(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ナノ多孔質ウィック及び連続気泡多孔質構造体及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20230927BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C08J9/28 101
C08J9/28 CES
F28D15/04 E
(21)【出願番号】P 2021515656
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 US2019041960
(87)【国際公開番号】W WO2020068248
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-04-21
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタルコヴィチ、ジョン、エー.
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表昭62-500598(JP,A)
【文献】米国特許第06146892(US,A)
【文献】国際公開第2011/114826(WO,A1)
【文献】特表2004-528443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00 - 9/42
H01M 50/40 - 50/497
F28D 15/00 - 15/06
B01D 39/00 - 41/04
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の溶媒を加熱する工程と、
前記加熱された溶媒中にポリマーを溶解させる工程と、
前記溶媒ポリマー混合物を冷却してポリマーフィブリル構造体を形成する工程と、
前記第1の溶媒を第2の溶媒と交換する工程と、
前記ポリマーフィブリル構造体から前記第2の溶媒を除去する工程と、
を含
み、
前記第2の溶媒が、前記第1の溶媒よりも低い臨界温度を有し、前記除去する工程が、臨界点乾燥することをさらに含む、
ナノ多孔質連続気泡発泡体を形成する方法。
【請求項2】
前記第2の溶媒が、100℃未満の臨界点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の溶媒が、液体の二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、エチレン
、およびそれらの混合物から選択される、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
第1の溶媒を加熱する工程と、
前記加熱された溶媒中にポリマーを溶解させる工程と、
前記溶媒ポリマー混合物を冷却してポリマーフィブリル構造体を形成する工程と、
前記第1の溶媒を第2の溶媒と交換する工程と、
前記ポリマーフィブリル構造体から前記第2の溶媒を除去する工程と、
を含
み、
前記第2の溶媒が、前記第1の溶媒よりも高い凍結温度を有し、前記除去する工程が、凍結乾燥することをさらに含み、
前記第2の溶媒が、メントール、カンフェン、およびそれらの混合物から選択される、
ナノ多孔質連続気泡発泡体を形成する方法。
【請求項5】
第1の溶媒を加熱する工程と、
前記加熱された溶媒中にポリマーを溶解させる工程と、
前記溶媒ポリマー混合物を冷却してポリマーフィブリル構造体を形成する工程と、
前記第1の溶媒を第2の溶媒と交換する工程と、
前記ポリマーフィブリル構造体から前記第2の溶媒を除去する工程と、
を含
み、
前記第2の溶媒が、20mN/m未満の表面張力を有し、且つ、前記第1の溶媒と比較して100℃未満の温度で大きい蒸気圧を有し、
前記除去する工程が、蒸発乾燥することをさらに含み、
前記第2の溶媒が、フルオロアルカンおよびアルキル化合物、または、ジアルキルエーテルを含む、
ナノ多孔質連続気泡発泡体を形成する方法。
【請求項6】
前記第2の溶媒が、パーフルオロ-ヘキサン、パーフルオロ-ヘプタン、パーフルオロ-オクタン、ヘキサフルオロベンゼン、およびそれらの混合物から選択される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の溶媒が、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル
、およびそれらの混合物から選択される、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の溶媒が、芳香族炭化水素を含む、請求項1
~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の溶媒が、トルエン、キシレン、ベンゼン
、およびそれらの混合物から選択される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の溶媒が、有機塩素化合物を含む、請求項1
~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の溶媒が、トリクロロエタン、トリクロロベンゼン
、およびそれらの混合物から選択される、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の溶媒が、脂肪族および環状炭化水素を含む、請求項1
~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の溶媒が、ポリブテン、デカリン
、およびそれらの混合物から選択される、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーが、ポリマー粉末である、請求項1
~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが、ポリエチレンである、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーが、ポリプロピレン、ポリブチレン
、およびそれらの混合物から選択される、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ多孔質連続気泡発泡体は、断熱材、液体貯蔵媒体、又は、キャピラリーポンプループ又はヒートパイプ熱管理システムのためのウィック材料である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、多孔質材料に関し、より詳細には、ナノ多孔質フィブリル状連続気泡ポリマー構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ多孔質材料は一般に、空隙または細孔のランダム構造体を支持する骨格を含む。それらは、例えば、キャピラリーポンプループ(capillary pump loop)及びヒートパイプ熱管理システムのための断熱材、液体貯蔵媒体及びウィック(wick)材料のような多くの用途を有する。
【0003】
キャピラリーポンプループ(CPL)およびヒートパイプ(HP)熱管理システムは、源から熱を除去するために毛管作用を使用する。特定の航空宇宙用途では、CPLおよびHPが長距離にわたって重力に抗して作動する必要がある。それらは、例えば、小型指向性エネルギー兵器(DEW)、航空機および宇宙機の航空電子工学、レーダー、通信、および高g加速環境または一次冷却システムから離れた場所で作動する飛行制御電子機器などの高出力密度および高熱負荷システムのための信頼性のある冷却システムとして、多くの用途を有する。一般に、CPLまたはHPは、蒸発器と凝縮器との間で熱を移動させるために液体クーラントを使用するウィッキング構造を含む。クーラントを長距離にわたって重力に抗して移動させる能力は、ウィックの透過性および細孔径特性に臨界的に依存する。最高性能のウィック材料は、90%以上の相互接続開放気孔率および100ナノメートル未満の気孔サイズを有すると理論付けられる。
【0004】
現在、ナノメートル寸法の細孔と高い多孔性/透過性の両方を有する高性能ウィック材料を作製する満足な方法はない。現在の最新技術のCPL/HPウィックはマイクロメートルおよびより大きなサイズの細孔を有し、これは、毛管液体ポンピング圧力、したがって、凝縮器-蒸発器分離、およびそれらが有効に作用し得るg加速因子を有意に制限する。現在のウィック製造技術は、ポリマーおよび/または金属粉末を溶融または融合させて、モノリシック管またはスラブウィックを製造する。これらの溶融/焼結ウイックは~5,000~90,000nm(~5~90um)の範囲の細孔径を有する。さらに、細孔は、ウィック長さに沿って規則的または均一に分布していない。更に、溶融/焼結ウイックは僅か40~50%のオーダーの低い気孔率を有する。CPL/HPシステムで使用される代替的なウィック構造体は、軸方向の溝/チャンネルを有するチューブである。このようなウィックはより高く、より均一な多孔性を有するが、はるかに大きな毛管孔を有し、高い作用毛管圧を発達させることができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
代表的な実施形態は例えば、熱可塑性または熱硬化性ポリマーゲルから誘導されるナノ多孔質ウィック構造体を包含し、ゲル化溶媒は、絡み合ったおよび/または架橋したポリマー分子フィブリルからなる膨張したモノリシックゲル構造を保持するように注意深く除去される。
【0006】
本発明の例示的な実施形態の特徴は、説明、特許請求の範囲、および添付の図面から明らかになるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、ナノ多孔質フィブリル材料の構造図を示す。
【
図2A】
図2A、2Bは、ナノ多孔質ウィックまたは発泡構造体を形成する2つの方法を示すフローチャートである。
【
図2B】
図2A、2Bは、ナノ多孔質ウィックまたは発泡構造体を形成する2つの方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3および3Aは、キャピラリーポンプループまたはヒートパイプを示す。
【
図3A】
図3および3Aは、キャピラリーポンプループまたはヒートパイプを示す。
【
図4A】
図4A~4Dは、様々なナノ多孔質ウィック構造体を示す。
【
図4B】
図4A~4Dは、様々なナノ多孔質ウィック構造体を示す。
【
図4C】
図4A~4Dは、様々なナノ多孔質ウィック構造体を示す。
【
図4D】
図4A~4Dは、様々なナノ多孔質ウィック構造体を示す。
【
図5B】
図5B、5D、および5Eは、マイクロ多孔質ウィックならびにマイクロ多孔質およびナノ多孔質の組み合わせのウィックを示す。
【
図5D】
図5B、5D、および5Eは、マイクロ多孔質ウィックならびにマイクロ多孔質およびナノ多孔質の組み合わせのウィックを示す。
【
図5E】
図5B、5D、および5Eは、マイクロ多孔質ウィックならびにマイクロ多孔質およびナノ多孔質の組み合わせのウィックを示す。
【
図6】
図6は、ある範囲の細孔寸法および異なるクーラント流体を有するウィックの毛管圧力を示すグラフである。
【
図7】
図7は、ナノ多孔質気泡含有固体の優れた絶縁特性を示すグラフである。
【
図8】
図8は、ナノ多孔質発泡構造体に含まれる様々な極低温液体の低下した蒸気圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本発明の1つ以上の実施形態を詳細に参照する。本発明はこれらの実施形態に関して説明されるが、本発明はいかなる特定の実施形態にも限定されないことが理解されるべきである。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に入り得る代替物、修正物、および均等物を含む。さらに、以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。本発明は、これらの特定の詳細の一部または全部がなくても実施することができる。他の例では、本発明を曖昧にすることを避けるために、周知の構造および作動原理は詳細に説明されていない。
【0009】
代表的なナノ多孔質ゲル構造体を
図1に示す。一実施形態では、ナノ多孔質発泡体または気泡材料が例えば、102および104で示される絡み合った架橋ポリマー分子フィブリルからなる膨張したモノリシックゲル構造を保持するようにゲル化溶媒が注意深く除去される、熱可塑性または熱硬化性ポリマーゲルから誘導される。
図1のナノ多孔質ゲル構造体は拡大されており、200nmのスケールが右下隅に示されている。
【0010】
図1に示されるようなナノ多孔質連続気泡構造体を作製する方法は、
図2Aおよび2Bを参照して議論される。
図2Aにおいて、エアロゲル構造は、ゲル化溶媒が凍結乾燥または臨界流体処理(ゼロ表面張力乾燥法)によって交換/除去されて、100nm未満の細孔を有する90~98%の多孔率の低密度の自立した開放細孔体を生成するポリマーゲルに由来する。第1の工程202では、溶媒が加熱される。一実施形態では、溶媒がトルエン、キシレン、ベンゼンまたはそれらの混合物などの芳香族炭化水素;トリクロロエタン、トリクロロベンゼンまたはそれらの混合物などの有機塩素化合物;またはポリブテン、デカリンまたはそれらの混合物などの脂肪族および環状炭化水素である。次に、工程204において、ポリマー粉末が溶媒に溶解される。一実施形態ではポリマーはポリエチレンであるが、ポリプロピレン、ポリブチレン、またはそれらの混合物などの他のポリマーを使用することもできる。
【0011】
加熱された溶媒-ポリマー溶液は、ポリマーが、絡み合って柔らかいコヒーレント体を形成するフィブリルまたは糸状粒子を形成するように、工程206において冷却される。コヒーレント体は、通常の固体と比較して低い降伏応力を有し、自由液体としての移動および流動に抵抗する。ゲルの降伏応力は、特定のポリマー-溶媒の組み合わせ、ポリマー分子量および濃度に依存し、10~5,000Paを超える範囲で変化し得る。ポリマーフィブリルは、物理的に絡み合った凝集体構造で、または化学的共有結合で架橋した分子として、存在してもよい。工程208において、溶媒は、約100℃未満の臨界点を有する溶媒、または約50℃未満の凝固点および100Paを超える昇華蒸気圧を有する溶媒と交換される。最後に、工程210において、置換された溶媒は、臨界点乾燥または凍結乾燥によって注意深く除去され、ナノ多孔質ポリマーゲル構造体は乾燥状態で無傷のままである。工程208で使用される溶媒の例には、臨界点乾燥によって溶媒が除去される場合、液体の二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、エチレンまたはそれらの混合物が含まれるが、臨界点が約100℃未満の任意の溶媒を使用することもできる。工程208で使用される溶媒の例には、凍結乾燥によって溶媒が除去される場合、メントール、カンフェン、tert-ブタノール、またはそれらの混合物も含まれるが、約50℃未満の凝固点および100Paを超える昇華蒸気圧を有する任意の溶媒を使用することもできる。
【0012】
図2Bにおいて、エアロゲル構造体を製造するための最初の3つの工程212、214および216は、
図2Aに示されるプロセスと同じであり、工程218および220のみが、ゲル構造体の通常の蒸発乾燥を可能にするために、この製造方法において変更される。第4の工程218では、ポリマーを溶解し、ゲルを形成するために使用される溶媒は、約20mN/m未満、より好ましくは15mN/m未満の表面張力を有する溶媒と交換される。低表面張力溶媒の例には、パーフルオロ-ヘキサン、パーフルオロ-ヘプタン、パーフルオロ-オクタン、ヘキサフルオロベンゼンまたはそれらの混合物などのフルオロアルカンおよびアルキル化合物が含まれるが、これらに限定されない。低表面張力溶媒のさらなる例には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルまたはそれらの混合物などの特定のジアルキルエーテルが含まれる。これらの交換溶媒はまた、100℃未満でかなりの蒸気圧を示し、それらの蒸発およびポリマーゲルからの除去を助ける。第5の工程220では、これらの低表面張力交換溶媒を蒸発させて、無傷のナノ多孔質モノリスポリマーゲル構造体を乾燥状態で生成する。
【0013】
上記のようなナノ多孔質連続気泡発泡体は、様々な用途を有する。一実施形態では、ナノ多孔質発泡体が、キャピラリーポンプループ(CPL)またはヒートパイプ(HP)のウィック構造体として使用される。代表的なCPL/HP 300が、本発明の実施形態を示すために
図3に示されている。熱源302からヒートシンク304へ熱を移動させる二相熱伝達装置である。導管306及び308は、熱源302に隣接する蒸発器310、312及び314と、ヒートシンク304に隣接する凝縮器316との間にループを形成する。HP/CPL 300は、例えば、アンモニアまたはフレオン(登録商標)などのクーラント液で満たされる。熱源302は、蒸発器310、312及び314内の液体を蒸発させ、導管308を通って凝縮器316に移動させる。凝縮器316において、ヒートシンク304は蒸気を冷却し、凝縮して液体に戻し、この液体は、導管306を通って蒸発器310、312及び314に戻される。HP/CPL 300は、毛管作用を使用して、システムを通して蒸気および液体を移動させる。毛管作用は、分子間力に依存して、補助なしに狭い空間内を液体が流れるようにする。
【0014】
毛管作用を利用するために、HP/CPL 300は、
図3Aに示されるように、蒸発器310、312および314においてナノ多孔質ウィックを使用する。CPLおよびHPの性能は、凝縮器と蒸発器との間の液相クーラントの内部輸送に使用されるキャピラリーウィックに決定的に依存する。キャピラリーウィックは、クーラント流量を制御し、従って、システム熱負荷能力及びその最大作動g力及び蒸発器と凝縮器との間の分離距離を支配する。100ナノメートル未満の細孔径を有するポリマーゲルに由来するナノ多孔質材料は、CPL/HP毛管圧を大幅に増加させ、それによって、凝縮器-蒸発器分離および/または高さの限界ならびにそれらのg加速環境限界を増加させる。
【0015】
一実施形態では、ナノメートル寸法、絡み合ったフィブリルまたはテンドリラーゲル構造、および特定の化学的製造方法を使用して、極めて高性能のCPLおよびHPシステムを可能にするエアロゲルウィックを作製する。これらのエアロゲル構造体は、
図4A~4Dに示されるように、様々な形態および形状で作製され得、異なるHP/CPL設計において使用され得る。例えば、ウィック構造体は、様々な寸法を有する、
図4Aに示す環状管402、
図4Bに示す中実円筒404、または
図4Dに示すスラブ408として形成することができる。加えて、ナノ多孔質連続気泡発泡体は、
図4Cの406で示され、以下でより詳細に論じられるように、マイクロ多孔質ウィックと組み合わされてもよい。
【0016】
本発明の別の実施形態および利点は、ナノ多孔質ゲル構造体をマイクロ多孔質体に組み込むか、または堆積させて、それらの有効細孔気泡サイズをマイクロメートルスケールからナノスケール領域に縮小または変換することができることである。細孔気泡サイズの縮小または変換の例は、
図4A~4Dに示されるウィック構造体のバージョンにより詳細に示され、その例は
図5A~5Eに示される。化学的に架橋されたおよび/または物理的に絡み合ったエアロゲル構造体を使用して、現在のマイクロ多孔質技術の開孔発泡体およびウィックをバイポア(bi-pore)構造に変換することができる。この実施形態では、より粗いマイクロ多孔質発泡体またはウィック材料が、エアロゲルが成長または堆積される足場または宿主培地として働く。これは、マイクロ多孔質発泡体またはウィックをナノ多孔質構造に効果的に変換する。
図5Bのマイクロ多孔質ポリエチレンウィック500は、約40%の多孔率をもたらす複数の細孔502を有する。細孔502はウィック500の長さに沿って延在する管として示されているが、
図4Cの406で示されるような円周の周りの溝、またはマイクロ多孔質発泡体の中実円筒を含む、様々な形態をとる。20ミクロンに対する細孔サイズの分布を示すグラフを
図5Aの504に示す。
図5Eのナノ多孔質連続気泡発泡体506を
図5Dのマイクロ多孔質ウィック508に添加することができ、その結果、0.050ミクロン(50nm)に対する細孔サイズの分布を示す
図5Cのグラフ510が得られる。特定のマイクロ多孔質ウィックが
図5A~5Eに示されているが、この方法は任意のマイクロ多孔質ウィックまたは発泡体に適用することができることを理解されたい。
【0017】
ナノ多孔質ウィックを用いて発生させることができる毛管圧力の範囲を
図6に示し、マイクロメートル(μm)サイズの細孔を有するウィックによって発生される圧力と比較する。ナノメートル(nm)での細孔径を、メガパスカル(MPa)での毛管圧に対してプロットする。100nm以下の孔径を有するナノ多孔質ウィックは、1,000nm(1μm)を超えるマイクロメートルサイズの細孔を有するウィックに利用可能な毛管圧よりもはるかに高い、水、アンモニアおよびフレオン-134に対する毛管圧を示す。
【0018】
ナノ多孔質ウィックは、フレオンから水までの範囲の極性および非極性液体クーラントの幅広い選択で使用することを可能にする、様々な熱的および化学的に安定なポリマー材料から作製することができる。低温能力ポリエチレン(PE)から、クーラント流体の幅広い選択に適合するポリイミドのようなはるかに高い使用温度ポリマーまでの幅広い種類のポリマーを使用することができる。
【0019】
さらなる実施形態では、上記のようなナノ多孔質連続気泡発泡体が断熱材として使用される。
図7は気相熱伝導率のプロットを示すグラフであり、単位はmW/mK(ミリワット/ミリケルビン)対細孔径のプロットをナノメートルで示す。マイクロ多孔質材料は一般に、1,000nm以上の孔径を有し、換言すれば、グラフの線702の右側の材料である。上記のようなナノ多孔質材料は一般に、グラフの線704の左側に示されるように、100nm以下の範囲の細孔径を有する。
図7の-50、25および100℃温度曲線によって示されるように、ナノ多孔質絶縁発泡体のマイクロ多孔質発泡体よりも優れた性能はまた、広い作動温度域にわたって達成される。
【0020】
さらなる実施形態では、ナノ多孔質連続気泡発泡体を使用して、ボイルオフを低減し、それによってそれらの貯蔵時間を延長することによって、クライオジェンの貯蔵を改善することができる。クライオジェン(cryogen)とは、-150℃(123°K)以下で液化することができる気体の液体形態を指す。ボイルオフ(boiloff)は、クライオジェンを貯蔵する際に、クライオジェンを貯蔵するために使用される容器の外側の暖かい環境からの熱漏れ又は熱伝達に起因する問題である。クライオジェンを貯蔵することに関連する別の問題は、スロッシュ制御(slosh control)であり、これは、典型的には貯蔵容器内にスクリーンおよびバッフルを含めることによって対処される。一実施形態では、クライオジェン貯蔵容器にナノ多孔質連続気泡発泡体を充填することは、これらの問題の両方に対処する。ナノ多孔質発泡体は、液体の蒸気圧を低下させ、したがって、ある量または質量のクライオジェンを沸騰させるのに必要な有効エネルギーを上昇させる。ナノ多孔質発泡体の構造はまた、大量の液体を容器内に貯蔵することを可能にしながら、スロッシュ制御を提供する。
図8は、ナノ多孔質媒体を貯蔵容器に添加した場合のクライオジェン蒸気圧低下を示すグラフである。P
p/P
b中の蒸気圧(ナノ多孔質発泡体中のクライオジェンの蒸気圧の、その標準沸点におけるクライオジェンの蒸気圧に対する無次元比率)を、水素、窒素およびメタンについて、細孔径(nm)に対してプロットする。
図8からわかるように、10ナノメートルの孔径を有する発泡体では、水素の蒸気圧は約5%(P
p/P
b比=0.95)低下し、一方、液体窒素およびメタンの蒸気圧は22~25%低下する。より小さい細孔サイズについては、減少ははるかに大きい。
【0021】
本明細書で説明される工程または動作は単なる例である。本発明の精神から逸脱することなく、これらの工程または動作に多くの変形があり得る。本発明の例示的な実施態様を本明細書に示し、詳細に説明したが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な修正、追加、置換などを行うことができ、したがって、これらは以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内にあると考えられることが、当業者には明らかであろう。
[第1の局面]
第1の溶媒を加熱する工程と、
前記加熱された溶媒中にポリマーを溶解させる工程と、
前記溶媒ポリマー混合物を冷却してポリマーフィブリル構造体を形成する工程と、
前記第1の溶媒を第2の溶媒と交換する工程と、
前記ポリマーフィブリル構造体から前記第2の溶媒を除去する工程と、
を含む、
ナノ多孔質連続気泡発泡体を形成する方法。
[第2の局面]
前記第1の溶媒が、芳香族炭化水素を含む、第1の局面に記載の方法。
[第3の局面]
前記第1の溶媒が、トルエン、キシレン、ベンゼンおよびそれらの混合物から選択される、第2の局面に記載の方法。
[第4の局面]
前記第1の溶媒が、有機塩素化合物を含む、第1の局面に記載の方法。
[第5の局面]
前記第1の溶媒が、トリクロロエタン、トリクロロベンゼンおよびそれらの混合物から選択される、第4の局面に記載の方法。
[第6の局面]
前記第1の溶媒が、脂肪族および環状炭化水素を含む、第1の局面に記載の方法。
[第7の局面]
前記第1の溶媒が、ポリブテン、デカリンおよびそれらの混合物から選択される、第6の局面に記載の方法。
[第8の局面]
前記ポリマーが、ポリマー粉末である、第1の局面に記載の方法。
[第9の局面]
前記ポリマーが、ポリエチレンである、第8の局面に記載の方法。
[第10の局面]
前記ポリマーが、ポリプロピレン、ポリブチレンおよびそれらの混合物から選択される、第8の局面に記載の方法。
[第11の局面]
前記第2の溶媒が、前記第1の溶媒よりも低い臨界温度を有し、前記除去する工程が、臨界点乾燥することをさらに含む、第1の局面に記載の方法。
[第12の局面]
前記第2の溶媒が、前記第1の溶媒よりも低い凍結温度を有し、前記除去する工程が、凍結乾燥することをさらに含む、第1の局面に記載の方法。
[第13の局面]
前記第2の溶媒が、100℃未満の臨界点を有する、第1の局面に記載の方法。
[第14の局面]
前記第2の溶媒が、液体の二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、エチレンおよびそれらの混合物から選択される、第13の局面に記載の方法。
[第15の局面]
前記第2の溶媒が、約50℃未満の凝固点および100Paを超える昇華蒸気圧を有する、第1の局面に記載の方法。
[第16の局面]
前記第2の溶媒が、メントール、カンフェン、tert-ブタノールおよびそれらの混合物から選択される、第15の局面に記載の方法。
[第17の局面]
前記第2の溶媒が、約20mN/m未満の表面張力を有し、且つ、前記第1の溶媒と比較して100℃未満の温度でかなり大きい蒸気圧を有し、
前記除去する工程が、蒸発乾燥することをさらに含む、
第1の局面に記載の方法。
[第18の局面]
前記第2の溶媒が、フルオロアルカンおよびアルキル化合物を含む、第17の局面に記載の方法。
[第19の局面]
前記第2の溶媒が、パーフルオロ-ヘキサン、パーフルオロ-ヘプタン、パーフルオロ-オクタン、またはヘキサフルオロベンゼン、およびそれらの混合物から選択される、第18の局面に記載の方法。
[第20の局面]
前記第2の溶媒が、ジアルキルエーテルを含む、第17の局面に記載の方法。
[第21の局面]
前記第2の溶媒が、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルおよびそれらの混合物から選択される、第20の局面に記載の方法。
[第22の局面]
ナノ多孔質連続気泡発泡体、第1の局面に記載の方法。