(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤、その調製及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/282 20060101AFI20230927BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20230927BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230927BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230927BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230927BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230927BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230927BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230927BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230927BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230927BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230927BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20230927BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230927BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20230927BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230927BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A61K31/282
A61K33/24
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/19
A61K9/72
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/20
A61K47/28
A61P35/00
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2020545427
(86)(22)【出願日】2018-11-19
(86)【国際出願番号】 CN2018116213
(87)【国際公開番号】W WO2019101040
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】201711164023.6
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517354593
【氏名又は名称】メドンケアー ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】リウ, シャオジョン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ション
(72)【発明者】
【氏名】ジン, チーフォン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ヘシャオ
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/205782(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/060661(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 35/00
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛の治療及び/または予防を必要とする患者において疼痛を治療及び/または予防するための医薬であって、
前記医薬が、有効成分としてジシクロプラチンを有効用量で含有すること
、及び前記患者が、がん患者であり、ジシクロプラチンの前記有効用量が、前記患者のがん治療におけるジシクロプラチンの有効用量よりも少量であることを特徴とする医薬。
【請求項2】
前記患者が、肝臓癌患者、腎臓癌患者、骨転移のある患者、脳転移または骨癌のある患者である、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記患者が、進行がん患者である、請求項
1又は
2に記載の医薬。
【請求項4】
前記患者が、白金抗がん剤に薬物耐性を発現した患者である、請求項
1~3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
前記患者が、進行性肝臓癌患者である、請求項
1~
4のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項6】
疼痛の治療及び/または予防を必要とする患者において疼痛を治療及び/または予防するための医薬であって、
前記医薬が、有効成分としてジシクロプラチンを有効用量で含有すること
、及び前記患者が、がん患者であり、前記患者が、白金抗がん剤に薬物耐性を発現した患者であることを特徴とする医薬。
【請求項7】
前記患者が、肝臓癌患者、腎臓癌患者、骨転移のある患者、脳転移または骨癌のある患者である、請求項
6に記載の医薬。
【請求項8】
前記患者が、進行がん患者である、請求項
6又は
7に記載の医薬。
【請求項9】
前記患者が、進行性肝臓癌患者である、請求項
6~
8のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項10】
ジシクロプラチンが、疼痛の治療及び/または予防のための唯一の有効成分である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項11】
鎮痛作用を有する1つ以上の追加の有効成分を前記患者が更に投与される、請求項1~
9のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項12】
前記患者が、抗がん作用を有する1つ以上の有効成分を更に投与される、請求項1~
11のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項13】
抗がん作用を有する前記1つ以上の有効成分が、非白金抗がん剤である、請求項
12に記載の医薬。
【請求項14】
疼痛の治療及び/または予防を必要とする患者において疼痛を治療及び/または予防するための医薬であって、
前記医薬が、有効成分としてジシクロプラチンを有効用量で含有すること
、及び前記患者が、がん患者ではないことを特徴とする医薬。
【請求項15】
ジシクロプラチンが、疼痛の治療及び/または予防のための唯一の有効成分である、請求項
14に記載の医薬。
【請求項16】
鎮痛作用を有する1つ以上の追加の有効成分を前記患者が更に投与される、請求項
14に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤、疼痛、炎症及びウイルス感染症関係疾患の治療及び/または予防における当該組み合わせ製剤の使用、ならびに当該組み合わせ製剤の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
cis-ジクロロジアミン白金の抗腫瘍作用が発見されて以来(Rosenberg et al.Nature,1965,205:698;Nature,1972,222:385)、シスプラチンは、抗腫瘍剤として臨床医学で広く使用されている。これらの薬剤は、泌尿生殖器癌、鼻咽腔癌、セファロスポリンラウンド癌、及び肺癌などのがんに対する治療効果を有するが、毒性があり、重篤な副作用を引き起こす場合がある。白金類似体のなかから、毒性が低く、抗腫瘍活性のスペクトルが広い高効率の抗腫瘍剤を探索することは、過去数十年間、抗腫瘍剤の分野で、研究の焦点となっている。
ジシクロプラチンの構造
【0003】
ジシクロプラチン(DCP)は、カルボプラチン(CBP)及び1,1-シクロブタン-ジカルボン酸(CBDCA)の水素結合により形成される共結晶化合物である。CN1311183A及び対応する学術報告によれば、ジシクロプラチンは、幅広い抗腫瘍活性スペクトル、高効率、低毒性、低耐性、低交差耐性、及び良好な透過性などを有する。中国特許出願第CN00124864.2号は、ジシクロプラチンが、頭頸部癌、鼻咽腔癌、乳癌、肺癌、肝臓癌、膵癌、胃癌、腸癌、及びリンパ腫などに対して大きな効果を有することを示している。同時に、良性前立腺過形成、前立腺炎症、及びリウマチ様関節炎などの複数の適応症に良好な効果がある(PCT/US2016/028720)。
【0004】
持続的及び突発的疼痛は、がん患者にとって、主な懸念事項である。全がん患者の半数以上が、その疾患の過程で制御不能な激しい疼痛を経験し、疼痛の管理は、がん患者及び治療腫瘍専門医にとって主要な課題である(List MA,Stracks J,Colangelo L,et al.J.Clin.Oncol(2000)18:877-884)。がん疼痛は、複雑な病理学的プロセスであり、また手強い臨床問題であるが、がん疼痛の発生に関与する基本的な神経学的機序を理解する上では、大きな進展がなされている。がん患者が経験する症状は、増殖、浸潤、及び転移の間に生じる、細胞、組織、及び全身の変化の結果である。応答する免疫系もまた、がん疼痛に明確な役割を担っている。がん細胞は、免疫細胞などの、がん微小環境内の他の細胞に影響を与えるメディエーターを産生する。
【0005】
腫瘍塊領域中のがん細胞及び免疫細胞は、末梢侵害受容神経終末上の様々な受容体と相互作用して、異常な放電及び興奮性亢進を促進する、いくつかの神経免疫メディエーターを放出する。加えて、末梢神経付近で成長する腫瘍は、神経の完全性に支障をもたらし、持続的な疼痛、痛覚過敏、または異痛症を伴う神経障害状態を誘発することがある。末梢神経に対する腫瘍のこれらの作用はいずれも中枢性感作をもたらすことがあり、これにより、脊髄後角を介した侵害受容伝達ならびに自発的及び突発的な疼痛の知覚の効果が更に高まり得る(Hamamoto DT,Khasabov SG,Cain DM,Simone DA.J.Neurophysiol(2008)100:2300-2311,Sabino MA,Luger NM,Mach DB,Rogers SD,Schwei MJ,Mantyh PW.Int.J.Cancer(2003)104:550-558)。
【0006】
白金薬剤が抗ウイルス薬として使用されることは稀にしかない。US8247445B2は、ウイルス及び細菌による感染症の予防または治療に使用される新たな白金錯体の活性を報告した。US5922689は、AIDSの治療のためのシスプラチン誘導体の使用を報告した。Jiajiu Shaw et al.は、特許文献(US6297245B1)において、シスプラチンに促進剤として葉酸及びコエンザイムQ10を加えてAIDSを治療することを報告した。Jiajiu Shaw et al.はまた、新たな白金薬剤を使用して、ウイルス、細菌、及び寄生生物によって引き起こされた新規疾患を治療及び遮断すること、ならびに慢性疾患及び炎症性疾患を治療することを開示した。Yang Xuqing et al.は、抗ウイルスまたは抗菌を目的としたジシクロプラチンの使用を開示した。
【0007】
しかしながら、疼痛、炎症、またはウイルス感染症に関連する疾患の治療及び/または予防において良好な安定性及び高い有効性を有する薬剤が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様において、本発明は、ジシクロプラチン及び酸を含有する組み合わせ製剤を提供する。いくつかの実施形態において、酸は、次の酸:1,1-シクロブタンジカルボン酸、クエン酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、マレイン酸、サリチル酸、葉酸及び没食子酸のうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンと酸の比は、1:0.01~1:99である。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、任意選択的に、次の追加の構成成分:コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン、オリザノール、クエン酸、ビタミンC、及びアントシアニンのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、組成物もしくは医薬組成物の形態で存在することができ、または、ジシクロプラチン、酸、もしくは組み合わせ製剤の他の成分は、別個の製剤として独立して存在してもよい。
【0009】
第2の態様において、本発明は、ジシクロプラチンと、次の追加の構成成分:コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン、オリザノール、クエン酸、ビタミンC及びアントシアニンのうちの1つ以上と、を含む、組み合わせ製剤を提供する。
【0010】
第3の態様において、本発明は、薬剤の製造における、本明細書に上記される組み合わせ製剤の使用であって、薬剤は、疼痛、炎症及びウイルス感染症に関連する疾患の治療及び/または予防に使用するためのものである、使用を提供する。いくつかの実施形態において、疼痛は、がんまたはがん以外の原因(例えば、B型肝炎、C型肝炎、またはリウマチ様関節炎)によって引き起こされる疼痛から選択され、炎症は、がんまたは非がん性原因(例えば、リウマチ様関節炎)によって引き起こされる炎症から選択され、ウイルス感染症に関連する疾患は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、エボラウイルスまたはヒト免疫不全ウイルスによる感染症に関連する疾患から選択される。
【0011】
第4の態様において、本発明は、疼痛、炎症及びウイルス感染症に関連する疾患を治療及び/または予防する方法であって、本明細書に上記されるような組み合わせ製剤を、それを必要とする患者に使用することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、疼痛は、がんまたはがん以外の原因(例えば、B型肝炎、C型肝炎、またはリウマチ様関節炎)によって引き起こされる疼痛から選択され、炎症は、がんまたは非がん性原因(例えば、リウマチ様関節炎)によって引き起こされる炎症から選択され、ウイルス感染症に関連する疾患は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、エボラウイルスまたはヒト免疫不全ウイルスによる感染症に関連する疾患から選択される。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤中のジシクロプラチンの用量は、患者の体重1kg当たり0.01~10mg、好ましくは、患者の体重1kg当たり0.01~5mgである。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、次の経路:経口、経口摂取、吸入スプレー、舌下、直腸、経皮、膣粘膜、経粘膜、局所、経鼻もしくは経腸投与、注射、例えば、筋肉内注射、皮下注射、髄内注射、及び髄腔内、脳内直接投与、in situ投与、皮下、腹腔内、静脈内注射、関節内滑膜、胸骨、内部、肝内、病巣内、頭蓋腹腔内、腹腔内、鼻腔内、もしくは眼内注射または他の薬物送達手段によって投与されることができる。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、組成物もしくは医薬組成物の形態であり得、または、ジシクロプラチン、酸、もしくは組み合わせ製剤の他の成分は、別個の製剤として独立して存在してもよく、それらは、同時に、連続的に、もしくは間隔を置いて投与されることができる。時間間隔は、限定するものではないが、1~24時間の整数値、例えば、1時間、2時間、または3時間;及び1~30日の整数値、例えば、1日、2日、または3日を含む。
【0012】
第5の態様において、本発明は、組み合わせ製剤を調製する方法であって、1)ジシクロプラチンを、1つの有効成分として、または単一の有効成分として加えることと、2)任意選択的に、混合物を形成するために酸を加えることであって、ジシクロプラチンと酸の比は、1:0.01~1:99、好ましくは、1:3~1:10であり、酸は、次の酸:1,1-シクロブタンジカルボン酸、クエン酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、マレイン酸、サリチル酸、葉酸及び没食子酸のうちの1つ以上から選択される、加えることと、3)任意選択的に、次の成分:コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン(GSH)、オリザノール、クエン酸、ビタミンC及びアントシアニンから選択される1つ以上の追加の成分を加えることと、を含む、方法を提供する。
【0013】
第5の態様において、本発明は、ジシクロプラチン、またはジシクロプラチン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸を含む組成物を調製する方法であって、1)カルボプラチン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸を、1:1.05~1:99のモル比で、好適な溶媒中、室温または加熱下で適切な時間攪拌して、ジシクロプラチン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸を含む混合物を得ることと、任意選択的に、2)混合物を直接凍結乾燥し、混合物を濃縮し、好適な量の水を加えて完全に溶解し、次いで、混合物を凍結乾燥するか、または混合物を所望の水溶液中に製剤化して、それにより、ジシクロプラチン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸を含む組成物を得ることと、を含む、方法を提供する。
【0014】
第6の態様において、本発明は、薬剤の製造における、ジシクロプラチンの単一有効成分としての使用であって、薬剤は、疼痛または炎症の治療及び/または予防における使用のためのものであり、疼痛は、がんまたは別の原因(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、またはリウマチ様関節炎などによる)によって引き起こされ、炎症は、がんまたは非がん性原因(例えば、リウマチ様関節炎)によって引き起こされる炎症である、使用を提供する。
【0015】
第7の態様において、本発明は、疼痛、炎症、及びウイルス感染症に関連する疾患を治療及び/または予防するための、本明細書に上記される組み合わせ製剤の使用を提供する。
【0016】
第8の態様において、本発明は、ジシクロプラチンを単一有効成分として含む組成物、及びそのような混合物を調製する方法であって、ジシクロプラチンを単一有効成分として加えることを含む、方法を提供する。
【0017】
第9の態様において、本発明は、薬剤の製造における、ジシクロプラチンの単一有効成分としての使用であって、薬剤は、疼痛または炎症の治療及び/または予防における使用のためのものである、使用を提供する。いくつかの実施形態において、疼痛は、がんによって、またはがん以外の原因によって引き起こされる疼痛であり、炎症は、がんによって、またはがん以外の原因(例えば、リウマチ様関節炎)によって引き起こされる炎症である。
【0018】
第10の態様において、本発明は、疼痛または炎症の治療及び/または予防において使用するための、ジシクロプラチンを単一有効成分として含有する組成物を提供する。いくつかの実施形態において、疼痛は、がんによって引き起こされる疼痛、またはがん以外の原因(例えば、B型肝炎、C型肝炎、またはリウマチ様関節炎)によって引き起こされる疼痛であり、炎症は、がんによって、またはがん以外の原因(例えば、リウマチ様関節炎)によって引き起こされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】C型肝炎ウイルス(HCV)に対するジシクロプラチンまたはリバビリン単独の作用を示す。
【0020】
【
図2】B型肝炎ウイルス(HBV)に対するジシクロプラチンの作用を示す。
【0021】
【
図3】HIVに対するジシクロプラチンまたはジドブジンの作用を示す。
【0022】
【
図4】エボラウイルスに対するジシクロプラチンの作用を示す。
【0023】
【
図5】ウイルスに対するAA011、VK021及び陽性薬剤の作用を示す。
【0024】
【
図6】MD36792、AA011(
図6中A)及びVK021(
図6中V)の組み合わせ組成物の抗ウイルス作用を示す。
【0025】
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本明細書で使用されるとき、「対象」という用語は、ヒト及び動物、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ニワトリ、サルなどを含むことを意味する。
【0027】
本明細書に記載されるとき、「投与量」という用語は、使用される有効成分の量、例えば、対象の体重の1キログラム(kg)当たりに対するミリグラム(mg)を指す。
【0028】
本明細書に記載されるとき、「比」という用語は、一般に、モル比を指す。例えば、ジシクロプラチンと酸の比は、1:0.01~1:99である。ジシクロプラチンの含有量%は、重量パーセンテージを指す。
【0029】
本明細書に記載されるとき、「ウイルス感染症に関連する疾患」という用語は、ウイルス感染症によって引き起こされる疾患またはウイルス感染症に伴う疾患を指す。ウイルス感染症には、限定するものではないが、肝炎ウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなど)、エボラウイルス、またはヒト免疫不全ウイルスによる感染症が含まれる。
【0030】
本明細書に記載されるとき、「疼痛」という用語は、腫瘍(例えば、がん)によって引き起こされる疼痛、または別の原因(例えば、B型肝炎、C型肝炎、またはリウマチ様関節炎)によって引き起こされる疼痛を指す。
【0031】
本明細書に記載されるとき、「MD36792、AA011、及びVK021」という用語は、それぞれ、ジシクロプラチン、グルタチオン、及びビタミンCを指す。
【0032】
本明細書に記載されるとき、「室温」という用語は、25℃±1℃を意味する。実験温度が明記されていない場合は、室温を指す。
【0033】
本明細書に記載されるとき、「約」という用語は、当該用語によって修飾される値の±10%、より好ましくは±5%、最も好ましくは±2%を指し、この分野の当業者は、修飾された値に応じた「約」という用語の範囲を明確に定義するはずである。
【0034】
本出願の発明者らは、本出願で特許請求されるジシクロプラチンが、主な有効成分として、疼痛、特に、がん患者に生じる疼痛の治療及び/または予防に大きな有効性を示すことを見出した。がん患者、特に、進行性肝臓癌、腎臓癌、骨転移、及び骨癌の患者で、ジシクロプラチンの注射または経口用組成物の使用を唯一の治療法として選択する。発明者らは、進行癌の患者の一定数がジシクロプラチンに対する感受性を示さず、腫瘍抑制に対する有効性が観察されなかったことを確認した。しかしながら、ジシクロプラチンは、なお、がん疼痛緩和に明らかな効果を示し、更には、疼痛を消失させた。一部の患者は、特定の治療期間中にジシクロプラチンを使用し、その後治療を止めると、これらの患者は、ジシクロプラチンの使用を止めた後であっても、疼痛を再び感じることはなかった。
【0035】
腫瘍患者の臨床治療において、ジシクロプラチンは、腫瘍誘発性の組織浮腫及び炎症に対して優れた効果を有することがわかった。多くの場合、脳転移を伴う肺癌患者は、経口または注入によりジシクロプラチンを服用した。これらの患者において、ジシクロプラチンを1~2週間使用すると、がん転移によって生じた脳内の組織浮腫は、基本的に消滅した。これは、ジシクロプラチンが優れた抗炎症作用を有することを示している。肝性組織浮腫を伴う肝臓癌患者の多くの場合、一定期間のジシクロプラチン注入または経口投与後、組織浮腫が大幅に消失または減少した。
【0036】
第1の態様において、本発明は、組み合わせ製剤を提供し、組み合わせ製剤は、ジシクロプラチン及び酸を含むか、またはジシクロプラチン及び酸からなる。いくつかの実施形態において、酸は、次の酸:1,1-シクロブタンジカルボン酸、クエン酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、マレイン酸、サリチル酸、葉酸及び没食子酸のうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンと酸の比は、1:0.01~1:99、好ましくは、約1:1、約1:1.08、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、及びこれらの比の間の比の範囲、例えば、限定するものではないが、約1:1~約1:2、約1.08~約1:2、約1:3~約1:10などである。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、任意選択的に、次の追加の構成成分:コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン、オリザノール、クエン酸、ビタミンC、及びアントシアニンのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンと追加の他の構成成分の比は、約0.1:1~約100:1、好ましくは、約0.1:1、約0.2:1、約0.3:1、約0.4:1、約0.43:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、約1:1、約1:1.25、約1.02:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、及びこれらの比の間の比の範囲、例えば、限定するものではないが、約0.1:1~10:1、約0.4:1~約8:1、約0.43:1~約5:1、約0.43:1~約1:1.25、約0.43:1~約1:1.02などである。好ましくは、ジシクロプラチンと記載の追加の他の構成成分(コエンザイムQ10、ブルクミン、グルタチオン、オリザノール、クエン酸、ビタミンC及びアントシアニン)の比は、約0.1:1~10:1、約0.4:1~約8:1、約0.43:1~約5:1、約0.43:1~約1:1.25、約0.43:1~約1:1.02である。より好ましくは、ジシクロプラチンとビタミンCの比は、約0.43:1であり、ジシクロプラチンとグルタチオンの比は、約1:1.25であり、ジシクロプラチンとコエンザイムQ10の比は、約1.02:1である。更に、組成物中のジシクロプラチンの重量パーセンテージは、約5%、約10%、約15%、約16.64%、約18.29%、約19.11%、約19.87%、約20%、約20%、約25%、およそ30%、およそ35%、およそ40%、およそ44.46%、およそ45%、およそ50%、およそ55%、およそ60%、およそ60.5%、およそ65%、およそ70%、およそ75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96.2%、約99%、ならびにそれぞれのパーセンテージの間の範囲、例えば、限定するものではないが、約5%~99%、16.64%~60.5%、約18.29%~44.46%、及び約19.11%~約35%である。
【0037】
いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、組成物もしくは医薬組成物の形態で存在することができ、または、ジシクロプラチン、酸、もしくは組み合わせ製剤の他の成分は、別個の製剤として独立して存在してもよい。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、経口製剤、例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、凍結乾燥製剤もしくは水性注射剤、ネブライザー製剤、または他の製剤であることができる。
【0038】
第2の態様において、本発明は、ジシクロプラチンと、次の追加の構成成分:コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン、オリザノール、クエン酸塩、ビタミンC及びアントシアニンのうちの1つ以上と、を含む、組み合わせ製剤を提供する。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、任意選択的に、次の酸:1,1-シクロブタンジカルボン酸、クエン酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、マレイン酸、サリチル酸、葉酸及び没食子酸のうちの1つ以上から選択される酸(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンと酸の比は、1:0.01~1:99、好ましくは、約1:1、約1:1.08、約1:2、約1:3、及び約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、ならびにこれらの比の間の比の範囲、例えば、限定するものではないが、約1:1~約1:2、約1.08~約1:2、約1:3~約1:10などである。いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンと更なる他の構成成分の比は、約0.1:1~約100:1、好ましくは、約0.1:1、約0.2:1、約0.3:1、約0.4:1、約0.43:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、約1:1、約1:1.25、約1.02:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、及びこれらの比の間の比の範囲、例えば、限定するものではないが、約0.1:1~10:1、約0.4:1~約8:1、約0.43:1~約5:1、約0.43:1~約1:1.25、約0.43:1~約1:1.02などである。好ましくは、ジシクロプラチンと記載の追加の他の構成成分(コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン、オリザノール、クエン酸、ビタミンC及びアントシアニン)の比は、約0.1:1~10:1、約0.4:1~約8:1、約0.43:1~約5:1、約0.43:1~約1:1.25、及び約0.43:1~約1:1.02である。より好ましくは、ジシクロプラチンとビタミンCの比は、約0.43:1であり、ジシクロプラチンとグルタチオンの比は、約1:1.25であり、ジシクロプラチンとコエンザイムQ10の比は、約1.02:1である。更に、組成物中のジシクロプラチンの重量パーセンテージは、約5%、約10%、約15%、約16.64%、約18.29%、約19.11%、約19.87%、約20%、約20重量%、約25%、およそ30%、およそ35%、およそ40%、およそ44.46%、およそ45%、およそ50%、およそ55%、およそ60%、およそ60.5%、およそ65%、およそ70%、およそ75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96.2%、約99%、ならびにそれぞれのパーセンテージの間の範囲、例えば、限定するものではないが、約5%~99%、16.64%~60.5%、約18.29%~44.46%、及び約19.11%~約35%である。
【0039】
いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、経口製剤、例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、凍結乾燥製剤もしくは水性注射剤、ネブライザー製剤、または他の製剤であることができる。
【0040】
第3の態様において、本発明は、薬剤の製造における、本明細書に上記される組み合わせ製剤などのジシクロプラチンの使用であって、薬剤は、疼痛、炎症及びウイルス感染症に関連する疾患の治療及び/または予防に使用するためのものである、使用を提供する。いくつかの実施形態において、疼痛は、がんまたはがん以外の原因(例えば、B型肝炎、C型肝炎、またはリウマチ様関節炎)によって引き起こされる疼痛から選択され、炎症は、がんまたは非がん性原因(例えば、リウマチ様関節炎)によって引き起こされる炎症から選択され、ウイルス感染症に関連する疾患は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、エボラウイルスまたはヒト免疫不全ウイルスによる感染症に関連する疾患から選択される。
【0041】
第4の態様において、本発明は、疼痛、炎症及びウイルス感染症に関連する疾患を治療及び/または予防する方法であって、本明細書に上記されるような組み合わせ製剤などのジシクロプラチンを、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、疼痛は、がんまたはがん以外の原因(例えば、B型肝炎、C型肝炎、またはリウマチ様関節炎)によって引き起こされる疼痛から選択され、炎症は、がんまたは非がん性原因(例えば、リウマチ様関節炎)によって引き起こされる炎症から選択され、ウイルス感染症に関連する疾患は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、エボラウイルスまたはヒト免疫不全ウイルスによる感染症に関連する疾患から選択される。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤中のジシクロプラチンの用量は、患者の体重1kg当たり0.01~10mg、好ましくは、患者の体重1kg当たり0.01~5mgである。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、次の経路:経口、経口摂取、吸入スプレー、舌下、直腸、経皮、膣粘膜、経粘膜、局所、経鼻もしくは経腸投与、注射、例えば、筋肉内注射、皮下注射、髄内注射、及び髄腔内、脳内直接投与、in situ投与、皮下、腹腔内、静脈内注射、関節内滑膜、胸骨、内部、肝内、病巣内、頭蓋腹腔内、腹腔内、鼻腔内、もしくは眼内注射または他の薬物送達手段によって投与されることができる。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、組成物もしくは医薬組成物の形態であることができ、または、ジシクロプラチン、酸、もしくは組み合わせ製剤の他の成分は、別個の製剤として独立して存在してもよく、それらは、同時に、連続的に、もしくは間隔を置いて投与されることができる。時間間隔は、限定するものではないが、1~24時間の整数値、例えば、1時間、2時間、または3時間;及び1~30日の整数値、例えば、1日、2日、または3日を含む。
【0042】
第5の態様において、本発明は、組み合わせ製剤の調製方法であって、1)ジシクロプラチンを有効成分としてまたは単一有効成分として加えることと、2)任意選択的に、混合物を形成するために酸を加えることであって、ジシクロプラチンと酸の比は、1:0.01~1:99、好ましくは、約1:1、約1:1.08、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、及びこれらの比の間の比の範囲、例えば、限定するものではないが、約1:1~約1:2、約1.08~約1:2、約1:3~約1:10であり、酸は、次の酸:1,1-シクロブタンジカルボン酸、クエン酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、マレイン酸、サリチル酸、葉酸及び没食子酸のうちの1つ以上から選択される、加えることと、3)任意選択的に、次の成分:コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン(GSH)、オリザノール、クエン酸、ビタミンC及びアントシアニンから選択される1つ以上の追加の成分を加えることであって、ジシクロプラチンと追加の他の構成成分の比は、約0.1:1~約100:1、好ましくは、約0.1:1、約0.2:1、約0.3:1、約0.4:1、約0.43:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、約1:1、約1:1.25、約1.02:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、及びこれらの比の間の比の範囲、例えば、限定するものではないが、約0.1:1~10:1、約0.4:1~約8:1、約0.43:1~約5:1、約0.43:1~約1:1.25、約0.43:1~約1:1.02などであり、好ましくは、ジシクロプラチンと他の構成成分(コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン、オリザノール、クエン酸、ビタミンC及びアントシアニン)の比は、約0.1:1~10:1、約0.4:1~約8:1、約0.43:1~約5:1、約0.43:1~約1:1.25、約0.43:1~約1:1.02であり、より好ましくは、ジシクロプラチンとビタミンCの比は、約0.43:1であり、ジシクロプラチンとグルタチオンの比は、約1:1.25であり、ジシクロプラチンとコエンザイムQ10の比は、約1.02:1である、加えることと、を含む、方法を提供する。
【0043】
本明細書に記載されるように、ジシクロプラチン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸(1:1.2~1:20の範囲の比)を含有する水溶液は、40℃で7週間安定である。ジシクロプラチンと没食子酸、サリチル酸、クエン酸、フェルラ酸などとの水溶液は、40℃で安定であるが、ジシクロプラチンは、2週間後に分解し始める。好ましくは、上記の酸は、1,1-シクロブタンジカルボン酸であり、好ましくは、ジシクロプラチンと1,1-シクロブタンジカルボン酸の比は、1:1.2~1:20である。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明は、ジシクロプラチン、またはジシクロプラチン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸を含む組成物の調製方法であって、1)カルボプラチン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸を、1:1.05~1:99のモル比(例えば、1:1.2、1:1.5、1:3、1:5、1:10、1:20及びこれらの比の間の比の範囲、例えば、限定するものではないが、1:1.2~1:20、または、比は、実際の必要性に応じて選択することができ、例えば、本明細書に上記される比率)で、好適な溶媒(好ましくは、水)中、室温または加熱下(好ましくは、40℃)で、適切な時間、例えば、0.5~24時間(好ましくは、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、またはこれらの間の任意の範囲)攪拌して、ジシクロプラチン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸を含む混合物を得ることと、任意選択的に、2)混合物を直接凍結乾燥し、混合物を濃縮し、好適な量の水を加えて完全に溶解し、次いで、混合物を凍結乾燥するか、または混合物を所望の水溶液中に製剤化して、それにより、ジシクロプラチン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸を含む組成物を得ることと、を含む、方法を提供する。これまでに報告されている方法と比較して、本発明は、より簡単な操作プロセス、より高い収率のジシクロプラチン、及びカルボプラチンの完全な消費などの多くの利点を有する。更に、得られた凍結乾燥混合物は、ジシクロ白金及び1,1-シクロブタンジカルボン酸から構成され、カルボプラチン残留物は検出されなかった。
【0045】
第6の態様において、本発明は、薬剤の製造における、ジシクロプラチンの有効成分または単一有効成分としての使用であって、薬剤は、疼痛または炎症の治療及び/または予防における使用のためのものであり、疼痛は、がんまたは別の原因(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、またはリウマチ様関節炎などによる)によって引き起こされ、炎症は、がんまたは非がん性原因(例えば、リウマチ様関節炎)によって引き起こされる炎症である、使用を提供する。
【0046】
第7の態様において、本発明は、がんまたはがん以外の原因、例えば、B型肝炎、C型肝炎もしくはリウマチ様関節炎によって引き起こされる疼痛、がんまたは別の非がん性原因、例えば、リウマチ様関節炎によって引き起こされる炎症、及びウイルス感染症に関連する疾患を治療及び/または予防するための、ジシクロプラチン及び酸を含有するか、またはジシクロプラチン及び酸からなる組み合わせ製剤であって、ウイルス感染症に関連する疾患は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、エボラウイルスまたはヒト免疫不全ウイルスによる感染症に関連する疾患から選択される、組み合わせ製剤を提供する。いくつかの実施形態において、酸は、次の酸:1,1-シクロブタンジカルボン酸、クエン酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、マレイン酸、サリチル酸、葉酸及び没食子酸のうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態において、組成物は、次の他の追加の構成成分:コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン、オリザノール、クエン酸、ビタミンC、及びアントシアニンのうちの1つ以上を含む。
【0047】
代替として、組み合わせ製剤は、ジシクロプラチンと、次の追加の構成成分:コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン、オリザノール、クエン酸、ビタミンC、及びアントシアニンのうちの1つ以上と、を含有する。いくつかの実施形態において、組成物は、任意選択的に、次の酸:1,1-シクロブタンジカルボン酸、クエン酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、マレイン酸、サリチル酸、葉酸及び没食子酸のうちの1つ以上から選択される酸を含有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンと酸の比は、約1:0.01~約1:99、好ましくは、約1:1、約1:1.08、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、及びこれらの比の間の比の範囲、例えば、限定するものではないが、約1:1~約1:2、約1.08~約1:2、約1:3~約1:10などである。いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンと更なる他の構成成分の比は、約0.1:1~約100:1、好ましくは、約0.1:1、約0.2:1、約0.3:1、約0.4:1、約0.43:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、約1:1、約1:1.25、約1.02:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、及びそれぞれの比の間の比の範囲、例えば、限定するものではないが、約0.1:1~10:1、約0.4:1~約8:1、約0.43:1~約5:1、約0.43:1~約1:1.25、約0.43:1~約1:1.02などである。好ましくは、ジシクロプラチンと記載の追加の他の構成成分(葉酸、コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン、オリザノール、クエン酸、没食子酸、ビタミンC、及びアントシアニン)は、約0.1:1~約10:1、約0.4:1~約8:1、約0.43:1~約5:1、約0.43:1~約1:1.25、及び約0.43:1~約1:1.02である。より好ましくは、ジシクロプラチンとビタミンCの比は、約0.43:1であり、ジシクロプラチンとグルタチオンの比は、約1:1.25であり、ジシクロプラチンとコエンザイムQ10の比は、約1.02:1である。いくつかの実施形態において、組み合わせ製剤は、組成物もしくは医薬組成物の形態で存在することができ、または、ジシクロプラチン、酸、もしくは組み合わせ製剤の他の成分は、別個の製剤として独立して存在してもよい。
【0049】
第8の態様において、本発明は、ジシクロプラチンを単一有効成分として含む組成物を提供し、組成物は、次の賦形剤:ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、アルファー化デンプン、キトサン、β-シクロデキストリン、及びポリビニルピロリドンから選択される賦形剤を含み、また、そのような混合物を調製する方法を提供し、方法は、本明細書に上記される任意選択の賦形剤とともに、ジシクロプラチンを単一有効成分として加えることを含む。
【0050】
第9の態様において、本発明は、薬剤の製造における、ジシクロプラチンの有効成分または単一有効成分としての使用であって、薬剤は、疼痛または炎症の治療及び/または予防における使用のためのものである、使用を提供する。いくつかの実施形態において、疼痛は、がんによって引き起こされる疼痛、またはがん以外の原因(例えば、B型肝炎、C型肝炎、またはリウマチ様関節炎)によって引き起こされる疼痛であり、炎症は、がんによって引き起こされる炎症、またはがん以外の原因(例えば、リウマチ様関節炎)によって引き起こされる炎症である。
【0051】
第10の態様において、本発明は、疼痛または炎症の治療及び/または予防において使用するための、ジシクロプラチンを有効成分または単一有効成分として含有する組成物を提供する。いくつかの実施形態において、疼痛は、がんによって引き起こされる疼痛、またはがん以外の原因(例えば、B型肝炎、C型肝炎、またはリウマチ様関節炎)によって引き起こされる疼痛であり、炎症は、がんによって、またはがん以外の原因(例えば、リウマチ様関節炎)によって引き起こされる。
【0052】
他の態様において、本発明は、疼痛を治療及び/または予防するための方法であって、ジシクロプラチンの有効用量を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、患者は、がん患者、好ましくは、肝臓癌、腎臓癌、骨転移、脳転移または骨癌を罹患している患者、より好ましくは、進行癌患者、または白金系抗がん剤に耐性を既に発現した患者、最も好ましくは、進行性肝臓癌のある患者である。更に、ジシクロプラチンの有効用量は、がん患者におけるジシクロプラチンの有効抗がん用量よりも少量であることができ、または、いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンの有効用量は、がん患者に使用される有効抗がん用量と同等であることができる。例えば、ジシクロプラチンは、がん及び疼痛を治療するための唯一の薬剤として使用することができる。いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンは、疼痛を治療及び/または予防するための単一活性物質として使用することができる。いくつかの実施形態において、治療方法は、鎮痛作用を有する1つ以上の他の活性物質を使用することを更に含む。いくつかの実施形態において、方法は、抗がん作用を有する1つ以上の活性物質を使用することを更に含み、抗がん作用を有する活性物質は、好ましくは、非白金系抗がん剤である。いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンは、医薬組成物の形態で存在する。更に、ジシクロプラチンは、本明細書において上で定義されるような組み合わせ製剤中に含有される。
【0053】
本発明の他の態様において、疼痛を治療及び/または予防するためのジシクロプラチンの有効用量は、有効抗がん用量よりも少量であることができ、ジシクロプラチンは、白金薬剤の抗腫瘍活性に対して既に耐性のあるがん患者において、鎮痛作用を有する。したがって、疼痛の治療及び/または予防におけるジシクロプラチンの方法または使用は、がん患者に限定されず、ジシクロプラチンは、本明細書で示される疼痛動物モデル実験において、陽性対照薬剤のロツンジンと同程度の有意な鎮痛作用を示した。本明細書に示されるように、ジシクロプラチンは、がんまたはB型肝炎、C型肝炎、及びリウマチ様関節炎を含むがこれらに限定されない非がん性原因によって引き起こされる疼痛に対して、鎮痛作用を有することができる。いくつかの実施形態において、疼痛の治療及び/または予防のための、本明細書に上記される方法及び使用において、それを必要とする患者は、がん患者ではない。いくつかの実施形態において、疼痛の治療及び/または予防のための、本明細書に上記される方法及び使用において、それを必要とする患者は、白金系抗がん剤に耐性を発現したがん患者である。
【0054】
他の態様において、本発明は、組織浮腫(例えば、肝臓浮腫、脳浮腫など)または炎症を治療及び/または予防するための方法であって、ジシクロプラチンの有効用量を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、患者は、がん患者、好ましくは、肝臓癌、腎臓癌、骨転移、脳転移または骨癌の患者、より好ましくは、進行癌の患者、最も好ましくは、進行性肝臓癌の患者、または白金系抗がん剤に耐性を発現した患者である。いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンの有効用量は、がん患者におけるジシクロプラチンの有効抗がん用量よりも少量であり得、または、いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンの有効用量は、がん患者に使用される有効抗がん用量と同等であることができる。いくつかの実施形態において、方法は、患者に対して抗がん作用を有する1つ以上の活性物質を使用することを更に含み、抗がん作用を有する活性物質は、好ましくは、非白金抗がん剤である。いくつかの実施形態において、患者は、がん患者ではない。いくつかの実施形態において、ジシクロプラチンは、医薬組成物の形態で存在する。更に、ジシクロプラチンは、本明細書において上で定義されるような組み合わせ製剤中に含有される。
【0055】
他の態様において、本発明は、ウイルス指標を低減させる方法などの、ウイルス感染症に関連する疾患を治療及び/または予防するための方法であって、医薬組成物の有効用量を、それを必要とする患者に投与することを含み、医薬組成物は、ジシクロプラチン及びグルタチオンを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、ウイルス感染症は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、エボラウイルス、及び/またはヒト免疫不全ウイルス感染による感染症である。いくつかの実施形態において、ウイルス感染症は、B型肝炎ウイルスによる感染症である。いくつかの実施形態において、ウイルス感染症は、C型肝炎ウイルスによる感染症である。いくつかの実施形態において、ウイルス感染症は、エボラウイルスによる感染症である。いくつかの実施形態において、ウイルス感染症は、ヒト免疫不全ウイルスによる感染症である。いくつかの実施形態において、方法は、医薬組成物の有効用量を患者に1日1~3回投与することを含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物の有効用量を患者に少なくとも7日間、好ましくは、1ヶ月~1年間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月間、好ましくは、1~6ヶ月間、例えば、1、2、3、4、5、6ヶ月間投与することを含む、方法。いくつかの実施形態において、患者は、任意の他の抗ウイルス薬の治療を受けていない、及び/または任意の他の抗ウイルス薬の治療を受けたことがない。いくつかの実施形態において、方法はまた、他の抗ウイルス薬を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、任意選択的に、次の追加の他の構成成分:コエンザイムQ10、クルクミン、オリザノール、クエン酸、ビタミンC、及びアントシアニンのうちの1つ以上を含む。好ましくは、ジシクロプラチンとグルタチオンの比は、約0.1:1~約100:1、好ましくは、約0.1:1、約0.2:1、約0.3:1、約0.4:1、約0.43:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、約1:1、約1:1.25、約1.02:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、及びこれらの比の間の比の範囲、例えば、限定するものではないが、約0.1:1~10:1、約0.4:1~約8:1、約0.43:1~約5:1、約0.43:1~約1:1.25、約0.43:1~約1:1.02などである。ジシクロプラチンとグルタチオンの比は、約0.1:1~10:1、約0.4:1~約8:1、約0.43:1~約5:1、約0.43:1~約1:1.25、約0.43:1~約1:1.02である。より好ましくは、ジシクロプラチンとグルタチオンの比は、約1:1.25である。好ましくは、ジシクロプラチン及びグルタチオンは、ウイルス感染症に関連する疾患を治療する場合、同じ医薬組成物中に存在する。しかしながら、いくつかの実施形態において、ジシクロプラチン及びグルタチオンは、別個の製剤として独立して存在することができ、それらは、同時に、連続的に、または一定の間隔を置いて投与されることができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、疼痛、炎症、及びウイルス感染症に関係する疾患を治療及び/または予防するための、本明細書に上記される方法において、ジシクロプラチンまたは医薬組成物は、経口製剤、例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、または凍結乾燥製剤、または水性注射剤、またはネブライザー製剤、または他の製剤の形態で存在することができる。いくつかの実施形態において、疼痛、炎症、及びウイルス感染症に関係する疾患を治療及び/または予防するための、本明細書に上記される方法において、ジシクロプラチンまたは医薬組成物は、経口摂取、口内、吸入スプレー、舌下、直腸、経皮、膣粘膜、経粘膜、局所投与、経鼻もしくは腸内投与、注射投与、例えば、筋肉内、皮下、髄内、及び髄腔内、脳内直接投与、同所投与、皮下、腹腔内、静脈内、関節内滑膜、胸骨、肝内、病巣内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、もしくは眼内注射または他の薬物送達方法よって投与されることができる。好ましくは、ジシクロプラチンまたは医薬組成物は、経口または注射により投与されることができる。
【実施例】
【0057】
本発明は、図面及び特定の実施形態を参照しながら、以下に更に記載される。以下の実施例は、本発明を例示するためにのみ使用され、本発明の特許請求の範囲によってカバーされる範囲を限定するために使用されるものではないことを理解されたい。
【0058】
実施例で言及されるジシクロプラチンは、商業的に購入してもよいし、本明細書に記載される方法によって調製してもよい。本明細書に記載される他の化合物または酸及び他の構成成分は、当該分野で一般によく知られており、商業的に購入してもよいし、既知の合成方法によって得ることもできる。
【0059】
検出方法
本文の実施例で使用される検出方法は、次のとおりである:
【0060】
(1)X線粉末回折(XRPD)
分析機器:Panalytical Empyrean。
【0061】
X線粉末回折は、結晶性物質の試料をシリコン単結晶低バックグラウンドホルダーに載せ、顕微鏡スライドを使用して試料を薄層状に広げることによって実施した。2θの位置は、Panalytical 640の標準シリコン粉末に対して校正した。45kV及び40mAで作動する銅ロングファインフォーカス管によって生成される、波長Kα1=1.540589Å及びKα2=1.544426Å(Kα1/Kα2強度比は、0.50)のX線を試料に照射した。コリメートしたX線源が10mmに設定した自動発散スリットを通過し、反射した放射線が5.5mmの散乱防止スリットを通るようにした。試料の曝露は、θ-θモードで、3°~40°の2θ範囲にわたって0.013°の2θ増分につき16.3秒間行った(連続走査モード)。実施時間は、3分57秒であった。機器は、RTMS検出器(X’Celerator)を備えた。制御及びデータ取得は、データ収集ソフトウェアにより作動するDell Optiplex 780 XPによって行った。
【0062】
知られているように、ピークの相対強度は、次の因子、例えば、サイズが30マイクロメートルを超える粒子、及び試料の分析に影響し得る非ユニタリアスペクト比による影響を受け得る。加えて、反射位置は、回折計において試料が位置する正確な高さ及び回折計のゼロ校正による影響を受け得る。また、試料の表面平坦性もわずかに影響し得る。したがって、示される回折パターンデータは、絶対値として解釈されるべきではない。
【0063】
(2)示差走査熱量測定(DSC)
熱分析法として、DSCを使用して、試料を温めるのに必要な熱量を測定し、温度の関数としての参照値も測定する。DSCの一般的な測定手順は、知られている。記載の実施例で使用される特定の機器及び条件は以下のとおりである。
分析機器:TA Instruments Q2000 DSC。
加熱速度:10℃/分。
パージガス:窒素
【0064】
熱重量分析(TGA)
TGAを使用して、試料の物理的及び化学的性質の変化を、通常は一定の加熱速度における昇温温度の関数として、または時間(一定の温度及び/または一定の質量減少における)の関数として測定する。TGAの一般的な測定手順は、知られている。記載の実施例で使用される特定の機器及び条件は以下のとおりである。
分析機器:TA Instruments Q5000 TGA。
加熱速度:10℃/分。
パージガス:窒素。
【0065】
実施例1.ジシクロプラチン組成物の調製
1)5.0gのカルボプラチン(13.47mmol)及び2.232gの1,1-シクロブタンジカルボン酸(15.50mmol)を20mLガラスフラスコに加えた。
2)15mLの脱イオン水を上記のガラスバイアルに加え、バイアルを光源から遠ざけた状態のまま、室温で攪拌して、均一な懸濁液を形成した。
3)20℃まで冷却し、得られた混合物を500mL反応フラスコに移し、50mLの脱イオン水ですすいだ。
4)更に175mLの脱イオン水を加え、よく攪拌し、20℃で2時間保持して、均一な溶液を形成した。
5)混合物を濾過した。濾液を凍結乾燥し、真空下で乾燥させた。
6)ジシクロプラチンと1,1-シクロブタンジカルボン酸の混合物7.21gを得た。
7)測定すると、ジシクロプラチンの重量は、96.20%であった。DCP/1,1-シクロブタンジカルボン酸の比は、1:0.15である。
生成物を上記のとおりXRPD、DSC及び1H NMRによって分析した。
【0066】
実施例2.ジシクロプラチン組成物の調製
1)5.0gのカルボプラチン(13.47mmol)及び22.32gの1,1-シクロブタンジカルボン酸(155.0mmol)を200mLガラスフラスコに加えた。
2)125mLの脱イオン水を上記のガラスバイアルに加え、バイアルを光源から遠ざけた状態のまま、室温で攪拌して、均一な懸濁液を形成した。
3)20℃まで冷却し、得られた混合物を500mL反応フラスコに移し、150mLの脱イオン水ですすいだ。
4)更に2000mLの脱イオン水を加え、よく攪拌し、20℃で2時間保持して、均一な溶液を形成した。
5)混合物を濾過した。濾液を凍結乾燥し、真空下で乾燥させた。
6)ジシクロプラチンと1,1-シクロブタンジカルボン酸の混合物72.1gを得た。
7)測定すると、ジシクロプラチンの重量は、96.22%であった。DCP/1,1-シクロブタンジカルボン酸の比は、1:10.15である。
生成物を上記のとおりXRPD、DSC及び1H NMRによって分析した。
【0067】
実施例3 1,1-シクロブタンジカルボン酸、クエン酸及びジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の調製
1)5.0gのカルボプラチン(13.47mmol)及び3.879gの1,1-シクロブタンジカルボン酸(26.94mmol)を50mLガラスフラスコに加えた。
2)25mLの脱イオン水を上記のガラスバイアルに加え、バイアルを光源から遠ざけた状態のまま、室温で攪拌して、均一な懸濁液を形成した。
3)20℃まで冷却し、得られた混合物を500mL反応フラスコに移し、50mLの脱イオン水ですすいだ。
4)更に225mLの脱イオン水を加え、よく攪拌し、20℃で2時間保持して、均一な溶液を形成した。
5)2.588g(13.47mmol)のクエン酸を上記溶液に加え、攪拌を続けて、均質な溶液を形成した。
6)混合物を濾過した。濾液を凍結乾燥し、真空下で乾燥させた。
7)ジシクロプラチンと1,1-シクロブタンジカルボン酸の混合物11.462gを得た。
8)測定すると、ジシクロプラチンの重量は、60.50%であった。DCP/1,1-シクロブタンジカルボン酸/クエン酸の比:1:1:1。
生成物を上記のとおりXRPD、DSC及び1H NMRによって分析した。
【0068】
実施例4 1,1-シクロブタンジカルボン酸、クエン酸、GSH及びジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の調製
1)5.0gのカルボプラチン(13.47mmol)及び3.879gの1,1-シクロブタンジカルボン酸(26.94mmol)を50mLガラスフラスコに加えた。
2)25mLの脱イオン水を上記のガラスバイアルに加え、バイアルを光源から遠ざけた状態のまま、室温で攪拌して、均一な懸濁液を形成した。
3)20℃まで冷却し、得られた混合物を500mL反応フラスコに移し、50mLの脱イオン水ですすいだ。
4)更に225mLの脱イオン水を加え、よく攪拌し、20℃で2時間保持して、均一な溶液を形成した。
5)2.588g(13.47mmol)のクエン酸、及び4.135gのグルタチオン(GSH、13.47mmol)を上記溶液に加え、攪拌を続けて、均質な溶液を形成した。
6)混合物を濾過した。濾液を凍結乾燥し、真空下で乾燥させた。
7)ジシクロプラチン、グルタチオン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸の混合物15.60gを得た。
8)測定すると、ジシクロプラチンの重量は、44.46%であった。DCP/1,1-シクロブタンジカルボン酸/クエン酸/GSHの比:1:1:1:1。
生成物を上記のとおりXRPD、DSC及び1H NMRによって分析した。
【0069】
実施例5 1,1-シクロブタンジカルボン酸、クロロゲン酸、グルタチオン、ビタミンC及びジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の調製
1)5.15gのジシクロプラチン(13.47mmol)、2.232gの1,1-シクロブタンジカルボン酸(15.50mmol)、4.77gのクロロゲン酸(13.47mmol)、4.135gのグルタチオン(GSH、13.47mmol))、11.862gのビタミンCをよく混合した。
2)次いで、28.15gのジシクロプラチン含有組み合わせ製剤を得た。
7)ジシクロプラチン含有量は、測定すると、18.29%の重量であった。
生成物を上記のとおりXRPD、DSC及び1H NMRによって分析した。
【0070】
実施例6 クロロゲン酸、グルタチオン、ビタミンC及びジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の調製
1)5.15gのジシクロプラチン(13.47mmol)、4.77gのクロロゲン酸(13.47mmol)、4.135gのグルタチオン(GSH、13.47mmol)、及び11.862gのビタミンCを完全に混合した。
2)25.92gのジシクロプラチン組み合わせ製剤を得た。
7)ジシクロプラチン含有量は、19.87%であると決定された。
生成物を上記のとおりXRPD、DSC及び1H NMRによって分析した。
【0071】
実施例7 グルタチオン、ビタミンC及びジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の調製
1)5.15gのジシクロプラチン(13.47mmol)、4.135gのグルタチオン(GSH、13.47mmol)、及び11.862gのビタミンCを完全に混合した。
2)21.147gのジシクロプラチン含有組み合わせ製剤を得た。
7)ジシクロプラチンの重量は、24.35%であると決定された。
生成物を上記のとおりXRPD、DSC及び1H NMRによって分析した。
【0072】
実施例8 葉酸、クロロゲン酸、グルタチオン、ビタミンC及びジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の調製
1)5.15gのジシクロプラチン(13.47mmol)、1.03gの葉酸、4.77gのクロロゲン酸(13.47mmol)、4.135gのグルタチオン(GSH、13.47mmol)、及び11.862gのビタミンCを完全に混合した。
2)26.95gのジシクロプラチン含有組み合わせ製剤を得た。
7)ジシクロプラチンの重量は、19.11%であると決定された。
生成物を上記のとおりXRPD、DSC及び1H NMRによって分析した。
【0073】
実施例9 コエンザイムQ10、クロロゲン酸、グルタチオン、ビタミンC及びジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の調製
1)5.15gのジシクロプラチン(13.47mmol)、5.03gのコエンザイムQ10、4.77gのクロロゲン酸(13.47mmol)、4.135gのグルタチオン(GSH、13.47mmol)、及び11.862gのビタミンCを完全に混合した。
2)30.95gのジシクロプラチン含有組み合わせ製剤を得た。
7)ジシクロプラチンの重量は、16.64%であると決定された。
生成物を上記のとおりXRPD、DSC及び1H NMRによって分析した。
【0074】
実施例10 コエンザイムQ10、クエン酸、クロロゲン酸、グルタチオン、ビタミンC及びジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の調製
1)5.15gのジシクロプラチン(13.47mmol)、5.03gのコエンザイムQ10、4.77gのクエン酸、4.135gのグルタチオン(GSH、13.47mmol)、及び11.862gのビタミンCを完全に混合した。
2)30.95gのジシクロプラチン含有組み合わせ製剤を得た。
7)ジシクロプラチンの重量は、16.64%であると決定された。
生成物を上記のとおりXRPD、DSC及び1H NMRによって分析した。
【0075】
実施例11 オリザノール、クエン酸、グルタチオン、ビタミンC及びジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の調製
1)5.15gの二環式白金(13.47mmol)、5.03gのオリザノール、4.77gのクエン酸、4.135gのグルタチオン(GSH、13.47mmol)、及び11.862gのビタミンCを完全に混合した。
2)30.95gのジシクロプラチン含有組み合わせ製剤を得た。
7)ジシクロプラチンの重量は、16.64%であると決定された。
生成物を上記のとおりXRPD、DSC及び1H NMRによって分析した。
【0076】
実施例12 C型肝炎ウイルス(HCV)に対するMD36792(ジシクロプラチン)のin vitro活性に関する研究
(I)実験材料:
1.化合物:MD36792(ジシクロプラチン)及びリバビリン(市販)。
2.細胞:Huh7.5.1細胞。
3.ウイルス:C型肝炎ウイルス(HCV 2a型、JFH1-Lucウイルス株)。
4.実験試薬:DMEM培地、alamarBlue(登録商標)キット(Invitrogen)、Luciferase Assay Systemキット(Promega)及び他の実験試薬。
【0077】
(II)実験方法
【0078】
1.MD36792の細胞毒性試験
実験原理:実験では、alamarBlue(登録商標)(Invitrogen)キットを使用して、細胞に対する薬剤の毒性作用を検出する。alamarBlue(登録商標)は、細胞の代謝活性に基づいて吸光度及び蛍光シグナルに変化をもたらす酸化還元指示薬である。alamarBlue(登録商標)は水に容易に溶解する。その酸化型が細胞に入ると、ミトコンドリア酵素による還元を受け、測定可能な蛍光及び色の変化が生じる。それを、細胞生存及び細胞増殖の定量分析、ならびにin vitro細胞毒性研究に使用する。このアッセイは、代謝活性のある細胞が試薬を蛍光及び比色の指標へ変換する能力に基づく。損傷した不活性な細胞は、天然代謝活性が低く、対応するシグナルが低くなるため、蛍光シグナルの強度が細胞活性のレベルを反映し得る。
【0079】
方法の工程:Huh7.5.1細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種し、使用後に細胞を接着させた。DMSOを使用して薬剤を200倍の初期濃度から3倍段階で6段階に連続希釈し、次いで、DMEM完全培地を使用して薬剤含有培養液を希釈し、各ウェルをデュプリケートで試験した。72時間のインキュベーション後、培養上清を捨て、alamarBlue(登録商標)を含有する培地を加えた。37℃で4時間インキュベーションした後、蛍光測定値を570nm及び595nmで検出した。
計算式:細胞生存率(%)=(試料ウェル-ブランク対照)/(細胞対照-ブランク対照)*100%
【0080】
2.C型肝炎ウイルス(HCV)に対するMD36792の実験
実験原理:Rlucレポーター遺伝子を含有するHCV JFH1-Luc株をHuh7.5.1細胞に感染させると、Rlucは、ウイルスが複製したときに発現されるため、Rlucレポーター遺伝子の発現レベルは、HCVウイルス複製レベルを反映し得る。
実験工程:(1)細胞平板培養:Huh7.5.1細胞を96ウェルの細胞培養プレートに播種し、後の使用のために細胞を壁に接着させた。(2)ウイルス感染:薬剤を培地で2倍の初期濃度から3倍段階で9段階に連続希釈する。各濃度には、2つの反復ウェルがある。100μLの薬剤含有培養液を細胞ウェルに加え、次いで、JFH1-lucウイルス培地100μLで感染させた。(3)検出:ウイルス感染後72時間培養し、Renilla Luciferase Assay Kitを使用してRluc測定値を検出した。
【0081】
実験には、リバビリン陽性薬剤対照群、ウイルス対照群及び細胞対照群を設定した。
【0082】
計算式:阻害率(%)=100%-(薬剤群-細胞対照群)/(ウイルス対照群-細胞対照群)*100%
【0083】
実験結果:
図1に示されるように、MD36792は、HCVのEC
50(50%阻害)が121.1μMであることから、MD36792の選択指数SI(SI=CC
50/EC
50)は、1.54である。本モデルにおけるHCVの複製には、高い細胞状態を要するので、薬剤に細胞毒性作用がある場合、ウイルスの複製に深刻な影響を与える。したがって、HCVに対する333μM及び111μMの阻害作用は、毒性作用によって生じるものと考えられる。したがって、MD36792は、HCVに対する阻害作用を有する。対照薬剤のリバビリンは、HCVに対して有意な阻害作用を有する。
【0084】
実施例13 B型肝炎ウイルス(HBV)に対するMD36792(ジシクロプラチン)のin vitro活性に関する研究
(I)実験材料:
1.化合物:MD36792。
2.細胞:HepAD38細胞。
3.ウイルス:B型肝炎ウイルス(HBV)。
4.実験試薬:DMEM/F12培地、CellTiter-Glo検出キット(Promega)、HBeAg抗原検出キット(Kehua)、HBsAg抗原検出キット(Kehua)、及び他の実験試薬。
【0085】
(II)実験方法
【0086】
1.MD36792の細胞毒性試験
実験原理:CellTiter-Gloキット(Promega)を使用して、細胞に対する薬剤の毒性作用を検出した。CellTiter-Gloキットは、ATPを定量することによって、培養中の生細胞数を検出する。代謝活性細胞の呼吸及び他の生命活動により、ATPが生成され得る。キットのシグナル発生では、ルシフェラーゼによって生成される安定型グロータイプが使用され、ルシフェラーゼは、発光の過程でATPを必要とする。等量のCellTiter-Glo試薬を細胞培地に加え、発光値を測定した。光シグナルは、系内のATPの量に比例し、ATPは、生細胞数と正の関係がある。したがって、光シグナル値は、生細胞数を反映し得る。
【0087】
方法の工程:HepAD38細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種し、後の使用のために細胞を壁に接着させた。薬剤を1mMから9段階で9段階に連続希釈し、段階ごとに2回の反復とした。薬剤を細胞に加え、CO2インキュベーター内で37℃で培養した。薬剤添加及び培養の3日後、薬剤によって生じた細胞変性効果(CPE)を光学顕微鏡で観察し、CellTiter-Gloを加えて細胞生存率を検出した。細胞に対する薬剤の毒性を細胞の活性として表す。
【0088】
計算式:細胞活性(%)=(薬剤群-ブランク対照)/(細胞対照-ブランク対照)*100%
【0089】
2.B型肝炎ウイルス(HBV)に対するMD36792の実験
実験原理:HepAD38細胞株におけるHBVの複製は、テトラサイクリンによって制御することができる。doxを除去した後、統合されたHBVゲノムが転写されるとpgRNAが形成され得、続いて、pgRNAが逆転写されてrcDNAになる。合成されたrcDNAは、再び核に入り、cccDNAを形成する。HBeAgは、cccDNAからのみ発現され得るため、HBeAgの発現は、cccDNAの合成量を反映し得る。したがって、ELISAを使用して、HBeAgの含有量を検出し、HBVに対する薬剤の阻害作用を検出する。この細胞では、HBsAgは、統合されたHBV DNAから連続的に転写及び翻訳され得る。また、HBsAg含有量を調べ、HBV複製に対する薬剤の作用を決定した。
【0090】
実験工程:(1)細胞平板培養:Doxを3日間除去したHepAD38細胞を96ウェルプレートに播種し、CO2インキュベーター内で37℃で24時間培養した。(2)薬剤処理:MD36792を333μMからDMEM/F12完全培地(10%FBS)で希釈し、9段階で3倍連続希釈し、段階ごとに2つの反復ウェルとした。希釈した薬剤を細胞に加え、CO2インキュベーター内で37℃で72時間培養した。(3)検出:上清を回収し、HBeAg抗原検出キット及びHBsAg抗原検出キットを使用して、HBeAg及びHBsAgの発現をそれぞれ検出する。
計算式:抗原阻害率(%)=100%-(薬剤群-ブランク対照)/(細胞対照群-ブランク対照)*100%
【0091】
実験結果:
図2に示されるように、MD36792は、HBVのHBeAg(e抗原)及びHBsAg(表面抗原)の発現に対して阻害作用を持たなかった。
【0092】
実施例14 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対するMD36792(ジシクロプラチン)のin vitro活性に関する研究
(I)実験材料:
1.化合物:MD36792及びジドブジン(AZT)(市販のもの)。
2.細胞:MT4細胞。
3.ウイルス:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)。
4.実験試薬:RPMI-1640培地、CellTiter-Glo検出キット(Promega)及び他の実験試薬。
【0093】
(II)実験方法
【0094】
1.MD36792細胞毒性試験
実験原理:CellTiter-Gloキット(Promega)を使用して、細胞に対する薬剤の毒性作用を検出した。CellTiter-Gloキットは、ATPを定量することによって、培養中の生細胞数を検出する。代謝活性細胞の呼吸及び他の生命活動により、ATPが生成され得る。キットのシグナル発生では、ルシフェラーゼによって生成される安定型グロータイプが使用され、ルシフェラーゼは、発光の過程でATPを必要とする。等量のCellTiter-Glo試薬を細胞培地に加え、発光値を測定した。光シグナルは、系内のATPの量に比例し、ATPは、生細胞数と正の関係がある。したがって、光シグナル値は、生細胞数を反映し得る。
【0095】
方法の工程:MT4細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種し、後の使用のために細胞を壁に接着させた。薬剤を1mMから9段階で9段階に連続希釈し、段階ごとに2回の反復とした。薬剤を細胞に加え、CO2インキュベーター内で37℃で培養した。薬剤によって生じた細胞変性効果(CPE)を光学顕微鏡で観察し、CellTiter-Gloを加えて細胞生存率を検出した。細胞に対する薬剤の毒性を細胞の活性として表す。
【0096】
計算式:細胞活性(%)=(薬剤群-ブランク対照)/(細胞対照-ブランク対照)*100
【0097】
2.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対するMD36792実験
実験原理:MT-4細胞保護実験を使用して、ウイルスに対する化合物を検出した。
【0098】
実験工程:3倍希釈した薬剤を96ウェルプレートに加え、LAIウイルス及びMT-4細胞をインキュベートし、それをウェルプレートに接種する。培養後、ウイルスが対照ウェルに感染すると、顕著なCPEが現れる。試薬のCellTiter-Gloを加え、混合したら、化学発光シグナルを検出する。
【0099】
実験は、細胞対照(非感染細胞対照)、ウイルス対照、及び陽性薬剤対照(ジドブジン、AZT)を設定した。
【0100】
阻害率(%)=(薬剤群-ウイルス対照)/(細胞対照-ウイルス対照)*100%
実験結果:
図3に示されるように、MD36792は、HIV感染に対する阻害作用がないが、対照薬剤ジドブジンは、HIVに対して有意な阻害作用がある。
【0101】
実施例15 MD36792(二環式白金)の抗エボラウイルスin vitro活性に関する研究
(I)実験材料
1.化合物:MD36792。
2.細胞:MDCK細胞。
3.ウイルス:エボラウイルス。
4.実験試薬:DMEM培地、alamarBlue(登録商標)キット(Invitrogen)、Luciferase Assay Systemキット(Promega)及び他の実験試薬。
【0102】
(II)実験方法
【0103】
1.MD36792細胞毒性試験
実験原理:実験では、alamarBlue(登録商標)(Invitrogen)キットを使用して、細胞に対する薬剤の毒性作用を検出する。alamarBlue(登録商標)は、細胞の代謝活性に基づいて吸光度及び蛍光シグナルに変化をもたらす酸化還元指示薬である。alamarBlue(登録商標)は水に容易に溶解する。その酸化型が細胞に入ると、ミトコンドリア酵素による還元を受け、測定可能な蛍光及び色の変化が生じる。それを、細胞生存及び細胞増殖の定量分析、ならびにin vitro細胞毒性研究に使用する。このアッセイは、代謝活性のある細胞が試薬を蛍光及び比色の指標へ変換する能力に基づく。損傷した不活性な細胞は、天然代謝活性が低く、対応するシグナルが低くなるため、蛍光シグナルの強度が細胞活性のレベルを反映し得る。
【0104】
実験手順:MDCK細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種し、すぐに使用できるように細胞を接着させた。薬剤を1mMから9段階で9段階に連続希釈し、段階ごとに2回の反復とした。薬剤を細胞に加え、CO2インキュベーター内で37℃で培養した。投与及びインキュベーションから2日後、薬剤によって生じた細胞変性効果(CPE)の観察を光学顕微鏡で行った。次いで、alamarBlue(登録商標)培地を加え、37℃で4時間インキュベートし、次いで、蛍光測定値を570nm及び595nmで検出した。細胞に対する薬剤の毒性を細胞の活性として表す。
【0105】
計算式:細胞活性(%)=(薬剤群-ブランク対照)/(細胞対照-ブランク対照)*100%
【0106】
2.MD36792抗エボラウイルス実験
実験原理:Rlucレポーター遺伝子を含有するエボラウイルスを細胞に感染させると、Rlucは、ウイルスが複製するときに発現される。Rlucレポーター遺伝子の発現レベルは、アデノウイルス感染のレベルを反映し得る。
【0107】
方法の工程:(1)細胞平板培養:MDCK細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種し、接着後の細胞を使用した。(2)薬剤処理:薬剤を維持培地(2%FBS)で9つの薬剤濃度群に3倍連続希釈し、段階ごとに2回の反復で、2X薬剤含有培養液に構成する。細胞が単層に成長したら、100μlの2x薬剤含有DMEM培地を加え、次いで、100μlのDMEM希釈エボラウイルスを加え、37℃でインキュベートした。(3)検出:ウイルス感染後48時間培養した後、Luciferase Assay Kitを使用して、Rluc測定値を検出した。
【0108】
実験には、ウイルス対照群及び細胞対照群を設定した。
【0109】
計算式:阻害率(%)=100%-(薬剤群-細胞対照群)/(ウイルス対照群-細胞対照群)*100%
【0110】
実験結果:
図4に示されるように、MD36792は、エボラウイルス感染に対する阻害作用はない。
【0111】
実施例16 B型肝炎、C型肝炎、HIV感染症及びエボラウイルス感染症の患者におけるジシクロプラチン単独(経口または注射による)のin vivo活性に関する研究。
水性ジシクロプラチン注射剤をBeijing Xingda Technology System Co.,Ltd.から購入した。仕様は、50mg/5mLであった。経口調製物で使用されるジシクロプラチンは、US2016/0297842を参照して調製され、ジシクロプラチンを脱イオン水中に溶解することによって得られる。
【0112】
実験方法:(1)12名のHBV患者にジシクロプラチンのみを1~3ヶ月投与し、ウイルス指標及び肝機能を観察した。そのうち6名には、150mgのジシクロ白金水溶液を250mlの5%ブドウ糖水溶液中に溶解し、2日に1回、点滴静注によって投与し、6名には、150mgのジシクロプラチン水溶液を250mlの5%ブドウ糖水溶液に溶解して、経口投与した。2日に1回。(2)9名のC型肝炎の患者にジシクロプラチンを1~3ヶ月別々に投与した。ウイルス指標及び肝機能の観察を点滴静注によって実施した。150mgのジシクロプラチン水溶液を250mlの5%ブドウ糖水溶液中に溶解した。それを2日に1回投与した。6名には、150mgのジシクロプラチン水溶液を250mlの5%ブドウ糖水溶液中に溶解し、経口投与した。それを2日に1回投与した。(3)ジシクロプラチンを単独で8名のHIV感染者(ウイルス指標>>100000IU/mL)に1~3ヶ月投与(患者4名につき経口及び注射)して、ウイルス指標及び肝機能を観察した。ジシクロプラチン(上記方法を参照、静脈内ブドウ糖水溶液)を20名のエボラウイルス感染者(アフリカ)に別々に1~3週間投与し、ウイルス指標及び肝機能を観察した。
【0113】
実験結果:(1)ジシクロプラチンを単独で12名のB型肝炎患者に1~3ヶ月投与した。ウイルス指標が減少傾向を示した患者は一人もおらず、ウイルス指標は上昇し続け、肝機能は改善しなかった。ジシクロプラチンのみを9名のC型肝炎患者に1~3ヶ月投与した。ウイルス指標が減少傾向を示した患者は一人もおらず、ウイルス指標は上昇し続け、肝機能は改善しなかった。(3)8つのジシクロプラチンのみを8名のHIV感染患者(ウイルス指標>>100000IU/mL)に投与した。使用から1~3ヶ月後(患者4名につき経口及び注射)、患者のウイルス指標は、いずれも減少傾向を示さず、ウイルス指標は上昇し続け、肝機能は改善しなかった。ジシクロプラチンを単独で20名のエボラ感染患者(アフリカ)に1~3週間投与した。ウイルス指標が減少傾向を示した患者は一人もおらず、ウイルス指標は上昇し続け、いかなる制御も寛解もなかった。
【0114】
実施例17 B型肝炎、C型肝炎、及びHIV感染症の患者におけるジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤のin vivo活性に関する研究。
実験方法:(1)組み合わせ製剤を15名のB型肝炎患者(任意の他の抗ウイルス薬の服用なし)に使用し、治療の1~3ヶ月後、ウイルス指標及び肝機能指標を観察した。そのうちの6名は、実験4によって調製した組み合わせ製剤を含有するカプセル剤を投与することによって試験した。カプセル剤は、当業者に知られている従来の技術に従って調製することができる。ジシクロプラチンの量に関しては、150mgの投与量のジシクロプラチンが2日に1回投与された。9症例は、実験10によって調製された組み合わせ製剤を服用した。ジシクロプラチンの量に関しては、用量150mgのジシクロプラチンカプセル剤が2日に1回投与された。(2)組み合わせ製剤を13名のC型肝炎患者(任意の抗ウイルス治療なし)に使用した。治療の1~3ヶ月後、ウイルス指標及び肝機能指標の観察を行った。そのうちの5名は、実験7によって調製した組み合わせ製剤を服用した。ジシクロプラチンの量に関しては、用量50mgのジシクロプラチンのカプセル剤が1日に3回投与された。8名は、実験11によって調製された組み合わせ製剤を使用した。ジシクロプラチンの量に関しては、用量50mgのジシクロプラチンカプセル剤が1日に3回投与された。(3)組み合わせ製剤を8名のHIV感染患者(任意の他の抗ウイルス薬の服用なし)に使用し、ウイルス指標及び肝機能指標の観察を行った。そのうちの2名は、実験4によって調製された組み合わせ製剤を1日3回使用した。ジシクロプラチンの量に関しては、用量は、50mgカプセル剤であり、そのうちの6名は、実験11によって調製された組み合わせ製剤を使用した。ジシクロプラチンの量に関しては、カプセル化された用量50mgのジシクロプラチンを1日3回使用した。
【0115】
実験結果:本発明では、ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤を15名のB型肝炎患者(任意の他の抗ウイルス薬の服用なし)に使用したことを開示した。治療の1~3ヶ月後、ウイルス指標は有意に減少し、肝機能は基本的に正常である。ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤を13名のC型肝炎患者(任意の他の抗ウイルス薬の服用なし)に使用した。治療の1~3ヶ月後、ウイルス指標は、有意に減少した。2症例で、ウイルス指標は検出限界未満に低下し、肝機能指標は基本的に正常であった。本発明に開示されるジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤を8名のHIV感染患者(任意の他の抗ウイルス薬の服用なし)に使用した。治療中、ウイルス指標は有意に減少し、CD4指標は有意に増加し、肝機能指標は基本的に正常であった。
【0116】
実施例18 C型肝炎及びHIV感染症の患者におけるジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤のin vivo活性に関する研究。
次の症例(1)及び(2)は、実験6によって調製されたカプセル化組み合わせ製剤を使用した。カプセル剤は、当業者に知られている従来の技術に従って調製することができる。150mgのジシクロプラチンのカプセル剤を1日ごとに投与した。次の症例(3)、(4)は、実験10によって調製されたカプセル化組み合わせ製剤を使用した。カプセル剤は、当業者に知られている従来の技術に従って調製することができる。ジシクロプラチン投与量に関しては、投与量150mgのカプセル剤を1日ごとに投与した。
【0117】
実験方法:(1)C型肝炎患者He氏(61歳)は、抗インターフェロン及び他の抗ウイルス薬に反応しなかった。RNAウイルス指標は、上昇し続け、RNAウイルス指標を定量化すると、472,000IU/mLであった。彼には、典型的な肝臓の疼痛があった。ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の経口投与から1ヶ月後、患者は、RNAウイルス指標及び肝機能指標の検出を受けた。(2)C型肝炎患者Wang氏(51歳)は、いかなる治療も受けておらず、C型肝炎III型に属し、そのRNAウイルス指標を定量化すると932,000IU/mLであり、肝臓には、典型的な疼痛及び圧迫感があった。ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤を1ヶ月投与した後、患者は、肝臓の疼痛及び圧迫感に関する観察を受けた。次いで、更に2ヶ月後、RNAウイルス指標及び肝機能指標を確認した。(3)女性患者(43歳)は、ウイルス学検査を受け、HIV陽性及び臨床型C2であることが確認された。試験結果により、CD4リンパ球数は312、CD4細胞は319、CD4/CD8=0.58:1であることが示された。ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の経口投与から4ヶ月後、CD4、CD8細胞及びその比を検出した。(4)女性患者(28歳)は、ウイルス学検査を受け、HIV陽性であることが確認され、CD4細胞は190、CD8細胞は815、CD4/CD8=0.23:1であった。ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の経口投与から6ヶ月後、CD4、CD8細胞及びその比を検出した。
【0118】
実験結果:(1)C型肝炎患者He氏(61歳)は、ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤を1ヶ月間服用したところ、定量的RNAウイルス指標が472000IU/mLから4,520IU/mLに減少した。肝機能の主な指標は、有意に変化せず、患者の疼痛は消失した。(2)C型肝炎患者Wang氏(51歳)は、ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤を1ヶ月服用した後、疼痛及び圧迫感が消失し、服用を2ヶ月間継続した。RNAウイルス指標の定量は、1000IU/mL未満に減少し、肝機能は、基本的に正常である。(3)上記の女性患者(43歳)は、確かに、ウイルス学検査により、HIV陽性であり臨床型C2である。試験結果により、CD4リンパ球数は312、CD4細胞は319、CD4/CD8=0.58:1であることが示された。ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の経口投与から4ヶ月後の試験結果では、CD4細胞は568、CD8は606、CD4/CD8=0.92:1であることが示された。(4)28歳の女性患者は、ウイルス学試験によってHIV陽性であり、CD4細胞は190、CD8は815、CD4/CD8=0.23:1であった。ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の経口投与から6ヶ月後、ウイルス学検査は検出されず、CD4は563、CD8は575、CD4/CD8=0.97:1であった。上記の結果は、ジシクロプラチンが直接的な抗ウイルス活性が低いことを示している。複数のウイルスの感染患者から得たジシクロプラチンまたはジシクロプラチン組み合わせ製剤単独の使用の結果は、ジシクロプラチン単独が患者の抗ウイルス治療において臨床有効性を示さないことを示している。HCV、HBV及びHIVに感染した人を治療するために、ジシクロプラチンの組み合わせ製剤を使用すると、その効果は、顕著である。
【0119】
実施例19 ジシクロプラチンを含有する組み合わせ製剤の安定性に関する研究
本発明は、ジシクロプラチンを様々な酸と混合することによる組み合わせ調製物を開示した。ジシクロプラチンの安定性をより高めることを達成し、その溶解性の改善に努めるために、本発明は、混合物を形成するためのジシクロプラチンと様々な酸の比、及びその調製方法を開示した。
【0120】
(1)ジシクロプラチンと1,1-シクロブタンジカルボン酸の混合物を得る方法
混合物は、従来の調製方法を使用して、ジシクロプラチンと、特定の比率の1,1-シクロブタンジカルボン酸を混合することによって、あるいは、ジシクロプラチンと特定の比率の1,1-シクロブタンジカルボン酸の水性混合物の凍結乾燥によって、得ることができ、いずれも水に完全に溶解した。
XRPDの特性評価及び1H-NMRは、混合後のジシクロプラチンの安定性に変化がないことを示した。
【0121】
組み合わせ混合物は、媒体の水中で、カルボプラチン及び特定の比率の1,1-シクロブタンジカルボン酸から調製することができる。混合物を0~40℃で1~24時間攪拌し、次いで、直接凍結乾燥し、均一に混合して所望の混合物を得た。または、混合物は、上記混合物に適量の水を加えることによって調製された透明溶液の直接凍結乾燥から得てもよい。XRPD構造及び1H-NMRは、混合物がジシクロプラチン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸から構成されることを示した。カルボプラチンの残留物は検出されなかった。この調製方法は、ジシクロプラチンの収率を大幅に改善し、原料のカルボプラチンは、完全に消費された。
【0122】
(2)ジシクロプラチン及びクエン酸、クロロゲン酸、クエン酸、没食子酸などの混合物の調製
組み合わせ製剤は、従来法によって調製することができる。組み合わせ製剤は、ジシクロプラチンと、1,1-シクロブタンジカルボン酸、クエン酸、クロロゲン酸、クエン酸、没食子酸、フェルラ酸、マレイン酸、サリチル酸などの特定の比率の1つ以上の酸を混合することによって調製することができる。または、ジシクロプラチン及び特定の比率の1つ以上の酸を水中に完全に溶解し、続いて、凍結乾燥することによって、調製することができ、ここで、酸は、1,1-シクロブタン-ジカルボン酸、クエン酸、クロロゲン酸、クエン酸、没食子酸、フェルラ酸、及びマレイン酸、サリチル酸などである。XRPDの特性評価及び1H-NMRは、混合後のジシクロプラチンの安定性に変化がないことを示した。
【0123】
(3)ジシクロプラチンまたは他の構成成分とのその組み合わせ製剤の調製。
追加の他の構成成分には、コエンザイムQ10、クルクミン、グルタチオン(GSH)、オリザノール、ビタミンC及びアントシアニンが含まれる。
【0124】
実施例5~10に示されるように、ジシクロプラチンを主な有効成分として使用する組み合わせ製剤の調製は、従来の方法または特定の状況に応じた特定の調製方法のいずれかによって実施することができる。
【0125】
多くの実施例において、ジシクロ白金は、凍結乾燥粉末及び担体として水を使用する水性注射剤として調製される。安定性実験は、製剤が良好な安定性を保持していることを示している。多くの実施例において、ジシクロ白金は、対応する医薬賦形剤との良好な適合性及び安定性を有し、したがって、対応する経口調製物に調製される。
【0126】
実施例20 1,1-シクロブタンジカルボン酸及び賦形剤を含むジシクロ白金の安定性に関する研究
ジシクロプラチン含有組み合わせ製剤の連続8週間の安定性を以下の表1~4に示す。
【0127】
1.ジシクロプラチン及び1,1-シクロブタンジカルボン酸(1:1.2~1:20のジシクロプラチン:酸)によって形成された固体製剤及び溶液製剤は、40℃で安定である。上記固体製剤を、曝光条件下で連続8週間調べたところ、安定であるという結果を示した。
表1.1,1-シクロブタンジカルボン酸及び賦形剤を含むジシクロプラチンの安定性に関する研究
【0128】
2.ジシクロプラチン及びビタミンC、没食子酸、サリチル酸、クエン酸、フェルラ酸などの酸によって形成された固体製剤は、40℃で安定である。
表2.ジシクロプラチン及びビタミンC、没食子酸、サリチル酸、クエン酸、フェルラ酸などの酸によって形成された固体組成物の安定性
【0129】
3.ジシクロプラチン及び没食子酸、サリチル酸、クエン酸、フェルラ酸などによって形成された溶液製剤は、40℃で、基本的に2週間後に分解し始める。
表3.ジシクロプラチン及び没食子酸、サリチル酸、クエン酸、フェルラ酸によって形成された水溶液製剤の安定性
【0130】
4.対応する賦形剤と混合したジシクロプラチンの安定性実験は、単一または複数の賦形剤との混合物が40℃で連続8週間安定であることを証明している。
表4.対応する賦形剤と混合したジシクロプラチンの安定性実験
備考:
1.MD36792は、ジシクロプラチンを指す。
2.比は、ジシクロプラチン(DCP)と1,1-シクロブタンジカルボン酸のモル比を指す。
3.高温実験条件は、T=40℃である。
4.照明実験条件は、2000LXである。
5.溶液濃度:1mg/ml。
6.エラーは、上下2%の範囲内である。
【0131】
実施例21 疼痛及び炎症に対するジシクロプラチンの作用
本出願の発明者らは、ジシクロプラチンが、主な有効成分として、がん患者に生じる疼痛の治療に大きな効果を示すことを発見した。がん患者のなかでも、特に、進行性肝臓癌、腎臓癌、骨転移、脳転移及び骨癌の患者に好適である。患者は、表5に示されるように、ジシクロプラチン注射または経口調製物を単一の治療法として使用する治療を受け得る。また、発明者らは、進行癌の患者の一定数がジシクロプラチンに対する感受性も、腫瘍抑制に対する効果も示さないことも確認した。しかしながら、がん疼痛に対するジシクロプラチンの明らかな緩和効果は、依然として明白であり、更には、疼痛が消失する。一部の患者は、特定のジシクロプラチン治療期間後にジシクロプラチンの使用を止めたが、疼痛が再び生じることはなかった。
表5.疼痛に対する、主な有効成分としてのジシクロプラチンの作用
【0132】
上記がん患者の用量は、2日に1回の服用であり、150mg/5%ブドウ糖水溶液が点滴静注される。使用したジシクロプラチン注射は、Beijing Xingda Technology System Co.,Ltd.から購入した。仕様は、50mg/5mLであった。
【0133】
腫瘍患者の臨床治療において、ジシクロプラチンは、腫瘍誘発性の組織浮腫及び炎症に対して優れた作用を有することがわかった。肺癌からの脳転移のある患者の多くの場合、ジシクロプラチンを経口または注射により服用すると、ジシクロプラチン治療の1~2週間後、がん転移によって生じた脳内の組織浮腫が基本的に消滅したことがわかった。これは、ジシクロプラチンが炎症に対して優れた抗炎症作用を有することを示している。肝性組織浮腫を伴う肝臓癌患者の多くの場合、一定期間のジシクロプラチン注入または経口投与後、組織浮腫が大幅に消失または減少した。
【0134】
実施例22 他の構成成分AA011及びVK021単独の抗ウイルス作用
AA011及びVK021の情報を表6に示した。
【0135】
図5に示されるように、AA011、VK021及び陽性薬剤の抗ウイルス作用を以下の図に示す。陽性薬剤の2’CMCは、優れた抗ウイルス作用を有し、抗ウイルス作用は、薬剤の用量が増えるほどよくなる。添加剤のAA011は、1000μM及び250μMの濃度で一定の抗ウイルス作用を有し、1000μMで明らかな細胞毒性はない。添加剤のVK021もまた1000μM及び250μMの濃度で一定の抗ウイルス作用を有するが、1000μMで弱い細胞毒性がある。
【0136】
実施例23 HCVウイルスに対する、MD36792、ならびにMD36792、AA011及びVK021を含有する組み合わせ組成物のin vitro有効性
MD36792、AA011及びVK021の試料、ならびにその試験は、表7に示されるとおりである。
【0137】
MD36792、AA011及びVK021の抗ウイルス作用を
図6に示した。
【0138】
MD36792及びAA011の組み合わせの抗ウイルス作用を
図6中Aに示し、MD36792及びVK021については、
図6中Vに示した。MD36792単独のEC50は15.62μg/mlであり、細胞に対する毒性CC50は69.4であり、抗ウイルス作用の選択指標SIは4.44である。選択指数は、比較的低く、一定の抗ウイルス作用があると考えることができるが、細胞に対する毒性は、比較的大きい。AA011及びVK021と組み合わせたMD36792の抗ウイルス作用は、EC50が4.43μg/ml、CC50が24.82、SIが5.6である。3つの試料の混合使用は、細胞に対する毒性がより大きいが、選択指数はそれほど大きくない。MD36792単独の組み合わせ使用の抗ウイルス作用は、細胞レベルでは、有意に改善されなかった。
【0139】
実施例24 MD36792の鎮痛作用の研究
(I)実験材料、動物及び機器
動物:50匹のICRマウス、18~22g(Changsha Sleck Jingda Experimental Animal Company)
試薬:ロツンジン(Guangzhou Baiyunshan Pharmaceutical製造)。
機器:ガラスカバー
薬剤:MD36792
【0140】
(II)実験方法及び実験結果
【0141】
実験方法:動物を5日間馴化飼育し、マウスの体重を測定した。層別ランダム化群分けを使用して、50匹のマウスをランダムに合計5つの群に分けた。ブランク対照群、すなわち、モデル群には、蒸留水が使用され、陽性対照群には、ロツンジンが100mg/kgで使用され、低用量群には、1mg/mlのMD36792水溶液が10mg/kg基準で使用され、中用量群には、2mg/mlのMD36792水溶液が20mg/kg基準で使用され、高用量群には、4mg/mlのMD36792水溶液が40mg/kg基準で使用された。MD36792群及び陽性対照群に割り当てられたマウスは、対応する薬剤の投与を受けた。投与の1時間後、各群のマウスに0.8%酢酸(0.2mL/匹)を腹腔内注射した。15分以内のマウスのよじれ回数を観察し、記録した。
表8.
*モデル群(すなわち、ブランク対照群)と比較して、統計的に有意な差がある。P<0.05**
*モデル群(すなわち、ブランク対照群)と比較して、統計的に有意な差がある。P<0.01
【0142】
0.8%酢酸の腹腔内注射から15分以内のモデル群における平均よじれ回数は、19回に達した。モデル群と比較して、MD36792高用量群(40mg/kg)及び陽性対照群(ロツンジン、100mg/kg)は、マウスのよじれ回数を統計的に有意に抑制した(それぞれP=0.009またはP=0.000))。MD36792は、
図7に示されるように、鎮痛作用に関して用量非依存的である。
【0143】
結果として、古典的な酢酸誘発モデルを使用して、薬剤の鎮痛作用を評価した。モデルから取得した上記データは、MD36792及び陽性対照薬剤ロツンジンの両方が有意な鎮痛作用を示した。