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特許73564115-フルオロウラシルに基づく化学療法における[6R]-MTHF、有効な葉酸代替物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】5-フルオロウラシルに基づく化学療法における[6R]-MTHF、有効な葉酸代替物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20230927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20230927BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/513
A61K31/282
A61K31/4745
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K31/7068
A61K31/7072
A61P35/04
A61K47/12
A61K47/22
A61K9/19
A61K9/14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020510518
(86)(22)【出願日】2018-01-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018050273
(87)【国際公開番号】W WO2019037898
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】17187684.0
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518047610
【氏名又は名称】イソフォル メディカル アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ペール レンナルト リンドバリ
(72)【発明者】
【氏名】グンネル エリーサベト スンデン
(72)【発明者】
【氏名】ベングト グスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ ベディン
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-518305(JP,A)
【文献】特表2007-531728(JP,A)
【文献】M. W. Saif et al.,Clinical Colorectal Cancer,2006年,vol.6, no. 3,p. 229-234
【文献】NCT02244632,ClinicalTrials.gov archive,[2019年7月19日検索],[online],2017年03月08日,インターネット,<URL:https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT02244632?A=9&B=9&C=merged#StudyPageTop>
【文献】Critical Reviews in Oncology/Hematology,2016年,Vol.106,pp.118-131
【文献】European Journal of Cancer,2017年02月,Vol.72, Supplement 1,p.S71 [491]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む、ヒトにおける癌を含めた固形腫瘍の治療用の医薬組成物であって、
以下のレジメン:
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU又は別のフッ素化ピリミジン塩基を含むIVボーラスを投与し;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;その後、
c)場合により、5~1000mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む1のIVボーラスを、1日目の終わりの前に投与し、その後、
d)第2日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU、又は別のフッ素化ピリミジン塩基を含む1又は複数回のIVボーラス投与を行い、その後同時に、又は10分~4時間後に
e)場合により、5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む1又は複数回のIVボーラスを投与する、
工程b)は、任意に第1日目に各反復の間隔を10分間~4時間として4回まで反復され、工程e)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復されること;
により投与されることを特徴とする、前記薬組成物。
【請求項2】
前記固形腫瘍が、結腸癌、胃癌、乳癌、大腸癌、胆嚢癌、肺癌(具体的には腺癌)、転移性CRCを含む結腸直腸癌(CRC)、頭頸部癌、肝癌、骨肉腫、及び膵臓癌から選択される癌の形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記固形腫瘍が、転移性CRCを含む結腸直腸癌(CRC)である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記工程a)に先立って、第1日目に1又は複数の抗癌剤の投与をIVボーラス又は1~4時間の注入のいずれかによって行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗癌剤がオキサリプラチン、イリノテカン(CPT11)、及びベバシズマブから選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
少なくとも2回のボーラス[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が、工程b)のもと1日目に投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
少なくとも2回のボーラス[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が、工程e)のもと2日目に投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
4回までのボーラスの[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が、各ボーラス間に20~30分間の間隔を空けて投与される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
4回までのボーラスの[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が、各ボーラス間に20~30分間の間隔を空けて投与される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が、任意に1種又は複数種の適した賦形剤及び/又は抗酸化剤で安定化された、水溶性の固形剤として使用される、請求項1~9のうちいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記フッ素化ピリミジン塩基が、5-FU、2’-デオキシ-5-フルオロウリジン、及び5’-デオキシ-5-フルオロウリジンから選択される、請求項1~1のうちいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~11のうちいずれか1項に記載の工程a)~e)を行い、かつ、最大8サイクル、すなわち最大16週の合計治療期間にわたって反復するレジメンに従って投与されることを特徴とする、ヒトにおける癌を含めた固形腫瘍の進行の防止又は遅延に使用するための医薬組成物であって、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~11のうちいずれか1項に記載の工程a)~e)を行い、かつ、少なくとも16週間の合計治療期間にわたって反復するレジメンに従って投与されることを特徴とし、そしてそれにより、治療開始後8~16週の間、前記固形腫瘍の統計的に有意な進行が見られない、請求項12に記載のヒトにおける固形腫瘍の進行の防止又は遅延に使用するための医薬組成物であって、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-フルオロウラシル(5-FU)化学療法における、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸([6R]-5,10-methylenetetrahydrofolate:[6R]-MTHF)の投与を含む、癌等のヒトの固形腫瘍の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
5-フルオロウラシル(5-FU)は1957年に初めて導入され、乳癌、頭頸部腫瘍、及び消化器腫瘍等の広範な固形腫瘍の治療において未だ重要な位置を占めている。
【0003】
5-FUは合理的に設計された抗癌剤の例である。ラット肝腫瘍におけるウラシル利用の観察により、この核酸塩基(RNAの核酸においては4種の核酸塩基が存在する)(非特許文献1)の利用が、非悪性組織におけるよりも腫瘍においてより顕著であることが示された。このことは、ウラシル利用の酵素経路が悪性の細胞と正常の細胞とで異なっていることを意味している(非特許文献2)。その後、5-FUが代謝拮抗薬として合成された(非特許文献3)。5-FUにおいてはウラシルの5位の水素原子がサイズの類似したフッ素に置き換えられており、5-FUは酵素の活性部位を占有して悪性細胞の代謝をブロックするように設計された。
【0004】
5-FU単独での全奏効率は10~15%と極めて限定的であり(非特許文献4)、5-FUの抗癌活性を高めるためのモジュレーション戦略が開発された。最も広く用いられる戦略は、フォリン酸のカルシウム塩であるロイコボリンの同時投与である。ロイコボリン(LV)は、1)LVの活性代謝物である5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、2)5-FUの活性代謝物であるFdUMP、及び3)チミジル酸生成酵素、から形成される構造である三元複合体の安定化剤として働く。この三元複合体は、DNA合成に必要な酵素であるチミジル酸生成酵素(非特許文献5)を阻害する。LVを5-FUに加えることにより、全奏効率が20%超に増加した(非特許文献5)。
【0005】
乳癌は、世界的に、女性において最も高頻度で診断される癌であり、癌関連死の主因となっている(Breast Cancer、http://www.cancerresearchuk.org/cancer-info/cancerstats/world/breast-cancer-world/)。早期発見の増加にも関わらず、米国で乳癌と診断される女性のうち5パーセントまでが初診時に転移病変を有する。さらには、診断時に早期の非転移乳癌であった女性のうち、30パーセントまでで遠隔転移が発生する(非特許文献6)。転移性乳癌は根治不可能であるが、新規の全身療法の導入に伴い、生存率は大幅に改善されてきている(非特許文献7~9を参照のこと)。
【0006】
転移性乳癌の治療の目標は、癌関連症状の緩和による生存期間の延長と生活の質の改善である。細胞傷害性化学療法(5-FUの使用を含む)は、ホルモン受容体陰性患者、症候性ホルモン受容体(symptomatic hormone-receptor)を有し、急速な疾患進行又は臓器を巻き込んだ大型の腫瘍を有する患者において特に用いられる(非特許文献10)。5-FUは通常、シクロホスファミド及びメトトレキサートと併用される(CMF)。奏効率はおよそ20%であり、OSはおよそ20ヶ月である(非特許文献11)。
【0007】
5-FUは、進行性及び再発性の頭頸部扁平上皮癌の治療にも用いられる。この患者群の予後は概して悪く、ほとんどの研究において生存期間中央値が6~9ヶ月となっている。5-FUは白金化合物を用いた併用療法において主に用いられる。奏効率はおよそ30%であるが、生存期間はおよそ6ヶ月で依然として低い(非特許文献12及び13を参照のこと)。
【0008】
しかし、5-FUを基盤としたレジメンが広く用いられているのは消化器腫瘍である。結腸直腸癌(CRC)は男性において3番目に多く(全体の10%)、女性において2番目に多い癌であり(9.2%)、2012年内に世界で130万を超える症例(男性で746,000例、女性で614,000例)が報告されている。CRCの罹患率を地理的に見ると、世界で大きく異なっており、男性と女性では、この地理的なパターンが極めて似通っている。罹患率は両性とも世界で10倍の差があり、推定された罹患率が最も高いのはオーストラリア/ニュージーランド(ASRは男性及び女性において、それぞれ100,000人あたり44.8人及び32.2人)、最も低いのは西アフリカ(100,000人あたり4.5人及び3.8人)である。年齢とともに罹患率は増加し、高齢集団で最も高くなる:100,000人あたりでは、60~64歳で67.4人、65~69歳で95.1人、70~74歳で127.8人、≧75歳以上で196.2人である(非特許文献14)。
【0009】
罹患患者のうち約40~50%で転移病変を生じ、CRCを原因とした死亡は年間50万例以上報告されている(非特許文献15)。実際、2012年内には、CRC単独による死亡が694,000例(全体の8.5%)を占めた(非特許文献16)。
【0010】
CRC患者は通常、外科的な処置を受け、それは多くの場合に根治目的である。実際、手術は、未だ下部消化管の悪性腫瘍に対する第一治療法であり、標準切除は早期癌に必要とされる唯一の療法である(非特許文献17)。腫瘍の病期進行に伴い、浸潤の深度とリンパ節転移の問題から、手術単独での根治の機会は減少し、局所再発率が増加する。このような場合、手術は、補助療法と併用して行われるか、又は症状の緩和コントロールのためだけに行われることがある。
【0011】
補助療法は、転移性CRCにおける治療成績を改善し、生存期間の延長をもたらすことが示されている(非特許文献18)。CRCの標準的な第一選択肢の補助療法として、5-フルオロウラシル(5-FU)剤の単独及び併用療法(非特許文献19)が挙げられる。通常、5-FUによる治療は、転移性結腸直腸癌において5-FUの治療効果を有意に増強する、高用量の葉酸(又はロイコボリン、LV)との併用で行われる。実際、転移性疾患でLVによる5-FUのモジュレーションを行うことにより、疾患の無増悪期間(TTP)の延長が見られた(非特許文献20)。
【0012】
大腸腫瘍に対しては、5-FUを単剤療法として与えた際の本来の奏効率は、約10%しかなかった。ロイコボリン(LV)を加えた場合、奏効率は21%に改善された(非特許文献21)。しかし、LVは活性代謝物である[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸(メチレンTHF)に変換される必要があり、続いてこれが、dUMPのdTMPへの変換の反応において、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)及び標的酵素であるチミジル酸生成酵素(TS)と三元複合体を形成する(非特許文献22)。この反応は、5-FUのフッ素化代謝物であるFdUMPがdUMPの代わりに前記複合体に結合すると阻害される(非特許文献23)。このように、LVは抗腫瘍効果を有していないが、前記三元複合体を安定化するメチレンTHFを大量に提供することで、5-FUの効果を増強する(非特許文献24)。この阻害によって、増殖速度が速い腫瘍上皮細胞等の細胞が最も影響を受ける。これにより、それら細胞内のDNA合成が抑制され、アポトーシスによる細胞死がもたらされ得る。
【0013】
上記で必要なLVからメチレンTHFへの代謝的活性化には個人差が生ずる傾向があり、これが原因となって、単独療法として投与される5-FUの奏効率が21%にまでしか改善しなかった可能性がある。
【0014】
還元葉酸であるフォトレキソリンカルシウム(CoFactor(登録商標))((dl)-5,10-メチレンプテロイル-モノグルタミン酸カルシウム塩、又は[6R,S]-5,10-メチレン-THF Ca塩)はラセミ体メチレンTHFとしても知られ、LVの代わりに該還元葉酸メチレンTHFを直接投与すると有意な臨床活性上の利益が得られる可能性があるという推定に基づき、LVの代替薬となることが示唆されている。CoFactor(登録商標)は2種のジアステレオマーの1:1混合物である(非特許文献25)。[6R]-異性体は直接活性のあるTSの補基質であるため、臨床的安全性及び有効性の両面で患者間及び患者内のばらつきが少なく、ロイコボリンの代わりにCoFactor(登録商標)を投与する事は有利であると予測された。
【0015】
実際、未治療の転移性結腸直腸癌における第II相試験において、CoFactor(登録商標)の奏効率は35%であり(非特許文献26)、別の第I/II相臨床試験では、5-FUをCoFactor(登録商標)と併用した際、膵臓癌において、安定状態又は腫瘍反応として定義される臨床的有用性が40%の患者に見られることが示された(非特許文献27)。しかし、不要な肝臓解毒負荷を示すことは別にしても、非天然の(6S)-異性体は、TSに対する補基質としての効果に関して天然の[6R]-異性体の部分的拮抗阻害剤である(非特許文献28)。さらに、第IIb相試験においては、試験群間で有効性又は安全性に有意差が見出されなかったことから、結腸直腸癌におけるCoFactor(登録商標)がロイコボリンと比べてより有効であることは示されず、計画された結腸直腸癌の第III相試験は完了前に中止となった(非特許文献29)。したがって、三元複合体を安定化し、TSの阻害をロイコボリンで現在達成可能な水準よりも高めることができる、改善された葉酸増強5-FU治療プロトコルに対する需要が未だ存在する。
【0016】
定義
ここで用いられる、IV又はi.v.という語は、ともに静脈内(intravenous)のことを表す。
【0017】
ここで用いられる、DLTという語は、用量制限毒性(dose-limiting toxicity)のことを表す。用量制限毒性(DLT)は、少なくとも医薬品(すなわち1種又は複数種の化学療法剤)と関連する可能性があると評価される医療上の出来事であり、治療薬の用量又は強度をさらに増加することができない程度、又は任意の用量における治療の継続が妨げられる程度、に深刻なものである。
【0018】
ここで用いられる、ORRという語は、客観的奏効率(Objective Response Rate)、すなわち所定の量の腫瘍量の減少が見られた患者の割合のことを表す。これは次のように算出される:ORR=RECIST1.1に従った部分奏効と完全奏効の和(RECIST1.1は公表済の基準の組み合わせであり、治療中に癌患者の腫瘍が進行した際に、その反応が以下のように定義される)。
完全奏効(Complete Response;CR):
・全ての標的病変の消滅。いずれの病的リンパ節(標的又は非標的を問わず)も短径10mm未満に減少している必要がある。
部分奏効(Partial Response;PR):
・ベースライン径和を基準とした際に、標的病変の直径の和が少なくとも30%減少。
進行(Progressive Disease;PD)
・試験中の最小和(試験中にベースライン和が最小であった場合はそれを含む)を基準とした際に、標的病変の直径の和が少なくとも20%の増加。
・上記の20%の相対的な増加に加え、上記の和が少なくとも5mmの絶対的な増加を示す必要がある。(注意:1又は複数箇所に新規病変が現れた場合も進行と見なす)。
安定(Stable Disease;SD)
・試験中の最小径和を基準とした際に、PRと評価するのに充分な退縮も、PDと評価するのに充分な増加も無い。
(Eisenhauer EA, Therasse P, Bogaerts J, Schwartz LH, Sargent D, Ford R, et al. New response evaluation criteria in solid tumors: revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer. 2009 Jan; 45(2):228-47)
【0019】
ここで用いられる、dUという語は、デオキシウリジン(deoxyuridine)のことを表す。
【0020】
ここで用いられる、BSAという語は、体表面積(Body Surface Area)のことを表す。
【0021】
ここで用いられる、増殖性疾患という語は、細胞の過剰増殖と細胞マトリクスの代謝回転が、いくつかの疾患、例えば癌、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、乾癬、特発性肺線維症、強皮症、肝硬変、クローン病、及び潰瘍性大腸炎等の病因に有意に関与しているという統一概念のことを表す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【文献】Berg JM; Tymoczko JL; Stryer L (2002). Biochemistry (5th ed.), WH Freeman and Company. pp. 118-19, 781-808. ISBN 0-7167-4684-0. OCLC 179705944
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【文献】Heidelberger C et al. Fluorinated pyrimidines, a new class of tumor-inhibitory compounds. Nature 1967; 179: 663-666
【文献】Johnston P.G., Kaye S. Capcetabine; a novel agent for the treatment of solid tumors. Anticancer Drugs 2001, 12: 639-646
【文献】Longley D.B. et al. 5-Fluorouracil. Mechanisms of action and clinical strategies, Nat Rev Cancer. 2003 May;3(5):330-8. 総説]
【文献】Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG). Effects of chemotherapy and hormonal therapy for early breast cancer on recurrence and 15-year survival: an overview of the randomised trials. Lancet 2005; 365:1687
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【文献】Cunningham D (2010)
【文献】Petrelli N, Douglass HO Jr, Herrera L, Russell D, Stablein DM, Bruckner HW, et al. The modulation of fluorouracil with leucovorin in metastatic colorectal carcinoma: a prospective randomized phase III trial. Gastrointestinal Tumor Study Group. J Clin Oncol. 1989 Oct;7(10):1419-26
【文献】Thirion P, Michiels S, Pignon JP, Buyse M, Braud AC, Carlson RW, O’Connell M, Sargent P, Piedbois P (2004) Modulation of fluorouracil by leucovorin in patients with advanced colorectal cancer: an updated meta-analysis. J Clin Oncol 22(18):3766-3775
【文献】Jarmula A, Cieplak P, Montfort WR (2005) 5,10-Methylene-5,6,7,8-tetrahydrofolate conformational transitions upon binding to thymidylate synthase: molecular mechanics and continuum solvent studies. J Comput Aided Mol Des 19(2):123-136
【文献】Parker WB, Cheng YC (1990) Metabolism and mechanism of action of 5-fluorouracil. Pharmacol Ther 48(3):381-395
【文献】Porcelli L, Assaraf YG, Azzariti A, Paradiso A, Jansen G, Peters GJ (2011) The impact of folate status on the efficacy of colorectal cancer treatment. Curr Drug Metab 12(10):975-984
【文献】Odin, E., Carlsson, G., Frosing, R., Gustavsson, B., Spears, C.P., Larsson, P.A., 1998. Chemical stability and human plasma pharmacokinetics of reduced folates. Cancer Invest. 16, 447-455
【文献】Saif, M.W, Merritt, J, Robbins J, Stewart J., Schupp, J, 2006. Phase III Multicenter Randomized Clinical Trial to Evaluate the Safety and Efficacy of CoFactor(登録商標)/5-Fluorouracil/Bevacizumab Versus Leucovorin/5-Fluorouracil/ Bevacizumab as Initial Treatment for Metastatic Colorectal Carcinoma Clinical Colorectal Cancer, Vol. 6, No. 3, 229-234, 2006
【文献】Saif, M.W., Makrilia N., Syrigos K., 2010. CoFactor: Folate Requirement for Optimization of 5-Fluouracil Activity in Anticancer Chemotherapy. Journal of Oncology Vol. 1-5
【文献】Leary, R.P., Gaumont, Y., Kisliuk, R.L., 1974. Effects of the diastereoisomers of methylenetetrahydrofolate on the reaction catalyzed by thymidylate synthetase. Biochem. Biophys. Res. Commun. 56, 484-488
【文献】プレスリリース:ADVENTRX Provides Update on Cofactor Program. Nov 2, 2007
【発明の概要】
【0024】
近年、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸([6R]-5,10-MTHF)の安定な製剤が開発された。これはMTHFの天然のジアステレオマーの安定な製剤である。先に述べたように、[6R]-MTHFはロイコボリン(LV)の代謝産物でもある。LVとは異なり、[6R]-MTHFはさらなる代謝を受ける必要がなく、FdUMP-TS三元複合体の形成に直接関与すると考えられる。
【0025】
本発明によると、5-FUの初回投与と、それに続く[6R]-MTHF投与を含む、様々な化学療法プロトコルにしたがって、結腸直腸癌患者を治療することにより、50~60%のORR(客観的奏効率)が達成でき、そして約65%の治療患者が、ベースラインの合計直径をレファレンスとした場合に、標的病変の直径の合計の少なくとも25%の低下を経験することが驚くべきことに発見された。
【0026】
したがって、本発明の第一の局面においては、癌などの固形腫瘍の治療における、ヒトにおいて使用するための、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が提供され、前記治療は、
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与する工程;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む工程;その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入によって投与する工程;その後、
d)任意に、第1日目の終わりの前に、5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含んだ1回のIVボーラス投与を行う工程;及び、その後、
e)第2日目に、任意に1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む工程;
を含み、工程b)は、任意に第1日目に各ボーラスが投与される間隔を10分間~4時間として4回まで反復され、工程e)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復される。
【0027】
本発明の第二の局面においては、癌などの固形腫瘍と診断されたヒトを治療する方法が提供され、前記方法は、
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与すること;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含むこと;その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入によって投与すること;その後、
d)任意に、第1日目の終わりの前に、5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含んだ1回のIVボーラス投与を行うこと;及び、その後、
e)第2日目に、任意に1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含むこと;
を含み、工程b)は、任意に第1日目に各ボーラスが投与される間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、工程e)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復される。
【0028】
本発明の第三の態様では、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、癌などの固形腫瘍のヒトの治療における使用に提供され、この治療は、以下の工程:
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与すること;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;その後、
c)場合により、1日目の終わりに、5~1000mg/m2(BSA)[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む1のIVボーラス投与を含み、;その後、
d)第2日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与すること;その後同時に、又は10分~4時間後に、
e)場合により、各々5~1000mg/m2(BSA)[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む1又は複数のIVボーラスの投与
を含み、ここで工程b)が、任意に第1日目に各ボーラスが投与される間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、工程d)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、そして全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復される。
【0029】
本発明の第4態様では、癌などの固形腫瘍と診断されたヒトを治療する方法が提供され、本方法は下記の工程:
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与すること;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;その後、
c)場合により、1日目の終わりのまえに、5~1000mg/m2(BSA)[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む1のIVボーラス投与を含み、;その後、
d)第2日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与すること;その後同時に、又は10分~4時間後に、
e)場合により、各々5~1000mg/m2(BSA)[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む1又は複数のIVボーラスの投与
を含み、ここで工程b)が、任意に第1日目に各ボーラスが投与される間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、工程d)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、そして全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(Wettergren Y, Taflin H, Odin E, Kodeda K, Derwinger K; Cancer Chemother Pharmacol (2015) 75:37-47)図1は、単純化した葉酸代謝の概略である。細胞内で、[6R]-MTHF([6R]-5,10-メチレンTHF)は、dUMPからdTMPを合成する際のメチル基供与体として直接使用され得る。この反応はチミジル酸生成酵素(TS)によって触媒される。一方、アイソボリン(Isovorin)(登録商標)(レボ-ロイコボリン;5-ホルミルTHF)は2段階を経てメチレンTHFに変換される必要がある。5-FUを用いた治療により、TSに結合するFdUMPの形成を介したdTMPの合成が阻害される。DHF:ジヒドロ葉酸、DHFR:ジヒドロ葉酸還元酵素、SHMT1:セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ1、MTHFR:メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素、MTHFD:メチレンテトラヒドロ葉酸脱水素酵素、MTHFS:メテニルテトラヒドロ葉酸合成酵素。
図2図2は、現在行われているISO-CC-005試験の結果を示す。8週及び16週の治療後に評価された30名の第一選択患者、第二選択患者、第三選択患者、及び第五選択患者における、RECIST1.1に従った奏効率を示す。
図3図3は、2007年10月1日に発表されたAdventrxプレスリリースのデータであり、ロイコボリンをCoFactor、すなわち[6R,S]-5,10-メチレンTHFと比較した第IIB相試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
5-フルオロウラシル(5-FU)は、恐らく世界で最も広く使用されている抗癌剤である。Spearsほか(Spears et al., Cancer Res. 42:450 - 56 (1982))は、マウス結腸癌に対する5-FUの治療機序が、DNA酵素であるチミジル酸生成酵素(TS)の完全阻害又はTS活性の抑止であることを発見した。上述のように、葉酸(具体的にはテトラヒドロ葉酸塩)は、プリン、及びピリミジンであるデオキシチミジン一リン酸(dTMP)の合成における一炭素供与体(one-carbon donors)として働き、5-FUの作用をモジュレートするために使用することができる。図1も参照のこと。
【0032】
5-FUを基盤とする癌治療レジメンがいくつか開発されており、それらにおいては、「葉酸」が付随的に、又は治療の一部として他の手段により、投与される。これらのレジメンの多くは、FOLFOXレジメンと呼ばれる併用化学療法のバリエーションである。これは、de Gramontによって改変されたオキサリプラチンを意味する「Oxaliplatin de Gramont」又はOxMdGとしても知られ、次の薬剤からなる:
FOL - フォリン酸(典型的にはロイコボリン又はホリナートカルシウム)
F - フルオロウラシル(5-FU)
OX - オキサリプラチン。
【0033】
転移性CRCにおいて高頻度で投与される第一及び第二選択化学療法剤の例として、5-FU/葉酸、カペシタビン、イリノテカン、オキサリプラチン、ベバシズマブ、セツキシマブ、及びパニツムマブが挙げられ、これらは単独又は併用で使用され、併用の例として、FOLFOX(すなわちLV/5-FU/オキサリプラチン)、FOLFIRI(すなわちLV/5-FU/イリノテカン)、FOLFOX/ベバシズマブ、並びに5-FU-LV/ベバシズマブ及び/又はイリノテカン、が挙げられる。
【0034】
具体例としてFOLFOX4プロトコルが挙げられ、そこでは、第1日目と第2日目の5-FU(5-FU 400mg/m2 ivボーラス、次いで22時間600mg/m2 iv持続注入、第1日目及び第2日目)に先立って200mg/m2のロイコボリンが2時間iv投与される。このプロトコルはオキサリプラチン(エロキサチン)85mg/m2を第1日目にiv投与することを含み、この治療をQ2w×12サイクル行う(Goldberg RM et al. Pooled analysis of safety and efficacy of oxaliplatin plus 5-fluorouracil/leucovorin administrated bimonthly in elderly patients with colorectal cancer. J Clin Oncol 2006; 24:4085を参照のこと)。
【0035】
他の例として、FOLFOX6プロトコルが挙げられ、そこでは、第1日目の5-FUに先立って400mg/m2のロイコボリンを2時間iv投与し、その後2400mg/m2を46時間iv投与する。このプロトコルは、第1日目にオキサリプラチン(エロキサチン)100mg/m2を2時間iv投与することを含み、この治療をQ2w×12サイクル行う(Tournigand, C et al. FOLFIRI followed by FOLFOX6 or the reverse sequence in advanced colorectal cancer: A randomized GERCOR study. J Clin Oncol 2004; 22:229を参照のこと)。
【0036】
他の例として、ROSWELL PARK REGIMENが挙げられ、そこでは、ロイコボリン(500mg/m2 iv)の2時間の持続注入による投与を開始した1時間後に、5-FUを500mg/m2 BSAでivボーラス投与する。この治療を8週間毎にQw×6wks(週1回で6週間)、3~4サイクルおこなう(Lembersky BC et al. Oral uracil and tegafur plus leucovorin compared with iv 5-FU and leucovorin in stage II and III carcinoma of the colon: results from national surgical adjuvant breast and bowel project protocol C-06. J Clin Oncol 2006; 24:2059を参照のこと)。
【0037】
他のさらなる例としては、計画されたCoFactor(登録商標)の第III相試験に対する試験設計(Saif 2006、上記)が挙げられ、そこでは、CoFactor(登録商標)を60mg/m2の用量で2~3分間I.V.ボーラスで投与し、その20分後に5-FUを500mg/m2の用量でボーラスにて2~3分間投与することを1週間毎に6週間行い、それを8週間毎に反復する。この試験においては、オキサリプラチンがベバシズマブに置き換えられ、5mg/kgの用量で、持続I.V.にて90分間、2週間毎に投与された。
【0038】
典型的には、上記引用のものを含む現在用いられている治療プロトコルでは、5-FUは常に葉酸アジュバント(例えばロイコボリン)よりも後に投与されるのに対し、本発明では5-FUのボーラス投与から治療が開始される。上に述べたプロトコルを用いて達成される最高奏効率(ORR)は35~40%程度であった。
【0039】
本発明によると、したがって驚くべき事に、最初に5-FUを投与し、次いで[6R]-MTHFの複数回IVボ-ラス投与を、各ボーラス間に約10~60分間の間隔を空けて行うレジメンに従って結腸直腸癌患者を治療することで、50~60%のORR(奏効率)が達成できることを見出した。
【0040】
したがって、本発明の第一の局面においては、癌などの固形腫瘍のヒトにおける治療で使用するための、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が提供され、前記治療は、
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与する工程;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む工程;その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入によって投与する工程;その後、
d)任意に、第1日目の終わりの前に、5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸の1回のIVボーラス投与を行う工程;及び、その後、
e)第2日目に、任意に1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む工程;
を含み、工程b)は、任意に第1日目に各ボーラスの間隔を10分間~60分として4回まで反復され、工程e)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復される。
【0041】
本発明の第一の局面の一態様においては、工程a)に先立って、第1日目の抗癌剤の投与を、IVボーラス又は1~4時間の注入のいずれかによって行う。
【0042】
他の一態様においては、本発明の第一の局面に従った治療のために[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が提供され、工程a)に先立って、第1日目の抗癌剤の投与を、IVボーラス又は1~4時間の注入のいずれかによって行う。
【0043】
本発明の第二の局面においては、癌などの固形腫瘍と診断されたヒトを治療する方法が提供され、前記方法は、
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与すること;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入によって投与すること;その後、
d)任意に、第1日目の終わりの前に、5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含んだ1回のIVボーラス投与を行うこと;及び、その後、
e)第2日目に、任意に1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含むこと;
を含み、工程b)は、任意に第1日目に投与される各ボーラスの間隔を10分間~60分として4回まで反復され、工程e)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復される。
【0044】
本発明の第三の態様では、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、癌などの固形腫瘍のヒトの治療における使用に提供され、この治療は、以下の工程:
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与すること;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;その後、
c)場合により、1日目の終わりの前に、5~1000mg/m2(BSA)[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む1のIVボーラス投与を含み、;その後、
d)第2日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与すること;その後同時に、又は10分~4時間後に、
e)場合により、各々5~1000mg/m2(BSA)[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む1又は複数のIVボーラスの投与
を含み、ここで工程b)が、任意に第1日目に各ボーラスが投与される間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、工程d)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、そして全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復される。
【0045】
別の実施態様では、本発明の第3態様に従った治療において、工程(a)は、IVボーラス又は1~4時間にわたる輸液のいずれかとして、1日目の抗がん剤の投与に先立って行われる。
【0046】
本発明の第4態様では、癌などの固形腫瘍と診断されたヒトを治療する方法が提供され、本方法は下記の工程:
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与すること;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;その後、
c)場合により、1日目の終わりのまえに、5~1000mg/m2(BSA)[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む1のIVボーラス投与を含み、;その後、
d)第2日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与すること;その後同時に、又は10分~4時間後に、
e)場合により、各々5~1000mg/m2(BSA)[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む1又は複数のIVボーラスの投与
を含み、ここで工程b)が、任意に第1日目に各ボーラスが投与される間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、工程d)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、そして全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復される。
【0047】
また驚くべき事に、現在(2017年12月)進行中の臨床研究においては、本発明の第1、第2、第3、又は第4の局面に従って[6R]-MTHF及び5-FUを少なくとも8週間の治療期間にわたって投与することで、固形腫瘍のヒトにおける進行を防止又は遅延させられることが発見された。治療開始後8~16週の間、前記固形腫瘍の統計的に有意な進行は見られなかった。
【0048】
本発明の第5の局面においては、したがって、癌などの固形腫瘍のヒトにおける進行を防止又は遅延させることにおける使用のための[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が提供され、前記使用は、少なくとも計8週間の治療期間にわたり、工程a)~e)を本発明の第一の局面に従って行い、反復することを含む。
【0049】
第5の局面の好ましい一態様においては、固形腫瘍のヒトにおける進行を防止又は遅延させることにおける使用のための[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が提供され、少なくとも計16週間の治療期間にわたり、工程a)~e)を本発明の第一の局面に従って行い、反復し、治療開始後8~16週の間、前記固形腫瘍の統計的に有意な進行は見られない。
【0050】
本発明の第6の局面においては、癌などの固形腫瘍と診断されたヒトにおける進行を防止又は遅延させるための方法が提供され、前記方法は、少なくとも計8週間の治療期間にわたり、工程a)~e)を本発明の第二の局面に従って行い、反復することを含む。
【0051】
第6の局面の好ましい一態様においては、癌などの固形腫瘍と診断されたヒトにおける進行を防止又は遅延させるための方法が提供され、前記方法は、少なくとも計8週間の治療期間にわたり、工程a)~e)を本発明の第二の局面に従って行い、反復することを含み、治療開始後8~16週の間、前記固形腫瘍の統計的に有意な進行は見られない。
【0052】
本発明のある具体的態様においては、癌などの固形腫瘍のヒトにおける治療で使用するための[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が提供され、前記治療は、
a)第1日目に、400mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIVボーラスにて投与する工程;その30分後に、
b)30mg/m2の[6R]-5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸を投与するためのIVボーラスを提供し;その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIV溶液で46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入する工程;及び、その後、
d)第2日目に、2回のIVボーラス投与を30分間の間隔を空けて行い、それによって各回30mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を投与する工程;
を含み、全工程a)~d)は隔週で8サイクルまで、すなわち16週間まで、反復される。
【0053】
本発明の好ましい一態様においては、癌などの固形腫瘍のヒトにおける治療で使用するための[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が提供され、前記治療は、
a)第1日目に、400mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIVボーラスにて投与する工程;その30分後に、
b)60mg/m2の[6R]-5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸を投与するためのIVボーラスを提供し;その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIV溶液で46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入する工程;及び、その後、
d)第2日目に、2回のIVボーラス投与を30分間の間隔を空けて行い、それによって各回60mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を投与する工程;
を含み、全工程a)~d)は隔週で8サイクルまで、すなわち16週間まで、反復される。
【0054】
本発明の他の具体的態様においては、癌などの固形腫瘍のヒトにおける治療で使用する
ための[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が提供され、前記治療は、
a)第1日目に、400mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIVボーラスにて投与する工程;その30分後に、
b)120mg/m2の[6R]-5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸を投与するためのIVボーラスを提供する工程;その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIV溶液で46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入する工程;及び、その後、
d)第2日目に、2回のIVボーラス投与を30分間の間隔を空けて行い、それによって各回120mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を投与する工程;
を含み、全工程a)~d)は隔週で8サイクルまで、すなわち16週間まで、反復される。
【0055】
本発明の具体的態様においては、癌などの固形腫瘍のヒトにおける治療で使用するための[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が提供され、前記治療は、
a)第1日目に、400mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIVボーラスにて投与する工程;その30分後に、
b)30mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を投与するためのIVボーラスを提供する工程;及び、その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIV溶液で46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入する工程;
を含み、全工程a)~c)は隔週で8サイクルまで、すなわち16週間まで、反復される。
【0056】
本発明の好ましい一態様においては、癌などの固形腫瘍のヒトにおける治療で使用するための[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が提供され、前記治療は、
a)第1日目に、400mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIVボーラスにて投与する工程;その30分後に、
b)60mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を投与するためのIVボーラスを提供する工程;及び、その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIV溶液で46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入する工程;
を含み、全工程a)~c)は隔週で8サイクルまで、すなわち16週間まで、反復される。
【0057】
本発明の他の具体的態様においては、癌などの固形腫瘍のヒトにおける治療で使用するための[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が提供され、前記治療は、
a)第1日目に、400mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIVボーラスにて投与する工程;その30分後に、
b)120mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を投与するためのIVボーラスを提供する工程;及び、その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)をIV溶液で46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入する工程;
を含み、全工程a)~d)は隔週で8サイクルまで、すなわち16週間まで、反復される。
【0058】
本発明の他の一態様においては、5-フルオロウラシル(5-FU)の毒性を減少させる、及び/又は治療効果を改善するための薬剤の調製における、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸の使用が提供され、前記薬剤は、癌などの固形腫瘍の治療のために以下のレジメン:
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与し;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)10~60分の間隔を空けて1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは、5~1000mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入によって投与し;その後、
d)任意に、第1日目の終わりの前に、5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含んだ1回のIVボーラス投与を行い;その後、
e)第2日目に、任意に1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;
工程b)は、任意に第1日目に各反復の間隔を10分間~4時間として4回まで反復され、工程e)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復されること;
に従って5-フルオロウラシル(5-FU)と同時投与される。
【0059】
本発明の他の具体的態様においては、癌などの固形腫瘍を治療するための、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む医薬組成物が提供され、前記医薬組成物は、以下の投与計画:
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与し;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)10~60分間の間隔を空けた1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入によって投与し;その後、
d)任意に、第1日目の終わりの前に、5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含んだ1回のIVボーラス投与を行い;その後、
e)第2日目に、任意に1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;
工程b)は、任意に第1日目に各反復の間隔を10分間~4時間として4回まで反復され、工程e)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復されること;
によって5-フルオロウラシル(5-FU)と同時投与される。
【0060】
本発明のさらなる他の具体的態様においては、癌などの固形腫瘍を治療するための、5-フルオロウラシル(5-FU)を含む医薬組成物が提供され、前記医薬組成物は、以下の投与計画:
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与し;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)10~60分間の間隔を空けた1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入によって投与し;その後、
d)任意に、第1日目の終わりの前に、5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含んだ1回のIVボーラス投与を行い;その後、
e)第2日目に、任意に1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;
工程b)は、任意に第1日目に各反復の間隔を10分間~4時間として4回まで反復され、工程e)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復されること;
によって[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸とともに投与される。
【0061】
本発明の他の具体的態様においては、癌などの固形腫瘍の治療のための薬剤の製造における、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸の使用が提供され、前記薬剤は、以下のレジメン:
a)第1日目に、10~1000mg/m2(BSA)の5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を含むIVボーラスを投与し;その後同時に、又は10分~4時間後に、
b)10~60分間の間隔を空けた1または複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;その後、
c)5-FU(又はその類似体もしくはプロドラッグ)を46時間にわたって、又は第2日目の終わりまで、持続注入によって投与し;その後、
d)任意に、第1日目の終わりの前に、5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含んだ1回のIVボーラス投与を行い;その後、
e)第2日目に、任意に1又は複数回のIVボーラス投与を行い、各ボーラスは5~1000mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含み;
工程b)は、任意に第1日目に各反復の間隔を10分間~4時間として4回まで反復され、工程e)は、任意に第2日目に各ボーラス投与の間隔を10分間~60分間として4回まで反復され、全ての工程a)~e)は、任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復されること;
に従って5-フルオロウラシル(5-FU)と同時投与される。
【0062】
本発明の任意の局面の好ましい一態様においては、IVボーラスの[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、30、60、又は120mg/m2(BSA)の[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を含む。
【0063】
本発明の任意の局面の他の好ましい一態様においては、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸が第1日目に2回投与され、第2日目には投与されない。
【0064】
本発明の任意の局面の他の一態様においては、第1日目に、工程a)に先立って、1又は複数種の抗癌剤の投与をIVボーラス又は1~4時間の注入のいずれかによって行う。個々の態様において、前記抗癌剤は、
シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン(CBDCA)、及びオキサリプラチン(エロキサチン)等のプラチナ剤;5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン(ゼローダ)、ゲムシタビン(ジェムザール)、メトトレキセート、及びペメトレキセド(アリムタ)等の代謝拮抗物質;ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、アクチノマイシン-D、及びマイトマイシン-C(MTC)等の抗腫瘍抗生物質;イリノテカン(CPT-11)、トポテカン(ハイカムチン)、及びエトポシド(VP-16)等のトポイソメラーゼ阻害剤;パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、及びビンクリスチン(オンコビン)等の分裂抑制剤;並びに、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン(ソルメドロール)、及びデキサメタゾン(デカドロン)等のコルチコステロイド;から選択される1種又は複数種の薬剤であってよく、
あるいは、セツキシマブ(エルビタックス)、リツキシマブ(リツキサン)、及びベバシズマブ(アバスチン)等のモノクローナル抗体(MAB);並びに、ゲフィチニブ(イレッサ)等の小分子EGFR阻害剤;を含むターゲット療法から選択されてもよく、
あるいは、タモキシフェン(ノルバデックス)及びビカルタミド(カソデックス)等のホルモン療法から選択されてもよく、
あるいは、モノクローナル抗体等の癌免疫療法剤;ペムブロリズマブ(キイトルーダ)及びニボルマブ(オプジーボ)を含むPD-1阻害剤、並びにアテゾリズマブ(テセントリック)を含むPD-L1阻害剤、等の免疫チェックポイント阻害剤;並びに癌ワクチン;から選択されてもよい。
【0065】
本発明の任意の局面の他の一態様においては、投与される[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は単一ジアステレオマーであり、ジアステレオマー過剰率(d.e.)が>90%d.e.、例えば>93%d.e.、例えば>95%d.e.、例えば>98%d.e.、例えば>99%d.e.、例えば>99.5%d.e.、又は例えば>99.9%d.e.である。好ましい一態様においては、投与される[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は単一ジアステレオマーであり、ジアステレオマー過剰率(d.e.)が>98%d.e.である。
【0066】
本発明の任意の局面の他の一態様においては、前記固形腫瘍は、結腸癌、胃癌、乳癌、大腸癌、胆嚢癌、肺癌(具体的には腺癌)、転移性CRC等の結腸直腸癌(CRC)、頭頸部癌、肝癌、骨肉腫、及び膵臓癌等を含む、各種形態の癌から選択される。
【0067】
本発明の任意の局面の特定の一態様においては、前記固形腫瘍は、結腸癌及び結腸直腸癌から選択される。
【0068】
本発明の他の態様においては、前記5-FU類似体又はプロドラッグは、フッ素化ピリミジン塩基、例えば、カペシタビン(ゼローダ)、すなわちN4-ペンチルオキシカルボニル-5’-デオキシ-5-フルオロシチジン、テガフール、5-フルオロ-ピリミジノン、UFT、ドキシフルリジン、2’-デオキシ-5-フルオロウリジン、5’-デオキシ-5-フルオロウリジン、1-(2’-オキソプロピル)-5-FU、及びアルキル-カルボニル-5-FU、BOF-A2、フトラフール(TS-1)、及びS-1から選択される。
【0069】
一態様においては、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸([6R]-MTHF)は、任意に1種又は複数種の適した賦形剤及び/又はクエン酸もしくはアスコルビン酸もしくはその塩の形態等の抗酸化剤で安定化された、凍結乾燥物又は塩などの水溶性の固形剤として使用される。
【0070】
一態様においては、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸([6R]-MTHF)は1又は複数回のIVボーラスで投与され、各ボーラスは5~1000mg/m2 BSA、例えば5mg/m2 BSA、例えば7mg/m2 BSA、例えば10mg/
2 BSA、例えば15mg/m2 BSA、例えば30mg/m2 BSA、例えば60mg/m2 BSA、例えば120mg/m2 BSA、例えば240mg/m2 BSA、例えば480mg/m2 BSA、例えば720mg/m2 BSA、又は、例えば960mg/m2 BSAを含む。
【0071】
さらなる一態様においては、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、第1日目に、各ボーラス投与間に20~30分間の間隔を空けて4回まで投与される。
【0072】
他の一態様においては、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、第2日目に、各ボーラス投与間に20~30分間の間隔を空けて4回まで投与される。
【0073】
さらなる他の一態様においては、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、第1日目及び第2日目の両方で、各ボーラス投与間に20~30分間の間隔を空けて4回まで投与される。
【0074】
一態様においては、5-フルオロウラシル(5-FU)は1又は複数回のIVボーラスで投与され、各ボーラスは10~1000mg/m2 BSA、例えば300mg/m2 BSA、例えば400mg/m2 BSA、例えば500mg/m2 BSA、例えば600mg/m2 BSA、例えば700mg/m2 BSA、例えば800mg/m2 BSA、例えば900mg/m2 BSA、又は、例えば1000mg/m2 BSAを含む。
【0075】
本発明の任意の局面の一態様においては、1治療サイクルは2日間を含む。このレジメンを任意に2週間毎に4サイクル、すなわち計8週間反復してもよい。
【0076】
本発明の任意の局面の好ましい一態様においては、1治療サイクルは2日間を含む。このレジメンを任意に2週間毎に8サイクルまで、すなわち計16週間まで反復してもよい。
【0077】
本発明の任意の局面の他の一態様においては、前記治療サイクルの第1日目と第2日目は、例えばモニタリング目的のため、1~5日間の期間によって隔てられる。
【0078】
本発明の態様のいくつかのうちの好ましい実施形態では、治療サイクルは2日を含む。このレジメンは、場合により2週間ごと8サイクル、すなわち合計で16週繰り返されてもよい。
【0079】
本発明の任意の局面の他の一態様においては、前記治療サイクルは第1日目と第2日目から1~5日間の期間延長される。
【実施例
【0080】
IV期結腸直腸癌の患者において、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸([6R]-MTHF)の安全性及び有効性を、固定用量の5-フルオロウラシル(5-FU)単独との併用、又はそれに加えて固定用量のベバシズマブ、オキサリプラチン、もしくはイリノテカンとの併用によって、オープンラベルの、複数サイトにおける、第I/II相用量コホート試験(ISO-CC-005)で分析する。第一、第二、又は第三選択治療の対象となる最大63名のIV期CRC患者が本研究に参加するように計画され、以下の研究設計によって次のように配置される:各用量コホートに3~6名の患者、それ以外に各治療群の1個の用量コホートに3名の患者(表1)。
【0081】
【表1】
略語:N/A:該当なし、SP2D:選択された第2相用量。
¶ オキサリプラチン投与のためのタイムポイントウィンドウ(time-point window)は、必要に応じて120分間までの注入時間を可能にするように拡張される。
# イリノテカン投与のためのタイムポイントウィンドウは、必要に応じて90分間までの注入時間を可能にするように拡張される。
§ 5-FUボーラス投与量は、体表面積に関わらず、最大推奨1日用量の1000mgを超えないこと。
* 本臨床研究プロトコルの以前のバージョンに本来含まれていたコホート#3、コホート#10、及びコホート#11は削除した。
a 治療群#4(コホート#12、#13、及び#14)及び治療群#5(コホート#15)においては、[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸の総用量を2回のi.v.ボーラス注入に分割し、それぞれ5-FUボーラス投与(0分)の約30及び60分後に投与する。5-FUの連続注入は[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸の2回目の投与のために一次中止する。
b 以下の観察に対して最も好ましいプロファイルとなる用量として評価される、治療群#4(MOFOX)における[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸の用量。
【0082】
[6R]-5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸([6R]-MTHF)は、バイアルあたり100mg(遊離酸として計算)含まれる凍結乾燥粉末として製剤する。投与:30、60、120、又は240mg/m2の固定用量で急速i.v.ボーラス注入によって行う;研究の全ての用量コホートにおいて(すなわち治療群を問わず)、各治療サイクルの第1日目及び第2日目の5-FU投与の約30分後に投与を行う。前記レジメンを2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復する。
【0083】
5-FU(5-フルオロウラシル)は注射剤として製剤する。投与:5-FUを、各治療サイクルにおいて、第1日目及び第2日目にi.v.ボーラス注入で投与する。本研究の治療群#2及び治療群#3においては、5-FUを、オキサリプラチン又はイリノテカン投与開始の約60分後にそれぞれ投与する(下記参照)。前記レジメンを2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復する。
【0084】
オキサリプラチンは濃縮輸液として製剤する。投与:オキサリプラチンを、本研究の治療群#2(すなわちコホート#4、#5、#10、及び#11)において、各治療サイクルの第1日目に、i.v.注入により15~120分間投与し、これを2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復する。注入速度に影響する可能性のある、投与と関連した毒性について注意を払う(例えば、グレード≦2のアレルギー、咽喉頭異常感症、喉頭痙攣等)。このような場合、臨床ガイドラインに従って、以後のサイクルではオキサリプラチン投与の速度を延長すべきである。
【0085】
イリノテカンは濃縮輸液として製剤する。投与:イリノテカンを、本研究の治療群#3(すなわちコホート#6及び#7)において、各治療サイクルの第1日目にi.v.注入により30~90分間投与し、これを2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復する。イリノテカン投与と関連した早期毒性(24時間以内)、すなわち早期下痢、嘔吐、発汗、腹部痙攣、並びに低頻度ではあるが流涙過多及び鼻漏、によって特徴付けられる急性コリン作動性症候群について注意を払う。このような場合、臨床ガイドラインに従った抗コリン薬の使用が必要である。
【0086】
アバスチン(ベバシズマブ)は濃縮輸液として製剤する。投与:ベバシズマブを、本研究の治療群#5(すなわちコホート#15)において、各治療サイクルの第1日目にi.v.注入により30~90分間投与し、これを2週間毎に8サイクルまで、すなわち16週間まで反復する。
【0087】
ベバシズマブ関連毒性:患者が化学療法との併用でベバシズマブによる治療を主に受けた臨床試験からのデータに基づくと、以下がベバシズマブ関連毒性として認められる可能性がある。最も一般的な重篤な有害事象:胃腸穿孔、出血(肺出血/喀血を含む)、及び動脈血栓塞栓症;最も一般的な有害事象:高血圧、疲労又は無力症、下痢、及び腹痛。
【0088】
結果
ISO-CC-005は、継続的な開発のため、[6R]-MTHFの安全性評価と用量定義を行うために設計された、オープン臨床第I/II相耐容性及び用量定義試験である。この試験では転移性結腸直腸癌患者において4種用量の[6R]-MTHFが5-FUと併用され、さらにイリノテカン又はオキサリプラチン及びベバシズマブの異なる組み合わせの使用の有無も含め、4種の異なるプロトコルを使用して評価が行われる。
・MOD+5-FU:[6R]-MTHFの、5-FUのみとの併用;Nordic FLVプロトコルに類似。
・MOD+FLIRI:[6R]-MTHFの、5-FU及びイリノテカンとの併用;Nordic FLIRIプロトコルに類似。
・MOD+FLOX:[6R]-MTHFの、5-FU及びオキサリプラチンとの併用;Nordic FLOXプロトコルに類似。
・MOFOX:[6R]-MTHFの、5-FU及びオキサリプラチンとの併用;FOLFOX-6プロトコルに類似。
【0089】
患者は、第一から第三、さらには第五選択にわたるいくつかの治療選択肢に属する。
【0090】
患者は、第一から第三、さらには第五選択肢にわたるいくつかの治療選択肢に属する。研究の結果は定期的に評価され、第一選択治療を受けている患者群、及び部分的に第二、第三、及び第5選択治療を受けている患者群からの結果を、これまでに(2017年8月)及び今回再び(2017年12月)分析した。この臨床研究は現在進行中である。
【0091】
合計30名の患者を2017年8月に8週の治療後に最初に分析し、この患者は、第一選択、第二選択、第三選択及び第5選択患者を含んでいた(図2参照)。これらの30の患者のうち、4人(13%)が、進行性疾患を示し、18人(60%)が安定した疾患を示し、8人(27%)が部分的な奏功を示した。治療の選択の観点では、第一選択治療を受けている患者の100%が、結腸直腸がんにおいて臨床利益を示し、安定疾患又は部分的奏功として定義され、そしてこの群の患者についてORRは50%であった。
【0092】
2017年9月までに、合計37人のISO-CC-005患者において、胃腸(GI)副作用(AE)が分析された。37人の患者のうち、2人の患者(5.4%)が、グレード3以上の胃腸有害事象(吐き気、嘔吐および/または脱水として定義)を報告した。
【0093】
2017年12月までに、第2選択、第3選択または第5選択治療を受けたISO-CC-005試験の合計25人の患者を、8週間の治療効果および8人の第1治療選択患者について16週間の治療効果について分析した(図2参照)(16週間は、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)の臨床診療ガイドラインに従った癌治療の標準的スケジュールと考えられている)。試験プロトコルの手続きのために、4人の第1選択の患者は、追加の8週間の治療のために追跡することができなかった。この時点で、さらなる第一選択患者は、分析されなかった。
【0094】
第一選択治療にうまく反応しなかったがん患者の一般的な期待に沿って、第二選択、第3選択、又は第5選択治療患者は、第1選択治療患者と同様に反応しなかった。それにもかかわらず、8週間の治療後に分析した場合、これらの患者のうち64%以上が結腸直腸癌で臨床的利益を示し、安定した疾患または部分走行(図2参照)と定義され、驚くほど高い割合であった。
【0095】
16週間の治療を受けた残りの8人の第1選択の患者については、最初の8週間の治療後に癌の進行は観察されなかった。したがって、8週間で安定性疾患を示した3人の患者は、16週間でも安定した疾患を示し、8週間で部分奏功を示した5人の患者は、16週間でも部分奏功を示した。これは、結腸癌における臨床的利益を示す第1選択患者の100%に相当し、63%のORRに相当する。
【0096】
注目すべきは、MOFOXプロトコルに従って治療を受け、8週間の治療後に部分奏効を示した3名の患者(2名の第一選択及び1名の第二選択)が、8週間の治療後に依然として部分奏効を示したこと、また、MOFOX治療を受けた1名の第二選択治療患者が、16週間のMOFOX治療後に部分奏効を示した唯一の第二選択患者であったことである。
【0097】
1:1ジアステレオマー混合物[6R,S]-MTHFであるCoFactorについては、第一選択患者においてCoFactorをロイコボリンと比較した第IIb相試験で7.7%のCoFactor患者から少なくとも1件のグレード3以上のAEが報告されたのに対し、ロイコボリンでは3.3%であったこと、そしてCoFactorとロイコボリンのORRがそれぞれ10.7%と13.3%であったこと(Adventrxプレスリリース 2007年10月1日、図3)を踏まえると、前記の極めて高いORR(8及び16週の両者における観察)と低い有害事象(AE)発生率(8週の時点の分析)は驚くべきものである。
【0098】
理論に縛られるものではないが、本発明者らは、このCoFactorと[6R]-MTHFの間の違い、すなわち、ロイコボリンを用いた比較研究で評価されたそれらの有効性とAEに関する違いは、CoFactorにおける50%の[6S]-MTHF、すなわち[6R]-MTHFの逆のジアステレオマー、の存在に帰する可能性があると推測する。CoFactorは数年前に中止になったため、この疑問に対して臨床環境で直接的な取り組みを行うことはできないが、多くの医薬活性化合物では、純粋なエナンチオマーをラセミ体と比較した際、又はcis-及びtrans-異性体等の幾何異性体を比較した際に、目的とする効果及び副作用の両者に大きな違いが存在し得ることがよく知られている。従って、非天然の[6S]-異性体は、チミジル酸生成酵素に対する補基質としての効果に関して、天然の[6R]-異性体である[6R]-MTHFの部分的拮抗阻害剤であることが既に示されている[Leary, R.P., Gaumont, Y., Kisliuk, R.L., 1974. Effects of the diastereoisomers of methylenetetrahydrofolate on the reaction catalyzed by thymidylate synthetase. Biochem. Biophys. Res. Commun. 56, 484-488]。
【0099】
本研究は、5-FUと組み合わせた[6R]-MTHFが、以下の:
治療患者のかなり高い割合で、
多くの異なる治療プロトコルで、そして
第一選択、第二選択、第3選択又は第5選択治療について、
直腸結腸癌において臨床利益を示し、安定な疾患又は部分的な奏功として定義されるということを示した。
【0100】
特に、本研究は、5-FUと組み合わせた[6R]-MTHFが、他のがん治療お以前に受けた患者群について、かなり良好な結果を提供すること、並びに本発明の5-FUと組み合わせた[6R]-5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸が、固形腫瘍の進行を予防又は遅延しうるということを示した。
【0101】
上記研究結果はさらに、各種形態の細胞増殖抑制剤との併用において[6R]-MTHFは安全であり得るということ、そして、[6R]-MTHFはこれらの重症患者にとって有効かつ安全であり得るということを支持している。癌治療に用いられる細胞増殖抑制剤の用量制限毒性(DLT)は、典型的には、治療薬の用量又は強度をさらに増加することを妨げるか、又は現在の用量水準における治療の継続を妨げる。DLTはしたがって、患者に投与され得る細胞増殖抑制剤の用量を厳しく制限することが多い。これまでに達成されたISO-CC-005試験の結果は、[6R]-MTHFと併用した際の5-FUの毒性は、5-FUを他の葉酸アジュバントと併用した場合と比較して減少することを示している。上記で議論した比較研究の示唆によれば、この効果は、血漿中2’-デオキシウリジン(dUrd)濃度に反映される5-FUからのグローバルなチミジル酸生成酵素(TS)の阻害を、ロイコボリンとの比較において、[6R]-MTHFが顕著に高い水準で達成させることによって生じている可能性がある。これにより、より高用量の5-FUの使用が、用量制限副作用を生ずることなく可能となることが期待される。
図1
図2
図3