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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ペダル車両用パワートレイン
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/55 20100101AFI20230927BHJP
   B62M 6/70 20100101ALI20230927BHJP
   B62J 45/413 20200101ALI20230927BHJP
   B62J 45/411 20200101ALI20230927BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20230927BHJP
【FI】
B62M6/55
B62M6/70
B62J45/413
B62J45/411
B62J45/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020544945
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019054671
(87)【国際公開番号】W WO2019166402
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】BE2018/5128
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520261817
【氏名又は名称】エドゥ ドリベ エスア
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デレバル,アーサー
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-088134(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052595(US,A1)
【文献】特開2017-132440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/55、 6/70
B62J 45/00-45/423
F16H 3/00- 3/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル車両用のパワートレイン(1)であって、
第1回転軸(30)の周りで回転するように配設されたクランクセット車軸(2)と、
出力伝達チェーンまたはベルト(23)に噛合すると共に、前記第1回転軸(30)の回りで回転するように配設された第1出力プレート(4)と、
入力要素、出力要素、および太陽歯車(5)を含む遊星歯車装置と、
第1モータ(40)と、
第2モータ(50)と、
第1フリーホイール(16)と、
前記遊星歯車装置の出力要素と前記第1出力プレート(4)との間の減速機と
を備え、
前記クランクセット車軸(2)は、前記遊星歯車装置の第1入力を形成するように、前記入力要素を介して前記遊星歯車装置に接続されており、
前記第1モータ(40)は、前記遊星歯車装置の第2入力を形成するように、前記太陽歯車(5)を介して前記遊星歯車装置に接続されており、
前記第2モータ(50)は、固定比で駆動するように、前記遊星歯車装置の出力要素に接続されている、ペダル車両用のパワートレインにおいて、
前記入力要素、前記出力要素、および前記太陽歯車(5)は、前記第1回転軸(30)とは異なる第2回転軸(31)の周りで回転するように配設されていること、
前記第1フリーホイール(16)は、前記クランクセット車軸(2)が通常のペダリング方向に回転するときに前記第1出力プレート(4)が前記クランクセット車軸(2)よりも低速で回転するのを防ぐべく設けられていること、並びに、
以下の不等式を満たすように構成されていること、
【数1】
ここで、
Rは、前記遊星歯車装置の比、
out は、前記出力要素と前記第1出力プレート(4)との間の減速比、
は、前記クランクセット車軸(2)と前記入力要素との間のギア比、
であることを特徴とする、パワートレイン。
【請求項2】
前記2つのモータ(40,50)のうちの少なくとも1つが内部永久磁石モータである、請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項3】
前記入力要素が前記クランクセット車軸(2)よりも高速で回転するように、前記クランクセット車軸(2)と前記遊星歯車装置の入力要素との間にシフトダウンシステムを備える、請求項1又は2に記載のパワートレイン。
【請求項4】
前記シフトダウンシステムは、変形可能な伝達要素を含む、請求項3に記載のパワートレイン。
【請求項5】
前記遊星歯車装置の出力要素と前記第1出力プレート(4)との間の前記減速機は、前記出力伝達チェーンまたはベルト(23)に噛合した第2出力プレート(26)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のパワートレイン。
【請求項6】
前記第2出力プレート(26)は、前記遊星歯車装置の出力要素と一体である、請求項5に記載のパワートレイン。
【請求項7】
前記第2出力プレート(26)は、前記第1出力プレート(4)よりも小さい直径を有する、請求項5又は6に記載のパワートレイン。
【請求項8】
前記クランクセット車軸(2)が前記通常のペダリング方向に回転するときに前記クランクセット車軸(2)が前記入力要素を駆動するように、及び、前記クランクセット車軸(2)が前記通常のペダリング方向と反対の方向に回転するときに前記クランクセット車軸(2)が前記入力要素を駆動するのを防ぐように、前記クランクセット車軸(2)と前記遊星歯車装置の入力要素との間に配設された第2フリーホイール(17)を更に備えてなる、請求項1~7のいずれか一項に記載のパワートレイン。
【請求項9】
前記入力要素は前記遊星歯車装置の遊星キャリア(6)であり、前記出力要素は前記遊星歯車装置のリング歯車(9)である、請求項1~8のいずれか一項に記載のパワートレイン。
【請求項10】
前記入力要素は前記遊星歯車装置のリング歯車(9)であり、前記出力要素は前記遊星歯車装置の遊星キャリア(6)である、請求項1~8のいずれか一項に記載のパワートレイン。
【請求項11】
前記第1モータ(40)は速度または位置が制御されるように構成され、前記第2モータ(50)はトルクまたは電流が制御されるように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のパワートレイン。
【請求項12】
前記第1モータ(40)は、前記遊星歯車装置の入力要素の測定速度および前記パワートレインの歯車係数パラメータ(GC)に基づいて決定される速度設定点によって、速度または位置が制御されるように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のパワートレイン。
【請求項13】
前記第2モータ(50)は、前記第1モータ(40)上で測定されたトルクまたは電流およびアシスト率パラメータ(AR)に少なくとも基づいて決定されるトルク設定点によって、トルクまたは電流が制御されるように構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のパワートレイン。
【請求項14】
前記第2モータ(50)は、前記第1モータ(40)上で測定された電流のフィルタリングおよび/または時間シフトの結果に比例するトルク設定点によって、トルクまたは電流が制御されるように構成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載のパワートレイン。
【請求項15】
前記第1モータ(40)は、前記遊星歯車装置の入力要素の速度に基づいて決定される速度設定点によって、速度または位置が制御されるように構成されており、この速度は、前記第1モータ(40)の測定速度および前記第2モータ(50)の測定速度に基づいて決定される、請求項1~14のいずれか一項に記載のパワートレイン。
【請求項16】
前記第1モータ(40)および第2モータ(50)のうちの少なくとも1つが前記クランクセット車軸(2)を作動させることなく動作できるように、構成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載のパワートレイン。
【請求項17】
前記2つのモータのうちの少なくとも1つが、前記第1出力プレート(4)および前記遊星歯車装置を介して前記出力伝達チェーンまたはベルト(23)によって駆動されることにより発電機として動作することができるように、構成されている、請求項1~16のいずれか一項に記載のパワートレイン。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)と、出力伝達チェーンまたはベルト(23)とを備えたペダル車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダル車両用パワートレインに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2008-285069号)は、クランクセットを含むペダル車両用パワートレインを開示している。パワートレインは、第1および第2モータと、出力プレートと、クランクセット車軸と、遊星歯車装置とを含む。第1モータは、遊星歯車装置の太陽歯車に接続されている。第2モータは、遊星歯車装置の出力要素に接続されている。クランクセット車軸は、遊星歯車装置の入力要素に接続されている。第1モータ、出力プレート、クランクセット車軸、および遊星歯車装置は、同じ回転軸の周りで回転する。このパワートレインは、入力要素をクランクセット車軸に接続するフリーホイールをさらに含む。出力プレートは、後輪を駆動するチェーンを駆動して、ペダル車両を前方に移動させる。
【0003】
この既知のパワートレインでは、モータに電力が供給されない場合、クランクセット車軸と出力プレートとの間の結合は行われず、こうしてペダルを漕いでいる間に自転車が前方に移動するのを防ぐ。電気または電子回路が故障した場合、サイクリスト(自転車の搭乗者)は自転車を漕いで家に帰ることができなくなる。加えて、発進または上り坂走行の場合、サイクリストによって提供されるトルクが高く、変速機を滑らせて、不快な乗り心地になる可能性がある。加えて、アシストなしモードで低速で走行するとき、またはバッテリが空の場合、2つのモータのうちの1つは、他方のモータに電力供給するための発電機として動作しなければならなくなる。サイクリストからの動力の大部分はこの低効率パワーパスを通るので、ペダリングを特に困難にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-285069号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の目的は、電源がなくても全ての動作条件下で優れた効率を提供することができるパワートレインを提供することである。本発明の第2の目的は、変速機が滑らず、こうして走行をより快適にするパワートレインを提供することである。
この目的のために、本発明は、ペダル車両用パワートレインであって、
・第1回転軸の周りで回転するように配置されたクランクセット車軸と、
・出力伝達チェーンまたはベルトに噛合し、第1回転軸の周りで回転するように配置された、第1出力プレートと、
・入力要素、出力要素、および太陽歯車を含む遊星歯車装置と、
・第1モータと、
・第2モータと、
・第1フリーホイールと、
・遊星歯車装置の出力要素と第1出力プレートとの間の減速機と
を備え、
クランクセット車軸は、遊星歯車装置の第1入力を形成するように、入力要素を介して遊星歯車装置に接続されており、
第1モータは、遊星歯車装置の第2入力を形成するように、太陽歯車を介して遊星歯車装置に接続されており、
第2モータは、固定比で駆動するように、遊星歯車装置の出力要素に接続されている、ペダル車両用パワートレインにおいて、
・入力要素、出力要素、および太陽歯車は、第1回転軸とは異なる第2回転軸の周りで回転するように配置されていること、並びに、
・第1フリーホイールは、クランクセット車軸が通常のペダリング方向に回転するときに第1出力プレートがクランクセット車軸よりも低速で回転するのを防ぐように配置されていること、
を特徴とする、パワートレイン。
【0006】
通常のペダリング方向で第1出力プレートがクランクセット車軸よりも低速で回転するのを防ぐように配置された第1フリーホイールの配置により、クランクセット車軸は、クランクセットの車軸の回転速度が第1出力プレートの回転速度を超過したときに第1出力プレートを駆動する。これにより、クランクセットは、バッテリが空のとき、モータが動作していないとき、またはサイクリストのトルクが過剰なときに、第1出力プレートを駆動できる。すると、クランクセット車軸と第1出力プレートとの間で滑りのない純粋な機械駆動ができ、これにより動力損失を低減し、こうして高い機械効率を可能にする。加えて、これにより、高クランクセットトルクの場合に、遊星歯車装置およびその他のパワートレイン伝達部品に対する応力を低減する。
【0007】
本発明による第1フリーホイールの配置のさらなる利点は、モータを制御不可能にする電気的または電子的故障の場合でも、クランクセットから出力プレートへの動力の伝達が依然として可能なことである。したがって、サイクリストはペダルを漕いで帰宅することができる。
【0008】
一般に、本発明によるパワートレインは、特定の具体的状況において、遊星歯車装置を介した伝達からフリーホイールを介した伝達に引き継がせる。これは特に、第1モータ(太陽歯車に接続されているもの)の制御における待ち時間および後者のトルク制限により、サイクリストがクランクセットにおいて大量のトルクを提供するとき(たとえば、発進または上り坂走行のとき)に行われる。
【0009】
クランクセットに対する瞬間トルクが特定の閾値を超過し、第1モータがその最大トルクで飽和した場合でも、第1出力プレートはいくらかの動力を伝達し得る。こうしてペダルを踏んでいる期間、パワートレイン速度比の瞬間値は低下し、たとえばプログラムされた速度比が低い場合、第1フリーホイールが第1出力プレートを作動および駆動し始めてもよく、するとこれにより、サイクリストの過剰なトルクを出力伝達チェーンまたはベルトに伝達する。パワーアシストが起動しているときに行われ得るこれが行われると、伝達チェーンは、遊星歯車装置の出力要素およびクランクセット車軸からトルクを受け取る。こうして、第1出力プレートおよび第1フリーホイールの存在により、パワートレイン速度比が1未満になることを防止する。したがって、フリーホイールは、変速機が滑るのを防ぐために、急な上り坂の道路では特に有用である。
【0010】
第1フリーホイールは、クランクセット車軸から第1出力プレートへの機械的動力伝達を可能にするように配置されている。好ましくは、第1フリーホイールは第1回転軸と同軸である。第1フリーホイールは好ましくは、クランクセット車軸と第1出力プレートとの間に直接配置される。第1フリーホイールの係止位置で、クランクセット車軸は第1出力プレートを直接駆動する。第1フリーホイールの自由位置で、第1出力プレートはクランクセット車軸よりも高速で回転することができる。
【0011】
第1フリーホイールは、RVgmpパワートレインの速度比を常に1よりも高くすることができる。
【0012】
遊星歯車装置の出力要素と第1出力プレートとの間の減速機は、第1出力プレートが遊星歯車装置の出力要素よりも低速で回転することを可能にする。この減速機は、特に第2出力プレートを含む場合に、部分的にパワートレインのケーシングの外側にあってもよい。
【0013】
この文献(の目的)において、通常のペダリング方向は、ペダル車両の前方移動に対応する、クランクセットの車軸の回転方向である。パワートレイン内の結合のため、パワートレインの要素は好ましくは、この通常のペダリング方向に対応する回転方向を各々有する。
【0014】
この文献(の目的)において、2つの接続または連結要素は、直接または間接的に接続または連結され得る。これらはたとえば、少なくとも1つの中間歯車、ベルト、および/またはローラを介して、直接または間接的に噛合し得る。
【0015】
この文献(の目的)において、「入力」および「出力」という用語は、運動学的連鎖における入力および出力を意味すると理解される。入力は好ましくは機械的動力入力であり、出力は好ましくは機械的動力出力である。
【0016】
この文献(の目的)において、遊星歯車装置の比は、遊星歯車装置の減速比である。単一の遊星歯車を有する遊星歯車装置の場合、これは太陽歯車の直径に対するリング歯車の直径の比である。ここでの遊星歯車装置の比は、好ましくは5から10の間である。
【0017】
この文献(の目的)において、ペダル車両は、たとえば、電動自転車、モペット、または三輪車である。この文献(の目的)において、電動アシスト自転車は、自転車の特定の速度閾値を超えると電動アシストのスイッチを切る必要がある電動自転車である。
【0018】
この文献(の目的)において、「パワートレインの速度比」は、クランクセットの車軸の速度に対する第1出力プレートの速度の比として定義される。これは「歯車係数パラメータ」とも呼ばれ得る。これは、制御インターフェースを介してサイクリストによって手動で制御され得る、または他のパラメータに基づいて制御ユニットによって自動で計算され得るパラメータである。
【0019】
この文献(の目的)において、「回転軸の周りで回転するように配置された」要素は、好ましくは、その軸の周りで本質的に対称な要素である。
【0020】
この文献(の目的)において、2つの物体の間の「固定比」は、それらの回転速度の比が一定であることを意味する。たとえば、第2モータのロータは、固定比で遊星歯車装置の出力要素を駆動する。
【0021】
この文献(の目的)において、「パワートレインのアシスト率」ARは、サイクリストによって与えられた動力に対する出力で回収された全動力の割合を指す。これは、モータおよびサイクリストの動力の両方からの動力の和をサイクリストの動力で割ったものとして計算できる。これはまた、「アシスト率パラメータ」と呼ぶこともできる。これは、制御インターフェースを介してサイクリストによって手動で制御され得る、または他のパラメータに基づいて制御ユニットによって自動で計算され得るパラメータである。
【0022】
この文献(の目的)において、角度位置測定は、角速度測定と同等である。実際、本発明によるパワートレインは、好ましくは、モータのうちの1つの角度位置からこのモータの角速度を決定するための手段を含む。
【0023】
この文献(の目的)において、電流測定は、トルク測定と同等である。実際、本発明によるパワートレインは、好ましくは、モータのうちの1つに供給される電流からこのモータのトルクを決定するための手段を含む。
【0024】
パワートレインは、「通常アシスト動作モード」と呼ばれ得る動作のモードを有し、このモードでは第1フリーホイールは非停止であり、サイクリストの動力の全てが遊星歯車装置を通ると暗示していることに、注目したい。この動作のモードは、電動自転車を使用するライダーによって最も頻繁に使用されるものである。
【0025】
第1出力プレートは、ペダル車両の後輪を直接または間接的に駆動する伝達チェーンまたはベルトと直接または間接的に噛合する。
【0026】
遊星歯車装置は、リング歯車、遊星キャリア、および太陽歯車を含む。遊星キャリアは、遊星歯車を含む。太陽歯車は、内部太陽歯車または太陽とも呼ばれ得る。リング歯車は、外部太陽歯車とも呼ばれ得る。太陽歯車およびリング歯車は、好ましくは遊星歯車を介して接続されている。
【0027】
好ましくは、パワートレインは、両方のモータを制御するための制御ユニットを含む。
【0028】
本発明の一実施形態では、第1モータの役割は、パワートレインの速度比を制御することである。パワートレインの速度比RVgmpは、クランクセットの車軸の角速度と第1出力プレートの角速度との比である。たとえば、パワートレインの速度比は、サイクリストによって提供される歯車係数(GC)パラメータに基づいて決定でき、またはサイクリストに自動速度変更を提供するために制御ユニットによって決定できる。この決定は、たとえば、変速アルゴリズムによって実行することができる。第1モータは、たとえば、角度位置または角速度の設定点が適合するように第1モータを制御する制御ユニットを介して、角度位置または角速度が制御される。
【0029】
本発明の一実施形態では、第2モータの役割は、パワートレインのアシスト率を管理することである。その機能の1つは、遊星歯車装置の出力要素に対してトルクを加算または減算することによってサイクリストの動きをアシストすることである。好ましくは、アシスト率ARは、特にアシスト率パラメータに基づいて、制御ユニットによって決定される。アシスト率パラメータは、ユーザによって、またはパワートレインの制御ユニットによって自動的に、決定することができる。アシスト率は、パワートレインの速度比とは無関係であることが好ましい。第2モータは、好ましくは、たとえば電流またはトルク設定点が適合するように第2モータを制御する制御ユニットを介して、電流またはトルクが制御される。
【0030】
好ましくは、制御ユニットは、第1モータの角度位置の測定要素、第2モータの角度位置の測定要素、第1モータの電流の測定要素、および第2モータの電流の測定要素に電気的に接続されている。
【0031】
2つの値の間には直接的な数学的関係があるので、位置制御と速度制御との間には根本的な違いがないことに注目したい。角速度は、角度位置の時間微分である。たとえば、一定の角速度で動作するようにモータを制御することは、時間と共に直線的に変化する角度位置に追従するようにモータを制御することと似ている。
【0032】
好ましくは、入力要素は遊星歯車装置の遊星キャリアであり、出力要素は遊星歯車装置のリング歯車である。
【0033】
第1および第2モータの制御は、たとえば以下のように実行することができる。
【0034】
自転車後輪の角速度ωは、Rを用いて、第1出力プレートの角速度ωplatに比例する。
【数1】

は、自転車の後輪の角速度と第1出力プレートの角速度との間の伝達比。
【0035】
遊星歯車装置の速度方程式を使用して、次の式で与えられる第1出力プレートの角速度を得ることができる。
【数2】
ここで、Routはリング歯車と第1出力プレートとの間の減速比、Rはクランクセット車軸と遊星キャリアとの間のギア比、ωM1は第1モータの角速度、ωpedはクランクセットの角速度、およびRは遊星歯車装置の比である。
【0036】
この結果は、第1出力プレートの速度がクランクセット車軸の速度と第1モータの速度との加重和であることを示している。これはまた、第1モータの速度を変化させることによってパワートレインの速度比を連続的に変更できることも示している。
【0037】
クランクセットの車軸の角速度は、次の式によって、第1モータの測定角速度ωmes M1および第2モータの測定角速度ωmes M2から決定することができる。
【数3】
ここで、RM2は第2モータとリング歯車との間の減速比である。RM2は、好ましくは5~15の間である。
【0038】
クランクセットの角速度は、クランクセットの車軸の位置を測定する位置センサによって測定することも可能である。
【0039】
制御ユニットは、第1モータに課される角速度設定点ωcons M1を決定するために、歯車係数パラメータGCおよびクランクセットの測定角速度を使用することができる。
【数4】
【0040】
パラメータGCは、負または正のいずれであってもよい。パラメータGCが負の場合、第1モータは、第2モータに電力の全てまたは一部を供給するための発電機として動作する。パラメータGCが正の場合、第1モータはモータとして動作する。
【0041】
また、単純にこの速度設定点ωcons M1の積分である角度位置設定点を割り当てることによって、第1モータの角度位置を制御することも可能である。
【0042】
上記の方程式を組み合わせて、パワートレインの速度比RVgmpの式を得る。
【数5】
【0043】
この式は、パラメータGCとパワートレインの速度比RVgmpとの間にリンクを与える。GCが一定であるとき、パワートレインの速度比は一定である。パラメータGCが高いほど、パワートレインの速度比RVgmpは高くなる。
【0044】
第1フリーホイールが停止しているとき、第1出力プレートの速度ωplatはクランクセットの速度ωpedに等しく、パワートレインの速度比RVgmpは1である。これはRVgmpの最小値である。パワートレインの最小速度比パラメータGCminは、このフリーホイールの位置および寸法値R、Rout、およびRによって決定される。するとこれは(次式に)等しくなる。
【数6】
【0045】
したがって、本発明によるパワートレインは、値R、Rout、およびRの選択に応じて、負のGCminを得ることを可能にし、これにより、第1モータが発電機として動作できるようになる。
【0046】
本発明の実施形態の一例では、Rは8に等しく、Routは1.8に等しく、Rは2.7に等しい。
【0047】
遊星歯車装置のトルク方程式は、この式を与える。
【数7】
ここで、CM1は第1モータのトルク、Ccourはリング歯車のトルク、およびCPSは遊星キャリアのトルクである。
【0048】
したがって、第1モータのトルクCM1は次の式によって与えられる。
【数8】
ここで、Cpedはクランクセットのトルクであり、Cplatは第1出力プレートのトルクである。
【0049】
したがって、次の式のようになる。
【数9】
このように、第1モータで測定したトルクCM1から、クランクセットのトルクCpedを計算することができる。したがって、他のペダル車両用パワートレインの場合のようにトルクセンサを使用する必要はない。
【0050】
たとえば、車両に供給される全動力の、サイクリストによって供給される動力Pcに対する比に等しい、アシスト率パラメータ(AR)を考慮することができる。したがって、パワートレインがサイクリストをアシストするためには、パラメータARは1よりも大きくなくてはならない。パラメータARは、たとえば、サイクリストが電動アシストのスイッチを切ることに決定したときに、1に設定することができる。
【数10】
【0051】
動力が角速度を乗じたトルクに等しいことを考慮に入れると、方程式により、第1モータのトルクCM1に基づいて、所望のアシスト率パラメータに到達するのに十分な第2モータのトルクを決定することができる。
【数11】
従って、Ccons M2は、第2モータに課されたトルクまたは電流設定点である。
【0052】
ARおよびGCの値に応じて、第2モータのトルク設定点は、正(モータ動作)または負(発電機動作)のいずれかとなる。たとえば、第2モータのトルク設定点は、パワートレインが電動アシスト自転車に実装されている場合にサイクリストが25km/h超でペダルを漕ぐことを決定したときに、負となる。実際、欧州の法律は、このタイプの車両では25km/hを超えるアシストの遮断を課している。
【0053】
入力要素が遊星歯車装置のリング歯車であって出力要素が遊星歯車装置の遊星キャリアである本発明の一実施形態についても、同等の展開が記載され得る。結論も同様となる。
【0054】
本発明の一実施形態では、パワートレインは、以下の不等式を満たすように配置(配設)される。
【数12】
ここで、
Rは遊星歯車装置の比、
outは出力要素と第1出力プレートとの間の減速比、および
はクランクセット車軸と入力要素との間のギア比である。
【0055】
これにより、第1モータを発電機として動作させることが可能となる。
【0056】
本発明の一実施形態では、2つのモータのうちの少なくとも1つは、内部永久磁石モータ(inner permanent magnet motor)である。
【0057】
IPMモータは、強磁性体の内部に磁石があるモータである。このようなモータは通常、広範囲の回転速度にわたって優れた効率を有し、これにより、広範囲の回転速度を維持しながら、特に出力に接続された第2モータにおいて、使用することができる。
【0058】
本発明の一実施形態では、パワートレインは、入力要素がクランクセット車軸よりも高速で回転するように、クランクセット車軸と遊星歯車装置の入力要素との間にシフトダウンシステムを含む。
【0059】
本発明の一実施形態では、シフトダウンシステムは、好ましくはノッチのある変形可能な伝達要素、たとえばシフトダウンベルトを含む。
【0060】
本発明の一実施形態では、遊星歯車装置の出力要素と第1出力プレートとの間の減速機は、出力伝達チェーンまたはベルトに噛合した第2出力プレートを含む。
【0061】
したがって、遊星歯車装置の出力要素は、出力伝達チェーンまたはベルトを駆動する第2出力プレートを駆動する。出力伝達チェーンまたはベルトは、第1出力プレートを駆動する。
【0062】
第2出力プレートは、好ましくは直接的に、出力伝達チェーンまたはベルトを駆動する。これにより、パワートレインを特に組み立て易くし、特に軽量でコンパクトにする。加えて、部品点数、ひいては製造コストも削減する。また、特に高いパワートレイン伝達効率を達成することも可能になる。
【0063】
この第2出力プレートは、好ましくは遊星歯車装置の出力要素と一体である。この第2出力プレートは、第1出力プレートのうちの1つよりも小さい直径を有する。
【0064】
本発明の一実施形態では、パワートレインは、クランクセット車軸が通常のペダリング方向に回転するときにクランクセット車軸が入力要素を駆動するように、およびクランクセット車軸が通常のペダリング方向と反対の方向に回転するときにクランクセット車軸が入力要素を駆動するのを防ぐように、クランクセット車軸と遊星歯車装置の入力要素との間に配置された第2フリーホイールを含む。
【0065】
本発明の一実施形態では、第1モータは、速度および位置が制御されるように配置され、第2モータは、トルクおよび電流が制御されるように配置される。
【0066】
本発明の一実施形態では、第1モータは、遊星歯車装置の入力要素の測定速度およびパワートレインの歯車係数パラメータ(GC)に基づいて決定される速度設定点によって、速度または位置が制御されるように配置される。
【0067】
本発明の一実施形態では、第2モータは、第1モータ上で測定された少なくとも1つのトルクまたは電流およびアシスト率パラメータ(AR)に基づいて決定されたトルク設定点によって、トルクまたは電流が制御されるように配置される。
【0068】
本発明の一実施形態では、第2モータは、第1モータ上で測定された電流のフィルタリングおよび/または時間シフトの結果に比例するトルク設定点によって、トルクまたは電流が制御されるように配置される。
【0069】
実際、瞬間的な測定電流Cmes M1を使用する代わりに、第2モータの電流設定点Ccons M2を計算するために測定電流Cmes M1からフィルタリングおよび/またはシフトされた信号を使用することが好ましいこともある。この技術は、たとえば、両方のモータがモータとして動作しており、クランクセットの1回転に対するアシストを平滑化し、ひいてはバッテリからの電力も平滑化したいときに、使用することができる。
【0070】
本発明の一実施形態では、第1モータは、遊星歯車装置の入力要素の速度に基づいて決定された速度設定点によって、速度または位置が制御されるように配置され、この速度は、第1モータの測定速度および第2モータの測定速度に基づいて決定される。
【0071】
本発明の一実施形態では、パワートレインは、第1および第2モータのうちの少なくとも1つがクランクセット車軸を作動させることなく動作できるように、配置される。
【0072】
これにより、クランクセット車軸が制止しているときであっても、自転車を前方に移動させることができる。これはたとえば、ハンドルバーの制御によって行うことができる。このような状況では、ペダリングなしでの電動化が可能であり、たとえば少なくとも第2モータを動作させることができる。好ましくは、この状況では、第1モータは高速駆動していない。
【0073】
本発明の一実施形態では、パワートレインは、2つのモータのうちの少なくとも1つが、第1出力プレートおよび遊星歯車装置を介して出力伝達チェーンまたはベルトによって駆動されることによって発電機として動作することができるように、配置される。
【0074】
これにより、車両を電磁的に制動し、バッテリを再充電することができる。制御ユニットは、好ましくは2つのモータのうちの少なくとも1つを発電機として制御するように設計されている。サイクリストは、彼または彼女が、たとえばハンドルバーの制御を介して、またはペダルの逆漕ぎを介して、バッテリ充電しながらこの制動動作を適用したいことを示すことができる。好ましくは、この状況では、第1モータは高速駆動していない。
【0075】
本発明は、本発明の一実施形態によるパワートレインおよび出力伝達チェーンまたはベルトを含むシステム、たとえばペダル車両を、さらに提供する。
本発明のその他の特徴および利点は、以下の添付図面を参照して理解される、以下の詳細な説明を読めばわかるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本発明の第1の実施形態による可能なパワートレインの概略断面図。
図2】サイクリストの動力に対する第1モータの電力対歯車係数パラメータGCの比の例を表す2つのグラフを示す。
図3】本発明の第2の実施形態による可能なパワートレインの概略断面図。
図4】本発明の第2の実施形態による可能なパワートレインおよびペダル車両の後輪への伝達の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明は、特定の実施形態を用いて図を参照して説明されるが、本発明はこれらによって限定されるものではない。説明される図面または図は、単なる概略であり、限定的ではない。
【0078】
この文献のために、「第1」および「第2」という用語は、異なる要素間で区別するだけのためのものであり、これらの要素間でのいかなる順序も暗示するものではない。
【0079】
図中、同一または類似の要素は同じ参照符号を有し得る。
【0080】
以下の説明は、純粋に説明的な本発明の4つの主要な実施形態を表しており、当業者は、他にも多くのものが存在することを理解するだろう。本発明の実施形態の各々において、パワートレイン1は、同じ回転軸を有するクランクセット車軸2および第1出力プレート4、並びに、入力要素、太陽歯車5および出力要素を含む遊星歯車装置を含む。
【0081】
本発明の第1の実施形態(図1に示す)では、クランクセット車軸2は、回転方向を逆転させる第1の歯車によって入力要素に接続され、出力要素は、やはり回転方向を逆転させる第2の歯車を含む減速機によって第1出力プレートに接続されている。
【0082】
本発明の第2の実施形態(図3に示す)では、クランクセット車軸2は、回転方向を維持する伝達システムによって入力要素に接続され、出力要素は、出力要素と一体であってやはり回転方向を維持する第2出力プレートを含む減速機によって、第1出力プレートに接続されている。この第2出力プレートは、出力伝達チェーンまたはベルトに噛合している。
【0083】
本発明の第3の実施形態(図示せず)では、クランクセット車軸2は、回転方向を維持する第1の伝達システムによって入力要素に接続され、出力要素は、やはり回転方向を維持するベルトによって第1出力プレートに接続されている。好ましくは、本発明のこの第3の実施形態によるパワートレインは、第2出力プレートを含んでいない。
【0084】
本発明の第4の実施形態(図示せず)では、クランクセット車軸2は、回転方向を逆転させる第1の歯車によって入力要素に接続され、出力要素は、第2出力プレートを駆動し、やはり回転方向を逆転させる第2の歯車を含む減速機によって、第1出力プレートに接続されている。
【0085】
本発明の各実施形態は、入力要素が遊星キャリアであって出力要素がリング歯車であることを考慮することによって、または入力要素がリング歯車であって出力要素が遊星キャリアであることを考慮することによって可能となることに、注目したい。
【0086】
図1は、本発明の第1の実施形態によって可能なパワートレイン1を示す。パワートレイン1は、同じ回転軸を有するクランクセット車軸2および第1出力プレート4を含む。この車軸は、第1回転軸30と呼ぶことができる。第1出力プレート4は中空シャフト25に一体に取り付けられており、これはクランクセット車軸2に軸受実装されている。好ましくは、クランクセット車軸2は、2つのクランク18に固定されている。好ましくは、パワートレイン1はケーシング19を含む。
【0087】
第1フリーホイール16は、(自転車を前方に移動させるように)クランクセット車軸2が通常のペダリング方向に作動されたときに第1出力プレート4がクランクセット車軸2よりも低速で回転するのを防ぐように、クランクセット車軸2と中空シャフト25との間に配置される。したがって、第1出力プレート4は、通常のペダリング方向でクランクセット車軸2よりも高速で自由に回転できる。
【0088】
パワートレイン1は、第2回転軸31の回りで回転するように配置された遊星歯車装置を含む。遊星歯車装置は、太陽歯車5、遊星キャリア6、およびリング歯車9を含む。遊星キャリア6は、少なくとも1つの遊星歯車8を含む。(1つまたは複数の)遊星歯車8は、遊星キャリア6の車軸7の回りで回転するように配置されている。(1つまたは複数の)遊星歯車8は、一方では太陽歯車5に、他方ではリング歯車9に、噛合している。
【0089】
リング歯車9は、好ましくは(1つまたは複数の)遊星歯車8に噛合した内歯10を含む。リング歯車9は、第2モータ50のピニオン12に噛合した外歯11も含む。
【0090】
パワートレイン1は、第1モータ40および第2モータ50を含む。第1モータ40は、ステータ46と、好ましくは磁石48を含むロータ47とを含む。ロータ47は、第2回転軸31の回りで回転するように配置されている。ロータ47のトルクは、ロータ47のシャフト43によって太陽歯車5に伝達される。第2モータ50は、ステータ56と、好ましくは磁石58を含むロータ57とを含む。ロータ57は、第3回転軸32の回りで回転するように配置されている。ロータ57のトルクは、ロータ57のシャフト53を通じてピニオン12に優先的に伝達される。
【0091】
好ましくは、第1測定磁石42が第1モータ40のシャフト43の一端に取り付けられ、第2測定磁石52が第2モータ50のシャフト53の一端に取り付けられる。
【0092】
パワーユニット1は、好ましくは制御ユニット、好ましくはマイクロコントローラを含む。たとえば、パワートレイン1は、第1モータ40および第2モータ50に接続されて制御ユニット(図示せず)を含む、電子基板20を含んでもよい。
【0093】
パワートレイン1は、好ましくは、第1モータ40の電流感知要素と第2モータ50の電流測定要素とを含む。
【0094】
好ましくは、第1センサ41は、ほぼ第2回転軸31の軸内で、電子基板20に取り付けられる。第1センサ41および第1測定磁石42は、第1モータ40のロータ47の角度位置測定要素の一部である。
【0095】
好ましくは、第2センサ51は、ほぼ第3回転軸32の軸内で、プリント回路基板20に取り付けられる。第2センサ51および第2測定磁石52は、第2モータ50のロータ57の角度位置測定要素の一部である。
【0096】
ピニオン12は好ましくは、ロータ57と共に回転するように、第2モータ50のロータ57に接続されている。ピニオン12は好ましくは、リング歯車9の外歯11に直接噛合している。ピニオン12は、リング歯車9よりも小さい直径を有しており、その目的はモータの回転速度に対して回転速度を低下させることである。
【0097】
好ましくは、太陽歯車5は、ロータ47と共に回転するように、第1モータ40のロータ47と一体である。
【0098】
好ましくは、パワートレイン1は、クランクセット車軸2と遊星歯車装置の入力要素との間にシフトダウンシステムを含む。このシフトダウンシステムは、たとえば、クランクセット車軸2がその通常のペダリング方向に作動されたときにクランクセット車軸2によって駆動される第1入力ホイール13を含んでもよい。第1入力ホイール13は、第2入力ホイール14を駆動する。第2入力ホイール14は遊星キャリア6を駆動するが、これは図1に示される本発明の実施形態の遊星歯車装置の入力要素である。第1入力ホイール13は、好ましくは、クランクセット車軸2と一体であるか、または任意選択的な第2フリーホイール17によってクランクセット車軸に接続されている。第2入力ホイール14は、好ましくは、遊星キャリア6と一体である。第1入力ホイール13は、第2入力ホイール14よりも大きい直径を有する。
【0099】
第2フリーホイール17の存在により、第2モータ50はクランクセット車軸2を動作させることなくその通常の動作方向に回転できるので、パワートレイン1を制御する上でさらなる柔軟性を許容する。これにより、たとえば、サイクリストがクランクセットを動作させることなく、たとえばハンドルバーの制御を利用して、2つのモータ40、50のうちの少なくとも1つに電力供給することによって電動化を利用することができる。このようにして、ペダル車両は、クランクセット車軸2の回転を伴わずに前方に移動することができる。この特定の動作モードでのモータ制御が、クランクセット車軸2が作動されたときのモータ制御とは異なる可能性があることに、注目したい。
【0100】
第1モータ40、第2モータ50、およびライダーの動力の組み合わせからの動力は、好ましくは、減速機を介して第1出力プレート4に伝達される。図1に示される減速機は、リング歯車9と一体の第1出力ホイール3と、第2出力ホイール15とを含む。第1出力ホイール3は、中空出力シャフト25および第1出力プレート4と一体の、第2出力ホイール15を駆動する。第1出力ホイール3は、第2出力ホイール15よりも小さい直径を有する。
【0101】
図2は、サイクリスト62の動力に対する第1モータの動力対歯車係数パラメータGC61の比の例を表す2つのグラフを示す。パワートレインの速度比範囲は、これら2つのグラフでは同じである。速度比範囲は、パワートレインの最大速度比対パワートレインの最小速度比の比として定義することができる。
【0102】
図2aは、GCminが正になるように遊星歯車装置の比、出力要素と第1出力プレート4との間の減速比、およびクランクセット車軸2と入力要素との間のギア比が選択される、本発明によるパワートレインの実施形態におけるこのようなグラフ63の例である。
【数13】
【0103】
この場合、第1モータ40は、モータ動作に対応する回転方向にのみ、すなわち正の範囲内で動作することができるGCで、回転する。
【0104】
図2bは、GCminが負になるように遊星歯車装置の比、出力要素と第1出力プレート4との間の減速比、およびクランクセット車軸2と入力要素との間のギア比が選択される、本発明によるパワートレインの実施形態におけるこのようなグラフ64の例である。
【数14】
【0105】
この場合、第1モータ40は、モータまたは発電機として動作できるように、両方の回転方向で、すなわち負および正のゾーンで動作できるGCで、回転することができる。
【0106】
なお、第1モータによって供給される動力とライダーによって供給される動力との比PM1/Pがアシスト率ARとは無関係であることに、注意すべきである。したがって、ARが1のとき(AR=Pout/Pc)、これは、パワートレインの出力における動力がサイクリストによって供給される動力に等しい、すなわちサイクリストがアシストされていないことを意味する。この場合、1つのモータによって供給される機械的動力は、他方のモータによって制動されなければならない。この動作モードでは、1つのモータは、他方のモータに電力供給するための発電機として動作する。したがって、2つのモータ間に動力伝達があると言える。ARが1であるこのアシストなしモードは、電動アシスト自転車では25km/hを超えたときに制御ユニットによって強制される。
【0107】
この動作は、第1モータの効率と第2モータの効率との積に等しい大きな損失を生じる。したがって、この低効率パワーパスをたどるサイクリストからの動力の一部(「モータ間の伝達動力」と呼ばれる)を最小限に抑えることは、興味深い。このモータ間の伝達動力は、実際には「PM1/P」の比に等しく、これは図2のグラフの縦座標である。したがって、モータ間の動力伝達の量は、図2bの場合により低くなる。
【0108】
したがって、図2aと図2bとの比較は、図2bの状況が、アシストなしモードでの効率に関して図2aの状況よりも優れていることを示している。
【0109】
M1/P比の低下は、第1モータ40のサイズを縮小することができ、ひいてはパワートレインの重量およびサイズを低減できるという利点も有する。
【0110】
第1モータを発電機として動作させる可能性は、第1フリーホイールの場所、ならびに遊星歯車装置の出力要素と第1出力プレートとの間の減速機および第1および第2回転軸間のオフセットに関連することに、注目したい。このパワートレインの配置により、Routは1と異なり、Rは1と異なる可能性があり、したがって、パワートレインの速度比が最小の純粋に機械的な係止システム(locking system)を有しながら、GCminの任意の値は負となる。
【0111】
図3は、本発明の第2の実施形態によるパワートレイン1を示す。本発明の第2の実施形態では、クランクセット車軸2と遊星歯車装置の入力要素との間の伝達システムが回転方向を維持する。これは、好ましくはノッチ付きベルト21を含む。
【0112】
回転方向を維持する伝達システムは、たとえば、変形可能な伝達要素、二重歯車段、又は、ギアホイールの1つが内歯を有する歯車(ギア)であってもよく、これは、これらの伝達システムの各々において、入力の回転方向が出力の回転方向と同一だからである。
【0113】
歯車伝達装置とは対照的に、変形可能な伝達要素による伝達は、その両端の回転要素間の中心距離の選択を残す。これにより、設計自由度を大きく向上させる。また、システムのサイズを増大させることなく、クランクセット車軸と遊星歯車装置の第1入力との間の高ギア比を達成することもできる。この高ギア比により、遊星歯車装置は小型化され、パワートレインの重量を低減する。また、電気モータのサイズも低減する。これにより、パワートレインのサイズを増大させることなく、クランクセットの車軸と第1入力要素との間のギア比を増加させる。
【0114】
加えて、遊星歯車装置の第1入力に対するクランクセットの車軸の速度を低減するために変形可能な伝達要素を使用すると、クランクセット車軸と遊星歯車装置の車軸との間の距離が特に大きくなる。これにより、その比を増加させるために遊星歯車装置のリング歯車のサイズを増大させることができる。遊星歯車装置の比を増加させる目的は、両方の電気モータの速度を上昇させて、これらのモータのサイズを縮小することである。これにより、パワートレインの重量および体積を低減する。このようにして、2つの電気モータの直径を短縮し、両方ともパワートレインの同じ側に配置できるようにすることが可能である。
【0115】
ベルト伝達システムの使用により、電気モータまたは変速機によって生じる可能性のある振動からクランクセットを隔離することができる。これにより、サイクリストの脚に感じられる振動を抑制し、こうして快適性を向上させる。
【0116】
本発明の第2の実施形態では、パワートレイン1は、車両の後輪への同じ伝達チェーンまたはベルト23に噛合した2つの出力プレートを含む。第1出力プレート4は第1回転軸30を中心とし、第2(出力)プレート26は第2回転軸31を中心とする。第1フリーホイール16は、クランクセット車軸2と第1出力プレート4との間に配置され、クランクセットが通常のペダリング方向に動作されたときに後者(4)がクランクセット車軸2よりも低速で回転するのを防ぐ。
【0117】
第2出力プレート26とは異なる軸の周りで回転する第1出力プレート4は、チェーンの上部ストランドおよび下部ストランドを分離するために、クランクセットの車軸2の軸の周りで出力伝達チェーンまたはベルトを案内するために使用される。好ましくは、第1および第2出力プレートは、パワートレインのケーシングの外側に配置される。
【0118】
通常アシスト動作モードでは、本発明の第2の実施形態によるパワートレイン1は、たとえば、以下のように動作することができる。クランクセット車軸2および第2モータ50は、クランクセット車軸2と遊星キャリア6との間の駆動部をノッチ付きベルト21に通して、遊星キャリア6を駆動する。遊星キャリア6は、遊星歯車装置の入力要素である。第1モータ40は太陽歯車5を駆動する。遊星キャリア6および太陽歯車5はリング歯車9を駆動し、これは遊星歯車装置の出力要素である。リング歯車9は第2出力プレート26を駆動し、これ自体が伝達チェーン内に噛合する(車両の後輪に動力を伝達する)。第2出力プレート26の回転速度は、遊星キャリア6の回転速度と太陽歯車5の回転速度との加重和に等しくなる。したがって、太陽歯車5の回転速度を増加させることにより、第2出力プレート26の速度を増加させ、クランクセット車軸2において一定の回転速度を維持することができる。したがって、これは連続可変変速機(CVT)である。
【0119】
リング歯車9は好ましくは中空シャフト27に実装されており、これは同様に回転軸31の周りの軸受に実装されている。中空シャフト27は、リング歯車9に取り付けられた第2出力プレート26がケーシング19の外側に位置するように、ケーシング19の側壁を貫通する。
【0120】
第1フリーホイール16は、クランクセット車軸2が通常のペダリング方向に回転するときに第1出力プレート4がクランクセット車軸2よりも低速で回転するのを防ぐ。このフリーホイール16の1つの目的は、パワートレインの速度比を1未満にしないことである。第1フリーホイール16のこの場所により、ペダリングトルクが高い場合にパワートレインの残りの部分の高トルクを防止する。したがって、パワートレインの特定の部品は、この高トルクを受けない。ベルト21などの変形可能な伝達要素を含むとき、遊星歯車装置およびクランクセット車軸2と遊星歯車装置の第1入力要素との間の伝達システムを特にこのようにして維持することは、特に興味深い。これは、ノッチ付きベルトが高トルクをサポートしないからである。
【0121】
第1フリーホイール16は、クランクセット車軸2から第1出力プレート4への直接的な機械的動力伝達を可能にするように配置されている。第1フリーホイール16は、好ましくは、クランクセット車軸2と第1出力プレート4との間に直接配置される。係止位置で、クランクセット車軸2は第1出力プレート4を直接駆動する。自由位置では、第1出力プレート4は、クランクセット車軸2よりも高速で回転することができる。
【0122】
加えて、第1フリーホイールは、特定の条件下で、クランクセット車軸2が第1出力プレート4を直接駆動することを可能にし、これは同様に、後輪を駆動する出力伝達チェーンまたはベルトを駆動する。すると、ペダリング力の全てが、第1出力プレート4を介して伝達チェーンまたは出力ベルトに直接伝達される。したがって、遊星歯車装置を含む、伝達システムの残りの部分の負荷が軽減され、高い機械効率を可能にする。これはたとえば、パワートレインの電気系統のスイッチが切られた場合、またはアシストが無効化されて最も低いパワートレインの速度比が選択された場合に行われる。
【0123】
クランクセットに対する瞬間トルクが特定の閾値を超過し、第1モータ40がその最大トルクで飽和した場合でも、第1出力プレート4は動力の一部を伝達できる。こうしてペダルを踏んでいる期間、パワートレインの速度比の瞬間値は低下し、たとえば、設定された速度比が低い場合、第1フリーホイール16は、サイクリストの過剰なトルクを出力伝達チェーンまたはベルトに伝達する第1出力プレート4と係合してこれを駆動してもよい。アシストが起動しているときに行われ得るこれが行われると、出力伝達チェーンまたはベルトは、一方では遊星歯車装置および第2出力プレート26を介して、他方では第1出力プレート4を介して、動力を受け取る。第1出力プレート4および第1フリーホイール16の存在により、パワートレインの速度比が1未満になるのを防止し、かくして変速機の滑り(これは運転の楽しみにとって有害である)を防止する。
【0124】
図4は、本発明の実施形態によるパワートレインおよびペダル車両の後輪への伝達の側面図を示す。これは、たとえば、本発明の第2の実施形態によるパワートレインであってもよい。
【0125】
図4は、パワートレイン1、出力伝達チェーン23、後輪ピニオン24、およびテンションローラ22を示している。出力伝達チェーン23は、上部ストランド23a、下部ストランド23b、および中間ストランド23cを含む。中間ストランド23cは、第2出力プレート26と第1出力プレート4との間に位置する出力伝達チェーン23の一部である。
【0126】
テンションローラ22の機能は、伝達に負荷がかかったときに、出力伝達チェーンまたはベルト23のたるみを取ることである。これにより、中間ストランド23cを張り詰めた状態に保つ。このテンションローラ22は、パワートレイン1に組み込まれるか、またはペダル車両のフレームに取り付けられることが可能である。これは、下部ストランド23bと接触するように配置される。テンションローラ22を使わない静止動作を考慮することも可能である。
【0127】
第2の実施形態におけるパワートレイン1の通常アシスト動作モードでは、第2出力プレート26は、(1つまたは複数の)車輪に動力を伝達する。第2出力プレート26は、出力伝達チェーンまたはベルト23を駆動する。第2出力プレート26と同じ伝達チェーン23に噛合している第1出力プレート4は、クランクセット車軸2よりも速い速度でアイドル回転する。第1出力プレート4は、第1フリーホイール16によってクランクセット車軸2から(係合状態を)外される。第1出力プレート4の第1の機能は、クランクセットの車軸2の周りで伝達チェーン23を案内し、これによって上部チェーンストランド23aと下部チェーンストランド23bとの間の距離を増加させることである。このように、自転車のフレームに推進システムが実装された場合に、フレームの右後部ベースが通るのに十分な空間がある。この右後部ベースは、後輪の取付点をパワートレインのブラケットに接続するフレームのチューブである。これは図4には示されていない。
【0128】
いくつかの特殊な動作モードでは、第1フリーホイール16は、第1出力プレート4を係止(ロック)して、クランクセットの車軸2よりも低速で回転するのを防ぐ。この場合、第1出力プレート4は、全体的または部分的に、出力伝達チェーン23を駆動し、ひいては第2出力プレート26も駆動する。電気系統のスイッチが切られた場合、および/またはアシストが無効化されて(ユーザまたは制御システムによって)最も低いパワートレイン1の速度比が選択された場合には、サイクリストの動力の全てが、第1出力プレート4を介して伝達チェーン23に伝達される。したがって、変速機の残りの部分は負荷が軽減され、変速機は機械的に高効率である。
【0129】
第1出力プレート4はまた、サイクリストの瞬間トルクが特定の閾値を超過して第1モータがその最大トルクに到達した場合、動力の一部を伝達することもできる。こうしてペダルを踏んでいる期間、パワートレインの速度比の瞬間値は低下し、設定された速度比が低い場合、第1フリーホイール16は、サイクリストの過剰なトルクを伝達チェーン23に伝達する第1出力プレート4を起動および駆動してもよい。第1出力プレート4および第1フリーホイール16の相互作用により、パワートレインの速度比が1未満の値に到達するのを防ぐ。
【0130】
換言すると、本発明は、ペダル車両用パワートレイン1に関する。パワートレイン1は、第1回転軸30を有するクランクセット車軸2および第1出力プレート4を含む。第1出力プレート4は、ペダル車両の後輪を駆動するように、伝達チェーンまたはベルト23に結合される。クランクセット車軸2と伝達チェーンまたはベルト23との間の結合は、第2回転軸31の周りで回転する遊星歯車装置を介している。クランクセット車軸2は、クランクセット車軸2が通常のペダリング方向に回転するときに第1出力プレート4がクランクセット車軸2よりも低速で回転するのを防ぐように配置された第1フリーホイール16によって、第1出力プレート4にさらに結合されている。
【0131】
本発明は、純粋に例示的であって、限定的であると見なされるべきではない、特定の実施形態に関して説明されてきた。一般に、本発明は、上記で図示および/または説明された例に限定されるものではない。動詞「~からなる(consist)」、「含む(include」」、「備える/含む(comprise)」またはその他いずれかの変形ならびにこれらの活用形の使用は、言及されたもの以外の要素の存在を決して除外するものではない。要素を紹介するための不定冠詞「an」、「a」、または定冠詞「the」の使用は、そのような要素が複数存在することを除外するものではない。請求項中の参照番号は、その範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0132】
1 パワートレイン
2 クランクセット車軸
4 第1出力プレート
5 遊星歯車装置の太陽歯車
6 遊星歯車装置の遊星キャリア
9 遊星歯車装置のリング歯車
16 第1フリーホイール
17 第2フリーホイール
21 変形可能な伝達要素としてのノッチ付きベルト(シフトダウンベルト)
23 出力伝達チェーンまたはベルト
26 第2出力プレート
30 第1回転軸
31 第2回転軸
40 第1モータ
50 第2モータ
図1
図2a
図2b
図3
図4