記床版撤去装置と前記撤去対象ブロックとを搭載した状態で前記吊り具から前記留め具を取り外し、前記梁材と前記撤去対象ブロックとの連結を解除する、
請求項3に記載の床版撤去方法。
【請求項5】
前記床版撤去装置を前記撤去対象ブロックと共に吊り上げた後、前記床版撤去装置と前記撤去対象ブロックを90°旋回させて前記搬送車両に搭載する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の床版撤去方法。
【請求項6】
1台の前記撤去用昇降機に対して、複数の前記床版撤去装置を用い、
第1の前記床版撤去装置を第1の前記撤去対象ブロックと共に前記搬送車両に搭載した状態で、第2の前記床版撤去装置を用いて第2の前記撤去対象ブロックを前記桁から剥離する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の床版撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版を撤去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁は、橋台の間に桁を架け渡し桁上に床版を設置することによって構築される。床版が老朽化した場合には、既設の床版を桁から撤去し新たな床版を桁上に設置する作業が行われる。特許文献1には、ジャッキを用いて床版を撤去する方法が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された床版の撤去方法では、まず、床版を撤去区域ごとに切断する。次に、撤去区域における床版に、桁に達する穴を形成する。次に、床版に形成された穴に鋼製の反力受けを挿入して桁上に載置する。次に、反力受け上にジャッキを設置し、ジャッキ上に梁を水平に設置する。次に、撤去区域における床版に貫通孔を形成し、その貫通孔に吊り材を挿入する。吊り材の下端と床版とをナットを用いて固定し、吊り材の上端と梁とをナットを用いて固定する。こうして、床版と梁とを吊り材によって連結する。次に、ジャッキを伸長して梁を上昇させる。これにより、床版が桁から剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-77279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された床版撤去方法では、床版と梁とを連結するための貫通孔に加え、橋梁の桁から反力を得るための穴を床版のブロックごとに形成する必要がある。そのため、床版を桁から効率よく撤去することができない。
【0006】
本発明は、床版を桁から効率よく撤去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明は、橋梁の桁上に設置された床版を複数のブロックに分割し、床版撤去装置と撤去用昇降機を用いて複数のブロックを撤去する床版撤去方法であって、床版撤去装置は、撤去対象ブロックに連結可能に形成され、撤去対象ブロックを桁から剥離する駆動部と、駆動部を支持する梁材と、を備え、撤去用昇降機は、床版上を移動可能な移動体と、移動体に立設された支柱と、支柱に支持され撤去用昇降機の前後方向に延びる主桁と、主桁に取り付けられた昇降部と、を備え、床版撤去方法は、撤去対象ブロックを橋梁の長手方向に跨ぐように、撤去対象ブロックに隣接する別のブロックと、ブロックが既に撤去された桁と、の間に床版撤去装置の梁材を架け渡し、駆動部を撤去対象ブロックに連結し、駆動部を駆動して撤去対象ブロックを桁から剥離し、撤去用昇降機の昇降部を駆動して床版撤去装置を撤去対象ブロックと共に吊り上げて、その後、搬送車両の荷台の上方で、昇降部を駆動して床版撤去装置と撤去対象ブロックを降下させて搬送車両に搭載する
【0010】
また、本発明は、橋梁の桁上に設置された床版を複数のブロックに分割し、床版撤去装置と撤去用昇降機を用いて複数のブロックを撤去する床版撤去方法であって、床版撤去装置は、撤去対象ブロックに連結可能に形成された梁材と、梁材を上昇させて撤去対象ブロックを桁から剥離する第1駆動部及び第2駆動部と、を備え、撤去用昇降機は、床版上を移動可能な移動体と、移動体に立設された支柱と、支柱に支持され撤去用昇降機の前後方向に延びる主桁と、主桁に取り付けられた昇降部と、を備え、床版撤去方法は、撤去対象ブロックに隣接する別のブロックに床版撤去装置の第1駆動部を載置すると共に、ブロックが既に撤去された桁に床版撤去装置の第2駆動部を載置し、梁材を撤去対象ブロックに連結し、第1駆動部及び第2駆動部を駆動して梁材を上昇させて撤去対象ブロックを桁から剥離し、撤去用昇降機の昇降部を駆動して床版撤去装置を撤去対象ブロックと共に吊り上げて、その後、搬送車両の荷台の上方で、昇降部を駆動して床版撤去装置と撤去対象ブロックを降下させて搬送車両に搭載する
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、床版を桁から効率よく撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】床版更新作業を説明するための概略図である。
図2】(a)は、本発明の第1実施形態に係る床版撤去装置の平面図であり、(b)は、図2(a)におけるIIB-IIB線に沿う断面図である。
図3】(a)は、図2(a)及び(b)に示す床版撤去装置を用いて桁から剥離した撤去対象ブロックを搬送車両に搭載した状態を橋梁の幅方向に見た図であり、(b)は、図3(a)に示す状態を橋梁の長手方向に見た図である。
図4】(a)は、本発明の第2実施形態に係る床版撤去装置の平面図であり、(b)は、図4(a)におけるIIIB-IIIB線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る床版撤去装置及び床版撤去方法について、図面を参照して説明する。
【0014】
<第1実施形態>
まず、図1から図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る床版撤去装置100及び床版撤去方法について説明する。床版撤去装置100及び床版撤去方法は、橋梁1における既設の床版2を新たな床版3に更新する作業において用いられる。
【0015】
図1は、床版更新作業を説明するための概略図である。図1に示すように、橋梁1は、橋台(図示省略)の間に複数の桁4を架け渡し桁4上に床版2を設置することによって構築される。複数の桁4は、橋梁1の幅方向に間隔を空けて配置され、隣り合う桁4の間に横梁5が設けられる。床版2は、隣り合う桁4の間を塞ぐように桁4上に設置される。橋梁1の路面は、床版2上に防水層を介して設けられるアスファルトコンクリート層によって構成される。床版2の幅方向両端部には、橋梁1を通過する車両が橋梁1から落ちるのを防止するための高欄6が設けられている。
【0016】
橋梁1を通過する車両等の荷重は、床版2を通じて桁4に伝達される。床版2が老朽化したり損傷したりした場合には、床版2の更新が必要となる。
【0017】
床版更新作業では、既設の床版2を桁4から撤去すると共に、新たな床版3を桁4に設置する。既設の床版2を更新する範囲は、橋梁1の全部であってもよいし一部であってもよい。
【0018】
床版撤去作業では、まず、不図示の切断機を用いて、既設の床版2を複数のブロック2aに分割する。次に、撤去用昇降機7を用いてブロック2aを吊り上げて桁4から撤去する。吊り上げられたブロック2aは、搬送車両9(図3(a)及び(b)参照)に搭載され、橋梁1から搬出される。撤去用昇降機7は、ウレタンゴム製のタイヤを備えており、複数のブロック2aに分割された既設の床版2上を移動可能である。撤去用昇降機7を既設の床版2上で橋梁1の長手方向における一端から他端に向かって移動させながら順にブロック2aを桁4から撤去することにより、既設の床版2の撤去が完了する。
【0019】
床版設置作業では、搬送車両(図示省略)を用いてプレキャストブロック3aを橋梁1の一端から搬入し、プレキャストブロック3aを設置用昇降機8を用いて桁4に設置する。設置用昇降機8は、桁4に新設されたプレキャストブロック3a上を移動可能である。設置用昇降機8を桁4に新設されたプレキャストブロック3a上を橋梁1の一端から他端に向かって移動させながら順にプレキャストブロック3aを桁4に設置することにより、新たな床版3の設置が完了する。
【0020】
上記の床版更新作業では、床版撤去作業と床版設置作業とを同時並行で進めることができる。そのため、床版2の更新に要する時間を短縮することができる。床版撤去作業及び床版設置作業に加え、桁4の錆などを除去するケレン作業、桁4の高さを調整する高さ調整作業を同時並行で進めてもよい。
【0021】
以下では、床版撤去作業について詳述する。
【0022】
既設の床版2は、桁4に定着されている。そのため、ブロック2aを吊り上げるためには、ブロック2aを桁4から剥離する必要がある。本実施形態に係る床版撤去作業では、床版撤去装置100を用いてブロック2aを桁4から剥離する。
【0023】
図2(a)は、床版撤去装置100の平面図であり、図2(b)は、図2(a)におけるIIB-IIB線に沿う断面図である。図2(a)及び(b)では、床版撤去装置100を橋梁1に載置し撤去対象のブロック2a(以下、「撤去対象ブロック2r」とも称する)に連結した状態が示されている。図2(a)及び(b)に示すように、床版撤去装置100は、撤去対象ブロック2rに隣接する未撤去の別のブロック2aと、ブロック2aが既に撤去され露出している桁4とに渡って橋梁1の長手方向に架け渡されて用いられる。
【0024】
撤去対象ブロック2rに隣接する未撤去のブロック2aとは、撤去対象ブロック2rのすぐ隣に位置するブロック2aに限られず、撤去対象ブロック2rとの間に1又は2以上のブロック2aを挟んで位置するブロック2aも含む。以下において、説明の便宜上、撤去対象ブロック2rに隣接する未撤去のブロック2aを、「隣接ブロック2n」と称する。本実施形態では、隣接ブロック2nが撤去対象ブロック2rのすぐ隣に位置するブロック2aである場合について説明する。
【0025】
床版撤去装置100は、撤去対象ブロック2rを桁4から剥離する駆動部10と、駆動部10を支持する梁材20と、を備えている。梁材20に不図示のシャックルを介してワイヤ7aが取り付けられており、床版撤去装置100は、ワイヤ7aを用いて撤去用昇降機7(図1参照)に吊り下げられる。
【0026】
駆動部10は、伸縮駆動可能な油圧式センターホールジャッキである。駆動部10からは棒状の吊り具11が駆動部10の伸縮方向に延びており、駆動部10は、吊り具11を介して撤去対象ブロック2rに連結される。具体的には、吊り具11を撤去対象ブロック2rに形成された孔に通して留め具12を吊り具11に螺合することにより、駆動部10が撤去対象ブロック2rに連結される。駆動部10を撤去対象ブロック2rに連結した状態で駆動部10を伸長させると、吊り具11及び留め具12が上昇し、撤去対象ブロック2rが桁4から剥離する。
【0027】
駆動部10は、油圧式センターホールジャッキに限られず、撤去対象ブロック2rに連結可能であり撤去対象ブロック2rを桁4から剥離する駆動力を発揮するものであればよい。駆動部10と撤去対象ブロック2rとの連結に用いられる連結具は、吊り具11及び留め具12に限られず、例えばワイヤであってもよい。また、撤去対象ブロック2rに連結用の孔を形成することなく駆動部10と撤去対象ブロック2rとを連結してもよい。
【0028】
梁材20は、互いに間隔を空けて配置された第1桁材30と第2桁材40との間に架け渡されている。梁材20、第1桁材30及び第2桁材40には、例えばH型鋼を用いることができる。
【0029】
第1桁材30と第2桁材40との間隔D1は、橋梁1の長手方向における撤去対象ブロック2rの寸法Lよりも大きい。そのため、梁材20が撤去対象ブロック2rを橋梁1の長手方向に跨ぐように、床版撤去装置100を橋梁1に載置することができる。
【0030】
床版撤去装置100は、梁材20が撤去対象ブロック2rを橋梁1の長手方向に跨ぐように橋梁1に載置される。この状態では、梁材20は、橋梁1の高欄6に沿って配置される。したがって、梁材20と高欄6とが干渉するのを防止することができ、床版撤去装置100を容易に橋梁1に載置することができる。
【0031】
第2桁材40は、一対の支持材50の間に架け渡されている。一対の支持材50は、隣り合う桁4に載置できるように互いに間隔を空けて配置されている。一対の支持材50には、梁材20、第1桁材30及び第2桁材40と同様に、例えばH型鋼を用いることができる。
【0032】
第1桁材30及び第2桁材40は、梁材20に固定されており、一対の支持材50は、第2桁材40に固定されている。そのため、撤去用昇降機7(図1参照)が梁材20を吊り上げると、第1桁材30、第2桁材40及び一対の支持材50は、梁材20と共に上昇する。
【0033】
第1桁材30と第2桁材40の高さは略同じであり、支持材50の高さはブロック2aの厚さと略同じである。そのため、隣接ブロック2nに第1桁材30を載置すると共に露出している桁4に支持材50を載置した状態において、梁材20を撤去対象ブロック2rと略平行にすることができる。
【0034】
なお、第1桁材30と第2桁材40の高さは略同じでなくてもよい。例えば、第2桁材40の高さが第1桁材30の高さよりも小さい場合には、支持材50の高さをブロック2aの厚さよりも大きくすることにより、梁材20を撤去対象ブロック2rと略平行にすることができる。つまり、一対の支持材50の下面は、梁材20が水平になるように床版撤去装置100を保持した状態において、ブロック2aの厚み分、第1桁材30の下面よりも鉛直方向下方に位置していればよい。
【0035】
図2(a)及び図2(b)に示す例では、床版撤去装置100は梁材20を2本備え、各梁材20に2つの駆動部10が支持されているが、梁材20及び駆動部10の数はこれに限定されない。例えば、梁材20は1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、1本の梁材20に1つの駆動部10が支持されていてもよいし、3つ以上の駆動部10が支持されていてもよい。
【0036】
図3(a)は、床版撤去装置100を用いて桁4から剥離した撤去対象ブロック2rを搬送車両9に搭載した状態を橋梁1の幅方向(図3(b)に示す矢印IIIAの方向)に見た図である。図3(b)は、図3(a)に示す状態を橋梁1の長手方向(図3(a)に示す矢印IIIBの方向)に見た図である。なお、図3(a)では、未撤去のブロック2aにおける高欄6の図示を省略している。
【0037】
図3(a)及び(b)に示すように、撤去用昇降機7は、複数の移動体71と、移動体71の各々に立設された支柱72と、支柱72に支持された一対の主桁73と、一対の主桁73どうしを連結する連結梁74と、を備えている。移動体71及び支柱72は、一対の主桁73が互いに略平行になるように配置されている。主桁73の長手方向に隣り合う支柱72は、主桁73と間隔を空けて配置される連結桁75を介して互いに連結されている。連結梁74は、主桁73の長手方向と略直交する方向に一対の主桁73の間に架け渡されている。
【0038】
移動体71は、ウレタンゴム製のタイヤを備えており、複数のブロック2aに分割された既設の床版2上を移動可能である。撤去用昇降機7は、床版撤去作業時には、一対の主桁73の長手方向と橋梁1の長手方向とが略一致した状態で停車する。
【0039】
以下において、主桁73の長手方向を「撤去用昇降機7の前後方向」とし、連結梁74の長手方向を「撤去用昇降機7の左右方向」とする。
【0040】
一対の主桁73は、支柱72から撤去用昇降機7の前後方向に延出しており、主桁73の延出端の間に梁材76が架け渡されている。梁材76に、床版撤去装置100を昇降すると共に旋回する昇降旋回装置77が設けられている。
【0041】
昇降旋回装置77は、梁材76に取り付けられた基台77aと、基台77aに旋回可能に取り付けられた旋回部77bと、旋回部77bに取り付けられフック77dを昇降する昇降部77cと、を備えている。ワイヤ7aは、フック77dに吊られており、床版撤去装置100は、ワイヤ7aの先端に設けられるシャックル(図示省略)に連結される。つまり、撤去用昇降機7のフック77dにワイヤ7aが吊られ、ワイヤ7aの先端に床版撤去装置100が吊られ、床版撤去装置100に撤去対象ブロック2rが連結される。
【0042】
撤去用昇降機7の左右方向における移動体71、支柱72及び連結桁75の間隔D2は、搬送車両9の横幅W1よりも大きい。そのため、移動体71、支柱72及び連結桁75の間に搬送車両9を移動可能である。撤去対象ブロック2rは、昇降旋回装置77により搬送車両9に荷卸しされ、運搬される。床版撤去装置100を撤去対象ブロック2rと共に搬送車両9に荷卸し、運搬してもよい。
【0043】
橋梁1の幅方向におけるブロック2aの寸法Wは、撤去用昇降機7の左右方向における撤去用昇降機7の寸法W2よりも大きい。そのため、撤去用昇降機7は、ブロック2aから橋梁1の幅方向に外れることなくブロック2a上を移動可能である。
【0044】
移動体71、支柱72及び連結桁75の間隔D2は、ブロック2aの寸法L(図2(a)参照)よりも大きい。そのため、桁4から剥離した撤去対象ブロック2rを90°旋回させて搬送車両9に搭載することにより、撤去対象ブロック2rと撤去用昇降機7とが干渉することなく撤去対象ブロック2rを運搬することができる。
【0045】
次に、床版撤去方法について説明する。床版撤去方法は、図1に示すように、ワイヤ7aを用いて撤去用昇降機7に床版撤去装置100を吊るした状態で行われる。ここでは、一部のブロック2aが既に桁4から撤去されているものとして説明する。
【0046】
床版撤去方法では、図2(a)及び図2(b)に示すように、まず、ワイヤ7aに吊るされた床版撤去装置100を橋梁1に載置する。具体的には、隣接ブロック2nに第1桁材30を載置すると共にブロック2aが既に撤去された桁4に支持材50を載置する。これにより、梁材20が、隣接ブロック2nと、ブロック2aが既に撤去された桁4と、の間に渡って撤去対象ブロック2rを橋梁1の長手方向に跨ぐように架け渡される。
【0047】
次に、撤去対象ブロック2rに形成された孔に吊り具11を挿入し、吊り具11に留め具12を螺合する。これにより、駆動部10が吊り具11及び留め具12を介して撤去対象ブロック2rに連結される。
【0048】
次に、駆動部10を伸長させ、吊り具11及び留め具12を上昇させる。このとき、駆動部10は、梁材20、第1桁材30を介して隣接ブロック2nから反力を得ると共に梁材20、第2桁材40及び支持材50を介して桁4から反力を得て、撤去対象ブロック2rを桁4から剥離する。
【0049】
次に、撤去用昇降機7の昇降部77c(図3(a)及び(b)参照)を駆動して床版撤去装置100を撤去対象ブロック2rと共に吊り上げる。その後、床版撤去装置100及び撤去対象ブロック2rが搬送車両9(図3(a)及び(b)参照)の荷台の上方に位置するまで、撤去用昇降機7を橋梁1の他端に向かって移動させる。
【0050】
次に、図3(a)及び(b)に示すように、旋回部77bを駆動して床版撤去装置100と撤去対象ブロック2rを90°旋回させると共に、昇降部77cを駆動して床版撤去装置100と撤去対象ブロック2rを降下させる。これにより、床版撤去装置100と撤去対象ブロック2rが搬送車両9に搭載される。
【0051】
次に、撤去対象ブロック2rと床版撤去装置100との連結を解除する。具体的には、図2(b)に示す留め具12を吊り具11から取り外す。その後、昇降部77cを駆動して床版撤去装置100を吊り上げる。これにより、撤去対象ブロック2rは、橋梁1から搬出可能になる。
【0052】
床版撤去装置100を用いてブロック2aを順に桁4から剥離することにより、既設の床版2の撤去が完了する。
【0053】
撤去対象ブロック2rを桁4から剥離する工程では、駆動部10は、梁材20及び第1桁材30を介して隣接ブロック2nから反力を得ると共に梁材20、第2桁材40及び支持材50を介して桁4から反力を得る。そのため、撤去対象ブロック2rには吊り具11を通すための孔のみを形成すればよく、桁4から反力を得るための穴を撤去対象ブロック2rに形成する作業は不要である。したがって、床版2を桁4から効率よく撤去することができる。
【0054】
また、桁4から剥離した撤去対象ブロック2rを90°旋回させるため、寸法Wが移動体71、支柱72及び連結桁75の間隔D2よりも大きくなるように切断されたブロック2aを搬送車両9に搭載して運搬することができる。なお、撤去対象ブロック2rを、橋梁1の幅方向で分割してもよい。
【0055】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0056】
本実施形態では、梁材20を、隣接ブロック2nと、ブロック2aが既に撤去された桁4と、の間に渡って架け渡す。そのため、駆動部10は、反力を梁材20を介して隣接ブロック2nと桁4とから得る。したがって、桁4から反力を得るための穴を撤去対象ブロック2rに形成する作業が不要であり、床版2を桁4から効率よく撤去することができる。
【0057】
上記実施形態では、1台の撤去用昇降機7に対して1台の床版撤去装置100が用いられるが、1台の撤去用昇降機7に対して、複数の床版撤去装置100を準備しておいてもよい。この場合、床版撤去装置100を撤去対象ブロック2rと共に搬送車両9に搭載した状態で、別の床版撤去装置100を用いて桁4から別の撤去対象ブロック2rを剥離することができる。そのため、撤去対象ブロック2rと床版撤去装置100との連結を解除する作業が不要になり、複数のブロック2aの撤去に要する時間を短縮することができる。
【0058】
<第2実施形態>
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る床版撤去装置200及び床版撤去方法について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
図4(a)は、床版撤去装置200の平面図であり、図4(b)は、図4(a)に示すIIIB-IIIB線に沿う断面図である。図4(a)及び(b)では、床版撤去装置200を橋梁1に載置し撤去対象ブロック2rに連結した状態が示されている。本実施形態に係る床版撤去方法は、撤去用昇降機7(図1参照)に床版撤去装置200を吊るした状態で行われる。
【0060】
図4(a)及び(b)に示すように、床版撤去装置200は、撤去対象ブロック2rに連結可能に形成された梁材220と、梁材220を上昇させて撤去対象ブロック2rを桁4から剥離する第1駆動部210a及び第2駆動部210bと、を備えている。第1駆動部210a及び第2駆動部210bは、伸縮駆動可能な油圧式ジャッキである。
【0061】
第1駆動部210a及び第2駆動部210bは、伸縮方向が略一致するように互いに間隔を空けて配置されている。梁材220は、第1駆動部210aと第2駆動部210bとの間に渡って架け渡されている。梁材20にワイヤ7aが取り付けられている。梁材220には、例えばH型鋼を用いることができる。
【0062】
梁材220には、吊り具11が留め具213を用いて取り付けられている。吊り具11は、第1駆動部210a及び第2駆動部210bの伸縮方向に延在している。吊り具11を撤去対象ブロック2rに形成された孔に通して留め具12を吊り具11に螺合することにより、梁材220が撤去対象ブロック2rに連結される。梁材220を撤去対象ブロック2rに連結した状態で第1駆動部210a及び第2駆動部210bを伸長させると、梁材220、吊り具11及び留め具12が上昇し、撤去対象ブロック2rが桁4から剥離する。
【0063】
第1駆動部210a及び第2駆動部210bは、油圧式ジャッキに限られず、梁材220を支持可能であり撤去対象ブロック2rを桁4から剥離する駆動力を発揮するものであればよい。梁材220と撤去対象ブロック2rとの連結に用いられる連結具は、吊り具11及び留め具12に限られず、例えばワイヤであってもよい。また、撤去対象ブロック2rに連結用の孔を形成することなく梁材220と撤去対象ブロック2rとを連結してもよい。
【0064】
第1駆動部210aと第2駆動部210bとの間隔D2は、橋梁1の長手方向における撤去対象ブロック2rの寸法Lよりも大きい。そのため、梁材220が撤去対象ブロック2rを橋梁1の長手方向に跨ぐように、床版撤去装置200を橋梁1に載置することができる。
【0065】
梁材220が撤去対象ブロック2rを橋梁1の長手方向に跨ぐように床版撤去装置200が橋梁1に載置された状態では、梁材220は、橋梁1の高欄6に沿って配置される。したがって、梁材220と高欄6とが干渉するのを防止することができ、床版撤去装置200を容易に橋梁1に載置することができる。
【0066】
第2駆動部210bには、支持材250が取り付けられている。支持材250には、例えばH型鋼を用いることができる。
【0067】
第1駆動部210a及び第2駆動部210bは、梁材220に固定されており、支持材250は、第2駆動部210bに固定されている。そのため、撤去用昇降機7(図1参照)が梁材220を吊り上げると、第1駆動部210a、第2駆動部210b及び支持材250は、梁材20と共に上昇する。
【0068】
第1駆動部210aと第2駆動部210bの高さは略同じであり、支持材250の高さはブロック2aの厚さと略同じである。そのため、隣接ブロック2nに第1駆動部210aを載置すると共に露出している桁4に支持材250を載置した状態において、梁材220を撤去対象ブロック2rと略平行にすることができる。
【0069】
なお、第1駆動部210aと第2駆動部210bの高さは略同じでなくてもよい。例えば、第2駆動部210bの高さが第1駆動部210aの高さよりも小さい場合には、支持材250の高さをブロック2aの厚さよりも大きくすることにより、梁材220を撤去対象ブロック2rと略平行にすることができる。つまり、支持材250の下面は、梁材220が水平になるように床版撤去装置200を保持した状態において、ブロック2aの厚み分、第1駆動部210aの下面よりも鉛直方向下方に位置していればよい。
【0070】
図4(a)及び図4(b)に示す例では、床版撤去装置200は梁材220を2本備え第1駆動部210a及び第2駆動部210bを2つずつ備えているが、梁材220、第1駆動部210a及び第2駆動部210bの数はこれに限定されない。例えば、梁材220は1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、1つの第1駆動部210aと1つの第2駆動部210bとの間に複数の梁材220が架け渡されていてもよい。
【0071】
次に、床版撤去方法について説明する。ここでは、第1実施形態と同様に、一部のブロック2aが既に桁4から撤去されているものとして説明する。
【0072】
床版撤去方法では、図4(a)及び図4(b)に示すように、まず、床版撤去装置200を橋梁1に載置する。具体的には、隣接ブロック2nに第1駆動部210aを載置すると共にブロック2aが既に撤去された桁4に支持材250を介して第2駆動部210bを載置する。これにより、梁材220が、隣接ブロック2nと、ブロック2aが既に撤去された桁4と、の間に渡って撤去対象ブロック2rを橋梁1の長手方向に跨ぐように架け渡される。
【0073】
次に、撤去対象ブロック2rに形成された孔に吊り具11を挿入し、吊り具11に留め具12を螺合する。これにより、梁材220が吊り具11及び留め具12を介して撤去対象ブロック2rに連結される。
【0074】
次に、第1駆動部210a及び第2駆動部210bを伸長させて梁材220を吊り具11及び留め具12と共に上昇させる。このとき、第1駆動部210aは、隣接ブロック2nから反力を得、第2駆動部210bは、支持材50を介して桁4から反力を得て、撤去対象ブロック2rを桁4から剥離する。
【0075】
次に、撤去用昇降機7(図1参照)を用いて床版撤去装置200を撤去対象ブロック2rと共にワイヤ7aを介して吊り上げ、搬送車両(図示省略)に搭載する。その後、留め具12を吊り具11から取り外し、撤去対象ブロック2rと梁材220との連結を解除する。これにより、撤去対象ブロック2rを橋梁1から搬出するこができる。撤去対象ブロック2rの搬出時には、床版撤去装置200を吊り上げておく。
【0076】
床版撤去装置200を用いてブロック2aを順に桁4から剥離することにより、既設の床版2の撤去が完了する。
【0077】
撤去対象ブロック2rを桁4から剥離する工程では、第1駆動部210aが隣接ブロック2nから反力を得、第2駆動部210bが支持材250を介して桁4から反力を得る。そのため、撤去対象ブロック2rには吊り具11を通すための孔を形成すればよく、桁4から反力を得るための穴を撤去対象ブロック2rに形成する作業は不要である。したがって、床版2を桁4から効率よく撤去することができる。
【0078】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0079】
本実施形態では、第1駆動部210aを隣接ブロック2nに載置すると共に第2駆動部210bをブロック2aが既に撤去された桁4に載置する。そのため、第1駆動部210a及び第2駆動部210bは、隣接ブロック2nと桁4とから反力を得る。したがって、桁4から反力を得るための穴を撤去対象ブロック2rに形成する作業が不要であり、床版2を桁4から効率よく撤去することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0081】
上記実施形態では、既設の床版2を更新する作業に適用する場合について説明したが、発明は、橋梁1を解体する作用にも適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
100,200・・・床版撤去装置
1・・・橋梁
2・・・既設の床版
2a・・・ブロック
2n・・・隣接ブロック(別のブロック)
2r・・・撤去対象ブロック
10・・・駆動部
20,220・・・梁材
210a・・・第1駆動部
210b・・・第2駆動部
図1
図2
図3
図4