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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】気相腐食防止
(51)【国際特許分類】
   C10M 133/44 20060101AFI20230927BHJP
   C10M 129/70 20060101ALI20230927BHJP
   C10M 129/32 20060101ALI20230927BHJP
   C10M 133/16 20060101ALI20230927BHJP
   C10M 141/08 20060101ALI20230927BHJP
   C10M 135/20 20060101ALN20230927BHJP
   C10M 135/36 20060101ALN20230927BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20230927BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20230927BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20230927BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
C10M133/44
C10M129/70
C10M129/32
C10M133/16
C10M141/08
C10M135/20
C10M135/36
C10N40:00 D
C10N40:04
C10N40:02
C10N30:12
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020568330
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 US2019035114
(87)【国際公開番号】W WO2019236441
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】62/682,217
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マクギネス, マーク ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】エバンス, サイモン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】マット, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ガハガン, マイケル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ハント, グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】グオ, ビンビン
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/031145(WO,A1)
【文献】特表2005-534782(JP,A)
【文献】特開2008-144165(JP,A)
【文献】特開2013-064073(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0191671(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤組成物の上方の蒸気空間における導電性構成部品の腐食を防止する方法であって、
a.前記導電性構成部品を含む自動車装置を提供することであって、前記構成部品の一部は乾燥している、提供することと、
b.前記自動車装置に、
i.潤滑粘度の油、
ii.前記潤滑剤組成物の上方の蒸気空間における前記導電性構成部品の腐食を防止することができるアゾール化合物であって、前記アゾール化合物は、
1.N-置換1,2,4トリアゾール
【化1】
(式中、RおよびRは、直鎖または分枝のいずれか、または炭化水素鎖の2つの末端が環状構造を形成するC3-C22の炭化水素基であるか、またはRもしくはRの一方はHである)、または
2.アゾール化合物をアクリレートエステル、アクリル酸、アクリルアミド、またはそれらの組み合わせと接触させることによって形成されるアゾール-アクリル付加物を含み、前記付加物は、少なくとも1つのアシル基を含む少なくとも1つの窒素-アルキル基を有する、
アゾール化合物
を含む前記潤滑剤組成物を供給することと、
c.前記自動車装置を運転することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記導電性構成部品は、電線、電気センサ、プリント回路基板、または電気モータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導電性構成部品は、銅または銅合金を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記N-置換1,2,4トリアゾールは、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-メタンアミンを含む、請求項1または2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記潤滑剤組成物は、前記導電性構成部品に対して腐食性の揮発性化合物をさらに含む、請求項1または2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記導電性構成部品に対して腐食性の前記揮発性化合物は、揮発性硫黄含有化合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
揮発性硫黄の供給源は、チオール、または置換チアジアゾールと亜リン酸水素との反応生成物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記自動車装置は、トランスミッションを含む、請求項1または2または3または4または5または6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記トランスミッションは、デュアルクラッチトランスミッションである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記トランスミッションは、電気モータによって駆動される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記自動車装置は、車軸を含む、請求項1または2または3または4または5または6または7に記載の方法。
【請求項12】
前記車軸は、電気モータによって駆動される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
亜リン酸塩の非存在下でチアジアゾール腐食防止剤をさらに含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
潤滑剤組成物であって、
a.潤滑粘度の油と、
b.前記潤滑剤組成物を逃れ、かつ前記潤滑剤組成物の上方の空間における腐食を防止することができるアゾール化合物であって、前記アゾール化合物は
-置換1,2,4トリアゾールであって、
1. N,N-ビス(1-メチルエチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-メタンアミン;N,N-ジイソブチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-メタンアミン;N,N-ジシクロヘキシル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-メタンアミン;1-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチル)ピペリジン;およびN,N-ビス(トリデシル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-メタンアミンの混合分枝状異性体から選択されるN-分岐置換1,2,4トリアゾール、
2. N-直鎖置換1,2,4トリアゾール、
3. N-単一置換1,2,4トリアゾール、
4. N-置換基が4位にあるN-置換1,2,4トリアゾール
から選択される、N-置換1,2,4トリアゾール
を含むアゾール化合物と、
c.ルイス酸、ブレンステッド酸、またはルイス塩基のうちの少なくとも1つと
を含む、潤滑剤組成物。
【請求項15】
導電性構成部品に対して腐食性の揮発性化合物をさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
導電性構成部品に対して腐食性である前記揮発性化合物は、揮発性硫黄含有化合物を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
揮発性硫黄の供給源は、硫化オレフィン、置換チアジアゾールと亜リン酸水素との反応生成物から形成されるものなどのチオール、またはそれらの組み合わせを含む、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
亜リン酸塩の非存在下でチアジアゾール腐食防止剤をさらに含む、請求項14~17のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された技術は、自動車用潤滑剤組成物に曝されているが潤滑剤組成物に浸漬されていない導電性構成部品の腐食防止、または言い換えれば、気相腐食防止に関する。この技術は、より具体的には、自動車用潤滑剤組成物の上方の蒸気空間、およびしばしば潤滑剤組成物の液相においても導電性構成部品の腐食を防止することができるアゾール化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食は、完全電気自動車、ハイブリッド車、またはさらには内燃機関であるかにかかわらず、車両のドライブラインの電化により、自動車産業における関連性が高まっている。トランスミッション潤滑油は、油に浸漬させられた金属(最も多いのは銅または鉄)の表面を腐食から保護するように設計されているが、一部の潤滑剤は依然として腐食性である可能性がある。さらに、油に浸漬されていない部品の腐食により問題が発生している。例えば、トランスミッションの進化において、潤滑剤に浸漬させられていないが、蒸気空間において腐食性の種にさらされるセンサーがより多く使用されるようになっている。このような電子機器は典型的に、潤滑剤に浸漬させられていないため、これらの電子機器は保護されていない。非浸漬電子機器の腐食防止性能は現在、車両潤滑油仕様に包含されていないが、特にわずかな腐食でも電子機器の機能を妨げる可能性がある敏感な電子機器に関して、気相腐食性能がますます重要になると予想される。腐食は気相で研究されてきたが、これまでに説明されてきた腐食現象は、主に大気腐食(例えば湿度、酸化、および塩に基づく)によるものであるのに対し、自動車用潤滑剤の上方のヘッドスペースにおける電子機器に関する腐食は、著しく異なる環境要因群(例えば、低湿度、低酸素、揮発性潤滑剤、および潤滑剤分解生成物)を有する。
【0003】
保護潤滑剤組成物に浸漬させられていない自動車の導電性構成部品に腐食保護を提供する必要性が存在する。すなわち、車両の導電性構成部品に対する気相腐食保護の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
潤滑剤組成物の液相を逃れるのに十分に高い蒸気圧を有する特定のアゾール化合物は、潤滑剤組成物の上方の気相腐食保護を提供することができることが分かった。
【0005】
したがって、開示された技術は、潤滑剤組成物の上方の蒸気空間における導電性構成部品の腐食を防止することができるアゾール化合物を含有する潤滑剤組成物およびそれを用いる方法を提供することによって、車両の導電性構成部品の気相腐食の問題を解決する。
【0006】
潤滑剤組成物は、潤滑粘度の油と、潤滑剤組成物を逃れ、かつ潤滑剤組成物の上方の蒸気空間における腐食を防止することができるアゾール化合物と、を含むことができる。
【0007】
一実施形態では、アゾール化合物は、低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物であることができる。いくつかの実施形態において、アゾール化合物は、自動車装置の運転条件下で低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物に分解するN-置換アゾール化合物であることができる。さらなる実施形態において、アゾール化合物は、N-置換アゾール化合物と反応して低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物を生じる化合物の存在下で分解する、N-置換アゾール化合物であることができる。
【0008】
潤滑剤組成物は、N-置換アゾール化合物と反応して低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物を生じる化合物をさらに含むことができる。
【0009】
実施形態では、組成物は、導電性構成部品に対して腐食性の揮発性化合物をさらに含有することができる。
【0010】
導電性構成部品を有する自動車装置を潤滑する方法も提供される。この方法は、導電性構成部品を有する自動車装置を提供することであって、当該構成部品の一部は乾燥している、提供することと、次いで、上記のような潤滑剤組成物を自動車装置に供給することと、自動車装置を運転することと、を含む。
【0011】
導電性構成部品は、例えば、電線、電気センサ、プリント回路基板、または電気モータを含むことができる。
【0012】
導電性構成部品は、例えば、銅または銅合金を含有することができる。
【0013】
実施形態では、この方法は、自動車装置が、例えば、デュアルクラッチトランスミッションなどのトランスミッション、または電気モーターによって駆動されるトランスミッションを含有する場合に適用することができる。
【0014】
さらなる実施形態では、この方法は、自動車装置が車軸を含有する場合に適用することができる。いくつかの実施形態では、車軸は、電気モータによって駆動することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
様々な好ましい特徴および実施形態が、非限定的な例示として以下に説明される。
【0016】
本技術の1つの側面には、1)潤滑粘度の油、2)潤滑剤組成物の液相および潤滑剤組成物の上方の蒸気空間の両方における、導電性構成部品の腐食を防止することができるアゾール化合物、および3)導電性構成部品に対して腐食性の揮発性化合物、の潤滑剤組成が包含される。
【0017】
潤滑粘度の油
開示された技術の1つの成分は、潤滑粘度の油であり、基油とも称される。基油は、米国石油協会(API)基油互換性ガイドライン(2011)のグループI~Vの基油のいずれかから選択されてもよく、すなわち、以下の通りである。
【表A】
【0018】
グループI、II、およびIIIは、鉱油系資源である。APIによって公式に識別されていない場合でも、他の一般的に認識されている基油のカテゴリが使用されてもよい。グループII+は、110~119の粘度指数および他のグループIIの油より低い揮発度を有するグループIIの材料を指し、グループIII+は、130以上の粘度指数を有するグループIIIの材料を指す。潤滑粘度の油には、天然または合成油およびそれらの混合物が含まれ得る。鉱油と、合成油、例えばポリアルファオレフィン油および/またはポリエステル油との混合物が使用されてもよい。
【0019】
一実施形態では、潤滑粘度の油は、2~7.5、または10、または3~6、または3.25~6、または3.5~5mm/秒、または2~7、または3~6、または3~5の、ASTM D445による100℃における動粘度を有する。一実施形態では、潤滑粘度の油は、2~7.5、または他の前述の範囲のいずれかの、ASTM D445による100℃における動粘度を有するポリアルファオレフィンを含む。
【0020】
アゾール化合物
潤滑剤組成物はまた、潤滑剤組成物の上方の空間における導電性構成部品の腐食を防止することができるアゾール化合物も含有する。
【0021】
「導電性構成部品」という用語は、例えば、電線、電気センサ、プリント回路基板、電気モータなどの、電気を伝導する、自動車エンジンまたはドライブラインにおける構成要素を指すために使用される。このような構成要素は、一般的に「乾燥」した状態に保たれており、これは、構成要素が潤滑剤組成物に浸漬させられていないことを意味するが、構成要素は、多くの場合、潤滑剤組成物に近接しかつ曝されている。このような導電性構成部品は、銅または他の導電性材料、例えば、銅合金(真ちゅう、青銅)、銀、アルミニウム、金、白金、スズ、および前述のいずれかの合金、または他の同様の導電性材料から調製することができる。
【0022】
多くのアゾール化合物は、潤滑剤組成物の液相において腐食防止を示す。しかしながら、すべてのアゾール化合物が潤滑剤組成物の上方の蒸気空間において腐食防止を示すわけではない。そのような気相腐食防止を示すために、アゾール化合物は、まず、気化するために、すなわち、潤滑剤組成物の液相から逃げ出し、気相に入るために十分に高い蒸気圧を有さなければならない。アゾール化合物は、液相から逃げ出すだけでなく、気相に存在する他の揮発性化合物から構成部品を保護するために導電性構成部品をコーティングすることもできなければならない。さもないと、それらの他の揮発性化合物は、導電性構成部品に対して腐食性となる。
【0023】
理論に束縛されることを望まないが、導電性構成部品のコーティングは、アゾール化合物が二環より多い窒素を含み、かつ導電性構成部品の金属と相互作用するためにアゾール環上で利用可能なプロトンを有する場合に起こり得る。したがって、潤滑剤組成物の上方の蒸気空間における導電性構成部品の腐食を防止することができるアゾール化合物は、低分子量トリアゾールおよび低分子量テトラゾールを含むことができる。低分子量とは、約50~350ダルトン、または約55~250ダルトン、または約60~150もしくはは200ダルトンの分子量を有する化合物を意味する。このような化合物には、例えば、式Iまたは式IIの化合物が含まれる。
【化1】
およびRは、個々に、HまたはC~Cアルキル基であることができる。
【0024】
式Iのアゾール化合物の例は、例えば、1,2,4-トリアゾール、3-メチル-1,および2,4-トリアゾールなどを含むことができる。式IIの例は、例えば、1H-テトラゾール、および5-メチルテトラゾールなどを含むことができる。
【0025】
導電性構成部品の腐食を防止することができるアゾール化合物は、N-置換アゾール化合物も含むことができる。N-置換アゾール化合物は、それ自体で気相腐食保護を提供してもよいか、または自動車装置の運転条件下で低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物に分解してもよいか、もしくはN-置換アゾール化合物と反応する化合物(「反応性化合物」)の存在下で低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾールに分解してよく、その結果、低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物の放出または形成を生じる。
【0026】
環窒素上にアルキル(メタ)アクリレート置換基を有する化合物を得るために、式Iおよび式IIがアルキル(メタ)アクリレートと反応させられてもよい。例えば、ホルムアルデヒドおよび所望のアミンと反応することによって、環窒素上にアミン置換基を有する式を得るように、式が反応させられてもよい。
【0027】
アミン置換基を有する例示的なN-置換アゾール化合物は、式IIIの1,2,4トリアゾールを含むことができる:
【化2】
ここで、RおよびRは、独立して、C-C22、またはC-C20、またはC-C18、またはC-C16、またはC12、直鎖または分岐のいずれかの炭化水素基、フェニル基、または環状構造を形成している炭化水素鎖の2つの末端がであることができるか、またはRおよびRの少なくとも一方がHであることができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、N-置換アゾール化合物は、式IIIのものなどの、N-分岐置換1,2,4トリアゾールであることができ、ここで、RおよびRは、独立して、C-C22、またはC-C20、またはC-C18、またはC-C16、またはC12分枝炭化水素基であることができるか、または炭化水素鎖の2つの末端が環状構造を形成している。式IIIの構造例は、次のものを含むことができる。
【表B】
【0029】
いくつかの実施形態では、N-置換アゾール化合物は、式IIIのものなどの、N-直鎖置換1,2,4トリアゾールであることができ、ここで、RおよびRは、独立して、直鎖C-C22、またはC-C20、またはC-C18、またはC-C16、またはC12炭化水素基(カルボニル基またはアクリルアミド基準を含む)であることができる。式IIIの構造例は、次のものを含むことができる:
【表C】
【0030】
他の実施形態では、N-置換アゾール化合物は、例えば、式IIIのものなどの、N-単一置換1,2,4トリアゾールであることができ、ここで、RおよびRは、独立して、C-C22 、またはC-C20、またはC-C18、またはC-C16またはC12の、直鎖または分枝炭化水素基であることがでるか、または炭化水素鎖の2つの末端が環状構造を形成しており、RおよびRのうちの少なくとも一方がHである。式IIIの構造例は、次のものを含むことができる:
【表D】
【0031】
アゾール化合物は、N-置換1,2,4トリアゾールも含むことができ、ここで、N置換基は、式IVのように、4位にある:
【化3】
ここで、RおよびRは上記で定義されている。式IVの化合物は、いくつかの実施形態では、天然に存在する不純物、または式IIIの化合物の製造中に形成されるわずかな異性体であってもよい。
【0032】
他のN-置換アゾール化合物は、式Vの1,2,3トリアゾールを含むことができる。
【化4】
は、独立して、C-C22、またはC-C20、またはC-C18、またはC-C16、またはC12、直鎖または分岐の炭化水素基、フェニル基のいずれかであることができるか、または炭化水素鎖の2つの末端が環状構造を形成しており、RおよびRは、C-C、またはC-C、またはC-Cであることができるか、またはR、RおよびRのうちの少なくとも1つは、Hであることができるか、またはRおよびRの両方がHであるか、またはR、RおよびRのうちの少なくとも1つが、プロピオン酸メチルまたはプロピオン酸エチルヘキシルなどのようなカルボニルまたはアクリルアミド基を含むことができ、これらは、アゾール化合物をアクリレート、アクリル酸、アクリルアミド、またはこれらの組み合わせと接触させることによって形成されてもよい。
【0033】
さらなるN-置換アゾール化合物は、式VIのテトラゾールを含む:
【化5】
ここで、RおよびRは、独立して、C-C22、またはC-C20、またはC-C18、またはC-C16、またはC12、直鎖または分岐の炭化水素基、フェニル基のいずれかであることができるか、または炭化水素鎖の2つの末端が環状構造を形成しており、またはRおよびRのうちの少なくとも一方がHであることができる。
【0034】
アゾール化合物は、使用時に気相において好適な腐食保護を提供するのに十分なレベルで潤滑剤組成物に配合される。一般に、ほとんどの用途において、アゾール化合物の約30ppm~5重量%のレベルが好適である。いくつかの実施形態では、アゾール化合物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約50ppm~4重量%、もしくは約250ppm~3重量%のレベルで、または500ppm~2重量%、もしくは1000ppm~1重量%のレベルで組み込むことができる。いくつかの実施形態では、アゾール化合物は、約100ppm~5000ppm、または250ppm~2500ppm、または500~2000ppmのレベルで組み込むことができる。
【0035】
アゾール分解
上記のアゾール化合物は、低分子量アゾール化合物を提供するために分解してもよい。分解は、例えば、自動車装置の運転中に生じる温度により生じることができる。
【0036】
分解はまた、N-置換アゾール化合物と反応して低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物の放出または形成をもたらす化合物(「反応性化合物」)の存在によって生じることができる。したがって、潤滑剤組成物は、N-置換アゾール化合物と反応して低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物への分解を生じる化合物をさらに含むことができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、反応性化合物は、求電子試薬、求核試薬、またはそれらの組み合わせであり得る。したがって、潤滑剤組成物はまた、アゾール化合物に対して求電子性である化合物、および/またはアゾール化合物上の置換基に対して求核性である化合物、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0038】
求電子性化合物は、例えば、ルイス酸およびブレンステッド酸を含んでもよい。求電子性化合物の例は、例えば、水素(それ自体であるか、またはNH またはHなどの「オニウム」化合物としてであるかにかかわらず)、Li+、Cu(I/II)、Ti(IV)、Fe(II/III)などの金属カチオン、BFなどの三方晶系平面種、α、β-不飽和カルボニル、二酸化炭素などの極性分子を含むことができる。このような化合物は、潤滑剤において、潤滑剤中の他の添加剤から、例えば、洗剤基材および耐摩耗添加剤ならびにそれらの分解生成物から生じることができる。
【0039】
求核性化合物はルイス塩基を含むことができる。求核試薬の例は、ヨウ素、例えばメタノール、エタノールまたは高級アルコールなどのアルコール、アンモニア、または分散剤または界面活性剤の頭部基から得られるアミンなどのアミンを含むことができる。ここでも、そのような化合物は、例えば摩擦調整剤およびそれらの分解生成物など、潤滑剤中の他の添加剤から潤滑剤中に生じることができる。
【0040】
液相腐食防止剤
潤滑剤組成物はまた、液相での腐食を防ぐために液体中で働く腐食防止剤を含むことができる。そのような液相腐食防止剤の一例は、例えば、ジメルカプトチアジアゾール(DMTD)誘導体などの置換チアジアゾールを含むことができる。DMTD誘導体は、銅の腐食を防ぐために使用されてもよい。ジメルカプトチアジアゾール誘導体は、典型的にはDMTDの可溶型または誘導体である。ジメルカプトチアジアゾール核を含有する油溶性誘導体の調製のための出発材料となり得る材料には、2,5-ジメルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール、3,5-ジメルカプト-[1,2,4]-チアジアゾール、3,4-ジメルカプト-[1,2,5]-チアジアゾール、および4、-5-ジメルカプト-[1,2,3]-チアジアゾール、が含まれ得る。これらのうち、最も容易に入手できるのは、2,5-ジメルカプト-[1,3,4]-チアジアゾールである。様々な2,5-ビス-(ヒドロカーボンジチオ)-1,3,4-チアジアゾールおよび2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-[1,3,4]-チアジアゾールを使用してもよい。炭化水素基は、環状、脂環式、アラルキル、アリールおよびアルカリールを含む脂肪族または芳香族であってもよい。同様に、α-ハロゲン化脂肪族モノカルボン酸のDMTDとの縮合生成物、またはDMTDをアルデヒドおよびジアリールアミンと約1:1:1~約1:4:4までのモル比で反応させることにより得られる生成物と同様に、DMTDのカルボン酸エステルが知られており、使用することができる。DMTD材料は、アミン塩などの塩として存在してもよい。他の実施形態では、DMTD化合物は、アルキルフェノールと、ホルムアルデヒドなどのアルデヒドおよびジメルカプトチアジアゾールとの反応生成物であってもよい。別の有用なDMTD誘導体は、DMTDを、コハク酸イミド分散剤またはコハク酸エステル分散剤などの油溶性分散剤と反応させることにより得られる。
【0041】
存在する場合、DMTD化合物の量は、特定の化合物の同一性に部分的に依存して、組成物の0.01~5重量パーセント、例えば0.01~1パーセント、または0.02~0.4、または0.03~0.1重量パーセントであってよい。あるいは、DMTDが窒素含有分散剤と反応する場合、同じ活性DMTD化学特性を付与するために、組み合わせた生成物の総重量が著しく高くなる可能性があり、例えば、0.1~5重量パーセント、または0.2~2または0.3~1または0.4~0.6重量パーセントである。
【0042】
いくつかの実施形態では、置換チアジアゾールは、置換チアジアゾールと反応して、例えば、亜リン酸水素二ナトリウムなどの揮発性腐食性チオールを形成することができる反応物を実質的に含まない、または含まない配合物中に存在することができる。
【0043】
揮発性腐食性化合物
潤滑剤組成物は、問題の説明により、導電性構成部品に対して腐食性である揮発性化合物、または略して「揮発性腐食性化合物」も含む。揮発性腐食性化合物に関連する揮発性物質は、アゾール化合物と同じ意味を有する。すなわち、揮発性腐食性化合物は、気化する、すなわち、自動車の運転条件下で潤滑剤組成物の気相から逃げ出して気相に入るのに十分に高い蒸気圧力を有さなければならない。
【0044】
揮発性腐食性化合物は、潤滑剤組成物に添加される、例えば、バルク相防錆、摩擦調整、または摩耗および酸化防止などの他のバルク流体目的のために意図された化合物であることができる。揮発性腐食性化合物はまた、現場で、例えば、潤滑剤組成物の構成要素の自然分解生成物として、または潤滑剤組成物中の2つ以上の成分の反応から生成することができる。
【0045】
一実施形態では、揮発性腐食性化合物は、チオールなどの揮発性硫黄含有化合物であることができる。腐食を引き起こす可能性のある他の硫黄含有化合物は、例えば、硫化オレフィン、ジスルフィド、硫化エステル、メルカプタン、チオエーテル、ジアルキルジチオリン酸およびそれらの塩、ならびにジチオカルバメートを含む。
【0046】
揮発性腐食性化合物はまた、硫黄含有化合物のいずれかの分解または加水分解から生じる硫化水素も含むことができる。同様に、揮発性腐食性化合物は、硫化オレフィンの分解から生じる低分子量メルカプタン、またはスルホン酸塩またはスルホンの熱分解から生じる二酸化硫黄化合物であることができる。一実施形態では、揮発性腐食性化合物は、置換チアジアゾールと亜リン酸水素との反応生成物であることができる。
【0047】
気相腐食防止の方法
本技術のさらなる態様は、導電性構成部品を有する自動車装置を潤滑する方法を包含する。この方法は、導電性構成部品の一部が乾燥している(すなわち、潤滑剤組成物に浸漬させられていない)状態の導電性構成部品を含む自動車装置を提供することを含む。上に開示されたような潤滑剤組成物は、自動車装置に供給することができ、自動車装置は運転される。
【0048】
自動車装置は、一実施形態では、ドライブライン装置である。ドライブライン装置は、例えば、ギア、車軸、ドライブシャフト、オートマチックまたはマニュアルトランスミッション、またはオフハイウェイ車両(農業用トラクターなど)のドライブラインであることができる。このようなドライブライン装置は、ギア油、車軸油、ドライブシャフト油、トラクション油、マニュアルトランスミッション油、オートマチックトランスミッション油、またはオフハイウェイ油(ファームトラクター油など)によって潤滑される。
【0049】
一実施形態では、シンクロナイザシステムを含有しても、含有しなくてもよいマニュアルトランスミッションを潤滑する方法が提供される。一実施形態では、オートマチックトランスミッションを潤滑する方法が提供される。一実施形態では、本発明は、車軸を潤滑する方法を提供する。
【0050】
開示された方法によって包含されてもよいオートマチックトランスミッションは、例えば、無段変速機(CVT)、無限可変トランスミッション(IVT)、トロイダルトランスミッション、連続スリッピングトルクコンバータクラッチ(CSTCC)、段階式オートマチックトランスミッション、またはデュアルクラッチトランスミッション(DCT)を含む。
【0051】
オートマチックトランスミッションは、連続スリッピングトルクコンバータクラッチ(CSTCC)、ウェットスタート、およびシフトクラッチを含むことができ、場合によっては、金属または複合材料のシンクロナイザーを含有してもよい。デュアルクラッチトランスミッションまたはオートマチックトランスミッションには、電気モーターユニットが組み込まれてもよい。
【0052】
車軸およびギアに関して、方法は、遊星ハブ減速車軸、ユーティリティビークルにおける機械的ステアリングおよびトランスファーギアボックス、シンクロメッシュギアボックス、パワーテークオフギア、リミテッドスリップ車軸、および遊星ハブ減速ギアボックスにおいてギア油または車軸油を採用することを含むことができる。車軸には、電気モーターユニットが組み込まれてもよい。モータは、例えば、「インホイール」または前車軸または後車軸に配置されてもよい。電気モータはまた、ドライブシャフトに組み込まれてもよい。
【0053】
記載されている各化学物質成分の量は、特に指示がない限り、市販の材料に通常存在し得るあらゆる溶媒または希釈油を除いて、つまり活性化学物質に基づいて示されている。しかしながら、特に指示がない限り、本明細書で言及する各化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および商業グレードに存在すると通常理解される他のそのような材料を含有することができる商業グレードの材料であると解釈されるべきである。
【0054】
上記の物質のいくつかは、最終的な製剤で相互作用し得ることが既知であるため、最終的な製剤の成分は最初に添加されるものと異なり得る。例えば、金属イオンは他の分子の他の酸性またはアニオン性部位に移動する可能性がある。本発明の組成物をその意図する用途において採用することによって形成された生成物を含む、それにより形成された生成物は、簡単に説明されない場合がある。それにもかかわらず、そのような変性物および反応生成物は全て、本発明の範囲内に含まれ、本発明は、上記の成分を混合することにより調製される組成物を包含する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、所定の量の値が表示値の±20%以内であることを意味する。他の実施形態では、値は、表示値の±15%以内である。他の実施形態では、値は、表示値の±10%以内である。他の実施形態では、値は、表示値の±5%以内である。他の実施形態では、値は、表示値の±2.5%以内である。他の実施形態では、値は、表示値の±1%以内である。
【0056】
本明細書における本発明は、潤滑されるドライブライン装置における非浸漬式導電性構成部品の腐食を防止するのに有用であり、これは、以下の実施例を参照してより理解され得る。
【実施例
【0057】
サンプル調製-アゾールをパラホルムアルデヒドでアルキルアミンにカップリングする一般的な手順:1.0モルのアゾールを1.0モルのアルキルアミンまたはジアルキルアミンと組み合わせ、混合物を撹拌しながら60~80℃に加熱する。次いで、0.94~1.0当量のパラホルムアルデヒドを添加する。低分子量アミンのために、パラホルムアルデヒド電荷は、2つの等しい部分に分割され、1回目の充電からの反応発熱が沈静するまで第2の部分は充電されない。パラホルムアルデヒドの当量は次のように計算される。
Eq wt=30.0264/(パラホルムアルデヒド中の重量%CH=O)
パラホルムアルデヒド添加による発熱がおさまったら、すべての固形物が溶解するまで加熱を続ける。次いで、真空を反応混合物に適用して、反応によって生成された副生成水を除去する。製品をさらに精製する必要はない。この方法で調製したサンプルを以下に示す。
【0058】
サンプル1:1,2,4-トリアゾールの市販サンプルはokyo Chemical Industry Company.Ltdから入手した。
【0059】
サンプル2:1,2,4-トリアゾール(0.81モル)を一般的な手順に従ってピペリジン(0.81モル)および91%のパラホルムアルデヒド(0.761当量)と反応させて、131.66g(98%の収率)の透明でわずかに黄色の液体を得た。液体は冷却すると凍結した。生成物である1-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチル)ピペリジンの融点は61~63℃であった。生成物のHおよび13C NMRは、それが非常に純粋であることを示した。
【0060】
サンプル3:1,2,4-トリアゾール(0.746モル)を一般的な手順に従ってジイソプロピルアミン(0.738モル)および91%のパラホルムアルデヒド(0.701当量)と反応させて、105.13g(77%の収率)の透明でかすかに黄色の液体を得た。生成物のHおよび13C NMRは、それが不純であることを示した。一次不純物は、未反応の1,2,4-トリアゾールと、ホルムアルデヒドとカップリングした2モルのトリアゾールの生成物である、ジ(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メタンであった。
【0061】
サンプル4:1,2,4-トリアゾール(0.653モル)を一般的な手順に従ってジブチルアミン(0.654モル)および91%のパラホルムアルデヒド(0.614当量)と反応させて、131.64g(96%の収率)の透明な無色の液体を得た。生成物であるN、N-ジブチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-メタンアミンは、Hおよび13C NMRによって実質的に純粋であった。
【0062】
サンプル5:1,2,4,-トリアゾール(0.654モル)を一般的な手順に従ってジイソブチルアミン(0.654モル)および91%のパラホルムアルデヒド(0.615当量)と反応させて、131.68g(96%の収率)の、<45℃の融点を有する、無色の低融点の結晶性固体、N,N-ジイソブチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-メタンアミンを得た。生成物はHおよび13C NMRよって実質的に純粋であり、不純物は、微量のトリアゾールとトリアゾールとの結合化合物のみであった。
【0063】
サンプル6:1,2,4-トリアゾール(0.653モル)を2-エチルヘキシルアミン(0.654モル)および91%のパラホルムアルデヒド(0.615当量)と一般的な手順に従って反応させ、131.48g(96%の収率)の透明でほぼ無色の液体を得た。しかしながら、Hおよび13C NMRスペクトルは、所望の生成物であるN-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチル)-2-エチルヘキサン-1-アミンが高純度で得られなかったことを示した。NMRスペクトルは、得られた生成物が、所望の化合物に加えて、少なくとも3つの化合物の混合物を含有していたことを示している。
【0064】
サンプル7:1,2,4-トリアゾール(0.534モル)を一般的な手順に従ってジシクロヘキシルアミン(0.533モル)および91%のパラホルムアルデヒド(0.501当量)と反応させ、139.07g(99.5%の収率)の、>65℃の融点を有する、ほぼ無色の結晶性固体、N,N-ジシクロヘキシル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-メタンアミンを得た。生成物は、Hおよび13C NMRにより良好な純度を示した。不純物は、微量のトリアゾールとトリアゾールとの結合化合物および未反応のトリアゾールのみであった。
【0065】
サンプル8a:BASF Corporationの市販の腐食防止剤Irgamet(登録商標)30、CAS番号91273-04-0は、1,2,4-トリアゾールとビス(2-エチルヘキシル)アミンのホルムアルデヒド結合生成物である。このサンプルのHおよび13C NMRスペクトルは、それが非常に純粋であることを示している。
【0066】
サンプル8b:一般的な手順を使用してIrgamet30に類似した製品を調製した。1,2,4-トリアゾール(0.439モル)をビス(2-エチルヘキシル)アミン(0.440モル)および91%のパラホルムアルデヒド(0.411当量)と反応させて、142.71g(100%)の透明な無色の液体生成物を得た。この材料の1Hおよび13C NMRスペクトルは、純度がサンプル8aの市販製品に匹敵することを示した。
【0067】
サンプル9:1,2,4-トリアゾール(0.404モル)を一般的な手順に従ってオレイルアミン(0.404モル)および91%のパラホルムアルデヒド(0.403当量)と反応させて、141.79g(99.8%の収率)のワックス状生成物を得た。Hおよび13C NMRスペクトルは、生成物がいくつかの化合物の混合物であることを示した。
【0068】
サンプル10:1,2,4-トリアゾール(0.313モル)を一般的な手順に従ってジトリデシルアミン(0.312モル)および95%のパラホルムアルデヒド(0.313当量)と反応させ、144.26g(100%の収率)の透明でほぼ無色の液体生成物を得た。このサンプルで使用されているジトリデシルアミンはBASFから入手した。それは異性体の複雑な混合物である。Hおよび13C NMRスペクトルは、生成物が複雑な混合物であることを裏付けている。
【0069】
サンプル11:1,2,4-トリアゾール(0.315モル)を一般的な手順に従ってジココアミン(0.316モル)および95%のパラホルムアルデヒド(0.314当量)と反応させて、142.15g(98.9%の収率)の透明で淡い琥珀色の液体生成物を得た。ジココアミン上のアルキル基は、主に飽和C12-C14直鎖炭化水素鎖の混合物である。Hおよび13C NMRは、生成物が非常に純粋であることを示している。
【0070】
サンプル12:5-メチルテトラゾールの市販サンプルはTokyo Chemical Industry Company.Ltdから入手した。
【0071】
サンプル13:一般的な手順を使用して、5-メチルテトラゾール(0.490モル)とビス(2-エチルヘキシル)アミン(0.494モル)を91%のパラホルムアルデヒド(0.458モル)と結合させて、165.75g(99.4%)の透明でほぼ無色の液体生成物を得た。H NMRスペクトルは、生成物が非常に純粋であることを示している。しかしながら、アゾール環に直接水素原子がないため、ホルムアルデヒド結合置換基が環のN1またはN2に結合しているかどうかを決定的に言うことはできなかった。しかしながら、NMRは単一環のメチル基を示し、2つの可能な置換異性体のうちの1つだけが形成されたことを示している。
【0072】
サンプル14:5-フェニルテトラゾール(0.358モル)およびビス(2-エチルヘキシル)アミン(0.359モル)を一般的な手順を使用して91%のパラホルムアルデヒド(0.336モル)と結合させ、142.81g(99,2%)の透明でほぼ無色の液体生成物を得た。H NMRスペクトルは、生成物が非常に純粋であることを示している。環上のホルムアルデヒド結合置換基の位置は決定的ではないが、単一位置異性体がスペクトルにおいて観察される。
【0073】
サンプル15:1,2-ジメチルイミダゾールの市販サンプルはAlfa Aesarから入手した。
【0074】
サンプル16:2,4-ジメチルイミダゾールの市販サンプルはAlfa Aesarから入手した。
【0075】
サンプル17:1-ブチルイミダゾールの市販サンプルはAlfa Aesarから入手した。
【0076】
サンプル18:1-メチル-1,2,4-トリアゾールの市販サンプルはAlfa Aesarから入手した。
【0077】
サンプル19:市販の油溶性腐食防止剤であるSkosanor KSP-93は、Lubrizol Corporationから入手した。この生成物は、以下に示すように、トリルトリアゾール、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、およびパラホルムアルデヒドの反応生成物である。
【化6】
【0078】
気相腐食をテストするための配合物A:典型的な自動車用トランスミッション液を代表する以下に示す配合物は、2つの既知の銅腐食防止剤(アスタリスク「*」によって示されている)を有するにもかかわらず、65℃において数日以内に銅の深刻な気相腐食を生じる。以下に説明するいくつかの試験では、トリルトリアゾールを含まない製剤Aが使用される。
【表E】
【0079】
半浸漬試験:製剤Aは、報告された処理速度で上記のサンプル気相腐食防止剤でトップ処理される。新たに研磨された銅ストリップは、蓋をされ、温度制御されたオーブンに入れられた4オンスのジャー内のトップ処理された流体に半分浸漬させられる。クーポンの液浸部分および蒸気空間部分の両方の腐食は、指定された期間の後、ASTM D130評価尺度に従って評価される。各試験では、ブランク(トップ処理なしの製剤A)が標準として使用される。
【0080】
実施例1:いくつかのサンプル腐食防止剤が、トリルトリアゾールを含まない配合物Aに500ppmのレベルで組み込まれた(表1に「ベースライン」として列挙されている)。これらの各流体に対して65℃で7日間、半浸漬試験が実施された。各クーポンの液体部分および蒸気空間部分の両方のためのASTM D130評価を、以下の表1に示す。
【表1】
【0081】
実施例2:トリルトリアゾールを含まない配合物Aの処理レベルに関する、半浸漬試験における3つのサンプル腐食防止剤の性能を、表2に示す。半浸漬試験は、80℃で7日間行った。液体空間および蒸気空間の両方(前面のみ)のためのASTM D130評価が列挙されている。
【表2】
【0082】
実施例3:サンプル腐食防止剤の性能は、低粘度流体および高粘度流体の両方において実証された。基油および粘度調整剤を除いて、すべての3つの配合物が、配合物Aと同じ性能の添加剤を含有していた。実施例3aの基油は2cStポリアルファオレフィンであり、実施例3bの基油は低粘度石油アルキレートであり、実施例3cの基油は8cStポリアルファオレフィンであった。これらの配合物のいずれも、ポリマー粘度調整剤を含有していなかった。
【表3】
【0083】
実施例4:サンプルの腐食防止剤の性能は、代替流体においても実証された。配合Bは、以下に列挙した添加剤を含有するギア油製剤である。
【表F】
【0084】
製剤Bは、一例において500ppmのサンプル8aでトップ処理され、別の例において500ppmのサンプル19でトップ処理された。これらトップ処理されたギア油製剤は、80℃で7日間半浸漬試験を受けた。結果を表4に列挙する。
【表4】
【0085】
実施例5:この半浸漬試験は、トリルトリアゾールを含まない製剤A中のいくつかの低分子量アゾールの短期間の比較である。試験は、80℃で24時間行われた。各サンプルは、1000ppmのトップ処理として製剤Aに追加された。
【表5】
【0086】
実施例6:製剤Aの4オンスの蓋をされていないジャーを、1/2ガロンの広口ジャーの中に配置した。新たに研磨された銅クーポンを、液体と接触しないように小さなジャーの上に置いた。外側の大きなジャーに蓋をして、アセンブリ全体を80℃のオーブンに2日間配置した。クーポンは黒くなった(4C評価)。この試験は、製剤Aからの腐食性種が、腐食性種が液相からクーポンの表面を上昇するメカニズムによってではなく、蒸気空間への腐食性種の揮発によって作用していることを証明している。
【0087】
実施例7:1000ppmのサンプル8によってトップ処理された、製剤Aの2つの4オンスの蓋をされていないジャーを、1/2ガロン広口ジャーの内側に配置した。新たに研磨された銅クーポンを、液体と接触しないように小さなジャーの上に置いた。外側の大きなジャーに蓋をして、アセンブリ全体を80℃のオーブンに2日間入れた。クーポンは元の状態のままだった(1A評価)。実施例6に関連したこの試験は、トップ処理された製剤Aからの蒸気空間阻害種が、阻害種が液相からクーポンの表面を上昇するメカニズムによってではなく、蒸気空間への揮発によって作用していることを証明している。この試験はまた、腐食防止種が揮発することができる前に液相の腐食性種と反応する、または腐食性種を中和するメカニズムを除外する。
【0088】
実施例8:製剤Aの1つの4オンスの蓋をされていないジャー、および1000ppmのサンプル8でトップ処理された4cStグループIII油の第2の4オンスの蓋をされていないジャーを、1/2ガロン広口ジャーの中に配置した。ジャーの内側の無水環境を維持するために、無水硫酸カルシウムペレットも1/2ガロンジャーの底に散乱させられた。新たに研磨された銅クーポンを、液体と接触しないように小さなジャーの上に置いた。外側の大きなジャーを窒素でパージし、次に蓋をして、アセンブリ全体を80℃のオーブンに6日間入れた。クーポンはゆっくりと黒くなった(4評価)。実施例6および実施例7に関連したこの試験は、サンプル8が、本質的に、蒸気空間腐食防止を提供することができないことを証明している。
【0089】
実施例9:サンプル腐食防止剤の性能も、代替流体において実証された。製剤Cは、ベースラインマニュアルトランスミッション液を表す。
【表G】
【0090】
流体E~Kは、チアジアゾール腐食防止剤および/または本発明のサンプル8bを製剤Cに添加することによって生成された。各流体は、ASTM D130に従って121℃および150℃で3時間、試験および評価され、80℃で168時間、半浸漬試験を受けた。結果を以下に示す。
【表H】
【0091】
上記で言及された文書の各々は、上記に具体的に列挙されているかどうかにかかわらず、優先権が主張されるあらゆる先行出願を含んで参照により本明細書に組み込まれる。いずれの文書の言及も、あらゆる権限において、そのような文書が先行技術としての資格を有すること、または当業者の一般知識を構成することの承認ではない。実施例を除き、または特に明示的に示されている場合を除き、物質の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを指定するこの説明の全ての数量は、「約」という単語により修正されるものとして理解されたい。本明細書に記載の量、範囲、および比率の上限および下限は、独立して組み合わせることができることを理解されたい。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と共に使用され得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「を特徴とする(characterized by)」と同義である「含む(comprising)」という移行性用語は、包括的または無制限であり、追加の、列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。しかしながら、本明細書の「含む(comprising)」の各列挙において、この用語は、代替実施形態として、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」という語句も包含することを意図しており、ここで、「からなる(consisting of)」は、指定されていない任意の要素またはステップを除外し、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、考慮されている組成物または方法の本質的または基本的および新規の特徴に実質的に影響を与えない追加の列挙されていない要素またはステップを含めることを許容する。
【0093】
主題の発明を説明する目的で、特定の代表的な実施形態および詳細を示してきたが、主題の発明の範囲から逸脱することなくさまざまな変更および修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。これに関して、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によりのみ制限されるものとする。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
導電性構成部品を有する自動車装置を潤滑する方法であって、
a.導電性構成部品を含む自動車装置を提供することであって、前記構成部品の一部は乾燥している、提供することと、
b.前記自動車装置に、
i.潤滑粘度の油、
ii.潤滑剤組成物の上方の蒸気空間における前記導電性構成部品の腐食を防止することができるアゾール化合物、を含む前記潤滑剤組成物を供給することと、
c.前記自動車装置を運転することと、を含む、方法。
(項目2)
前記導電性構成部品は、電線、電気センサ、プリント回路基板、電気モータを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記導電性構成部品は、銅または銅合金を含む、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記アゾール化合物は、低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物;前記自動車装置の運転条件下で低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物に分解するN-置換アゾール化合物;またはN-置換アゾール化合物に反応してそれを低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物に分解する化合物の存在下で分解するN-置換アゾール化合物を含む、項目1または2または3に記載の方法。
(項目5)
前記アゾール化合物は、N-置換1,2,4トリアゾール
【化101】

を含み、
ここで、R およびR は、直鎖または分枝のいずれか、または炭化水素鎖の2つの末端が環状構造を形成するC3-C22の炭化水素基であるか、またはR もしくはR の一方はHである、項目1または2または3または4に記載の方法。
(項目6)
前記N-置換1,2,4トリアゾールは、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)-1H-1,2,4トリアゾール-1-メタンアミンを含む、項目1または2または3または4または5に記載の方法。
(項目7)
前記アゾール化合物は、アゾール化合物をアクリレートエステル、アクリル酸、アクリルアミド、またはそれらの組み合わせと接触させることによって形成されるアゾール-アクリル付加物を含み、前記付加物は、少なくとも1つのアシル基を含む少なくとも1つの窒素-アルキル基を有する、項目1または2または3または4に記載の方法。
(項目8)
前記潤滑剤組成物は、前記導電性構成部品に対して腐食性の揮発性化合物をさらに含む、項目1または2または3または4または5または6または7に記載の方法。
(項目9)
前記導電性構成部品に対して腐食性の前記揮発性化合物は、揮発性硫黄含有化合物を含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
揮発性硫黄の供給源は、チオール、または置換チアジアゾールと亜リン酸水素との反応生成物を含む、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記自動車装置は、トランスミッションを含む、項目1または2または3または4または5または6または7または8または9または10に記載の方法。
(項目12)
前記トランスミッションは、デュアルクラッチトランスミッションである、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記トランスミッションは、電気モータによって駆動される、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記自動車装置は、車軸を含む、項目1または2または3または4または5または6または7または8または9または10に記載の方法。
(項目15)
前記車軸は、電気モータによって駆動される、項目14に記載の方法。
(項目16)
亜リン酸塩の非存在下でチアジアゾール腐食防止剤をさらに含む、項目1~15のいずれかに記載の方法。
(項目17)
潤滑剤組成物であって、
a.潤滑粘度の油と、
b.前記潤滑剤組成物を逃れ、かつ前記潤滑剤組成物の上方の空間における腐食を防止することができるアゾール化合物と、を含む、潤滑剤組成物。
(項目18)
前記アゾール化合物は、低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物;自動車装置の運転条件下で低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物に分解するN-置換アゾール化合物;またはN-置換アゾール化合物に反応してそれを低分子量トリアゾールまたは低分子量テトラゾール化合物に分解する化合物の存在下で分解するN-置換アゾール化合物を含む、項目17に記載の組成物。
(項目19)
前記アゾール化合物は、N-置換1,2,4トリアゾール、
【化102】

を含み、
ここで、R およびR は、直鎖または分枝のいずれか、または炭化水素鎖の2つの末端が環状構造を形成するC3-C22の炭化水素基であるか、またはR またはR の一方がHである、項目17または18に記載の組成物。
(項目20)
前記N-置換1,2,4トリアゾールは、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-メタンアミンを含む、項目17または18または19に記載の組成物。
(項目21)
前記アゾール化合物は、アゾール化合物をアクリレート、アクリル酸、アクリルアミド、またはそれらの組み合わせと接触させることによって形成されるアゾール-アクリル付加物を含み、前記付加物は、少なくとも1つのアシル基を含む少なくとも1つの窒素-アルキル基を有する、項目17または18に記載の組成物。
(項目22)
前記アゾール化合物に対して求電子性である化合物をさらに含む、項目17または18または19または20または21に記載の組成物。
(項目23)
前記アゾール化合物における置換基に対して求核性である化合物をさらに含む、項目17または18または19または20または21または22に記載の組成物。
(項目24)
前記導電性構成部品に対して腐食性の揮発性化合物をさらに含む、項目17または18または19または20または21または22または23に記載の組成物。
(項目25)
前記導電性構成部品に対して腐食性である前記揮発性化合物は、揮発性硫黄含有化合物を含む、項目24に記載の組成物。
(項目26)
揮発性硫黄の供給源は、硫化オレフィン、置換チアジアゾールと亜リン酸水素との反応生成物から形成されるものなどのチオール、またはそれらの組み合わせを含む、項目24または25に記載の組成物。
(項目27)
亜リン酸塩の非存在下でチアジアゾール腐食防止剤をさらに含む、項目17~26のいずれかに記載の組成物。