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特許7356470レーダー干渉低減のための方法およびデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】レーダー干渉低減のための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/87 20060101AFI20230927BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20230927BHJP
   G01S 13/34 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
G01S13/87
G01S7/497
G01S13/34
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021077033
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2021192027
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】20173888
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502208205
【氏名又は名称】アクシス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サクニーニ, アダム
(72)【発明者】
【氏名】グラッツ, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ランドグレン, アクセル
(72)【発明者】
【氏名】シモンソン, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】スコーグ, アンダース
(72)【発明者】
【氏名】マネソン, アンダース
(72)【発明者】
【氏名】ヒューニッシュ, セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アダルビヨルンソン, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ノルディン, カール
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-187632(JP,A)
【文献】特開2008-292264(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101262(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03637127(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダーユニット(102-1)によって実行される干渉低減のための方法であって、
1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)を受信すること(S502)と、ここで、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)は、1つまたは複数のそれぞれの時間間隔(t11、t12)に対応し、当該時間間隔、前記レーダーユニット(102-1)が、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)のデータサンプル(402)を生成するための信号を送信し、受信するようにアクティブ化された時間間隔であり
前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)において当該レーダーフレームの対応する時間間隔(t11、t12)の後半(410-11、410-12)中よりも当該時間間隔(t11、t12)の前半(408-11、408-12)中に、他のレーダーユニット(102-2、102-3)からの干渉を受けるデータサンプルの存在量がより多いかどうかを決定すること(S504)と、
前記存在量が、前記時間間隔(t11、t12)の前記前半(408-11、408-12)中により多いことが決定された場合、前記レーダーユニット(102-1)によって生成されるべき後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔(t13)を遅らせること(S506a)と、
前記存在量が、前記時間間隔(t11、t12)の前記後半(410-11、410-12)中により多いことが決定された場合、前記レーダーユニット(102-1)によって生成されるべき後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔(t13)を進めること(S506b)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記決定すること(S504)が、
記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)の前記時間間隔(t11、t12)の前記前半(408-11、408-12)および前記後半(410-11、410-12)中における、他のレーダーユニット(102-2、102-3)からの干渉を受けるデータサンプル(412)の前記存在量それぞれ示している第1の量および第2の量を計算することと、
前記第1の量が前記第2の量よりも多い場合に、他のレーダーユニット(102-2、102-3)からの干渉を受けるデータサンプル(412)の前記存在量は、前記時間間隔の前記後半(410-11、410-12)中よりも前記時間間隔(t11、t12)の前記前半(408-11、408-12)中のほうが多いことを決定することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記後続のレーダーフレームの前記スケジュールされた時間間隔(t13)が、前記第1の量と前記第2の量との間の差に比例する量だけ遅らせられるか、または進められる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の量および前記第2の量が、それぞれ、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)の前記時間間隔(t11、t12)の前記前半(408-11、408-12)および前記後半(410-11、410-12)中の、他のレーダーユニット(102-2、102-3)からの干渉を受けるデータサンプル(412)の数として計算される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の量および前記第2の量が、それぞれ、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)の前記時間間隔(t11、t12)の前記前半(408-11、408-12)中および前記後半(410-11、410-12)中の、データサンプルのエネルギーの和として計算される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)中の前記データサンプル(402)には、前記第1および第2の量を計算するときに、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)の前記時間間隔(t11、t12)内の当該データサンプル(402)の時間的位置に応じて異なる重みが与えられ、前記重みが、時間間隔(t11、t12)の中心点までのデータサンプルの時間的位置の距離の増加とともに減少する、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記決定すること(S504)が、
他のレーダーユニット(102-2、102-3)からの干渉を受けるデータサンプル(412)の前記存在量が、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)の前記時間間隔(t11、t12)にわたってどのように分布しているかを反映する分布(700、800)を計算することと、
前記分布(700、800)の重心(701、801)が、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)の前記時間間隔(t11、t12)の前記前半(408-11、408-12)中に位置する場合に、他のレーダーユニット(102-2、102-3)からの干渉を受けるデータサンプルの前記存在量は、前記時間間隔(t11、t12)の前記後半(410-11、410-12)中よりも前記時間間隔(t11、t12)の前記前半(408-11、408-12)中のほうが多いことを決定することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記後続のレーダーフレームの前記スケジュールされた時間間隔(t13)が、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)の前記時間間隔(t11、t12)内の前記分布(700、800)の前記重心(701、801)のロケーションに依存する量だけ遅らせられるか、または進められ、前記量が、前記重心(701、801)の前記ロケーションと前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)の前記時間間隔(t11、t12)の中心点との間の距離(702、802)の減少とともに増加する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記分布が、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)の前記時間間隔(t11、t12)にわたる他のレーダーユニット(102-2、102-3)からの干渉を受けるデータサンプル(412)の数の分布(700)として計算される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記分布が、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)の前記時間間隔(t11、t12)にわたる前記データサンプル(402)のエネルギーの分布(800)として計算される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が所定の時間間隔において繰り返される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記レーダーユニット(102-1)が複数のレーダーユニット(102-1、102-2、102-3)のシステム(100)中に含まれ、前記方法が、前記複数のレーダーユニット(102-1、102-2、102-3)の中の少なくとも2つのレーダーユニットによって独立して実行される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
レーダーユニット(102-1)中の干渉低減のためのコントローラ(210)であって、当該コントローラが、
1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)を受信するように構成された回路と、ここで、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)は、1つまたは複数のそれぞれの時間間隔(t11、t12)に対応し、当該時間間隔、前記レーダーユニット(102-1)が、前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)のデータサンプル(402)を生成するための信号を送信し、受信するようにアクティブ化された時間間隔であり
前記1つまたは複数のレーダーフレーム(400-11、400-12)において当該レーダーフレームの対応する時間間隔(t11、t12)の後半(410-11、410-12)中よりも当該時間間隔(t11、t12)の前半(408-11、408-12)中に、他のレーダーユニット(102-2、102-3)からの干渉を受けるデータサンプル(412)の存在量がより多いかどうかを決定するように構成された回路と、
前記存在量が、前記時間間隔(t11、t12)の前記前半(408-11、408-12)中により多いことが決定された場合、前記レーダーユニット(102-1)によって生成されるべき後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔(t13)を遅らせるように構成された回路と、
前記存在量が、前記時間間隔(t11、t12)の前記後半(410-11、410-12)中により多いことが決定された場合、前記レーダーユニット(102-1)によって生成されるべき後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔(t13)を進めるように構成される、回路と
を備える、コントローラ(210)。
【請求項14】
請求項13に記載のコントローラ(210)を備えるレーダーユニット(102)。
【請求項15】
処理機能を有するデバイスによって実行されたとき、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実行するように適応されたコンピュータコード命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダーの分野に関する。特に、本発明は、レーダー間の干渉を低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダーは、単独で、または他のセンサーとの組合せのいずれかで、セキュリティ監視目的のために使用される。たとえば、レーダーは、監視エリアにおける車両の人々の侵入が検出される、周囲監視のために使用され得る。セキュリティ監視目的のために使用されるレーダーの1つのタイプは周波数変調連続波(frequency-modulated continuous-wave)(FMCW)レーダーである。FMCWレーダーは、チャープと呼ばれることがある、周波数変調された正弦波信号を送信し、同時に、レーダーの前の物体によって反射された、送信された信号のエコーを受信する。送信された信号と受信された信号とは、データサンプルを生成するために混合され、データサンプルは、次いで、レーダーの前の物体の距離と速度とを識別するために周波数分析を受ける。FMCWレーダーは、時間間隔中に信号を送信し、受信するようにアクティブ化され得るレーダーの例である。それらの時間間隔の間では、レーダーは非アクティブであり得る。
【0003】
いくつかの状況では、エリアを監視するために複数のレーダーが使用され得る。いくつかのレーダーが、信号を同時に送信し、受信するためにアクティブである場合、それらのレーダーは互いに干渉する。より詳細に、第1のレーダーによって送信された信号は、第2のレーダーの前の物体から反射されたエコーとともに、第2のレーダーによって受信され得る。第1のレーダーによって送信された信号は、一般に、エコーよりも強くなり、したがって、第2のレーダーによって生成されたデータサンプルに大きい影響を及ぼす。特に、第1のレーダーの送信信号の周波数が第2のレーダーの送信信号の周波数に近いとき、干渉が起こる。結果として、そのような時点に第2のレーダーによって生成されたデータサンプルは干渉を受ける。
【0004】
干渉されたデータサンプルは、データサンプルの後続の周波数分析に悪影響を及ぼし、それによって、レーダーの前の物体の距離と速度とを正確に識別するレーダーの能力を低減する。したがって、レーダーユニット間の干渉をできる限り低減することが望ましい。
【0005】
干渉を低減する1つの手法は、異なるレーダーを異なるタイムスロット中にアクティブであるようにスケジュールすることである。そのような手法は、クロック間の最もわずかなドリフトでさえも、最終的に、レーダーのスケジュールされたタイムスロットが重複するので、異なるレーダーにおいて高度に同期したクロックを有することに依拠する。したがって、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】EP3637127A1
【発明の概要】
【0007】
上記に鑑みて、本発明の目的は、したがって、上記の問題を緩和し、レーダーユニット間のクロックドリフトがある状態でもレーダーユニット間の干渉低減を提供することである。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、上記の目的は、
1つまたは複数のレーダーフレームを受信することであって、1つまたは複数のレーダーフレームは、1つまたは複数のそれぞれの時間間隔に対応し、当該時間間隔は、レーダーユニットが、1つまたは複数のレーダーフレームのデータサンプルを生成するための信号を送信し、受信するようにその間にアクティブ化され時間間隔である、受信することと、
1つまたは複数のレーダーフレームにおいて、それらの対応する時間間隔の後半中よりもそれらの対応する時間間隔の前半中に、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの存在量がより多いかどうかを決定することと、
存在量が、それらの対応する時間間隔の前半中により高いことが決定された場合、レーダーユニットによって生成されるべき次のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔を遅らせることと、
存在量が、それらの対応する時間間隔の後半中により高いことが決定された場合、レーダーユニットによって生成されるべき次のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔を進めることと
を含む、レーダーユニットによって実行される干渉低減のための方法によって達成される。
【0009】
レーダーユニットは、したがって、いくつかの時間間隔中にデータサンプルを生成するためにアクティブである。これらの時間間隔中に、他のレーダーユニットもアクティブであり、それにより干渉が起こり得る。本方法は、他のレーダーユニットがアクティブであり、干渉を引き起こすときの表示が、レーダーユニットがアクティブである時間間隔中に干渉されたデータサンプルが存在するときを分析することによって、間接的に導出され得ることの実現から生じる。特に、レーダーユニットは、時間間隔の後半中よりも前半中に、干渉されたデータサンプルの存在量がより多いかを決定し得る。時間間隔の前半中に、干渉されたデータサンプルの存在量がより多いことは、他のレーダーユニットのアクティビティと、他のレーダーユニットからの干渉とが、時間間隔の後半中よりも時間間隔の前半中のほうが高いことを示す。レーダーユニットは、他のレーダーユニットがアクティブである時間間隔との重複を低減するように、レーダーユニットがアクティブである後続の時間間隔のタイミングを調整するために、そのような指示を利用することができる。より詳細に、干渉されたデータサンプルは、後続の時間間隔がどの方向において調整されるべきであるかのガイダンスを与え得る。特に、干渉されたサンプルの存在量が時間間隔の前半中により多いことがわかった場合、後続の時間間隔は、それが最初にスケジュールされたときに対して遅らせられ得る。反対に、干渉されたサンプルの存在量が時間間隔の後半中により多いことがわかった場合、後続の時間間隔は、それが最初にスケジュールされたときに対して進められ得る。そのようにして、後続の時間間隔は、他のレーダーユニットのアクティビティの干渉周期から遠ざけられる。したがって、この方法は、レーダーユニットのアクティブな時間間隔間の重複を低減し、それによって干渉を低減するために役立つ。
【0010】
この方法は、レーダーユニットにおけるクロック間のドリフトにより、いくつかのレーダーユニットのスケジュールされた時間間隔が必要以上に重複させられる状況を回避するために使用され得ることに留意されたい。特に、本方法が適用されるとき、本方法は、他のレーダーユニットのスケジュールされた時間間隔との重複を低減するように、次のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔を自動的に調整する。本方法は、したがって、有利には、レーダーユニット間のクロックドリフトを補償するために使用され得る。
【0011】
本明細書で使用する際、干渉低減は、レーダーユニットと他のレーダーユニットとの間の干渉を低減することを指す。干渉は、レーダーユニットが他のレーダーユニットによって送信されたレーダー信号を受信した際に現れる。レーダーユニットと他のレーダーユニットとはレーダーの同じシステム中に含まれ得る。
【0012】
レーダーフレームとは、一般に、レーダーユニットが信号を送信し、受信するためにアクティブである時間間隔中に、レーダーユニットによって生成されたデータサンプルを含むデータ構造を意味する。特に、レーダーユニットは、時間間隔中に複数の周期信号を送信し、受信する。レーダーフレーム中のデータサンプルは、これらの送信された複数の周期信号と受信された複数の周期信号とを混合することによって生成される。レーダーフレームは前半と後半とに分割され得る。レーダーフレームの前半は、時間間隔の前半中のレーダーユニットによって生成された、レーダーフレーム中のデータサンプルに対応する。レーダーフレームの後半は、時間間隔の後半中のレーダーユニットによって生成された、レーダーフレーム中のデータサンプルに対応する。
【0013】
本明細書で使用する際、後続のレーダーフレームは、レーダーユニットによってまだ生成されていないレーダーフレームを指す。たとえば、後続のレーダーフレームは、1つまたは複数の受信されたレーダーフレームに続く、レーダーユニットによって生成されるべき次のフレームであり得る。しかしながら、後続のレーダーフレームは、時間的にさらにもっと先に生成されるべきレーダーフレームでもあり得る。
【0014】
後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔とは、レーダーユニットが、後続のレーダーフレームを生成するためにアクティブであるようにスケジュールされた時間間隔を意味する。たとえば、レーダーユニットは、事前定義された時間期間とともに再び起こる時間間隔中にアクティブであるようにスケジュールされ得る。
【0015】
スケジュールされた時間間隔を遅らせることは、スケジュールされた時間間隔の開始時間が遅延させられることを意味する。同様に、スケジュールされた時間間隔を進めることは、スケジュールされた時間間隔が、スケジュールされたよりも早い時点において開始させられることを意味する。しかしながら、スケジュールされた時間間隔の持続時間は、一般に、これらのケースの各々において維持される。
【0016】
実施形態の第1のグループによれば、決定することは、それぞれ、1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔の前半中と後半中との、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの存在量を示している第1の量と第2の量とを計算することと、第1の量が第2の量よりも大きい場合、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの存在量は、時間間隔の後半中よりも時間間隔の前半中のほうが高いことを決定することとを含み得る。第1および第2の量の計算は、したがって、時間間隔の前半および後半中の干渉されたデータサンプルの存在を定量化することを可能にする。
【0017】
干渉されたデータサンプルは、後続の時間間隔をどの方向において調整すべきかのガイダンスを与え得るだけでなく、後続の時間間隔をどのくらい遅らせるか、または進めるかについてのガイダンスを与え得る。特に、後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔は、第1の量と第2の量との間の差に比例する量だけ遅らせられ得るか、または進められ得る。したがって、前半中の干渉されたデータサンプルの重みが過剰であればあるほど、遅れは大きくなる。反対に、後半中の干渉されたデータサンプルの重みが過剰であればあるほど、進みは大きくなる。このようにして、レーダーユニットは、受信されたレーダーフレームの時間間隔の半分のうちの1つに干渉がどのくらい集中しているかに応じた調整の量に適応することができる。結局、これは、受信されたレーダーフレーム中の観測された干渉への後続の時間間隔のより速い適応につながる。
【0018】
第1の量および第2の量は、それぞれ、1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔の前半および後半中に、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの数として計算され得る。レーダーユニットは、したがって、それぞれ、受信されたレーダーフレームの各々の前半および後半から、干渉されたデータサンプルの数を示す情報を累積し得る。そのようにして、レーダーユニットは、いくつのデータサンプルが、受信されたレーダーフレームの半分の各々中で干渉を受けるかを効率的にカウントし得る。
【0019】
別の手法によれば、第1の量および第2の量は、代わりに、それぞれ、1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔の前半中および後半中のデータサンプルのエネルギーの和として計算される。特に、この手法は、干渉されたデータサンプルのエネルギーだけでなく、1つまたは複数のレーダーフレーム中のすべてのデータサンプルのエネルギーを合計する。したがって、最初に、1つまたは複数のレーダーフレーム中の干渉されたデータサンプルを識別する必要がない。この手法は、レーダーユニットによって受信された信号がレーダーユニットの前の物体からのエコーのみから発生している場合は、レーダーフレーム中のデータサンプルのエネルギーは本質的に一定になるが、レーダーユニットによって受信された信号が別のレーダーユニットの送信機から発生している場合は、そのようにならないことの実現から生じる。後者の場合、データサンプルのエネルギーは、代わりに、干渉が起こっている時間間隔の部分においてより高くなる。したがって、エコーからのエネルギーへの寄与は、時間間隔の半分の両方で同じであり、したがって、第1および第2の量が比較されるときに互いに消去しあう。これは、後半中よりも前半中の干渉が多い場合、時間間隔の後半中よりも前半中のほうが高く、その逆も同様である、干渉する送信機からのエネルギーへの寄与とは対照的である。
【0020】
1つまたは複数のレーダーフレーム中のデータサンプルには、第1および第2の量を計算するときに、1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔内のそれらの時間的位置に応じて異なる重みが与えられ得、重みは、時間間隔の中心点までのデータサンプルの時間的位置の距離の増加とともに減少する。データサンプルをこのように重み付けすることにより、時間間隔の中心により近く位置するデータサンプルには、中心から遠く離れて位置するデータサンプルよりも高い重みが与えられる。結果として、本方法は、フレームの中心において干渉されたデータサンプルを有することを不利にし、後続のレーダーフレームの時間間隔の調整は、したがって、後続のレーダーフレームの境界における干渉の低減よりも後続のレーダーフレームの中心における干渉の低減を選好する方向において行われる。時間間隔の中心における干渉されたデータサンプルにより高い不利益を与える理由は、レーダーフレームの中心により近い干渉されたデータサンプルが、一般に、レーダーユニットによって実行される周波数分析により大きい影響を及ぼすことである。これは、周波数分析が、通常、レーダーフレームの境界におけるデータサンプルの重みを減らすウィンドウイングをレーダーフレームに適用することによる。また、利用可能なタイムスロットよりも多いレーダーユニットがシステム中にある場合、レーダーユニットがアクティブであるタイムスロットは必然的に重複する。重み付けする手法を適用することによって、本方法は、時間間隔の境界においてそれらの重複を有することを選好する。
【0021】
実施形態の第2のグループにおいて、決定することは、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの存在量が、1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔にわたってどのように分布しているかを反映する分布を計算することと、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの存在量は、分布の重心が1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔の前半中に位置する場合に、時間間隔の後半中よりも時間間隔の前半中のほうが高いことを決定することを含み得る。このようにして、レーダーユニットは、したがって、時間間隔に沿って、干渉されたデータサンプルが平均してどこに現れるかを推定する。特に、レーダーユニットは、干渉されたデータサンプルが、平均して、時間間隔の前半中に現れるのか、後半中に現れるのかを見つけ出す。
【0022】
時間間隔に沿った干渉されたデータサンプルの平均位置は、後続の時間間隔をどの方向において調整するべきかのガイダンスを与えるだけでなく、後続の時間間隔をどのくらい遅らせるか、または進めるかについてのガイダンスを与え得る。特に、後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔は、1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔内の分布の重心のロケーションに依存する量だけ遅らせられ得るか、または進められ得、前記量は、重心のロケーションと1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔の中心点との間の距離の減少とともに増加する。したがって、重心が時間間隔の中心に近ければ近いほど、遅れまたは進みは大きくなる。後続のレーダーフレームのより大きい遅れまたは進みは、後続のレーダーフレームを他のレーダーユニットのアクティビティの周期と重複することから遠ざけるためにそのような場合において必要とされ得る。結局、これは、受信されたレーダーフレーム中で観測された干渉への後続の時間間隔のより速い適応につながる。
【0023】
分布は、1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔にわたる、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの数の分布として計算され得る。代替的に、分布は、1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔にわたる、データサンプルのエネルギーの分布として計算される。後者の場合、上記で説明したように、最初に、干渉されたデータサンプルを識別する必要がない。
【0024】
1つまたは複数のレーダーフレームが複数のレーダーフレームを含む場合、上記で説明したような干渉されたデータサンプルの存在量に関する情報は、受信されたレーダーフレームの各々から累積され、干渉されたデータサンプルの存在量がレーダーフレームの時間間隔の後半中よりも前半中のほうが多いかどうかの決定に達するために使用され得ることを理解されたい。特に、レーダーユニットは、複数のレーダーフレームが、平均して、それらの対応する時間間隔の後半中よりもそれらの対応する時間間隔の前半中に、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルのより多い存在量を有するかどうかを決定し得る。
【0025】
1つまたは複数のレーダーフレームは、それぞれ、複数のビート信号のデータサンプルを含み得、本方法は、1つまたは複数のレーダーフレームが、それらの対応する時間間隔の後半中よりも前半中に、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの存在量がより多いかどうかを決定する前に特定の周波数を増強または低減するための複数のビート信号をフィルタ処理することをさらに含み得る。レーダーユニットの前の物体からのエコーから発生する所望の信号は、一般に、帯域制限周波数スペクトルを有する。これは、一般に広帯域周波数スペクトルを有する干渉とは対照的である。所望の信号の周波数帯域における周波数を低減するフィルタ、または、等価的に、その帯域外の周波数を増強するフィルタを適用することによって、干渉されたデータサンプルは非干渉データサンプルに対して増幅され得る。そのようにして、干渉されたデータサンプルをレーダーフレーム中で識別することがより容易になる。例として、干渉されたデータサンプルを増強するために複数のビート信号にハイパスフィルタが適用され得る。
【0026】
後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔は、高々所定の最大値だけ遅らせられるか、または進められ得る。そのようにして、本方法は、観測された干渉に過剰に反応することを妨げられ得る。
【0027】
本方法は所定の時間間隔において繰り返され得る。そのようにして、レーダーユニットは、他のレーダーユニットに関してアクティビティの重複する期間を調整するように、時間とともに適応し得る。たとえば、レーダーユニットは、レーダーユニット間のクロックドリフトにより起こる重複に適応し得る。
【0028】
レーダーユニットは複数のレーダーユニットのシステム中に含まれ得、本方法は、複数のレーダーユニットの中の少なくとも2つのレーダーユニットによって独立して実行され得る。そのようにして、レーダーユニットは、全体としてシステムにおけるレーダー干渉を最小にするように、アクティビティのそれらの期間を互いに対して独立して適応させ得る。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、上記の目的は、レーダーユニット中の干渉低減のためのコントローラであって、
1つまたは複数のレーダーフレームを受信するように構成された回路であって、1つまたは複数のレーダーフレームは、レーダーユニットが、1つまたは複数のレーダーフレームのデータサンプルを生成するための信号を送信し、受信するようにその間にアクティブ化される1つまたは複数のそれぞれの時間間隔に対応する、回路と、
1つまたは複数のレーダーフレームにおいて、それらの対応する時間間隔の後半中よりもそれらの対応する時間間隔の前半中に、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの存在量がより多いかどうかを決定するように構成された回路と、
存在量が、それらの対応する時間間隔の前半中により高いことが決定された場合、レーダーユニットによって生成されるべき後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔を遅らせるように構成された回路と、
存在量が、それらの対応する時間間隔の後半中により高いことが決定された場合、レーダーユニットによって生成されるべき後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔を進めるように構成され、レーダーユニットによって生成されるべき後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔を進める、回路と
を備える、干渉低減のためのコントローラによって達成される。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、上記の目的は、第2の態様によるコントローラを備えるレーダーユニットによって達成される。
【0031】
本発明の第4の態様によれば、上記の目的は、処理機能を有するデバイスによって実行されたとき、第1の態様の方法を実行するように適応されたコンピュータコード命令をその上に記憶した非一時的コンピュータ可読媒体によって達成される。
【0032】
第2、第3、および第4の態様は、一般に、第1の態様と同じ特徴および利点を有し得る。さらに、本発明は、別段に明記されていない限り、特徴のすべての可能な組合せに関することに留意されたい。
【0033】
上記、ならびに本発明の追加の目的、特徴および利点は、同じ参照番号が同様の要素のために使用される添付の図面を参照しながら、以下の例示的で非限定的な本発明の実施形態の詳細な説明によってより良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】複数の実施形態による、複数のレーダーユニットを備えるレーダーシステムを概略的に示す図である。
図2】複数の実施形態による、レーダーユニットを概略的に示す図である。
図3】複数のレーダーユニットが信号を送信し、受信するためにアクティブである時間間隔を概略的に示す図である。
図4】時間間隔中にレーダーユニットによって生成されたデータサンプルのレーダーフレームを概略的に示す図である。
図5】複数の実施形態による、干渉低減のための方法のフローチャートである。
図6】2つの対応する時間間隔中にレーダーユニットによって生成された干渉されたデータサンプルを含む2つのレーダーフレームを示す図である。
図7図6に示された2つのレーダーフレーム中の、それらの時間間隔にわたる干渉されたデータサンプルの数の分布を概略的に示す図である。
図8図6に示された2つのレーダーフレームの時間間隔にわたるデータサンプルのエネルギーの分布を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下で、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、本発明についてより十分に説明する。
【0036】
図1は、物体104を含み得るシーンを監視するように設置されているレーダーシステム100を示す。レーダーシステムは、ここでは第1のレーダーユニット102-1と第2のレーダーユニット102-2と第3のレーダーユニット102-3とによって示されている、複数のレーダーユニット102を備える。図示の例では、レーダーユニットは固定されており、したがって、使用中に移動しない。しかしながら、他の実施形態では、レーダーユニットは、移動している物体に取り付けられ得る。たとえば、3つのレーダーユニット102-1、102-1および102-3は車の上に配置され得る。
【0037】
複数のレーダーユニット102は、時間間隔中はアクティブに信号を送信し、受信し、それらの時間間隔の間は非アクティブのままであるタイプのものである。例として、複数のレーダーユニット102は持続波(continuous wave)レーダーであり得る。さらに、レーダーユニット102は、好ましくは同じタイプのものである。たとえば、レーダーユニット102はすべてFMCWレーダーであり得る。しかしながら、これは必ずしもそうであるとは限らない。たとえば、1つのレーダーユニットはFMCWレーダーであり得、別のレーダーユニットは位相変調持続波(PMCW)レーダーであり得る。
【0038】
各レーダーユニット102は、一般に、他のレーダーユニットから独立して動作させられ、したがって、システム100中の他のレーダーユニット102がいつアクティブまたは非アクティブであるかに気づかない。レーダーユニット102-1、102-2、102-3のアクティブな時間間隔は、原則として、レーダーユニットのフレームレートに対応する一定の時間期間で再び起こる。この時間期間は、好ましくは、システム100のすべてのレーダーユニット102-1、102-2、102-3について同じである。言い換えれば、レーダーユニット102-1、102-2、102-3は、一般に、同じフレームレートにおいて動作する。アクティブな時間間隔の持続時間は、好ましくは、複数のレーダーユニット102について同じであるが、異なるレーダーユニットが、アクティブな時間間隔の異なる持続時間を有する実施形態も可能である。
【0039】
例示の目的で、レーダーユニット102-1であると仮定されるレーダーユニット102が、図2にさらに詳細に示されている。レーダーユニット102は、シンセサイザ202と、送信アンテナ204と、受信アンテナ206と、ミキサ208と、コントローラ210とを備える。レーダーユニット102はレーダー処理ユニット212をさらに含み得る。
【0040】
送信アンテナ204は、信号のシーケンスを送信するように構成される。信号のシーケンスは複数の後続の信号を含む。複数の信号は、事前定義された周期で送信される。信号のシーケンスはシンセサイザ202によって生成され得る。信号のシーケンス中の各信号は、チャープとも呼ばれることがある、その周波数が時間とともに直線的に増加するシヌソイドなど、周波数変調正弦波信号であり得る。送信された信号のシーケンス中の信号は、反射された信号のシーケンスがレーダーユニット102に向かって戻るように、シーン中の物体104から反射される。反射された信号のシーケンスは受信アンテナ206によって受信される。受信アンテナ206は、したがって、送信アンテナ204によって送信された信号のシーケンスに応答して、反射された信号のシーケンスを受信する。反射された信号のシーケンスは、本開示においてエコーと呼ばれることがあり、用語は互換的に使用され得ることを理解されたい。
【0041】
反射された信号のシーケンスに加えて、受信アンテナ206は、同じレーダーシステム100中の他のレーダーユニット102-2、102-3の送信機など、レーダーユニット102-1の一部ではない送信機から送信された信号を受信し得る。それらの信号は、受信アンテナ206において反射された信号のシーケンスと重ね合わせられる。受信アンテナ206によって受信された信号は、したがって、レーダーユニット自体から発生し、シーン中の物体104から反射された、反射された信号のシーケンスから生じる構成要素と、システム100中の干渉するレーダーユニット102-2、102-3によって送信された信号のシーケンスから生じる別の構成要素とを有し得る。
【0042】
レーダーユニット102は、時間間隔中に信号を送信し、受信するようにアクティブ化され得る。特に、コントローラ210は、たとえば、次いで送信アンテナ204によって送信される信号のシーケンスを生成するためにシンセサイザ202をアクティブ化することによって、それらの時間間隔中にレーダーユニットをアクティブ化するように構成され得る。図3に示されているように、シンセサイザ202は、第1の時間間隔t11中にレーダーユニット102-1の送信アンテナ204に信号のシーケンスを送出させ得る。シンセサイザ202は、次いで、第2の時間間隔t12中に送信アンテナ204に信号のさらなるシーケンスを送出させる前にしばらくの間サイレントであり得る。同様に、レーダーユニット102-2および102-3はまた、特有の時間間隔中に信号をアクティブに送信し、受信する。時間間隔は、所定のルールに従って、いくつかの時点において開始するようにスケジュールされ得る。例として、レーダーユニット102-1が信号をアクティブに送信し、受信する時間間隔は、原則として、レーダーユニット102のフレームレートに対応する所定の頻度で起こり得る。図3の例では、時間間隔は、時間期間Tで起こるようにスケジュールされている。時間間隔t11の開始時間と次の時間間隔t12のスケジュールされた開始時間との間の時間は、したがって、図3の例ではTに等しい。しかしながら、以下でより詳細に説明するように、レーダーユニット102-1が、他のレーダーユニット102-2、102-3からの干渉を低減するようにアクティブであるようにスケジュールされているとき、コントローラ210は、時間間隔t13など、後続の時間間隔の開始時間を調整し得る。
【0043】
図2に戻ると、レーダーユニット102がアクティブである時間間隔中に送信アンテナ204によって送信された信号と受信アンテナ206によって受信された信号とは、時間間隔に対応するレーダーフレームを生成するために組み合わせられる。より詳細には、ミキサ208は、レーダーフレームを生成するために、送信された信号と受信された信号とを混合する。レーダーフレームは、時間間隔中に送信された信号と受信された信号とから生成された、ミキサの出力信号のデータサンプルを含む。データサンプルは、一般に複素数値であり、ベースバンドサンプルと呼ばれることがある。原則として、ミキサ208は、入力信号の積、すなわち、レーダーユニット102によって送信された信号と受信された信号との積を計算することによって、それの入力信号を混合するように構成される。ミキサ208によって生成された出力信号はビート信号のシーケンスまたは中間周波数信号と呼ばれることがある。レーダーフレームは、したがって、ビート信号のシーケンスのデータサンプルを含むと言われ得る。ビート信号のシーケンスは、時間間隔中にレーダーユニットによって送信された信号のシーケンスに対応する。特に、各ビート信号は、送信された信号のシーケンス中の対応する信号と、それに応答してレーダーユニットの受信アンテナによって受信された信号との混合である。上述のように、レーダーユニットによって受信された信号は、干渉するレーダーユニットがない状況では、送信された信号の反射に対応する。しかしながら、干渉する送信機があるとき、レーダーユニットによって受信される信号は、干渉するレーダーユニットによって送信された信号をさらに含む。
【0044】
図4は、レーダーユニット102がその間にアクティブであった時間間隔tijに対応する、データサンプル402のレーダーフレーム400を示す。レーダーフレーム400中のデータサンプル402は、2つの時間軸406および404に沿ってアレイ中に配置される。第1の時間軸406は速い時間と呼ばれることがあり、第2の時間軸404は遅い時間と呼ばれることがある。一方、速い時間軸406に沿ったレーダーフレーム400の各サブベクトルは単一のビート信号のデータサンプルに対応する。速い時間軸に沿ったレーダーフレームの長さは、したがって、ビート信号の持続時間に対応し、ビート信号の持続時間は、時間間隔tij中にレーダーユニット102によって送信される信号(すなわち、チャープ)のうちの1つの持続時間に対応する。一方、遅い時間軸404に沿ったレーダーフレーム400の各サブベクトルは、時間間隔tij中に生成されるビート信号のシーケンス中の各ビート信号からの1つのデータサンプルを含み、データサンプルは、速い時間軸404に沿って同じ時間的位置を有する。したがって、遅い時間軸404に沿ったレーダーフレーム400の長さは時間間隔tijの持続時間に対応する。
【0045】
レーダーフレーム400は、したがって、時間間隔tij中にレーダーユニットによって生成された複数の後続のビート信号のデータサンプルを含むと言われ得る。後続のビート信号の対応するデータサンプルは、遅い時間軸404に沿って互いの後に編成されるが、単一のビート信号のデータサンプルは、速い時間軸406に沿って互いの後に編成される。
【0046】
レーダーフレーム400は、遅い時間軸404に沿った前半408と、遅い時間軸404に沿った後半410とを有する。前半408は、したがって、時間間隔tijの前半中にレーダーユニット102によって生成されたデータサンプルに対応するが、後半410は、時間間隔tijの後半中にレーダーユニット102によって生成されたデータサンプルに対応する。別の言い方をすれば、レーダーフレーム400の前半408は、時間間隔tij中にレーダーユニットによって生成されたビート信号のシーケンスの前半に対応し、レーダーフレーム400の後半410は、時間間隔tij中にレーダーユニット102によって生成されたビート信号のシーケンスの後半に対応する。
【0047】
図示されていないが、レーダーフレーム400は、さらに、3次元に沿って延び得ることを理解されたい。その場合、3次元に沿ったレーダーフレームの異なるレイヤ中のデータサンプルはレーダーユニット102の異なる受信アンテナに対応し得る。
【0048】
再び図2に戻ると、レーダー処理ユニット212は、ミキサ208によって出力されたレーダーフレームを処理し得る。レーダー処理ユニット212は、シーン中の物体の距離と速度と角度とを計算するために、周波数分析など、知られている任意のタイプのレーダー処理を実行し得る。これは、距離FFT(高速フーリエ変換(FFT))およびドップラーFFT、ならびに角度デジタルビームフォーミングを含む。レーダーフレームの周波数分析を実行する前に、レーダー処理ユニット212は、速い時間と遅い時間軸の一方または両方に沿ってレーダーフレームにウィンドウイングを適用し得る。時間軸に沿ってウィンドウを適用することは、軸に沿ったデータサンプルにウィンドウ関数を乗算することを意味する。ウィンドウ関数は、一般に、時間軸に沿ったフレームの中間においてそれの最も高い値を有し、時間軸に沿ったフレームの終了位置に向かって減少する。レーダー処理ユニット212による処理は、レーダーフレーム中に干渉されたデータサンプルがある場合、得られた距離信号と速度信号と角度信号との中にアーテファクトを引き起こし得る。したがって、干渉の量をできる限り低減することが望ましい。
【0049】
図3に、異なるレーダーユニット102-1、102-2、102-3がアクティブ化される時間間隔間に重複がある状況が示されている。たとえば、レーダーユニット102-2の時間間隔t22とレーダーユニット102-3の時間間隔t32は両方ともレーダーユニット102-1の時間間隔t12と重複する。これは、特に、レーダーユニットが同様の周波数で同時に送信する時点において、レーダーユニット間の干渉を引き起こす。結果として、レーダーフレーム中のデータサンプルのうちのいくつかは、図4に点網サンプル412によって示されているように、干渉を受ける。干渉するレーダーユニットが周期的に送信する場合、干渉されたデータサンプルはレーダーフレーム中に一定のパターンを形成し得る。図4のレーダーフレーム400がレーダーユニット102-1の時間間隔t12に対応すると仮定すると、フレームの前半408中の干渉されたデータサンプルはレーダーユニット102-3の時間間隔t32との重複によって生じ、フレームの後半410中の干渉されたデータサンプルはレーダーユニット102-2の時間間隔t22との重複によって生じる。
【0050】
次に、図5のフローチャートを参照しながら干渉低減のための方法について説明する。本方法は、システム100中のレーダーユニット102のコントローラ210によって実行され得る。本方法は、システムのいくつかのレーダーユニット102において独立して実行され得る。例示の目的で、以下では、本方法がレーダーユニット102-1のコントローラ210によって実行されると仮定する。
【0051】
ステップS502において、コントローラ210は、1つまたは複数のそれぞれの時間間隔に対応する1つまたは複数のレーダーフレームを受信する。1つまたは複数のレーダーフレームは、レーダーユニット102-1によって生成された後続のレーダーフレームであり得る。1つまたは複数のレーダーフレームは、1つまたは複数のフレームのすべてがコントローラ210によって受信された時点に関して、レーダーユニット102-1によって生成された最も近い1つまたは複数のレーダーフレームであり得る。図3および図6を参照すると、レーダーユニット102-1のコントローラ210は、時間t1において、時間間隔t11に対応する第1のレーダーフレーム400-11と、時間間隔t12に対応する第2のレーダーフレーム400-12とを受信していることがある。この例では、1つまたは複数のレーダーフレームは2つのレーダーフレームを含む。しかしながら、1つまたは複数のレーダーフレームは、単一のレーダーフレーム、または3つ以上のレーダーフレームを含み得ることを理解されたい。例示的な一実施形態では、ステップS502において、20~25個のレーダーフレームがコントローラ210によって受信される。コントローラ210は1つまたは複数のフレームを同時に受信し得る。しかしながら、コントローラ210は、一般に、1つまたは複数のフレームがレーダーユニット102-1によって生成されるとすぐに、それらの1つまたは複数のフレームを受信する。そのようにして、コントローラ210は、レーダーフレームが生成されるとすぐに、それらのレーダーフレームの処理を開始することができる。
【0052】
ステップS504において、レーダーユニット102-1のコントローラ210は、受信された1つまたは複数のレーダーフレーム400-11、400-12が、それらの対応する時間間隔t11、t12の後半中よりもそれらの対応する時間間隔t11、t12の前半中に、他のレーダーユニット102-2、102-3からの干渉を受けるデータサンプルの存在量がより多いかどうかを決定する。これについて、図6の例を参照しながらさらに説明する。第1のレーダーフレーム400-11は時間間隔t11に対応する。レーダーフレーム400-11のデータサンプルは、時間間隔t11の前半に対応する前半408-11と、時間間隔t11の後半に対応する後半410-11とに分割され得る。前半408-11中のデータサンプルは、したがって、時間間隔t11の前半中にレーダーユニット102-1によって生成され、後半410-11中のデータサンプルは、したがって、時間間隔t11の後半中にレーダーユニット102-1によって生成される。同様に、第2のレーダーフレーム400-12のデータサンプルは前半408-12と後半410-12とに分割され得る。
【0053】
ステップS504を実行するために、コントローラ210は、実施形態の第1のグループにおいて、受信された1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔の前半中の干渉されたデータサンプルの存在量を示す第1の量と、受信された1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔の後半中の干渉されたデータサンプルの存在量を示す第2の量とを計算し得る。コントローラ210は、次いで、どちらの量がより大きいかを確かめるために、第1の量を第2の量と比較し得る。
【0054】
1つの手法によると、コントローラ210は、受信されたレーダーフレームの各々の前半中の干渉されたデータサンプルの数をカウントすることによって第1の量を計算し得る。同様に、コントローラ210は、受信されたレーダーフレームの各々の後半中の干渉されたデータサンプルの数をカウントすることによって第2の量を計算し得る。この目的で、コントローラ210は、最初に、1つまたは複数のレーダーフレーム中の干渉されたデータサンプルを識別し得る。干渉されたデータサンプルは、たとえば、参照により本明細書に組み込まれたEP3637127A1において説明されている手法に従って識別され得る。特に、その文献の図4のステップS04とステップS06に関して説明された手法が使用され得る。本質的に、その手法は、速い時間軸に沿った各時間的位置について、その速い時間の時間的位置に配置されているデータサンプルの平均値を計算することに依拠する。図4を参照すると、これは、したがって、レーダーフレーム400の各行について平均値を計算することを伴う。上記で参照した文献において、平均値によって形成された信号は基準ビート信号と呼ばれる。レーダーフレームのビート信号(図4のレーダーフレーム400の列)は、次いで、それぞれ、1つまたは複数のしきい値を使用して基準ビート信号と比較される。信号間の偏差または偏差の導関数がしきい値を超えるデータサンプルは、干渉されたサンプルとして識別される。干渉されたデータサンプルの識別を促進するために、ビート信号は、識別を実行する前にフィルタ処理され得る。特に、ハイパスフィルタがビート信号に適用され得る。ハイパスフィルタは、好ましくは、それのカットオフ周波数が、レーダーユニットの前の物体からの所望の反射から発生する周波数成分に対応する周波数帯域を上回るように設計される。
【0055】
1つまたは複数のフレーム中の干渉されたデータサンプルを識別すると、コントローラ210は、受信されたレーダーフレームの各半分の中の干渉されたサンプルをカウントすることに進み得る。図6の例では、第1のレーダーフレーム400-11の前半408-11中に12個の干渉されたサンプルがあり、第2のレーダーフレーム400-12の前半408-12中に14個の干渉されたサンプルがある。コントローラ210は、したがって、各フレームの前半中の干渉されたサンプルの数を合計することによって第1の量を計算し得、上記の例では12+14=26が得られる。代替的に、コントローラ210は、各フレームの前半中の干渉されたサンプルの数の平均を計算し得、上記の例では(12+14)/2=13が得られる。図6の例では、レーダーフレーム400-11、400-12の各々の後半410-11、410-12中に5個の干渉されたデータサンプルがある。第2の量は、したがって、合計手法が適用された場合は、5+5=10に等しくなり、平均化手法が適用された場合は、(5+5)/2=5に等しくなる。
【0056】
上記の例では、干渉されたサンプルの数をカウントするとき、データサンプルには、1に等しい同じ重みが与えられる。しかしながら、干渉されたデータサンプルをカウントするとき、レーダーフレーム内のそれらの位置に応じて、異なるデータサンプルに異なる重みを与えることも可能である。そのようにして、カウントすることは、干渉されたデータサンプルの重みを合計することを含む。特に、レーダーフレームの中心のより近くに位置するデータサンプルには、レーダーフレームの中心から遠く離れて位置するデータサンプルよりも高い重みが与えられ得る。一般に、重みは、レーダーフレームの中心までのデータサンプルの位置の距離の増加とともに減少し得る。ここで、レーダーフレームの中心は、遅い時間軸に沿ったレーダーフレームの中心(すなわち、対応する時間間隔tijの中心点)か、速い時間軸に沿ったレーダーフレームの中心か、または両方を指し得る。重みは、たとえば、上記で説明したように、ウィンドウ関数を使用して計算され得る。コントローラ210によって適用されるウィンドウ関数は、レーダー処理ユニット212によって適用されるウィンドウ関数と同じであり得る。
【0057】
別の手法によれば、コントローラ210は、代わりに、第1の量を、各受信されたレーダーフレームの前半中のデータサンプルの総エネルギーとして計算し得る。この目的で、コントローラ210は、各受信されたレーダーフレームの前半中の各データサンプルのエネルギーを合計し得る。データサンプルのエネルギーは、データサンプルの絶対値の2乗として計算され得る。したがって、コントローラ210は、第1の量を、各受信フレームの前半中のデータサンプルの絶対値の2乗の和として計算し得る。代替的に、コントローラ210は、受信されたフレームの前半中の平均総エネルギーである第1の量に達するために、そのように計算された和を受信されたフレームの数で除算し得る。同様にして、コントローラ210は、第2の量を、各受信されたレーダーフレームの後半中のデータサンプルの総エネルギーとして計算し得る。特に、この場合、干渉されたデータサンプルのエネルギーだけでなく、レーダーフレーム中のすべてのデータサンプルのエネルギーが計算に含まれる。したがって、レーダーフレーム中の干渉されたサンプルを最初に検出する必要がない。また、この手法を用いると、データサンプルには、第1および第2の量を計算するときに、レーダーフレーム内のそれらの位置に応じて、異なる重みが与えられ得る。たとえば、データサンプルの絶対値の2乗の和を計算する代わりに、データサンプルの絶対値の2乗の加重和が計算され得る。重みに関して上記で言ったことはこの状況にも当てはまる。
【0058】
これらの手法のいずれかが使用されるとき、コントローラ210は、レーダーフレームの前半408-11、408-12に関して計算された第1の量と、レーダーフレームの後半410-11、410-12に関して計算された第2の量とを得ることになる。コントローラ210は、次いで、第1の量を第2の量と比較することができる。特に、コントローラ210は、第1の量が第2の量よりも大きいことを見つけた場合、コントローラ210は、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの存在量が時間間隔の後半中よりも時間間隔の前半中のほうが多く、その逆も同様であることを決定することができる。
【0059】
ステップS504を実行するために、コントローラ210は、実施形態の第2のグループにおいて、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの存在量が、1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔にわたってどのように分布しているかを反映する分布を計算し得る。
【0060】
分布は、1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔にわたる、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの数の分布であり得る。言い換えれば、コントローラ210は、干渉されたデータサンプルの位置が、受信されたレーダーフレームの時間間隔にわたって(すなわち、遅い時間軸に沿って)どのように分布しているかを計算し得る。そのような分布を計算するために、コントローラ210は、上記で説明したように、最初に、干渉されたデータサンプルと、受信されたレーダーフレームの遅い時間軸に沿った干渉されたデータサンプルの位置とを識別し得る。コントローラ210は、次いで、受信されたレーダーフレームの遅い時間軸に沿った干渉されたデータサンプルの位置の分布を、たとえば、ヒストグラムの形態で形成し得る。これは図7にさらに示されており、図7は、この場合も、レーダーユニット102-1のコントローラ210によって受信されたレーダーフレーム400-11および400-12と、遅い時間軸に沿った干渉されたサンプルのヒストグラムの形態での分布700とを示す。干渉を受けるとして識別されたデータサンプルは点網パターンで示されている。この場合、(レーダーフレームの第1のビート信号に対応する)遅い時間軸に沿った第1の時間的位置について、第1のレーダーフレーム400-11中に2つの干渉されたサンプルがあり、第2のレーダーフレーム400-12中に2つの干渉されたサンプルがある。したがって、コントローラ210は、ヒストグラム700中の遅い時間軸に沿った第1の時間的位置について、4つの干渉されたサンプルを記録する。同様に、(レーダーフレームの第2のビート信号に対応する)遅い時間軸に沿った第2の時間的位置について、第1のレーダーフレーム400-11中に1つの干渉されたサンプルがあり、第2のレーダーフレーム400-12中に2つの干渉されたサンプルがある。したがって、コントローラ210は、ヒストグラム700中の遅い時間軸に沿った第2の時間的位置について、3つの干渉されたサンプルを記録する。コントローラ210は、ヒストグラム700に達するために、このプロシージャを繰り返し、レーダーフレームの遅い時間軸に沿った各時間的位置について、受信されたレーダーフレームからの干渉されたサンプルの数を累積し得る。上記の例では、ヒストグラムを生成するときに、干渉されたデータサンプルには等しい重みが与えられる。代替として、コントローラ210は、干渉されたデータサンプルをカウントするときに、レーダーフレーム内のそれらの位置に応じて、異なるデータサンプルに異なる重みを与え得る。そのようにして、ヒストグラムを生成するときに、遅い時間軸に沿った各時間的位置について、干渉されたサンプルの数をカウントするときに、コントローラ210は、時間的位置について、干渉されたデータサンプルの重みを合計するであろう。実施形態の第1のグループに関して、上記で重みに関して言ったことはこの状況にも当てはまる。
【0061】
分布は、代替的に、受信されたレーダーフレームの間隔にわたるデータサンプルのエネルギーの分布であり得る。言い換えれば、コントローラ210は、データサンプルのエネルギーがレーダーフレームの遅い時間軸に沿ってどのように分布しているかを計算し得る。その目的で、コントローラ210は、遅い時間軸に沿った各時間的位置について(すなわち、各ビート信号について)、遅い時間軸に沿った時間的位置に位置するデータサンプルのエネルギーの和を計算し得る。したがって、コントローラ210は各ビート信号のエネルギーを計算し得る。上記で説明したように、データサンプルのエネルギーはデータサンプルの絶対値の2乗として計算され得る。特に、これは、干渉されたデータサンプルのエネルギーを計算することに限定されず、すべてのデータサンプルのエネルギーが計算に含まれる。この手法を使用すると、したがって、受信されたレーダーフレーム中の干渉されたサンプルを識別する必要がない。
【0062】
コントローラ210は、次いで、受信されたレーダーフレームの遅い時間軸に沿ったエネルギーの経験的分布を形成し得る。これは、レーダーユニット102-1のコントローラ210によって受信されたレーダーフレーム400-11および400-12と、遅い時間軸に沿ったデータサンプルのエネルギーの分布800とを示す、図8にさらに示されている。この場合、コントローラ210は、第1のレーダーフレーム400-11中の(第1のビート信号に対応する)遅い時間軸に沿った第1の時間的位置を有するデータサンプルのエネルギーの第1の和と、第2のレーダーフレーム400-12中の(第1のビート信号に対応する)遅い時間軸に沿った第1の時間的位置を有するデータサンプルのエネルギーの第2の和とを計算し得る。コントローラ210は、次いで、遅い時間軸に沿った第1の時間的位置についての分布800の値を第1の和と第2の和との合計または平均として計算し得る。コントローラ210は、分布800に達するために、このプロシージャを繰り返し、レーダーフレームの遅い時間軸に沿った各時間的位置についてデータサンプルのエネルギーを累積し得る。また、この手法を用いると、データサンプルは、データサンプルのエネルギーを合計するとき、レーダーフレーム内のデータサンプルの位置に応じて、異なる重みを与えられ得る。たとえば、データサンプルの絶対値の2乗の正の和を計算する代わりに、データサンプルの絶対値の2乗の加重和が計算され得る。重みについて前に言ったことはこの状況にも当てはまる。
【0063】
分布を計算するときにどの手法が使用されるかにかかわらず、コントローラ210は、他のレーダーユニットからの干渉を受けるデータサンプルの存在量が、受信されたフレームの時間間隔の後半中よりも時間間隔の前半中のほうが高いかどうかを決定するために、ステップS504において分布700、800を使用し得る。より詳細には、コントローラ210は、分布700、800の重心を計算し、分布700、800の重心が1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔の前半中に位置するのか、後半中に位置するのかを検査し得る。分布の重心は分布の予想された値と同じものであり、分布の重心の計算は、したがって、当技術分野で知られている。分布の重心が前半中に位置する場合、干渉されたデータサンプルの存在量は、後半中よりも前半中のほうが多いと決定される。反対に、重心が後半中に位置する場合、干渉されたデータサンプルの存在量は、前半中よりも後半中のほうが多いと決定される。図7および図8の例を見ると、分布700、800の重心701、801は、それぞれ、受信されたレーダーフレームの時間間隔t11、t12の前半408中に位置する。したがって、コントローラ210は、これらのケースの各々において、干渉されたサンプルの存在量は、後半410中よりも前半408中のほうが多いという結論に至るであろう。
【0064】
ステップS504における決定の成果に応じて、コントローラ210は、ステップS506またはステップS506bのいずれかを実行することに進む。より詳細には、コントローラ210が、ステップS504において、干渉されたサンプルの存在量は、受信されたレーダーフレームの前半中により多いことを決定した場合、コントローラ210はステップS506aに進み、他の場合、ステップS506bに進む。
【0065】
ステップS506aにおいて、コントローラ210は、レーダーユニット102-1によって生成されるべき、後続のレーダーフレームのスケジュールされた時間間隔を遅らせる。後続のレーダーフレームとは、一般に、レーダーユニット102-1によってまだ生成されていないレーダーフレームを意味する。特に、後続のレーダーフレームは、ステップS502において受信されたレーダーフレームの時間的に前にあり、後続のレーダーフレームは、受信されたフレームの後にレーダーユニット102-1によって生成されるべきすぐ次のフレームであり得る。図3の例を参照すると、レーダーユニット102-1のコントローラ210は、時点t1において、時間間隔t11およびt12に対応するレーダーフレームを受信している。レーダーユニット102-1は、さらに、時間間隔の開始時間が所定の時間期間Tによって分離される原則に従って、時間間隔t13中に次のレーダーフレームを生成するようにスケジュールされる。スケジュールされた時間間隔t13は、図3では破線で示されている。ステップS504において、干渉されたサンプルの存在量は、受信されたレーダーフレームの前半中のほうが多いことをコントローラが決定したので、コントローラ210は、ステップS506aにおいて、時間間隔t13がスケジュールされたよりも後の時点で始まるように、時間間隔t13を遅らせる。遅らせられた時間間隔はt13’と示され、図3では実線で示されている。図3から理解されるように、受信されたレーダーフレームt11およびt12中の干渉は、主に、レーダーユニット102-3のアクティブな時間間隔t31とt32との重複によって生じた。スケジュールされた時間間隔t13の遅れは、将来のフレームのためにこの重複を低減するために役立つ。
【0066】
代わりに、ステップS504において、干渉されたサンプルの存在量は、時間間隔の後半中により多いことをコントローラ210が決定した場合、コントローラ210は、ステップS506bにおいて、時間間隔t13がスケジュールされたよりも前の時点において始まるように、時間間隔t13を進めるであろう。
【0067】
コントローラ210が後続のレーダーフレームの時間間隔を遅らせるかまたは進める量は異なる方法で決定され得る。たとえば、量は、レーダーユニットのレーダーフレームの持続時間の8分の1など事前定義された値に対応するか、またはランダムに選択された量に対応し得る。別の例によれば、量は、上記で説明した実施形態の第1のグループにおいてコントローラ210によって計算された第1の量と第2の量との間の差に比例し得る。代替的に、量は第1と第2の量との間の比に比例し得る。さらに別の例によれば、量は、上記で説明した実施形態の第2のグループにおいてコントローラ210によって計算された、1つまたは複数のレーダーフレームの時間間隔内の分布の重心のロケーションに依存し得る。図7および図8を参照すると、量は、重心701、801と、受信されたレーダーフレーム400-11、400-12の時間間隔の中心点との間の距離702、802に依存し得る。距離702、802が小さければ小さいほど、調整の量は大きくなる。たとえば、量は距離に反比例し得る。これらの例のいずれにおいても、比例の定数は、フレームレートおよびフレーム持続時間など、レーダーユニットのプロパティに依存する本方法の調整パラメータである。そこでは、後続のレーダーフレームがどのくらい遅らせられ得るかまたは進められ得るかについての最大値が設定され得る。たとえば、最大値は、レーダーユニットのレーダーフレームの持続時間の4分の1、すなわち、レーダーフレームに対応する時間間隔の長さの4分の1に対応し得る。
【0068】
上記で、レーダーユニットのコントローラによって実行される本方法の1つの繰り返しについて説明した。しかしながら、本方法は、レーダーユニットが他のレーダーユニットからの干渉に鑑みてアクティブである時間間隔を適応的に調整するように、時間とともに繰り返され得ることを理解されたい。たとえば、本方法は、20または25レーダーフレームごとに1回など、所定の時間間隔で繰り返され得る。
【0069】
さらに、レーダーシステム100中のレーダーユニット102-1、102-2、102-3のいくつかは、互いに独立して説明した方法を実行し得ることを理解されたい。たとえば、本方法は、システム100中のすべてのレーダーユニット102-1、102-2、102-3によって、または、図1の例示的なシステム中のレーダーユニット102-1および102-2によってなど、システム中のレーダーユニットの1つを除くすべてによって実行され得る。後者の場合、レーダーユニットのうちの1つは、(本方法を実行せず、通常の時間間隔中にアクティブである)マスタユニットとして働き得、システム中の他のレーダーユニットは、(本方法を実行する)スレーブユニットとして働き得る。スレーブユニットは、そのような設定において、それらのアクティブな時間間隔をマスタユニットのアクティブな時間間隔に適応させる。
【0070】
図3の例に戻ると、今度は、すべてのレーダーユニット102-1、102-2、102-3が互いに独立して図5の方法を実行すると仮定されている。その例では、第1のレーダーユニット102-1のコントローラ210は、時間間隔t11およびt12に対応するレーダーフレームを受信し、レーダーユニット102-1の次のレーダーフレームのスケジュールされた後続の時間間隔t13をt13’に遅らせた。同様にして、レーダーユニット102-2のコントローラ210は、時間間隔t21およびt22に対応するレーダーフレームを受信する。図3に見られ得るように、それぞれ、時間間隔t21と時間間隔t11との間および時間間隔t22と時間間隔t12との間に、レーダーユニット102-2によって生成されたレーダーフレームの前半中の干渉されたデータサンプルとなる可能性があるわずかな重複がある。したがって、第2のレーダーユニット102-2のコントローラ210も、次のレーダーフレームのそれのスケジュールされた時間間隔t23を後の時間間隔t23’まで遅らせることを決定する可能性がある。他から独立して、第3のレーダーユニット102-3のコントローラ210は、時間間隔t31およびt32に対応するレーダーフレームを受信する。図3に見られ得るように、それぞれ、時間間隔t31と時間間隔t11との間および時間間隔t32と時間間隔t12との間に、第3のレーダーユニット102-3によって生成されたレーダーフレームの後半中の干渉されたデータサンプルとなる可能性がある重複がある。したがって、第3のレーダーユニット102-3のコントローラ210は、次のレーダーフレームのそれのスケジュールされた時間間隔t33を前の時間間隔t33’まで進めることを決定する可能性がある。図3から明らかなように、レーダーユニット102-1、102-2、102-3によるこれらの調整の結果として、後続のレーダーフレームの時間間隔t13’、t23’、t33’間の重複の総量が低減され、したがって、システム全体としての干渉低減につながる。上記の例は本方法の1つの繰り返しのみを示す。実際には、本方法は、レーダーユニット102-1、102-2、102-3のアクティブな時間間隔をさらに調整するために、時間とともにレーダーユニットによって繰り返され得る。本方法のいくつかの繰り返しの後、レーダーユニットの間隔が時間とともに最適に、すなわち、異なるレーダーユニットの間隔間の総重複の量が最小の状態で、分布されている状態に達する。さらに、レーダーユニットのクロック中にドリフトがあり得るので、時間間隔は、その最適分布から互いに関してドリフトし始め得る。しかしながら、本方法は時間とともに繰り返されるので、システム中のレーダーユニット102は、クロックドリフトによってもたらされた新しい干渉に迅速に適応し、その新しい干渉を補償し得る。
【0071】
上記で説明したように、コントローラ210は、レーダーユニット102の干渉低減方法を実装するように構成され得る。この目的で、コントローラ210は、上記で説明された様々な方法ステップを実装するように構成された回路を含み得る。
【0072】
ハードウェア実装では、回路は、専用であり、特に、方法ステップのうちの1つまたは複数を実装するように設計され得る。回路は、1つまたは複数の特定用途向け集積回路、あるいは1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイなど、1つまたは複数の集積回路の形態であり得る。例として、コントローラ210は、したがって、使用中に、干渉されたデータサンプルの存在量が、受信されたレーダーフレームの後半中よりも前半中のほうが多いかどうかを決定する回路を備え得る。
【0073】
ソフトウェア実装では、回路は、代わりに、不揮発性メモリなど、(非一時的)コンピュータ可読媒体上に記憶されたコンピュータコード命令に関連して、コントローラ210に本明細書で開示した任意の方法を実行させる、マイクロプロセッサなど、プロセッサの形態であり得る。不揮発性メモリの例は、読取り専用メモリ、フラッシュメモリ、強誘電体RAM、磁気コンピュータ記憶デバイス、光ディスクなどを含む。ソフトウェアの場合、上記で説明した方法ステップの各々は、したがって、プロセッサによって実行されたとき、コントローラ210にその方法ステップを実行させる、コンピュータ可読媒体上に記憶されたコンピュータコード命令の一部分に対応し得る。
【0074】
いくつかの方法ステップがハードウェアにおいて実装され、他の方法ステップがソフトウェアにおいて実装されることを意味する、ハードウェア実装とソフトウェア実装との組合せを有することも可能であることを理解されたい。
【0075】
当業者は、上記で説明した実施形態を多くの形で改変することができ、それでもなお、上記の実施形態に示されている本発明の利点を使用することができることが諒解されよう。たとえば、コントローラは、レーダーユニット中に含まれる必要がない。コントローラはレーダーユニットとは別個に与えられ得る。たとえば、コントローラはレーダーシステムの中央に与えられ得る。したがって、本発明は、図示された実施形態に限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるべきである。さらに、当業者が理解するように、図示された実施形態は組み合わせられ得る。
【符号の説明】
【0076】
100 レーダーシステム
102 レーダーユニット
102-1 レーダーユニット、第1のレーダーユニット
102-2 レーダーユニット、第2のレーダーユニット
102-3 レーダーユニット、第3のレーダーユニット
104 物体
202 シンセサイザ
204 送信アンテナ
206 受信アンテナ
208 ミキサ
210 コントローラ
212 レーダー処理ユニット
400 レーダーフレーム
400-11 第1のレーダーフレーム
400-12 第2のレーダーフレーム
402 データサンプル
404 第2の時間軸 遅い時間軸
406 第1の時間軸 速い時間軸
408 前半
408-11 前半
408-12 前半
410 後半
410-11 後半
410-12 後半
412 データサンプル
700 分布、ヒストグラム
701 重心
702 距離
800 分布
801 重心
802 距離
T 時間期間
t1 時点
t11 第1の時間間隔
t12 第2の時間間隔
t13 スケジュールされた時間間隔
t13’ 遅らせられた時間間隔
t21 時間間隔
t22 時間間隔
t23 スケジュールされた時間間隔
t23’ 後の時間間隔
t31 時間間隔
t32 時間間隔
t33 スケジュールされた時間間隔
t33’ 前の時間間隔
tij 時間間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8