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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ダイカスト用水性離型剤
(51)【国際特許分類】
   B22C 3/00 20060101AFI20230927BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20230927BHJP
   C01B 33/40 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
B22C3/00 D
B22D17/20 D
C01B33/40
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020070899
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167005
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000115083
【氏名又は名称】ユシロ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】曽我 浩司
(72)【発明者】
【氏名】野口 敏明
(72)【発明者】
【氏名】石川 真
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-259788(JP,A)
【文献】特表2008-523991(JP,A)
【文献】特開平09-066340(JP,A)
【文献】特開2001-353550(JP,A)
【文献】特開平06-047492(JP,A)
【文献】特開2010-264466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スメクタイト系層状ケイ酸塩鉱物が0.005wt%以上5wt%未満の濃度で分散し、前記スメクタイト系層状ケイ酸塩鉱物の分散時の粒径が0.1μm以下であり、
前記スメクタイト系層状ケイ酸塩鉱物がヘクトライト、サポナイトまたはスティブンサイトであり、
メタカオリナイトとパイロフィライトとの混合物を含まないことを特徴とするダイカスト用水性離型剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低速・高速ダイカスト用水性離型剤に関し、より詳しくは、溶湯保温性および低堆積性に優れると同時に、作業環境保持に優れた水性離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミダイカスト鋳造等の金型鋳造では、金型と、溶湯が固化してなる鋳造品との溶着を防止し、鋳造品を傷付けることなく容易に金型から取り出すため、成形サイクルごとに金型の成形面に離型剤が塗布される。この離型剤は分散媒の有無や種類に応じて水性型(分散媒:水)、油性型(分散媒:炭化水素系液体)、粉体型(無溶媒)に大別される。いずれの離型剤においても、潤滑成分として、耐熱性の高いワックス類、エステル類、シリコーンオイル等が含有される。また、より高い耐熱性を付与することを目的として、グラファイト、タルク、雲母等の無機滑材が固体潤滑剤として用いられることもある。
【0003】
離型剤のうち、油性型については、一般に離型性に優れるといわれているが、発煙や引火の恐れなどから、採用できる場合が限られている。粉体型については、廃水や廃液など廃棄物は少なくなるものの、離型剤による金型の冷却が得られないという問題、離型剤の濃度を容易に調整できないという問題、並びに特別な塗布装置設備が必要であるという問題等を有している。一方、水性型の離型剤は、塗布の容易さや、塗布と同時に金型を冷却できること等により、現在では最も一般的なダイカスト離型剤として用いられている。
【0004】
ダイカスト用水性離型剤に関し、特許文献1には、低速射出金型鋳造用の水性離型剤として、チクソトロピー性を有する特定の粘土鉱物と特定の高分子量有機化合物とを組み合わせて使用し、そこにイオン的反発効果を有する分散剤を水とともに配合した水性離型剤が開示されている。前記した特定の粘土鉱物は、一般に溶湯の保温性を高める効果が見込まれ、湯廻り性の確保に有効である。また、ガスの発生も少ないとし、内部品質の確保にも効果があるとしている。
【0005】
しかしながら、粘土鉱物は通常、水への分散性が低く安定性の面で欠点が多い。具体的には、沈降速度が大きく配管内堆積やノズル詰まり等、メンテナンスや生産効率上の問題が発生し易い。また、特許文献1に記載されたような特定の高分子有機化合物や分散剤は、原液状態での粘土鉱物の安定分散には寄与するが、実際に使用される形態である水希釈後にはその効果は著しく低下するために上記問題を解決できない。さらに、これら高分子量有機化合物や分散剤は、高温の溶湯に接すると比較的容易に熱分解してガス化し、内部品質低下の一因となり得るとも考えられる。
それゆえ、粘土鉱物を含有する離型剤は、溶融金属の保温性が第一義的に要求される分野、特に低速ダイカスト等で限定的に使用されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4464214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記したように、水性型の離型剤には、その特性を生かしつつ、近年開発が進んでいる高機能合金等の新たな合金種への対応、製品の内部品質向上を目的とした低速ダイカスト製法など新たな製造方法への適応、あるいは近年より複雑な形状の効率的成型が求められる精密鋳造品製造工程からの要求に応えるべく、無機滑材や高分子量有機化合物を組み合わせ使用した水性型の離型剤が提案されている。
本発明は、溶湯保温性に優れるとともに生産性/作業環境の改善を実現できることにより、低速・高速ダイカストを問わず使用可能なダイカスト離型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダイカスト用水性離型剤は、特定の層状ケイ酸塩鉱物が0.005wt%以上5wt%未満の濃度で分散し、前記層状ケイ酸塩鉱物の分散時の粒径が0.1μm以下である。
前記層状ケイ酸塩鉱物はスメクタイト系であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性離型剤は、水に対して安定に透明分散可能な特定の層状ケイ酸塩鉱物を配合している事を特徴としており、ガス化による内部品質低下の原因となる分散剤等を配合せずに原液状態および希釈液状態において常に安定した液状態を維持することができる。これにより、本発明の水性離型剤を金型に塗布して形成された離型剤皮膜は、特定の層状ケイ酸塩鉱物に由来する良好な溶湯保温性により優れた湯廻りを実現し、高い耐熱性を有することにより焼き付きを防止するとともに、ガス発生抑制により鋳巣や膨れなどの内部品質低下を防止することができる。同時に、本発明の水性離型剤は、安定な液状態の実現により配管内への沈降・堆積等が発生を防止し、生産性/作業性の改善に寄与する。さらに、本発明の水性離型剤は、乾燥後においても容易に水中に再分散するため、機械廻りの汚れ蓄積を抑制できる。
以上の効果により、本発明の水性離型剤は、高い製品品質と製造効率とを同時に実現することができるとともに、高速および低速いずれのダイカスト鋳造にも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は断熱性評価の手順を説明する概略図である。
図2図2は離型性評価の手順を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のダイカスト用水性離型剤について詳細に説明する。
本発明のダイカスト用水性離型剤(以下単に「水性離型剤」という。)は、層状ケイ酸塩鉱物が0.005wt%以上5wt%未満の濃度で分散し、前記層状ケイ酸塩鉱物の分散時の粒径が0.1μm以下である。
【0012】
層状ケイ酸塩鉱物は、粘土鉱物を構成する主成分鉱物であり、微細な粒子からなる。層状ケイ酸塩鉱物は、カオリナイト、パイロフィライト、スメクタイト(サポナイト、ヘクトライト、スティブンサイトおよびバイデライト等)、パーミキュライト、雲母粘土鉱物(イライトおよびセリサイト)、タルク、海緑石、および緑泥石等である。
粘土鉱物には、前記した層状ケイ酸塩鉱物の他に、ゼオライトのような微細空孔を有する結晶性アルミノケイ酸塩、および、セピオライトのような鎖状構造を有する含水ケイ酸マグネシウム等がある。
【0013】
表1に、層状ケイ酸塩鉱物としてスメクタイトおよびタルク、ならびに鎖状粘土鉱物としてセピオライトをそれぞれ水に分散させて、1%水分散液を調製したときの性状を示す。
【0014】
ヘクトライトおよびスティブンサイトの1%水分散液では、MICROTRACKUPA測定による粒子径0.05μm未満の微粒子が水中で分散して、ヘーズメーター(HGH-2DP)による透過率が90%の高い透明性を示している。サポナイトでは、水中に分散させたときの粒子径は0.05~0.1μmで、ヘクトライトおよびスティブンサイトの粒子径に比べてやや大きいが、透過率90%の高い透明性を示す。
【0015】
一方、モンモリロナイトは、水に分散させると分散時の粒径が1μmを超え、透過率は50%未満となり、ヘクトライト、スティブンサイトおよびサポナイトに比べて透明性に劣る。粒径が1μm以上のセピオライトやタルクの1%水分散液でも、沈殿や濁りが発生するため、透過率は50%未満となり、透明性に劣る。
【表1】
【0016】
表1に示すように、本発明に係る層状ケイ酸塩鉱物は、層状構造を有することに加えて、分散時の粒径が0.1μm以下である。層状構造を有する粘土鉱物は、金属イオンの同型置換により層自身は負に帯電し、大きな陽イオン交換能を持っている。このような層状粘土鉱物を水に分散させると、表面の電荷分布の変化などにより、膨潤し、安定なコロイド溶液様の分散液を形成する。表1のヘクトナイト、サポナイトおよびスティブンサイトは透過率が高く、安定な分散液を形成していることを示している。
【0017】
一方、水分散時の透過率の低い鎖状粘土鉱物やタルク等、分散時粒径が0.1μmを超える層状ケイ酸塩化合物にあっては、経時的な沈殿・沈降が不可避であり、最終的にこの沈殿・沈降は配管内等で発生し、堆積やノズル詰まりの原因となる。
【0018】
本発明に係る層状ケイ酸塩鉱物は、カオリナイト、パイロフィライト、スメクタイト(サポナイト、ヘクトライト、スティブンサイトおよびバイデライト等)、パーミキュライト、雲母粘土鉱物、海緑石および緑泥石等がより好ましく、スメクタイトがさらに好ましく、スメクタイトのうち、サポナイト、ヘクトライトおよびスティブンサイトが特に好ましい。
【0019】
水性離型剤は、前記層状ケイ酸塩鉱物を0.005wt%以上5wt%未満、好ましくは0.05~3wt%の濃度で含有する。
【0020】
本発明に係る層状ケイ酸塩鉱物は水に分散させると、水分散液中の層状ケイ酸塩鉱物の粒径は0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下となる。水中での層状ケイ酸塩鉱物の粒子が微細であるほど、分散性しやすく、沈殿または沈降防止の点で優れるため、本発明に好適である。
【0021】
例えば、ヘクトライトを水に添加した場合、ヘクトライトはその粒子がほとんど視認できないほど小さな粒子となって水の中に入り込み、水分散液は透明な液状を呈する。前記水分散液は、水分蒸発により乾燥皮膜となっても、水を注入すれば再び分散するため、ノズル詰まり防止の点で有利である。前記水分散液は、調製後2ヶ月以上経過しても状態に変化はなく、沈殿または沈降がみられない。また、ヘクトライトは無機粉末であるため、650~720℃の溶湯に相当する温度でも熱分解しない。さらに、金型と溶湯との接触面全体に形成された水性離型剤による皮膜には熱分解し難いヘクトライトを含むため、水性離型剤による皮膜が、金型と溶湯との接触面全体に形成され、金型と溶湯が直接接触せず焼付きの発生を防ぐ効果がある。
【0022】
前記水性離型剤は、前記層状ケイ酸塩鉱物および水を含有する。水には、水道水、蒸留水、イオン交換水および純水等が用いられる。
【0023】
水性離型剤には、前記層状ケイ酸塩鉱物の他に、本発明の効果を損なわない範囲内で、一般的な水性離型剤に含まれる離型成分、分散剤成分、およびその他の添加剤成分が含まれていてもよい。
【0024】
離型成分には、シリコーン化合物、ワックス類、鉱油、油脂類および合成油等が挙げられる。前記シリコーン化合物は、例えば、シリコーンオイル等である。前記ワックス類は、例えば、パラフィンワックス、オレフィンワックス、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックス等の石油系ワックス;酸化ポリエチレンワックスおよび酸化ポリプロピレン等の酸化ワックス;ならびに蜜蝋、カルナバワックスおよびモンタンワックス等の天然ワックス等である。前記油脂類は、例えば、動物油および植物油等である。前記合成油は、例えば、ポリブテンおよびポリエステル等である。前記離型成分は、単独で用いてもよいし二種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
前記分散剤成分は、前記離型成分を水中に乳化分散できるものであればよく、イオン性界面活性剤(アニオン、カチオンおよび両性界面活性剤)ならびにノニオン界面活性剤のいずれも用いることができるが、ノニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤が好ましい。前記ノニオン界面活性剤は、例えば、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリルエーテルおよびポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等である。前記アニオン界面活性剤は、例えば、脂肪酸石けん、アルキル/アリルスルホネート等である。前記分散剤成分は、単独で用いてもよいし二種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
分散剤成分の含有量は、離型成分を水中に乳化分散できる程度であればよく、例えば、離型剤成分100質量部に対して、5~20質量部、好ましくは10~15質量部である。
【0027】
その他の添加剤成分は、消泡剤、腐食防止剤、防腐剤、防錆剤、増粘剤および酸化防止剤等である。
【0028】
本発明の水性離型剤の製造方法は、特に制限されないが、例えば、水に分散剤成分を溶解させた溶液に、層状ケイ酸塩鉱物を添加して均一に混合し、さらに、シリコーン化合物等の離型成分を加えて均一に混合することにより、好適に製造することができる。
【0029】
本発明の水性離型剤は、スクイズダイカスト、層流(低速)ダイカスト、一般ダイカスト等、種類を問わず用いられる。
ダイカスト用の素材は、アルミニウム、亜鉛およびマグネシウム等の非鉄金属ならびにその合金である。ダイカスト鋳造により、例えば、アルミニウム合金を用いた自動車部品を好適に製造することができる。
【実施例
【0030】
以下、本発明を実施例および比較例に基づき、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等により制限されるものではない。
[水性離型剤の調製]
実施例1~9および比較例1~7に従って、水性離型剤を調製した。
【0031】
[水性離型剤の評価]
(1)安定性
水性離型剤を室温で6か月静置した後、目視により評価した。
濁りや沈殿物が認められなかった場合を〇、析出物が認められた場合を△、沈降や二層分離が生じていた場合を×とした。なお、シリコーンエマルションを水で5倍に希釈して調製した比較例7の水性離型剤の安定性を基準(〇)とする相対評価とした。
また、水性離型剤を原液として50倍希釈した希釈液の安定性も上記と同様に目視にて評価した。希釈した際は、3日静置した後を評価した。
【0032】
(2)断熱性
図1に示す装置を用いて、以下のように断熱性、すなわち溶湯保温性を評価した。表面下、2mmに熱電対を内蔵した鋼板を300℃に加熱し、水性離型剤をスプレー塗布した。その後、680℃のアルミニウム合金(JISK2219記載のADC12)溶湯を鋼板上に設置したリング内に100ml給湯した。この際に熱電対が示す温度変化を測定した。試験条件を表2に示す。
【0033】
【表2】
温度上昇が140℃未満であった場合を◎、140℃以上160℃未満の場合を〇、160℃以上180℃未満の場合を△、180℃以上となった場合を×とした。
【0034】
(3)離型性
鋳型温度が高温になると、付着被膜が熱分解して消失し付着効率が極端に落ち、溶湯と金型が直接接触して焼付きが発生する。そこで、水性離型剤を塗布した鋼板の温度を350℃にしたときの焼付きの発生の有無をLubテスター試験で確認した。表3に試験条件を、図2に試験方法を示す。
【0035】
【表3】
【0036】
350℃で焼付きの発生が認められなかった場合を〇、焼付きの発生が認められた場合を×とした。比較例7の水性離型剤の離型性を基準(×)とする相対評価とした。
【0037】
〔実施例1〕
ヘクトライト0.05質量部、シリコーンエマルション(旭化成ワッカーシリコーン社製;NR2707)20質量部、および水79.95質量部を混合して水性離型剤を調製した。
得られた水性離型剤の安定性、断熱性および離型性を評価した。
結果を表4に示す。
【0038】
〔実施例2〕
実施例1において、ヘクトライトに代えて、サポナイトを使用した以外は、実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、得られた水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。
【0039】
〔実施例3〕
実施例1において、ヘクトライトに代えて、スティブンサイトを使用した以外は、実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。
【0040】
〔実施例4〕
ヘクトライト1質量部、シリコーンエマルション(旭化成ワッカーシリコーン社製;NR2707)20質量部、および水79質量部を混合して水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。
【0041】
〔実施例5〕
実施例4において、ヘクトライトに代えて、サポナイトを使用した以外は、実施例4と同様にして、水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。
【0042】
〔実施例6〕
実施例4において、ヘクトライトに代えて、スティブンサイトを使用した以外は、実施例4と同様にして、水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。
【0043】
〔実施例7〕
ヘクトライト3質量部、シリコーンエマルション(旭化成ワッカーシリコーン社製;NR2707)20質量部、および水77質量部を混合して水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。
【0044】
〔実施例8〕
実施例7において、ヘクトライトに代えて、サポナイトを使用した以外は、実施例7と同様にして、水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。
【0045】
〔実施例9〕
実施例7において、ヘクトライトに代えて、スティブンサイトを使用した以外は、実施例7と同様にして、水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。
実施例1~9のいずれの水性離型剤も安定性、断熱性および離型性ともに良好であった。特に、実施例7~9では、層状ケイ酸塩鉱物の添加量が多いため、断熱性に優れていた。
【0046】
〔比較例1〕
モンモリロナイト1質量部、シリコーンエマルション(旭化成ワッカーシリコーン社製;NR2707)20質量部、分散剤(CMC、日本製紙ケミカルズ社製;F-20HC)1質量部、界面活性剤(第一工業製薬社製;XL70)1質量部、および水77質量部を混合して水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、得られた水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。モンモリロナイトは膨潤性を有するため、水と接触すると、層間陽イオンと水分子が水和し、増粘する。しかし、経時で分散したモンモリロナイトが沈降するため安定性に劣る。
【0047】
〔比較例2〕
比較例1において、モンモリロナイトに代えて、セピオライト(セピオジャパン社製;ミルコンSP2)を使用した以外は、比較例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。独特の鎖状で繊維状形態を有するセピオライトは、水に分散させると、チクソトロピー性を示す。しかし、経時でセピオライトが沈降するため安定性に劣る。
【0048】
〔比較例3〕
比較例1において、モンモリロナイトに代えて、タルク(日本タルク社製;ミクロエースP-4)を使用した以外は、比較例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。タルクは、分散時の粒径が0.1μmを超え、また水不溶性であるため、その水分散液は安定性および透明性に劣る。
【0049】
〔比較例4〕
ヘクトライト5質量部、シリコーンエマルション(旭化成ワッカーシリコーン社製;NR2707)20質量部、および水75質量部を混合して水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。層状ケイ酸塩鉱物であるヘクトライトの添加量が多いため、優れた断熱性を示したが、著しいゲル化が起こりシリコーンエマルションと二層分離が発生した。
【0050】
〔比較例5〕
比較例4において、ヘクトライトに代えて、サポナイトを使用した以外は、比較例4と同様にして、水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。サポナイトの添加量が多いため、優れた断熱性を示したが、経時で著しいゲル化が起こり安定性に劣る。
【0051】
〔比較例6〕
比較例4において、ヘクトライトに代えて、スティブンサイトを使用した以外は、比較例4と同様にして、水性離型剤を調製した。
実施例1と同様にして、水性離型剤を調製した。
結果を表4に示す。スティブンサイトの添加量が多いため、優れた断熱性を示したが、経時で著しいゲル化が起こり安定性に劣る。
【0052】
〔比較例7〕
シリコーンエマルション(旭化成ワッカーシリコーン社製;NR2707)20質量部および水80質量部を混合して水性離型剤を調製し、実施例1と同様にして、得られた水性離型剤を評価した。
結果を表4に示す。
【表4】
図1
図2