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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ガスバリア性積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/00 20060101AFI20230927BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20230927BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20230927BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230927BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20230927BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20230927BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230927BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C09J123/00
C09J7/29
C09J7/30
B32B27/00 C
C09J123/26
C09J163/00
B32B27/32
B32B27/36 102
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020549468
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038313
(87)【国際公開番号】W WO2020067488
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2018185803
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 樹
(72)【発明者】
【氏名】加太 章生
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/018602(WO,A1)
【文献】特開2007-169519(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047422(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0044619(US,A1)
【文献】国際公開第2014/084350(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152558(WO,A1)
【文献】特開2016-89097(JP,A)
【文献】特開平8-234181(JP,A)
【文献】特開2020-57472(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159602(WO,A1)
【文献】特開2010-52178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層と、ガスバリアフィルムと、プロテクトフィルムとが、この順で配置された積層構造を有するガスバリア性積層体であって、
前記プロテクトフィルムが、プロテクト層と粘着剤層とを有し、前記粘着剤層が前記ガスバリアフィルムに貼付されており、
前記接着剤層が、ポリオレフィン系樹脂(A)を含む接着剤組成物から形成された層であり、
前記ガスバリア性積層体を、前記接着剤層を貼り合せ面として、下記条件(α)でガラス板にローラーで押し当てて、前記ガスバリア性積層体と前記ガラス板とを貼付した後、下記条件(β)で剥離し、その他の条件はJIS Z0237:2000に準拠して測定される、前記ガラス板と前記接着剤層との間の粘着力aと、前記ガスバリアフィルムと前記プロテクトフィルムとの間の粘着力bとが、下記式(1)を満たす、ガスバリア性積層体。
a>b・・・(1)
条件(α):温度23℃、圧力0.2MPa、及び速度0.2m/min
条件(β):貼付後、23℃及び相対湿度50%の環境下で24時間静置してから剥離速度300mm/minで剥離
【請求項2】
前記接着剤層が、硬化性の接着剤層である、請求項1に記載のガスバリア積層体。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂(A)が、変性ポリオレフィン系樹脂(A1)を含む、請求項1に記載のガスバリア性積層体。
【請求項4】
前記硬化性の接着剤層が、硬化性成分(B)を含み、前記硬化性成分(B)が、25℃で液体である多官能エポキシ化合物(BL)を含む、請求項2~のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項5】
前記多官能エポキシ化合物(BL)の重量平均分子量(Mw)が1,500以上5,000以下である、請求項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項6】
前記多官能エポキシ化合物(BL)の含有量が、接着剤組成物の全量基準で、10~34質量%である、請求項4又は5に記載のガスバリア性積層体。
【請求項7】
前記ガスバリアフィルムが、基材層とガスバリア層とを有する、請求項1~のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項8】
前記基材層が、樹脂成分としてポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、及びシクロオレフィンコポリマーから選択される1種以上を含む樹脂フィルムを有する、請求項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項9】
前記基材層の厚さが、30μm以下である、請求項7又は8に記載のガスバリア性積層体。
【請求項10】
前記ガスバリア層が、高分子化合物を含み、改質処理が施された高分子層である、請求項7~9のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項11】
前記ガスバリア層と前記接着剤層とが、直接積層されている、請求項7~10のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項12】
接着剤層と、ガスバリアフィルムと、プロテクトフィルムとが、この順で配置された積層構造を有するガスバリア性積層体であって、
前記プロテクトフィルムが、プロテクト層と粘着剤層とを有し、前記粘着剤層が前記ガスバリアフィルムに貼付されており、
前記ガスバリアフィルムが、基材層とガスバリア層とを有し、
前記基材層が、樹脂成分としてポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、及びシクロオレフィンコポリマーから選択される1種以上を含む樹脂フィルムを有し、
前記ガスバリア性積層体を、前記接着剤層を貼り合せ面として、下記条件(α)でガラス板にローラーで押し当てて、前記ガスバリア性積層体と前記ガラス板とを貼付した後、下記条件(β)で剥離し、その他の条件はJIS Z0237:2000に準拠して測定される、前記ガラス板と前記接着剤層との間の粘着力aと、前記ガスバリアフィルムと前記プロテクトフィルムとの間の粘着力bとが、下記式(1)を満たす、ガスバリア性積層体。
a>b・・・(1)
条件(α):温度23℃、圧力0.2MPa、及び速度0.2m/min
条件(β):貼付後、23℃及び相対湿度50%の環境下で24時間静置してから剥離速度300mm/minで剥離
【請求項13】
前記基材層の厚さが、30μm以下である、請求項12に記載のガスバリア性積層体。
【請求項14】
前記ガスバリア層が、高分子化合物を含み、改質処理が施された高分子層である、請求項12または13に記載のガスバリア性積層体。
【請求項15】
前記ガスバリア層と前記接着剤層とが、直接積層されている、請求項12~14のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項16】
下記工程(1)~(2)をこの順で有する、封止体の製造方法。
・工程(1):請求項1~15のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体を、接着剤層を貼り合せ面として被封止物に貼付する工程
・工程(2):プロテクトフィルムを前記ガスバリア性積層体から剥離する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として、有機EL素子が注目されている。
しかし、有機EL素子は、発光特性が経時的に低下しやすい問題がある。この問題は、酸素や水分等が有機EL素子の内部に浸入し、電極や有機層を劣化させることにより生じると考えられている。そこで、この問題への対策として、有機EL素子を封止材で封止し、酸素や水分等の浸入を防ぐことが行われている。
具体的には、層構成を有するガスバリア性の封止材で、有機EL素子等の被封止物を封止する方法が提案されている。特許文献1には、接着性フィルム上にガスバリアフィルムを積層した封止フィルムを用いて、有機EL素子を封止する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-197517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機EL素子等の電子デバイスのように、酸素や水分等による劣化を防止する必要のある被封止物は、特許文献1に記載の層構成を有する封止フィルムのように、接着剤層とガスバリアフィルムとを積層した積層構造を有するガスバリア性積層体によって封止されることがある。
【0005】
ところで、ガスバリア性積層体を使用するまでの保管及び搬送等の過程、被封止物をガスバリア性積層体で封止して封止体を作製する過程、並びに当該封止体の加工及び搬送等の過程において、ガスバリアフィルムは最表面に配置される。そのため、ガスバリアフィルムに傷や割れが生じ、ガスバリアフィルムのガスバリア性が低下することがある。また、被封止物を有機EL素子等の発光素子とし、ディスプレイ等の用途で利用する場合、ガスバリアフィルムに傷や割れが生じると、当該傷や割れが欠陥となり、輝点等が発生する要因となることもある。
【0006】
そこで、本発明者らは、ガスバリア性積層体を使用するまでの保管及び搬送等の過程、被封止物をガスバリア性積層体で封止して封止体を作製する過程、並びに当該封止体の加工及び搬送等の過程において、ガスバリアフィルムに傷や割れが生じるのを防止するために、ガスバリアフィルムの表面全体をプロテクトフィルムで保護し、所望のタイミングでプロテクトフィルムを剥離することを考えた。所望のタイミングとは、例えば、ガスバリアフィルムの保護が不要になったタイミングやガスバリアフィルムを露出させる必要が生じたタイミング等を意味する。
ところが、被封止物をガスバリア性積層体で封止した後にプロテクトフィルムを剥離すると、被封止物と接着剤層との間で、隙間が発生する場合があることが明らかになった。被封止物と接着剤層との間で隙間が発生すると、当該隙間から酸素や水分等が浸入して被封止物の劣化が生じる恐れがある。また、外観も不良となる。一方で、ガスバリア性積層体によって封止された封止体において、被封止物と接着剤層との間の隙間が発生しなくとも、種々の要因によって、封止された被封止物に酸素や水分等が浸入して被封止物の劣化が生じる恐れもある。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、ガスバリア性積層体を使用するまでの保管及び搬送等の過程、被封止物をガスバリア性積層体で封止して封止体を作製する過程、並びに当該封止体の加工及び搬送等の過程において、プロテクトフィルムによってガスバリアフィルムに傷や割れが生じるのを防止しながらも、所望のタイミングでプロテクトフィルムを剥離する際に、被封止物と接着剤層との間で隙間が生じることなく、しかも被封止物の耐久性を良好なものとできるガスバリア性積層体、及び当該ガスバリア性積層体を用いた封止体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ガスバリアフィルムをプロテクトフィルムにより保護するという上記着想に基づき、鋭意検討を行った。その結果、接着剤層と、ガスバリアフィルムと、プロテクトフィルムとが、この順で配置された積層構造を有するガスバリア性積層体を、接着剤層を貼り合せ面にして特定の条件でガラス板に貼付した際の、ガラス板と接着剤層との間の粘着力と、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力とを、特定の関係を満たすように調整することによって、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]に関する。
[1] 接着剤層と、ガスバリアフィルムと、プロテクトフィルムとが、この順で配置された積層構造を有するガスバリア性積層体であって、
前記ガスバリア性積層体を、前記接着剤層を貼り合せ面として、下記条件(α)でガラス板にローラーで押し当てて、前記ガスバリア性積層体と前記ガラス板とを貼付した後、下記条件(β)で剥離し、その他の条件はJIS Z0237:2000に準拠して測定される、前記ガラス板と前記接着剤層との間の粘着力aと、前記ガスバリアフィルムと前記プロテクトフィルムとの間の粘着力bとが、下記式(1)を満たす、ガスバリア性積層体。
a>b・・・(1)
条件(α):温度23℃、圧力0.2MPa、及び速度0.2m/min
条件(β):貼付後、23℃及び相対湿度50%の環境下で24時間静置してから剥離速度300mm/minで剥離
[2] 前記接着剤層が、硬化性の接着剤層である、[1]に記載のガスバリア積層体。
[3] 前記硬化性の接着剤層が、ポリオレフィン系樹脂(A)を含む接着剤組成物から形成された層である、[2]に記載のガスバリア性積層体。
[4] 前記ポリオレフィン系樹脂(A)が、変性ポリオレフィン系樹脂(A1)を含む、[3]に記載のガスバリア性積層体。
[5] 前記硬化性の接着剤層が、硬化性成分(B)を含み、前記硬化性成分(B)が、25℃で液体である多官能エポキシ化合物(BL)を含む、[2]~[4]のいずれか1つに記載のガスバリア性積層体。
[6] 前記多官能エポキシ化合物(BL)の重量平均分子量(Mw)が1,500以上5,000以下である、[5]に記載のガスバリア性積層体。
[7] 前記多官能エポキシ化合物(BL)の含有量が、接着剤組成物の全量基準で、10~34質量%である、[5]又は[6]に記載のガスバリア性積層体。
[8] 前記ガスバリアフィルムが、基材層とガスバリア層とを有する、[1]~[7]のいずれか1つに記載のガスバリア性積層体。
[9] 前記基材層が、樹脂成分としてポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、及びシクロオレフィンコポリマーから選択される1種以上を含む樹脂フィルムを有する、[8]に記載のガスバリア性積層体。
[10] 前記基材層の厚さが、30μm以下である、[8]又は[9]に記載のガスバリア性積層体。
[11] 前記ガスバリア層が、高分子化合物を含み、改質処理が施された高分子層である、[8]~[10]のいずれか1つに記載のガスバリア性積層体。
[12] 前記ガスバリア層と前記接着剤層とが、直接積層されている、[8]~[11]のいずれか1つに記載のガスバリア性積層体。
[13] 前記プロテクトフィルムが、プロテクト層と粘着剤層とを有し、前記粘着剤層が前記ガスバリアフィルムに貼付されている、[1]~[12]のいずれか1つに記載のガスバリア性積層体。
[14] 下記工程(1)~(2)をこの順で有する、封止体の製造方法。
・工程(1):[1]~[13]のいずれか1つに記載のガスバリア性積層体を、接着剤層を貼り合せ面として被封止物に貼付する工程
・工程(2):プロテクトフィルムを前記ガスバリア性積層体から剥離する工程
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガスバリア性積層体を使用するまでの保管及び搬送等の過程、被封止物をガスバリア性積層体で封止して封止体を作製する過程、並びに当該封止体の加工及び搬送等の過程において、プロテクトフィルムによってガスバリアフィルムに傷や割れが生じるのを防止しながらも、所望のタイミングでプロテクトフィルムを剥離する際に、被封止物と接着剤層との間で隙間が生じることなく、しかも被封止物の耐久性を良好なものとできるガスバリア性積層体、及び当該ガスバリア性積層体を用いた封止体の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒として用いた、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0012】
[ガスバリア性積層体]
本発明のガスバリア性積層体は、接着剤層と、ガスバリアフィルムと、プロテクトフィルムとが、この順で配置された積層構造を有するガスバリア性積層体である。
そして、本発明のガスバリア性積層体は、当該ガスバリア性積層体を、接着剤層を貼り合せ面として、下記条件(α)でガラス板にローラーで押し当てて、ガスバリア性積層体とガラス板とを貼付した後、下記条件(β)で剥離し、その他の条件はJIS Z0237:2000に準拠して測定される、ガラス板と接着剤層との間の粘着力aと、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bとが、下記式(1)を満たすように調整されている。
a>b・・・(1)
条件(α):温度23℃、圧力0.2MPa、及び速度0.2m/min
条件(β):貼付後、23℃で相対湿度50%の環境下で24時間静置してから剥離速度300mm/minで剥離
なお、本発明において、ガラス板と接着剤層との間の粘着力aは、ガラス板に貼付したガスバリア性積層体をガラス板から剥離して測定される。また、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bは、ガラス板に貼付したガスバリア性積層体からプロテクトフィルムを剥離して測定される。
なお、本明細書において、「ガスバリア」とは、酸素や水蒸気等の気体の透過を防止する機能を意味する。
【0013】
本発明のガスバリア性積層体は、接着剤層、ガスバリアフィルム、及びプロテクトフィルムをこの順で積層した積層構造を有していれば、特に限定されない。
本発明の一態様のガスバリア性積層体が有する層構成としては、例えば、接着剤層、ガスバリアフィルム、及びプロテクトフィルムのみをこの順で積層した以下の態様、さらには、接着剤層に任意に積層される剥離シートを有する以下の態様が挙げられる。
・接着剤層/ガスバリアフィルム/プロテクトフィルム
・剥離シート/接着剤層/ガスバリアフィルム/プロテクトフィルム
剥離シートを有する当該層構成の態様は、ガスバリア性積層体を封止材として使用する前の状態を表したものである。封止材として使用する際には、剥離シートを剥離して除去し、露出した接着剤層の面と被封止物とを貼り合せて被封止物を覆い、封止する。そして、ガスバリアフィルムに積層されたプロテクトフィルムの除去が、被封止物をガスバリア性積層体で封止して封止体を作製する過程、又は当該封止体の加工もしくは搬送等の過程においてに行われる。
【0014】
また、本発明のガスバリア性積層体が有する層構成は、露出した接着剤層の面と被封止物とを貼り合せて被封止物を覆った後は、例えば以下の態様となる。
・接着剤層/ガスバリアフィルム/プロテクトフィルム
ここで、本発明の一態様のガスバリア性積層体が有する接着剤層は、硬化性の接着剤層であってもよい。この場合、硬化性の接着剤層を硬化させた後、ガスバリア性積層体が有する層構成は、以下の態様となる。
・硬化した接着剤層/ガスバリアフィルム/プロテクトフィルム
なお、本発明において、「硬化性の接着剤層」とは、未硬化の接着剤層を意味している。
本発明のガスバリア性積層体により被封止物を封止して作製された封止体は、プロテクトフィルムが剥離されるまでの間、ガスバリアフィルムがプロテクトフィルムにより保護され、ガスバリアフィルムにおける傷や割れの発生が防止される。
ここで、封止体からプロテクトフィルムを剥離した後は、以下の態様となる。
・接着剤層/ガスバリアフィルム
また、接着剤層が硬化性の接着剤層である場合、当該硬化性の接着剤層を硬化させてから、封止体からプロテクトフィルムを剥離した後は、以下の態様となる。
・硬化した接着剤層/ガスバリアフィルム
なお、本明細書では、露出した接着剤層の面と被封止物とを貼り合せて被封止物を覆うことにより被封止物を封止したものを「封止体」と称する。当該封止体は、接着剤層が未硬化であってもよいし、硬化されていてもよいし、未硬化と硬化の中間状態、即ち半硬化状態であってもよい。
なお、当該封止体の接着剤層が未硬化である場合や半硬化状態である場合、当該封止体は、「封止前駆体」であるともいえる。
また、本発明において、封止体の加工の過程には、封止体の接着剤層を硬化させる処理も包含される。
【0015】
本発明者らは、ガスバリア性積層体を使用するまでの保管及び搬送等の過程、被封止物をガスバリア性積層体で封止して封止体を作製する過程、並びに当該封止体の加工及び搬送等の過程において、ガスバリアフィルムに傷や割れが生じるのを防止するために、ガスバリアフィルムの表面全体をプロテクトフィルムで保護し、所望のタイミングでプロテクトフィルムを剥離することを考えた。
ところが、被封止物をガスバリア性積層体で封止した後にプロテクトフィルムを剥離すると、被封止物と接着剤層との間で隙間が発生し、当該隙間から酸素や水蒸気等が浸入して被封止物が劣化する恐れがあることが明らかとなった。また、外観が不良になることも明らかとなった。
この原因を究明すべく、本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、プロテクトフィルムを剥離する際にかかる力によって、被封止物と接着剤層との間で隙間が発生することを突き止めた。
そこで、上記問題を解決すべく、本発明者らはさらに鋭意検討を行った。その結果、ガスバリア性積層体を特定の条件でガラス板に貼付したときの、ガラス板と接着剤層との間の粘着力aと、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bとを、上記式(1)を満たすように調整することによって、上記問題を解決し得ることを見出した。
【0016】
このことから、本発明者らは、被封止物をガスバリア性積層体で封止して封止体を作製する過程、並びに当該封止体の加工及び搬送等の過程のいずれのタイミングでプロテクトフィルムを剥離しても被封止物と接着剤層との間で隙間が発生せず、様々な工程において極めて利用しやすいガスバリア性積層体を提供できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0017】
[ガスバリア性積層体の物性]
本発明のガスバリア性積層体は、当該ガスバリア性積層体を、接着剤層を貼り合せ面として、下記条件(α)でガラス板にローラーで押し当てて、ガスバリア性積層体とガラス板とを貼付した後、下記条件(β)で剥離し、その他の条件はJIS Z0237:2000に準拠して測定される、ガラス板と接着剤層との間の粘着力aと、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bとが、下記式(1)を満たすように調整されている。
a>b・・・(1)
条件(α):温度23℃、圧力0.2MPa、及び速度0.2m/min
条件(β):貼付後、23℃で相対湿度50%の環境下で24時間静置してから剥離速度300mm/minで剥離
【0018】
本発明のガスバリア性積層体において、ガラス板と接着剤層との間の粘着力aは、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bよりも大きく、好ましくは1.0N/50mm以上、より好ましくは2.0N/50mm以上、更に好ましくは3N/50mm以上、より更に好ましくは4N/50mm以上、更になお好ましくは5N/50mm以上である。
なお、本発明の一態様のガスバリア性積層体において、ガラス板と接着剤層との間の粘着力aの上限値は、特に限定されないが、通常20N/50mmである。
【0019】
本発明のガスバリア性積層体において、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bは、ガラス板と接着剤層との間の粘着力aよりも小さく、好ましくは1N/50mm以下、より好ましくは0.5N/50mm以上、更に好ましくは0.4N/50mm以下、より更に好ましくは0.3N/50mm以下である。
なお、本発明の一態様のガスバリア性積層体において、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bの下限値は、特に限定されないが、通常0.05N/50mmである。
【0020】
また、本発明の一態様のガスバリア性積層体において、ガラス板と接着剤層との間の粘着力aと、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bとの差(a-b)は、好ましくは0.1N/50mm以上、より好ましくは0.3N/50mm以上、更に好ましくは0.7N/50mm以上である。
【0021】
以下、本発明のガスバリア性積層体の積層構造を構成する、接着剤層、ガスバリアフィルム、及びプロテクトフィルムについて、ガラス板と接着剤層との間の粘着力a及びガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bに関する上記(1)式を満たすための具体的な方法を挙げながら、詳細に説明する。
【0022】
[接着剤層]
本発明のガスバリア性積層体は、接着剤層を有する。
接着剤層を構成する接着剤組成物は、上記(1)式を満たす限り、特に制限されず、例えば、乾燥固化型の接着剤組成物、加熱溶融型の接着剤組成物、硬化性の接着剤組成物、及び感圧性の接着剤組成物等を用いることができる。接着剤層を構成する接着剤組成物を具体的に例示すると、アクリル系樹脂を含有する接着剤組成物、ウレタン系樹脂を含有する接着剤組成物、シリコーン系樹脂を含有する接着剤組成物、ゴム系の接着剤組成物、ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤組成物、及びエポキシ系樹脂を含有する接着剤組成物等が挙げられる。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、接着剤組成物は、上記樹脂以外のバインダー樹脂を含んでいてもよい。また、接着剤組成物は、硬化性成分、シランカップリング剤、触媒、重合開始剤、及び粘着付与剤等から選択される1種以上を含んでいてもよい。 また、接着剤層の厚みは、被封止物に対する優れた封止性を確保する観点から、好ましくは0.5~300μm、より好ましくは3~200μm、更に好ましくは5~150μm、より更に好ましくは5~80μmである。
【0023】
また、接着剤層の水蒸気透過率は、良好なガスバリア性を確保する観点から、好ましくは100g/m・day以下、より好ましくは85g/m・day以下、更に好ましくは70g/m・day以下である。
なお、本明細書において、「接着剤層の水蒸気透過率」は、ガス透過率測定装置(mocon社製、製品名「PERMATRAN」)を用いて測定した値を意味するが、他の汎用的な水蒸気透過率測定装置を用いた測定値も同様の値を示す。
【0024】
ここで、本発明の一態様のガスバリア性積層体が有する接着剤層は、硬化性の接着剤層であることが好ましい。接着剤層が硬化性であることで、貼付時には接着剤層は未硬化の状態であり、容易に被封止物に貼付することができると共に、被封止物の凹凸に対する追従性も良好なものとできる。そして、硬化性の接着剤層を被封止物に貼付した後に硬化することにより、被封止物と接着剤層とが強固に接着される。その結果、ガスバリア性積層体は、酸素や水蒸気等が浸入することに起因した被封止物の劣化を防止する性能に優れる。
なお、硬化性の接着剤層の水蒸気透過率は、良好なガスバリア性を確保する観点から、上述した「接着剤層の水蒸気透過率」と同様の範囲であることが好ましい。「硬化性の接着剤層の水蒸気透過率」は、上述した「接着剤層の水蒸気透過率」と同様の測定方法により測定することができる。
硬化性の接着剤層は、硬化性の接着剤組成物、具体的には、例えば、熱又はエネルギー線により硬化し得る熱硬化性の接着剤組成物又はエネルギー線硬化性の接着剤組成物等から形成される。
なお、エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、電子線等が挙げられ、好ましくは紫外線である。
硬化性の接着剤層は、熱硬化性の接着剤組成物から形成される熱硬化性の接着剤層であることが好ましい。
【0025】
ここで、本発明の一態様において、硬化性の接着剤層は、硬化性成分(B)を含む接着剤組成物により形成される。また、封止性能をより向上させる観点から、硬化性の接着剤層は、ポリオレフィン系樹脂(A)及び硬化性成分(B)の両方を含む接着剤組成物により形成されることがより好ましい。
【0026】
また、本発明の一態様において、硬化性の接着剤層を形成するための接着剤組成物は、ポリオレフィン系樹脂(A)及び硬化性成分(B)以外の他の成分を含有してもよい。 当該他の成分としては、ポリオレフィン系樹脂(A)以外のバインダー樹脂(A’)、シランカップリング剤(C)、硬化触媒(D)、カチオン重合開始剤(D’)、及び粘着付与剤(E)から選ばれる1種以上が挙げられる。
なお、以降の説明では、「ポリオレフィン系樹脂(A)」、「ポリオレフィン系樹脂以外のバインダー樹脂(A’)」、「硬化性成分(B)」、「シランカップリング剤(C)」、「硬化触媒(D)」、「カチオン重合開始剤(D’)」、及び「粘着付与剤(E)」を、それぞれ「成分(A)」、「成分(A’)」「成分(B)」、「成分(C)」、「成分(D)」、「成分(D’)」、及び「成分(E)」ともいう。
【0027】
本発明の一態様において、ポリオレフィン系樹脂(A)及び硬化性成分(B)の両方を含む接着剤組成物中の成分(A)及び(B)の合計含有量は、当該接着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、更になお好ましくは99質量%以上であり、また、通常100質量%以下である。
また、接着剤組成物が、ポリオレフィン系樹脂(A)及び硬化性成分(B)に加えて、成分(A’)、(C)、(D)、(D’)、及び(E)から選択される1種以上を含む場合、接着剤組成物中の成分(A)及び(B)と、成分(A’)、(C)、(D)、(D’)、及び(E)から選択される1種以上の成分との合計含有量は、当該接着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは80~100質量%、より好ましくは85~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、より更に好ましくは95~100質量%である。
なお、本明細書において、「接着剤組成物の有効成分」とは、接着剤組成物中に含まれる希釈溶媒を除いた成分(固形分)を意味する。
【0028】
以下、接着剤組成物中の成分(A)、(B)、(A’)、(C)、(D)、(D’)、及び(E)について、詳細に説明する。
【0029】
<ポリオレフィン系樹脂(A)>
本発明の一態様において、接着剤層が硬化性の接着剤層である場合、接着剤組成物は、ポリオレフィン系樹脂(A)を含有することが好ましい。
本明細書において、「ポリオレフィン系樹脂」とは、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位を有する重合体を意味する。
接着剤組成物がポリオレフィン系樹脂(A)を含有することで、硬化後の接着剤層の水蒸気透過率を低下させやすい。したがって、硬化後の接着剤層の水蒸気遮断性を向上させやすい。
接着剤組成物中のポリオレフィン系樹脂(A)の含有量は、接着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~95質量%、より好ましくは40~90質量%、更に好ましくは50~80質量%である。
上記ポリオレフィン系樹脂(A)の含有量が、上記範囲にあることで、硬化後の接着剤層の水蒸気透過率をより低下させやすい。
なお、接着剤組成物中のポリオレフィン系樹脂(A)の含有量が増えるほど、ガラス板と硬化性の接着剤層との間の粘着力aが低くなりやすい傾向にあるが、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bを粘着力aよりも低い値に調整することで、上記式(1)を満たし得る。また、要求される水蒸気遮断性を満たす範囲で、接着剤組成物中のポリオレフィン系樹脂(A)の含有量を低減させてガラス板と硬化性の接着剤層との間の粘着力aを粘着力bよりも高い値に調整することでも、上記式(1)を満たし得る。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂(A)が有するオレフィン系単量体としては、炭素数2~8のα-オレフィンが好ましく、中でも、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセンが好ましい。
なお、ポリオレフィン系樹脂(A)は、2種以上のα-オレフィン由来の単位を有していてもよい。また、ポリオレフィン系樹脂(A)は、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位と、オレフィン系単量体と共重合可能な単量体由来の繰り返し単位とからなる共重合体であってもよい。オレフィン系単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、及びスチレン等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を意味し、他の類似用語も同様である。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂(A)の具体例としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリイソブチレン、ポリイソプレン等が挙げられる。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0032】
ここで、本発明の一態様において、接着剤層が硬化性の接着剤層である場合、硬化後の接着剤層の封止性能を更に向上させる観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)は、変性ポリオレフィン系樹脂(A1)を含むことが好ましい。
本明細書において、「変性ポリオレフィン系樹脂(A1)」とは、前駆体となるポリオレフィン系樹脂(A)が変性剤と反応し、主鎖となるポリオレフィン系樹脂(A)に変性剤が有する官能基が側鎖として導入された重合体を意味する。
なお、変性剤は、分子内に2種以上の官能基を有していてもよい。
【0033】
変性剤が有する官能基であって、主鎖となるポリオレフィン系樹脂(A)に側鎖として導入することができる官能基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物に由来の基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アンモニウム基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、ハロゲン原子、アルコキシシリル等が挙げられる。
これらの官能基の中でも、カルボキシル基、カルボン酸無水物に由来の基、カルボン酸エステル基、水酸基、アンモニウム基、アミノ基、イミド基、イソシアネート、アルコキシシリル基が好ましく、中でも、カルボン酸無水物に由来の基が好ましい。
【0034】
ここで、変性ポリオレフィン系樹脂(A1)は、硬化性成分(B)との反応性を高める観点から、酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
本明細書において、「酸変性ポリオレフィン系樹脂」とは、前駆体となるポリオレフィン系樹脂(A)が酸基を有する化合物と反応し、主鎖となるポリオレフィン系樹脂(A)に酸基が側鎖として導入された重合体を意味する。
なお、主鎖となるポリオレフィン系樹脂(A)に、酸基を有する化合物の酸基を側鎖として導入する方法及び条件は、特に限定されず、公知の側鎖の導入手法を採用することができる。
【0035】
酸基を有する化合物としては、主鎖となるポリオレフィン系樹脂(A)に側鎖として導入することができるものであれば、特に限定されないが、好ましくは不飽和カルボン酸及びその無水物が挙げられる。
不飽和カルボン酸及びその無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
これらの不飽和カルボン酸及びその無水物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの不飽和カルボン酸及びその無水物の中でも、硬化後の接着剤層の封止性能をより更に向上させる観点から、無水マレイン酸が好ましい。
【0036】
なお、酸変性ポリオレフィン系樹脂は、市販品であってもよい。
市販品の酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、アドマー(登録商標)(三井化学社製)、ユニストール(登録商標)(三井化学社製)、BondyRam(Polyram社製)、orevac(登録商標)(ARKEMA社製)、モディック(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。
【0037】
前駆体となるポリオレフィン系樹脂(A)と反応させる、酸基を有する化合物の配合量は、前駆体となるポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、更に好ましくは0.2~1.0質量部である。
酸基を有する化合物の配合量が、上記範囲にあることで、硬化後の接着剤層の封止性能を向上させやすい。
【0038】
ポリオレフィン系樹脂(A)及び変性ポリオレフィン系樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000~2,000,000、より好ましくは20,000~1,500,000、更に好ましくは25,000~250,000、より更に好ましくは30,000~150,000である。
ポリオレフィン系樹脂(A)及び変性ポリオレフィン系樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)が、上記範囲にあることで、接着剤組成物から形成される接着剤層をシート形状に維持しやすい。
【0039】
なお、本発明の一態様において、ポリオレフィン系樹脂(A)は、変性ポリオレフィン系樹脂(A1)のみから構成されてもよいし、変性ポリオレフィン系樹脂(A1)と非変性のポリオレフィン系樹脂とから構成されてもよい。
変性ポリオレフィン系樹脂(A1)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
変性ポリオレフィン系樹脂(A1)の含有量が、上記範囲にあることで、硬化後の接着剤層の封止性能をより向上させやすい。
【0040】
<硬化性成分(B)>
本発明の一態様において、接着剤層が硬化性の接着剤層である場合、接着剤組成物は、硬化性成分(B)を含有する。
本明細書において、「硬化性成分(B)」とは、加熱又はエネルギー線の照射等により、網状構造となって不溶不融の状態に硬化する成分を意味する。
接着剤組成物が硬化性成分(B)を含有することで、接着剤層が硬化性となり、硬化後の接着剤層の封止性能が向上する。
なお、硬化性成分(B)は、熱硬化性成分であってもよく、エネルギー線硬化性成分であってもよいが、熱硬化性成分であることが好ましい。
接着剤組成物中の硬化性成分(B)の含有量は、接着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは5~50質量%、より好ましくは5~48質量%、更に好ましくは5~45質量%、より更に好ましくは10~40質量%である。
硬化性成分(B)の含有量が、上記範囲にあることで、硬化後の接着剤層の封止性能をより向上させやすい。
また、接着剤組成物がポリオレフィン系樹脂(A)を含む場合、接着剤組成物中における、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対する硬化性成分(B)の含有量は、好ましくは5~110質量部、より好ましくは10~100質量部である。硬化性成分(B)の含有量がこの範囲内にある接着剤組成物から形成された接着剤層を硬化させると、当該硬化後の接着剤層は水蒸気遮断性により優れる。
【0041】
硬化性成分(B)としては、例えば、硬化性エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、マレイミド樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、硬化性エポキシ樹脂(B1)を含むことが好ましい。
本明細書において、「硬化性エポキシ樹脂(B1)」とは、加熱又はエネルギー線の照射等により、網状構造となって不溶不融の状態に硬化するエポキシ化合物を意味する。
【0042】
また、硬化性エポキシ樹脂(B1)は、多官能エポキシ樹脂(B2)を含むことが好ましい。
本明細書において、「多官能エポキシ樹脂(B2)」とは、分子内に少なくともエポキシ基を2つ以上有する化合物を意味する。
【0043】
多官能エポキシ樹脂(B2)としては、硬化後の接着剤層の封止性能を更に向上させる観点から、分子内にエポキシ基を2つ有する2官能エポキシ樹脂が好ましい。
2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂(例えばフェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂)等の芳香族エポキシ化合物;水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル等の脂環式エポキシ化合物;ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、2,2-ビス(3-グリシジル-4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、ジメチロールトリシクロデカンジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物;等が挙げられる。これらの2官能エポキシ樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
ここで、本発明の一態様において、接着剤組成物は、成分(B)として、25℃で液体である多官能エポキシ化合物(BL)を含有することが好ましい。
以降の説明では、25℃で液体である多官能エポキシ化合物(BL)を「成分(BL)」ともいう。
成分(BL)は、接着剤組成物が高温になったときに、接着剤組成物の貯蔵弾性率を低下させる効果(以下、「貯蔵弾性率低下効果」ともいう。)を有する。このため、本発明の一態様において、接着剤組成物がこのような成分(BL)を含有することで、凹凸追従性に優れる接着剤層を効率よく形成することができる。
【0045】
成分(BL)の重量平均分子量(Mw)としては、成分(BL)に起因したアウトガスの発生を抑制する観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,200以上、更に好ましくは1,500以上、より更に好ましくは1,800以上、更になお好ましくは2,100以上である。
また、貯蔵弾性率低下効果がより向上した接着剤組成物とする観点から、成分(BL)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,500以下である。
成分(BL)の重量平均分子量(Mw)の大きさにより、ガラス板と硬化性の接着剤層との間の粘着力aは変化する。具体的には、接着剤組成物中の成分(BL)の重量平均分子量(Mw)が大きいほど、粘着力aが低下する傾向にあるが、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bを粘着力aよりも低い値に調整することで、上記式(1)を満たし得る。また、要求されるアウトガス発生抑制性能を満たす範囲で成分(BL)の重量平均分子量(Mw)を小さくしてガラス板と硬化性の接着剤層との間の粘着力aを粘着力bよりも高い値に調整することでも、上記式(1)を満たし得る。
【0046】
成分(BL)のエポキシ当量は、好ましくは100~1,500g/eq、より好ましくは150~1500g/eq、更に好ましくは200~1,400g/eq、より更に好ましくは240~1,300g/eqである。
本明細書において、「エポキシ当量」とは、1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数(g/eq)を意味し、JIS K 7236:2009に準拠して測定される値である。
【0047】
接着剤組成物中の成分(BL)の含有量は、接着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは5~40質量%、より好ましくは8~36質量%、更に好ましくは10~34質量%である。
成分(BL)の含有量がこの範囲内にあることで、貯蔵弾性率低下効果を得つつ、成分(BL)に起因したアウトガスの発生も抑制される。成分(BL)の含有量の増減により、ガラス板と硬化性の接着剤層との間の粘着力aは変化する。接着剤組成物中の成分(BL)の含有量が少ない場合には、粘着力aが低下する傾向にある。この場合、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bを粘着力aよりも低い値に調整することで、上記式(1)を満たし得る。また、接着剤組成物中の成分(BL)の含有量を増やして、ガラス板と硬化性の接着剤層との間の粘着力aを粘着力bよりも高い値に調整することで、上記式(1)を満たし得る。
【0048】
<ポリオレフィン系樹脂(A)以外のバインダー樹脂(A’)>
本発明の一態様において、接着剤組成物は、ポリオレフィン系樹脂(A)以外のバインダー樹脂(A’)を含有していてもよい。ポリオレフィン系樹脂以外のバインダー樹脂(A’)としては、フェノキシ系樹脂、アセタール系樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂(A)以外のバインダー樹脂(A’)は、ポリオレフィン系樹脂(A)と共に用いてもよいし、ポリオレフィン系樹脂(A)に代えて用いてもよい。
【0049】
<シランカップリング剤(C)>
本発明の一態様において、接着剤層が硬化性の接着剤層である場合、接着剤組成物は、シランカップリング剤(C)を含有することが好ましい。
本明細書において、「シランカップリング剤(C)」とは、分子内に2種以上の異なる反応基を有する有機ケイ素化合物を意味する。
接着剤組成物が更にシランカップリング剤(C)を含有することで、常温及び高温環境下のいずれにおいても、硬化後の接着剤層の封止性能を良好に確保しやすい。なお、接着剤層が硬化性ではない場合にも、接着剤組成物はシランカップリング剤(C)を含有していてもよい。この場合も接着剤層の封止性能を良好に確保しやすい。
接着剤組成物中のシランカップリング剤の含有量は、接着剤組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~0.1質量%、より好ましくは0.02~0.09質量%である。
また、接着剤組成物がポリオレフィン系樹脂(A)を含む場合、接着剤組成物中のシランカップリング剤(C)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~5.0質量部、より好ましくは0.05~1.0質量部である。
シランカップリング剤(C)の含有量が、上記範囲にあることで、高温高湿の環境下に長時間暴露された場合でも、硬化後の接着剤層の封止性能を良好に確保しやすい。
【0050】
シランカップリング剤(C)としては、常温及び高温環境下のいずれにおいても、硬化後の接着剤層の封止性能をより良好に確保しやすくする観点から、分子内に少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
このようなシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3-クロロプロピルトリメトキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン;等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
<硬化触媒(D)>
本発明の一態様において、接着剤層が硬化性の接着剤層である場合、接着剤組成物は、硬化触媒(D)を含有することが好ましい。
本明細書において、「硬化触媒(D)」とは、硬化性成分(B)を熱又はエネルギー線により硬化させる反応を促進する触媒を意味する。
接着剤組成物が硬化触媒(D)を含有することで、硬化後の接着剤層の高温時における封止性能を向上させやすい。
接着剤組成物に含有させる硬化触媒(D)の含有量は、硬化性成分(B)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。
上記硬化触媒(D)の含有量が、上記範囲にあることで、硬化後の接着剤層の高温時における封止性能をより向上させやすい。
【0052】
硬化触媒(D)としては、硬化性成分(B)が熱硬化性成分である場合、加熱による硬化を好適に進行させる観点から、熱硬化型の硬化触媒であるイミダゾール系硬化触媒が好ましい。
イミダゾール系硬化触媒としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのイミダゾール系硬化触媒の中でも、2-エチル-4-メチルイミダゾールが好ましい。
【0053】
<カチオン重合開始剤(D’)>
本発明の一態様において、接着剤層が硬化性の接着剤層である場合、接着剤組成物は、更に、カチオン重合開始剤(D’)を含有することも好ましい。カチオン重合開始剤(D’)は、接着剤層が熱硬化性の接着剤層である場合には、熱カチオン重合開始剤であることが好ましく、接着剤層がエネルギー線硬化性の接着剤層である場合には、光カチオン重合開始剤であることが好ましい。熱カチオン重合開始剤としては、スルホニウム塩、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられ、スルホニウム塩が好ましい。光カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、アンチモン酸塩系化合物、ジアゾニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等が挙げられ、スルホニウム塩系化合物が好ましい。
接着剤組成物がカチオン重合開始剤(D’)を含有する場合、硬化性成分(B)は、硬化性エポキシ樹脂(B1)であることが好ましい。
【0054】
<粘着付与剤(E)>
本発明の一態様において、接着剤組成物は、接着剤層が硬化性の接着剤層である場合、粘着付与剤(E)を含有してもよい。
本発明の一態様で用いる粘着付与剤(E)は、硬化性の接着剤層が有する粘着特性を補助的に向上させる成分であって、重量平均分子量(Mw)が通常1万未満のオリゴマーを指し、後述する粘着剤組成物に含まれる樹脂(X)とは区別されるものである。なお、接着剤層が硬化性ではない場合にも、接着剤組成物は粘着付与剤(E)を含有していてもよい。
粘着付与剤(E)の重量平均分子量(Mw)は、通常1万未満であるが、好ましくは400~8000、より好ましくは500~5000、より好ましくは800~3500である。
【0055】
接着剤組成物中の粘着付与剤(E)の含有量は、粘着付与剤(E)に起因したアウトガスの発生を抑制する観点から、低減することが好ましく、接着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0質量%超30質量%以下、より好ましくは0質量%超15質量%以下、更に好ましくは1~10質量%である。また、アウトガスの発生を可能な限り抑制したい場合には、接着剤組成物が粘着付与剤(E)を含まないことも好ましい。
また、接着剤組成物に含有させる粘着付与剤(E)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0質量部超~80質量部、より好ましくは0質量部超~30質量部、更に好ましくは1~20質量部である。また、アウトガスの発生を可能な限り抑制したい場合には、粘着付与剤(E)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、できるだけ少ないことが好ましく、0質量部であることがより好ましい。
一方で、接着剤組成物中の粘着付与剤(E)の含有量が少ないと、ガラス板と硬化性の接着剤層との間の粘着力aが低下する傾向にある。この場合、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bをより低い値に調整することで、上記式(1)を満たし得る。また、要求されるアウトガス発生抑制性能を満たす範囲で接着剤組成物中の粘着付与剤(E)の含有量を増やすことで、ガラス板と硬化性の接着剤層との間の粘着力aを粘着力bよりも高い値に調整することでも、上記式(1)を満たし得る。
【0056】
粘着付与剤(E)としては、例えば、重合ロジン、重合ロジンエステル、ロジン誘導体等のロジン系樹脂;ポリテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂及びその水素化物、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂;クマロン・インデン樹脂;脂肪族石油系樹脂、芳香族系石油樹脂及びその水素化物、脂肪族/芳香族共重合体石油樹脂等の石油樹脂;スチレン又は置換スチレン重合体;α-メチルスチレン単一重合系樹脂、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとの共重合体、スチレン系モノマーとα-メチルスチレンと脂肪族系モノマーとの共重合体、スチレン系モノマーからなる単独重合体、スチレン系モノマーと芳香族系モノマーとの共重合体等のスチレン系樹脂;等が挙げられる。これらの粘着付与剤(E)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、粘着付与剤(E)としては、スチレン系樹脂が好ましく、スチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとの共重合体がより好ましい。
【0057】
粘着付与剤(E)の軟化点は、形成される接着剤層の形状維持性をより向上させると共に、硬化後の接着剤層が高温環境下でも優れた接着性を発現し得るようにする観点から、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは85~170℃、更に好ましくは90~150℃である。
なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 5902に準拠して測定した値を意味する。
2種以上の複数の粘着付与剤(E)を用いる場合、それら複数の粘着付与剤の軟化点の加重平均が、上記範囲に属することが好ましい。
【0058】
<その他の添加剤>
本発明の一態様において、接着剤組成物は、本発明の効果を大きく損なうことのない範囲で、上述の成分(A)~(E)以外のその他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤としては、用途に応じて適宜選択されるが、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、酸化防止剤、樹脂安定剤、充填剤、顔料、増量剤、軟化剤等の添加剤が挙げられる。
これらの添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、接着剤層が硬化性ではない場合にも、粘着剤組成物は、これらの添加剤を含有していてもよい。
【0059】
<希釈溶媒>
本発明の一態様において、接着剤組成物は、接着剤層の成形性を良好とする観点から、さらに希釈溶媒を含有してもよい。
希釈溶媒としては、有機溶媒の中から適宜選択することができるが、具体的には、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、溶媒の含有量は、塗布性等を考慮して適宜設定される。
また、接着剤層が硬化性ではない場合にも、同様の観点から、粘着剤組成物は、希釈溶媒を含有していてもよい。
【0060】
<接着剤層の形成方法>
本発明のガスバリア性積層体を構成する接着剤層の形成方法は、特に限定されず、公知の手法等を採用して適宜形成することができる。
ここで、本発明の一態様において、接着剤層は、上述の接着剤組成物から形成されることが好ましい。例えば、上述した剥離シートの剥離処理面上に、上述の接着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させて接着剤層を形成する方法が挙げられる。
なお、本明細書において、接着剤層が硬化性の接着剤層である場合、硬化性の接着剤層を形成する過程において、塗膜を乾燥する際にかかる熱による加熱処理は、硬化性の接着剤層の硬化処理には含まれない。
【0061】
接着剤組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
また、塗布性を良好とする観点から、接着剤組成物に上述の希釈溶媒を加えて、溶液の形態とすることが好ましい。
塗膜を乾燥させるときの乾燥条件としては、例えば、通常80~130℃、好ましくは90~110℃で、30秒~5分間の乾燥処理を施すことが好ましい。
【0062】
[ガスバリアフィルム]
本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリアフィルムを有する。ガスバリアフィルムは、接着剤層上に積層される。本発明のガスバリア性積層体がガスバリアフィルムを有することで、酸素や水蒸気等の気体の透過を防止する効果が高い優れたガスバリア性を発揮させることができる。
また、本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリアフィルム上にプロテクトフィルムが積層されており、ガスバリアフィルムがプロテクトフィルムで保護される。そのため、ガスバリア性積層体の使用までの保管や搬送時に加えて、被封止物をガスバリア性積層体で封止して封止体を作製する過程、及び当該封止体の加工及び搬送等の過程において、ガスバリアフィルムに傷や割れが発生するのを防止することができる。
【0063】
本発明の一態様において、ガスバリア性積層体が有するガスバリアフィルムは、少なくとも基材層を有し、ガスバリア機能を有するフィルムであることが好ましい。当該ガスバリアフィルムの一態様としては、基材層及びガスバリア層を有するものが挙げられる。例えば、以下の層構成を有する態様が挙げられる。
・基材層/ガスバリア層
また、上記の「基材層/ガスバリア層」の態様において、基材層とガスバリア層との密着性を上げるために、下記の態様のように、基材層とガスバリア層との間にアンカーコート層を有していてもよい。
・基材層/アンカーコート層/ガスバリア層
【0064】
本発明の一態様において、ガスバリア性積層体が有するガスバリアフィルムは、基材層それ自体がガスバリア機能を有し、基材層がガスバリア層としての機能も兼ね備えた単層の樹脂フィルム等であってもよい。
【0065】
本発明の一態様において、ガスバリア性積層体は、例えば、下記の態様の様に、ガスバリア層が基材層よりも接着剤層に近い位置に配置されていることが好ましい。
・基材層/ガスバリア層/接着剤層
これにより、ガスバリア層と接着剤層との間に基材層が介在しないため、ガスバリア性積層体が水蒸気を遮断する性能がより向上する。
なお、ガスバリア層が基材層よりも接着剤層に近い位置に配置された構成である場合、プロテクトフィルムはガスバリアフィルムの基材層上に積層される。基材層は、後述するように樹脂フィルムが用いられるため、プロテクトフィルムと基材層との接着性が高まりやすい。また、プロテクトフィルムが基材層に直接積層されない場合であっても、基材層上に設けられた何らかの有機物層を介してプロテクトフィルムが積層されると、プロテクトフィルムと基材層との接着性が高まりやすい。しかし、本発明のガスバリア性積層体は、上記式(1)の関係を満たすように調整されているので、プロテクトフィルムを剥離する際に、被封止物と接着剤層との間で隙間が生じない。
【0066】
本発明の一態様において、ガスバリア性積層体が有するガスバリアフィルムについての、温度40℃、90%RH(相対湿度)の環境下における水蒸気透過率は、好ましくは0.1g/m/day以下、より好ましくは0.05g/m/day以下、更に好ましくは0.005g/m/day以下である。
ガスバリアフィルムの水蒸気透過率が0.1g/m/day以下であることにより、ガスバリア性積層体を用いることで、被封止物の劣化を効果的に抑制しやすい。例えば、透明基板上に形成された有機EL素子等の素子内部に酸素や水蒸気等が浸入するのを抑え、電極や有機層が劣化することを効果的に抑制しやすい。
また、ガスバリアフィルムと接着剤層とを有するガスバリア性積層体についても、温度40℃、90%RH(相対湿度)の環境下における水蒸気透過率は、上記と同様の値であることが好ましい。
なお、本明細書において、「ガスバリアフィルムの水蒸気透過率」は、ガス透過率測定装置(mocon社製、製品名「AQUATRAN 2」)を用いて測定した値を意味するが、他の汎用的な水蒸気透過率測定装置を用いた測定値も同様の値を示す。
【0067】
本発明の一態様において、ガスバリア性積層体が有するガスバリアフィルムは、光学透明性を有することが好ましい。具体的には、JISK7136:2000に準拠して測定される全光線透過率が、80%で以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、JISK7136:2000に準拠して測定される、L表示色系におけるb*値が、好ましくは2以下であり、より好ましくは1.5以下であり、更に好ましくは1以下である。
【0068】
以下、本発明の一態様のガスバリア性積層体に用いられるガスバリアフィルムとして、基材層とガスバリア層とが積層された積層構造を有するガスバリアフィルムを例に挙げて詳細に説明する。
【0069】
<基材層>
ガスバリアフィルムが有する基材層としては、樹脂成分を含む樹脂フィルムが好ましい。
当該樹脂成分としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、シクロオレフィン系コポリマー、芳香族系重合体、及びポリウレタン系ポリマー等が挙げられる。
これらの中でも、透明性が高く、光学的に等方性であるガスバリアフィルムとする観点から、ポリカーボネート、シクロオレフィン系ポリマー、シクロオレフィン系コポリマーが好ましい。
なお、これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、基材層は2種以上の樹脂フィルムを積層したものであってもよい。
光学等方性を有する樹脂フィルムは、有機EL素子等の発光素子をディスプレイ用途で利用する際のガスバリアフィルムの構成材料としてより好ましい樹脂フィルムである一方、屈曲性に劣り、脆いためハンドリング時に傷や割れが生じやすい欠点がある。
本発明のガスバリア性積層体では、ガスバリアフィルムの構成材料として、ポリカーボネート、シクロオレフィン系ポリマー、及びシクロオレフィン系コポリマー等のように屈曲性に劣り、脆い樹脂フィルムを用いる場合であっても、ガスバリアフィルムがプロテクトフィルムで保護されるので、ハンドリング時にガスバリアフィルムに傷や割れが発生するのを防止することができ、当該傷や割れに起因する輝点等の欠陥がディスプレイに発生するのを抑止できる。したがって、有機EL素子等の発光素子を利用したディスプレイ製造工程等において、歩留まりを向上させ得る。
【0070】
ガスバリアフィルムが有する基材層の厚さは、特に制限はなく、好ましくは0.5~500μm、より好ましくは1~200μm、さらに好ましくは5~100μmである。
ここで、本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリアフィルム上にプロテクトフィルムが積層される。そのため、基材層が薄い場合であっても、プロテクトフィルムによってガスバリア性積層体の厚みを確保することができるため、ガスバリア性積層体のハンドリング性は十分に確保することができる。したがって、基材層の厚さは、一般的にハンドリング性が確保し難くなる30μm以下であってもよい。したがって、本発明の一態様のガスバリア性積層体が有する基材層の厚さは、1~30μmであってもよく、1~25μmであってもよく、1~20μmであってもよい。
【0071】
<ガスバリア層>
ガスバリアフィルムが有するガスバリア層は、ガスバリアフィルムの厚みを薄くすることができ、優れたガスバリア性を有するとの観点から、無機膜、及び、高分子化合物を含み、改質処理を施された高分子層が好ましく、当該高分子層であることがより好ましい。当該高分子層がガスバリア層であることによって、ガスバリア層を柔軟性に富むものとして、ガスバリアフィルムの屈曲への耐久性を優れたものとできる。
【0072】
高分子層に含まれる高分子化合物としては、例えば、ポリオルガノシロキサン、ポリシラザン系化合物等のケイ素含有高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。
これらの高分子化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成できるとの観点から、高分子層に含まれる高分子化合物としては、ケイ素含有高分子化合物が好ましく、ポリシラザン系化合物がより好ましい。
ポリシラザン系化合物の数平均分子量としては、好ましくは100~50,000である。
【0073】
ポリシラザン系化合物は、分子内に-Si-N-結合(シラザン結合)を含む繰り返し単位を有する重合体であり、具体的には、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
【化1】
【0074】
上記一般式(I)中、nは、繰り返し単位数を示し、1以上の整数を表す。
Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基又はアルキルシリル基を表す。
これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
なお、ガスバリア層に含まれる高分子化合物としては、前記一般式(I)中のRx、Ry、Rzが全て水素原子である無機ポリシラザンであってもよく、Rx、Ry、Rzの少なくとも1つが水素原子以外の基である有機ポリシラザンであってもよい。
【0075】
ポリシラザン系化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリシラザン系化合物として、ポリシラザン変性物を用いることもでき、また、市販品を用いることもできる。
【0076】
前記高分子層は、上述した高分子化合物の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに他の成分を含有してもよい。
他の成分としては、例えば、硬化剤、他の高分子、老化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記高分子層中の高分子化合物の含有量は、より優れたガスバリア性を有するガスバリア層とする観点から、高分子層中の成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%である。
【0077】
また、ガスバリアフィルムが有する高分子層の厚さは、好ましくは50~500nm、より好ましくは50~300nm、更に好ましくは50~200nmである。
本発明においては、高分子層の厚みがナノオーダーであっても、十分なガスバリア性を有するガスバリア性積層体を得ることができる。
【0078】
高分子層を形成する方法としては、例えば、高分子化合物の少なくとも1種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有する高分子層形成用溶液を、スピンコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等の公知の装置を用いて塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥して形成する方法が挙げられる。
【0079】
高分子層の改質処理としては、イオン注入処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、及び熱処理等が挙げられる。これらの処理は、1種類を単独で行うこともできるが、2種類以上を組み合わせて行うこともできる。
イオン注入処理は、後述するように、高分子層にイオンを注入して、高分子層を改質する方法である。
プラズマ処理は、高分子層をプラズマ中に晒して、高分子層を改質する方法である。例えば、特開2012-106421号公報に記載の方法に従って、プラズマ処理を行うことができる。
紫外線照射処理は、高分子層に紫外線を照射して高分子層を改質する方法である。例えば、特開2013-226757号公報に記載の方法に従って、紫外線改質処理を行うことができる。
これらの中でも、高分子層の表面を荒らすことなく、その内部まで効率よく改質し、よりガスバリア性に優れるガスバリア層を形成できるとの観点から、高分子層の改質処理としては、イオン注入処理が好ましい。
【0080】
イオン注入処理の際に、高分子層に注入されるイオンとしては、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;メタン、エタン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;金属イオン;有機ケイ素化合物のイオン;等が挙げられる。
これらのイオンは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、より簡便にイオンを注入することができ、特に優れたガスバリア性を有するガスバリア層が得られるとの観点から、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオンが好ましく、アルゴンイオンがより好ましい。
【0081】
イオンを注入する方法としては、特に限定されない。例えば、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオン(プラズマ生成ガスのイオン)を注入する方法等が挙げられ、簡便にガスバリア層が得られることから、プラズマ中のイオンを注入する方法が好ましい。
プラズマ中のイオンの注入法は、例えば、プラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、イオンを注入する層に負の高電圧パルスを印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、イオンを注入する層の表面部に注入して行うことができる。
【0082】
ガスバリア層として用いられる無機膜としては、無機化合物や金属の気相成膜による膜が挙げられる。無機化合物の膜の原料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の無機窒化物;無機炭化物;無機硫化物;酸化窒化ケイ素等の無機酸化窒化物;無機酸化炭化物;無機窒化炭化物;無機酸化窒化炭化物等が挙げられる。
金属の膜の原料としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、及びスズ等が挙げられる。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、ガスバリア性の観点から、無機酸化物、無機窒化物又は金属を原料とする無機膜が好ましく、さらに、透明性の観点から、無機酸化物又は無機窒化物を原料とする無機膜が好ましい。また、無機膜は、単層でもよく、多層でもよい。
【0083】
無機膜の厚みは、ガスバリア性と取り扱い性の観点から、好ましくは10~2000nm、より好ましくは20~1000nm、より好ましくは30~500nm、さらに好ましくは40~200nmの範囲である。
【0084】
無機膜を形成する気相成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理的蒸着)法や、熱CVD法、プラズマCVD法、及び光CVD法等のCVD法(化学的蒸着法)が挙げられる。
【0085】
<アンカーコート層>
本発明の一態様において、基材層とガスバリア層との密着性をより向上させる観点から、基材層とガスバリア層との間にアンカーコート層を設けてもよい。
アンカーコート層としては、例えば、紫外線硬化性化合物を含む組成物を硬化した層が挙げられる。当該紫外線硬化性化合物を含む組成物は、シリカ粒子等の無機充填材を含有していてもよい。
アンカーコート層の厚さは、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.5~5μmである。
【0086】
[プロテクトフィルム]
本発明のガスバリア性積層体は、プロテクトフィルムを有する。プロテクトフィルムは、ガスバリアフィルム上に積層され、ガスバリアフィルムを保護する。
また、ガスバリアフィルムの保護が不要になったタイミングやガスバリアフィルムを露出させる必要が生じたタイミング等、所望のタイミングでプロテクトフィルムを剥離しても、被封止物と接着剤層との間で隙間が生じることがなく、酸素や水分等の浸入が防止される。また、外観が不良となることも防止される。
【0087】
本発明の一態様において、ガスバリア性積層体が有するプロテクトフィルムは、少なくともプロテクト層を有する。プロテクトフィルムの態様としては、プロテクト層単層であってもよいが、プロテクト層と粘着剤層との積層構造であることが好ましい。プロテクト層と粘着剤層との積層構造とすることで、プロテクトフィルムの粘着力を調整して、上記式(1)を満たすガスバリア性積層体を得やすい。
【0088】
なお、本発明のガスバリア性積層体は、プロテクトフィルムを有することによって、ガスバリアフィルムの基材層を薄膜化しつつもガスバリア性積層体のハンドリング性を良好なものとできる。
本発明の一態様において、プロテクトフィルムとガスバリアフィルムの基材層との合計厚さは、好ましくは40~500μm、より好ましくは40~200μm、更に好ましくは50~150μmである。
【0089】
以下、本発明の一態様のガスバリア性積層体に用いられるプロテクトフィルムとして、プロテクト層と粘着剤層とが積層された積層構造を有するプロテクトフィルムを例に挙げて詳細に説明する。
【0090】
<プロテクト層>
プロテクトフィルムが有するプロテクト層としては、樹脂成分を含む樹脂フィルムが好ましい。
当該樹脂成分としては、ガスバリアフィルムの基材層として挙げた樹脂成分のうち、耐衝撃性の高いものが挙げられる。このような樹脂成分としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、芳香族系重合体、及びポリウレタン系ポリマー等が挙げられる。
なお、これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 また、これらを着色したフィルムも用いてもよい。着色を施すことによって、プロテクトフィルムの有無を容易に判断できると共に、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムの界面を認識し易くできるのでプロテクトフィルムを剥離する際に便利である。
【0091】
プロテクトフィルムが有するプロテクト層の厚さは、ガスバリアフィルムの保護に十分な厚さを有していればよく、好ましくは1~500μm、より好ましくは5~200μm、更に好ましくは10~100μmである。
【0092】
プロテクトフィルムが有するプロテクト層の厚さとガスバリアフィルムが有する基材層の厚さの比(プロテクト層の厚さ/基材層の厚さ)は、基材層を薄膜化しつつもガスバリア性積層体のハンドリング性を良好なものとする観点から、好ましくは1~5、より好ましくは1.2~4.5、更に好ましくは1.5~4である。
【0093】
<粘着剤層>
プロテクトフィルムが有する粘着剤層は、プロテクト層の一方の面に積層され、プロテクト層とガスバリアフィルムとを貼り合せるために利用される層である。
ここで、本発明のガスバリア性積層体は、上記式(1)の関係を満たす観点から、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bは、低く調整されることが好ましい。
ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bは、プロテクトフィルムが有する粘着剤層の粘着性を低くすることによって、低く調整することができる。
プロテクトフィルムが有する粘着剤層の粘着性を低くする方法としては、例えば、粘着剤層の厚さを薄くすること、及び粘着剤層の種類を変更すること等が挙げられる。なお、本発明のガスバリア性積層体が有する接着剤層には、被封止物を封止するために必要な特性を付与しなければならない。したがって、接着剤層を形成するための接着剤組成物の原料の種類や原料配合量の調整等により粘着力aを変化させるよりも、ガスバリアフィルムへの貼付特性のみを制御すればよい粘着剤層の粘着性の調整により粘着力bを変化させることのほうが容易である。
【0094】
粘着剤層の厚さは、粘着剤層の粘着性を低下させる観点から、好ましくは0.1μm~50μm、より好ましくは0.5μm~40μm、更に好ましくは1μm~25μmである。
【0095】
粘着剤層の種類は、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物に含まれる重合体である樹脂の選択によって変更することができる。以下、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物について、重合体である樹脂の選択についても踏まえながら説明する。
【0096】
<粘着剤組成物>
粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物は、重合体である樹脂(X)を含む。
樹脂(X)は、それ自体が粘着性を有していてもよいし、粘着性を有していなくともよい。樹脂(X)が粘着性を有しない場合には、後述する粘着付与剤を粘着剤組成物に添加することで、粘着剤組成物から形成される粘着剤層が粘着性を発揮するようにしてもよい。
なお、本発明の一態様において、粘着剤組成物に含まれる樹脂(X)以外の成分は、必要に応じて適宜調整可能である。
例えば、本発明の一態様において、粘着力を所望の範囲に調整する観点から、粘着剤組成物は、更に粘着付与剤及び架橋剤からなる群より選ばれる1種以上を含有してもよく、これら以外にも、希釈溶媒及び一般的な粘着剤に使用される粘着剤用添加剤からなる群より選ばれる1種以上を含有してもよい。
【0097】
(樹脂(X))
樹脂(X)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万以上であるが、より好ましくは1万~200万、更に好ましくは2万~150万である。
粘着剤組成物に含まれる樹脂(X)としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、及びポリエステル系樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂(X)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの樹脂(X)が、2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
ここで、粘着剤組成物により形成される粘着剤層の粘着性を適切に調整して、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bを低く調整する観点から、樹脂(X)は、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂がより好ましい。
【0098】
粘着剤組成物中の樹脂(X)の含有量は、粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)中、好ましくは30~99.99質量%、より好ましくは40~99.95質量%、より好ましくは50~99.90質量%、更に好ましくは55~99.80質量%、より更に好ましくは60~99.50質量%である。
以下、本発明の一態様において、樹脂(X)として好ましいアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂について説明する。
【0099】
(アクリル系樹脂)
本発明の一態様において、粘着剤組成物により形成される粘着剤層の粘着性を適切に調整して、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bを低く調整する観点から、粘着剤組成物に含まれる樹脂(X)が、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
樹脂(X)中のアクリル系樹脂の含有割合としては、粘着剤組成物に含まれる樹脂(X)の全量(100質量%)中、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは85~100質量%である。
【0100】
樹脂(X)として使用し得るアクリル系樹脂としては、例えば、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体等が挙げられる。
【0101】
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、好ましくは10万~150万、より好ましくは13万~130万である。
【0102】
アクリル系樹脂としては、アルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「モノマー(a1’)」ともいう。)に由来する構成単位(a1)を有するアクリル系重合体(A0)が好ましく、構成単位(a1)と共に、官能基含有モノマー(a2’)(以下、「モノマー(a2’)」ともいう。)に由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A1)がより好ましい。
【0103】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、粘着剤層の薄膜化に伴って、粘着力を低く調整し易くする観点から、好ましくは1~24、より好ましくは1~12である。
なお、モノマー(a1’)が有するアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0104】
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
モノマー(a1’)としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
これらのモノマー(a1’)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、モノマー(a1’)は、ブチル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いることが好ましい。
また、これらの質量比[ブチル(メタ)アクリレート/2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート]は、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bを低く調整し易くする観点から、好ましくは1/9から5/5、より好ましくは1/9~4/6、更に好ましくは1/9~3/7である。
【0105】
構成単位(a1)の含有量は、アクリル系重合体(A0)又はアクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)中、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~99.9質量%、更に好ましくは70~99.5質量%、より更に好ましくは80~99.0質量%である。
【0106】
モノマー(a2’)が有する官能基は、後述の粘着剤組成物が含有してもよい架橋剤と反応し、架橋起点となり得る官能基又は架橋促進効果を有する官能基を指し、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
つまり、モノマー(a2’)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
モノマー(a2’)としては、水酸基含有モノマー及びカルボキシ基含有モノマーが好ましい。
【0107】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
【0108】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸及びその無水物;2-(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
モノマー(a2’)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
これらのモノマー(a2’)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
構成単位(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)中、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.3~30質量%、更に好ましくは0.5~20質量%、より更に好ましくは0.7~10質量%である。架橋起点となる構成単位(a2)の含有量が多いほど、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bが低くなる傾向がある。
【0110】
アクリル系共重合体(A1)は、更にモノマー(a1’)及び(a2’)以外の他のモノマー(a3’)に由来の構成単位(a3)を有していてもよい。
なお、アクリル系共重合体(A1)において、構成単位(a1)及び(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)中、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは85~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
【0111】
モノマー(a3’)としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
これらのモノマー(a3’)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
モノマー(a3’)としては、酢酸ビニルが好ましい。
【0112】
(オレフィン系樹脂)
樹脂(X)として使用し得るオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィン化合物に由来する構成単位を有する重合体であれば、特に限定されない。
当該オレフィン系樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的なオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンと他のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等)等が挙げられる。これらの中でも、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である、エチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。
なお、前記のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。
前記のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、酢酸ビニル、アルキル(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等が挙げられる。
【0113】
オレフィン系樹脂は、ゴム系樹脂であってもよい。樹脂(X)として使用し得る、ゴム系樹脂としては、例えば、ポリイソブチレン系樹脂が挙げられる。ポリイソブチレン系樹脂(以下、「PIB系樹脂」ともいう。)は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方にポリイソブチレン骨格を有する樹脂であれば、特に限定されない。
PIB系樹脂の数平均分子量(Mn)としては、好ましくは2万以上、より好ましくは3万~100万、更に好ましくは5万~80万、より更に好ましくは7万~60万である。
【0114】
PIB系樹脂としては、例えば、イソブチレンの単独重合体であるポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレンの共重合体、イソブチレンとn-ブテンの共重合体、イソブチレンとブタジエンの共重合体、及びこれら共重合体を臭素化又は塩素化等したハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。これらの中でも、イソブチレンとイソプレンの共重合体が好ましい。
【0115】
なお、PIB系樹脂が共重合体である場合、イソブチレンからなる構成単位が、全構成単位の中で一番多く含まれているものとする。
イソブチレンからなる構成単位の含有量は、PIB系樹脂の全構成単位(100モル%)中、好ましくは80~100モル%、より好ましくは90~100モル%、更に好ましくは95~100モル%である。
これらのPIB系樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
また、PIB系樹脂を用いる場合、カルボン酸系官能基を有するポリイソプレンゴム等の、架橋反応可能なゴム系樹脂を併用することが好ましい。
【0117】
(架橋剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、前述の構成単位(a1)及び(a2)を有するアクリル系共重合体、架橋反応可能なゴム系樹脂等の前述の官能基を有する樹脂(X)と共に、更に架橋剤を含有することが好ましい。
当該架橋剤は、当該樹脂(X)が有する官能基と反応して、樹脂同士を架橋するものである。樹脂同士の架橋の程度により、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bを調整することができる。
【0118】
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等、及びそれらのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤;エチレングリコールグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジル-アミノメチル)シクロヘキサン等のエポキシ系架橋剤;ヘキサ〔1-(2-メチル)-アジリジニル〕トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤;アルミニウムキレート等のキレート系架橋剤;等が挙げられる。
これらの架橋剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの架橋剤の中でも、粘着剤層の薄膜化に伴って、粘着力を低く調整し易くする観点、及び入手し易さ等の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0119】
架橋剤の含有量は、樹脂(X)が有する官能基の数により適宜調整されるものであるが、例えば、前記アクリル系共重合体等の前述の官能基を有する樹脂(X)100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~7質量部、更に好ましくは0.05~4質量部である。架橋剤の含有量が多く、粘着剤層中の架橋密度が高くなることにより、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bが低くなる傾向がある。
【0120】
(粘着付与剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、樹脂(X)と共に、更に粘着付与剤を含有してもよい。
粘着付与剤は、上述した粘着付与剤(E)と同様のものを用いることができる。
粘着付与剤の含有量は、粘着剤組成物の全量基準で、好ましくは0.01~65質量%、より好ましくは0.05~55質量%、更に好ましくは0.1~50質量%、より更に好ましくは0.5~45質量%、更になお好ましくは1.0~40質量%である。
【0121】
(粘着剤用添加剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前述の粘着付与剤及び架橋剤以外の一般的な粘着剤に使用される粘着剤用添加剤を含有していてもよい。
当該粘着剤用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、遅延剤、触媒、紫外線吸収剤、反応促進剤、反応抑制剤等が挙げられる。
なお、これらの粘着剤用添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの粘着剤用添加剤を含有する場合、各粘着剤用添加剤の含有量は、それぞれ独立に、樹脂(X)100質量部に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.001~10質量部である。
【0122】
(希釈溶媒)
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、前述の各種有効成分と共に、希釈溶媒として、水や有機溶媒を含有し、溶液の形態としてもよい。
有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブタノール、s-ブタノール、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
なお、これらの希釈溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0123】
粘着剤組成物が希釈溶媒を含有して溶液の形態である場合、粘着剤組成物の有効成分濃度としては、好ましくは1~65質量%、より好ましくは5~60質量%、更に好ましくは10~50質量%、より更に好ましくは25~45質量%、より更に好ましくは30~45質量%である。
【0124】
[剥離シート]
剥離シートとしては、従来公知のものを利用することができる。例えば、剥離シート用基材上に、剥離剤により剥離処理された剥離層を有するものが挙げられる。
剥離シート用基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等から形成したプラスチックフィルム;等が挙げられる。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、剥離シート用基材は、これらの2種以上を積層した積層体であってもよい。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0125】
[ガスバリア性積層体の製造方法]
ガスバリア性積層体の製造方法は特に限定されない。
例えば、先に説明した接着剤層の製造方法において、剥離シートが設けられていない接着剤層の面にガスバリアフィルムを貼付し、プロテクトフィルムの粘着剤層とガスバリアフィルムとを貼り合せることによって、ガスバリア性積層体を製造することができる。
プロテクトフィルムがプロテクト層単層である場合には、プロテクト層とガスバリアフィルムとを貼り合せることにより、ガスバリア性積層体を製造することができる。例えば、プロテクトフィルムの自己粘着性によりガスバリアフィルム上にプロテクト層を積層することができる。
【0126】
[封止体]
封止体は、露出した接着剤層の面と被封止物とを貼り合わせて被封止物を覆うことにより、被封止物を封止したものである。
被封止物としては、例えば、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、液晶ディスプレイ素子、太陽電池素子等の電子デバイスが挙げられる。
【0127】
ここで、被封止物は、透明基板等の基板上に搭載されていてもよい。
被封止物が、透明基板等の基板上に搭載されている場合、ガスバリア性積層体が有する硬化性の接着剤層は、被封止物の表面及び被封止物の周辺の基板表面を覆うように貼付される。
透明基板は、特に限定されるものではなく、種々の基板材料を用いることができる。特に可視光の透過率が高い基板材料を用いることが好ましい。また、素子外部から浸入しようとする水蒸気やガスを阻止する遮断性能が高く、耐溶剤性や耐候性に優れている材料が好ましい。
具体的には、石英やガラスなどの透明無機材料;ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などの透明プラスチック;等が挙げられる。
透明基板の厚さは特に制限されず、光の透過率や、素子内外を遮断する性能を勘案して、適宜選択することができる。
【0128】
[封止体の製造方法]
封止体の製造方法は、特に限定されない。例えば、ガスバリア性積層体の接着剤層により、少なくとも被封止物の表面を被覆することで、封止体が得られる。ガスバリア性積層体が有する接着剤層が硬化性の接着剤層である場合には、加熱又はエネルギー線照射等の硬化処理を行うことにより、ガスバリア積層体の接着剤層を硬化させることで、被封止物の表面との接着性をより優れたものとできる。プロテクトフィルムをガスバリア性積層体から剥離し、除去する工程は、被封止物をガスバリア積層体で封止して封止体を作製する過程、及び当該封止体の加工及び搬送等の過程のいずれであってもよい。本発明のガスバリア性積層体によれば、いずれのタイミングでプロテクトフィルムをガスバリア積層体から剥離しても、被封止物と接着剤層との間に隙間が生じない。したがって、水分や酸素等の浸入による被封止物の劣化が防止される。
すなわち、本発明の一態様において、封止体の製造方法は、下記工程(1)~(2)をこの順で有することが好ましい。
・工程(1):本発明のガスバリア性積層体を、接着剤層を貼り合せ面として被封止物に貼付する工程
・工程(2):プロテクトフィルムを前記ガスバリア性積層体から剥離する工程
また、ガスバリア性積層体が有する接着剤層が硬化性の接着剤層である場合、プロテクトフィルムをガスバリア積層体から剥離し、除去する工程は、接着剤層の硬化の前であっても、後であってもよい。
接着剤層を加熱により硬化させる場合には、接着剤層の硬化時の熱により、プロテクトフィルムのプロテクト層や粘着剤層の特性や形状の変化による不具合を防止する観点から、プロテクトフィルムをガスバリア性積層体から剥離し、除去する工程は、接着剤層を硬化する前であることが好ましい。
また、接着剤層をエネルギー線照射により硬化させる場合にも、プロテクトフィルムのプロテクト層や粘着剤層によって接着剤層に照射されるエネルギー線量が低下するのを抑制する観点から、プロテクトフィルムをガスバリア性積層体から剥離し、除去する工程は、接着剤層を硬化する前であることが好ましい。
すなわち、本発明の一態様において、封止体の製造方法は、下記工程(1)~(3)をこの順で有することが好ましい。
・工程(1):本発明のガスバリア性積層体を、硬化性の接着剤層を貼り合せ面として被封止物に貼付する工程
・工程(2):プロテクトフィルムを前記ガスバリア性積層体から剥離する工程
・工程(3):前記硬化性の接着剤層を硬化させる工程
なお、工程(3)における硬化処理は、加熱であってもエネルギー線照射であってもよい。
本発明のガスバリア性積層体は、ガラス板と硬化性の接着剤層との間の粘着力aと、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bとが、上記式(1)を満たすように調整されているため、接着剤層を硬化する前であっても、被封止物と接着剤層との間に隙間が発生することなく、プロテクトフィルムの剥離を行うことが可能である。
【0129】
ガスバリア性積層体の接着剤層と被封止物とを貼り合せる際の貼付条件は特に限定されない。貼付時の温度は、例えば、10~60℃、好ましくは20~45℃である。この貼り合せ処理は、加圧しながら行ってもよい。ガスバリア性積層体が有する接着剤層が熱硬化性の接着剤層である場合、熱硬化性の接着剤層を硬化させる際の硬化条件は、特に限定されない。例えば、ポリオレフィン系樹脂(A)が酸変性ポリオレフィン系樹脂である場合、加熱温度は、通常80~200℃(好ましくは90~150℃)であり、加熱時間は、通常30分~12時間(好ましくは1~6時間)である。
ガスバリア性積層体が有する接着剤層がエネルギー線硬化性の接着剤層である場合、エネルギー線硬化性の接着剤層を硬化させる際の硬化条件は、特に限定されない。例えば、エネルギー線として紫外線を用い、照射照度20~1000mW/cm、光量50~1000mJ/cm程度で接着剤層への紫外線の照射を行うことができ、照射時間は、通常、0.1~1000秒、好ましくは1~500秒である。
【実施例
【0130】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0131】
[膜厚]
(1)アンカーコート層の厚さ
膜厚測定装置(フィルメトリクス株式会社製、製品名「F20」)を用いて測定した。
(2)ガスバリア層の厚さ
分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社製、製品名「M-2000」)を用いて測定した。
(3)アンカーコート層及びガスバリア層以外の各層の厚さの測定
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
【0132】
[重量平均分子量(Mw)]
硬化性の接着剤層の原料であるポリオレフィン系樹脂(A)として用いた変性ポリオレフィン系樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)及び硬化性成分(B)として用いた多官能エポキシ化合物(B2)の重量平均分子量(Mw)、並びに、プロテクトフィルムが有する粘着剤層の原料であるアクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及びPIB樹脂の数平均分子量(Mn)は、以下の方法により測定した値である。
【0133】
(1)変性ポリオレフィン系樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)、アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、PIB樹脂の数平均分子量(Mn)
ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8320」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレンの重量平均分子量、数平均分子量に換算した値を用いた。
(測定条件)
・測定試料:サンプル濃度1質量%のテトラヒドロフラン溶液
・カラム:「TSK gel Super HM-H」を2本、「TSK gel Super H2000」を1本(いずれも東ソー株式会社製)、順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:0.60mL/min
【0134】
(2)多官能エポキシ化合物(B2)の重量平均分子量(Mw)
上記のゲル浸透クロマトグラフ(GPC)装置を用いて、上記の条件下で測定し、複数観察されるピークのうち、面積が最大であるピークのピークトップの保持時間に対応する標準ポリスチレンの重量平均分子量に換算した値とした。
【0135】
[ガスバリア性積層体の作製]
以下に説明するガスバリアフィルム、硬化性の接着剤層、及びプロテクトフィルムを準備し、これらを積層して18種のガスバリア性積層体1~18を作製した。
【0136】
(1)ガスバリアフィルムの作製
ポリエチレンテレフタレート(東レ株式会社製、PET50A4100、厚さ:50μm)を基材層とし、当該基材層の片面(易接着処理されていない平滑面)に、紫外線(UV)硬化性樹脂及び反応性シリカを含む組成物(JSR株式会社製、製品名「オプスターZ7530」)をマイヤーバーで塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を70℃で1分間乾燥させた。そして、コンベア型UV光照射装置(フュージョン社製、製品名「F600V」)を用いて、下記条件にて、当該塗膜にUVを照射して、当該塗膜を硬化させ、厚さ1μmのアンカーコート層を形成した。
(UV照射条件)
・UVランプ:高圧水銀灯
・ライン速度:20m/分
・積算光量:120mJ/cm
・照度:200mW/cm
・ランプ高さ:104mm
【0137】
次いで、ペルヒドロポリシラザンを主成分とするコーティング材(クラリアントジャパン株式会社製、商品名「アクアミカNL110-20」)をアンカーコート層表面にスピンコート法により塗布し、120℃で1分間加熱して、ペルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン層を形成した。ポリシラザン層の厚さは200nmであった。
次に、プラズマイオン注入装置を用いてポリシラザン層の表面に、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入してガスバリア層を形成し、以下の積層構造を有するガスバリアフィルム1を作製した。
(ガスバリアフィルム1の積層構造)
・基材層/アンカーコート層/ガスバリア層
【0138】
(2)接着剤層の形成
接着剤層として、以下に説明する3種の熱硬化性の接着剤層1~3を形成した。
【0139】
(2-1)熱硬化性の接着剤層1の形成
ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部、硬化性成分(B)27質量部、シランカップリング剤(C)0.1質量部、硬化触媒(D)0.6質量部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度20質量%の接着剤組成物1を調製した。
接着剤組成物1の調製に用いた、ポリオレフィン系樹脂(A)、硬化性成分(B)として用いた熱硬化性成分(B-1)、シランカップリング剤(C)、及び硬化触媒(D)を以下に示す。
・ポリオレフィン系樹脂(A):三井化学株式会社製、製品名「ユニストール H-200」、酸変性α-オレフィン重合体、25℃において固体、重量平均分子量(Mw)=52,000、変性ポリオレフィン系樹脂(A1)に該当する樹脂である。
・熱硬化性成分(B-1):三菱化学株式会社製、製品名「YX8034」、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、25℃において液体、エポキシ当量=270g/eq、重量平均分子量(Mw)=3,200、25℃で液体である多官能エポキシ化合物(BL)に該当する化合物である。
・シランカップリング剤(C):グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、製品名「KBM-4803」
・硬化触媒(D):2-エチル-4-メチルイミダゾール、四国化成工業株式会社製、製品名「キュアゾール2E4MZ」
【0140】
調製した接着剤組成物1を剥離シート(リンテック株式会社製、商品名「SP-PET381031」)の剥離処理面上に塗布し、得られた塗膜を100℃で2分間加熱して、厚さが10μmの熱硬化性の接着剤層1を形成した。
【0141】
(2-2)熱硬化性の接着剤層2の形成
上記の「(2-1)熱硬化性の接着剤層1の形成」において、熱硬化性成分(B-1)を、以下に示す熱硬化性成分(B-2)に変更して接着剤組成物2を調製し、熱硬化性の接着剤層2を形成した。
・熱硬化性成分(B-2):三菱化学株式会社製、製品名「YX8000」、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、25℃において液体、エポキシ当量=205g/eq、重量平均分子量(Mw)=1,400、25℃で液体である多官能エポキシ化合物(BL)に該当する化合物である。
【0142】
(2-3)熱硬化性の接着剤層3の形成
ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部、硬化性成分(B)90質量部、シランカップリング剤(C)0.1質量部、硬化触媒(D)1.2質量部、粘着付与剤(E)50質量部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度28質量%の接着剤組成物3を調製した。
ポリオレフィン系樹脂(A)、シランカップリング剤(C)、及び硬化触媒(D)は上記の「(2-1)熱硬化性の接着剤層1の形成」で用いたものと同様とした。
硬化性成分(B)は、上記の「(2-2)熱硬化性の接着剤層2の形成」で用いた熱硬化性成分(B-2)とした。
粘着付与剤(E)は、スチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとの共重合体(三井化学株式会社製、製品名「FTR6100」、軟化点=95℃)とした。
その他は、上記の「(2-1)熱硬化性の接着剤層1の形成」と同様の方法として、熱硬化性の接着剤層3を形成した。
【0143】
(3)プロテクトフィルムの準備
以下に説明する6種のプロテクトフィルム1~6を準備した。
【0144】
(3-1)プロテクトフィルム1の準備
ポリエチレン系フィルム(株式会社サンエー化研製、製品名「PAC-3-70」)をプロテクトフィルム1とした。
(プロテクトフィルム1の構成)
・粘着剤層(エチレン-ビニルアルコール共重合体)/プロテクト層(低密度ポリエチレンフィルム)
【0145】
(3-2)プロテクトフィルム2の準備
アクリル酸n-ブチル20質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル80質量部、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル2.5質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量Mw=160,000)を調製した。
次に、当該(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部と、イソシアネート系架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)3.4質量部と、反応促進剤(ジオクチルスズジラウレート)0.010質量部と、反応抑制剤(アセチルアセトン)1.0質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈し、固形分濃度37質量%の粘着剤組成物を得た。
当該粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック株式会社製、製品名「SP-PET381031」、厚さ:38μm)の剥離処理面上に、ナイフコーターで塗布して塗布膜を形成した。当該塗布膜を90℃で1分間加熱処理し、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。これにより、粘着剤層と剥離シートからなる積層体を得た。
次いで、当該積層体の粘着剤層と、ポリエチレンテレフタレートフィルム(Toray Advanced Materials Korea社製、製品名「XD571S」、23℃における引張弾性率:3.9GPa、厚さ:38μm)の片面とを貼合することにより、以下の積層構造を有するプロテクトフィルム2を作製した。
(プロテクトフィルム2の構成)
・剥離シート/粘着剤層(厚さ:20μm、アクリル系樹脂)/プロテクト層(厚さ:38μm、ポリエチレンテレフタレートフィルム)
【0146】
(3-3)プロテクトフィルム3の準備
プロテクトフィルム2の粘着剤層の厚さを10μmに変更し、プロテクトフィルム3を作製した。
(プロテクトフィルム3の構成)
・剥離シート/粘着剤層(厚さ:10μm、アクリル系樹脂)/プロテクト層(厚さ:38μm、ポリエチレンテレフタレートフィルム)
【0147】
(3-4)プロテクトフィルム4の準備
イソブチレンとイソプレンの共重合体(日本ブチル株式会社製、製品名「Exxon Butyl 268」、数平均分子量260,000、イソプレンの含有率:1.7モル%)100質量部と、カルボン酸系官能基を有するポリイソプレンゴム(株式会社クラレ製、製品名「LIR410」、数平均分子量30,000、1分子あたりの平均カルボキシル基数:10)5質量部と、脂肪族系石油樹脂(日本ゼオン株式会社製、製品名「クイントンA100」、軟化点100℃)20質量部と、架橋剤(三菱化学株式会社製、製品名「TC-5」、エポキシ化合物)1質量部とを、トルエンに溶解し、固形分濃度25質量%の粘着剤組成物を得た。
当該粘着剤組成物を用い、粘着剤層の厚さを2μmに調整したこと以外は、上記の「(2)プロテクトフィルム2」と同様の方法でプロテクトフィルム4を作製した。
(プロテクトフィルム4の構成)
・剥離シート/粘着剤層(厚さ:2μm、PIB樹脂)/プロテクト層(厚さ:38μm、ポリエチレンテレフタレートフィルム)
【0148】
(3-5)プロテクトフィルム5の準備
プロテクトフィルム4の粘着剤層の厚さを10μmに変更し、プロテクトフィルム5を作製した。
(プロテクトフィルム5の構成)
・剥離シート/粘着剤層(厚さ:10μm、PIB樹脂)/プロテクト層(厚さ:38μm、ポリエチレンテレフタレートフィルム)
【0149】
(3-6)プロテクトフィルム6の準備
弱粘着性粘着シート(リンテック株式会社製、製品名「PF-PET38C」)をプロテクトフィルム6とした。
(プロテクトフィルム6の構成)
・粘着剤層(アクリル系樹脂)/プロテクト層(ポリエチレンテレフタレートフィルム)
【0150】
(4)ガスバリア性積層体の作製
上記の「(1)ガスバリアフィルムの作製」において作製したガスバリアフィルム1のガスバリア層と上記の「(2)接着剤層の形成」において形成した熱硬化性の接着剤層1~3とをそれぞれ貼り合せた。そして、バリアフィルム側(基材層表面)に、温度23℃、圧力0.2MPa、速度0.2m/minの条件で、上記の「(3)プロテクトフィルムの準備」において準備したプロテクトフィルム1~6を、粘着剤層を貼り合せ面にしてそれぞれラミネートし、ガスバリアフィルム1、熱硬化性の接着剤層1~3、及びプロテクトフィルム1~6を、表1に示す組み合わせで積層したガスバリア性積層体1~18を作製した。
【0151】
[実施例1~15、比較例1~3]
表1に示す、実施例1~15のガスバリア性積層体1~15、比較例1~3のガスバリア性積層体16~18について、以下の測定及び評価を実施した。
【0152】
(1)ガスバリアフィルムに対するプロテクトフィルムの粘着力bの測定
幅50mm、長さ20mmにカットしたガスバリア性積層体の剥離シートを剥がし、熱硬化性の接着剤層を貼り合せ面として、ソーダライムガラス板にガスバリア性積層体をラミネートした。ラミネートには、ローラーを備えるラミネート装置(日本オフィスラミネーター社製、ロール式マルチラミネーター)を用い、ラミネート条件は、温度23℃、圧力0.2MPa、速度2.0m/minとした。
ラミネート後、23℃で50%R.H.(相対湿度)の環境下に24時間静置し、同様の環境下にて、剥離角度180°で、プロテクトフィルムをガスバリアフィルムから引き剥がして、180°引きはがし粘着力測定試験(N/50mm、剥離速度:300mm/min)を実施し、ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bを測定した。なお、後述する外観評価において、浮きが発生したものについては、両面テープを介してガスバリア性積層体の熱硬化性の接着剤層をソーダライムガラス板に貼り付けて再度測定し、粘着力bを測定した。
【0153】
(2)外観評価
ガスバリアフィルムとプロテクトフィルムとの間の粘着力bの測定の際に、被着体であるソーダライムガラス板と熱硬化性の接着剤層との間に浮きがみられないか目視で確認した。浮きがみられない場合を「A」、浮きが発生した場合を「F」とした。
【0154】
(3)ガラス板と熱硬化性の接着剤層との間の粘着力aの測定
幅50mm、長さ20mmにカットしたガスバリア性積層体の剥離シートを剥がし、熱硬化性の接着剤層を貼り合せ面として、ソーダライムガラス板にガスバリア性積層体をラミネートした。ラミネートには、ローラーを備えるラミネート装置(日本オフィスラミネーター社製、ロール式マルチラミネーター)を用い、ラミネート条件は、温度23℃、圧力0.2MPa、速度2.0m/minとした。
ラミネート後、23℃で50%R.H.(相対湿度)の環境下に24時間静置し、同様の環境下にて、剥離角度180°で、ガスバリア性積層体をソーダライムガラス板から引き剥がして、180°引きはがし粘着力測定試験(N/50mm、剥離速度:300mm/min)を実施し、ガラス板と熱硬化性の接着剤層との間の粘着力aを測定した。
【0155】
結果を表1に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
表1より、以下のことがわかる。
実施例1~15のように、a>bであるガスバリア性積層体は、浮きが見られず、外観が良好であることがわかる。
一方、比較例1~3のように、a<bであるガスバリア性積層体は、浮きが見られ、外観不良となることがわかる。