(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】収納型螺旋階段
(51)【国際特許分類】
E04F 11/04 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
E04F11/04
(21)【出願番号】P 2020069174
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 憲司
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-089381(JP,U)
【文献】特開平04-350246(JP,A)
【文献】特開平05-052010(JP,A)
【文献】特開2019-190010(JP,A)
【文献】米国特許第03906690(US,A)
【文献】特開平5-79141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/04
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の階上と階下とを連通させる吹抜け部と、
前記吹抜け部に隣接されて前記階下に設けられ、前記吹抜け部と共に階段空間を構成する収納部と、
前記吹抜け部における昇降者の動作を検知可能に前記階段空間に設けられた複数の検知手段と、
前記吹抜け部と前記収納部との間に設けられた軸柱と、
前記収納部に収納可能に構成されると共に、前記複数の検知手段によって検知された前記昇降者の動作に合わせて前記吹抜け部に配置可能に前記軸柱周りに個別に回動される複数の可動式踏板と、
を有する収納型螺旋階段。
【請求項2】
前記建物はユニット式住宅とされ、前記収納部は、平面視で隣接するユニットの境界部を跨いで設けられている請求項1に記載の収納型螺旋階段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納型螺旋階段に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、住宅においてエレベータ又はエスカレータのような大型設備を設けることなく、階上と階下との間で人を昇降させる昇降装置が開示されている。この昇降装置は、縦軸の周りに螺旋状に踏板が設けられており、螺旋階段全体が回転しながら上下動されることで、人が昇降される構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、螺旋階段は通常の階段と比較して意匠性が高く、省スペースに設置することができる。しかしながら、従来の螺旋階段は、上記先行技術も含めて、居住空間に螺旋階段を固定物として常設することになるため、螺旋階段を使っていないときの居住空間を狭めてしまう。よって、従来の螺旋階段は、使用時に螺旋階段としての機能を果たしつつ、不使用時に開放的な居住空間を提供するには、改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、不使用時に開放的な居住空間を提供可能な収納型螺旋階段を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る収納型螺旋階段は、建物の階上と階下とを連通させる吹抜け部と、前記吹抜け部に隣接されて前記階下に設けられ、前記吹抜け部と共に階段空間を構成する収納部と、前記吹抜け部における昇降者の動作を検知可能に前記階段空間に設けられた複数の検知手段と、前記吹抜け部と前記収納部との間に設けられた軸柱と、前記収納部に収納可能に構成されると共に、前記複数の検知手段によって検知された前記昇降者の動作に合わせて前記吹抜け部に配置可能に前記軸柱周りに個別に回動される複数の可動式踏板と、を有している。
【0007】
第1の態様によれば、収納型螺旋階段の不使用時には、複数の可動式踏板はすべて収納部に収納される。これに対して、収納型螺旋階段の使用時には、可動式踏板は必要に応じて吹抜け部に配置される。具体的には、昇降者が階段空間に入ると、この動作が検知手段によって検知される。そして、この検知された信号に基づいて、昇降に必要な可動式踏板が収納部から吹抜け部へ軸柱周りに順次回動される。さらに、昇降者が昇降動作を開始すると、この昇降動作が検知手段によって検知される。そして、この検知された信号に基づいて、可動式踏板が昇降者の昇降動作に合わせて順次回動され、昇降者の前(昇降位置)に適宜配置される。使用後の可動式踏板は、再び収納部へ収納される。
【0008】
第2の態様に係る収納型螺旋階段は、第1の態様において、前記建物はユニット式住宅とされ、前記収納部は、平面視で隣接するユニットの境界部を跨いで設けられている。
【0009】
第2の態様によれば、隣接するユニットの境界部に、収納型螺旋階段を設けることができる。一般的なユニット式住宅において、隣接するユニットの境界部には、梁が設けられている。したがって、隣接するユニットの境界部に一般的な螺旋階段を設ける場合、梁と螺旋階段の構成要素とが干渉するか、若しくは梁と昇降者とが干渉する恐れがある。このため、隣接するユニットの境界部に一般的な螺旋階段を設けることは困難である。本態様では、順次回動される可動式踏板によって、昇降者は階段空間の一部の吹抜け部のみで昇降可能となる。このとき収納部は吹き抜けている必要がない。したがって、隣接するユニットの境界部に収納部が位置するように配置することで、収納型螺旋階段をユニットの境界部に設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、第1の態様に係る収納型螺旋階段は、不使用時に開放的な居住空間を提供することができるという優れた効果を有する。
【0011】
第2の態様に係る収納型螺旋階段は、ユニット式住宅における螺旋階段の設置自由度を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態における収納型螺旋階段を備えたユニット式住宅の間取り図であり、(A)は1階の間取り図であり、(B)は2階の間取り図である。
【
図2】一部の可動式踏板が吹抜け部に配置された状態で、
図1の収納型螺旋階段の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図3】(A)~(F)は、昇降者が1階から2階へ昇る場合の可動式踏板の回動の様子を模式的に示した
図2のA-A線断面図である。
【
図4】(A)~(D)は、
図3に続いて昇降者が2階へ昇る場合の可動式踏板の回動の様子を模式的に示した
図3同様の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図4を用いて、本発明の一実施形態に係る収納型螺旋階段32について説明する。なお、
図1に示される矢印Nは北を示している。また、
図2に示される矢印UPは建物高さ方向上方側を示している。さらに、
図2~
図4に適宜示される矢印Fは収納型螺旋階段32の手前側を示しており、矢印Bは収納型螺旋階段32の奥側を示している。また、
図2~
図4に適宜示される矢印Lは、吹抜け部34側から収納部36側に向かった場合の左側を示しており、矢印Lは、吹抜け部34側から収納部36側に向かった場合の右側を示している。また、以下の説明で特記なく手前、奥、上下、左右の方向を用いる場合は、それぞれ上記の方向を示すものとする。
【0014】
図1(A)、(B)には、本実施形態における収納型螺旋階段32を備えた建物としてのユニット式住宅10の間取り図が示されている。ユニット式住宅10は、
図1(A)に示される1階部分12と、
図2(B)に示される2階部分14とを含んで構成されている。
【0015】
1階部分12は、それぞれ略直方体状の1階第1ユニット16、1階第2ユニット18、1階第3ユニット20及び1階第4ユニット22を含んで構成されている。同様に、2階部分14は、2階第1ユニット24、2階第2ユニット26、2階第3ユニット28及び2階第4ユニット30を含んで構成されている。2階部分14の2階第1ユニット24、2階第2ユニット26、2階第3ユニット28及び2階第4ユニット30は、それぞれ1階部分12の1階第1ユニット16、1階第2ユニット18、1階第3ユニット20及び1階第4ユニット22の上部に配置されている。
【0016】
図1(A)及び
図1(B)に示されるように、収納型螺旋階段32は、ユニット式住宅10の東側中央部に設けられている。収納型螺旋階段32は、1階部分12と2階部分14とを連通させる吹抜け部34と、吹抜け部34に隣接されて1階部分12に設けられ、吹抜け部34と共に階段空間38を構成する収納部36とを備えている。吹抜け部34及び収納部36は、それぞれ略直方体状の空間として形成されている。
図1(A)及び
図3(A)に示されるように、収納部36は、1階第2ユニット18と1階第3ユニット20との境界部40を跨いで設けられている。
【0017】
図2には、収納型螺旋階段32における要部の拡大斜視図が示されている。収納型螺旋階段32は、吹抜け部34と収納部36との間に、円筒状の軸柱42を有している。軸柱42は、複数の節で上下に分割されており、下端部に設けられた下側固定軸44と、上端部に設けられた上側固定軸46と、10個の等間隔に設けられた可動軸48とを備えている。下側固定軸44は、1階床材50から上方に向かって延在している。一方、上側固定軸46は、2階床材52から下方に向かって延在している。可動軸48は、それぞれ平面視で軸柱42の中心回りに回動可能に構成されており、10個の可動軸48が下側固定軸44と上側固定軸46とを連結している。
【0018】
各可動軸48の上下方向中央部には、それぞれ中心角が略30°の扇形板状に形成された可動式踏板54が固定されている。各可動式踏板54は、それぞれが固定された可動軸48と連動して、軸柱42の中心回りに個別に回動可能に構成されている。
【0019】
また、上側固定軸46には、固定踏板56が固定されている。固定踏板56は、平面視で中心角が略30°の扇形板状に形成されており、2階床材52の一段下において、吹抜け部34側に設けられている。
【0020】
図3(A)に示されるように、収納部36は、ユニット式住宅10の東側の外壁58と、1階部分12の玄関ホール60とリビング62とを区切る1階間仕切壁64と(
図1(A)参照)、平面視で略L字状に形成された収納壁66とに囲まれて形成されている。収納壁66は、吹抜け部34と収納部36との間に設けられた正面壁68と、正面壁68と1階間仕切壁64とを連結する側壁70とを備えている。
【0021】
図2に示されるように、正面壁68には、軸柱42を回避するための縦スリット72が形成されている。これにより、正面壁68は、軸柱42を挟んで左側の左側正面壁68Aと、右側の右側正面壁68Bとに分けられる。右側正面壁68Bは、側壁70と一体的に形成されている。
【0022】
左側正面壁68A及び右側正面壁68Bには、回動される可動式踏板54との干渉を避けるための複数の横スリット74が形成されている。複数の横スリット74は、上下方向に等間隔に形成されており、縦スリット72と連通されている。
【0023】
ここで、収納部36は、左側正面壁68Aの奥に形成されたメイン収納部36Aと、右側正面壁68Bの奥に形成されたサブ収納部36Bとを備えている。正面壁68のうち、左側正面壁68Aには、メイン収納部36Aから10段すべての可動式踏板54A~54Jを出し入れ可能に、10個の左側横スリット74が形成されている。一方、右側正面壁68Bには、サブ収納部36Bから、下の5段、すなわち第1~第5可動式踏板54A~54Eを出し入れ可能に、5個の右側横スリット74が形成されている。
【0024】
図2において、最下段の第1可動式踏板54A及び下から2番目の第2可動式踏板54Bは、サブ収納部36Bに収納されている。一方、固定踏板56の一段下の第10可動式踏板54J及びその下の第9可動式踏板54Iは、メイン収納部36Aに収納されている。第2可動式踏板54Bと第9可動式踏板54Iとの間には、下から上に、第3可動式踏板54C、第4可動式踏板54D、第5可動式踏板54E、第6可動式踏板54F、第7可動式踏板54G及び第8可動式踏板54Hが設けられている。
図2において、これらの第3~第8可動式踏板54C~54Hは、吹抜け部34に配置されている。第1~第10可動式踏板54A~54Jは、各横スリット74に対応する高さに設けられている。なお、
図2は可動式踏板54の配置の一例を示すものであり、当該位置に各可動式踏板54が固定されるものではない。
【0025】
また、固定踏板56は、左側正面壁68Aの吹抜け部34側上部に固定されている。1階床材50、第1~第10可動式踏板54、固定踏板56及び2階床材52の各上面は、昇降者がスムーズに昇降できるよう等間隔に設けられている。
【0026】
また、収納部36の上方には、2階床材52との間において、1階第2ユニット18の図示しない天井梁及び1階第3ユニット20の図示しない天井梁が設けられている。これらの天井梁は、可動式踏板54と干渉しない位置、すなわち第10可動式踏板54Jよりも上方で、固定踏板56と略同等の高さに設けられている。
【0027】
ここで、第3可動式踏板54Cには、検知手段としての荷重センサ76が設けられている。なお、他の第1可動式踏板54A、第2可動式踏板54B、第4~第10可動式踏板54D~54Jにも、荷重センサ76と同様の荷重センサが設けられている。また、固定踏板56、吹抜け部34における1階床材50及び2階床材52の吹抜け部34側の端部にも、それぞれ荷重センサ76と同様の荷重センサが設けられている。
図2では、第3可動式踏板54Cに設けられた荷重センサ76のみを図示し、他の荷重センサについては図示を省略する。荷重センサ76を含む複数の荷重センサは、昇降者84(
図3参照)の位置及び動作を検知可能に構成されている。
【0028】
荷重センサ76を含む複数の荷重センサは、収納部36に設けられた図示しない制御部に電気的に接続されている。この制御部は、図示しない駆動部を介して各可動式踏板54を制御可能に構成されている。可動式踏板54は、制御部からの信号によって、複数の荷重センサで検知された昇降者84(
図3参照)の動きに合わせて、個別に回動可能に構成されている。
【0029】
図4(A)に示されるように、2階部分14における吹抜け部34は、外壁58と、2階間仕切壁78と、略L字型の転落防止柵80と、ドア82とに囲まれて形成されている。ドア82は、閉じた状態で2階間仕切壁78と平行に設けられており、収納部36の上方側へ開く片開きのドアとされる。ドア82には、図示しない開閉センサが設けられており、収納部36に設けられた図示しない制御部に電気的に接続されている。なお、
図2ではドア82の図示を省略している。
【0030】
また、ドア82はロック機構を備えている。これにより、吹抜け部34に昇降者84がいる場合には、2階部分14において別の昇降者がドア82を開けられない構成とされている。さらに、吹抜け部34に昇降者84がいて、別の昇降者が1階部分12の吹抜け部34に入った場合、可動式踏板54は当該別の昇降者には反応せず、引き続き昇降者84の動きに合わせて回動されるよう制御されている。
【0031】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、収納型螺旋階段32の使用態様について説明し、その説明を通して本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0032】
図3には、1階部分12における
図2のA-A断面で切断した平断面図が示されている。
図3(A)~
図3(F)は、昇降者84が1階から2階へ昇る場合の可動式踏板54の回動態様を表している。
【0033】
まず、
図3(A)に示されるように、1階部分12において昇降者84が吹抜け部34に入る前、すなわち収納型螺旋階段32の不使用時には、第1~第10可動式踏板54A~54Jはすべて、吹抜け部34から収納部36に向かって左側のメイン収納部36Aに収納されている。
【0034】
図3(B)に示されるように、昇降者84が吹抜け部34に入ると、1階床材50に設けられた荷重センサによって、その動きが検知される。1階床材50の荷重センサによって検知された信号は図示しない制御部へ送られ、図示しない駆動部へ伝達される。これにより、第1可動式踏板54Aが平面視で反時計回りに回動される。第1可動式踏板54Aは、左側正面壁68Aにおいて同じ高さに形成された左側横スリット74を介して、メイン収納部36Aから出されて吹抜け部34へ配置される。
【0035】
図3(C)に示されるように、第1可動式踏板54Aに続いて、第2可動式踏板54B及び第3可動式踏板54Cが30°ずつずれて同様に回動される。可動式踏板54が吹抜け部34に配置される際には、このように、上下に隣接する可動式踏板54が平面視で重ならないよう制御される。
【0036】
第1可動式踏板54が昇降者84の前まで回動されると、昇降者84は1階床材50から第1可動式踏板54Aに昇る動作を開始する。昇降者84の脚が第1可動式踏板54Aに触れると、第1可動式踏板54Aに設けられた荷重センサによって検知される。そうすると、昇降者84が一段昇る動作に合わせて第1~第4可動式踏板54A~54Dがそれぞれ略30°ずつ回動され、
図3(D)の状態となる。さらに、昇降者84が昇る動作を続けて第2可動式踏板54Bに昇ると、同様に可動式踏板54A~54Eが30°ずつ回動され、
図3(E)の状態となる。このように、昇降者84の昇る動作に合わせて可動式踏板54が順次回動され、昇降に必要な可動式踏板54が昇降者84の前に適宜配置される。
【0037】
さらに昇降者84が昇る動作を続けて、第1可動式踏板54Aが右側正面壁68Bの手前まで回動されると、第1可動式踏板54は右側正面壁68Bにおいて同じ高さに形成された右側横スリット74を介して、吹抜け部34からサブ収納部36Bへ収納される(
図3(F))。
【0038】
ここで、視点を2階に移して、2階部分14で切断した収納型螺旋階段32の平断面を示す
図4を用いて、
図3に続く可動式踏板54の回動の様子について説明する。
【0039】
図3(F)に続いて、昇降者84がさらに昇る動作を続けると、
図4(A)に示されるように、昇降者84が第8可動式踏板54Hまで上ったところで、第10可動式踏板54は固定踏板56の一段下に配置される。
図3(A)からこの
図4(A)の状態まで第1~第10可動式踏板54A~54Jが反時計回りに回動されると、第1~第10可動式踏板54A~54Jは、この
図4(A)の位置で止まる。そして、
図4(B)に示されるように、昇降者84は、止まっている第8可動式踏板54Hから第9可動式踏板54I及び第10可動式踏板54Jを経由して、固定踏板56まで辿り着く。
【0040】
その後、昇降者84が固定踏板56から2階床材52に昇ると、2階床材52の吹抜け部34側の端部に設けられた荷重センサによって、その動作が検知される。
図4(C)に示されるように、昇降者84が2階部分14に設けられたドア82から階段空間38の外に出てドア82を閉めると、図示しない制御部からの信号によって、可動式踏板54A~54Jが平面視で時計回りに回動される。具体的には、
図4(B)の状態で吹抜け部34から収納部36に向かって右側のサブ収納部36Bに収納されていた第1~第5可動式踏板54A~54Eが、右側正面壁68Bに設けられた横スリット74を介して吹抜け部に出てくる(
図4(C))。また、
図4(C)に示されるように、吹抜け部34に配置された第1~第10可動式踏板54A~54Jは、左側正面壁68Aに設けられた横スリット74を介して順次メイン収納部36Aへ収納されていき、最終的には
図4(D)に示されるように、すべての可動式踏板54A~54Jが再び収納部36に収納された状態となる。
【0041】
ここまで、昇降者84が1階から2階へ昇る動作に伴う可動式踏板54の回動の様子について詳述したが、以後、昇降者84が2階から1階へ降りる動作に伴う可動式踏板54の回動の様子について簡単に説明する。
【0042】
図4(B)に示されるように、昇降者84がドア82を開けると、すべての可動式踏板54が左側正面壁68Aの横スリット74(
図2参照)を介して収納部36から反時計回りに回動される。具体的には、第6~第10可動式踏板54F~54Jは吹抜け部34に順番に配置され、第1~第5可動式踏板54はさらに回動されてサブ収納部36Bに収納される。次に、第10可動式踏板54Jに設けられた図示しない荷重センサが昇降者84の降りる動作を検知すると、第1~第10可動式踏板54A~54Jが昇降者84の降りる動作に合わせて、時計回りに順次回動される。そして、
図3(C)に示されるように、1階床材50に設けられた図示しない荷重センサによって昇降者84が1階床材50まで降りたことが検知されると、
図3(B)及び
図3(A)に示されるように、すべての可動式踏板54がメイン収納部36Aに収納されていく。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る収納型螺旋階段32によれば、
図3(A)及び
図4(D)に示されるように、収納型螺旋階段32の不使用時には、複数の可動式踏板54A~54Jは、すべてメイン収納部36Aに収納される。よって、収納型螺旋階段32は省スペースに設置することができると共に、不使用時に開放的な居住空間を提供することができる。
【0044】
また、収納部36は、1階第2ユニット18と1階第3ユニット20との境界部40を跨いで配置されている(
図3(A))。さらに、1階第2ユニット18及び1階第3ユニット20の図示しない天井梁は、可動式踏板54及び固定踏板56と干渉しない位置、すなわち第10可動式踏板54Jよりも上方で、固定踏板56と略同等の高さにおいて、収納部36の上部を通るように設けられている。さらにまた、軸柱42は、吹抜け部34と収納部36との間に設けられている。そして、可動式踏板54は、この軸柱42の中心回りに順次回動されるため、昇降者84は、吹抜け部34を移動するだけで昇降可能となる。よって、昇降者84は、収納部36の上部を通る上記天井梁との干渉を回避できる。したがって、本実施形態に係る収納型螺旋階段32によれば、ユニット式住宅10における螺旋階段の設置自由度を向上できる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る収納型螺旋階段32は、横スリット74が形成された収納壁66を備えている。これにより、可動式踏板54は収納壁66の裏側に収納される。よって、収納型螺旋階段32の不使用時には、収納壁66の表側、すなわち玄関ホール60から可動式踏板54が見えなくなる。よって、煩雑な印象を与えることなく、洗練された空間を提供することができる。
【0046】
さらにまた、本実施形態に係る収納型螺旋階段32は、複数の荷重センサを有している。これにより、昇降者84の動きに合わせて必要な可動式踏板54が順次配置される。例えば、昇降者84が1階から2階へ上っている途中で止まれば、可動式踏板54はその位置で止まるよう制御される。また、昇降者84が進行方向を変えたとしても、新たな進行方向に合わせて可動式踏板を配置することができる。よって、収納型螺旋階段32の利便性及び安全性が向上される。
【0047】
また、本実施形態に係る収納型螺旋階段32は、2階部分14にロック機構を備えたドア82を有している。さらに、吹抜け部34に昇降者84がいて、別の昇降者が1階部分12の吹抜け部34に入った場合、可動式踏板54は当該別の昇降者に反応しないように制御されている。これにより、複数の昇降者が同時に収納型螺旋階段32を使用することを回避し、安全性を向上することができる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る収納型螺旋階段32では、2階部分14の吹抜け部34は、外壁58と、2階間仕切壁78と、転落防止柵80と、ドア82とに囲まれて形成されている。これにより、可動式踏板54がすべて収納部36に収納されていて、吹抜け部34が完全に吹き抜けている状態でも、人及び物が2階から1階に落下するのを防止することができる。
【0049】
〔上記実施形態の補足説明〕
【0050】
上記実施形態では、1階部分12と2階部分14との間で昇降可能な収納型螺旋階段32について説明したが、これに限らず、住宅の他の階に設置してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、中心角が略30°の扇形板状に形成された第1~第10可動式踏板54A~54J及び固定踏板56について説明したが、これに限らない。すなわち、踏板の段数及び中心角は、1段分の昇降高さに応じて適宜設計可能なものである。
【0052】
さらに、上記実施形態では、手すりのない可動式踏板54について説明したが、これに限らず、各踏板に手すりを設けてもよい。この場合、下段から上段に向かって徐々に扇形の半径が小さくなるように形成すればよい。
【0053】
さらにまた、上記実施形態では、平面視で時計回りに昇る収納型螺旋階段54について説明したが、反時計回りに昇る螺旋階段としてもよい。この場合、右側に固定踏板及びドアが配置される。
【0054】
また、上記実施形態では、2階床材52の一段下に固定踏板56を備える収納型螺旋階段54について説明したが、これに限らない。例えば、固定踏板56の代わりにもう1段可動式踏板54を設けてもよい。この場合、収納状態では、吹抜け部に踏板が1枚も配置されない状態となる。よって、収納時の意匠性が向上し、より一層開放的な居住空間を提供できる。
【0055】
さらに、上記実施形態では、収納部36は、収納壁66に囲まれて形成されているものとして説明したが、これに限らない。例えば、収納型螺旋階段は収納壁を備えていなくてもよい。この場合、収納時であっても、可動式踏板が見える状態となる。
【0056】
さらにまた、上記実施形態では、荷重センサ76を含む複数の荷重センサを備える収納型螺旋階段54について説明したが、これに限らない。例えば、赤外線センサなど他の検知手段を用いてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、メイン収納部36Aとサブ収納部36Bとを備える収納型螺旋階段54について説明したが、これに限らず、サブ収納部36Bはなくてもよい。すなわち、収納部は上記実施形態の半分の大きさでもよい。このように、収納型螺旋階段がサブ収納部を備えていない場合には、昇降動作中に右側まで回動された可動式踏板は、
図3(F)において可動式踏板54Cが配置されている位置で止まっている構成とされる。このようにメイン収納部のみを備える収納型螺旋階段は、より一層開放的な居住空間を提供することができる。
【0058】
さらにまた、上記実施形態では、ユニット式住宅10に本発明に係る収納型螺旋階段を適用したが、これに限らず、ユニット式住宅以外の住宅に対して本発明に係る収納型螺旋階段を適用してもよい。また、建築工法がユニット式ではない建物に対して本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 ユニット式住宅(建物)
12 1階部分(階下)
14 2階部分(階上)
18 1階第2ユニット(ユニット)
20 1階第3ユニット(ユニット)
34 吹抜け部
36 収納部
38 階段空間
40 境界部
42 軸柱
54 可動式踏板
76 荷重センサ(検知手段)
84 昇降者