(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】シアリルラクトースの簡素な精製法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/18 20060101AFI20230927BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20230927BHJP
A23L 33/125 20160101ALN20230927BHJP
【FI】
C12P19/18
C12N15/54
A23L33/125
(21)【出願番号】P 2020567094
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2019063946
(87)【国際公開番号】W WO2019229118
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511297753
【氏名又は名称】クリスチャン・ハンセン・ハーエムオー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Chr. Hansen HMO GmbH
【住所又は居所原語表記】Maarweg 32 53619 Rheinbreitbach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】イェンネワイン,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルフリッヒ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルス,ベネディクト
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0038313(US,A1)
【文献】国際公開第2019/043029(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアリルラクトースを他の炭水化物から精製するための方法であって、該方法は、シアリルラクトースと他の炭水化物を含有する水溶液を異なる膜を用いる二つの膜濾過工程に付す工程を含み、ここで、
- 一つの膜は
300~500ドルトンの分子量カットオフを有し、そして
- 他の膜は
600~800ドルトンの分子量カットオフを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
該水溶液が、シアリルラクトースを製造するための発酵又は酵素法から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該水溶液が、発酵ブロスからバイオマスを分離することによって発酵から得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
発酵ブロスからのバイオマスの分離が、
少なくとも一つの限外濾過工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
発酵ブロスからのバイオマスの分離が、二つの限外濾過工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
発酵ブロスからのバイオマスの分離が、500kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第一の限外濾過と150kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第二の限外濾過を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
シアリルラクトースを含有する水溶液が、
陽イオン交換樹脂と、陰イオン交換樹脂とにより処理される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
シアリルラクトースを含有する水溶液が、H
+
形の陽イオン交換樹脂と、Cl
-
形の陰イオン交換樹脂とにより処理される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
シアリルラクトースを含有する水溶液が、陽イオン交換樹脂と、陰イオン交換樹脂とにより、該水溶液を膜濾過工程に付す前に処理される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
方法が、
透析の工程をさらに含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
方法が、電気透析の工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該水溶液中のシアリルラクトースの純度が、精製前に≦70%、≦60%、≦50%、≦40%、≦30%、≦20%、≦10%又は≦5%であり、及び/又は、該水溶液がシアリルラクトースを精製後に≧80%
の純度で含有する、請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
該水溶液がシアリルラクトースを精製後に≧90%の純度で含有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
シアリルラクトースが3’-シアリルラクトース又は6’-シアリルラクトースである、請求項1~
13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアリルラクトースの精製法に関する。さらに詳しくは、本発明は、シアリルラクトースを、ラクトース(乳糖)及び単糖などの他の炭水化物のほか、前記シアリルラクトースが微生物発酵によって製造される場合、発酵ブロス中に夾雑炭水化物として存在しうるジシアリルラクトースのようなより大きいオリゴ糖から分離するための簡素で経済的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトミルクは乳児の発育のための最良の食事と見なされている。それは、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素及び複合オリゴ糖で構成されている。ヒトミルク(ならびにその他の哺乳動物のミルク)は、ラクトースのほか、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)としても知られる様々な構造的に異なるオリゴ糖を含有している(Usashima T.ら(2011)ミルクオリゴ糖(Milk Oligosaccharides),Nova Biomedical Books,ニューヨーク ISBN 978-1-61122-831-1)。HMOの中でも、シアル化HMO(SHMO)は、腸病原性の細菌及びウィルスに対する抵抗性を支援することが観察されている。興味深いことに、最近の研究ではさらに、早産児に最も一般的な致命的疾患の一つである壊死性腸炎に対する長鎖SHMOの保護効果も示されている。さらに、SHMOは、乳児の脳の発達とその認知能力を支援するとも考えられている。また、シアル化オリゴ糖は、大腸菌(Escherichia coli)、コレラ菌(Vibrio cholerae)及びサルモネラ菌(Salmonella)を含む様々な病原性微生物の腸毒素を中和することも示されている。さらに、シアル化オリゴ糖は、ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)の消化管コロニー形成を妨害することによって胃潰瘍及び十二指腸潰瘍を予防又は阻害することも見出された。
【0003】
シアル化オリゴ糖のうち、3’-シアリルラクトース及び6’-シアリルラクトースはヒトミルク中で最も豊富な成分である。
シアル化オリゴ糖は複雑な構造を有しているので、それらの化学合成又は(化学)酵素合成には課題も多く、立体化学の制御、特異的結合の形成、原料の入手性など、広範囲にわたる困難を伴う。その結果、市販のシアル化オリゴ糖は、天然物の量が少ないために非常に高価であった。
【0004】
そこで、シアル化オリゴ糖を製造するために微生物の代謝工学において努力が重ねられてきた。それは、この手法が工業規模でHMOを製造するための最も有望な手段だからである。微生物発酵によってSHMOを製造する場合、微生物は典型的には外因性シアル酸の存在下で培養される。
【0005】
国際特許公開第WO2007/101862 A1号及びWO2014/153252 A1号には、シアル化オリゴ糖を製造するために細菌を工学的に改変するための方法及び組成物が開示されている。しかしながら、6’-シアリルラクトースの発酵製造法は、ジシアリルラクトースなどの他の炭水化物の生合成を伴うことが知られている(Drouillard,S.ら(2010) フォトバクテリウム種JT-ISH-224由来の多機能性シアリルトランスフェラーゼを発現している代謝工学的改変大腸菌による6’-シアリルラクトース、6,6’-ジシアリルラクトース、及び6’-KDO-ラクトースの効率的合成(Efficient synthesis of 6'-sialyllactose, 6,6'-disialyllactose, and 6'-KDO-lactose by metabolically engineered E. coli expressing a multifunctional sialyltransferase from the Photobacterium sp. JT-ISH-224). Carbohydrate Research 345:1394-1399)。これは、遺伝子工学的改変細菌に発現されているシアリルトランスフェラーゼの活性により、6’-シアリルラクトースから生成する。さらに、炭水化物(例えばラクトース)のオートクレーブ(熱処理)によって、アルドール又はメイラード生成物などの望まざる副産物の形成、又は転位反応(例えばラクトースからラクツロースへの変換)ももたらされる。最終生成物中にそのような夾雑物が特に大量に存在するのは望ましくないか又はさらには容認できない。
【0006】
さらに、オリゴ糖の製造に遺伝子工学的改変細菌を使用すると、微生物に由来する核酸分子又はポリペプチドなどの組換え材料で発酵ブロスの汚染が引き起こされる。しかしながら、ヒトが消費する製品が組換えDNA又はタンパク質で汚染されることは、今日、規制当局によっても消費者によっても許されない。従って、組換え微生物に由来するあらゆる核酸及びタンパク質は、目的のヒトミルクオリゴ糖から除去される必要がある。組換えDNA分子の検出限界は今日では非常に低いため、徹底的な精製スキームが求められる。DNAのqPCRベースの検出の場合、サンプル中のわずか単一のDNA分子でさえも検出可能である。
【0007】
発酵ブロスから個々のオリゴ糖を精製するための“最先端”の方法は、特に前記オリゴ糖が食品用途での使用を意図される場合、技術的に複雑で非経済的であることが多い。乳清又は糖液のような複雑な混合物から二糖類のラクトース又はスクロースを精製するために、複数の結晶化工程を含む工業規模の方法が開発されている。しかしながら、前記方法は手が込んでいる上に低収率しかもたらさない。また、これらの方法は、乳清及び糖液以外の発酵ブロスがまだ食品でないため、微生物発酵によって得られたオリゴ糖を食品産業での使用に適切なものにするのにはふさわしくない。
【0008】
しかしながら、限外濾過、精密濾過(マイクロ濾過)及びナノ濾過のような濾過法は、すべての工程パラメーターが分かっていて最適化されていれば、実施するのは技術的に容易である。透析濾過は別の適切な方法で、膜透過性成分を除去するために新鮮水を溶液に添加することを必要とする。限外濾過及び精密濾過は、通常、タンパク質のようなかなり大きい分子又は細胞を発酵ブロス又は水溶液から分離するために使用される。さらに、ナノ濾過による水、ミネラル及び非常に小さい分子の除去も周知であり、酪農業では乳清の濃縮及びミネラル除去のために使用されている。大部分の場合、ナノ濾過及び限外濾過用の膜材料は、ピペラジン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレングリコール及びセラミックなどの材料に基づいている。膜は、例えば、中空糸モジュール、スパイラル型モジュール及び平膜として組み立てる(アセンブルする)ことができ、そのアセンブリは、異なる分離性能をもたらすことができる。一般に、ナノ濾過膜は150~300ドルトンの範囲の分子量カットオフを有する。400~600ドルトンの範囲の分子量カットオフを有する膜は、特に大規模工業生産では非常に珍しい。このため、オリゴ糖の分離は、バッチ式又は連続式のクロマトグラフィーなどの他の分離技術が必要になるため、依然として複雑なものとなっている。
【0009】
ゲル濾過クロマトグラフィーは便利な実験室規模の方法にすぎないが、擬似移動床クロマトグラフィーは食品生産に適合する規模で6-SLを精製するための適切な方法の代表である。しかしながら、公表されているすべてのその他の方法は、夾雑炭水化物を所望生成物から効果的に除去できないという問題に悩まされている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、微生物発酵からシアリルラクトースを精製するための簡素で費用効率の高い方法を提供することであり、そこでは組換え微生物に由来する核酸及びポリペプチドを所望のオリゴ糖から前記その他の炭水化物と同様に除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際特許公開第WO2007/101862 A1号
【文献】国際特許公開第WO2014/153252 A1号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Usashima T.ら(2011),Nova Biomedical Books,ニューヨーク ISBN 978-1-61122-831-1
【文献】Drouillard,S.ら(2010),Carbohydrate Research 345:1394-1399
【発明の概要】
【0013】
簡素で費用効率が高く、規模拡大可能なシアリルラクトースの精製法を提供する。このシアリルラクトースの精製法は、前記シアリルラクトースを結晶化するための有機溶媒を使用せずに実施できる。さらに、このシアリルラクトースの精製法は、不連続的なクロマトグラフィー工程なしに実施できる。
【0014】
シアリルラクトースはヒトミルクオリゴ糖の代表で、乳児用調製粉乳(infant formula)及び病人向け特別食(medical food)へのその配合が非常に望まれる。シアリルラクトースは高コストであるがゆえに、特に乳児用調製粉乳へのその幅広い使用が妨げられている。特に、微生物発酵からの生成物の精製は手が込み、費用がかかることが多い。 また、有機溶媒の使用と不連続的なクロマトグラフィー工程も6’-シアリルラクトース及びその他の中性オリゴ糖を法外に高価なものにしている。また、エタノールの使用は、ある種の宗教的食品基準によっては受け入れられない(例えばハラル)。そこで、本発明は、組換えプロセシングの助けを借りて微生物発酵からシアリルラクトースを精製し、ヒトの消費に適切な、特に乳児用食品及び医療用栄養製品に適切なシアリルラクトース生成物を得るための簡素で費用効果的な方法に関する。
【0015】
精製法は、濾過の手段によって夾雑炭水化物からシアリルラクトースを精製/分離するための二つの異なる膜の使用に基づき、二つの膜濾過工程を含む。ここで、一つの膜は約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有し、他の膜は約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
シアリルラクトースを他の炭水化物から精製するための方法を提供し、該方法は、シアリルラクトース及び前記他の炭水化物を含有する水溶液を異なる膜を用いる二つの膜濾過工程に付す工程を含み、ここで、一つの膜は約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有し、他の膜は約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する。
【0017】
約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有する膜は、シアリルラクトースより小さい分子量を有する炭水化物のバルクを除去できる。濾過により、SL及びSLより大きい分子量を有する炭水化物が保持液中に保持される。
【0018】
追加及び/又は代替の態様において、約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有する膜は、1~2nmの孔径を有する。
SLの分子量より小さい分子量カットオフを有する適切な膜は、例えば、TriSep XN-45(TriSep Corporation社、米国)、Dairy DK(Suez Water Technologies社、旧GE社)及びFilmtech NF270(Dow社)である。
【0019】
約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する膜は、シアリルラクトース及びSLより小さい分子量を有する炭水化物に対する透過性を有する。濾過により、SLは濾液中に存在するが、SLより大きい分子量を有する炭水化物は保持液中に残る。
【0020】
追加及び/又は代替の態様において、約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する膜は、2.5~3nmの孔径を有する。
6-SLに対する透過性を有し、6-SLより大きい分子量を有する炭水化物を保持液中に保持するための適切な膜は、例えば、TangenX SIUS TFF 0.65kDa膜(Repligen Corporation社)、Zirkoniaモジュール 3nm(Pervatech BV社)及びS-CUT YSNF-YS600(CUT/Burkert社)である。
【0021】
当該方法は、高価な不連続クロマトグラフィー工程の使用を回避するほか、有機溶媒を用いる沈殿又は結晶化工程も不要にする。従って、追加及び/又は代替の態様において、当該方法は、一つ又は複数の不連続クロマトグラフィー工程及び/又は有機溶媒の使用による6-SLの沈殿及び/又は結晶化の一つ又は複数の工程を含まない。
【0022】
追加及び/又は代替の態様において、水溶液は、シアリルラクトースを製造するための発酵又は酵素法から得られる。
本明細書中に記載の方法は、経済的に実現可能であり規模拡大可能であるので、ヒトミルクオリゴ糖の3’-シアリルラクトース又は6’-シアリルラクトースを微生物発酵又は生体触媒反応から数トン量で精製するのに適切である。
【0023】
追加及び/又は代替の態様において、水溶液は発酵から得られる。すなわちシアリルラクトースを産生できる微生物細胞を、培地(発酵ブロス)中及び微生物細胞がシアリルラクトースを産生可能な条件下で培養することにより、発酵ブロスからバイオマスを分離することによって得られる。好ましくは、発酵ブロスからのバイオマスの分離は、少なくとも一つの限外濾過工程、好ましくは二つの限外濾過工程、さらに好ましくは、約500kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第一の限外濾過と約150kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第二の限外濾過を含む。
【0024】
追加及び/又は代替の態様において、水溶液は、好ましくはH+形の、陽イオン交換樹脂と、好ましくはCl-形の、陰イオン交換樹脂とで処理される。好ましくは、シアリルラクトース及び他の炭水化物を含有する水溶液は、他の炭水化物を除去するための膜濾過工程に付される前にイオン交換樹脂で処理される。
【0025】
追加及び/又は代替の態様において、方法はさらに、イオンを除去するために、透析の工程、好ましくは電気透析の工程を含む。好ましくは、シアリルラクトースを含有する水溶液は、前記他の炭水化物が水溶液から除去された後に透析及び/又は電気透析に付される。
【0026】
生成物は、無菌濃縮液として又は噴霧乾燥製品として供給されるのが最も好都合でありうる。
当該方法は3’-シアリルラクトース又は6’-シアリルラクトースの精製、すなわち他の炭水化物からの3-SL又は6-SLの分離を可能にする。ここで、水溶液中のシアリルラクトースの純度は精製前に≦70%、≦60%、≦50%、≦40%、≦30%、≦20%、≦10%又は≦5%であり、及び/又は、該水溶液はシアリルラクトースを精製後に≧80%、好ましくは≧85%又はさらに好ましくは≧90%の純度で含有する。
【0027】
追加及び/又は代替の態様において、精製は下記工程を含む。
i.)バイオマスを発酵ブロスから分離し;
ii.)荷電物質を除去するために、無細胞発酵ブロスを少なくとも一つのイオン交換樹脂処理、好ましくは陰イオン交換樹脂処理及び陽イオン交換樹脂処理に付し;
iii.)工程ii.で得られた水溶液を、約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有する膜を用いる膜濾過工程に付してシアリルラクトースより小さい分子量を有する炭水化物を除去し;
iv.)工程iii.で得られた保持液を、約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する膜を用いる膜濾過工程に付してシアリルラクトースより大きい分子量を有する炭水化物を除去し;そして、任意に
v.)工程iv.の濾液中に存在するシアリルラクトースの濃度を増大させる。
【0028】
シアリルラクトースの精製に使用される他の方法(手順)はかなり複雑で、従って費用もかかるが、本明細書の上文に記載された方法は、主に二つの膜濾過工程の使用に依拠している。
【0029】
一定の態様は、一つ又は複数の更なる工程、例えば、透析工程(塩類除去のため)、電気透析(荷電分子除去のため)、活性炭処理(生成物溶液の脱色のため)及び/又はその他の濾過工程(内毒素除去及び/又は滅菌濾過のような)を含む。必要ではないが、方法は、夾雑オリゴ糖の沈殿のため、又は活性炭への吸着後に短鎖アルコール及び水混合物による溶離のため、及び/又はシアリルラクトースの結晶化のために、シアリルラクトースを含有する水溶液を有機溶媒(例えばメタノールのような短鎖アルコール)で処理することを含んでもよい。
【0030】
当該方法から得られた水溶液は、シアリルラクトースを含有するが、微生物細胞の核酸及びポリペプチドは含有しない。さらに、前記水溶液は、仮にあったとしても単糖類及び/又はジシアリルラクトースをほとんど含有しない。
【0031】
本発明の態様には、以下も含まれる。
態様1 シアリルラクトースを他の炭水化物から精製するための方法であって、該方法は、シアリルラクトースと他の炭水化物を含有する水溶液を異なる膜を用いる二つの膜濾過工程に付す工程を含み、ここで、
- 一つの膜は約300~約500ドルトン(Dalton)の分子量カットオフを有し、そして
- 他の膜は約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する
ことを特徴とする方法。
態様2 該水溶液が、シアリルラクトースを製造するための発酵又は酵素法から得られる、態様1に記載の方法。
態様3 該水溶液が、発酵ブロスからバイオマスを分離することによって発酵から得られる、態様1又は2に記載の方法。
態様4 発酵ブロスからのバイオマスの分離が、少なくとも一つの限外濾過工程、好ましくは二つの限外濾過工程、さらに好ましくは約500kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第一の限外濾過と約150kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第二の限外濾過を含む、態様3に記載の方法。
態様5 シアリルラクトースを含有する水溶液が、好ましくはH
+
形の、陽イオン交換樹脂と、好ましくはCl
-
形の、陰イオン交換樹脂とにより、さらに好ましくは該水溶液を膜濾過工程に付す前に処理される、態様1~5のいずれかに記載の方法。
態様6 方法が、透析、好ましくは電気透析の工程をさらに含む、態様1~6のいずれかに記載の方法。
態様7 該水溶液中のシアリルラクトースの純度が、精製前に≦70%、≦60%、≦50%、≦40%、≦30%、≦20%、≦10%又は≦5%であり、及び/又は、該水溶液がシアリルラクトースを精製後に≧80%、好ましくは≧85%又はさらに好ましくは≧90%の純度で含有する、態様1~6のいずれかに記載の方法。
態様8 シアリルラクトースが3’-シアリルラクトース又は6’-シアリルラクトースである、態様1~7のいずれかに記載の方法。
本発明を、特定の態様に関して説明するが、本発明はそれらに限定されるのではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、説明文及び特許請求の範囲における第一、第二などの用語は、類似の要素を区別するために使用されているのであって、必ずしも、時間的、空間的、ランキング又は任意のその他の様式における順序を記述しているわけではない。そのように使用された用語は、適切な状況下で交換可能であること、そして本明細書中に記載された発明の態様は本明細書中に記載又は例示されている以外の他の順序で操作可能であることは理解されるはずである。
【0032】
特許請求の範囲において使用されている“含む(comprising)”という用語は、その後に掲載されている手段に限定されないと解釈されるべきであり;他の要素又は工程を除外しないことに注意する。従って、参照された規定の特徴、整数、工程又は要素の存在を具体化していると解釈されるべきではあるが、一つ又は複数のその他の特徴、整数、工程又は要素、又はそれらのグループの存在又は追加を排除しない。従って、“手段A及びBを含む装置”という表現の範囲は、要素A及びBのみからなる装置に限定されるべきではない。それは、本発明に関しては、装置の単なる関連要素がA及びBであることを意味する。
【0033】
本明細書全体を通じて、“一態様”又は“態様”への参照は、その態様に関連して記載されている特定の特徴(feature)、構造又は特徴(characteristic)が、本発明の少なくとも一つの態様に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の様々な場所で、“一態様において”又は“態様において”という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ態様を参照しているとは限らないが、参照していることもある。さらに、特定の特徴(feature)、構造又は特徴(characteristic)は、本開示から当業者には明らかなように、一つ又は複数の態様において任意の適切な様式で組み合わせることができる。
【0034】
同様に、本発明の例示的態様の記載において、本発明の様々な特徴は、開示内容を簡素化するため及び様々な発明的側面の一つ又は複数の理解を助けるために、単一の態様、図面又はその説明にまとめられることもあることは理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、特許請求されている発明は各請求項に明示されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を表していると解釈されるべきでない。むしろ、以下の特許請求の範囲に表されている通り、発明的側面は、前述の開示された単一の態様のすべての特徴よりも少ない特徴にある。従って、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、これによって明示的にこの詳細な説明に取り込まれ、各請求項は、本発明の別の態様として独立している。
【0035】
さらに、本明細書中に記載の一部の態様は、他の態様に含まれる一部の特徴(他の特徴ではない)を含むが、異なる態様の特徴の組合せは、当業者には分かる通り、本発明の範囲内であることを意味し、異なる態様を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求されている態様のいずれもが任意の組合せで使用できる。
【0036】
さらに、実施態様のいくつかは、コンピュータシステムのプロセッサによって又は機能を実施するその他の手段によって実施できる方法又は方法の要素の組合せとして本明細書に記載されている。従って、そのような方法又は方法の要素を実施するために必要な指示を備えたプロセッサは、方法又は方法の要素を実施するための手段を形成する。さらに、装置態様の本明細書中に記載されている要素は、本発明を実施するために、該要素によって実施される機能を実行するための手段の例である。
【0037】
本明細書中に提供されている説明及び図面には、多数の具体的な詳細が示されている。しかしながら、本発明の態様は、これらの具体的詳細がなくても実施できることは理解されるはずである。他の場合において、周知の方法、構造及び技術は、本説明の理解を曖昧にしないために詳細には示されていない。
【0038】
次に、本発明を、本発明のいくつかの態様を詳細に記載することによって説明する。本発明の他の態様は、本発明の真の精神又は技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識に従って構成することができ、本発明は添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されることは明白である。
【実施例】
【0039】
実施例1.6’-シアリルラクトースの発酵生産
フォトバクテリウム・レイオグナチ(Photobacterium leiognathi)JT-SHIZ-119由来のα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ遺伝子plsT6を発現している組換え6’-シアリルラクトース合成大腸菌株(大腸菌BL21(DE3) ΔlacZ)を用いて6’-シアリルラクトースの流加発酵(feed-batch fermentation)を実施した。CMP-シアル酸の生合成を増強するために、大腸菌由来グルコサミン-6-リン酸シンターゼGlmS、シネコシスティス種(Synechocystis sp.)由来N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼSlr1975、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来グルコサミン6-リン酸N-アセチルトランスフェラーゼGna1、大腸菌由来ホスホエノールピルビン酸シンターゼPpsA、N-アセチルノイラミン酸シンターゼNeuB、及びCMP-シアル酸シンターゼNeuA(後者二つはカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来)をコードする遺伝子を大腸菌BL21(DE3)宿主の染色体に組み込んだ。さらに、大腸菌由来ラクトースペルメアーゼLacYをコードする遺伝子、及び大腸菌由来の遺伝子cscB(スクロースペルメアーゼ)、cscK(フルクトキナーゼ)、cscA(スクロースヒドロラーゼ)、及びcscR(転写調節因子)もBL21ゲノムに組み込み、組み込まれた遺伝子の転写が、テトラサイクリンプロモーターPtet又はPT5プロモーターいずれかの構成的プロモーターから開始されるようにした。遺伝子galE(UDP-グルコース-4-エピメラーゼ)、galT(ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ)、galK(ガラクトキナーゼ)、及びgalM(ガラクトース-1-エピメラーゼ)からなり、発現している機能的ガル(ガラクトース)オペロンを大腸菌K12からBL21株のゲノムに移した。N-アセチルグルコサミン6-リン酸の分解を防止するため、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸デアセチラーゼ(NagA)、グルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ(NagB)、及びN-アセチルグルコサミン特異的PTSタンパク質IIABC(NagE)を細菌染色体から削除した。さらに、マンノース、グルコース、グルコサミン及びN-アセチルグルコサミンのための大腸菌PTS系の糖輸送体をコードするオペロンmanXYZのほか、N-アセチルノイラミン酸リアーゼ、N-アセチルマンノサミンキナーゼ、N-アセチルマンノサミン-6-リン酸エピメラーゼ、及びシアル酸輸送体をそれぞれコードする遺伝子nanA、nanK、nanE、及びnanTも削除した。N-アセチルガラクトサミン-6-リン酸デアセチラーゼ(AgaA)をコードする遺伝子も削除した。
【0040】
6’-シアリルラクトース産生大腸菌株を、7g・l-1のNH4H2PO4、7g・l-1のK2HPO4、2g・l-1のKOH、0.3g・l-1のクエン酸、5g・l-1のNH4Cl、1ml・l-1の消泡剤(Struktol J673、Schill+Seilacher社)、0.1mMのCaCl2、8mMのMgSO4、微量元素及び炭素源として2%スクロースを含む規定の無機塩培地中で増殖させた。微量元素は、0.101g・l-1のニトリロ三酢酸(pH6.5)、0.056g・l-1のクエン酸第二鉄アンモニウム、0.01g・l-1のMnCl2×4H2O、0.002g・l-1のCoCl2×6H2O、0.001g・l-1のCuCl2×2H2O、0.002g・l-1のホウ酸、0.009g・l-1のZnSO4×7H2O、0.001g・l-1のNa2MoO4×2H2O、0.002g・l-1のNa2SeO3、0.002g・l-1のNiSO4×6H2Oからなるものであった。
【0041】
スクロース供給材料(500g・l-1)には、8mMのMgSO4、0.1mMのCaCl2、微量元素、及び5g・l-1のNH4Clを補充した。6’-シアリルラクトース形成のために、216g・l-1のラクトース供給材料を使用した。培地のpHはアンモニア溶液(25%v/v)の使用によって制御された。流加発酵は、一定の通気及び撹拌下30℃で72時間、開始体積を基準にして5.5~7ml・l-1・h-1のスクロース供給速度を適用することによって実施された。発酵開始後72時間時点で、添加されたラクトースの大部分は6’-シアリルラクトースに変換された。発酵上清中の残留ラクトースを除去するために、β-ガラクトシダーゼを発酵容器に加えた。
【0042】
実施例2:無細胞発酵ブロスの調製
細胞集団(cell-mass)(発酵ブロスの約10%)を、限外濾過(0.05μmカットオフ)(CUT membrane technology社、ドイツ・エルクラート)と、その後の150kDaのMWCOを有するフィルター(Microdyn-Nadir社、ドイツ・ヴィースバーデン)を用いるクロスフロー濾過によって培地から分離した。
【0043】
実施例3:6’-シアリルラクトース含有無細胞発酵ブロスのイオン交換樹脂処理
実施例2から得られた無細胞発酵ブロスは、体積1000リットル中に6’-シアリルラクトースを(乾燥重量による純度9%で)含有していた。これを、正に帯電した夾雑物質を除去するために、H+形の強陽イオン交換樹脂(ドイツのLanxess社から入手したLewatit(登録商標)S2568)に通した(イオン交換体の床体積のサイズは200Lであった)。イオン交換樹脂からの6-SLの溶出は脱イオン水を用いて続けられた。次に、得られた溶液を水酸化ナトリウム溶液の添加によりpH7にセットした。次に(遅滞なく)、該溶液を陰イオン交換体カラムに通した(イオン交換体の床体積は200Lであった)。使用された強陰イオン交換体Lewatit(登録商標)S6368A(Lanxess社、ドイツ)は塩化物(Cl-)形であった。6-SLの溶出は脱イオン水を用いて続けられた。得られた溶液を再度pH7に中和した。
【0044】
実施例4:より小さい分子/炭水化物を除去するための第一の濾過
実施例3に示されたイオン交換樹脂処理によって得られた溶液を、TriSep XN-45(TriSep Corporation社、米国)ナノ濾過膜と500Lの脱イオン水を用いて透析濾過した。得られた溶液をさらに、ナノ濾過膜(RE 8040-BE、CSM-Saehan社)を用いて濃縮した。ここで、純度31%(乾燥重量による)及び導電率8mS/cmを有する6’-シアリルラクトース溶液が得られた。
【0045】
実施例5:より大きい分子/炭水化物を除去するための第二の濾過
発酵生産された副産物のジシアリルラクトースから6’-シアリルラクトースを分離するために第二の膜処理を使用した。濾過のために、公称カットオフ0.65kDaを有するTangenX SIUS TFF膜(Repligen Corporation社)を使用した。94.4%の6’-シアリルラクトースと6.6%のジシアリルラクトース(比率15:1)を含有する溶液を、記載のシステムを用いてクロスフロー濾過し、透過液及び保持液内部の6’-シアリルラクトースとジシアリルラクトースの濃度を決定した。結果は、透過液内部のジシアリルラクトースの量が6.6%から0.2%に著しく減少した(6’-シアリルラクトース対ジシアリルラクトースの比率は55:1であった)が、保持液内部の6’-シアリルラクトース対ジシアリルラクトースの比率は14:1であったことを示している。この結果は、追加の濾過工程を使用することによって6’-シアリルラクトースをジシアリルラクトースから分離できることを示している。このような観察結果は、異なる供給業者から入手した類似のカットオフを有する第二の種類の膜を使用することによっても示すことができる。公称カットオフ600~800Daを有するS-CUT YSNF-YS600-2540-M46D-ATD膜(CUT Membrane Technology GmbH社)を用いることによっても6’-シアリルラクトースはクロスフロー濾過によってジシアリルラクトースから分離された。
【0046】
実施例6:電気透析処理
実施例5で得られた透過液を、PC-Cell ED 1000H 膜スタックを備えたPC-Cell 15 電気透析装置(PC-Cell、ドイツ・ホイスヴァイラー)を用いて2mS/cmにまで電気透析した。この膜スタックは下記の膜を備えていた。すなわち、陽イオン交換膜CEM:PK SK 及び陰イオン交換膜AEM:60Daのサイズ排除限界を有するPcAcid60。0.025Mのスルファミン酸(アミドスルホン酸)溶液を電気透析法の電解質として使用した。電気透析後、6’-シアリルラクトースを純度83%(乾燥重量による)で含有する溶液が得られた。電気透析処理の代わりに透析濾過法を使用することもできた。
【0047】
実施例7:濃縮及び活性炭処理
逆浸透フィルターと45℃での回転蒸発を用いて水溶液から多少の水を除去し、25%(m/v)の6’-シアリルラクトース溶液を得た。次に、得られた水溶液を活性炭(Norit SA2)で処理した。1Lの25%(m/v)6’-シアリルラクトースに対し125gの活性炭を使用した。
【0048】
実施例8:滅菌濾過及び内毒素除去
その後、実施例7で得られた溶液を6kDフィルター(Pall Microza 限外濾過中空糸モジュールSEP-2013、Pall Corporation社、ドイツ・ドライアイヒ)に通すことにより滅菌濾過に付した。次に、該滅菌溶液を噴霧乾燥までRT(室温)で保管した。
【0049】
実施例9:6’-シアリルラクトースの噴霧乾燥
このようにして得られた(実施例8)滅菌6’-シアリルラクトースを次に、NUBILOSA LTC-GMP噴霧乾燥機(NUBILOSA社、ドイツ・コンスタンツ)を用いて噴霧乾燥した。6’-シアリルラクトースの噴霧乾燥の場合、溶液を、3.5barの加圧下、130℃にセットされた噴霧乾燥機ノズルに通し、67~69℃の排気温度を維持するように流量を調整した。これらの設定を用いて、9%未満の水分量を有する噴霧乾燥粉末が得られた。水分含量は、カール・フィッシャー滴定によって決定された。
【0050】
実施例10:6’-シアリルラクトースのLC-MS/MS分析
定量のため、質量分析をMRM(多重反応モニタリング)により、LCトリプル四重極MS検出システムを用いて実施した。プリカーサイオンは四重極1で選択及び分析し、フラグメンテーションはアルゴンをCIDガスとして用いて衝突室(コリジョンセル)で行い、フラグメントイオンの選択は四重極3で実施する。糖のクロマトグラフィー分離は、XBridge Amideガードカートリッジ(3.5μm、2.1×10mm)(Waters社、米国)付きXBridge Amide HPLCカラム(3.5μm、2.1×50mm(Waters社、米国)で実施した。HPLCシステムのカラムオーブン温度は50℃であった。移動相は、10mM酢酸アンモニウム入りのアセトニトリル/H2Oで構成されていた。1μlのサンプルを機器に注入し;運転(run)は流速400μl/分で3.60分間実施した。6’-シアリルラクトースは、MRMにより、ESIポジティブイオン化モードで分析された。質量分析計はユニット分解能で運転された。シアリルラクトースは、m/z656.2[M+Na]のイオンを形成する。シアリルラクトースのプリカーサイオンをさらに衝突室でフラグメント化し、フラグメントイオンm/z612.15、m/z365.15及びm/z314.15にした。衝突エネルギー、Q1及びQ3のプレバイアス(Pre Bias)は各分析物ごとに個別に最適化された。定量法は市販の標準(Carbosynth社、英国コンプトン)を用いて確立された。