(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】橋梁構築方法およびゴンドラ構造
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
E01D21/00 B
(21)【出願番号】P 2020125187
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正典
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131978(JP,A)
【文献】特開2008-115693(JP,A)
【文献】特開平10-018582(JP,A)
【文献】実開昭57-099047(JP,U)
【文献】特開2002-021323(JP,A)
【文献】特開2005-282280(JP,A)
【文献】特開2001-115421(JP,A)
【文献】特開平09-158470(JP,A)
【文献】特開2015-014157(JP,A)
【文献】特開昭59-170366(JP,A)
【文献】特開昭57-151718(JP,A)
【文献】特開2021-195827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E02B 3/04-3/14
E04G 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の既設部分の前方で、平面において多角形の各頂点となる位置に、橋脚の杭を打設する工程と、
工事用のゴンドラを吊り降ろすための吊降部を前記橋脚の上に設置し、前記吊降部から前記杭に囲まれた範囲に吊り降ろしたゴンドラを用いて隣り合う前記杭の間にブレースを設ける工程と、
前記既設部分から前記橋脚の上に橋梁の床部を架設する工程と、
を繰り返すことで橋梁を構築し、
前記吊降部は、前記ゴンドラの吊り降ろしに用いる昇降装置と、前記昇降装置を配置する架台を備え、
前記架台は、平面において前記架台を分割したユニットを連結することで形成され、各ユニットが前記昇降装置と前記ゴンドラを備えることを特徴とする橋梁構築方法。
【請求項2】
前記多角形は三角形であり、
前記ユニットは、平面V字状の梁を上下に備え、
3つの前記ユニットを前記梁の先端同士で連結することで、平面三角形状の前記架台が形成されることを特徴とする請求項1記載の橋梁構築方法。
【請求項3】
前記ゴンドラは、前記ゴンドラの有する走行部を前記杭に沿って走行させながら、前記杭に沿って昇降させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の橋梁構築方法。
【請求項4】
工事用のゴンドラと、
前記ゴンドラを吊り降ろすための吊降部と、
を有するゴンドラ構造であって、
前記吊降部は、前記ゴンドラの吊り降ろしに用いる昇降装置と、前記昇降装置を配置する架台を備え、
前記架台は、平面において前記架台を分割したユニットを連結することで形成され、各ユニットが前記昇降装置と前記ゴンドラを備えることを特徴とするゴンドラ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁構築方法およびこれに用いるゴンドラ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、山岳部などで桟橋を施工する方法として、ガイド材を桟橋の既設スパン部分から延設し、このガイド材の中間部で橋脚の後部の杭を打設するとともに、ガイド材の前部で橋脚の前部の杭をさらに打設することで、平面において三角形の頂点にあたる位置に配置された3本の杭による橋脚を構築することが記載されている。
【0003】
また特許文献1では、隣り合う杭の間にブレースを設けるため、橋脚の上に吊降部を設け、当該吊降部から杭で囲まれた平面三角形状の範囲に工事用のゴンドラを吊り降ろす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、桟橋等の施工においてはさらなる効率化が求められている。この点、上記した吊降部やゴンドラの構成には更なる改良の余地があり、これにより施工の効率化を実現できる可能性があった。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、桟橋等を効率良く構築できる橋梁構築方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための第1の発明は、橋梁の既設部分の前方で、平面において多角形の各頂点となる位置に、橋脚の杭を打設する工程と、工事用のゴンドラを吊り降ろすための吊降部を前記橋脚の上に設置し、前記吊降部から前記杭に囲まれた範囲に吊り降ろしたゴンドラを用いて隣り合う前記杭の間にブレースを設ける工程と、前記既設部分から前記橋脚の上に橋梁の床部を架設する工程と、を繰り返すことで橋梁を構築し、前記吊降部は、前記ゴンドラの吊り降ろしに用いる昇降装置と、前記昇降装置を配置する架台を備え、前記架台は、平面において前記架台を分割したユニットを連結することで形成され、各ユニットが前記昇降装置と前記ゴンドラを備えることを特徴とする橋梁構築方法である。
【0008】
本発明では、橋梁の既設部分の前方において杭を打設することで、剛性の高い平面多角形状の橋脚を構築する。隣り合う杭の間にはブレースを設けるが、その際、架台と昇降装置を有する吊降部を橋脚上に設け、吊降部から杭で囲まれた範囲にゴンドラを吊り降ろし、ゴンドラを利用してブレースの設置作業を容易且つ安全に行うことができる。特に本発明では、吊降部の架台をユニット化することで架台の形成が簡単になり、それぞれのユニットが昇降装置とゴンドラを備えたものとすることで、当該ユニットあるいはユニットを連結した架台を橋脚上に設置するだけで昇降装置とゴンドラのセットが完了し、効率良く施工ができる。またゴンドラはユニットの数だけ存在し、対応する昇降装置からそれぞれ独立して昇降可能であるので、作業の自由度が高く、複数台のゴンドラを同時稼働させることでブレース設置時の施工性が向上する。
【0009】
前記多角形は例えば三角形であり、前記ユニットは、平面V字状の梁を上下に備え、3つの前記ユニットを前記梁の先端同士で連結することで、平面三角形状の前記架台が形成されることが望ましい。
この場合、剛性の高い橋脚を杭の本数を最小限としつつ得ることができる。またユニットがV字状の梁を有することで、その先端同士を連結して橋脚の形状に合わせた平面三角形状の架台を容易に形成できる。
【0010】
前記ゴンドラは、前記ゴンドラの有する走行部を前記杭に沿って走行させながら、前記杭に沿って昇降させることが望ましい。
これにより、ゴンドラを杭に沿って安定して昇降させることができる。
【0011】
第2の発明は、工事用のゴンドラと、前記ゴンドラを吊り降ろすための吊降部と、を有するゴンドラ構造であって、前記吊降部は、前記ゴンドラの吊り降ろしに用いる昇降装置と、前記昇降装置を配置する架台を備え、前記架台は、平面において前記架台を分割したユニットを連結することで形成され、各ユニットが前記昇降装置と前記ゴンドラを備えることを特徴とするゴンドラ構造である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、桟橋等を効率良く構築できる橋梁構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図11】ゴンドラ42の吊り降ろしについて説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
(1.桟橋1)
図1、2は本発明の実施形態に係る橋梁構築方法で構築される桟橋1(橋梁)を示す図である。
図1は桟橋1の斜視図である。
図2(a)は桟橋1を上から見た図であり、
図2(b)は桟橋1を側方から見た図である。
【0016】
図1、2に示すように桟橋1は複数のスパン部分10から構成され、
図1、2ではその一部を示している。桟橋1の各スパン部分10は、橋脚3の上に主桁5を配置し、主桁5上に覆工板7を載せた構成を有する。主桁5および覆工板7は桟橋1の床部を構成する。
【0017】
橋脚3は、平面において三角形の各頂点にあたる位置に配置された3本の杭31の間にブレース32を取付けた構成を有し、前部の2本の杭31の上部の間に仮受桁34が設けられ、当該2本の杭31と後部の1本の杭31の頂部の間に、床部(主桁5と覆工板7)を支持するためのV字状の受桁33が架け渡される。
【0018】
また、V字状の受桁33の間には横桁35が架け渡され、後部の杭31の杭頭にはH形鋼等の鋼材37が配置される。上記の受桁33は鋼材37の上に載置される。本実施形態では上記の三角形が正三角形となっており、各方向からの外力に対し橋脚3がバランスよく抵抗できる。
【0019】
主桁5は、隣り合う橋脚3の横桁35の上に架け渡すように設けられる。本実施形態では、桟橋1の幅方向(
図2(a)の上下方向に対応する。以下桟橋幅方向という)に間隔を空けて4本の主桁5が設けられる。
【0020】
覆工板7は、桟橋幅方向の両側に配置される覆工板7aと、桟橋幅方向の中央部に配置される覆工板7bを含む。
【0021】
(2.橋梁構築方法)
次に、
図3~16を参照して本発明の実施形態に係る橋梁構築方法について説明する。
図9~
図11を除く各図において、(a)は桟橋1を上から見た図であり、(b)は桟橋1を側方から見た図である。
【0022】
本実施形態では、まず
図3に示すように、桟橋1の既設スパン部分10(既設部分)の前方にガイド桁20(ガイド材)を延ばすように、既設スパン部分10にガイド桁20を取付ける。
【0023】
ここでは、既設スパン部分10の先端の橋脚3の受桁33と仮受桁34の間にガイド桁20の後部を挿入し、当該後部を受桁33と仮受桁34に仮固定する。仮固定にはブルマン(登録商標)などの狭締具を用いることができる。ガイド桁20は予め地組し、クレーン(不図示)によって吊り上げ、角度を調整しながら挿入する。なお、「後」とは既設スパン部分10側を指すものとし、「前」とはその逆側を指すものとする。
【0024】
ガイド桁20は、桟橋幅方向の両側に配置されたスパン方向(
図3(a)、(b)の左右方向に対応する)の2本の鋼材21の前方に、同じく桟橋幅方向の両側に配置されたスパン方向の2本の鋼材23を設けた構成を有し、鋼材23の後部が、鋼材21の前部の下に取付けられる。
【0025】
鋼材21の間には作業用の足場板22が設けられる。また、鋼材21の前方且つ鋼材23の後部に当たる箇所に桟橋幅方向の横桁24が設けられる。
【0026】
次に、
図4に示すように、桟橋1の既設スパン部分10の前方において、次スパン部分の橋脚の後部の杭31を、ガイド桁20の長手方向の中間部で打設する。杭31はガイド桁20の横桁24で位置決めし、当該横桁24の前で鋼材23の間に挿入する。杭31としては鋼管杭を用いるが、これに限ることはない。
【0027】
その後、杭31に取付けたブラケット50によってガイド桁20を杭31に仮固定する。これにより、ガイド桁20を中間部で支持する。
【0028】
本実施形態では、次に、
図5に示すように、ガイド桁20の鋼材23の間に作業用の足場板27を設け、桟橋1の既設スパン部分10の前方において、次スパン部分の橋脚の前部の2本の杭31を、ガイド桁20の前部で打設する。
【0029】
ここでは、ガイド桁20の前部に桟橋幅方向の2本の横桁25を設け、杭31は横桁25の先端の間で位置決めして当該先端の間に挿入する。横桁25の間には作業用の足場板26が配置されるが、横桁25の両端は足場板26から露出している。
【0030】
その後、3本の杭31の杭頭処理を行い、
図6に示すようにガイド桁20の横桁25と足場板26を撤去し、3本の杭31の頂部に前記した受桁33を設置する。
【0031】
杭頭処理は受桁33の設置のため行われ、後部の杭31は、杭頭を切断した後で杭31の頂部にH形鋼等の鋼材37を設置する。受桁33は2本の鋼材をV字状に突き合わせた部材であり、後部の杭31はそのV字の頂点に位置することから、上記の鋼材37はその上に載置する受桁33の載置可能範囲を広くとるために後部の杭31の頂部に設置している。一方、前部の2本の杭31は、杭頭切断後、その頂部にプレート(不図示)を設置する。
【0032】
その後、ガイド桁20の仮固定(既設スパン部分10の橋脚3の受桁33と仮受桁34への仮固定、およびブラケット50による先程の杭31への仮固定)を一旦解除し、足場板27を一時撤去して、
図7に示すようにガイド桁20を後方にずらして先程打設した3本の杭31で囲まれた範囲から退避させる。
【0033】
その後、ガイド桁20の後部を既設スパン部分10の橋脚3の受桁33と仮受桁34に再び仮固定する。この仮固定には、前記と同様ブルマン(登録商標)などの狭締具を用いることができる。ガイド桁20の移動は、ガイド桁20をクレーン(不図示)で吊り下げて角度を調整しつつ行われる。
【0034】
その後、
図8に示すようにガイド桁20の鋼材23の間に足場板27を設置し直してブラケット50によるガイド桁20の杭31への仮固定を再び行い、工事用のゴンドラ42を吊り降ろすための吊降部41を、次スパン部分の橋脚の受桁33の上に設置する。
【0035】
図9(a)は吊降部41を示す図である。
図9(a)に示すように、吊降部41は架台410と昇降装置420を備える。吊降部41とゴンドラ42は本発明のゴンドラ構造を構成する。
【0036】
架台410は昇降装置420等の配置に用いられる。架台410は複数のユニット410aを連結して形成される。各ユニット410aは架台410を平面において分割した形状を有し、ユニット410aごとに昇降装置420とゴンドラ42を備える。
【0037】
昇降装置420はゴンドラ42の吊り降ろしに用いられる。昇降装置420は、ゴンドラ42を吊るためのワイヤ43を巻付けたドラム等を有し、ワイヤ43の巻出しや巻取りによりゴンドラ42を昇降させることができる。
【0038】
図10(a)は、架台410を構成するユニット410aを上から見た図であり、
図10(b)、(c)はそれぞれユニット410aを
図10(a)の矢印A、Bに示す方向から見た図である。
【0039】
ユニット410aは、ユニット410aの上下において平面V字状に配置した梁411、411を、V字の頂点に設けた鉛直柱412とV字の各辺の中間部に設けた鉛直柱413により連結して構成される。
【0040】
また、鉛直柱412と上部の梁411を連結するように斜材414が設けられる。さらに、ユニット410aの上下において、平面V字状の梁411の間に小梁415が設けられ、鉛直柱413と上部の小梁415を連結するように斜材417が設けられる。
【0041】
図10(d)は架台410を上から見た図である。本実施形態では、同形状の3つのユニット410aを、梁411が三角形の各辺となるように平面三角形状に組み合わせ、隣接するユニット410aを上下の梁411の先端同士で連結する。これにより、平面三角形状の架台410が形成される。本実施形態では、橋脚の平面形状に合わせて上記の三角形が正三角形とされており、架台410は、各ユニット410aの鉛直柱412を杭31の位置に合わせて次スパン部分の橋脚上に設置される。
【0042】
各ユニット410aは、クレーン(不図示)等で昇降装置420およびゴンドラ42と一体に吊り込まれ、橋脚上に配置される。クレーン能力に応じて、
図9(b)に示すようにユニット410aを予め連結して架台410とした状態で吊り込んでもよいし、
図9(c)に示すように、個々のユニット410aごとに吊り込みを行い、各ユニット410aを橋脚上で連結して架台410を形成してもよい。
【0043】
こうして次スパン部分の橋脚上に吊降部41を設けた後、
図11(a)に示すように吊降部41から3本の杭31で囲まれた範囲に各ユニット410aのゴンドラ42を吊り降ろす。これら3つのゴンドラ42は、それぞれ独立して昇降可能である。なお
図11(a)ではガイド桁20の図示を省略している。
【0044】
図11(b)は、3つのゴンドラ42の平面における配置を模式的に示したものである。各ゴンドラ42は、小さな三角形状(本実施形態では正三角形状)の平面を有し、3本の杭31のそれぞれに沿って吊り降ろされる。
【0045】
ゴンドラ42は、三角形平面の1つの頂点を杭31に向けて配置される。当該頂点に当たる位置ではゴンドラ42にガイドローラー421(走行部)が設けられる。ガイドローラー421を杭31に沿って走行させることで、ゴンドラ42を杭31に沿って安定して昇降させることができる。なお、ガイドローラー421の代わりに、杭31に当接しガイドとして機能するスライド金具など、杭31に沿って走行させるその他の走行部を設けてもよい。また、杭31の側面に鉛直方向のガイドレールを設け、走行部をこのガイドレールに沿って走行させてもよい。
【0046】
このゴンドラ42を利用して、
図12に示すように隣り合う杭31の間にブレース32と仮受桁34を設置する。なお、ゴンドラ42には、ブレース32等の取付のため、外側に延びる延長足場44も進退可能に設けられている。また本実施形態では3台のゴンドラ42を同時稼働させ、ゴンドラ42の両側(
図11(b)の矢印参照)でブレース32等の設置作業を行うことで、作業効率が良くなる。
【0047】
この後、
図13に示すように吊降部41やゴンドラ42等を撤去し、受桁33上に横桁35を設置することで、次スパン部分の橋脚3が完成する。横桁35はV字状の受桁33の間に架け渡される。
【0048】
また、
図14に示すように、4本の主桁5を桟橋幅方向の両側に2本ずつ設置する。主桁5は、既設スパン部分10の橋脚3の横桁35から、上記で新たに設置した横桁35に架設される。
【0049】
そして、
図15に示すように、桟橋幅方向の両側の2本の主桁5の間に覆工板7aをそれぞれ設置し、覆工板7a間の隙間からガイド桁20を前方に抜き取る。ガイド桁20はクレーン(不図示)によって前方斜め上に角度をつけながら既設スパン部分10から抜き取る。なお、ガイド桁20は、抜き取り前に仮固定(既設スパン部分10の橋脚3の受桁33と仮受桁34への仮固定、およびブラケット50による杭31への仮固定)を解除し、足場板22、27や横桁24等を撤去しておく。
【0050】
その後、
図16に示すように覆工板7aの間の隙間の上部に覆工板7bを設置し、手摺等(不図示)を取付けることで、桟橋1の次スパン部分10が構築される。抜き取ったガイド桁20は、次スパン部分10の橋脚3の受桁33と仮受桁34の間に後部を挿入し、仮固定することで、当該次スパン部分10を既設スパン部分10としてその次のスパン部分を構築する際に利用することができる。前記の足場板22や横桁24はガイド桁20に再び取付けておく。
【0051】
以下、
図3~
図16の工程を繰り返すことで、桟橋1が延長して構築されてゆく。なお、図示は省略しているが、前記した各工程では必要に応じて適当な箇所に仮設足場(不図示)が設けられる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、桟橋1の既設スパン部分10の前方において杭31を打設することで、剛性の高い平面三角形状の橋脚3を構築する。隣り合う杭31の間にはブレース32等を設けるが、その際、架台410と昇降装置420を有する吊降部41を橋脚3上に設け、吊降部41から杭31で囲まれた範囲にゴンドラ42を吊り降ろし、ゴンドラ42を利用してブレース32等の設置作業を容易且つ安全に行うことができる。
【0053】
特に本実施形態では、吊降部41の架台410をユニット化することで架台410の形成が簡単になり、それぞれのユニット410aが昇降装置420とゴンドラ42を備えたものとすることで、当該ユニット410aあるいはユニット410aを連結した架台410を橋脚3上に設置するだけで昇降装置420とゴンドラ42のセットが完了し、効率良く施工ができる。これにより短時間でゴンドラ作業に移行でき、また高所作業が低減されるので安全性も高い。
【0054】
またゴンドラ42はユニット410aの数だけ存在し、対応する昇降装置420からそれぞれ独立して昇降可能であるので、作業の自由度が高く、複数台のゴンドラ42を同時稼働させることでブレース設置時の施工性が向上する。
【0055】
本実施形態の橋脚3は平面三角形状であり、剛性の高い橋脚3を杭31の本数を最小限としつつ得ることができる。ユニット410aは、V字状の梁411を上下に備えることで、その先端同士を連結して橋脚3の形状に合わせた平面三角形状の架台410を容易に形成することができる。
【0056】
また、ゴンドラ42は、ガイドローラー421等の走行部を杭31に沿って走行させながら、杭31に沿って安定して滑らかに昇降させることができる。
【0057】
しかしながら、本発明は以上の実施形態に限らない。例えば本実施形態では計3本の杭31が平面において三角形の各頂点にあたる位置に配置されており、これにより剛性の高い橋脚3を杭31の本数を最小限としつつ得ることができるが、橋脚3の構成は、3本以上の杭31を多角形の頂点にあたる位置に配置したものであればよく、特に限定されない。例えば4本の杭31から平面四角形状の橋脚3を構成することも可能であり、多角形の向きも様々に定めることができる。
【0058】
架台410やこれを構成するユニット410aは、このような杭31の配置のバリエーションに合わせたものを用いればよく、ユニット410aごとに昇降装置420やゴンドラ42を備えていればその形状や構成は特に限定されない。
【0059】
また、本実施形態ではゴンドラ42を杭31で囲まれた範囲に吊り降ろす前にガイド桁20を後方にずらして当該範囲から退避するが、
図5の状態において3本の杭31で囲まれた範囲に位置するガイド桁20の一部分を、ガイド桁20に対して着脱可能な構成としておき、
図7の工程においてガイド桁20を後方にずらして当該範囲から退避する代わりに、上記部分を取り外してもよい。
【0060】
また本発明は山岳部に限らず、その他の種々の位置に桟橋1を構築する際に適用することが可能である。さらに、桟橋1に限らずその他の橋梁を構築する際にも適用することが可能である。
【0061】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0062】
1:桟橋
3:橋脚
10:スパン部分
20:ガイド桁
31:杭
32:ブレース
41:吊降部
42:ゴンドラ
43:ワイヤ
44:延長足場
311:ガイドレール
410:架台
410a:ユニット
411:梁
412、413:鉛直柱
414、417:斜材
415:小梁
420:昇降装置
421:ガイドローラー