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特許7356417イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素の、酸化物をベースとする粉末を調製するための方法
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  • 特許-イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素の、酸化物をベースとする粉末を調製するための方法 図1
  • 特許-イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素の、酸化物をベースとする粉末を調製するための方法 図2
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  • 特許-イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素の、酸化物をベースとする粉末を調製するための方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素の、酸化物をベースとする粉末を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/34 20200101AFI20230927BHJP
   C01F 7/02 20220101ALI20230927BHJP
【FI】
C01F17/34
C01F7/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020521948
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 FR2018052623
(87)【国際公開番号】W WO2019081842
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】1759996
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】デラヘイ,ティボー
(72)【発明者】
【氏名】ルブラン,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ミラ,サラ
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-069050(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104098120(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101249978(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0180338(US,A1)
【文献】特開2001-097719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/34
C01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素の、酸化物をベースとする粉末を調製するための方法であって、以下の工程:
a) 少なくとも1つのエチレン基および水素結合を形成することが可能な少なくとも1つの極性基を含む少なくとも1つのモノマー、および、少なくとも1つのポリエーテルを、前記イットリウム、前記アルミニウム、および任意で、カルシウム、クロム、マグネシウム、セリウム、ガドリニウム、ネオジム、ユウロピウム、テルビウム、レニウム、ホルミウム、イッテルビウム、サマリウム、ジスプロシウムから選択される少なくとも1つの別の元素を含んでいる溶液に添加する工程であって、前記イットリウム、前記アルミニウム、および任意で少なくとも前記別の元素が、カチオン形態にある、該工程;
b) a)において添加された前記モノマーの重合により、前記溶液をトラップするゲルを得る工程;
c) b)において得られた前記ゲルの脱水により、キセロゲルを得る工程;および
d) c)において得られた前記キセロゲルの熱処理により、前記粉末を得る工程、
を含み、
工程a)の間に添加される前記モノマーが、アクリリックモノマー、メタクリリックモノマー、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、アクリルアミドモノマー、ビス(アクリルアミド)モノマー、およびエポキシドモノマーから選択されるモノマーの混合物であり、
前記モノマーの混合物が、単一の重合性の基を含んでいるモノマーと、2つの重合性の基を含んでいるモノマーとから構成され、
前記ポリエーテルが、少なくとも2つの別個のエーテル反復単位を含む、
該方法。
【請求項2】
工程a)の前記溶液において、カチオン形態の前記イットリウム、前記アルミニウム、および前記少なくとも1つの別の元素が、硝酸アニオンまたは炭酸アニオンと結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)に先立ち、イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素を含む前記溶液を、水溶液中に少なくとも1つのイットリウム前駆体、少なくとも1つのアルミニウム前駆体、任意で前記別の元素の少なくとも1つの前駆体を溶解することにより調製する工程を含む、請求項1または2に記載の方法
【請求項4】
記モノマーの混合物が:
-アクリル酸およびN,N’-メチレン-ビス(アクリルアミド);または
-アクリルアミドおよびN,N’-メチレン-ビス(アクリルアミド)
から構成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法
【請求項5】
記ポリエーテルがポロキサマーである、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の前記溶液に対し、イットリウム、アルミニウム、および/または任意で前記溶液中に存在する少なくとも1つの別の元素の、少なくとも1つの錯化剤が添加され、前記錯化剤が、工程a)の前記モノマーとは異なっている、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記錯化剤が、少なくとも1つのカルボキシル基を含む化合物、少なくとも1つのアミン基を含む化合物、少なくとも1つのアミン基および少なくとも1つのカルボキシル基を含む化合物から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)の前記重合が以下の経路:
-前記重合を開始する目的で前記溶液を加熱すること、および結果として、ゲル化することで構成される、熱経路;
-また前記重合を開始する目的で、前記溶液をUV照射に供することで構成される経路;-また前記重合を開始する目的で、前記溶液をγ照射に供することで構成される経路;
-重合開始剤を、前記溶液に添加することで構成される経路;および
-これらの経路の組合せ、
によって開始される、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)の前記重合が以下の経路:
-前記重合を開始する目的で前記溶液を加熱すること、および結果として、ゲル化することで構成される、熱経路;
-また前記重合を開始する目的で、前記溶液をUV照射に供することで構成される経路;-また前記重合を開始する目的で、前記溶液をγ照射に供することで構成される経路;
-重合開始剤として、過酸化水素水、または過酸化水素水/アスコルビン酸混合物を、前記溶液に添加することで構成される経路;および
-これらの経路の組合せ、
によって開始される、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱処理の工程が、酸化雰囲気下のか焼操作で構成される、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記熱処理の工程d)が、得られたキセロゲルを粉末に変形させるような方法で前記キセロゲルを粉砕する工程によって先行される、請求項1から1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
圧縮物体を調製するための方法であって:
e) 請求項1から1のいずれか1項に記載の、前記調製のための方法を実施する工程;
f) e)で得られた前記粉末を圧縮する工程、
を含む、該方法。
【請求項13】
圧縮物体を調製するための方法であって:
g) 請求項1から1のいずれか1項に記載の、前記調製のための方法を実施する工程;
h) g)で得られた前記粉末から懸濁物またはペーストを形成する工程;
i) h)で調製された前記懸濁物または前記ペーストから、圧縮物体を形成する工程、を含む、該方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素の、酸化物をベースとする粉末を調製するための方法に関する。
【0002】
この方法は特に、とりわけ光学的要素として使用可能な透明セラミックスの製造において、その適用があり得る。
【背景技術】
【0003】
透明セラミックスおよび、より具体的には、多結晶セラミックスは、一般に、単結晶に関連して、特にそれらがレーザキャビティにおいて増幅媒体として使用される場合に支持されている。実際、かかるセラミックスは多くの利点を有しており、その中でも、様々な化学組成物と組合せて複雑な形態をそれらに与える可能性がある。
【0004】
これらのセラミックスが単純な化学組成物のものである場合、それは、式YAl12(頭辞語YAGによっても知られる)を有するガーネットタイプの酸化物の場合であり、それらは一般に、非特許文献1に記載されたように、必要な化学量論的な割合のイットリア(Y)およびアルミナ(Al)の粉末の混合物を生成することおよび反応焼結することによって得られる。この方法では、反応焼結は、求められた結晶相を合成すること、しかしまた粉末の最初の粒子間の良好な結合を可能にすること(これは、言い換えれば、高密度化現象に相当する)の、双方の目的をもつ。このタイプの方法は、2つのカチオンのみを含む混合酸化物(これは、式YAl12をもつYAG化合物の場合である)の合成のためには考えられるが、例えば、その受動的な可飽和吸収体特性について知られている(YAG:Cr4+)のように記されたクロムドープされたYAG化合物(言い換えれば、その一部のアルミニウムがクロムにより置換されているYAG化合物)などの、置換またはドープされたYAGセラミックスの製造を実施することは困難になってくる。実際、この場合、YAG相中に含有されるクロム含量は非常に低い。それ故、非特許文献2に記載されるように、イットリア、アルミナ、およびクロムの、酸化物の粉末の単純な混合物を経て、クロムの均一な分布を得ることは非常に複雑である。さらには、付加的な元素をセラミックに取入れることが必要となり得、かつこれは、求められた酸化状態(+IV)においてクロムを安定化するためであって、クロム(+IV)がそれぞれカルシウム(+II)およびマグネシウム(+II)によって安定化される、式Y2,994Ca0,006Al4,995Cr0,00512またはYAl4,985Mg0,0112を有する透明セラミックスの場合と同様である。3つ以上のカチオンを含むこれらの混合酸化物については、そのいくつかは非常に含量が低く(例えば上述のような、クロム、マグネシウム、およびカルシウム)、粉末の混合物の生成および反応焼結の使用は、結果として化学的不均一性(例えば、制御されない組成勾配および相分離)と、微細構造的不均一性(例えば、多孔性の形態)とを生じ、それらはこれらのセラミックスを光学的要素として使用するための致命的欠陥である。
【0005】
これらの混合酸化物を作り上げるための上記に述べた技術的困難の観点から、研究は実質的に、これらの前駆体を生成することおよび/または焼結することにではなく、求められた化学組成をもつドープされたYAG前駆体を合成することに焦点を合わせてきた。また、1つ以上のカチオンをYAGセラミック内に取込むことを可能にする新規の合成経路もそれ故開発された。こうした既存の方法は多数あり、例えば:非特許文献3に記載されたような水熱合成、非特許文献4に記載されたような噴霧加水分解合成、非特許文献5に記載されたような共沈合成、非特許文献6に記載されたような燃焼合成、非特許文献7に記載されたようなポリアクリルアミドゾル-ゲル合成である。これらの多種多様な方法は、こうした材料への興味を示しているが、しかしまた、とりわけ、後の成形および高密度化の工程に適した所望の特性をもつ酸化物を合成することにおける困難さも示している。実際、これらの経路のいくつかは、求められた酸化物を得ることを可能にするが、しかしながら、困難でかつ不可能でさえある後の成型を伴う。これらの合成経路のうち、こうした複雑な混合酸化物を単相方式で得ることを可能にするものは、特に非特許文献8に記載されるように、実質的に、求められた相を含む、化学量論的な割合で元素を含有するカチオン溶液の重合から生じる。これらの合成様式は、求められた相を得ることを可能にするが、それらは結果として全てアグロメレートの形態をもつ同一の粉末形態を生じ、それらはポリアクリルアミド経路により取得された粉末の、反射電子を用いた走査電子顕微鏡によって得られた2つの写真(2つの異なるスケール、200μmおよび50μmで)を示している添付の図1に示されるように、非常にエアレートされかつ不安定(volatile)な灰のテクスチャーを有する。この高度に多孔性の形態は、光学材料のために通常使用される経路によって形成するためには非常に複雑である。このことは、特に圧縮(compaction)についても、しかしまたこれらの粉末を用いた懸濁物の作成を必要とする形成経路、例えば多孔質および/または真空および/または加圧された鋳型におけるキャスティングについてもあてはまる。
【0006】
したがって、既存の物を考慮して、本発明者らは、イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素の、酸化物(複数の酸化物)をベースとする粉末を調製するための方法であって、該粉末が、以下の利点に到達することを可能にする、該方法を開発するという目標を設定した:
-もう一つの元素を特に非常に少量取り込むことであって、これなしでは、何らかの化学的または構造的不均一性が誘導されること;および
-圧縮物体の形態で、または圧縮物体の調製を意図した懸濁物またはペーストの調製において、それ自体が容易に形成されるようにする粉末が得られること。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】「Journal of the European Ceramic Society」、2000年、第20巻、P.2169-2174.
【文献】「J.Am.Soc.」、1996年、第79巻、P.507-509.
【文献】「Journal of Materials Chemistry」、1999年、第9巻、P.2671-2674.
【文献】「Journal of Alloy Compounds」、2006年、第421巻、P.298-302.
【文献】「Ceramics International」、2009年、第35巻、P.2077-2081.
【文献】「Journal of Luminescence」、2007年、第122-123巻、P.707-709.
【文献】「Trans.Noferrous.Met.Soc.China」、2007年、第17巻、P.1093-1099.
【文献】「American Chemical Society」、2003年、P.3747-3480.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明はイットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素の、酸化物をベースとする粉末を調製するための方法であって、以下の工程:
a) ポリエーテルファミリーからの少なくとも1つのモノマーおよび少なくとも1つのポリマーを、前記イットリウム、前記アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素を含んでいる溶液に添加する工程であって、前記イットリウム、前記アルミニウム、および任意で少なくとも前記別の元素が、カチオン形態にあり、前記モノマーが、有利には、少なくとも1つのエチレン基と、水素結合を形成することが可能な少なくとも1つの極性基とを含む、該工程;
b) a)において添加された前記モノマーの重合により、前記溶液をトラップするゲルを得る工程;
c) b)において得られた前記ゲルの脱水により、キセロゲルを得る工程;および
d) c)において得られた前記キセロゲルの熱処理により、前記粉末を得る工程、
を含む該方法に関する。
【0009】
本発明の記載にさらに詳細に立ち入るに先立ち、以下の定義が明記される。
【0010】
「モノマー」は、通常、上記および下記において、ポリマー(これは、本発明の枠組み内では、溶液をトラップするゲルを形成する材料である)を生成するための重合反応の間に反応することができる化合物を意味し、それ故ポリマーは反復する単位、すなわちモノマーの反応に直接由来する二価の有機基を含む。
【0011】
「ポリエーテル」は、通常、上記および下記において、少なくとも1つのエーテル反復単位を含むポリマーを意味する。
【0012】
「ゲル」は、通常、上記および下記において、上記に述べたモノマーの重合に由来するポリマーから形成された材料であって、その中に水性相が保持される該材料を意味し、該水性相は、本発明の場合には、イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素を、カチオン形態で含む溶液に相当する。
【0013】
「キセロゲル」は、通常、上記および下記において、上記に述べたモノマーの重合に由来するポリマーから形成された材料であって、これにおいて該溶液の溶媒が乾燥により除去されており、これによりイットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素のみが、カチオン形態で存在するようにした、該材料を意味する。
【0014】
本発明の方法は、第1に、ポリエーテルファミリーからの少なくとも1つのモノマーおよび少なくとも1つのポリマーを、イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素を含む溶液に添加する工程であって、前記イットリウム、前記アルミニウム、および少なくとも前記別の元素がカチオン形態にある、該工程を含む。
【0015】
より正確には、イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素を含む前記溶液は、イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素をカチオン形態で含む水溶液であり得る。
【0016】
カチオン形態の前記イットリウム、前記アルミニウム、および任意で前記少なくとも1つの別の元素は、硝酸アニオンまたは炭酸アニオンと結合され得る。
【0017】
前記別の元素が存在する場合、工程a)に先立ち、イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素を含む前記溶液は、水溶液中に少なくとも1つのイットリウム前駆体、少なくとも1つのアルミニウム前駆体、および任意で前記別の元素の少なくとも1つの前駆体を溶解することにより、予め調製され得る。
【0018】
これらの前躯体は、硝酸塩(例えば、硝酸イットリウムY(NO、硝酸アルミニウムAl(NO))または炭酸塩であってもよい。
【0019】
前記前駆体の性質により、前記溶液は前記前駆体の溶解を可能にする目的で酸性化されてもよい。
【0020】
前記別の元素は、それらが存在する場合、マグネシウムおよび/またはカルシウムと任意に結合したクロム;セリウム;ネオジミウム;ガドリニウム;ユウロピウム;テルビウム;ホルミウム;イッテルビウム;サマリウム;ジスプロシウムおよび/またはレニウムであってもよい。
【0021】
有利には、前記別の元素は、マグネシウムおよび/またはカルシウムと任意に結合したクロムであり、マグネシウムおよび/またはカルシウムは、クロムを正しい酸化状態(すなわち、酸化状態(+IV))に安定化させるために用いられる。
【0022】
有利には、工程a)の間に添加される前記モノマーは、少なくとも1つのエチレン基(重合基を形成)と、水素結合を形成することが可能な少なくとも1つの極性基とを含む。したがって、ひとたび重合すれば、得られた生成物(すなわちポリマー)は、水とモノマーの重合に由来する反復単位の極性基との間の水素結合の形成により、水を貯蔵することができるであろう。
【0023】
より具体的には、工程a)の間に添加された前記モノマーは、少なくとも1つのエチレン基と、水素よりも電気陰性度の高い原子、例えば窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子、例えばフッ素に結合された1つ以上の水素原子を含む少なくとも1つの基とを含む。
【0024】
さらになお具体的には、前記モノマーは、少なくとも1つのエチレン基と、アミド基、-OH基、カルボキシル基、カルボキシラート基、および/またはエステル基からなる群より選択される、少なくとも1つの基とを含む。
【0025】
例としては、前記モノマーは、アクリリックモノマー、例えばアクリル酸、メタクリリックモノマー、アクリレートモノマー(およびさらに特定的には、アルキルアクリレートモノマー)、メタクリレートモノマー(およびさらに特定的には、アルキルメタクリレートモノマー)、アクリルアミドモノマー、ビス(アクリルアミド)モノマー、エポキシドモノマー、およびそれらの混合物から選択され得る。
【0026】
工程a)の間に、例えば、上記に述べたタイプの、単一モノマーまたはモノマーの混合物が添加され得る。
【0027】
これがモノマーの混合物を必要とする場合、モノマーは、より正確には単一の重合性の基を含んでいるモノマー、例えば、アクリル酸などのアクリリックモノマー、またはアクリルアミドなどのアクリルアミドモノマーと、および2つの重合性の基を含んでいるモノマー、例えば、ビス(アクリルアミド)モノマーとから構成され得、後者は、架橋剤の役割を確実にする2つの重合性の基の存在に起因する。指標として、モノマーの混合物は:
-アクリル酸およびN,N’-メチレン-ビス(アクリルアミド);または
-アクリルアミドおよびN,N’-メチレン-ビス(アクリルアミド)
から構成され得る。
【0028】
所望の重合(例えば、ラジカル重合、または重縮合などの工程における重合)に従ってモノマーの選択を指示し得る上記に述べた特徴の他に、別の基準が、後にゲルを形成するために工程a)の間に添加されるべきモノマーの選択を支配し得る。
【0029】
これらの基準の中でも、以下が挙げられ得る:
-求められた最終産物、すなわち粉末、の物理-化学的特性、例えば、形態、微細構造、アグロメレーションの速度;
-モノマーの重合に由来するゲルについて所望される粘度であり、粘度の概念が、実施される方法の特性による選択基準となり得る;例えば、得られた低粘度のゲルを容易に収容できる流路を用いる連続法;
-モノマーの毒性、およびモノマーの重合に由来するポリマーの熱分解中のガス発生がないことに関する、Reach規則の遵守;
-モノマーの重合に由来するポリマーの、最終粉末に残留不純物を残すことなく熱処理の工程中に熱分解されるための適性であって、該残留不純物の含量が、圧縮物体の形態にある粉末の後の処理(特に、成形/焼結/高密度化の工程)にとり致命的となり得ること;
-それらの入手し易さおよびそれらのコスト。
【0030】
ある場合には、工程a)の間に添加されるモノマーはまた、当然ながら、モノマーが、イットリウム、アルミニウム、および/または任意でもう一つの元素を錯化し得る基を含むという備えによって、イットリウム、アルミニウム、および/または溶液中に存在するもう一つの元素の、錯化剤の役割も果たし得る。
【0031】
さらに、ポリエーテルファミリーからの少なくとも1つのポリマーが、溶液に添加される。
【0032】
用いたポリエーテルは、それらの、名前によれば、少なくとも1つのエーテル反復単位を含むが、そのことは、それらがさらに、エーテル官能基以外の有機官能基を含む別のタイプの反復単位を含有することを排除するものではない。さらに、これは直鎖または分枝したポリエーテルを伴い得る。
【0033】
特に、前記ポリエーテルは、少なくとも2つの別個のエーテル反復単位を含み得、かつより具体的には、ポロキサマーファミリーに属し得る。
【0034】
工程a)において使用されたポリエーテルがポロキサマーに相当する場合、このことは、それらが、エチレンオキシド反復単位およびプロピレンオキシド反復単位である、2つの別個のエーテル反復単位を含むことを意味する。さらになお具体的には、これは、ポリプロピレングリコール(ポリ(プロピレンオキシド)とも称される)の中央ブロックと、ポリエチレングリコール(またポリ(エチレンオキシド)とも称される)の2つの末端ブロックとを含む、トリブロックポリマーであってもよく、このトリブロックポリマーは、ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキシド-b-エチレンオキシド)と称され得る。本発明の枠組み内で使用可能なポロキサマーは、プルロニック(Pluronic(登録商標))の名称で市販されているポロキサマーである(例えば、プルロニック(登録商標)P123およびプルロニック(登録商標)L35)。
【0035】
さらに、前記溶液に対し、好ましくは前記モノマーの添加に先立ち、イットリウム、アルミニウム、および/または任意で前記溶液中に存在する別の1つの元素の、少なくとも1つの錯化剤を添加することが可能であり、前記錯化剤は、工程a)の前記モノマーとは異なり、この薬剤の役割は、錯化に加えて、ゲル化工程の実施に先立ち、イットリウム、アルミニウム、および/または任意でもう一つの元素の沈殿現象を防止することであり得る。
【0036】
「錯化剤」が、イットリウム、アルミニウム、および/または任意で前記溶液中に存在するもう1つの元素を錯体化することが可能な少なくとも1つの官能基を含む化合物を意味することが明記され、そのことは、言い換えれば、この薬剤と接触しているイットリウム、アルミニウム、および/または任意でもう1つの元素が、この基に存在するヘテロ原子の遊離ダブレットを、および/またはこの基に存在するヘテロ原子によって運ばれた負荷電を、イットリウム、アルミニウム、および/または、任意でもう1つの元素の、空の軌道と共有することで条件付けられた、配位結合を形成することにより、前述の官能基に結合できることを意味する。
【0037】
フリーダブレットをもつ前記ヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子、および後者の組合せであってもよく、かかるヘテロ原子を含んでいる官能基は、アルコール基(すなわち、-OH基)、アミン基、エーテル基、エステル基(すなわち、-COO-基)、スルホニル基(すなわち、-SO-基)、カルボキシル基、カルボキシレート基、および/またはホスフェート基であることができる。
【0038】
錯化剤の例としては、以下が挙げられる:
-少なくとも1つのカルボキシル基を含む化合物、例えばクエン酸;
-少なくとも1つのアミン基を含む化合物、例えば尿素;
-少なくとも1つのアミン基および少なくとも1つのカルボキシル基を含む化合物、例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸化合物を示す略語)、またはDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸化合物を示す略語)。
【0039】
モノマー、ポリエーテル、および任意で錯化剤を添加した後、本発明の方法は、工程a)に由来する溶液を、この工程の間に添加されたモノマーの重合によってゲル化する工程を含み、これによりゲルが形成され、イットリウム、アルミニウム、および任意でもう1つの元素を、錯化されたかまたはされない形態で含む溶液(モノマーが少なくとも1つの錯化基を含むか、または錯化剤の添加に先立ちそれが実施されたかによる)をトラップする。
【0040】
a)において添加された前記モノマーの前記重合を開始するために、いくつかの経路が考られ得る:
-前記重合を開始する目的で前記溶液を加熱すること、および結果として、ゲル化することで構成される、熱経路(それ故この工程は、熱-ゲル化と見なされ得る);
-また前記重合を開始する目的で、前記溶液をUV照射に供することで構成される経路;-また前記重合を開始する目的で、前記溶液をγ照射に供することで構成される経路;
-例えば、過酸化水素水、または過酸化水素水/アスコルビン酸混合物などの重合開始剤を、前記溶液に添加することで構成される経路。
【0041】
重合開始剤を溶液に添加することで構成される経路と組合された熱経路などの、これらの様々な経路の組合せが使用可能であることは除外されていない。
【0042】
ひとたびゲルが得られれば、それは、例えば30と300℃の間に含まれる温度において、脱水の工程に供され、それによりキセロゲルが形成され(すなわち、その骨格が先行する工程において形成されたポリマーの形状をなす、乾燥した多孔質材料)、かつ同時に、脱水の結果生じた炭素マトリックス中に、イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素のカチオンの沈殿(例えば、硝酸塩または炭酸塩の形態での)、が形成される。
【0043】
この脱水の工程は、前記ゲルをオーブン内または電子レンジ内に置くことにより実施され得る。
【0044】
最後に、キセロゲルは、本発明の方法の粉末目的物を得るために、工程c)で得られたキセロゲルの熱処理の工程に供される。
【0045】
この熱処理の工程は、酸化雰囲気下のか焼操作で構成されてもよく、その間にキセロゲルの有機材料は、熱的に分解され(その操作は、それ故、部分的に脱バインディングとしてみなされ得る)、イットリウム、アルミニウム、および任意でもう1つの元素の塩(例えば、硝酸塩)が、イットリウム、アルミニウム、および任意でもう1つの元素の酸化物に変換される。か焼の温度および継続時間の選択は、キセロゲルの性質と、酸化物または酸化物の最終混合物について所望される物理-化学的特性とに従って設定される。か焼温度は、典型的には400と1900℃の間、およびより特定的には500と1200℃の間を含む。この操作は、キセロゲルを形成する材料の熱分解により、主としてCO、CO、およびHOのガス状の放出を生じる結果となるが、しかしか焼雰囲気の性質により、異なるガスが異なる量で発生され得る。塩、例えば硝酸塩については、それらは熱的に酸化物へ変換され、かつそれらの性質に従って相互作用して、部分的または完全な固溶体を形成し得る。
【0046】
熱処理d)の工程は、得られたキセロゲルを粉末に変形させるような方法で前記キセロゲルを粉砕する工程によって先行され、それ故熱処理の工程が、粉砕の工程に由来する粉末の上に展開するようにしてもよい。
【0047】
上記で述べた酸化雰囲気下でのか焼操作の後、得られた粉末は、圧縮物体の形態に成形する後の工程に粉末を適合させる目的で、1つ以上の特別な処理操作に供されてもよい。これ、およびこれらの特別な処理操作は、粉砕、造粒、デアグロメレーション、水溶液または有機溶液中の分散で構成されてもよい。例えば、デアグロメレーション操作には、粉末は三シリンダグラインダを用いて懸濁物の状態にされてもよい。
【0048】
本発明の方法の終わりに得られた粉末は、イットリウム、アルミニウム、および任意で少なくとも1つの別の元素の酸化物をベースとする粉末であり、より具体的には、YAl12粉末であり得、イットリウムは任意で、部分的に別の元素、例えばカルシウム、セリウム、ガドリニウム、ネオジウム、ユウロピウム、テルビウム、レニウム、ホルミウム、イッテルビウム、サマリウム、および/またはジスプロシウムにより置換され得、またアルミニウムは、任意で、部分的に、別の元素、例えばクロムおよびマグネシウムにより置換され得る。さらに具体的には、これはYAl12粉末であり得、イットリウムは、部分的に、カルシウムにより置換され、またアルミニウムは、部分的に、クロムにより置換され、カルシウムは、クロムを正しい酸化状態(すなわち、酸化状態(+IV))に安定化させるために用いられ、このタイプの例は、Y2,994Ca0,006Al4,995Cr0,00512である。
【0049】
本発明の方法の終わりに得られた粉末は、YAl12粉末であり得、アルミニウムは、部分的に、クロムおよびマグネシウムにより置換され、マグネシウムは、クロムを正しい酸化状態(すなわち、酸化状態(+IV))に安定化させるために用いられ、このタイプの例は、YAl4,995Mg0,01Cr0,00512である。
【0050】
本発明の方法によって得られた粉末は、非常に活性のある組成物であり、例えば光学分野において使用可能な圧縮物体を得るのに特に適している。
【0051】
したがって、本発明はまた、圧縮物体を、例えばペレットの形態で調製するための方法であって:
e) 上記に定義されたような前記調製のための方法を実施する工程;
f) e)で得られた前記粉末を圧縮する工程、
を含む、該方法にも関する。
【0052】
したがって、本発明の方法によって得られた粉末は、そのままで使用可能であるが、圧縮の工程に先立ち、事前の処理操作、例えば、上記に明記されたような粉砕、造粒、噴霧などの操作を受けるために供されることは除外されない。
【0053】
圧縮の工程は、プレスにより実施され得、これは、その形が圧縮物体について所望される形状に相当する形状の、鋳型内に置かれたた組成物に圧力を適用するものである。
【0054】
本発明の方法により得られた粉末はまた、圧縮物体の調製のために使用可能な懸濁物またはペーストの調製にも適用され得る。
【0055】
それ故、本発明はまた、圧縮物体を、調製するための方法であって:
g) 上記に定義されたような前記調製のための方法を実施する工程;
h) g)で得られた前記粉末から懸濁物またはペーストを形成する工程;
i) h)で調製された前記懸濁物または前記ペーストから、前記圧縮物体を形成する工程、
を含む、該方法にも関する。
【0056】
前記懸濁物または前記ペーストを形成する工程は、前記粉末を、添加剤(例えば、結合剤、可塑剤、分散剤、潤滑剤、湿潤剤、消泡剤)の存在下または存在無しで、水性溶媒または有機溶媒と接触させることにより実施され得る。
【0057】
前記圧縮物体を前記懸濁物からまたは前記ペーストから形成する工程は、種々の技術、例えば、通気性鋳型における鋳造、真空または圧力鋳造、鋳造-ゲル化、押出し、または射出により実施可能である。
【0058】
本発明の他の特徴および利点は、本発明による粉末調製の実施例に関連した以下の補足的記載から明らかとなるであろう。
【0059】
当然ながら、この補足的記載は、本発明の例示のみを目的として示され、何ら本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】先行技術の方法に従うポリアクリルアミド経路により取得された粉末の、反射電子を用いた走査電子顕微鏡によって得られた2つの写真を(2つの異なるスケール、200μmおよび50μmで)示す図である。
図2-3】実施例1において取得された粉末の、反射電子を用いた走査電子顕微鏡によって得られた2つの写真を示す図である。
図4】実施例2において取得された粉末の、反射電子を用いた走査電子顕微鏡によって得られた写真を示す図である。
図5】実施例3において取得された粉末の、反射電子を用いた走査電子顕微鏡によって得られた写真を示す図である。
図6】比較実施例1において得られた生成物の、反射電子を用いた走査電子顕微鏡によって得られた写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
(実施例1)
この実施例においては、式YAl4,985Mg0,01Cr0,00512を有する粉末が調製される。
【0062】
これを行うため、第1の工程において、70mLの超純水溶液に対し、順に、30mLのプルロニック(登録商標)P123、8,4916gのクエン酸一水和物、5,2581gの硝酸イットリウム四水和物(Y(NO.4HO)、9,4457gの硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO.9HO)、7.5mgの硝酸マグネシウム(Mg(NO)、および10,1mgの硝酸クロム九水和物(Cr(NO.9HO)を添加する。混合物を、攪拌下に溶液が透明になるまで維持して、固体を完全に溶解させる。第2の工程において、30mLのアクリル酸溶液に、3.0001gのN,N’-メチレン-ビス(アクリルアミド)を攪拌下に添加して、得られた溶液が透明になるまで攪拌する。これらの2つの溶液を、次に60℃に加熱する。アクリル酸を含んでいる溶液を、カチオンを含有する水溶液へ添加する。溶液が添加されれば、温度を100℃に上昇させる。この値が達成されれば、すぐに溶液は塊になりゲル化する。次にゲルを150℃のオーブン内に20時間置いて、脱水されるようにする。オーブン内でのそれらの経過が完了すれば、キセロゲルが得られる。キセロゲルは、500℃のオーブン内に8時間、次いで900℃で2時間にわたり配置されるのに先立ち、粉砕される。オーブンの出口において、X線回折図の後に、YAl4,985Mg0,01Cr0,00512の単相粉末が得られる。この粉末の形態は、反射電子を用いた走査電子顕微鏡によって撮られた写真を示す図2に示されるように、アグロメレートの形態を有しており、それは、プルロニック添加剤を用いないこのタイプの合成の間に通常得られるもの(2Dアグロメレート)とは異なっている。
【0063】
得られた粉末を、次にポリエチレングリコール(PEG)の存在下に懸濁物の状態にし、そして形成された混合物を、三シリンダグラインダを通過させる。粉砕/デアグロメレーションの後、粉末+PEG系は、PEGを除去する目的で、空気下で600℃において熱処理される。かくて、反射電子を用いた走査電子顕微鏡によって撮られた写真を示す図3に示されるように、単分散粒度分布をもつ3D粉末が得られる。
【0064】
(実施例2)
この実施例においては、式Y2,994Ca0,006Al4,995Cr0,00512を有する粉末が調製される。
【0065】
これを行うため、第1の工程において、70mLの超純水溶液に対し、順に、30mLのプルロニック(登録商標)L35、8,4914gのクエン酸一水和物、5,2474gの硝酸イットリウム四水和物(Y(NO.4HO)、9,4629gの硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO.9HO)、7,1mgの硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO.4HO)、および10,2mgの硝酸クロム九水和物(Cr(NO.9HO)を添加する。得られた混合物を、攪拌下に溶液が透明になるまで維持して、固体を完全に溶解させる。第2の工程において、30mLのアクリル酸溶液に、3,0001gのN,N’-メチレン-ビス(アクリルアミド)を攪拌下に添加して、得られた溶液が透明になるまで攪拌する。これらの2つの溶液を、次に60℃に加熱する。アクリル酸を含んでいる溶液を、カチオンを含有する水溶液へ添加する。溶液が添加されれば、温度を100℃に上昇させる。この値が達成されれば、すぐに溶液は塊になりゲル化する。次にゲルを150℃のオーブン内に20時間置いて、脱水されるようにする。オーブン内でのそれらの経過が完了すれば、キセロゲルが得られる。
【0066】
キセロゲルは、500℃のオーブン内に8時間、次いで900℃で2時間にわたり配置されるのに先立ち、粉砕される。オーブンの出口において、X線回折図の後に、Y2,994Ca0,006Al4,995Cr0,00512の単相粉末が得られる。この粉末の形態は、反射電子を用いた走査電子顕微鏡によって撮られた写真を示す図4に示されるように、アグロメレート3Dの形態を有する。
【0067】
(実施例3)
この実施例においては、式Y2,994Ca0,006Al4,995Cr0,00512を有する粉末が調製される。
【0068】
これを行うため、第1の工程において、70mLの超純水溶液に対し、順に、30mLのプルロニック(登録商標)P123、8.4916gのクエン酸一水和物、5.2474gの硝酸イットリウム四水和物(Y(NO.4HO)、9.4629gの硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO.9HO)、7.1mgの硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO.4HO)、および10,2mgの硝酸クロム九水和物(Cr(NO.9HO)を添加する。得られた混合物を、攪拌下に溶液が透明になるまで維持して、固体を完全に溶解させる。第2の工程において、50℃にされた30mLの水溶液に、21gのアクリルアミドを、次いで2.1gのN,N’-メチレン-ビス(アクリルアミド)を添加する。この溶液を、攪拌下に溶液が透明になるまで維持する。
【0069】
アクリルアミドを含んでいる溶液を、カチオンを含有する水溶液へ添加する。溶液が添加されれば、温度を100℃に上昇させる。この値が達成されれば、テトラエチレンジアミンおよび過酸化水素水を添加して反応を開始する。すぐに溶液は塊になりゲル化する。得られたゲルを、周囲温度に達するまで静置する。次いで、それを150℃のオーブン内に20時間置いて、脱水されるようにする。オーブン内でのそれらの経過が完了すれば、キセロゲルが得られる。
【0070】
キセロゲルは、500℃のオーブン内に8時間、次いで900℃で2時間にわたり配置されるのに先立ち、粉砕される。オーブンの出口において、X線回折図の後に、Y2,994Ca0,006Al4,995Cr0,00512の粉末が得られる。この粉末の形態は、反射電子を用いた走査電子顕微鏡によって撮られた写真を示す図5に示されるように、アグロメレート3Dの形態を有する。
【0071】
(比較実施例1)
この実施例は、プルロニック(登録商標)P123が添加されないことを除いて、上記の実施例3のものと同様の条件において実施される。
【0072】
より具体的には、第1の工程において、70mLの超純水溶液に対し、順に、8.4916gのクエン酸一水和物、5.2474gの硝酸イットリウム四水和物(Y(NO.4HO)、9,4629gの硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO.9HO)、7.1mgの硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO.4HO)、および10.2mgの硝酸クロム九水和物(Cr(NO.9HO)を添加する。得られた混合物を、攪拌下に溶液が透明になるまで維持して、固体を完全に溶解させる。第2の工程において、50℃にされた30mLの水溶液に、21gのアクリルアミドを、次いで2.1gのN,N’-メチレン-ビス(アクリルアミド)を添加する。この溶液を、攪拌下に溶液が透明になるまで維持する。
【0073】
アクリルアミドを含んでいる溶液を、カチオンを含有する水溶液へ添加する。溶液が添加されれば、温度を100℃に上昇させる。この値が達成されれば、テトラエチレンジアミンの溶液および過酸化水素水を添加して反応を開始する。すぐに溶液は塊になりゲル化する。得られたゲルを、周囲温度に達するまで静置する。次いで、それを150℃のオーブン内に20時間置いて、脱水されるようにする。オーブン内でのそれらの経過が完了すれば、キセロゲルが得られる。
【0074】
キセロゲルは、500℃のオーブン内に8時間、次いで900℃で2時間にわたり配置されるのに先立ち、粉砕される。オーブンの出口において、X線回折図の後に、Y2,994Ca0,006Al4,995Cr0,00512の粉末が得られる。この粉末の形態は、反射電子を用いた走査電子顕微鏡によって撮られた写真を示す図6に示されるように、シートの形態を有する。これらのシートは、特定の処理なしでは形成することが困難であり得る。
【0075】
このことから、プルロニック(登録商標)P123の添加が、得られた粉末の形態を、特別な処理無しで、それらを形成に適合させることによって改善できることが推測され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6