(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】動脈瘤治療デバイスおよび治療方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
A61B17/12
(21)【出願番号】P 2021088555
(22)【出願日】2021-05-26
(62)【分割の表示】P 2017506765の分割
【原出願日】2015-08-05
【審査請求日】2021-06-24
(32)【優先日】2014-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514181989
【氏名又は名称】パーフロー メディカル リミテッド
【住所又は居所原語表記】4 HaTzoran Street, Natania, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シブルスキー ジラド
(72)【発明者】
【氏名】ラパポート アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ファリン ダニー
(72)【発明者】
【氏名】ボノー イタマル
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-516183(JP,A)
【文献】特表2008-502378(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0264132(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0267568(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0280587(US,A1)
【文献】国際公開第2014/087245(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0128901(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0264988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
17/12
A61F 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者内の脳動脈瘤を治療するための血管内デバイスであって、前記デバイスは、拡張部材を備え、前記拡張部材は、前記患者の体外から制御されるように構成され、前記拡張部材は、前記患者内の脳血管内に一時的に留置されるように構成され、前記拡張部材は、前記拡張部材の壁部を画定する複数のワイヤを備える編み込みメッシュ構造を備え、前記拡張部材は、近位端と遠位端とを備え、前記近位端および前記遠位端は、
前記近位端が結ばれまたは圧着され、前記遠位端が結ばれまたは圧着された構成を備え、
前記デバイスは、
外側チューブであって、前記拡張部材の前記近位端が前記外側チューブと物理的に連結する、外側チューブと、
遠位端で前記拡張部材の前記遠位端に、近位端でハンドルに、操作可能に連結されるプッシュプルケーブルと、
を備え、
前記拡張部材の弛緩状態において、前記壁部は、
前記ワイヤの間に画定される第1
の開口部が、非直線的な丸まった形態で前記動脈瘤内に位置付けられたコイルが前記動脈瘤から出るのを防止するのに十分小さい少なくとも第1の壁部と、
前記ワイヤの間に画定される第2
の開口部が、血流を通すことができるように十分大きい少なくとも第2の壁部であって、前記第1の壁部に対して軸方向に整列する、第2の壁部と、
を備え、
前記第1の壁部の前記第1
の開口部は、0.016mm
2から8mm
2の間の範囲の断面積を有することによって特徴付けられ、
前記血流は、前
記構成において前記近位端と前記遠位端とを通って前記血流が流
れ、
前記第1の壁部における開口部の断面積と第2の壁部における開口部の断面積との比は、1:1.5~1:3.8である
デバイス。
【請求項2】
前記複数のワイヤは、ある材料から作製される第1のタイプのワイヤと、前記第1のタイプのワイヤとは異なる材料から作製される他のタイプのワイヤと、を備え、
前記第1のタイプのワイヤと前記他のタイプのワイヤは、弾性および塑性の一方または両方において異なり、それによって、変形特性を前記拡張部材に提供する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記複数のワイヤは、8本以上100本以下のワイヤを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記複数のワイヤの各ワイヤは、前記各ワイヤの全長に沿ってそれぞれ12.5マイクロメートル以上125マイクロメートル以下の厚さを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記デバイスは、前記拡張部材を前記拡張部材の長軸に対して配向するように位置付けられる1つまたは複数の放射線不透過性のワイヤまたはワイヤセグメントを備え、前記放射線不透過性のワイヤは、前記第1の壁部の周縁部および中心部の一方または両方に位置付けられ、それによって前記第1の壁部と前記動脈瘤のネックとの整列を容易にする、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記拡張部材の前記第1
の開口部と前記第2
の開口部は、非半径方向血流に実質的に干渉しない、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記拡張部材は、管状形状を有し、前記第1
の開口部を備える前記第1の壁部は、前記管状形状の中心セグメントを画定し、前記第2
の開口部を備える前記第2の壁部は、前記管状形状の近位端セグメントおよび遠位端セグメントを画定する、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記プッシュプルケーブルは、前記拡張部材の内腔を通って延在し、前記ケーブルは、第1の要素に操作可能に連結され、前記第1の要素は、第2の要素に対して移動可能であり、少なくとも前記第2の要素は、前記拡張部材に連結され、前記ケーブルは、前記第1の要素を前記第2の要素に対して移動させることによって前記拡張部材の直径を変更するように、体外から軸方向に引くことおよび押すことができる、請求項1から
7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第2の要素は、前記外側チューブであり、前記外側チューブは、前記拡張部材の近位端に連結される、請求項
8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の要素は、前記プッシュプルケーブルの遠位端に連結された前記拡張部材の遠位端であり、前記拡張部材の前記遠位端は、前記ケーブルによって近位方向に引かれたときに、前記拡張部材を軸方向に圧縮してその直径を増加させるように、または前記ケーブルによって遠位方向に前進させたときに、前記拡張部材を伸長してその直径を減少させるように、前記外側チューブに対して軸方向に移動可能である、請求項
8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ワイヤのうちの少なくともいくつかは、平坦な断面形状を備える、請求項1から
10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記複数のワイヤは、Ni-Tiワイヤおよび白金ワイヤを備える、請求項1から
11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記他のタイプのワイヤは、200MPaの降伏強度を示すワイヤと、1200MPaの降伏強度を示すワイヤと、を備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項14】
前記近位端および前記遠位端は、先細りになっている、請求項1から
13のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、動脈瘤を治療するためのデバイスおよび方法に関し、より具体的には、限定的ではないが、血栓反応を起こすことができる十分なレベルで脳動脈瘤へのおよび/または脳動脈瘤からの流れを妨げるための調節可能な血管内デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
Rudin et al.に対する特許文献1は、「構造表面によって画定される細孔を有する可変多孔率の管状構造を含むステントを開示している。管状構造は、管状構造周辺の通路上に低多孔率領域を有し、低多孔率領域は、通路上に位置する他の領域よりも多孔率が低く、流体の通過を完全にまたは部分的に妨げる。低多孔率領域は、隣接する細孔間の構造表面よりも大きい。また、低多孔率領域が損傷血管の開口部と整列して接触し、それによって損傷血管の開口部内およびその近傍で血流を変化させるように、本発明の上記ステントを損傷血管内に留置することを含む、損傷血管の開口部内およびその近傍で血流を変化させる方法も開示している」。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第20030109917号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脳動脈瘤を治療するための血管内デバイスであって、デバイスは、外部から制御可能な拡張部材を備え、拡張部材は、拡張部材の壁を画定する複数のワイヤを備え、拡張部材の弛緩状態において、壁は、ワイヤ間に画定される開口部が、動脈瘤内に位置付けられたコイルが動脈瘤から出るのを防止するのに十分小さい少なくとも第1の壁部であって、動脈瘤のネックと少なくとも同じくらいの長さである軸方向長さを有する、第1の壁部と、ワイヤ間に画定される開口部が、血流を通すことができるように十分大きい少なくとも第2の壁部であって、第1の壁部に対して軸方向に整列する、第2の壁部と、を備える血管内デバイスが提供される。
【0005】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の壁部の開口部は、動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの半径方向血流を減少させるのに十分小さい。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の壁部の開口部は、半径方向血流を通すことができるように十分大きい。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張部材は、血管内の非半径方向血流に実質的に干渉しない。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張部材は、管状形状を有し、小さい開口部を備える第1の壁部は、管状形状の中心セグメントを画定し、大きい開口部を備える第2の壁部は、管状形状の近位端セグメントおよび遠位端セグメントを画定する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、中心セグメントの軸方向長さは、動脈瘤ネックの軸方向長さと少なくとも同じくらいの長さである。本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の壁部を形成するワイヤは、第2の壁部を形成するように互いに対になる。本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の壁部における開口部の断面積と第2の壁部における開口部の断面積との比は、1:1.5~1:3.8である。本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の壁部は、42本のワイヤを備え、第2の壁部は、21本の二重標準ワイヤを備える。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の壁部を形成するワイヤのうちのいくつかのみが延在して第2の壁部を形成するように、第1の壁部を形成するワイヤのうちのいくつかは、切断されるかまたは他のワイヤの周囲に巻き付けられる。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の壁部における開口部の断面積は、非直線的な丸まった形態の動脈瘤内(intra-aneurismal)コイルの最大断面積よりも小さい。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、プッシュプルケーブルは、拡張部材の内腔を通って延在し、ケーブルは、第1の要素に操作可能に連結され、第1の要素は、第2の要素に対して移動可能であり、少なくとも第2の要素は、拡張部材に連結され、ケーブルは、第1の要素を第2の要素に対して移動させることによって拡張部材の直径を変更するように、体外から軸方向に引くことおよび押すことができる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の要素は、外側チューブであり、外側チューブは、外側チューブの除去を提供する取り外し可能なインターフェースによって拡張部材の近位端に連結される。本発明のいくつかの実施形態によれば、ワイヤのうちの少なくともいくつかは、平坦な断面形状を有する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、デバイスは、固定チューブをさらに備え、固定チューブは、拡張部材を取り囲み、固定チューブは、拡張部材の内腔に対して軸方向に変位可能であり、固定チューブは、固定チューブの内壁に堅固に取り付けられる1つ以上の楔部を備え、楔部は、拡張部材の移動を制限するように外側チューブと拡張部材との間に位置する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の要素は、プッシュプルケーブルの遠位端に連結されたカップであり、カップは、ケーブルによって近位方向に引かれたときに、拡張部材を軸方向に圧縮してその直径を増加させるように、またはケーブルによって遠位方向に前進させたときに、拡張部材を伸長してその直径を減少させるように、外側チューブに対して軸方向に移動可能である。本発明のいくつかの実施形態によれば、デバイスは、1つ以上の放射線不透過性のワイヤまたはワイヤセグメントを備える。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、放射線不透過性のワイヤまたはワイヤセグメントは、拡張部材を部材の長軸に対して配向するように位置付けられ、放射線不透過性ワイヤは、第1の壁部の周縁部および中心部の一方または両方に位置付けられ、それによって第1の壁部と動脈瘤ネックとの整列を容易にする。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脳動脈瘤を治療するための血管内デバイスであって、デバイスは、拡張部材を備え、拡張部材は、外側ワイヤケージ内に含まれる内側ワイヤケージを備える、血管内デバイスが提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、内側ケージの開口部は、外側ケージの開口部と重複しないか、または部分的にのみ重複する。本発明のいくつかの実施形態によれば、外側ケージの開口部と内側ケージの開口部との重複領域は、変更可能である。本発明のいくつかの実施形態によれば、重複領域は、内側ケージを外側ケージに対してまたはその逆で軸方向に摺動させることによって変更可能である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、重複領域は、内側ケージを外側ケージに対してまたはその逆で回転させることによって変更可能である。本発明のいくつかの実施形態によれば、内側ケージは、外側ケージに適切に係合するように外側ケージよりも大きい弛緩時直径に拡張する。本発明のいくつかの実施形態によれば、内側ケージは、1つ以上の取付点によって外側ケージに連結され、取付点は、ケージを形成するワイヤの非接合セグメントに位置する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、取付点は、内側ケージの1つ以上のワイヤと外側ケージの1つ以上のワイヤとの溶接接続部を備える。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、外側ケージの拡張または収縮は、内側ケージをそれぞれ拡張または収縮させる。本発明のいくつかの実施形態によれば、内側ケージの寸法および外側ケージの寸法は、同時に制御される。本発明のいくつかの実施形態によれば、内側ケージの寸法および外側ケージの寸法は、別々に制御される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脳動脈瘤を治療するための血管内デバイスであって、デバイスは、拡張部材を備え、拡張部材は、脳血管内に適合するような形状およびサイズである管状本体を備え、拡張部材は、弾性変形可能な部材と織り交ぜられた塑性変形可能な部材を備える、血管内デバイスが提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、塑性変形可能な部材は、アニール処理されたワイヤである。本発明のいくつかの実施形態によれば、弾性変形可能な部材が構成される材料の降伏強度は、塑性変形可能な部材が構成される材料の降伏強度の少なくとも3倍である。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、塑性変形可能な部材の数は、拡張部材を選択された構成に維持するのに十分である。本発明のいくつかの実施形態によれば、プッシュプルケーブルは、拡張部材の内腔を通って延在し、拡張部材の遠位端に連結され、塑性変形可能な部材は、ケーブルに加えられる軸方向の力に応じて変形可能である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脳動脈瘤を治療する方法であって、動脈瘤の位置で脳血管内に拡張部材を位置付けることであって、拡張部材は、拡張部材の1つ以上の他の壁部よりも小さい開口部を有する少なくとも1つの高密度壁部を画定するように配置される複数のワイヤを備える、位置付けることと、血管壁に係合するように拡張部材を拡張することと、高密度壁部を動脈瘤から出る動脈瘤の内容物に干渉させることとを含む方法が提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、内容物は、動脈瘤内に含まれる血液を含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、内容物は、以前に動脈瘤内に導入された動脈瘤内(intra-aneurismal)コイルを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、血栓を形成させるのに十分な動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの半径方向流を減少させることを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、患者の体外から拡張部材の直径を調節することと、拡張部材を血管内に一時的にまたは永久的に留置するために、位置付けに使用された送達システムを後退させることとをさらに含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、調節することは、動脈瘤の位置における血液の凝固速度に基づいて行われる。本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、凝固を誘導するために1つ以上のコイルを動脈瘤内に送達することをさらに含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コイルは、拡張部材の内腔を通して動脈瘤内に導入される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コイルは、拡張部材と少なくとも部分的に軸方向に整列するマイクロカテーテルを介して動脈瘤内に導入され、方法は、コイル留置中にマイクロカテーテルの移動を防止するために、拡張部材と血管の壁との間にマイクロカテーテルを捕捉するように拡張部材の直径を拡張することをさらに含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、コイルが留置された後にマイクロカテーテルを除去することと、拡張部材の直径をさらに拡張することとをさらに含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、動脈瘤の位置は、嚢状動脈瘤のネックにある。本発明のいくつかの実施形態によれば、動脈瘤の位置は、紡錘状動脈瘤の実質的な長さに沿っている。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張することは、拡張部材の少なくとも壁部を動脈瘤のネック内に若干突出させることを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、後退させることは、圧着されたカップ要素から拡張部材の遠位端を解放することを含み、遠位端は、拡張部材のより近位な部分の直径と一致するように自己拡張する。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張部材は、第1のケージおよび第2のケージを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、位置付けることは、第1のケージおよび第2のケージを位置付けることを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張することは、第1のケージおよび前記第2のケージを連続的に拡張することを含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脳動脈瘤を治療する方法であって、動脈瘤の位置で脳血管内に第1の拡張部材を位置付けることと、血管壁に係合するように第1の拡張部材を拡張することとを含む方法が提供される。本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、第2の拡張部材を第1の拡張部材内に位置付けることと、第2の拡張部材を拡張することとを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脳動脈瘤を治療するためのキットであって、拡張部材を脳血管内に導入するための形状およびサイズである少なくとも1つの外側チューブを備える、送達システムと、種々の弛緩時直径の複数の拡張部材であって、拡張部材の各々は、少なくとも1つの壁部を画定するワイヤメッシュを備え、ワイヤ間の開口部は、動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの半径方向血流を減少させるのに十分小さい、複数の拡張部材とを備える、キットが提供される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脳動脈瘤を治療するための血管内デバイスであって、デバイスは、体外から制御可能な拡張部材を備え、拡張部材は、拡張部材の壁を画定する複数のワイヤを備え、拡張部材の弛緩状態において、壁は、ワイヤ間に画定される開口部が、動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの半径方向血流を減少させるのに十分小さい少なくとも第1の壁部であって、動脈瘤のネックと少なくとも同じくらいの長さである軸方向長さを有する、第1の壁部と、ワイヤ間に画定される開口部が、血流を通すことができるように十分大きい少なくとも第2の壁部であって、第1の壁部に対して軸方向に位置付けられる、第2の壁部と、を備える血管内デバイスが提供される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、血管内デバイスであって、拡張部材の壁を画定する複数のワイヤを備える拡張部材であって、拡張部材は、部材の弛緩状態において、少なくとも第1の軸方向セグメントおよび第2の軸方向セグメントを備え、第1の軸方向セグメントは、第2の軸方向セグメントの断面直径よりも大きい断面直径を有する、拡張部材と、拡張部材の内腔内で縦方向に延在するプッシュプルケーブルであって、プッシュプルケーブルは、拡張部材の遠位端に連結され、ケーブルは、第1の軸方向セグメントの直径および第2の軸方向セグメントの直径のうちの少なくとも一方を変更するために体外から操作されるように構成される、プッシュプルケーブルとを備える、血管内デバイスが提供される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脳動脈瘤を治療するための血管内デバイスであって、デバイスは、体外から制御可能な拡張部材を備え、拡張部材は、拡張部材の壁を画定する複数のワイヤを備え、拡張部材の弛緩状態において、壁は、拡張部材の1つ以上の他の壁部よりも小さい開口部を有する少なくとも1つの高密度壁部を画定するように配置される、血管内デバイスが提供される。
【0037】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および/または科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料が、本発明の実施形態の実施または試験において使用され得るが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は、例示であるに過ぎず、必ずしも限定的であることは意図されない。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態が、添付の図面を参照して、単に例として本明細書に記載される。ここで図面を特に詳細に参照することにより、示される詳細は例としてであって、本発明の実施形態の例示的な考察を目的とすることが強調される。これに関連して、図面と共に説明を読むことにより、本発明の実施形態がどのように実施され得るかが当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤を示す血管内に拡張部材を留置する方法のフローチャートである。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤を示す血管内に拡張部材を留置する方法のフローチャートである。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤を閉塞するために位置付けられた拡張部材によって提供される流動様式(
図2A)と、血管の壁に係合するための血管内における拡張部材の半径方向の拡張(
図2B(1~3))を示す図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤ネックを少なくとも部分的に閉塞するように構成される管状拡張部材を備える血管内デバイスの例示的な構成である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、拡張部材を備えるデバイスの遠位部を示す図である。
【
図5A】本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤を示す血管内における拡張部材の留置と、任意選択的な送達システムの後退を示す図である。
【
図5B】本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤を示す血管内における拡張部材の留置と、任意選択的な送達システムの後退を示す図である。
【
図5C】本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤を示す血管内における拡張部材の留置と、任意選択的な送達システムの後退を示す図である。
【
図5D】本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤を示す血管内における拡張部材の留置と、任意選択的な送達システムの後退を示す図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態による、血管の壁に接触するように部材が拡張された(これ以降「オーバーサイズ」と称される)後に、拡張部材の壁によって血管の壁に加えられる半径方向圧力を増加させるのに効果的な、例示的な軸方向の引っ張り距離のグラフである。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態による、種々の寸法の開口部を備える拡張部材の例示的構造を示す図である。
【
図8】本発明のいくつかの実施形態による、拡張部材の留置と平行して動脈瘤のコイリングを示す図である。
【
図9】
図9Aおよび
図9Bは、本発明のいくつかの実施形態による、拡張部材の内腔を通る動脈瘤のコイリングを示す図である。
【
図10】
図10Aおよび
図10Bは、本発明のいくつかの実施形態による、拡張部材のワイヤの2つの例示的な構造的配置である。
【
図11】本発明のいくつかの実施形態による、少なくとも一部、動脈瘤ネック部内に適合するように構成される拡張部材を示す図である。
【
図12】本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤の位置で流れを分流するような構造の拡張部材を備える血管内デバイスの例示的な構成である。
【
図13】本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤ネックを少なくとも部分的に閉塞するように構成されるバルーン型拡張部材を備える血管内デバイスの例示的な構成である。
【
図14】本発明のいくつかの実施形態による、部材の異なる部分で様々な直径に拡張するように構成される非管状拡張部材を示す図である。
【
図15】
図15Aおよび
図15Bは、本発明のいくつかの実施形態による、「二重ケージ」構造を備える拡張部材を示す図である。
【
図16】
図16Aおよび
図16Bは、本発明のいくつかの実施形態による、対になったワイヤを備える拡張部材の例示的なワイヤ構造である。
【
図18】本発明のいくつかの実施形態による、カバーを備える拡張部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、動脈瘤を治療するためのデバイスおよび方法に関し、より具体的には、限定的ではないが、血栓反応を起こすことができる十分なレベルで脳動脈瘤へのおよび/または脳動脈瘤からの流れを妨げるための調節可能な血管内デバイスに関する。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態は、血栓を形成させるように、および/または任意選択的に動脈瘤内に導入された1つ以上のコイルが動脈瘤から血管内に突出するのを防止するように、脳動脈瘤への十分な流れおよび/または脳動脈瘤からの十分な流れを妨げるために、嚢状動脈瘤または紡錘状動脈瘤等の動脈瘤の位置で血管の壁に適切に係合するように構成される拡張部材を備えるデバイスに関する。
【0042】
いくつかの実施形態において、拡張部材は、複数のワイヤから形成される管状またはバルーンのような(例えば、楕円形)構造を備える。任意選択的に、ワイヤは、編み込みメッシュに織り込まれる。
【0043】
いくつかの実施形態において、デバイスは、拡張部材の1つ以上の直径を選択的に変更するための機構を備える。いくつかの実施形態において、機構は、拡張部材に操作可能に連結され、拡張部材が延在する外側チューブに対して移動可能なプッシュプルケーブルを備える。いくつかの実施形態において、ケーブルは、体外から使用者によって操作される近位方向に延在する。
【0044】
いくつかの実施形態において、例えば、動脈瘤を示す血管の壁に対する拡張部材の壁の少なくとも一部の緊密な適合を達成するために、拡張部材の直径は複数回調節される。付加的にまたは代替的に、例えば、拡張および収縮を繰り返すことで達成される上下揺れ運動等によって部材を軸方向に前進または後退させるように、血管内における部材の位置を変更するために拡張部材が拡張および/または収縮される。
【0045】
いくつかの実施形態において、半径方向の拡張の程度は、血液の凝固速度に応じて決定される。任意選択的に、拡張の程度は、最終的に動脈瘤を封入するために効果的な流れの停滞の兆候に応じて選択される。そのような場合、医師は、十分な流れの停滞の初期兆候が得られるまで(例えば、画像診断を使用して)、拡張部材を拡張することができる。
【0046】
いくつかの実施形態の一態様は、拡張部材の幾何学的形状に関し、弛緩した非操作状態にある部材は、ワイヤ間に画定される開口部が、動脈瘤へのおよび/もしくは動脈瘤からの半径方向血流を減少させるのに十分小さく、かつ/または動脈瘤内に導入されたコイルが動脈瘤から出るのを防止するのに十分に小さい少なくとも1つの区域と、ワイヤ間の開口部が、それらを通る流れを許容するように(血管を通る軸方向流を許容する、および/もしくは非動脈瘤位置で半径方向流を許容する等)十分大きい少なくとも1つの区域とを備える。いくつかの実施形態において、拡張部材は、動脈瘤ネックと少なくとも一部整列することが意図される、より密度の高い中心セグメントと、血管を通る非半径方向流に実質的に干渉しない、より密度の低い近位および遠位セグメントと、を備える。任意選択的に、より密度の低い1つ以上のセグメントは、高密度セグメントに対して軸方向に位置付けられる。
【0047】
いくつかの実施形態において、高密度セグメントにおける拡張部材の開口部は、コイルが動脈瘤から出るのを防止するために、動脈瘤内で丸まったコイルの最大断面積よりも小さい断面積を有する。付加的にまたは代替的に、高密度セグメントにおける拡張部材の開口部の断面積は、コイルワイヤ自体(すなわち、平面的な、丸まっていない形態)の断面積よりも小さい。いくつかの実施形態において、拡張部材の1つ以上の他の部分と比較して小さい開口部を備える拡張部材の比較的高密度な壁部は、動脈瘤のネックと少なくとも同じくらいの長さである軸方向長さを有する。一例において、拡張部材は、拡張部材の全長の少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、または中間的、より高い、もしくはより低いパーセンテージにわたって延在する高密度中心セグメントを備える。任意選択的に、拡張部材は、例えば、部材の近位端および/または遠位端に、合計で、例えば、拡張部材の全長の20%、30%、50%、または中間的、より高い、もしくはより低いパーセンテージにわたって延在する、より密度の低い1つ以上の部分を備える。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤の治癒を促進するために動脈瘤を十分に閉塞する一方で、血管を通る非半径方向流にほとんど干渉しない構造である拡張部材の種々の構成が、本明細書に記載される。
【0049】
いくつかの実施形態の一態様は、部材の異なる部分でワイヤの有効数が変動する拡張部材に関し、例えば、部材の中心部と比較して密度の低い部分を形成するように、部材の近位部および/または遠位部では数が減少する。いくつかの実施形態において、減少は、ワイヤを対にして一緒にすることによって、例えば、2本のワイヤを対にして二重標準ワイヤにすることによって得られる。いくつかの実施形態において、減少は、選択されたより少数のワイヤのみが部材の近位部および/または遠位部から延在するように、部材のより高密度な部分、例えば、部材の中心部内に含まれる複数のワイヤを終端させることによって(例えば、切断することによって)得られる。いくつかの実施形態において、ワイヤの数を効果的に減少させることによって、互いに交差するワイヤ間に画定される開口部のサイズを、部材のより低密度な部分における開口部に対する部材のより高密度な部分における開口部の比が、例えば、1:1.9、1:1.7、1:1.5、または中間的、より大きい、もしくはより小さい比になるまで増加させる。別の例において、ワイヤが段階的なワイヤ対形成によって対にされる場合(例えば、2本のワイヤを対にして1本の二重標準ワイヤにし、次いで、2本の二重標準ワイヤを対にして1本の四重標準ワイヤにする)、部材のより高密度な部分における開口部と部材のより低密度な部分における開口部との比は、例えば、1:3、1:3.5、1:3.8の範囲であってもよいか、または中間的、より大きい、もしくはより小さい比であってもよい。いくつかの実施形態において、部材の対になったワイヤおよび/または減少したワイヤの数が、(例えば、本明細書にさらに記載されるように、例えば、カップ要素内への)端部の圧着に起因して起こり得る部材の遠位端および/または近位端における開口部のサイズにおける効果的な減少を補完する。
【0050】
いくつかの実施形態の一態様は、一方が他方の中に嵌合した2つ以上のワイヤケージを備える拡張部材に関する。いくつかの実施形態において、内側ワイヤケージは、外側ワイヤケージ内で軸方向に延在する。任意選択的に、内側ケージは、外側ケージの中心部内に延在し、外側ケージの近位部および/または遠位部には延在しないため、比較的密度の高い中心部を形成する。任意選択的に、ケージは、ケージの開口部が部分的にのみ重複するかまたは互いに重複しない様式で互いの上に積層され、密度を増加させる。いくつかの実施形態において、内側ケージが、外側ケージの直径よりも大きな弛緩時直径に拡張して外側ケージによって拘束される、オーバーサイズ嵌合によってケージが互いに連結される。いくつかの実施形態において、ケージは、複数の取付点を介して互いに連結される。任意選択的に、取付点は、非接合ワイヤセグメントに位置し、例えば、2本以上のワイヤが互いに交差する2つの隣接する接合点間のワイヤセグメントに沿って位置する。
【0051】
いくつかの実施形態において、例えば、外側ケージを拡張するおよび/または収縮させることによって、内側ケージを同時に制御することができる。付加的にまたは代替的に、内側ケージと外側ケージとを別々に制御することができる。任意選択的に、ケージの開口部は、拡張部材の開口部の合計密度を変更するように、(例えば、開口部間の重複領域を増加または減少させることによって)互いに対して再配置される。
【0052】
いくつかの実施形態において、内側ケージと外側ケージとは別々の構成要素であり、任意選択的に別々に(例えば、連続的に)送達される。いくつかの実施形態において、第1のケージの送達後、第2のケージは、同じまたは第2のマイクロカテーテルによって送達される。
【0053】
いくつかの実施形態の一態様は、弾性部材と塑性部材との組み合わせを含む拡張部材に関する。いくつかの実施形態において、アニール処理されたワイヤの形態である塑性部材が、弾性または超弾性ワイヤと織り交ぜられる。いくつかの実施形態において、拡張部材は、選択された構成に変形可能であり、塑性部材の補助によってその構成に維持することができる。いくつかの実施形態において、拡張部材は、それが位置する血管部分に解剖学的に適合するように(例えば、部材を拡張する、収縮させる、延長する、および/または短縮することによって)成形される。例えば、拡張部材の少なくとも一部は、動脈瘤ネックの基部内に若干突出してもよく、ネックの封入に寄与する。任意選択的に、拡張部材は、特定の閾値を超える力、例えば、部材を拡張するまたは収縮させるためにケーブルに加えられる引く力または押す力が加えられるまで、選択された構成に留まるように構成される。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、取り外し可能な送達システムを備えるデバイスに関する。いくつかの実施形態において、拡張部材は、1つ以上のチューブおよび形状変更機構(例えば、本明細書に記載されるようなプッシュプルケーブルを備える、例えば、直径および/または長さおよび/または軸方向位置を変更する機構)を使用して、血管内に導入され、所望の構成になるよう調節される。
【0055】
いくつかの実施形態において、例えば、血管内に拡張部材を永久的または半永久的に留置することが必要な場合、送達システムは、拡張部材から取り外されて体外に後退させられる一方で、拡張部材は血管内に留まる。任意選択的に、取り外しは、プッシュプルケーブルの移動、例えば、拡張部材が導入された外側チューブに対するケーブルの移動によって行われる。
【0056】
いくつかの実施形態において、留置された拡張部材は、拡張部材の壁によって血管の壁に加えられる半径方向力のために、血管内の所定の位置に保持された状態に留まる。任意選択的に、部材の弾性特性は、例えば、外側チューブからの部材の近位端の解放時および/または圧着されたカップからの部材の遠位端の解放時に、例えば、血管壁と既に係合している拡張部材の中心部に適合するように自然に拡張する部材の遠位端および/または近位端によって、送達システムを取り外すために用いられる。
【0057】
いくつかの実施形態において、動脈瘤がコイリングされ、拡張部材が血管内に位置付けられる。いくつかの実施形態において、血栓形成を誘導するために1つ以上のコイルが動脈瘤内に導入される。いくつかの実施形態において、例えば、コイルの送達(例えば、部材に隣接して挿入されたマイクロカテーテルを通して)中に拡張部材を非拡張構成または部分的拡張構成に維持し、次いで、コイルがネックから出るのを防止するために動脈瘤ネックを閉塞するように部材を拡張することにより、コイルが拡張部材に隣接する動脈瘤内に送達される。いくつかの実施形態において、拡張部材は、例えば、拡張部材と血管壁との間にマイクロカテーテルを「閉じ込める」ように、コイル送達マイクロカテーテルの遠位端を動脈瘤内に押し込み、かつ/またはマイクロカテーテルを所定の位置に維持するのに役立つ直径に選択的に拡張される。任意選択的に、ひとたびコイル送達マイクロカテーテルが除去されると、任意選択的に拡張部材が血管壁と完全に係合するまで、拡張部材がさらに拡張される。付加的にまたは代替的に、コイルは、拡張部材の内腔を通して送達される。任意選択的に、1つ以上のコイルが、部材のメッシュ開口部に通される。一例において、コイル送達マイクロカテーテルが、部材の1つ以上のメッシュ開口部から動脈瘤ネック内に通され、コイルが、マイクロカテーテルの遠位開口部から動脈瘤内に前進させられる。付加的にまたは代替的に、拡張部材は、血管壁に係合するように拡張され、コイル送達マイクロカテーテルが導入されると、拡張部材の外壁と血管壁との間に通される。任意選択的に、コイル送達マイクロカテーテルは、拡張部材と血管壁との間で圧迫される。任意選択的に、拡張部材は、コイル送達の間に動かないようにマイクロカテーテルを所定の位置に維持するのに役立つ。
【0058】
拡張部材は、ワイヤメッシュの近位端および/もしくは遠位端が圧着されるかまたは別様にひと塊になったバルーンのような(楕円形)の形状、円筒形状、ひょうたん形状、ならびに/または任意の他の形状等の種々の形状を有し得ることに留意されたい。いくつかの実施形態において、拡張部材は、部材の縦軸および/または横軸に対して対称である。代替的に、部材は非対称であり、例えば、第1の部材の壁部が位置付けられる血管壁の側で動脈瘤ネックに係合するように、また第2の部材の壁部が位置する血管(動脈瘤を示さない)の反対側の流れをほとんど中断しないように、例えば、部材の第2の壁部よりも大きい半径に位置する第1の壁部(初期の弛緩構成および/または拡張もしくは収縮構成にある)を有する。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態は、動脈瘤を示す脳血管に関して記載されているが、本明細書に記載されるデバイスおよび/または方法は、脳血管以外の血管系、例えば、大動脈血管系および/または腹部血管系および/または末梢血管系等の治療に適する場合があることに留意されたい。
【0060】
本明細書において言及される「近位」という用語は、例えば、デバイスが血管内に導入される方向である、使用者側の端部(例えば、医師インターフェース)に対応する方向を含み得る。本明細書において言及される「遠位」という用語は、デバイスの使用者側の端部から最も離れた、さらに遠い血管位置に対応する方向を含み得る。
【0061】
本明細書において言及される「弛緩状態」という用語は、例えば、製造された構成、非折り畳みおよび/もしくは非拡張構成、自己拡張構成、搭載前構成(例えば、部材を送達システムの1つ以上の構成要素に連結する前)、体外構成、ならびに/または部材の他の非操作形態を含む、拡張部材の非操作状態を含み得る。
【0062】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その用途において、以下の説明に記載されるならびに/または図面および/もしくは実施例に示される構成要素の構造および配置ならびに/または方法の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であるか、または種々の方式において実施もしくは実行することが可能である。
【0063】
次に、図面を参照すると、
図1A~
図1Bは、本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤を示す血管内に拡張部材を留置する詳細な方法(1A)および一般的な方法(1B)のフローチャートである。
【0064】
いくつかの実施形態において、患者は、例えば、血管造影、画像診断、および/またはCSF分析法を使用して、脳動脈瘤であると診断される。いくつかの実施形態において、拡張部材を備えるデバイスは、例えば、医師によって、動脈瘤を示す血管(例えば、中大脳動脈)内に導入される(100)。
【0065】
任意選択的に、デバイスは、大腿動脈を通して導入され、脈管系を通って、脳循環内に、そして動脈瘤を示す血管内に前進させられる。代替的に、デバイスは、鼻内アプローチで、および/または拡張部材を動脈瘤の位置まで血管内に送達するのに適した任意の他の方法で導入される。
【0066】
いくつかの実施形態において、デバイスは、例えば、マイクロカテーテルおよび任意選択的にマイクロカテーテル内で軸方向に移動可能な外側チューブを含む送達システム(送達中に拡張部材が圧着される)と、例えば、本明細書にさらに記載されるように、拡張部材の直径および/長さを変更するための少なくとも1つの機構とを備える。
【0067】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、拡張部材は、血管内で少なくとも部分的に拡張される(101)。任意選択的に、部材は、使用者によって選択的に拡張される。付加的にまたは代替的に、部材は、例えば、外側チューブから解放されたときに、自己拡張するように構成される。
【0068】
任意選択的に、動脈瘤のコイリングが行われる(102)。いくつかの実施形態において、第2のコイル送達マイクロカテーテルが血管内に挿入される。コイル送達マイクロカテーテルは、デバイスの導入前、デバイスの導入と同時(例えば、拡張部材が送達されるデバイスのマイクロカテーテルと平行してコイル送達マイクロカテーテルを通すことによる)、および/または拡張部材の留置後(例えば、留置された拡張部材の1つ以上の開口部にコイル送達マイクロカテーテルを通すことによる)に挿入されてもよい。血液は、動脈瘤内のコイルの周囲で凝固することができ、潜在的に動脈瘤の封入を促進する。
【0069】
拡張部材は、動脈瘤の位置で血管内に位置付けられると、いくつかの実施形態において、少なくとも部分的に拡張される。任意選択的に、拡張部材は、拡張部材の少なくとも一部が動脈瘤の位置で血管の壁に係合する構成に拡張される(103)。任意選択的に、拡張部材は、拡張部材の壁が、血管壁と円周方向の接触を形成する程度まで拡張される。
【0070】
付加的にまたは代替的に、拡張部材は、一時的に収縮される、および/または送達された圧着状態に留まり、例えば、拡張部材と血管壁との間に位置付けられるように、例えば、拡張部材と平行してマイクロカテーテルを軸方向に通すことによって、例えば、拡張部材と共に血管内に位置付けられるコイル送達マイクロカテーテルを提供する。
【0071】
いくつかの実施形態において、拡張された部材は、動脈瘤のネック(基部と称されてもよい)に近位でおよび/または遠位で血管壁にもたれかかり、そのため、拡張部材の壁の少なくとも一部が動脈瘤ネックを閉塞し、動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの流れを減少させるおよび/または防止する。任意選択的に、動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの流れの速度は、拡張部材によって、血管壁組織の血栓反応および/または足場形成を起こすのに十分な速度まで減速される。付加的にまたは代替的に、拡張された部材は、血管壁にもたれかかり、任意選択的に動脈瘤内に導入された1つ以上のコイルが動脈瘤から血管内に突出するのを防止するように動脈瘤ネックを閉塞する。
【0072】
いくつかの実施形態において、部材は、血液が流れることができる1つ以上の開口部を備える。いくつかの実施形態において、拡張部材は、血管を通る軸方向流等の非半径方向流を許容する構造である。一例において、部材は、間に開口部を画定する複数のメッシュワイヤで形成される編み込み構造を備える。非半径方向の血流を許容することにより、いくつかの実施形態において、血管の少なくとも部分的な開存性が維持されるおよび/または得られるおよび/または回復される。
【0073】
いくつかの実施形態において、拡張部材の直径および/または位置、例えば、血管内における部材の軸方向位置が調節される(104)。
【0074】
いくつかの実施形態において、拡張部材の直径が変更される、すなわち、任意選択的に体外から操作可能な制御機構を使用して増加または減少される。いくつかの実施形態において、制御機構は、例えば、拡張部材および/または送達システムもしくはそれらの構成要素に操作可能に連結されたケーブルを押すことおよび/または引くことによって、軸方向の力を加えることを含む。一例において、ケーブルは、拡張部材の遠位端および/または部材の遠位端に取り付けられたカップ状要素等の要素に連結され、例えば、送達システムに対して、例えば、拡張部材が導入される外側チューブの遠位端に対して、拡張部材の遠位端を移動させるために、使用者が体外からケーブルを軸方向に引くかまたは前進させることができる。いくつかの実施形態において、ケーブルの軸方向の操作は、外側チューブに対する、例えば、外側チューブの遠位端に対する、部材の遠位端の移動を実現することによって、部材の直径を拡張する(例えば、ケーブルが引き寄せられたとき)、かつ/または部材の直径を縮小させる(例えば、ケーブルを遠位に前進させたとき)。
【0075】
いくつかの実施形態において、拡張部材は、折り畳まれた、直径の小さい構成において血管内に送達される。任意選択的に、部材は、マイクロカテーテル等の送達チューブ内を前進させてそこから出したときに、初期直径に自己拡張する。初期直径は、例えば、動脈瘤の位置における血管径の50%、動脈瘤の位置における血管径の70%、動脈瘤の位置における血管径の90%、および/または血管径の中間的、より大きい、もしくはより小さいパーセンテージであってもよい。いくつかの実施形態において、部材は、拡張部材の折り畳まれた直径の5%、20%、45%、70%、85%、または中間的、より大きい、もしくはより小さいパーセンテージの直径に自己拡張する。任意選択的に、部材が自己拡張する初期直径は、特定の直径の血管に一致するように事前に選択される。代替的に、部材は、使用者によって変更されるまで折り畳み構成に留まる。付加的にまたは代替的に、初期拡張は、使用者によって実現され(例えば、ケーブルを引き寄せることに応答して)、使用者によって実現される拡張に続いて、例えば、部材が事前に選択された直径に拡張されたときに、自己拡張が起きる。いくつかの実施形態は、使用者によって実現される変更(例えば、拡張および/または収縮)と自己発生型の変更(例えば、拡張および/または収縮)との種々の組み合わせを含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、部材は、部材の壁が血管壁に接触するが、血管壁に半径方向圧力等の大きな圧力を及ぼさない直径に拡張される。任意選択的に、拡張部材の壁によって血管壁に及ぼされる半径方向圧力の量は、血管壁による拡張部材の保持を達成し、部材が流れによって動脈瘤の位置から運び去られるのを防止するのに十分である。部材の拡張の程度を正確に制御することにより、オーバーサイズ(すなわち、血管壁に不必要な半径方向力を加える可能性がある大き過ぎる直径に部材を拡張すること)および/またはアンダーサイズ(すなわち、動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの流れを妨げるのに効果的ではない可能性がある小さ過ぎる直径に部材を拡張するかまたは狭めること)が、削減または防止され得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、直径は、複数回調節される。任意選択的に、直径は、部材の位置(例えば、血管に対する部材の軸方向および/または横方向の位置)の視覚的指標が、例えば、蛍光透視法等の画像診断によって得られた後に調節される。
【0078】
いくつかの実施形態において、直径は、血管内に部材を最初に留置した後に調節される。付加的にまたは代替的に、直径は、より後期の段階で、例えば、凝固が始まったときに調節される。付加的にまたは代替的に、直径は、例えば、本明細書にさらに記載されるように、コイリング手技が行われる場合に調節され、コイルは、拡張部材に隣接しておよび/または拡張部材を通って動脈瘤内に送達される。付加的にまたは代替的に、部材が送達システムから取り外され、血管内により長い期間配置される場合、または血管内に永久的に留置される場合、部材の直径を調節するために、制御機構を用いて部材を再係合させることができる。付加的にまたは代替的に、直径は、現在の凝固段階に応じて調節される。一例において、医師は、任意選択的に拡張部材を動脈瘤ネックに留置した直後に、動脈瘤内における流れの停滞および/または血栓を観察し、それに応じて部材の直径および/または長さを変更する。
【0079】
いくつかの実施形態において、血管内における拡張部材の位置、例えば、軸方向位置等が、使用者によって調節される。いくつかの実施形態において、部材は、血管内でマイクロカテーテル等の送達チューブを前進または後退させることによって位置付けられる。付加的にまたは代替的に、位置は、送達チューブに対して、例えば、マイクロカテーテルに対して、部材を前進または後退させることによって調節される。付加的にまたは代替的に、位置は、上下に揺れる、波のような動きで部材を移動させるために、任意選択的に繰り返して、部材を拡張するおよび/または収縮させることによって調節される。
【0080】
いくつかの実施形態において、拡張部材は、部材の中心部が動脈瘤ネックを横切って延在するように、血管内に軸方向に位置付けられる。代替的に、拡張部材の遠位部または近位部が、動脈瘤ネックを横切って延在する。
【0081】
いくつかの実施形態において、拡張部材は、動脈瘤内に送達されたコイルが動脈瘤から出るのを阻止する。これは、動脈瘤のネック直径に対するドーム直径の比が比較的小さい場合、例えば、2未満、1.5未満、1.8未満、または中間的、より大きい、もしくはより小さい比であり、ネックが実質的に「ボトルネック」効果をもたらすことなく、コイルが比較的広いネック部を通過して血管内に出るリスクが高い場合に、潜在的に有用であり得る。任意選択的に、拡張部材の開口部は、コイル(または外部から動脈瘤に延在し得るコイルの端部)が拡張部材のワイヤと絡まるのを防止するように十分小さい。
【0082】
いくつかの実施形態において、拡張部材の壁部は、動脈瘤ネック内に若干突出し、任意選択的に、拡張部材に沿ってより大きな直径の軸方向セグメントを形成する。
【0083】
いくつかの実施形態において、拡張部材は、送達システムから取り外される。任意選択的に、部材は、選択された部材の位置が、動脈瘤からコイルが出るのを阻止するのにならびに/または動脈瘤へのおよび/もしくは動脈瘤からの半径方向血流を制限するのに適していることを示す、動脈瘤における初期の流れの停滞および/または血栓の指標が得られた後に、送達システムから取り外される。任意選択的に、送達システムが体から後退させられ、部材が血管内に留置された状態に留まる。いくつかの実施形態において、送達システムの1つ以上の構成要素が血管内に再挿入され、部材と再係合して部材の直径および/もしくは位置の変更を提供する、ならびに/または部材を体から離して後退させる。代替的に、場合によっては、送達システムが、拡張部材に連結された状態に留まる。
【0084】
図1Bの例示的な一般的方法において、例えば、本明細書にさらに記載されるように、拡張部材は、動脈瘤を示す脳血管内に挿入される(120)。いくつかの実施形態において、拡張部材は、少なくとも部分的に拡張される、および/または自己拡張することが可能である(122)。
【0085】
いくつかの実施形態において、例えば、拡張部材の中心軸方向セグメントを画定する、拡張部材の高密度壁部は、動脈瘤を実質的に遮断するために、動脈瘤ネックの軸方向長さの少なくとも80%、90%、95%、100%、または中間的、それより大きい、もしくはそれより小さいパーセンテージと整列するように位置付けられる(124)。いくつかの実施形態において、遮断することは、動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの半径方向血流等の血流を減少させることを含む。いくつかの実施形態において、遮断することは、動脈瘤内に導入された1つ以上のコイルが動脈瘤から出るのを防止することを含む。いくつかの実施形態において、拡張部材の直径が調節される(126)。任意選択的に、例えば、血管内に部材を繋止するために、拡張部材が血管の壁に係合するように、および/または拡張部材の壁が血管の壁にさらなる半径方向力を及ぼすように、直径が拡大される。代替的に、直径は収縮される。
【0086】
図2は、本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤を閉塞するために位置付けられた拡張部材によって提供される流動様式(2A)、および血管の壁に係合するための血管内における拡張部材の半径方向の拡張(2B)を示す。
【0087】
図2Aにおいて、拡張部材の壁部200は、動脈瘤202(この例では、実質的に球形状を有する嚢状動脈瘤である)を閉塞するように示されている。(代替的に、場合によっては、例えば、さらに示されるように、治療される動脈瘤は、非球状であり、任意選択的に紡錘形状を有する紡錘状動脈瘤である)。
【0088】
いくつかの実施形態において、壁部200は、ワイヤ構造を備え、任意選択的に、ワイヤ間の開口部208を画定する編み込みメッシュ構造を備える。
【0089】
いくつかの実施形態において、壁部200は、動脈瘤202のネック204を横切って延在し、半径方向流206、例えば、動脈瘤に入るおよび/または動脈瘤から出る血液の流れを実質的に遮断する。任意選択的に、流れが通過することができないまたは少なくともかなりの量の流れが妨げられる密度の高い壁部を画定するように、開口部208が十分小さいためおよび/または互いに対して配置されているため、流れ206が妨げられる。いくつかの実施形態において、最終的には動脈瘤を封入するように血栓反応が起こるのに十分な速度まで流速が減速される限り、特定の流量を動脈瘤内に流入させるおよび/または動脈瘤から流出させることができる。例えば、流速は、血液の凝固速度よりも低い速度まで減速される。いくつかの実施形態において、特定の患者の凝固動態が監視され、その血流動態に応じて拡張部材が調節および/または再調節される。例えば、動脈瘤の十分な封入が観察された場合に、部材またはその1つ以上の部分の直径が減少されてもよい。付加的にまたは代替的に、流れは、動脈瘤の破裂を予防するように十分減速される。いくつかの実施形態において、例えば、部材の位置および/または部材の拡張の程度が、動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの流れの体積を十分に減少させるのに適しているかどうかを判定するために、画像診断システム(x線、CT、血管CT、MRI等)において見えるように造影剤を注入する等の、種々の技法を用いて血流動態が評価される。
【0090】
いくつかの実施形態において、壁部200に画定される開口部208のサイズは、動脈瘤202内に導入された1つ以上のコイル210が動脈瘤から出るのを防止するのに十分小さい。一例において、開口部208の断面積は、0.4mm2~2.5mm2の範囲であるか、または中間的、より大きい、もしくはより小さい範囲である。これは、動脈瘤の直径212(例えば、動脈瘤の最も幅の広い部分)とネック204の直径214との比が比較的小さい場合、例えば、2より小さい、1.8より小さい、1.5より小さい、または中間的、より大きい、もしくはより小さい比であり、コイル210が動脈瘤から出るリスクが、コイルが血管に進入するのを防ぐのに効果的であるネック部がより狭い(すなわち、より小さい直径を有する)場合よりも高い場合に、利点を提供し得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、開口部208は、非平面的な形態に丸まったコイル210の最大断面積よりも小さい断面積を有する。任意選択的に、開口部208の断面積は、コイルが真っすぐな直線的構成にあるときはコイル210を通過させることができるように十分大きいが、コイルが動脈瘤内でひと塊になって非直線的な形態になったときには、コイル210が通過するのを防止するのに十分小さい。任意選択的に、開口部208は、コイル送達マイクロカテーテルを通過させることができるように十分大きく、マイクロカテーテルから解放され、動脈瘤内で丸まったコイルが逆戻りして通過するのを防止するのに十分小さい。
【0092】
いくつかの実施形態において、コイル210は、ボールのような構成に折り畳まれる。任意選択的に、ボールのような構成のコイルの直径は、開口部208の最大寸法よりも大きい(例えば、長方形、円形、正方形、菱形、楕円体、三角形、および/または他の断面形状であり得る開口部の形状に依存して、例えば、開口部208の長さ、幅、直径、および/または他の寸法。任意選択的に、開口部208の形状は、拡張部材の拡張または収縮に応じて変化する)。ボールのように丸まったコイルの直径は、例えば、1mm~35mmの範囲であってもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、丸まったコイルが占める体積は、コイルが開口部208を通過するのを防止するのに十分大きく、例えば、0.5mm3~70mm3の範囲である。丸まったコイルの体積を決定し得るパラメータは、例えば、1~60cmの範囲であるコイルワイヤの長さ、および/またはコイルワイヤの厚さを含み得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、拡張部材は、血管を通る非半径方向流、例えば軸方向流216を妨げない。任意選択的に、流れ216は、部材の近位端および遠位端を通過する。
【0095】
いくつかの実施形態において、拡張部材は、部材の遠位端および/または近位端に開口部を有する管状構成を備える。付加的にまたは代替的に、近位端および/または遠位端は、実質的に閉鎖した構成になるよう結ばれるおよび/または別様に圧着され、例えば、両方の端部が結ばれると楕円形のバルーンのような構成を形成する。いくつかの実施形態において、部材の一方または両方の端部の開口部は、たとえ部材がその端部に向かって結ばれるかまたは圧着されても、軸方向流216等の流れが依然として通ることができるように十分大きい。部材を通る軸方向流等の非半径方向流を提供することの潜在的利点は、凝固形成および血管の閉塞のリスクを低減することを含み得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、例えば、部材の留置および/または拡張中に、軸方向流および/または半径方向流は、部材によって妨げられない。任意選択的に、部材の拡張を制御することにより、手技の特定の時間または段階にのみ流れを妨げるように部材を拡張することができる。例えば、医師は、拡張部材を血管内に導入し、所望の位置で部材を軸方向に位置付け、例えば、動脈瘤ネックと整列させ、それらの寸法および/または位置を示すために、血管内にならびに動脈瘤へおよび/または動脈瘤から自由に流動することができる造影液を注入し、次いでようやく、動脈瘤を閉塞するのに適した直径まで、任意選択的に徐々に部材を拡張することができる。これは、血管内に留置されると直ちに完全に拡張した位置にはじける自己拡張ステント等のデバイスに勝る利点を提供することができる。
【0097】
図2Bは、動脈瘤202を示す血管220の断面で見た場合の、拡張部材218の3つの例示的な拡張状態を示す。
図2B1には、部材218の例示的な初期の任意選択的に折り畳まれた構成が示される。任意選択的に、この段階での部材218の直径222は、例えば、血管径224の20%、30%、50%、60%、または中間的、より高い、もしくはより低いパーセンテージの範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、
図2B1に示される構成は、例えば、送達システムを使用して、拡張部材が血管内に送達される構成である。代替的に、
図2B1の構成は、拡張部材が、例えば、送達カテーテルから解放されたときに、自己拡張する構成である。
図2B2には、部材218の直径222が、例えば、血管径224の60%、70%、80%、または中間的、より高い、もしくはより低いパーセンテージまで延在する、部材の例示的な中間的拡張が示される。
図2B3には、部材218の壁が血管壁に接触するように拡張された、例示的な完全に留置された部材の構成が示される。任意選択的に、部材218の壁は、血管壁に円周方向に接触する。代替的に、部材218の少なくとも一部が、動脈瘤202に隣接して、例えば、動脈瘤202の近位におよび/または遠位におよび/または横方向に(すなわち、血管の断面でみた場合)位置する壁領域内で血管壁に接触する。
【0098】
拡張部材の中間的な、より大きい、およびより小さい拡張構成が可能であり、いくつかの実施形態において、拡張部材は、2、3、5、9、10、15、20個等の複数の直径、または中間的な、より多くの、もしくはより少ない数の直径に拡張するように構成されることに留意されたい。
【0099】
いくつかの実施形態において、部材の拡張および/または収縮は、連続的である。付加的にまたは代替的に、拡張および/または収縮は、段階的に行われる。任意選択的に、使用者は、連続的な範囲の直径から特定の直径を選択し、部材をその直径に設定する。
【0100】
いくつかの実施形態において、デバイスは、部材を設定された直径に維持するための係止要素を備える。一例において、係止要素は、拡張部材の近位端に構成され、部材の直径および/または長さにおける不要な変化を回避し、少なくとも一時的に固定された直径に部材を維持するために、プッシュプルケーブルの移動(例えば、外側チューブに対する移動)を制限するように設計される。付加的にまたは代替的に、例えば、ラチェット機構、ラッチ、クラッチ、および/またはプッシュプルケーブルの移動を制御する(例えば、制限する)のに適した他の要素を備える1つ以上の係止要素が、体外に位置付けられたデバイスのハンドル内に構成される。
【0101】
いくつかの実施形態において、拡張部材は、部材の異なる部分で様々な直径を備える。任意選択的に、部材は、その弛緩状態にあるとき、不均一な直径を備える。付加的にまたは代替的に、部材の軸方向セグメント等の部材の部分は、異なる直径に拡張することができる。一例において、動脈瘤ネックと整列する部材の縦方向セグメントは、部材の他の部分よりも大きい直径を備えてもよく、かつ/またはそのような直径に拡張されてもよく、部材の壁の少なくとも一部が動脈瘤ネック内に若干適合できるようにする。
【0102】
図3は、本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤302へのおよび/または動脈瘤302から出る流れを少なくとも部分的に妨げるように構成される管状拡張部材300を備える血管内デバイスの例示的な構成である。
【0103】
本明細書に示される図では、拡張部材300は、動脈瘤ネック316を架橋することによって、動脈瘤302へのおよび/または動脈瘤302からの流れを妨げるのに適した位置で血管304内に留置される。部材300の壁の少なくとも一部は、動脈瘤ネック316と整列する。
【0104】
いくつかの実施形態において、例えば、ここに示されるように、部材300は、例えば、部材300が送達される外側チューブ308と、外側チューブを取り囲むマイクロカテーテル310とを含む送達システム306から取り外すことができる。ここに示される例示的な段階において、送達システム306は、近位方向に後退させられる一方で、部材300は、血管壁によって所定の場所に保持され、血管内に留置された状態に留まる。
【0105】
いくつかの実施形態において、プッシュプルケーブル312は、部材300内で縦方向に延在する。ここに示される例示的な操作段階において、ケーブル312は、もはや部材の遠位端314には連結されておらず、部材から離して、かつ任意選択的に体外に、後退させることができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、外側チューブ308は、マイクロカテーテル310に対して軸方向に変位可能である。任意選択的に、血管内に位置付ける間に、部材300を留置するために、外側チューブ308をマイクロカテーテル310に対して遠位に前進させることができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、例えば、留置中に、例えば、送達システムの取り外し中に、部材300は、楕円形のバルーンのような構成から管状構成に遷移される。そのような遷移は、例えば、送達システムの後退中に、例えば、部材300の遠位端に一緒に圧着するケーブル312および/またはカップ等の要素が、部材を係脱させたときに起こる。送達システムの後退は、永久的留置または半永久的留置(例えば、限定された期間の留置)に関与する場合に行われてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態において、部材300は、複数のワイヤ318、例えば、16~100本のワイヤ、例えば、16本のワイヤ、24本のワイヤ、48本のワイヤ、80本のワイヤ、または中間的な、より多くの、もしくはより少ない数のワイヤを含む編み込みメッシュ構造を備える。いくつかの実施形態において、任意選択的に、ワイヤの断面が円形である場合はワイヤの直径である、各ワイヤの厚さは、25~125マイクロメートル、例えば、30マイクロメートル、50マイクロメートル、85マイクロメートル、または中間的な、より大きい、もしくはより小さい厚さの範囲である。いくつかの実施形態において、ワイヤは、長方形の断面形状、長丸の断面形状、平坦な断面形状、および/または他の断面形状を有する。
【0109】
付加的にまたは代替的に、部材300は、異なる構造、例えば、らせん状ばね構造、例えば、ビーズ鎖として配置された複数のケージのような区画を備える構造、および/または他の構造を備える。
【0110】
図4は、本発明のいくつかの実施形態による拡張部材を備えるデバイス400の遠位部を示す。
【0111】
図中の例示的な構成は、外側チューブ404から少なくとも一部遠位に前進させた後の拡張部材402を示す。いくつかの実施形態において、外側チューブ404は、マイクロカテーテル(この図には示されていない)内に適合するようなサイズおよび/または形状である。
【0112】
いくつかの実施形態において、固定チューブ406は、部材402内で縦方向に延在し、任意選択的に、外側チューブ404内にさらに延在する。いくつかの実施形態において、固定チューブ406は、例えば、外側チューブ404の直径よりも小さい直径を有することにより、外側チューブ404内で軸方向に移動可能(例えば、前進可能および/または後退可能)である。
【0113】
いくつかの実施形態において、プッシュプルケーブル408は、固定チューブ406の内腔426内で縦方向に延在する。いくつかの実施形態において、ケーブル408は、固定チューブおよび外側チューブを越えて近位方向に延在し、また任意選択的に、マイクロカテーテルを通って、例えば、操作ハンドル(この図には示されていない)を使用して体外から使用者が操作できる距離まで延在する。
【0114】
いくつかの実施形態において、ケーブル408の遠位端412は、カップ410に取り付けられる。いくつかの実施形態において、カップ410は、その中に部材402の遠位部を受容するのに十分長くかつ/または十分広く、それに伴って、部材をカップに固定するためにカップ410内に受容される部材402の遠位部にわたって固定チューブ406の遠位端が位置付けられる。任意選択的に、固定チューブ406の遠位部は、部材402の遠位部をカップの壁に対して押し付け、カップに係止嵌合を提供する。
【0115】
いくつかの実施形態において、カップ410の直径は、例えば、血管を閉塞するのを防止し、少なくとも部分的な開存性を提供するように、血管径よりも少なくとも20%、50%、70%、または中間的、より大きい、もしくはより小さいパーセンテージである。カップ410の例示的な寸法は、0.4mm~0.7mm、0.2mm~0.5mm、0.4mm~1mmの直径、または中間的、より大きい、もしくはより小さい範囲を含む。いくつかの実施形態において、カップは、非外傷性であるように設計され、例えば、カップの遠位端は、組織(例えば、血管壁)への損傷を低減するために、ゴムまたはシリコン等の柔らかい材料でできていてもよい。任意選択的に、カップは、例えば、カップの内壁に、高摩擦性材料および/またはコーティングを備え、それが部材402の遠位部を所定の位置に保持するのに役立ち得る。いくつかの実施形態において、カップ410は穿孔されており、例えば、流れを通すことができるように十分大きい1つ以上の穴418を備える。
【0116】
付加的にまたは代替的に、ケーブル408の遠位端は、除去可能な接続で部材402の遠位端に直接連結される。
【0117】
任意選択的に、送達システムが部材402に連結された非取り外し構成において、部材402の遠位部は、カップ410内に受容され、例えば、固定チューブ406の遠位端によってカップ内に圧着される。任意選択的に、例えば、カップ内の部材の圧着部分が解放されて半径方向外側に拡張するようにカップ410を遠位に押すことにより、部材402をカップ410から切り離すことができる。いくつかの実施形態において、解放された部分は、任意選択的に血管の壁と接触するように、部材402の拡張された本体部分414の直径に適合するように外側に拡張する。
【0118】
いくつかの実施形態において、一組の楔部416が、固定チューブ406の遠位端でチューブの外壁に堅固に取り付けられる。任意選択的に、楔部416は、例えば、送達中および/または血管内に部材を位置付ける間に、部材402をカップに一時的に固定するために、部材402の遠位端部分をカップ410の内壁に対して押し付ける。
【0119】
いくつかの実施形態において、第2の一組の楔部420が、固定チューブ406の近位端でチューブの外壁に堅固に取り付けられる。任意選択的に、楔部420は、部材402を外側チューブ404の遠位端に一時的に固定するために、部材402の近位部を外側チューブ404の内壁に対して押し付ける。任意選択的に、一組の楔部420と416との間の軸方向距離は、拡張部材402の初期の任意選択的に折り畳まれた構成の長さに適合する。
【0120】
いくつかの実施形態において、部材402の遠位端および近位端の両方が、カップ410および外側チューブ404の遠位端にそれぞれ連結される場合、外側チューブ404に対する部材402の遠位端の移動は、ケーブル408を軸方向に引くおよび/または押すことによって達成することができる。任意選択的に、ケーブル408を引くことでカップ410を外側チューブ404に接近させ、それによって部材402の長さ422を短縮し、その直径を拡張する;それぞれ、ケーブル408を前進させることで部材402を遠位に延伸させ、部材402の直径を減少させる。
【0121】
いくつかの実施形態において、蛍光透視法等の画像診断下で構成要素を可視化するために、1つ以上の放射線不透過性マーカーが、拡張部材および/または固定チューブおよび/または外側チューブおよび/またはマイクロカテーテルに組み込まれる。一例において、1つ以上の放射線不透過性ワイヤ428が、拡張部材のメッシュに組み込まれる。任意選択的に、ワイヤはタンタルでできている。代替的に、ワイヤは放射線不透過性材料でコーティングされる。付加的にまたは代替的に、細長い線、リング、ドットの形状、および/または任意の他の構成のマーカーが、デバイスに組み込まれる。
【0122】
いくつかの実施形態において、マーカー428は、拡張部材のより高密度の壁部またはセグメントを動脈瘤ネックと整列させるのを容易にするように位置付けられる。いくつかの実施形態において、マーカーは、高密度セグメントの周縁部に構成される。一例において、高密度セグメントが、あまり高密度ではない2つのセグメントの間に構成される場合、マーカーは、セグメント間の境界線に整列してもよい。別の例において、マーカーは、高密度部分の1つ以上の位置に、例えば、高密度部分の中心点に構成される。いくつかの実施形態において、1つ以上のマーカーが、部材の近位端および/または遠位端を示唆するように位置付けられる。
【0123】
デバイスの構成要素が作製される例示的な材料は、脳血管系(および/または他の血管系)内に通すのに適した剛性特性を有する、金属、プラスチック、またはそれらの組み合わせを含む外側チューブ404;金属を含むプッシュプルケーブル408;プラスチック、金属、またはそれらの組み合わせを含む固定チューブ406;弾力性材料、任意選択的に実質的に弾性であるかもしくは超弾性である合金、例えば、ニッケル-チタン合金もしくはステンレススチール、または異なる金属の混合物を含む拡張部材402のワイヤ(例えば、15Ni-Tiワイヤおよび白金)を含み得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、例えば、ケーブル408を軸方向に引くおよび/もしくは押すこと、固定チューブ406を後退させること、外側チューブ404を後退させること、ならびに/または他の動作を含む、デバイスの遠位部の操作は、体外で構成され、かつデバイスの遠位部に操作可能に連結されたハンドル(この図には示されていない)を使用して行われる。いくつかの実施形態において、ハンドルは、プッシュプルケーブル408の相対的な前進/後退を示唆するための目盛りを備える。
【0125】
図5A~
図Dは、本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤を示す血管内における拡張部材の留置、および任意選択的な送達システムの後退を示す。
【0126】
図5Aには、デバイス500の遠位部518が、動脈瘤504を示す血管502内に示される。
【0127】
いくつかの実施形態において、デバイス500は、体外で拡張部材506を送達システムに搭載することによって事前に組み立てられる。任意選択的に、搭載は、使用者、例えば医師によって行われる。いくつかの実施形態において、医師は、例えば、治療部位の解剖学的形態、患者の状態、および/または他のパラメータに応じて、種々のサイズおよび/または形状および/または機械的特性の拡張部材を含むキットから拡張部材を選択する。付加的にまたは代替的に、拡張部材の搭載は製造中に行われ、医師はすぐに使用できる状態のデバイスを操作する。任意選択的に、操作することは、例えば、留置中に、プッシュプルケーブルを制御すること、および/または、血管内に永久的にまたは一時的に留置するために送達システムから拡張部材を取り外すことを含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、事前の組み立て工程は、次のうちの1つ以上を含む:部材506の遠位端532をカップ508内に圧着すること;部材506の近位端534を外側チューブ510内に位置付ける一方で、固定チューブ512を外側チューブ510の近位端に近接する位置に通すこと;楔部514が部材506の遠位端532をカップ508に係止し、楔部516が部材506の近位端534を外側チューブ510に係止するように、固定チューブ512をカップ508に向かって前進させること。
【0129】
いくつかの実施形態において、アセンブリが血管内に送達され、拡張部材506が、動脈瘤504のネックに位置付けられ、任意選択的に、動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの流れを妨げるように拡張される。任意選択的に、マイクロカテーテル(この図には示されていない)が後退させられる。
【0130】
いくつかの実施形態において、プッシュプルケーブル524の近位部522は、部材506を拡張または収縮させるために、任意選択的に固定チューブ512と共に、外側チューブ510に対して引かれるおよび/または押される。
【0131】
いくつかの実施形態において、プルプッシュケーブル524は、例えば、ケーブル524の縦軸に実質的に横方向に延在する架橋要素526によって、例えば、ケーブルの近位部522で、固定チューブ512に連結される。
【0132】
図5Bでは、送達システムから部材506を取り外す例示的な方法において、外側チューブ510および固定チューブ512が所定の位置に維持される一方で、ケーブル524を遠位に前進させて、部材506の圧着端部をカップから解放するようにカップ508を押す。任意選択的に、外側チューブ510および固定チューブ512は、両方のチューブを保持するように構成される1つ以上の手動グリップ、ハンドル、および/またはトルカーを使用して安定に保持される。
【0133】
拡張部材506の本体530は、この時点で、血管壁の間に挟まれるため、カップ508を前進させると、楔部514とカップ508の壁との間から最終的に解放されるまで、部材506の遠位端532は全く引き寄せられないか、またはわずかに引き寄せられるのみである。いくつかの実施形態において、部材506の解放された端部は、部材506の本体530に適合するように拡張し、血管壁に係合する。
【0134】
いくつかの実施形態において、部材506は、手技を通じて送達システム(外側チューブ510、固定チューブ512、および/またはケーブル524のうちの1つ以上を備える)に連結された状態に留まることに留意されたい。血管内に一時的または半永久的に留置するために部材506を取り外すことは、非常に広いネックを示すかまたはネックを全く示さない場合がある紡錘状動脈瘤を治療する際に有利である可能性がある。紡錘状動脈瘤を治療する場合、動脈瘤内へのコイルの送達は、紡錘状動脈瘤のネックが広いことまたは存在しないことに起因して、嚢状動脈瘤の場合よりも効果が低い可能性がある。そのような場合、例えば、本明細書に記載されるような、動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの半径方向血流を減少させるかまたは妨げるのに適した幾何学的形状を有する分流用の拡張部材を永久的に位置付けることが有利である可能性がある。
【0135】
図5Cにおいて、外側チューブ510が所定の位置に保持される一方で、カップ508と共に引かれるケーブル524を近位に後退させ、固定チューブ512を係合することで、3つ全ての構成要素が近位に後退させられる。任意選択的に、この時点で、固定チューブ512の外部に装着された近位の一組の楔部516が、固定チューブと共に近位に引かれ、部材506の近位端534と外側チューブ510との固定された連結を解放する。部材506の近位端534は、外側チューブ510に緩く収容された状態に留まる。
【0136】
図5Dにおいて、外側チューブ510、固定チューブ512、ケーブル524、および/またはカップ508のうちの1つ以上を備える送達システムが、さらに近位方向に引かれる。部材506の本体530および遠位端532が血管壁によって保持されているため、近位端534は、外側チューブ510から解放され、任意選択的に、部材506の残りの部分と適合するように拡張して血管壁に係合する。
【0137】
図6は、本発明のいくつかの実施形態による、血管の壁に接触するように部材が拡張された(これ以降「オーバーサイズ」と称される)後に、拡張部材の壁によって血管の壁に加えられる半径方向圧力を増加させるのに効果的な、例示的な軸方向の引っ張り距離のグラフである。任意選択的に、拡張部材の壁によって血管の壁に加えられる半径方向力は、拡張部材を血管に繋止するのに十分強く、例えば、血管内での部材の不要な軸方向移動(例えば、強い血流の結果として起こり得る)を防止する。
【0138】
ここに示される例示的なグラフにおいて、横軸は、拡張部材の近位端が静止した状態に留まっている間に、拡張部材の遠位端がプッシュプルケーブルによって近位に引かれる距離(mm単位)を示す。この軸方向の引っ張りの結果として、拡張部材の長さが短縮される一方で、拡張部材の直径が増加され、部材の壁を、部材が位置付けられる血管の壁の近くに接近させるかまたは接触させる。縦軸は、拡張部材の壁によって血管の壁に加えられる半径方向圧力(Pa単位)を示す。半径方向圧力の量は、部材の遠位端が近位に引かれる(部材の近位端が所定の位置に固定され、遠位端がそちらに向かって引かれると仮定した場合)引っ張り距離と実質的に直線的な関係で増加することが観察され得る。代替的に、いくつかの実施形態において、拡張部材の短縮と半径方向圧力との関係は非直線的であり、例えば、所定の機能に応じて定義されてもよい。
【0139】
図7は、本発明のいくつかの実施形態による種々のサイズの開口部を備える拡張部材の例示的構造を示す。
【0140】
いくつかの実施形態において、拡張部材700のワイヤ配置は、種々のサイズの複数の開口部702を画定する。例示的な構造において、部材700の一部、例えば、中心区域704は、より小さいサイズの開口部を備え、各々の開口部がより大きいサイズである近位区域706および/または遠位区域708と比較してより高密度の区域を画定する。様々な密度の部分を備える拡張部材の潜在的な利点は、例えば、より大きな開口部(例えば、部材の近位区域および/または遠位区域)を通る流量の増加、およびより小さな開口部(例えば、部材の中心区域)を通る流量の減少を可能にすることによって、選択された血液の流動様式を達成することを含み得る。任意選択的に、中心区域704は、動脈瘤ネックを閉塞するように位置付けられ、より小さな開口部を利用して動脈瘤からのおよび/または動脈瘤への半径方向流を緩徐にするかまたは完全に妨げるのに対し、動脈瘤に対して近位または遠位である軸方向流および/または半径方向流は、区域706および708を通って流れることができ、それによって血管内の自然の流れとの干渉を潜在的に低減する。付加的にまたは代替的に、中心区域のより小さな開口部は、コイルが動脈瘤から突出するおよび/または出るのを防止するために、コイルの通過を阻止するような形状および/またはサイズである。
【0141】
部材700の軸方向セグメントが種々の密度で形成されることに対して付加的にまたは代替的に、部材700の(すなわち、部材の壁の)円周部分は、様々な密度で形成されてもよい。例えば、部材700は、動脈瘤ネックと軸方向に整列するように回転配向することができる、他の部分よりも高い密度を有する外側壁部(例えば、壁の一画)を備えてもよい。任意選択的に、部材の高密度壁部および/または他の部分および/または送達システムの構成要素は、使用者が高密度壁部を動脈瘤ネックに対して整列させることができるように、部材の現在の配向を示唆するための放射線不透過性マーカーを備える。
【0142】
いくつかの実施形態において、拡張部材のより密度の高い部分は、より密度の低い部分と比較してより多くの数のワイヤを含む。異なるサイズおよび/または異なる密度の部分の開口部を備える拡張部材の例示的な構造は、本明細書に、例えば、
図16A~
図16Bおよび
図17A~
図17Dにさらに記載される。
【0143】
図8は、本発明のいくつかの実施形態による拡張部材の留置と平行して動脈瘤のコイリングを示す。
【0144】
いくつかの実施形態において、動脈瘤を循環から隔離して動脈瘤を閉鎖する血液の凝固を誘導するために、1つ以上のコイル800が動脈瘤802に挿入される。いくつかの実施形態において、コイル800は、動脈瘤内に充填され、拡張部材804によって提供される障壁に加えて血流に対する障壁としての役割を果たす。
【0145】
いくつかの実施形態において、コイル800は、マイクロカテーテル806等の送達カテーテルを通して動脈瘤内に導入される。任意選択的に、コイル800は、カテーテルの管状内腔によって押しつぶされた平坦な直線的構成で送達され、動脈瘤802内で解放されると丸まってより大きな体積を占める。任意選択的に、コイリングは、当該技術分野で既知のコイリングデバイスおよび/または方法を用いて行われる。
【0146】
いくつかの実施形態において、拡張部材804は、コイル800の挿入の前、後、および/またはそれと平行して血管内に導入される。任意選択的に、コイルが送達されるマイクロカテーテル806は、部材804に隣接して前進させられ、コイルを留置するために動脈瘤802の隆起内に一部挿入される。
【0147】
例示的な実施形態において、コイル送達マイクロカテーテル806が、動脈瘤内に導入される。次いで、拡張部材804を備えるマイクロカテーテル808が、血管内に導入される。拡張部材804が留置され、動脈瘤802のネックと軸方向に整列される。任意選択的に、部材804は、例えば、部材804の側壁がマイクロカテーテル806に係合するまで、拡張される。任意選択的に、部材804が拡張され、マイクロカテーテル806を部材と血管壁との間に閉じ込め、その移動を防止するのに十分な半径方向力をマイクロカテーテル806に加える。この時点で、いくつかの実施形態において、1つ以上のコイルがマイクロカテーテル806を通して動脈瘤内に導入される。任意選択的に、コイルが留置された後、マイクロカテーテル806が血管から除去され、部材804が血管壁に係合するようにさらに拡張されてもよい。
【0148】
いくつかの実施形態において、マイクロカテーテル806は、動脈瘤内に前進させられ、部材804は、折り畳まれるか、または部分的に拡張された状態(例えば、血管壁に係合しない状態)で構成される。任意選択的に、マイクロカテーテル806の遠位部は、コイルが拡張部材のワイヤと絡まるのを防止するために、動脈瘤802内に十分深く前進させられる。コイルが拡張部材と絡まる場合、コイルがほぐれるように、任意選択的に繰り返し、部材を拡張および収縮してもよい。ひとたびコイル800が動脈瘤内に留置されると、部材804を血管壁に係合するように拡張させることができ、コイルが動脈瘤ネックを通って血管内の血流内に出るのを防止する。
【0149】
いくつかの実施形態において、コイル806は、拡張部材が送達されるマイクロカテーテル808を通って送達される。任意選択的に、例えば、部材の外側チューブと平行して延在する内側チューブ(この図には示されていない)が、コイルを通過させるために使用される。この方法は、段階的な留置を含む場合があり、例えば、最初にコイルが動脈瘤に導入され、次いで、動脈瘤を閉塞するように拡張部材が位置付けられるおよび/または拡張される。
【0150】
図9A~
図9Bは、本発明のいくつかの実施形態による拡張部材の内腔を通る動脈瘤のコイリングを示す。いくつかの実施形態において、コイルは、拡張部材900の体積を通して導入される。任意選択的に、例えば、
図9Aに示されるように、コイル送達マイクロカテーテル902は、血管904内に導入され、外側チューブ906と平行して、拡張部材の壁によって画定される内腔内に通される。コイル送達マイクロカテーテル904は、マイクロカテーテルの少なくとも遠位部908が、拡張部材のメッシュの開口部912のうちの1つを通って押され、動脈瘤910内に、例えば、ネック914内に位置するまで、前進させられる。
【0151】
いくつかの実施形態において、例えば、
図9Bに示されるように、1つ以上のコイル916が、マイクロカテーテル902から動脈瘤910内に通される。任意選択的に、コイルは、平坦な直線的構成でマイクロカテーテル内に配置され、動脈瘤内に留置されると、例えば、ボールのような構成に丸まって、より大きな体積を占める。
【0152】
いくつかの実施形態において、コイルの留置後、マイクロカテーテル902は、近位に、また任意選択的に体外に、後退させられる。
【0153】
いくつかの実施形態において、拡張部材の1つ以上の開口部912のサイズは、マイクロカテーテル902の少なくとも遠位部908を通すことができるように十分大きいが、留置されたコイル916が動脈瘤から血管904内に突出および/または出るのを防止するのに十分小さい。任意選択的に、たとえ、コイルの直径が、マイクロカテーテルを通してコイルを送達できるように、マイクロカテーテル902の遠位部908の直径よりも小さい場合でも、コイルは、ひとたび留置されると、丸まってより大きな体積を占めることができ、したがって、開口部912を通過して戻ることができなくなる。
【0154】
図10A~
図10Bは、本発明のいくつかの実施形態による拡張部材の種々のワイヤ構造である。
【0155】
いくつかの実施形態において、編み込みワイヤ構造は、14~72本のワイヤ、例えば、18、24、32、64本、または中間的、より多くの、もしくはより少ない数のワイヤを備える。
【0156】
図10Aは、例示的な14本ワイヤ構造を示す。
図10Bは、例示的な48本ワイヤ構造を示す。いくつかの実施形態において、ワイヤは、ワン・オーバー・ワン(one over one)構造、ワン・オーバー・ツー(one over two)構造、ツー・オーバー・ツー(two over two)構造、および/または他の配置に織り込まれる。「ワン・オーバー・ワン」構造は、単一ワイヤが第2の単一ワイヤ上に交差する配置を指してもよく、「ワン・オーバー・ツー」構造は、単一ワイヤが2つの別々のワイヤ上に交差する配置を指してもよい等である。
【0157】
いくつかの実施形態において、拡張部材の1つ以上のパラメータ、例えば、部材の直径(例えば、最大直径および/または最小直径)、ワイヤの数、ワイヤ直径、ワイヤ配置(例えば、交差するワイヤ間に形成される角度)、および/または他のパラメータ等が、血管の屈曲部もしくは別様に湾曲した部分、および/または血管の間の接合部における拡張部材の位置を提供するために選択される。一例において、直径の小さいワイヤは、より厚みのあるワイヤと比較して可撓性が高く、部材が曲線部における血管の解剖学的形状に適合するのに必要な可撓性を提供することができる。
【0158】
図11は、本発明のいくつかの実施形態による、少なくとも一部、動脈瘤ネック部内に適合するように構成される拡張部材を示す。
【0159】
いくつかの実施形態において、血管内に適合するために必要な形状特性を提供するように、またいくつかの実施形態において、例えば、ネックとのより緊密な整列を達成して流れを制限するために、動脈瘤ネック内に若干突出するように、拡張部材1100の構造は、塑性変形および/または弾性変形に適している。いくつかの実施形態において、拡張部材1100は、成形可能な要素、例えば、アニール処理されたまたは半アニール処理されたワイヤ1102等と、弾性または超弾性要素、例えば、ワイヤ1104との組み合わせを備える。任意選択的に、ワイヤ1102およびワイヤ1104は、ニチノール等の類似する材料から形成され、熱処理等の異なる方法を用いて処理される。代替的に、ワイヤ1102は、ワイヤ1104とは異なる材料から形成される。
【0160】
いくつかの実施形態において、アニール処理されたワイヤは、弾性ワイヤと織り交ぜられる。任意選択的に、数多くのアニール処理されたワイヤが、特定の閾値未満の力(例えば、引く力または押す力)が加えられたときに、変形に対する拡張部材の十分な抵抗を提供するように、また、例えば、部材の拡張または収縮を可能にするために、特定の閾値を超える力(例えば、引く力または押す力)には屈するように、選択される。
【0161】
いくつかの実施形態において、弾性変形可能な部材の降伏強度は、塑性変形可能な部材の降伏強度よりも少なくとも3倍、5倍、7倍、または中間的、より大きい、もしくはより小さい数だけ高い。一例において、拡張部材は、1200MPaの降伏強度を示すニチノールワイヤと織り交ぜられた、約200MPaの降伏強度を示すアニール処理された金属ワイヤで形成される。
【0162】
一例において、アニール処理されたワイヤ等の塑性変形可能な要素とニチノールワイヤ等の弾性変形可能な要素との比は、例えば、5%~40%の塑性変形可能な要素および60~95%の弾性変形可能な要素の範囲であるか、または中間的、より大きい、もしくはより小さい範囲である。別の例において、拡張部材を形成する全てのワイヤは、アニール処理または半アニール処理される。
【0163】
いくつかの実施形態において、アニール処理されたワイヤ1102は、例えば、拡張部材の拡張中および/または部材の収縮中に、加えられた応力に応じて塑性変形され、選択された構成、例えば、選択された直径に部材を維持するように構成される。いくつかの実施形態において、拡張部材を選択された形状に維持することにより、アニール処理されたワイヤは、経時的に特定の構成が維持されることを確実にするために部材を外部から(例えば、プルケーブルに絶えず張力を加えることによって)制御する必要性を削減する。
【0164】
アニール処理されたワイヤと弾性ワイヤとの組み合わせを備える拡張部材の潜在的な利点は、患者の血管の解剖学的形態に適合する能力を含み得る。任意選択的に、成形可能な拡張部材は、動脈瘤ネック内の短い距離1112に適合する。任意選択的に、拡張部材の緊密な適合は、血管壁と拡張部材の壁との間に、例えば、動脈瘤ネックの根元隅1106に、形成する可能性がある間隙を減少させる。
【0165】
いくつかの実施形態において、拡張部材の壁部1108が動脈瘤ネックのより大きな領域にわたって広がっているため、壁部1108でワイヤ間に画定される開口部は、拡張部材の1つ以上の他の部分における開口部と比較してサイズが異なる(例えば、それよりも大きい)場合がある。
【0166】
図12は、本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤の位置で流れを分流するような構造の拡張部材を備える血管内デバイスの例示的な構成である。
【0167】
いくつかの実施形態において、拡張部材1200は、例えば、半径方向流等の流れを異なる方向に、例えば、血管に沿って縦方向に流れるように方向転換させるのに効果的な構成にワイヤが配置された少なくとも一部分を備えることによって、分流器として機能するような構造である。任意選択的に、ワイヤ間に画定される開口部は、障壁を築くのに十分小さく、進路を変更し、軸方向等の分流方向に流れるように、(例えば、拡張部材の壁に対して)半径方向外側および/内側の流れを引き起こす。
【0168】
図中に示す例示的な実施形態において、分流拡張部材1200は、場合によっては血管1204の直径方向反対側に位置する紡錘状動脈瘤1202の長さに沿って延在するように位置付けられる。
【0169】
紡錘状動脈瘤は、半径方向の広がりおよび/または長さが異なる場合があり、場合によっては、拡張部材は、動脈瘤の形状に応じて事前に選択されてもよい。付加的にまたは代替的に、拡張部材の寸法は、動脈瘤の形状と一致するように生体内で調節されてもよい。いくつかの実施形態において、例えば、体内に挿入される前に、観察される動脈瘤の形状および/もしくはサイズに応じて、ならびに/または血管の曲率および/もしくは直径に応じて、拡張部材の1つ以上のパラメータが選択される。そのようなパラメータは、例えば、部材の長さ、部材の最大直径、部材の開口部のサイズ、および/または他のパラメータを含み得る。一例において、例えば、その遠位端に向かって先細りになった、円錐形の拡張部材が、同様の方向に先細りになった血管セグメント内で縦方向に延在する紡錘状動脈瘤を治療するために選択される。
【0170】
いくつかの実施形態において、部材1200は、血管内に留置され、その送達システム1206から取り外される。任意選択的に、部材1200は、所望の期間、血管内に残される。いくつかの実施形態において、期間は事前に規定される。代替的に、期間は、進捗に基づいて、例えば、動脈瘤の治癒段階の評価に基づいて、決定される。
【0171】
場合によっては、部材1200の壁の内側および/または外側に組織(例えば、内皮および/または新生内膜組織)が増殖する。
【0172】
図13に示すように、いくつかの実施形態において、バルーンのような部材1300が、中心部1312で第1のより大きい直径を有するように拡張し、近位端1302に向かっておよび/または遠位端1304に向かってサイズが減少し、一方または両方の端部で円錐形の輪郭形状を形成する。
【0173】
いくつかの実施形態において、拡張部材1300は、例えば、部材の縦軸1306および/または横軸1308に対して対称である。代替的に、部材1300は非対称であり、例えば、動脈瘤1310が位置する血管壁の側に対応する軸1306の一方の側に第1の部分を備え、それは、軸1306の反対側に構成される部材の第2の部分が拡張する半径方向距離よりも大きい半径方向距離に拡張する。拡張部材の非対称な幾何学的形状の潜在的な利点は、特定の血管の部分、例えば、動脈瘤ネックで、選択的に流れを妨げるかまたは中断し、他の血管の部分、例えば、動脈瘤の反対側の血管領域における流れとの干渉を低減することを含み得る。
【0174】
図14は、本発明のいくつかの実施形態による、部材の異なる部分で様々な直径に拡張するように構成される非管状拡張部材1400を示す。一例において、拡張部材は、部材の異なる縦方向セグメントの直径1404よりも大きい直径1402に拡張するように構成される縦方向セグメントを備える。一例において、直径1402は、直径1404よりも10%、30%、60%、85%、または中間的、より大きい、もしくはより小さいパーセンテージ大きい。
【0175】
ここに示されるような構成は、他の血管状態の治療にも適切であり得ることに留意されたい。
【0176】
いくつかの実施形態において、拡張部材は、異なる部分で異なる直径を有するように、例えば、製造中に、事前に成形される。代替的に、拡張部材は、次に異なる部分で異なる直径の構造を形成するように(生体外および/または生体内で)調節される均一な初期輪郭形状を有する。
【0177】
図15A~
図15Bは、本発明のいくつかの実施形態による、「二重ケージ」構造を備える拡張部材を示す。
【0178】
いくつかの実施形態において、拡張部材は、例えば、任意選択的に互いに対して同軸である、2つのワイヤメッシュケージを備える「二重ケージ」構造を備える。いくつかの実施形態において、第1の外側ケージ1500は、第2の内側ケージ1506の弛緩時長さ1504よりも長い弛緩時長さ1502を有する。任意選択的に、弛緩時長さ1504は、外側ケージの弛緩時長さ1502の50~75%である。いくつかの実施形態において、内側ケージ1506は、外側ケージ1500の中心部のみに沿って延在する。
【0179】
いくつかの実施形態において、ケージは、選択された密度の層状に重なった開口部が得られるように、互いに対して位置付けられる。任意選択的に、ケージ1500の開口部は、ケージ1506の開口部と重複する。代替的に、ケージ1500の開口部は、ケージ1506の開口部と部分的にのみ重複するかまたは全く重複せずに密度を増加させる。任意選択的に、開口部は、実質的に流れに干渉することなく血液が流れることができるように、ケージのある部分、例えば、ケージの近位部および/または遠位部では重複し、また、ケージの他の部分、例えば、動脈瘤ネックを閉塞するようにネックに位置付けられ得る中心部では重複しない。
【0180】
ここに示される図は、内側ゲージと外側ケージとの2つの例示的な連結配置を示す。
【0181】
図15Aにおいて、ケージは、内側ケージ1506が外側ケージ1500の弛緩時直径よりも大きい弛緩時直径に自己拡張するオーバーサイズ機構によって連結される。内側ケージ1506の壁が、外側ケージ1500の壁を半径方向外側に押し、それによってケージ間の摩擦に基づく連結を維持する。いくつかの実施形態において、連結によって、内側ケージと外側ケージとの間の半径方向の間隙が減少する。任意選択的に、連結によって、ケージの互いに対する軸方向の摺動移動が可能となる。いくつかの実施形態において、外側ケージ1500の断面形状は、部材の近位端および/または遠位端に向かって狭くなり(すなわち、直径が減少する)、狭窄部1508は、外側ケージ1500に対する内側ケージ1506の軸方向移動を限定する停止部としての役割を果たし、例えば、内側ケージ1506が外側ケージ1500の近位端および/または遠位端に向かって摺動するのを防止する。
【0182】
いくつかの実施形態において、例えば、血管内への送達中に、外側ケージ1500の収縮が、内側ケージ1506に半径方向内側の力を加え、同様に収縮させる。
【0183】
いくつかの実施形態において、単一の制御機構、例えば、外側ケージ1500に連結されたプッシュプルケーブルが、例えば、収縮中に、外側ケージ1500に内側ケージ1506に対して力を加えさせることによって、両方のケージを同時に制御する。代替的に、ケージは、別々の機構によって制御される。任意選択的に、別々の機構は、外側送達システム内に構成される内側送達システムを含む。任意選択的に、ケージを別々に制御することは、ケージを通る流れ(例えば、軸方向および/または半径方向の血流)の制御をもたらす。一例において、少なくとも部分的な流れを通すことができるように、内側ケージを収縮させておよび/または外側ケージを拡張してケージ間に半径方向の間隙を生じさせ、層状に重なった開口部を互いから遠ざけて密度を低下させる。任意選択的に、血管内における拡張部材の位置は、外側ケージ1500を血管壁にもたれかけさせることによって維持され、流れの制御は、内側ケージ1506の操作によって、例えば、動脈瘤への流れを妨げるようにケージの壁を接近させることによって、ケージ間の重複の程度を変更するようにケージの一方もしくは両方を収縮させるおよび/もしくは軸方向に摺動させることによって、ならびに/または他の操作によって提供される。
【0184】
図15Bにおいて、内側ケージ1506は、複数の取付点1510を介して外側ケージ1500に連結される。いくつかの実施形態において、取付点1510は、拡張部材を形成するワイヤの非接合区域に位置する。任意選択的に、取付点1510は、接合部1512から距離を置いて位置し、例えば、隣接する接合部1512と1514との間に延在するワイヤセグメントの長さの1/2、1/3、1/4、または中間的、より大きい、もしくはより小さい分数の距離に位置する。
【0185】
いくつかの実施形態において、取付点1510は、両方のケージのワイヤ間に溶接接続部を備える。付加的にまたは代替的に、ワイヤは、取付点1510で互いに接着される。
【0186】
いくつかの実施形態において、取付点の数および/または分布は、ケージを一緒に連結した状態に維持するように選択される。任意選択的に、取付点の数および/または分布は、軸方向移動等の互いに対するケージの移動を少なくともいくらか可能にするように選択される。
【0187】
取付点をワイヤの非接合セグメントに沿って位置付けることの潜在的な利点は、部材の拡張および/または収縮中にケージ間の連結の限定的効果を減少させることを含み得る。任意選択的に、非接合セグメントにおける連結は、拡張部材の機械的変形のリスクを低減する。
【0188】
付加的にまたは代替的に、1つ以上の取付点が、ケージのワイヤ間の接合部に位置する。
【0189】
図16A~
図16Bおよび
図17A~
図17Dは、本発明のいくつかの実施形態による、1つ以上の部分が、拡張部材の1つ以上の他の部分よりも密度の高い開口部を備える拡張部材の例示的なワイヤ配置を表す。いくつかの実施形態において、動脈瘤ネックと整列することが意図される拡張部材の縦方向セグメントは、拡張部材の他のセグメント、例えば、近位セグメントおよび/または遠位セグメントよりも小さい表面積の開口部を備える。部材のより高密度な部分を動脈瘤ネックに位置付けることにより、動脈瘤内へのおよび/または動脈瘤からの半径方向流を減少させることができる一方で、血管を通る軸方向流等の流れが、例えば、部材の遠位端および/または近位端に近接する、部材のより低密度な部分のより大きな開口部をより自由に通過する。
【0190】
いくつかの実施形態において、より高密度な部分は、(例えば、部材の全周を包含する縦方向区域とは対照的に)動脈瘤ネックの前に位置付けられるように傾斜して配向され得る拡張部材の周壁部のみを有してもよいことに留意されたい。
【0191】
図16A~
図16Bは、本発明のいくつかの実施形態による、ワイヤを対にして一緒にすることによって開口部の密度が変更される拡張部材の区域1600(
図16A)と、その区域の一部の拡大図(
図16B)を示す。
【0192】
一例において、部材のより高密度な部分1608を形成するワイヤ配置に含まれる2本のワイヤ1602および1604を対にして、部材のより低密度な部分1610内に延在する二重標準ワイヤ1606を形成する。任意選択的に、ワイヤは、拡張部材の遠位端および/または近位端に近接して対にされる。任意選択的に、ワイヤは、それらを織り交ぜることによって、一緒に溶接することによって(例えば、熱処理による)、および/または他の連結方法によって、対にされる。
【0193】
いくつかの実施形態において、例えば、
図16Bの拡大図に示されるように、ワイヤを対にすることにより、別々のワイヤ間に画定される開口部と比較してより大きい表面積の開口部がもたらされる。一例において、対になったワイヤによって画定される大きい開口部1612と別々のワイヤによって画定されるより小さい開口部1614との比は、1.5:1~1.9:1である。別の例において、ワイヤが段階的なワイヤ対形成によって対にされる場合(例えば、2本のワイヤを対にして1本の二重標準ワイヤにし、次いで、2本の二重標準ワイヤを対にして1本の四重標準ワイヤにする)、部材のより高密度な部分における開口部と部材のより低密度な部分における開口部との比は、例えば、1:3、1:3.5、1:3.8、または中間的、より大きい、もしくはより小さい比の範囲であってもよい。
【0194】
例示的な構成において、より高密度な部分1608における42本ワイヤ構造は、より低密度な部分1610において21本二重標準ワイヤ構造に減少される。別の例示的な構成において、より高密度な部分1608における16本ワイヤ構造は、より低密度な部分1610において8本ワイヤ構造に減少される。
【0195】
いくつかの実施形態において、拡張部材は、例えば、2本のワイヤを対にして二重標準ワイヤにし、次いで、2本の二重標準ワイヤを対にして四重標準ワイヤにすることによる、各区域を形成するワイヤの有効数の段階的削減を含む。そのような構成において、より高密度な部分に16本のワイヤを備える例示的な拡張部材を、より低密度な部分において有効な4本ワイヤ構造に縮小することができる。
【0196】
いくつかの実施形態において、奇数のワイヤ(例えば、3本のワイヤ、5本のワイヤ、3本の二重標準ワイヤ等)が、単一の連結点で互いに連結されてもよい。
【0197】
図17A~
図17Dは、いくつかの実施形態によるワイヤ配置を示しており、拡張部材1706のより高密度な部分1700に含まれる複数のワイヤが、より低密度な部分(複数可)1702への遷移部で終端しているため(
図17A、および
図17Bの拡大図に示される)、より低密度な部分ではワイヤの数が減少し、それによってより低密度な部分に画定される開口部のサイズが増加する。より高密度な部分1700は、
図17Cに断面で示され、より低密度な部分1702は、
図17Dに断面で示される。
【0198】
いくつかの実施形態において、ワイヤは、近位端および/または遠位端からの距離1704で終端し、例えば、距離は、3~15mm、5~8mm、2~10mmの範囲であるか、または中間的、より長い、もしくはより短い距離である。
【0199】
いくつかの実施形態において、ワイヤは、その終点で切断される。付加的にまたは代替的に、ワイヤは、ループで終端し、任意選択的に、より低密度な部分を形成するように延在し続ける第2のワイヤの周りで輪になる。ループで終端するワイヤの潜在的な利点は、例えば、外側チューブ内で、自由端が拡張部材の軸方向移動に干渉するリスクを低減することを含み得る。別の潜在的な利点は、自由端が血管壁に刺さるおよび/または壁に繋止するリスクを低減することを含み得る。
【0200】
いくつかの実施形態において、終端するワイヤは、例えば、部材の拡張中および/または収縮中に、継続するワイヤと共に終端するワイヤを移動させる様式で継続するワイヤに織り交ぜられる。
【0201】
例示的な構成において、中心高密度部分1700は、42本のワイヤを備え、より低密度な部分(複数可)1702は、わずか16本のワイヤを備える。
【0202】
図18は、本発明のいくつかの実施形態による、動脈瘤ネックの前に位置付けられることが意図される中心セグメント等の部材のセグメントを覆って延在する管状カバー1800を備える拡張部材を示す。
【0203】
いくつかの実施形態において、カバー1800は、拡張部材を円周方向に密封し、動脈瘤へのおよび/または動脈瘤からの半径方向流を減少させる(または、いくつかの実施形態において、完全に排除する)。
【0204】
いくつかの実施形態において、カバー1800は、拡張部材と共に拡張および/または収縮することができる弾性材料で形成される。カバー1800は、シリコン、ポリウレタン、弾性材料、および/または高密度織材で形成されてもよい。任意選択的に、カバー1800の厚さは、例えば、10~40マイクロメートルの範囲であり、例えば、15マイクロメートル、25マイクロメートル、35マイクロメートル、または中間的、より大きい、もしくはより小さい厚さである。
【0205】
任意選択的に、カバー1800は、部材の近位部および/または遠位部に延在せず、例えば、拡張部材の端部1802(例えば、遠位端)から1~10mm、5~10mm、6~9mmの距離で、または中間的、より長い、もしくはより短い距離で終端する。任意選択的に、カバー1800の軸方向の広がりは、拡張部材の直径範囲に応じて選択される。
【0206】
図19A~
図19Cは、本発明のいくつかの実施形態による、平坦な断面形状を有するワイヤを備える拡張部材を示す。この例示的な構成において、部材は、例えば、上述のようなワイヤ対を備える。
図19Bは、断面AA’に沿った部材の断面形状を示し、
図19Cは、ワイヤが対になった、断面BB’に沿った部材の断面形状を示す。
【0207】
いくつかの実施形態は、円形、楕円形、三角形、および/もしくは他の輪郭形状、またはそれらの組み合わせ等の異なる輪郭形状のワイヤを備えてもよい。
【0208】
いくつかの実施形態において、以下の特許出願の一方または両方に記載されるようなデバイスおよび/またはシステムおよび/または方法および/または構成要素は、参照により本明細書に組み込まれる:
【0209】
2013年1月17日に出願されたPCT公開番号WO2013/109756A2号、表題「METHOD AND APPARATUS FOR OCCLUSION REMOVAL」(Attorney Docket No.59761)および
2010年6月15日に出願された米国公開番号US2010/0318178号、表題「METHOD AND APPARATUS FOR ALLOWING BLOOD FLOW THROUGH AN OCCLUDED VESSEL」。
【0210】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」およびそれらの複合形態は、「限定されないが~を含む」ことを意味する。
【0211】
用語「~からなる」は、「~を含み、かつそれに限定される」ことを意味する。
【0212】
用語「~から本質的になる」は、組成物、方法、または構造が、付加的な成分、ステップ、および/または部分を含み得るが、それは、付加的な成分、ステップ、および/または部分が、特許請求される組成物、方法、または構造の基本的かつ新規な特徴を物質的に変更しない場合に限定されることを意味する。
【0213】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上、明らかにそうではないという指示のない限り、複数の指示対象を含む。例えば、用語「化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、複数の化合物(その混合物を含む)を含み得る。
【0214】
本出願を通じて、本発明の種々の実施形態は、範囲の形式で提示され得る。範囲の形式での記載は、あくまで便益性および簡潔性のためであり、本発明の範囲に対する確固たる限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、全ての考えられる部分範囲、およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えられるべきである。例えば、1~6等の範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示していると考えられるべきである。これは、範囲の幅とは無関係に適用される。
【0215】
本明細書に数値範囲が示される場合は必ず、指示範囲内の列挙される任意の数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1の指定数と第2の指定数「に及ぶ/の間の範囲」という表現と、第1の指定数「から」第2の指定数「に及ぶ/の間の範囲」という表現は、本明細書において交換可能に使用され、第1および第2の指定数、ならびにそれらの間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0216】
本明細書で使用される場合、用語「方法」は、限定されないが、化学、薬理学、生物学、生化学、および医学分野の当業者に既知であるか、または彼らによって、既知の様式、手段、技術、および手順から容易に開発される、様式、手段、技術、および手順を含む、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術、および手順を指す。
【0217】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」は、状態の進行を回避するか、実質的に阻害するか、遅延させるか、もしくは反転させること、状態の臨床的もしくは美容的症状を実質的に改善すること、または状態の臨床的もしくは美容的症状の発生を実質的に予防することを含む。
【0218】
明確にするために別々の実施形態との関連で記載される本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態における組み合わせで提供されてもよいことを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態との関連で記載される本発明の種々の特徴はまた、別々に、または任意の好適な部分的組み合わせにおいて、または任意の他の記載される本発明の実施形態に適するものとして提供されてもよい。種々の実施形態との関連で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしには実施不能である場合を除いて、それらの実施形態の本質的な特徴であると見なされるべきではない。
【0219】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条の下で、2014年8月7日に出願された米国仮特許出願第62/034,263号明細書および2015年1月26日に出願された米国仮特許出願第62/107,607号明細書の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。