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特許7356571ネットワークシステムにおけるパルス電力の初期化および同期
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ネットワークシステムにおけるパルス電力の初期化および同期
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
H02J13/00 C
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2022507587
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 US2020055532
(87)【国際公開番号】W WO2021086609
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】16/671,508
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508041127
【氏名又は名称】シスコ テクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】アルドゥイーニ,ダグラス ポール
(72)【発明者】
【氏名】ペク,ソン キー
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,リチャード アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルゲン,ジョエル リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,チャド エム.
(72)【発明者】
【氏名】ポッターフ,ジェイソン デウェイン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ルキ
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0117808(US,A1)
【文献】特開2017-195763(JP,A)
【文献】特開2012-003523(JP,A)
【文献】特表2016-525331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
給電機器と通信する第1の受電デバイスで、前記第1の受電デバイスと通信する第2の受電デバイスを識別することであって、前記第1の受電デバイスは、前記給電機器から高電圧パルス電力を受信していることと、
前記第1の受電デバイスで、前記給電機器に前記第2の受電デバイスを通知することと、
前記高電圧パルス電力を前記第2の受電デバイスに渡す前に、前記第1の受電デバイスで、前記第2の受電デバイスとともに、低電圧電力初期化を実施することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の受電デバイスは、
前記第1の受電デバイスの起動時に前記給電機器とともに第1の低電圧パルス電力初期化を行うための、および前記給電機器から前記高電圧パルス電力を受信するための、ローカル絶縁スイッチと、
前記第2の受電デバイスとともに前記低電圧電力初期化を行うための、および前記第2の受電デバイスに前記高電圧パルス電力を渡すための、出力絶縁スイッチと、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高電圧パルス電力は、60ボルト以上で伝送される電力のパルスを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記給電機器は、前記第2の受電デバイスの安全性確認を実施する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記給電機器に前記第2の受電デバイスを通知することは、前記第2の受電デバイスに起因するライン静電容量の変化に基づいて、タイミング調整を通信することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記低電圧電力初期化は、パルスが相間で互いにオフセットされる多相パルス電力システムにおいて、相ごとに繰り返される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の受電デバイスおよび前記第2の受電デバイスのうちの1つは、少なくとも1つの下流デバイスのための別の給電機器ノードとして動作するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
方法であって、
給電機器から、低電圧パルス電力を受電デバイスに伝送することと、
前記給電機器で、前記受電デバイスでの高電圧パルス電力動作に関する安全性試験を実施することと、
前記安全性試験に合格すると、前記給電機器で高電圧パルス電力動作を有効化することと、
高電圧パルス電力を、前記給電機器から前記受電デバイスに伝送することと、を含み、
前記受電デバイスが前記低電圧パルス電力の波形と同期する、方法。
【請求項9】
前記受電デバイスの変調器スイッチは、前記給電機器の変調器スイッチと同期している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記受電デバイスの変調器スイッチがオンにされた後に前記受電デバイスと通信することをさらに含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記低電圧パルス電力は、60ボルト以下で伝送される電力のパルスを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記低電圧パルス電力と前記高電圧パルス電力との間の差が少なくとも170ボルトである、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記受電デバイスで送受信機との通信リンクを確立することと、前記受電デバイスと電力レベルをネゴシエーションすることと、をさらに含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記低電圧パルス電力を伝送することと、パルスが相間で互いにオフセットされる多相パルス電力システムの相ごとに前記安全性試験を前記実施することと、を繰り返すこと、をさらに含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記安全性試験は、ケーブル静電容量および衝撃障害試験を含む、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記安全性試験は、静電容量試験を含み、かつ前記静電容量試験に基づいて、前記高電圧パルス電力の高電圧パルス間の最小オフ時間を特定することをさらに含む、請求項8~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記受電デバイスと通信する第2の受電デバイスに、前記高電圧パルス電力を伝送することをさらに含む、請求項8~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記安全性試験を実施することは、
ケーブル静電容量電圧を変調し、放電時間を測定することと、
計算されたケーブル静電容量に基づいて、負荷電圧閾値を設定することと、
高電圧パルス電力のデューティサイクルを決定することと、を含む、請求項8~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記給電機器は、保守中の前記高電圧パルス電力の伝送を防止するために、手動操作式の短絡スイッチを備える、請求項8~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
方法であって、
受電デバイスで、給電機器から低電圧パルス電力を受信することと、
前記受電デバイスを、前記給電機器から受信した前記低電圧パルス電力の波形と同期させることと、
前記受電デバイスを、前記給電機器から受信した高電圧パルス電力で動作させることと、を含む、方法。
【請求項21】
前記高電圧パルス電力を受信する前に、前記給電機器と通信するために前記受電デバイスで送受信機を起動することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記受電デバイスを同期させることは、前記受電デバイスの変調器スイッチがオンになる前に前記給電機器の変調器スイッチがオンになり、かつ前記給電機器の前記変調器スイッチがオフになる前に前記受電デバイスの前記変調器スイッチがオフになるように、前記受電デバイスを同期させることを含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記低電圧パルス電力を受信する前に、一定期間にわたって前記給電機器から低電圧電力を受信すると、ハウスキーピング回路を起動することをさらに含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記高電圧パルス電力を受信したときに低電圧ハウスキーピング回路を無効化することと、高電圧ハウスキーピング電力のために高電圧ハウスキーピング回路を動作させることと、をさらに含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記低電圧パルス電力を前記受信することと、パルスが相間で互いにオフセットされる多相パルス電力システムの相ごとに前記同期させることと、を繰り返すこと、をさらに含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
方法であって、
変調器スイッチが開いている状態で、受電デバイスで、給電機器から高電圧パルス電力を受信することと、
前記高電圧パルス電力のパルスがオンのときに、前記受電デバイスで絶縁電圧を結合することと、
前記受電デバイスのハウスキーピング回路に通電することと、
特定の数の高電圧パルスが受信された後、前記受電デバイスの前記変調器スイッチをオンにして、前記高電圧パルス電力で前記受電デバイスに電力を供給することと、を含む、方法。
【請求項27】
前記給電機器は、前記受電デバイスの前記変調器スイッチの通常の動作を確認し、通常の動作が確認されない場合は前記高電圧パルス電力をオフにする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記受電デバイスは、前記高電圧パルス電力を受信する前に前記給電機器を含むネットワークにホットスワップされる、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記変調器スイッチが開いた状態で受信される前記高電圧パルス電力は短いパルスオン時間を含み、前記変調器スイッチがオンになった後に受信される前記高電圧パルス電力は通常動作パルスオン時間を含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記変調器スイッチのタイミングを給電機器変調器スイッチと同期させることをさらに含む、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載の方法のステップを実装するための手段を含む、装置。
【請求項32】
コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させる命令を含む、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品、またはコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ネットワークにおける電力伝送に関し、より詳細には、ネットワークシステムにおけるパルス電力の初期化および同期に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーオーバーイーサネット(PoE)は、有線通信ネットワーク上で、給電機器(power sourcing equipment、PSE)からリンクセクションを介して受電デバイス(powered device、PD)に電力を供給するための技術である。従来のPoEシステムでは、データが使用するケーブルを介して、数メートル~約100メートルの範囲で電力が供給される。より長い距離が必要な場合、またはファイバ光ケーブルが使用される場合、従来のPoEの制限により、電力は壁のコンセントなどのローカル電源から供給する必要がある。さらに、今日のPoEシステムの電力容量は限られているため、多くのクラスのデバイスにとって不十分な場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】本明細書に記載の実施形態が実装され得る通信ネットワークの例を示す。
図2】本明細書に記載の実施形態を実装するのに有用なネットワークデバイスの例を示す。
図3】一実施形態による、パルス電力システムの構成要素を示すブロック図である。
図4】一実施形態による、パルス電力システムの低電圧初期化を示すフローチャートである。
図5】一実施形態による、パルス電力システムの高電圧初期化を示すフローチャートである。
図6】一実施形態による、安全領域内の高電圧初期化パルス限界を示す図である。
図7】一実施形態による、ケーブル静電容量および安全性試験を示すフローチャートである。
図8】一実施形態による、パルス電力を供給するための拡張安全電力システムを示すブロック図である。
図9A】一実施形態による、図7のケーブル静電容量および安全性試験で使用するための回路の例である。
図9B図9Aの回路のスイッチの状態の変化に対応するケーブルの電流および電圧を示す。
図9C】一実施形態による、別のケーブル静電容量および安全性試験で使用するための回路の例である。
図9D図9Cの回路のスイッチの状態の変化に対応するケーブルの電流および電圧を示す。
図10A】一実施形態による、同期で使用するための回路を示すブロック図である。
図10B図10Aの回路のスイッチの状態の変化に対応するケーブルの電圧を示す。
図11A】一実施形態による、図4の低電圧初期化で使用するための回路を示すブロック図である。
図11B図11Aの回路の給電機器スイッチの状態の変化に対応するケーブル電圧およびハウスキーピング電力を示す。
図11C】一実施形態による、低電圧起動回路の例である。
図12A図11Aのハウスキーピング電源回路の詳細を示すブロック図である。
図12B図11Cのハウスキーピング電源回路の詳細を示す。
図12C図12Bのハウスキーピング電源回路のブロック図である。
図13A】一実施形態による、図5の高電圧初期化で使用するための回路を示すブロック図である。
図13B図13Aの回路の給電機器スイッチの状態の変化に対応するケーブル電圧およびハウスキーピング電力を示す。
図14図8の回路の高電圧源に追加された安全性クローバー/短絡リレーを示す回路のボック図である。
図15】一実施形態による、拡張された安全な電力を供給するために給電機器を受電デバイスに接続する、光ファイバおよび2本のツイストペアを備えたケーブルを示す。
図16】一実施形態による、図15に示されるツイストペアのうちの1本の詳細を示す。
図17】一実施形態による、複数の受電デバイスへの電力およびデータ分配の例を示す。
図18】一実施形態による、拡張安全電力システムにおける給電機器と受電デバイスとの間の電圧レベルおよび電力レベルの例を示す、簡略化されたブロック図である。
図19】一実施形態による、拡張安全電力システムにおける給電機器と受電デバイスとの間の電圧レベルおよび電力レベルの例を示す、別の簡略化されたブロック図である。
図20】一実施形態による、マルチノード3相パルス電力システムの例を示すブロック図である。
図21】エンドポイントノードからの一定の電力負荷を使用した図20に示すシステムの、3相パルス電力電圧および電流の例を示す。
図22】一実施形態による、4つの電線ペアを備えたケーブル上の2相パルス電力システムの簡略化された回路を示す。
図23】4相パルス電力システムにおける給電機器変調器スイッチと受電デバイスの変調器スイッチの同期を示す。
図24】は、1つの相がドロップした状態の図23の4相パルス電力システムを示す。
図25】一実施形態による、ポイントツーポイントトポロジを示すブロック図である。
図26】一実施形態による、デイジーチェーントポロジを示すブロック図である。
図27】一実施形態による、マルチドロップトポロジを示すブロック図である。
図28】一実施形態による、マルチドロップ/デイジーチェーンのハイブリッド型トポロジを示すブロック図である。
図29】一実施形態による、電源オフ状態のマルチドロップ/デイジーチェーンのハイブリッド型トポロジにおける給電機器および2つの受電デバイスを示すブロック図である。
図30】第1の受電デバイスの給電機器検出中の、図29の給電機器および受電デバイスを示す。
図31】第1の受電デバイスの電源投入時の、図29の給電機器および受電デバイスを示す。
図32】第1の受電デバイスの訓練フェーズを示す。
図33】第1の受電デバイスの識別フェーズを示す。
図34】給電機器で高電圧パルス電力を有効化する前の最終的な安全性確認を示す。
図35】高電圧パルス電力を第1の受電デバイスに伝送する給電機器を示す。
図36】第1の受電デバイスとの通信を確立する給電機器を示す。
図37】第1の受電デバイスでの第2の受電デバイスの検出および第2の受電デバイスの初期化を示す。
図38】給電機器による、第2の受電デバイスおよび伝送ラインの安全性確認を示す。
図39】両方の受電デバイスに高電圧パルス電力を伝送する給電機器を示す。
図40】高電圧パルス電力を供給し、両方の受電デバイスと通信する給電機器を示す。
【0004】
対応する参照文字は、図面のいくつかの図にわたって対応する部分を示す。
【0005】
例示的な実施形態の説明
概要
本発明の態様は、独立請求項で述べられ、好ましい特徴は、従属請求項で述べられる。一態様の特徴は、単独で、または他の態様と組み合わせて、任意の態様に適用され得る。
【0006】
一実施形態では、方法は、概して、給電機器から低電圧パルス電力を受電デバイスに伝送することと、安全性試験を実施することと、安全性試験に合格したときに給電機器で高電圧パルス電力動作を有効化することと、高電圧パルス電力を給電機器から受電デバイスに伝送することと、を含む。受電デバイスは、低電圧パルス電力の波形と同期する。
【0007】
別の実施形態では、方法は、概して、受電デバイスで、給電機器から低電圧パルス電力を受信することと、受電デバイスの変調器のタイミングを、給電機器から受信した低電圧パルス電力の波形と同期させることと、給電機器から受信した高電圧パルス電力で動作することと、を含む。
【0008】
別の実施形態では、方法は、概して、変調器スイッチが開いている状態で、受電デバイスで、給電機器から高電圧パルス電力を受信することと、高電圧パルス電力のパルスがオンのときに、受電デバイスで絶縁電圧を結合することと、受電デバイスのハウスキーピング回路に通電することと、特定の数の高電圧パルスが受信された後、受電デバイスの変調器スイッチをオンにすることと、を含む。
【0009】
さらに別の実施形態では、方法は、概して、給電機器と通信する第1の受電デバイスで、第1の受電デバイスと通信する第2の受電デバイスを識別することであって、第1の受電デバイスは、給電機器から高電圧パルス電力を受信している、識別することと、給電機器に第2の受電デバイスを通知することと、高電圧パルス電力を第2の受電デバイスに渡す前に、第1の受電デバイスで、第2の受電デバイスとともに低電圧電力初期化を実施することと、を含む。
【0010】
本明細書に記載の実施形態の特徴および利点のさらなる理解は、本明細書の残りの部分および添付の図面を参照することによって実現することができる。
【0011】
例示的な実施形態
以下の説明は、当業者が実施形態を作成および使用することを可能にするために提示される。特定の実施形態および用途の説明は、例としてのみ提供されており、様々な変更形態が当業者には容易に明らかになるであろう。本明細書に記載の一般原理は、実施形態の範囲から逸脱することなく、他の用途に適用することができる。したがって、実施形態は、示されているものに限定されるべきではなく、本明細書に記載されている原理および特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。明確にするために、実施形態に関連する技術分野で知られている技術資料に関連する詳細は、詳細には説明されていない。
【0012】
電力およびデータ通信を同時に送信するために使用される従来のパワーオーバーイーサネット(PoE)システムでは、電力は、データに使用されるのと同じツイストペアケーブルを介して供給される。これらのシステムの範囲は、数メートル~約100m(メートル)に制限されている。通信ケーブルを介した従来のPoEは、IEEE 802.3btに基づいて一般に約90W(ワット)に制限されているが、多くのクラスの受電デバイスは、100Wを超える、場合によっては1000Wを超える電力供給の恩恵を受ける。例えば、従来のPoEは、動作するのに、通常300W~1000W必要なセルラネットワークで見られるように、リモート無線ヘッドまたはフロントホールルータなどの高電力通信システムに十分な電力を供給しない。また、アクセスポイントおよびIP(インターネットプロトコル)電話システムに、スイッチング、ルーティング、および電力を提供するエンタープライズ製品は、多くの場合、約1000W~1500Wの電力を必要とする。従来のシステムでは、より大きな電力供給定格が必要な場合、電力はローカル電源を介してリモートデバイスに供給される。しかしながら、5Gセルラビルドアウトまたは他の通信システムなどのネットワーク通信システム、および各フロアに複数の非集中型ルータが接続された建物では、AC(交流)グリッド電力を常に利用できるとは限らず、最初に構築するのに費用対効果が高くないか、または一部の場所(例えば、無線基地局)では実用的でない場合があり、多くの場合、法外な費用がかかる。例えば、「コロケーション」として列挙されている場所では、電力は通常、消費電力ではなく接続ごとに課金されるため、追加のAC接続ごとに非常に高価になる。DC(直流)電力システムは長距離では適切なソリューションではないため、ACグリッド電力システムが使用されることが多い。したがって、ACコンセントまたは他のタイプの二次給電を追加する必要なしに、これらのおよび他のデバイスに電力を供給する手段が必要である。
【0013】
多機能ケーブルで利用できる電力が、数百ワット、さらには数千ワットに増加すると、ワークグループルータ、マルチソケットサーバ、大型ディスプレイ、ワイヤレスアクセスポイント、フォグノード、もしくは他のデバイスなどの主要なデバイスが動作するネットワーク展開で、多くの新たな選択肢が可能となり得る。この機能により、設置の複雑さが大幅に軽減され、中央ハブからの電力およびデータ接続性のニーズが満たされた、はるかに幅広いデバイスのセットの総所有コストが改善される。
【0014】
上記の問題を克服するために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2018年3月2日に出願された米国特許出願第15/910,203号(「Combined Power,Data,and Cooling Delivery in a Communications Network」)に記載されているように、電力およびデータ配信システムは、単一のケーブルに組み合わされた、より高いデータレートおよびより高い電力供給を搬送する(かつまた統合された熱管理冷却も搬送し得る)ように設計され得る。これらの接続は、中央ハブから1つ以上のリモートデバイス(例えば、フルハブアンドスポークレイアウト)などの、ポイントツーポイントとすることができる。別の例では、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2018年3月12日に出願された米国特許出願第15/918,972号(「Splitting of Combined Delivery Power,Data,and Cooling in a Communications Network」)に記載されているように、単一の複合機能ケーブルが、ほとんど受電デバイスのクラスタまで配線され、その後分割され得る。高電力用途では、さらに安全上の懸念が生じるため、起動時および電力伝送中に追加の試験または安全性確認が必要となり得る。
【0015】
本明細書に記載の実施形態は、障害検出および安全性保護を備えたパルス電力の使用を通じて、ネットワークシステムにおけるデータ、システムを介した高電力の安全な供給(本明細書では、高度なパワーオーバーデータまたは拡張安全電力(ESP)とも呼ばれる)を提供する。電力は、通信の有無にかかわらず、ネットワークシステム(例えば、ネットワーク通信システム)で伝送され得る。本明細書で使用する場合、「パルス電力」という用語は、パルスオフ間隔中の非常に小さい電圧(例えば、0V(ボルト)に近い、3V)と、パルスオン間隔中のより大きな電圧(例えば、12V以上)との間で変化する、パルスで供給される電力を指す。高電圧パルス電力(例えば、56V超、60V以上、300V以上)は、給電機器(PSE)から受電デバイス(PD)に伝送され、受電デバイスに電力を供給するために使用され得るが、一方、低電圧パルス電力(低電圧パルス)(例えば、約12V、30V以下、56V以下)は、起動(例えば、初期化、同期、ローカルエネルギー貯蔵の充電、コントローラの電源投入、試験、またはそれらの任意の組み合わせ)のために短い間隔で使用され得る。以下で詳細に説明するように、初期化プロセス(低電圧または高電圧初期化プロセス)を実施してから、高電圧パルス電力を伝送して、PSEとPDを同期させ、安全な起動を提供することができる。初期化プロセスは、例えば、ケーブル静電容量試験を含む安全性試験、および給電機器と受電デバイスとの間の変調器スイッチ(パルス)タイミングの同期を含み得る。以下で説明するように、初期化は、多相パルス電力システムおよび様々なネットワークトポロジにおける複数の相に対して実施され得る。
【0016】
例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2019年4月10日に出願された米国特許出願第16/380,954号(「Multiple Phase Pulse Power in a Network Communications System」)に記載されているように、1つ以上の実施形態は、高電力を供給するために電力接続ごとの信頼性を高めて、ケーブルの延長された長さにわたって安全な動作を提供しながら、複数の相(多相)パルス電力を使用して、より少ない損失、受電デバイスへの実質的に100%のデューティサイクル電力供給(例えば、相パルスのオーバーラップを伴う出力への連続的な途切れない電力)を達成し得る。複数のペアケーブルを使用して、例えば、各ペアにDCパルスを用いて、受電デバイス(または負荷)で100%の正味デューティサイクルの連続電力を提供するようにタイミング調整できる。パルス送電は、例えば、ケーブル、伝送ライン、バスバー、バックプレーン、PCB(プリント回路基板)、および配電システムを介して行うことができる。
【0017】
ESPシステムは、ネットワークデバイスまたはケーブルを試験して、障害または安全上の問題を特定することができる。システムは、例えば、伝送エラー、相障害(多相システムの場合)、過電流、アークイベント、時間ベースの制御同期障害、MACドロップ、または他の通信もしくは電力の障害もしくはエラーを識別するように構成できる。これらの障害は、多相システムでは相ごとに特定できる。以下で説明するように、低電圧初期化を起動(または再起動)に使用して、ネットワークおよび構成要素を試験することができる(図4のフローチャートに関して後述する)。また、(図5のフローチャートに関して後述する)高電圧初期化を使用して、低電圧初期化プロセスを必要とせずに、新たなPDの追加またはPDのホットスワップ交換を可能にすることもできる。
【0018】
起動時および初期化時に試験を実施することに加えて、ESPシステムに安全に電力を供給するために、高電圧動作中に試験を継続して実施することができる。1つ以上の実施形態では、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2018年5月4日に出願された米国特許出願第15/971,729号(「High Power and Data Delivery in a Communications Network with Safety and Fault Protection」)に記載されているように、障害感知は、データシステムを使用して電力システムの状態に関するフィードバックを提供し、電力動作モードを設定する、デジタルインターロックと組み合わせた低電圧安全性確認を通じて実施することができる。障害感知は、低電圧起動中、またはパルス電力システムの高電力パルス間で実施され得る。パルス電力は、電源電圧パルス電力(ユニポーラもしくはバイポーラ)、または高電圧電力パルス間の低電圧障害検出を伴う負荷電流パルス電力を含み得る。障害感知には、例えば、ケーブルまたは受電デバイスの低電圧感知によるライン間障害検出、および中点接地によるライン-接地間障害検出が含まれ得る。タッチセーフ障害保護もまた、高電圧が印加された場合でもタッチセーフなケーブルおよびコネクタ設計によって提供され得る。電力安全機能は、安全なシステム動作、ならびに場合より、システムの通常動作を妨げることなく構成要素を交換することを含む(すなわち、ホットスワップ可能な)構成要素の取り付けおよび取り外し(切断)を提供する。
【0019】
パルス間のオフ時間は、例えば、障害のライン間抵抗試験のために使用され得、パルス幅は、タッチセーフ障害保護を提供するためにDCライン間電圧に比例し得る(例えば、約1000Vで約1ミリ秒)。試験(障害検出、障害保護、障害感知、タッチセーフ保護)には、PSEとPDとの間のオートネゴシエーションが含まれ得る。オートネゴシエーションには、低電圧(例えば、24VDC(ボルト直流)以下、5~12VDC、56VDC、または他の適切な低電圧(例えば、60VDC未満))の抵抗分析が使用され得る。パルス電力高電圧DCは、個人の安全のために、パルス間のタッチセーフなライン間障害調査のためのパルス間決定とともに使用され得る。ライン間接触衝撃保護には、パルス間のライン検出全体の抵抗のために、パルス間のソースパルスオフ時間が提供され得る。
【0020】
高抵抗中点接地回路の使用の一部としての高電圧動作中に、地絡保護(衝撃保護)を備えた高速高電圧遮断を提供するために、地絡検出(ground-fault-detection、GFD)および地絡絶縁(ground-fault-isolation、GFI)のライン-接地間障害検出が実施され得る。電源をすばやくオフにしてタッチセーフな衝撃保護を提供するために、高電圧DC供給ライン-接地間障害保護回路を使用することができる。GFDおよびGFIは、例えば、約10μs(マイクロ秒)での遮断を提供することができる。電源による中点接地方法はまた、ライン-接地間保護のために電線/導体絶縁および絶縁定格内でのより高いピークパルスライン間電圧を可能にし、また個人の安全のためにタッチセーフなライン-接地間障害を提供するため、かつ安全基準を満たすために使用され得る。システムはまた、個人の衝撃保護のために、時間および電流対電圧を調整可能に設計することもできる。
【0021】
1つ以上の実施形態では、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2017年5月24日に出願された「Thermal Modeling for Cables Transmitting Data and Power」と題された米国特許出願第15/604,344号に記載されているように、システムはまた、ケーブルの熱モデリングを使用して熱蓄積を試験することもできる。例えば、ケーブル電流の変化を追跡し、ケーブル電流温度を計算することによって、熱の蓄積を検出することができる。ケーブル温度は、アンペア数、ケーブルゲージ、およびケーブル長さの関数である。既知のパラメータを使用し、電線サイズ(例えば、22AWG)を想定することにより、バンドル環境でのケーブルの温度制限を計算できる。温度範囲は、例えば、通常、マイナー、メジャー、およびクリティカルとして定義され得る(例えば、マイナーはケーブル温度制限の20℃以内で定義され、メジャーはケーブル温度制限の10℃以内で定義され、クリティカルはケーブル温度制限で定義される)。温度範囲がマイナー範囲内にある場合、システムは電力の再ネゴシエーションを強制してラインの電流を低減し得る。温度がクリティカル範囲内にある場合、ポートへの通電が断たれ得る。温度は、各電線、各電線ペア、4ペアケーブル、またはそれらの任意の組み合わせで計算できる。
【0022】
1つ以上の実施形態では、参照によりその全体が組み込まれる2018年6月27日に出願された「Wire Fault and Electrical Imbalance Detection for Power over Communications Cabling」と題された米国特許出願第16/020,881号に記載されているように、システムはまた、電線障害および電気的不均衡の検出を実施することができる。
【0023】
1つ以上の実施形態では、PSEは、PSEが提供することができる電力レベルをPDに通知することができ、次いで、PDは、使用する適切な電力レベルを選択することができる。PSEおよびPDは、例えば、15W、30W、60W、90W、150W、200W、250W、300W、または他の任意の適切な電力レベルの電力レベルをネゴシエーションすることができる。障害が検出されない場合、システムは使用できる最大電力までオートネゴシエーションすることができる。電力が増加すると、前述のように、継続して障害検出が実施される場合がある。障害検出には、例えば、熱蓄積の確認、電気的不均衡確認(電線間の不均衡確認、ペアツーペア不均衡確認)、または短絡/障害保護確認が含まれ得る。システムは、これらの確認のうちの1つ以上を任意の順序で実施するように、またはいくつかのステップを同時に実施するように構成され得る。安全確認のうちの1つ以上は、継続的にまたは特定の間隔で実施することができる。例えば、電線を10ミリ秒のウィンドウ内の連続ループで1本ずつ監視してもよい。障害が検出された場合、または特定のPSE電圧を超えた場合、電力出力はシャットダウンされる。障害が軽微な場合(例えば、1つ以上のパラメータが制限に近いが制限を超えていない)、電力レベルの再ネゴシエーションによって電力が低減され得る。障害が続く場合は、ポートがシャットダウンされることがある。アラームも発生され得る。1つ以上の実施形態では、パケットおよびアイドル(リンク)監視を使用して、電力をシャットダウンすることができる。電線が損失されると、リンクが損失され、電線ごとの障害が保護される。
【0024】
監視された(または計算された)電流に基づく措置を講じることもできる。例えば、ケーブルの電流がケーブル電流の最大限度を超える場合、ポートがシャットダウンし得る。ケーブル電流が特定の範囲に達すると、ラインカード(PD)は、ライン上の電流を減らすためにPSEとの電力ネゴシエーションを強制的に実施し得る。電流は、電線ごと、電線ペアごと、ケーブルごと、または任意の組み合わせで監視され得る。電流範囲は、通常、マイナー、メジャー、およびクリティカルとして定義され得る(例えば、マイナーは最大電流の20%以内で定義され、メジャーは最大電流の10%以内で定義され、クリティカルは最大電流で定義される)。範囲がマイナーの場合、ケーブルの電流を低減するために再ネゴシエーションが実施され得る。クリティカル電流に達した場合、ポートへの通電が断たれ得る。
【0025】
1つ以上の実施形態では、1つ以上のパラメータが、ユーザ定義であってもよい。例えば、ケーブルインピーダンス、ケーブル長、ケーブルゲージ、およびケーブル電圧定格を、ESPシステムまたはリンク用に設定できる。ESPシステムは、これらのパラメータに基づいて最大電圧、最大電流、または最大電力を設定できる。本明細書に記載するように、システムは、ケーブル静電容量に基づいてケーブル安全性試験を実施することができる。システムはまた、低電圧および高電圧について上述したように、GFI障害試験およびライン間障害試験を実施することもできる。障害が特定された場合、システムは障害ラッチを設定し、自動再起動を1回以上試行してもよい。ESPシステム内の1つ以上の構成要素は、例えば、低電圧動作、高電圧動作、またはシステム障害/構成要素障害/ケーブル障害を特定するための1つ以上の視覚的インジケータ(例えば、LED(発光ダイオード))を含み得る。
【0026】
1つ以上の実施形態では、データ(例えば、電流、電圧、ケーブル静電容量、障害、温度など)を定期的に監視および収集することによって機械学習を実施して、許容限度をさらに定義し、ケーブル、環境、または構成要素の経時変化に基づく電気的性能の変動を考慮することができる。例えば、分析モデルは、電圧、負荷電流および動作制限の更新に使用するデータ傾向に基づいて定義および更新され、電気的パラメータの変動を考慮して、誤ったシステム障害を回避できる。
【0027】
1つ以上の実施形態では、後述するように、PSEは、電力およびデータ用の複合ケーブル上で(例えば、銅線または光ファイバを介して)、100W超をデータとともに複数のPDに供給することができる。1つ以上の実施形態では、システムは、1500メートルを超えるケーブル長で2000W以上の電力を安全に供給することができる。このシステムはまた、25メートル未満のケーブル長でより高い電力(例えば、6000W)を安全に供給できるため、大型筐体システムを分散化して、バックプレーン/大型筐体システムの設計を排除するのに非常に有益である。本明細書に記載の電力レベルおよびケーブル距離は、例として提供されており、実施形態の範囲から逸脱することなく、異なるケーブル長で供給される他の電力レベルが使用され得ることが理解されるべきである。
【0028】
本システムは、例えば、IEC(国際電気標準会議)規格番号62368-3:2017(「Audio/video information and communication technology equipment-Part 3:Safety- aspects for DC power transfer through communication cables and ports」)、IEC60950-1:2005(「Information technology equipment-Safety-Part 1:General requirements」)、IEC60947(「Low-voltage switchgear and control gear」)、または、拡張安全電力システムの高電圧(より高い電力)用途の担当者にタッチセーフ衝撃保護を提供する他の任意の適切な規格を含む、安全基準を満たすように構成され得る。システムは、例えば、HVDC電力(例えば、1100V、550V、380V)全体で、約2.5kohmを使用して、1ミリ秒間でライン-接地間障害限度約5mA(例えば、10mA未満)およびライン間障害限度約0.5Aに衝撃電流を制限するように構成され得る(例えば、短距離ケーブルまたはスマートデジタルセンシング技術の場合)。別の例では、最悪の場合の衝撃暴露時間は12ミリ秒であり得る。安全基準を満たすために、適切な技術(例えば、フェイルセーフ安全機関に承認済みとして列挙されている構成要素、冗長回路または冗長構成要素)が採用され得る。
【0029】
パルスのオフ時間は、ケーブルペアの静電容量に基づいて構成され得、最大パルス電力オン時間は、ボディ衝撃電流および規格(例えば、UL(Underwriters Laboratories)規格62368および60950、またはNFPA(National Fire Protection Association)NEC(National Electrical Code)70の第7章、第8章、ならびに第9章の表11Aおよび11B、IEC/TR60479-5、60479-1、IEC-60947-1、IEC-60947-2、IEC-60947-3、IEC-60335-1、IEC-60990、IEC-60065、IEC-61000-4、または他の任意の適切な規格または要件)によって設定された制限を下回るように設計され得る。1つ以上の実施形態では、オン時間およびオフ時間のパルス幅は、ケーブル特性の変化に応じて動的に設定することができる。PDに連続的に正味電流を供給することは、複数の伝送ペアシステムでのパルスの位相関係を決定するために必要であり得る。本明細書に記載の実施形態は、単一の障害保護または他の安全性要件を満たすように構成され得る。本明細書で論じられる規格および制限は、例としてのみ提供され、実施形態の範囲から逸脱することなく、他の安全制限または規格が使用され得ることが理解されるべきである。
【0030】
ここで図面、まず図1を参照すると、本明細書に記載の実施形態が実装され得る通信ネットワークの例が示されている。簡単にするために、少数のノードのみが示されている。実施形態は、複数のネットワークデバイスを含むデータ通信ネットワークの文脈で動作する。ネットワークは、ネットワーク内のデータの通過を容易にする、任意の数のノード(例えば、ルータ、スイッチ、ゲートウェイ、コントローラ、アクセスポイント、または他のネットワークデバイス)を介して通信する、任意の数のネットワークデバイスを含み得る。ネットワークデバイスは、1つ以上のネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、仮想プライベートネットワーク(VPN)(例えば、イーサネット仮想プライベートネットワーク(EVPN)、レイヤ2仮想プライベートネットワーク(L2VPN))、仮想ローカルエリアネットワーク(VLAN)、ワイヤレスネットワーク、エンタープライズネットワーク、企業ネットワーク、データセンター、モノのインターネット(IoT)ネットワーク、インターネット、イントラネット、または他の任意のネットワーク)を介して通信し得るか、またはそれらと通信し得る。
【0031】
1つ以上の実施形態では、ネットワークは、データとともに電力を渡し、スイッチ14、ルータ、アクセスポイント15、または他の電子部品および電子デバイスなどのネットワークデバイスにデータ接続性および電力の両方を提供するように構成されている。信号は、通信機器と、給電機器(PSE)10から受電デバイス(PD)14、15、17、19に伝送される電力との間で、交換され得る。1つ以上の実施形態では、システムは、データ(ファイバ配信データ)および電力(高電力エネルギー)の両方を送受信するように構成されたインターフェースモジュール16(例えば、光送受信機モジュール)を使用して、ネットワーク(例えば、スイッチ/ルータシステム)との間で、電力を供給する。1つ以上の実施形態では、電力およびデータは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2017年9月18日に出願された米国特許出願第15/707,976号(「Power Delivery Through an Optical System」)に記載されているように、光ファイバおよび電線(例えば、銅線)の両方を含むケーブルを介して供給され得る。1つ以上の実施形態では、例えば、上記で参照した米国特許出願第15/910,203号および同第15/918,972号に記載されるように、システムは冷却をさらに提供し、単一のハイブリッドケーブルシステム内で、電力とデータと冷却とを組み合せて供給することができる。
【0032】
図1の例に示すように、システムは、例えば、構内/エントリールームに配置され得る、中央ネットワークデバイス(ハブ)(PSE)10に供給される建物電力を使用することができる。電力は、建物のエントリポイントからエンドポイント(スイッチ14、アクセスポイント15)まで、および/または100W(ワット)を超える電力レベル(例えば、250W、500W、1000W、2000W、または他の任意の電力レベル)で伝送され得、ここでエンドポイントは、100メートルを超える距離(例えば、1km(キロメートル)、10km、または他の任意の距離)に配置され得る。中央ネットワークデバイス10は、電力(例えば、電力網、再生可能エネルギー源、発電機、または電池からの建物電力)を受信し、分配するための、電源ユニット(PSU)11およびネットワークインターフェース(例えば、ファブリック12、ラインカード13)を備える。図1に示す例では、ラインカードAは、建物の外部(例えば、街路または他の場所)からデータを受信し、ラインカードB、C、およびDは、電力およびデータを分配する。
【0033】
中央ハブ(電力とデータソースの組み合わせ)10は、内部電力システム(例えば、5kW、100kWなど以上の電力を供給することができ、かつ各々100W~3000Wの範囲(例えば、100W以上、900W以上、1000W以上)または他の任意の適切な電力範囲である複数のデバイス14、15を駆動することができるPSU11から大容量電力を提供するように動作可能である。PSU11は、例えば、PoE(パワーオーバーイーサネット)、PoF(パワーオーバーファイバ)、HVDC(高圧直流)、パルス電力HVDC、またはAC(交流)を提供し得る。中央ネットワークデバイス10は、外部電力を受信し、通信ネットワーク(例えば、中央ハブ10(PSE)および複数のネットワークデバイス14、15、17、19(PD)を含むネットワーク)内で、電力およびデータ供給用の複合ケーブル18を介して電力を伝送するように、動作可能である。中央ネットワークデバイス10は、例えば、ルータ、コンバージェンスシステム、または他の任意の適切なラインカードシステムを含み得る。これは単なる一例であり、電力および光データを伝送するように動作可能な他の任意のネットワークデバイスが使用され得ることが理解されるべきである。また、ラインカード13のうちの1つ以上は、ケーブル18上で電力とデータとを伝送するように動作可能な、インターフェースモジュール16(リモートネットワークデバイス14、15に示されている)も含み得る。
【0034】
ネットワークは、任意の数または配置のネットワーク通信デバイス(例えば、スイッチ14、アクセスポイント15、ルータ、またはデータ通信をルーティングする(スイッチングする、転送する)ように動作可能な他のデバイス)を含み得る。一例では、ネットワークは、アクセスポイント15の複数のグループを含み、各グループは、異なるフロアまたはゾーンに配置されている。ネットワークデバイス14、15のうちの1つ以上はまた、PoEを使用して、下流のノード(例えば、PoEデバイス19)に電力を供給し得る。例えば、ネットワークデバイス14、15のうちの1つ以上は、PoEを使用して、IP(インターネットプロトコル)カメラ、VoIP(ボイスオーバーIP)電話、ビデオカメラ、販売時点情報管理デバイス、セキュリティアクセス制御デバイス、住宅用デバイス、建物用自動化デバイス、産業用自動化デバイス、工場設備、照明(建物用照明、街灯)、交通信号、フォグノード、IoTデバイス、センサ、および他の多くの電気部品および電気デバイスなどの電子部品に電力を供給することができる。1つ以上の実施形態では、冗長中央ハブ(図示せず)が、ネットワークで必要に応じて、バックアップまたは追加の電力または帯域幅を提供することができる。この場合、リモートネットワークデバイス14、15は、冗長中央ハブから電力とデータとを供給する別のケーブル18と接続するための、別のインターフェースモジュール16を含むことになる。以下で詳細に説明するように、ネットワークは、例えば、高電圧パルス電力を下流のデバイス(例えば、スイッチ14と通信しているPD17)に供給するための、ポイントツーポイント、デイジーチェーン、マルチドロップ、またはマルチドロップ/デイジーチェーンのハイブリッド型を含む、様々なトポロジに配置することができる。
【0035】
前述のように、中央ハブ10は、電力およびデータを各ネットワークデバイス14に直接供給することができ(図1のラインカードBおよびDに接続されたスイッチ14に示されるようなポイントツーポイント接続)、または1つ以上のスプリッタデバイス(図示せず)を使用して複数のネットワークデバイスを接続し、ネットワークがポイントツーポイントトポロジを超えて、パッシブスター、バス、テーパー、マルチレイヤツリーなどを構築できるようにする。例えば、単一の長いケーブル18は、物理的に近いエンドポイントデバイスのクラスタにサービスを提供する、便利に配置された中間スプリッタデバイス(例えば、パッシブスプリッタ)に配線されてもよい。電力およびデータ用の1つ以上の制御システムは、中央ハブ10とリモートデバイス15(およびそれらのインターフェースモジュール16)との間で相互作用して、上記で参照した米国特許出願第15/918,972号に記載されるように、各デバイスがスプリッタデバイスから各リソースの公平な共有を確実に受け取るようにすることができる。
【0036】
1つ以上の実施形態では、ネットワークデバイス10からスイッチ14およびアクセスポイント15まで延在するケーブル(複合ケーブル、多機能ケーブル、多目的ケーブル、ハイブリッドケーブル)18は、電力およびデータを伝送するように構成され、光ファイバおよび電線の両方を含む。ケーブル18は、例えば、2本の電力線(導体)および2本のデータ線(光ファイバ)を含み得る。これは単なる一例であり、ケーブル18が任意の数の電力線またはデータ線を含み得ることが理解されるべきである。例えば、中央ハブ10からリモートデバイス14、15へ、およびリモートデバイスから中央ハブへデータを伝送するために2つの光ファイバ経路を使用する代わりに、一方の光の波長は下流に(中央ハブ10からリモートデバイス14、15に)向かい、異なる光の波長は上流に(リモートデバイス14、15から中央ハブ10に)向かう、双方向光システムを利用し、これによりケーブルのファイバ数を2から1に減少させることができる。ケーブル18はまた、追加の光ファイバまたは電力線を含み得る。ケーブル18は、電力および光データの両方を搬送するのに適した任意の材料(例えば、銅、ファイバ)から形成することができ、任意の数の電線および光ファイバを任意の配置で搬送することができる。ケーブル18は、電力、データ(電気)、データ(光)、および冷却のうちの1つ以上を伝送することができる。
【0037】
前述のように、ケーブル18はまた、リモートネットワーク通信デバイス14、15の熱管理のために冷却を搬送することもできる。例えば、1つ以上の実施形態では、中央ハブ10からリモートネットワークデバイス14、15まで延在するケーブル18は、電力とデータと冷却とを組み合わせて単一のケーブルで伝送するように構成され得る。この実施形態では、ケーブル18は、電力、データ(例えば、銅、ファイバ)、および冷却剤(液体、気体、または多相)を搬送するのに適した任意の材料から形成され得、任意の数の電線、光ファイバおよび冷却管を、任意の配置で搬送することができる。
【0038】
ケーブル18は、ネットワークデバイス10、14、15でインターフェースモジュール16と結合するように構成された各端部にコネクタを備える。コネクタは、例えば、上記で参照した米国特許出願第15/707,976号に記載されているように、光送受信機に接続するように構成された、電力およびデータ用の複合コネクタ(銅およびファイバのハイブリッド)を含むことができる。コネクタは、例えば、変更されたRJ-45型コネクタを含み得る。
【0039】
1つ以上の実施形態では、コネクタおよびケーブル18は、クリアランス距離および沿面距離、ならびにタッチセーフ技術を含む手段によって、関連する高電圧でのライン-接地間保護およびライン間保護の標準的な安全性要件を満たすように構成されている。コネクタは、例えば、コネクタのアーク保護のための電流サージまたは遮断なしのホットプラグおよびホットアンプラグ用のショートピンを含む安全機能を備え得る。コネクタには、アークフラッシュ保護による電流サージまたは遮断によるホットプラグおよびホットアンプラグ、ならびにアーク放電による信頼性寿命のための追加の絶縁材料がさらに含まれ得る。絶縁ケーブルの電力コネクタ端子は、接触電圧または電流アクセス性の要件を満たすように構成することが好ましい。
【0040】
前述のように、ネットワークデバイス10、14、15のうちの1つ以上は、PSE10から電力とデータの組み合わせを供給するか、またはPD14、15で電力とデータの組み合わせを受信するように動作可能なインターフェースモジュール16を含み得る。1つ以上の実施形態では、インターフェースモジュール16は、光データとともに電力を供給(または受信)するように構成された光送受信機モジュールを備え得る。例えば、一実施形態では、インターフェースモジュール16は、ファイバコネクタシステムとともに修正された送受信機モジュールを含んで銅線を組み込み、上記で参照した米国特許出願第15/707,976号、または参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2018年3月30日に出願された米国特許出願第15/942,015号(「Interface Module for Combined Delivery Power,Data,and Cooling at a Network Device」)に記載されているように、ネットワーク通信デバイスによって使用するために、光送受信機を介して受電デバイス14、15に電力を供給する。これらは、高電力および光データを供給する、または受信するために使用され得るインターフェースモジュールの単なる例であることが理解されるべきである。
【0041】
インターフェースモジュール16(光モジュール、光送受信機、光送受信機モジュール、光デバイス、光学モジュール、シリコンフォトニクスモジュール)は、電力を供給する、または受信するように構成されている。インターフェースモジュール16は、光信号を電気信号に双方向に変換するエンジンとして、または概して、ネットワーク要素の銅線もしくは光ファイバへのインターフェースとして動作する。1つ以上の実施形態では、インターフェースモジュール16は、任意のフォームファクタ(例えば、SFP(スモールフォームファクタプラガブル)、QSFP(クアッドスモールフォームファクタプラガブル)、CFP(Cフォームファクタプラガブル)など)のプラガブル送受信機モジュールを含み得、例えば、最大400Gbpsのデータレートをサポートすることができる。これらのプラガブル光モジュールのホストには、中央ネットワークデバイス10のラインカード13、スイッチ14、アクセスポイント15、または他のネットワークデバイスが含まれる。ホストは、プリント回路基板(PCB)と、電気通信ネットワーク内の電気通信回線をインターフェースするように動作可能な電子部品および回路を含み得る。ホストは、1つ以上の動作を実施し、信号を送受信するように構成された任意の数または任意のタイプのプラガブル送受信機モジュールを受容するように構成され得る。
【0042】
また、インターフェースモジュール16は、ポイントツーマルチポイントまたはマルチポイントツーポイントトポロジで動作するように構成され得ることが分かり得る。例えば、QFSPがSFP+にブレークアウトする場合がある。1つ以上の実施形態は、負荷シフトを可能にするように構成され得る。また、インターフェースモジュール16はまた、AOC(アクティブ光ケーブル)で動作するように、かつ例えば、Ultra HDMI(高精細マルチメディアインターフェース)、シリアル高帯域幅ケーブル(例えば、サンダーボルト)、および他のフォームファクタを含むUWB(ウルトラワイドバンド)アプリケーションで使用されるフォームファクタで動作するように構成されてもよい。
【0043】
インターフェースモジュール16は、標準電力が利用できない場所にあるスイッチ14およびアクセスポイント15に供給される電力を提供する。インターフェースモジュール16は、以下に説明するように、エネルギーの一部を活用してインテリジェントな決定を行うように構成され得るため、電源10は、システムに損傷を与えるかまたはオペレータを危険にさらすことなく、いつ電線上の電力を増大するのが安全かが分かる。インターフェースモジュール16は、図3に関して以下で詳細に説明するように、電力およびデータを監視および制御する際に使用するための、1つ以上のセンサ、モニタ、またはコントローラを含み得る。
【0044】
1つ以上の実施形態では、通信ネットワークのための追加の電気配線の必要はなく、すべてのネットワーク通信デバイスは、拡張安全電力システムによって提供される電力を使用して動作する。電線を介して電力を送受信し、ファイバを介して光データを送受信するように動作可能なインターフェースモジュール16を含むネットワークデバイス10、14、15に加えて、ネットワークはまた、光データのみを処理および送信する従来の光モジュールを含む1つ以上のネットワークデバイスも含み得る。これらのネットワークデバイスは、壁のコンセントなどのローカル電源から電力を受信する。同様に、送受信機16の特殊な変形は、光データインターフェースを排除し、電力のみを相互接続する(例えば、データ相互接続を無線ネットワークに移動させる)ことができる。前述のように、1つ以上のネットワークデバイスは、電力、データ、または電力およびデータ、に加えて、ケーブル18を介して冷却を受け取ることもできる。
【0045】
1つ以上の実施形態では、中央ハブのコントローラおよびリモートデバイスのプロセッサ上に配置されたコンポーネントを含む分散制御システムは、複合ケーブル18内のファイバリンクを介して通信することができる。電力センサからの監視情報(例えば、電流、電圧)またはデータ使用量(例えば、帯域幅、バッファ/キューサイズ)は、電力またはデータを管理または割り当てる際に、制御システムによって使用され得る。
【0046】
システムは、PoE、PoF、高電圧DC(HVDC)、AC電力、パルス電力、多相パルス電力、またはそれらの任意の組み合わせを供給するように構成され得る。HVDC電力は、定常状態HVDCまたはパルス電力HVDCを含み得る。定常状態HVDCおよびパルス電力HVDCは、上記で参照した米国特許出願第15/971,729号に記載されているように、単極または双極(スイッチングDC)であり得る。1つ以上の実施形態では、システムは、電源10と受電デバイス14、15との間の検出およびネゴシエーションを行うデュアル電力モードを採用し得る。このネゴシエーションは、標準のPoEもしくはPoF、高電力、パルス電力、またはインターフェースモジュール16を介した電力供給が可能な他の電力モードなどの、異なる電力供給方式を区別し、それに対応する。例えば、標準のPoE分配を、定格が約100W未満のリモートネットワークデバイスに使用できる。高電力のリモート受電デバイスの場合、パルス電力または他の高電圧技術を使用して、効率的なエネルギー分配ネットワークを作成することができる。
【0047】
以下で詳細に説明するように、リモートネットワークデバイス14、15、17は、起動時に少量の電力を使用して、その電力要件およびデータ要件を中央ネットワークデバイス10に通信することができる。次に、受電デバイス14、15、17は、それに応じて全電力動作のために受電デバイス自体を構成することができる。一例では、電力タイプ、モジュールの安全動作、およびデータレートは、光ファイバ上のデータ通信信号を介して、中央ハブ(PSE)10とネットワークデバイス14、15、17との間でネゴシエーションされる。インターフェースモジュール16は、データの損失を含むあらゆる動作障害を通信する。このような障害の結果として、電力が直ちにオフになるか、または低電力(低電圧)モードに切り替わることがある。受電デバイスが、より高い電力が安全に適用され得る低電力モードで再び通信できるようになるまで、全電力供給が再確立されない場合がある。
【0048】
図1に示す上述のネットワークデバイスおよびトポロジは、単なる一例であり、本明細書に記載の実施形態は、実施形態の範囲から逸脱することなく、異なるネットワークトポロジまたはネットワークデバイスを含むネットワークに実装され得ることが理解されるべきである。ネットワーク(またはネットワークの1つ以上の部分)は、電力供給のみ、または電力および通信用に構成され得る。ネットワークは、ネットワークを介したデータの通過を容易にする任意の数またはタイプのネットワーク通信デバイス(例えば、ルータ、スイッチ、ゲートウェイ、コントローラ)、エンドポイントまたはホストとして動作するネットワーク要素(例えば、サーバ、仮想マシン、クライアント)、および任意の数のネットワークと通信している任意の数のネットワークサイトまたはドメインを含み得る。したがって、ネットワークノードは、クラウドコンピューティングまたはフォグコンピューティングを含み得る、大規模で複雑なネットワークを形成するために相互接続された任意の数のサーバ、仮想マシン、スイッチ、ルータ、または他のノードを含み得る、任意の適切なネットワークトポロジで使用され得る。ノードは、任意の適切な接続を採用する1つ以上のインターフェースを介して他のノードまたは他のネットワークに結合することができ、これは、電力とともに電子通信のための実行可能な経路を提供する。
【0049】
図2は、本明細書に記載する実施形態を実装するために使用され得る、ネットワークデバイス20(例えば、図1の中央ハブ(PSE)10、スイッチ(PD)14、アクセスポイント(PD)15)の例を示す。一実施形態では、ネットワークデバイス20は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装され得るプログラム可能なマシンである。ネットワークデバイス20は、1つ以上のプロセッサ22、センサ23(例えば、電力センサ(例えば、電圧、電流センサ)、通信センサ、熱センサ)、メモリ24、インターフェース26、光モジュール28(例えば、図1の電力+光学インターフェースモジュール16)、および電力モジュール/コントローラ29を含む。ネットワークデバイスはまた、システムが電力、データ、および冷却供給の組み合わせ用に構成されている場合、1つ以上の冷却構成要素21(センサ、制御弁、ポンプなど)も含み得る。
【0050】
メモリ24は、プロセッサ22によって実行および使用されるための様々なアプリケーション、オペレーティングシステム、モジュール、およびデータを格納する、揮発性メモリまたは不揮発性記憶装置であり得る。例えば、光モジュール28またはコントローラ29の構成要素(例えば、コード、ロジック、またはファームウェアなど)がメモリ24に格納され得る。ネットワークデバイス20は、任意の数のメモリ構成要素を含み得る。
【0051】
ネットワークデバイス20は、任意の数のプロセッサ22(例えば、シングルプロセッサまたはマルチプロセッサのコンピューティングデバイスまたはシステム)を含み得、プロセッサ22は、パケットまたはパケットヘッダを処理するように動作可能な転送エンジンまたはパケットフォワーダと通信することができる。プロセッサ22は、ソフトウェアアプリケーションまたはモジュールから命令を受信し得、命令は、プロセッサに本明細書に記載の1つ以上の実施形態の機能を実行させる。プロセッサ22はまた、障害検出、オートネゴシエーション、デジタルインターロック、同期、多相制御、パルス電力制御、低電圧、高電圧制御、変調器スイッチ制御などのために、電力制御モジュール29の1つ以上の構成要素を動作させることができる。
【0052】
コントローラ(電力モジュール/コントローラ)29は、オートネゴシエーション、障害検出、初期化、デジタルインターロック、同期、多相制御、パルス電力制御、または他の制御もしくは管理機能のために構成され得る。制御システム29は、中央ハブ10およびリモートデバイス14、15に配置され、かつ電力とデータ用の複合ケーブル18を介して相互接続された(図1および図2)、構成要素(モジュール、コード、ソフトウェア、ロジック)を含み得る。制御システム29はまた、図3に関して以下で説明するように、電力センサまたはデータ監視デバイスから入力を受信することもできる。PDの電力モジュール/コントローラ29は、PSE10の制御システムと通信して、動作を初期化すること、動作を同期させること(例えば、パルス波形、電流、電圧)、電力システムの状態をオートネゴシエーションすること、電源システム(例えば、ケーブルまたは受電デバイス)内のあらゆる障害を特定すること、電力動作モードを選択すること、またはそれらの任意の組み合わせを行い得る。前述のように、オートネゴシエーションは、低電圧起動中、またはパルス電力システムでのパルス間で実施され得る。1つ以上の制御システムまたは電力モジュール構成要素は、光モジュール28に配置され得る。
【0053】
ロジックは、プロセッサ22によって実行されるために、1つ以上の有形媒体にコード化され得る。例えば、プロセッサ22は、メモリ24などのコンピュータ可読媒体に格納されたコードを実行することができる。コンピュータ可読媒体は、例えば、電子媒体(例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読み出し専用メモリ)、EPROM(消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ))、磁気媒体、光媒体(例えば、CD、DVD)、電磁媒体、半導体技術の媒体、または他の任意の適切な媒体であってよい。一例では、コンピュータ可読媒体は、非一時的コンピュータ可読媒体を含む。ロジックを使用して、図4図5、および図7のフローチャートに関して以下に説明する1つ以上の機能を実施できる。
【0054】
インターフェース26は、データもしくは電力を受信するため、またはデータもしくは電力を他のデバイスに送信するための、任意の数のネットワークインターフェース(ラインカード、ポート、コネクタ)を含み得る。ネットワークインターフェースは、様々な異なる通信プロトコルを使用してデータを送信または受信するように構成され得、ネットワークインターフェースに結合された物理リンクを介してデータを通信するための、機械回路、電気回路、および信号回路を含み得る。例えば、ラインカードは、ポートプロセッサおよびポートプロセッサコントローラを含み得る。インターフェース26は、1つ以上の光インターフェースおよび電気インターフェースを含み得る。システムが冷却用に構成されている場合、インターフェース26はまた、流体ポートも含み得る。インターフェース26のうちの1つ以上は、PoE+F+C(パワーオーバーイーサネット+ファイバ+冷却)、PoE+F、PoE、PoF、高電圧パルス電力、多相パルス電力、または同様の動作のために構成され得る。
【0055】
光モジュール28は、拡張安全電力システムの監視または制御に使用するための、ロジック、ファームウェア、ソフトウェアなどを含み得る。例えば、光モジュール28は、電力検出、システム起動、同期、電力監視および制御、または電力の有効化/無効化に使用するための、ハードウェアまたはソフトウェアを備え得る。光モジュール28は、プロセッサもしくはメモリ構成要素のうちの1つ以上、または電力およびデータを受信または供給するためのインターフェース26をさらに備え得る。前述のように、1つ以上の実施形態では、電力は、電源27によって光モジュールに供給され、光モジュール28は、ネットワークデバイス20の残りの構成要素に電力を提供する。
【0056】
図2に示す上述のネットワークデバイス20は、単なる一例であり、ネットワークデバイスの異なる構成が使用されてもよいことが理解されるべきである。例えば、ネットワークデバイス20は、本明細書に記載の機能を容易にするように動作可能なハードウェア、ソフトウェア、アルゴリズム、プロセッサ、デバイス、構成要素、または要素の任意の適切な組み合わせをさらに含んでもよい。
【0057】
図3は、一実施形態による、ネットワークデバイス30での電力監視および電力制御、起動、同期、オートネゴシエーション、ならびに障害保護で使用するための構成要素を示すブロック図である。図3に示す構成要素のうちの1つ以上は、インターフェースモジュール16に配置されるか、またはインターフェースモジュールの1つ以上の構成要素と通信することができる(図1および図3)。高電力およびデータの両方を搬送するケーブル18が、図3のインターフェースモジュールに結合されたケーブルコネクタ36とともに示されている。電力は電気インターフェース37aで受信され、データは光インターフェース37bで送受信され、これらのインターフェースは両方とも光モジュール16に配置され得る。コネクタ36は、例えば、単一の物理的構成要素、または各機能のためのモジュール部品を備えた単一の構成要素を含み得る。
【0058】
ネットワークデバイス30は、光データを受信し、それを電気信号に変換する(または電気信号を光データに変換する)ための光/電気構成要素31と、電力検出モジュール32a、32b、電力監視および制御モジュール33、ならびに電力有効化/無効化モジュール34を含む電力構成要素とを含む。PoEおよびパルス電力は、検出要素32a、32bと併せて説明されているが、AC、DC、およびUSBを含む他の電力供給方式が同様の要素でサポートされ得ることが理解されるべきである。また、電力のタイプは、高電圧電力と低電圧電力に分けられ得る。電力構成要素は、光構成要素の動作への干渉を防ぐために、電源回路を光構成要素から電磁的に絶縁する絶縁構成要素(例えば、絶縁材料または要素)を介して、光構成要素31から絶縁され得る。ネットワークデバイス30は、パルス電力検出モジュール32aおよびPoE検出モジュール32bとともに動作する、自動検出モジュール35を含み得る。モジュール35はまた、ネットワークデバイスの動作に基づきどの供給モードがより効率的であるかに基づいて、電力供給モード(例えば、PoEまたはパルス電力)を選択するように動作することができる。検出要素32a、32b、自動検出モジュール35、電力監視および制御モジュール33、またはオートネゴシエーションモジュール39のうちの1つ以上の機能は、電力モジュールに組み合わされ、インターフェースモジュール内で動作することができる。
【0059】
オートネゴシエーション/デジタルインターロックモジュール39は、1つ以上の障害検出プロセス、オートネゴシエーションプロセス、またはデジタルインターロックプロセスを実施する際に使用され得る。以下で詳細に説明するように、オートネゴシエーションは、PSEとPDとの間の通信、および中央ネットワークデバイスのコントローラとリモートネットワークデバイスのコントローラとの間の相互作用を含むことができる。図10A図13Bに関して以下で説明するように、システムの初期化または試験中に1つ以上の回路を絶縁し、かつパルス電力を変調するために、ゲート制御/変調器40が提供され得る。ネットワークデバイス30は、以下で説明するように、デバイスの起動および試験中に使用されるブートストラップ/ハウスキーピング回路38をさらに含んでもよい。ネットワークデバイス、ケーブル、または電源回路の動作状態(例えば、障害/障害なし)を提供するために、1つ以上の制御信号または監視情報が、データライン(例えば、光ファイバ)、または電力とデータ用ハイブリッドケーブル18の電力ラインを介して送信され得る。
【0060】
図3に示す例では、各モジュール32a、32bは、それ自体の電力監視および制御モジュール33、ならびに電力有効化/無効化モジュール34と通信している。回路は、ネットワークデバイス30に適用される電力のタイプを検出し、PoEまたはパルス電力がより効率的な電力供給方法であるかどうかを判断し、次いで、選択された電力供給モードを使用する。1つ以上の実施形態では、PoEまたは高電圧パルス電力は、同じケーブル18を介して伝送することができる。
【0061】
ネットワークデバイス30は、利用可能な電力を計算し、電力が供給されるべきでないときにケーブルシステムが通電されるのを防ぐように構成されている。電力監視および制御モジュール33は、電力供給を継続的に監視して、システムが必要な電力供給をサポートでき、安全制限(例えば、電圧、電流)を超えないことを確実にする。電力監視および制御モジュール33はまた、光信号を監視し、光遷移または電源との通信がない場合に、電力を無効化することもできる。電力監視および制御機能は、電圧および電流の流れを感知し、これらの読み取り値を中央制御機能に報告することができる。一実施形態では、ネットワークデバイス30は、起動時または再起動時に少量の低電圧電力(例えば、12V以下、24V以下、60V以下)を使用して、その電力およびデータ要件および状態を通信する。次いで、ネットワークデバイス30は、障害が検出されないか、または安全状態が検出される場合、全電力動作(例えば、60V超、300V以上、500V以上、1000V以上)(例えば、高電力有効化/無効化モジュール34)用に構成され得る。障害が検出された場合、ネットワークデバイスが、高電力を安全に適用できる低電力モードで通信するようになるまで、全電力動作は確立されない場合がある。オートネゴシエーションモジュール39は、中央ネットワークデバイスの制御システムと通信して、安全な動作モードを選択し(例えば、高電圧電力を印加することが安全であると判断し)、回路の障害を特定し(例えば、ライン間またはライン-接地間の障害検出)、かつ起動時または通常の動作中の高電圧パルス電力間の試験中に障害が特定された場合は電力をシャットダウンする。以下で説明するように、電力は通信の有無にかかわらず供給され得る。
【0062】
図3に示すシステムは単なる一例であり、実施形態の範囲から逸脱することなく、構成要素が追加、削除、結合、または再配置され得ることが理解されるべきである。例えば、前述のように、ネットワークデバイスはまた、光インターフェース37bおよび光構成要素31なしで構成されてもよい。
【0063】
以下で説明するように、初期化プロセスは、低電圧(図4)または高電圧(図5)で実施され得る。高電圧初期化プロセスは、例えば、新しいPDの追加もしくはホットスワップPDの交換または電力初期化プロセスの簡素化のために使用され得るが、低電圧安全性初期化の代わりに高電圧安全性の別の層を提供する。図7は、起動時または他の任意の時点で、追加のケーブル長が追加されたかどうかを確認するために実施され得る、ケーブル静電容量と衝撃障害試験を示す。1つ以上の実施形態による、ケーブル静電容量および衝撃障害試験(図9Aおよび図9C)、初期電源投入後の同期(図10A)、初期低電圧起動(図11A図11C図12A図12B、および図12C)、および初期の高電圧起動(図13A)の簡略化されたブロック図および回路が示されている。図4図14に示す本明細書に記載のプロセスおよび回路は、簡略化のために1つの相について示されており、これらのプロセスおよび回路は、図20図22関して以下で説明するように、多相システムの相ごとに複製され得ることが理解されるべきである。
【0064】
以下で詳細に説明するように、PDの初期化には、送受信機、PD変調器ゲート、およびマイクロコントローラ/DSPへの電力供給のためにPD変調器スイッチをオフにした、初期PDハウスキーピング電圧の電源投入が含まれ得る。PDハウスキーピング電圧は、電力変換器の負荷動作をケーブル電圧波形と同期させることにより、PSE変調器のオンタイム中に発生することがある。前述のように、初期化は、低電圧初期化または高電圧初期化を含み得る。1つの低電圧初期化の例では、高電圧(例えば、380VDC)に切り替える前に、低電圧(例えば、24VDC)が印加され得る。これは、DCハウスキーピングコンデンサに完全に電源投入して起動時間を短縮してから、高電圧パルス中にのみ電力を引き出すための長い初期オン時間期間を含み得る。高電圧初期化では、短時間の高電圧パルスを使用して、初期化中に高電圧保護を追加することができる。別の高電圧初期化の例では、ケーブル静電容量試験を含む安全性試験の必要に応じて、公称時間(通常の動作パルス幅)動作の高電圧パルスおよびデューティ/周波数が使用され得る。この高電圧初期化プロセスは、例えば、PDホットスワップの交換、または高電圧パルス(ケーブルの高電圧パルス電力)を備えたケーブルへの新しいPDの追加のために使用することができる。
【0065】
1つ以上の実施形態では、PSEでの低電圧初期化は、低電圧パルス電力をPSEからPDに伝送することと、安全性試験(例えば、安全ボディ衝撃保護試験、ケーブル静電容量試験)を実施することと、安全試験に合格すると、電源機器での高電圧パルス電力動作を有効化することと、を含む。低電圧初期化中、PDは低電圧パルス電力の波形と同期する。例えば、PDの変調器スイッチは、PSEの変調器スイッチと同期し得る。本明細書で使用する場合、「変調器スイッチ」という用語は、1つ以上の変調器スイッチ(例えば、共通制御を備えた1つ以上のスイッチ)、電力変調器、パルス変調器、パルス電力変調器、制御スイッチ、ゲート制御、絶縁スイッチ、または本明細書に記載の機能を実施するように動作可能な、同様の構成要素もしくは構成要素のグループを指し得る。同期は、高電圧パルス電力の動作中に継続し得る。
【0066】
1つ以上の実施形態では、PDでの低電圧初期化は、PDでPSEから低電圧パルス電力を受信することと、受電デバイスを、電源機器から受信した低電圧パルス電力の波形と同期させることと、PDを電源機器から受信した高電圧パルス電力で動作させることと、を含む。PDでの初期化中、PDでハウスキーピング回路に通電しているときに変調器スイッチは開いていることがある。次いで、PSEによって静電容量と安全性試験が実施されている間、変調器スイッチをオンにすることができる。
【0067】
本明細書で使用する場合、「同期する」という用語は、例えば、電圧波形を用いたPSEおよびPD変調器スイッチドライブまたは変調器スイッチのうちの1つの調整を介した、PSEおよびPDでのパルスの調整を指すことが理解されるべきである。同期は、PSEおよびPDでパルス(変調器スイッチ)を整列させるために使用され、これによりPSEとPDとの間のパルス幅(変調器スイッチング)に差が生じることがある。例えば、図23および図24に関して以下で説明するように、同期により、PSEでのパルス幅よりもPDでのパルス幅が小さくなる場合がある。以下に説明するように、PSEとPDとの間のオフ/オン同期は、初期化中に実施され、例えば、PSE安全性試験またはネットワーク内の変更(例えば、ケーブルの変更、新しいネットワークデバイスの追加)に基づいて更新され得る。
【0068】
図4は、一実施形態による、低電圧初期化プロセスの概要を示す。ステップ41で、PSE(例えば、図1のPSE10)がオンになる。一例では、PSU11は、ダイオードを介してPSE変調器スイッチ入力に24VDCを提供する(図11Aに示す)。低電圧がPSE変調器スイッチ入力に提供され、変調器スイッチは、起動デューティサイクルでスイッチングを開始し、それにより低電圧パルス電力(低電圧パルス)をPDに送信する(ステップ42)。一例では、デューティサイクルは、12msの周期(66.7%のデューティサイクル)にわたり、8ms(ミリ秒)オン、4msオフで構成される。ステップ43でPDが起動する。図11Aに関して以下で説明するように、PDは12/3.3Vのハウスキーピングおよびフローティングゲート電圧を使用できる。PD変調器スイッチは、PDで受信したPSE電圧波形に基づいてPSE変調器スイッチと同期する(ステップ45)。これにより、PDとPSEは、高電圧パルス電力が有効になる前に、変調器スイッチのタイミングについて合意することができる。PD送受信機およびDSP(デジタルシグナルプロセッサ)(図8(85b、86b)に示す)(またはMCU(マイクロコントローラ))が動作を開始し、PDがPLL(フェーズロックループ)またはDLL(デジタルロックループ、遅延ロックループ)を開始して、PD変調器スイッチのオン/オフをPSE電圧波形と同期させる。同期の詳細は、図10Aおよび図10Bに関して以下で説明する。一例では、PDおよびPSEは、PD変調器スイッチがオンになると通信を開始し(ステップ44)、(ステップ43の後、PDがPLLを開始し、ステップ45で変調器を同期させる前に)変調を伴うオフ/オンになるまで通信する。別の例では、PDおよびPSE送受信機は、PD/PSE変調器のオン時間中(PDがPLLを開始し、ステップ45で変調器を同期した後)に通信を開始する(ステップ44)。変調器スイッチがオンであるということは、スイッチが閉じている(スイッチを介して電流が伝送される)ことを指し、変調器スイッチがオフであるということは、スイッチが開いている(スイッチを介して電流が伝送されない)ことを指すことが理解されるべきである。
【0069】
通信が利用可能な場合、PDおよびPSEは、任意選択で変調器スイッチのタイミングをオートネゴシエーション(変調器スイッチを同期)することができる(ステップ46)。PSEは、静電容量試験(ステップ47a)および安全性試験(ステップ47b)を実施する。静電容量試験(ステップ47a)および安全性試験(ステップ47b)は、総称して「安全性試験」と呼ばれ得ることが理解されるべきである。静電容量試験の結果は、安全性試験の校正およびタイミングのために、PSEおよびPDの変調器パルスタイミングを調整するために使用され得る。例えば、静電容量試験の結果を使用して、最小オフ時間と高電圧暴露時間とを特定し、高電圧暴露時間を調整し、図7に関して以下で説明するように、安全性障害感知レベルを設定することができる。PSEは、この試験中に伝送ラインパラメータ(例えば、静電容量)も収集し得る。一例では、PSEは、ケーブル漏れ試験を実行して、ケーブル漏れが特定の抵抗値(例えば、100kohm)よりも大きいかどうかを確認する。通信が利用不可能な場合、静的タイミングパラメータが使用され得る。ケーブル静電容量および衝撃障害試験の追加の詳細は、図7のフローチャートならびに図9Aおよび図9Cの回路に関して、以下で説明する。PSE安全性試験に不合格の場合、自動再起動を、設定された回数(例えば、2回)試行することができる(ステップ42~47b)。安全性試験に合格の場合、PSEは、高電圧動作を有効化する(ステップ48)(例えば、300VDC以上)。低電圧起動無負荷レベル(例えば、約360VDC)を超えるPD入力電圧により、DC/DC負荷がオンになる。次いで、PSEおよびPDは、電圧および負荷電流の同期について合意し得、高電圧パルス電力動作は、PSEが高電圧パルス電力をPDに伝送することを継続する(ステップ49)。追加の同期の詳細については、図10Aに示す回路に関して以下で説明する。
【0070】
図5は、一実施形態による、高電圧初期化プロセスの概要である。前述のように、高電圧初期化を使用して、例えば、上述の低電圧初期化手順を使用することなく、新たなPDの追加またはホットスワップ(ホットプラグイン)PD交換が行われ得る。また、高電圧初期化を使用して、低電圧初期化の代わりに高電圧安全性の別の層を提供しながら、電力初期化起動プロセスを簡素化し、コストおよび複雑さを軽減することもできる。1つ以上の実施形態では、初期化フェーズ(LVまたはHV)中に補助電力をPSEに提供して、PSE変調器スイッチの制御および同期、ならびにスイッチをオンにする必要がある通信を確立することができる。以下で説明するように、ケーブル静電容量および衝撃障害試験の後に、変調器スイッチの動作および通信(使用される場合)を確立するシーケンスが続き、次いで、高電力高電圧パルス幅の変調器スイッチが同期され得る。
【0071】
1つ以上の実施形態では、受電デバイスは、受電デバイスの変調器スイッチが開いた状態で電源機器から高電圧パルス電力を受信し、高電圧パルス電力のパルスがオンのときに受電デバイスで絶縁されたハウスキーピング電圧を結合し、受電デバイスでハウスキーピング回路を通電し、特定の数の高電圧パルスが受信された後、受電デバイスの変調器スイッチをオンにして、高電圧パルス電力を受電デバイスに供給する。
【0072】
ここで図5を参照して、PD負荷への高電圧オンパルス中に通信リンクを確立するための、初期PDハウスキーピング電圧および第1のPD変調器スイッチ操作について説明する。ステップ50で、PSEは、PD変調器スイッチが開いた状態で、高電圧パルス電力をPDに伝送する。1つ以上の実施形態では、初期PSE高電圧変調器は、PDハウスキーピング電圧がなく、かつPD変調器スイッチが開いている状態の安全性レベルを向上させるために、安全領域のより安全な部分(図6に関して以下に説明する)内に短いオンパルス(すなわち、通常の動作中に使用されるよりも短いパルス)を提供することができる。例えば、変調器スイッチが開いた状態でPDで受信される高電圧電力は、短いパルスオン時間(パルス幅)を含み得、変調器スイッチがオンになると、受信される高電圧パルス電力は、通常動作パルスオン時間(公称幅パルス)を含む。オートネゴシエーション中に高電圧パルスがオンになると、ケーブル電圧の充電に影響を与えることなく、絶縁されたハウスキーピング電圧がPD側に結合される(ステップ51)。PSEは、いくつかの高電圧パルスがPD変調器スイッチを自動的にオンにするのを待つことができる(ステップ52)。PSEは、PD変調器スイッチがオンになっているかどうかを確認する(ステップ53)。一例では、PSEは、通信リンクを介した高電圧オンパルス負荷期間の終了時にオフになるように指示されるまで、約40ミリ秒にわたって3つの高電圧パルスがPD変調器スイッチを自動的にオンにするのを待つ。PD変調器スイッチがオンになると、通常の動作を続行する(ステップ54)。オンでない場合、再起動が試行されるまで電力はシャットダウンする(ステップ55)。
【0073】
図6は、電流の持続時間(ミリ秒)対ボディ電流(mA)を示すグラフ60である。グラフは安全領域を示しており、安全領域では通常、人間による知覚や痛みはほとんどなく危険な影響はない。危険領域では、筋肉収縮や呼吸障害などの可逆的な影響、または人間への重大な影響があり得る。グラフ60に示すように、高電圧初期化のパルス制限および最大暴露時間は、安全領域内で維持される。1つ以上の実施形態では、PD負荷要件を必要としない高電圧初期化起動期間中、負荷電力要件に影響を与えることなく、より短い高電圧パルスが可能である。例に示されているように、高電圧暴露期間の高電圧オン時間がより短くかつオフ時間検出時間がより短く、かつ衝撃エネルギーが少ないため、より高いレベルの衝撃保護の追加が可能である。
【0074】
図4に関して前述したように、PSEで高電圧パルス電力動作を有効にする前に、1つ以上の安全性試験が実施され得る。試験には、ケーブル静電容量試験を伴う安全ボディ衝撃保護試験、および試験に基づく校正調整が含まれ得る。一例では、後述のように、PSEの安全性試験/静電容量試験および分析を使用して、次の高電圧パルスのオートネゴシエーションのためのパルス間のデューティ/周期内の最短の高電圧暴露を、ほぼ線形のdv/dt領域でRC時間の最初の10%(または他の適切なパーセンテージ)における特定の時間での既知の放電抵抗器のスイッチングによるケーブル電圧垂下の校正分析から得られた、安全ボディ電流の正確な静電容量試験および正確なケーブル電圧垂下閾値を用いて決定することができる。ケーブル静電容量をより速く正確に計算するために、1つもしくは2つの既知の抵抗を既知の時間、切り替えることができる。以下で説明する静電容量試験は、安全性試験レベルおよび時間について、初期化時またはパルスごとにのみ実施され得、これは、ケーブル静電容量の変化を実行中に識別する能力を追加し、かつより容易な同期およびタイミング分析のための大きなケーブル電圧dv/dt垂下レベルを提供する。
【0075】
図7は、PSEとPDとの間に介在するケーブルの静電容量試験のプロセスの概要である。ステップ70で、既知の高電圧パルスが、オープンかつ無負荷のケーブル上でPSE変調器スイッチから伝送される。1つ以上の実施形態では、ケーブル静電容量電圧は、既知の放電抵抗負荷(例えば、100kohmまたは他の適切な抵抗値)および放電のためのRC時間(抵抗/静電容量回路の時定数)で変調されて、垂下の最初の10%での電圧放電の時間を測定する(ステップ71)。これは、図9Bに関して以下で説明するように、最初の0.1RC時間間隔でのAt=RCのほぼ線形の関係である。この例では、380VDCの高電圧レベルで3.8mAの最大ボディ電流保護のボディ衝撃保護の障害として使用される最大ボディ抵抗として、最大抵抗値100Kohmが選択されている。この例ではまた、高電圧パルスおよび負荷電流がオフになった後のノイズのないクリーンな感知レベルのために、10%の垂下電圧レベルも選択されている。高静電容量の長いケーブルを用いると、感知時間が最も長くなって、感知のオフ時間はより長く、かつ所定のデューティサイクル内の電力の高電圧のオン時間はより長くなる。この例では、最大ケーブル長は300nFの静電容量を有することができ、したがって、100Kohmの試験抵抗を使用するとRC時間の10%までの時間はSミリ秒になるため、最大オフ時間として、および67%のデューティサイクルのSミリ秒の高電圧オン時間での感知マージンとして、4ミリ秒を使用することができる。次いで、この例では、最悪の場合、高電圧電力または別の高電圧パルスをラッチオフするためのボディ障害を検出するための高電圧暴露時間は、11~12ミリ秒である。より低いボディ抵抗条件では、電流はより高くなることがあり、最大暴露時間は同じであることがある。この理由により、10%の垂下に対してより短いオフ時間が選択され、より小さい静電容量およびより短いケーブル長により、より短いオフ時間と総暴露期間が得られる。他の方法を使用して、10%よりも緩やかな垂下電圧(例えば、1~2%)を正確かつ確実に測定し、オフ時間および総暴露期間を大幅に短縮することができる。この値が、100kohmの負荷がない場合のdv/dtと比較され、ケーブル全体にわたる追加の抵抗が決定され、障害があるかどうかが識別される(ステップ72)。一例では、100kohm超は試験に合格であり、100kohm未満は障害があることを意味する。
【0076】
障害が識別されると、リセットされるまで障害モードに入る(ステップ74)。試験に合格すると、ケーブル静電容量が計算され、100kohmの負荷電圧閾値が、障害dv/dtに設定されて、オートネゴシエーション高電圧パルスオフ時間中の追加の障害が抑制される(ステップ75)。最大高電圧パルスオフ時間が、100kohm障害dv/dt電圧閾値に対して決定される(ステップ76)。この値は、好ましくはマージン(例えば、dv/dt=10%の障害閾値に加えてさらに5%のマージン)を含む。望ましい電力、ケーブル損失、およびRMS(二乗平均平方根)電流のオン時間に対する望ましいデューティサイクルが決定される(ステップ77)。
【0077】
上述のプロセスは、初期化(低電圧または高電圧の起動)でのみ実施することもでき、一定の間隔またはパルスごとに繰り返して、追加のケーブル長が追加されているかどうかを識別することもできる。ケーブル静電容量および衝撃障害試験は、以下で説明する多相システムの各相に対して実施され得る。上述の抵抗値、マージン、および放電時間は単なる例であり、実施形態の範囲から逸脱することなく他の値を使用できることが理解されるべきである。静電容量試験の追加の詳細は、図9A図9Dに関して以下で説明する。
【0078】
図4図5、および図7に示すプロセスは単なる例であり、実施形態の範囲から逸脱することなく、1つ以上のステップを追加、削除、結合、または並べ替えることができることが理解されるべきである。
【0079】
ここで図8を参照すると、拡張安全電力システムの簡略化されたブロック図が示されている。ブロック図には、電源およびスマート制御を提供する電源機器81用の回路と、PON(受動光ネットワーク)エンドポイントを含む受電デバイス82用の回路が含まれる。ブロック83内に示される構成要素は、単相を表し、以下で説明するように、多相システムの相ごとに複製され得る。変調器スイッチ84b、84c、84d、感知構成要素89a、89b、および起動電源回路87bは、ケーブルペア/相ごとに複製することができる。
【0080】
PSE81は、絶縁された高電圧源(例えば、380VDC)と、ゲートを備えた変調器スイッチ84aとを含む。DSP(デジタル信号プロセッサ)85a、85bは、マイクロコントローラまたはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)デジタル制御と、ソフトウェア/ファームウェアとを含み得る。PSEおよびPDのTx/Rx86a、86bは、カップリングネットワークを備えた送受信機を表す。PSEハウスキーピング用に絶縁型電源87aが提供されている。絶縁型電源87bは、低電圧初期化および試験用の24VDC入力例を備えたPDハウスキーピング用に提供されている。PD82はまた、PD(高電圧パルス電力動作)例の出力からの60~380VDC入力で12V/3.3Vハウスキーピング電圧を生成するための、DC/DC絶縁変換器87cを含む。この例では、電流感知変圧器/ホール効果センサ(CS/CT)88a、88bがPSEおよびPDに含まれている。安全性感知回路(Vsense安全性)89aおよびPD同期電圧センサ(Vsense同期)89bは、それぞれPSEおよびPDに配置されている。図8に示すように、PSEには2つのPSE変調器スイッチ84b、84cが含まれ、PDには双方向スイッチとして示されている1つのPD変調器スイッチ84dが含まれて、高電圧パルス間のオートネゴシエーション安全性試験中のケーブル全体にわたるボディ抵抗のRC時間に比例する、正確な電圧垂下感知のための高電圧パルスオフ時間中にケーブルペアを完全に絶縁する。スイッチは、例えば、前述のように、PSEとPDとの間で同期されるパルス電力変調を提供するためのソリッドステートスイッチまたは他の任意の適切なデバイスを含んでよい。
【0081】
図8に示す回路の一部分の動作の追加の詳細については、ケーブル静電容量試験(図9Aおよび図9C)、同期(図10A)、低電圧初期化(図11Aおよび図11C)、低電圧ハウスキーピング(図12A図12B、および図12C)、ならびに高電圧初期化(図13A)に関して以下で説明する。
【0082】
図9Aは、(図7のフローチャートに関して上述した)ケーブル静電容量および衝撃障害試験で使用するための回路90の簡略化された表現である。この例では、PSEには、抵抗R1a、R1b、R2a、R2b、およびR3が含まれている。R3は、dv/dt電圧垂下からケーブル抵抗および静電容量を正確に計算するために、既知の時間にケーブル全体にわたって切り替えられる既知の校正抵抗である。PDには、コンデンサCf、インダクタLF1およびLF2、ならびにダイオードDが含まれる。スイッチS1a、S1b(PSE変調器スイッチ)およびスイッチS2(試験スイッチ)はPSEに配置されている。PDには、スイッチS3(PD変調器スイッチ)が含まれる。静電容量Ccableはケーブル静電容量を表し、インダクタンスLcableはケーブルインダクタンスを表し、抵抗Rcableはケーブル抵抗を表す。図9Aに示す簡略化された回路は単なる一例であり、実施形態の範囲から逸脱することなく、構成要素が追加、削除、または再配置され得ることが理解されるべきである。例えば、抵抗R1aおよびR1bは、(図9Aで見られるように)スイッチS1aおよびS1bの右側に配置されてもよい。
【0083】
図9Bは、第1の実施形態による、図9Aに示される回路における、ケーブル電流i(t)および電圧v(t)のPSE試験スイッチS2での1パルス、ならびにPSE試験スイッチS2 i2(t)およびPDスイッチS3 is3(t)での電流の経時的なタイミング波形を示し、PSEスイッチS1(図9AのS1aおよびS1b、図9BのS1として示される)、試験スイッチS2(図9BのS)およびPDスイッチS3(図9BのS3)の状態の変化を伴う。波形図には、VinおよびIc_peakも示されている。前述のように、ケーブル静電容量を決定するために既知の抵抗R3が切り替えられる。PSE変調器スイッチS1が開いた後、ケーブルの電圧はdv/dt(b-c)で表されるように低下し始め、これは、障害ボディ抵抗(Runknown)の漏れによるケーブル垂下を表す。スイッチS2が閉じると、dvc/dt(b-c)によって示されるように電圧は低下し続け、これは、R3に加えてケーブルの漏れまたはボディ抵抗(Runknown)によるケーブル垂下を表す。次にスイッチS2が開き、ケーブル電圧の変化は、漏れまたは障害ボディ抵抗によるケーブルの垂下を表す(Runknown)。
【0084】
スマートデジタルシステムを使用して、精度と信頼性を高め、オフ時間を最小限に抑えることができる。図7に関して前述したように、PSE変調器は、開いた/無負荷のケーブルでパルスを伝送するためにオンに切り替えることができ、ケーブル静電容量電圧は、安全性衝撃保護のために最大ボディ抵抗の既知の試験抵抗器で変調できる。次に、ケーブルの抵抗および静電容量が10%のRC時定数内で試験され得、これは、初期電圧Voからの放電電圧dvcおよび実際の時定数Tがe(-t/RC)からのものである、最初の0.1RC時間にほぼ線形の関係
【数1】

にある。次に、未知の漏れ抵抗を有するdv/dtが、既知の試験抵抗が追加されたdv/dtと比較され得る。
【0085】
図9Cおよび図9Dは、初期のケーブル安全性および静電容量の試験を実施する際に使用する別の例を示す。図9Cは、概して91で示される、回路のブロック図である。PSEには、変調器スイッチS1a、S1b(図9Dでは総称してS1と呼ぶ)、ならびに試験スイッチS2(図9DのS2)および並列のS図9DのS)が含まれる。PDには、スイッチS3(図9DのS3)が含まれる。図9Cに関して上述したのと同様に、図9Dは、ケーブル電流i(t)および電圧v(t)、ならびに図9Bに示す回路のPSEスイッチS1、試験スイッチS2およびS4、ならびにPDスイッチS3の状態の変化に伴う、経時的なPDスイッチS3での電流is3(t)のタイミング波形図を示す。また、試験スイッチの電流iS2(t)およびiS2(t)+is4(t)も示されている。この例では、2つの既知のスイッチ抵抗(R2、R4)が、より高速で、より正確な測定のために、信号対ノイズ比の測定により大きなdv/dt電圧ステップを備えた別の校正済みの方法を提供し、より高いレベルの安全性のために、オフ時間のデューティサイクルおよび高電圧の衝撃暴露期間の短縮を可能にする。2つの既知の抵抗ステップを用いて、dv/dtの差を使用して、未知の抵抗およびパルス間のケーブル静電容量を計算できる。S2およびS4ゲートは、高電圧オフ時間イベントの検出を高速化するために初期dv/dt勾配を高速化するために、後ではなく、最初に一緒に動作し得る。
【0086】
図9Aおよび図9Cに示される回路、図9Bおよび図9Dに示される波形図、ならびに上述の試験計算は単なる例であり、他の回路(例えば、スイッチ、抵抗器などの組み合わせ)を使用してケーブルの安全性および静電容量が試験され得ることが理解されるべきである。
【0087】
図4のステップ45および46に関して前述したように、PDは、ケーブル電圧波形の初期化を使用してPSEとの同期を実施する。このプロセスは、オフ/オン同期を制御するための通信のためにPD変調器スイッチがオンになることから開始することができる。次に、PDは、オフ/オン同期を制御するために、PD変調器スイッチのPLL(またはDLL)制御を発生させることができる。PDは、PSE変調器のデフォルトのオン時間内のデフォルト期間の間、PD変調器スイッチを最初にオンにすることができる。変調器スイッチのタイミングは、PSEの安全性/静電容量試験および分析に基づいて行われた変更に従って修正することができる。1つ以上の実施形態では、同期は、図23および図24に関して以下で説明するように、高電圧オフ期間中のケーブル電圧垂下安全性試験でのケーブル電圧リンギングを最小限に抑えるために、PSE変調器高電圧スイッチオン後の時間遅延PD変調器スイッチオン負荷、およびPSE変調器高電圧スイッチオフ前のPD変調器スイッチオフ不負荷 を含み得る。
【0088】
図10Aは、最初の電源投入後に使用するための簡略化された同期制御回路100を示す。高電圧制御が、ゲート制御101および高電圧スイッチ102で提供される。PSE変調器スイッチ(スイッチ1およびスイッチ2)103は、PSEゲート制御104に結合されている。図8に関して前述したように、PDは、PDゲート制御107およびVsense同期106に結合されたPD変調器スイッチ109を含む。PDエンドポイントの負荷は108で示されている。図4のフローチャートに関して前述したように、PD変調器の制御は、最初の電源投入後のパルス-パルスオフ/オンコマンド通信で実施され得(ステップ44→45)、またはPD変調器制御は、通信なしでPLL同期を用いて実行され得(ステップ45→44)、またはPD変調器制御は、通信なしでPDEとPDとの間で既知のデフォルトのタイミングで実施され得る(ステップ45→44)。同期方法の3つの異なる例を、図10Aに示す回路に関して以下で説明する。
【0089】
図10Bは、Vccableを、スイッチ遷移(PSEゲート(スイッチ103)、PDゲート(スイッチ109))およびPLL同期(Vsensne同期106)とともに示している。図10Aに示すように、電圧VCcableはケーブルで測定される。PLL(またはDLL)同期は、Vsense同期回路106での電流を示す。
【0090】
第1の例では、PD変調器制御は、最初の電源投入後にパルス-パルスオフ/オンコマンド通信を用いて提供される。PSE変調器制御104は、パルスなしで低電圧(例えば、24V)でオンになる。PD変調器制御107は、ハウスキーピング電力以外の負荷なしでオフになるように指示されるまで、オンである。次いで、PSEとPDとの間に通信リンクが確立される。PSE変調器103は、確立されたオン時間およびオフ時間のデューティサイクルおよび周波数でパルスを開始する。PSEは、変調器オン時間のデータストリーム期間の終了時にコマンドを送信して、PD変調器をXミリ秒オフにしてから、再びオンにする。Off-timeコマンドが、データストリームの早い段階で送信され、パルスごとに変更され、その後、最後に送信されるワードは、特定の時間のturn-off-nowコマンドであり得る(いくらかのターンオフ遅延があることを認識している)。
【0091】
第2の同期方法は、通信なしでPD変調器制御およびPDD同期を提供する。Vsense同期回路106は、ケーブル抵抗(すなわち、中間点接地抵抗および感知回路)によってPSEゲートスイッチ102がオフのときに、ケーブル静電容量(Ccable)電圧波形垂下(VCcable)を感知する。Vsense回路106は、PSEゲートのスイッチがオンの状態で垂下した後、VCcableの正の遷移からパルスを発生させる(図10B)。VsenseパルスはPLLに入力され、電圧制御発振器(VCO)同期パルスを発生させる。PLL VCOパルスは、PDゲート変調器制御用のパルス整形を発生させ、これは、所望に応じてPSEゲートスイッチ制御104と同期する。PSEゲートスイッチがオフの場合の電圧波形垂下(VCcable)を図10Bに示す。前述のように、VCcableは、垂下後にPSEゲート104のスイッチがオンになると、正に遷移する。
【0092】
第3の同期方法は、PSEとPD変調器との間に、事前に確立されたデフォルトのオン時間を提供する。1つ以上の実施形態は、ワンショット単安定マルチバイブレータ(MV)のデフォルトのパルス幅およびデフォルトの遅延時間を利用して、PSE変調器パルスオン時間の開始時にケーブルコンデンサ電圧波形の急上昇dv/dtからトリガされるPSEデフォルト変調器オン時間と同期する。この回路は、例えば、微分器回路、バイアス平均トリガ閾値回路、およびオペアンプを含み得る。回路は、調整可能な遅延オン105a(例えば、デフォルトで100μs)および調整可能なワンショットマルチバイブレータ105b(例えば、デフォルトで7.8ns)をさらに含むことができる。この例では、PD変調器制御には、通信中の次のパルスのオン時間コマンドが更新されるまでパルス-パルスのデフォルトのオン時間が提供される。PSE変調器は、最初に、デフォルトのオン時間デューティサイクル(例えば、8ミリ秒)および周期(例えば、12ミリ秒)をパルスして、電圧波形垂下(Vccable)を伴う位相/ペアをPD Vsense同期回路106にケーブル接続する。Vsense同期回路106は、デフォルトのオン時間デューティサイクルを備えたPD変調器スイッチ制御に望ましい遅延パルス幅で、Vccableの正の遷移をトリガする。オン時間デューティサイクル中、データ通信は、必要に応じて同期遅延時間、パルス幅、および周期を更新もしくは修正して、次のパルス周期ごとにPD変調器のオン時間デューティサイクルと同期することができる。その後、上記のステップが繰り返され得る。これにより、オン/オフ時間、デューティサイクル、およびPSEからの周波数の実行中の同期変更にパルス-パルス変更が提供され、相/ペアごとにPDの同期が維持される。このシーケンスはまた、PD変調器スイッチがオンになる前にPSE変調器電圧がオンファーストになり、次いでノイズ過渡軽減のためPSE変調器電圧スイッチがオフになる前にオフファーストになることを確実にする。
【0093】
図11Aは、簡略化されたPD初期低電圧起動回路110を示すブロック図である。図4のフローチャートに関して上述したように、PDハウスキーピング電力のための低電圧(例えば、24V)起動シーケンスは、PD変調器制御または通信の前に実施され得る。図10Aに関して前述したように、高電圧制御は、ゲート制御111および高電圧スイッチ112で提供される。PSE変調器スイッチ(スイッチ1およびスイッチ2)113は、PSEゲート制御114に結合されている。PDは、PDゲート制御117およびVsense同期116に結合されたPD変調器スイッチ113を含む。PDエンドポイント負荷は118で示されている。図11Aに示す回路には、DC/DCハウスキーピング回路120(例えば、24V~12/3.3V変圧器)(ローカルエネルギー貯蔵とも呼ばれる)が含まれている。PSE変調器スイッチ119は、ケーブルおよびPD DC/DCハウスキーピング回路120への初期起動電力のために、一定時間(例えば、100ミリ秒)、低電圧(例えば、24V)オン時間を提供することができる。PD DC/DCハウスキーピング回路120は、起動し、PSE変調器スイッチ113の一定時間、動作する。次いで、PSE変調器113は、確立されたオン時間およびオフ時間のデューティサイクルならびに周波数で、低電圧のパルスを開始する(図11BのPSEゲート電流に示すように)。
【0094】
Vsense回路116は、PSEゲートがスイッチオンになることによる電圧垂下の後にVCcableの正の遷移から有効化パルス幅を発生させて、ハウスキーピング電力の継続のためにDC/DCハウスキーピング変換器120を動作させる(図11Aおよび図11B)。24V DC/DC変換器は、PD回路にハウスキーピング電力を提供し、PD変調器スイッチ119および通信を開始してから、次いでケーブルへの380VDC高電圧変調器の切り替えを可能にする。OVP(過電圧保護)回路は、高電圧がオンになると、約27VDCを超えるDC/DC変換器を無効にする。PDは、ハウスキーピング用の380V高電圧DC/DC変換器(図8の87c)を含み得、これは、24V DC/DC変換器120からハウスキーピング電力を引き継ぐ。
【0095】
図11Bは、PSEゲート制御114がオフの(変調器スイッチ113が開いている)状態の電圧波形、垂下(VCcable)(PSEの開始時にケーブルで測定)を示す。PSEゲートトレースは、PSEスイッチ113の変調を示す。DC/DC電力は、DC/DCハウスキーピング回路120で測定される。前述のように、VCcableは、垂下後にPSEゲート114がスイッチオンになると、正に遷移する。Vsense回路116は、PSEゲートがスイッチオンになると、電圧垂下の後、VCcableの正の遷移から有効化パルス幅を発生させて、ハウスキーピング電力の継続のためにDC/DCハウスキーピング変換器120を動作させる。
【0096】
図11Cは、低電圧起動で使用するための簡略化された回路設計である。2つのツイストペアが示され、ペアごとにPSE変調器スイッチ113およびPD変調器スイッチ119が示されている。イネーブルスイッチ112は、高電圧動作(例えば、380VDC、300V超、200VDC超)のために閉じられている。一例では、低電圧動作は、56V以下(例えば、24V)であり得る。PSEは、低電圧ケーブル静電容量および障害試験回路115を含む。1つ以上の実施形態では、PDでの低電圧電源投入回路は、約27Vを超える0V遮断で(24Vの低電圧動作で)構成され、絶縁回路なしでホットスワップを可能にする。代替の起動電力が、初期電源投入のためにPDの電池で提供される場合がある。PDは、前述のように、各電線ペアに低電圧DC/DC変換器120を含む。低電圧ハウスキーピング回路の詳細は、図12Aおよび図12Bに関して以下で説明する。
【0097】
図12Aは、低電圧ハウスキーピング電源回路121の例を示すブロック図である。回路121は、(125からの)入力イネーブル1、(126からの)イネーブル2、およびPDハウスキーピング(24/12V DC/DC変換器123)からのディセーブルを備えるゲートバイアスおよび制御回路122と、スイッチ124(図11Aおよび図11Cに関して上述)とを含む。図11Aおよび図11Cに示すように、ハウスキーピング回路は、ケーブルペアから電力を受信し、PD変調器スイッチ119に電力を提供する。変換器123は、PD回路にハウスキーピング電力を提供し、PD変調器スイッチおよび通信を開始し、次に高電圧変調器の切り替えを可能にする。
【0098】
図12Bは、簡略化された低電圧起動ハウスキーピング電源回路127を示す。この回路は、ケーブルペアのPD端に低電圧DC/DCセルフ起動ハウスキーピング電力を提供し、高電圧MOSFETスイッチM1で遮断する過電圧保護を備えている。一例では、抵抗器R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、各々1または2Mohm(メガオーム)の抵抗器を含み得る。ダイオードD1およびスイッチQ1は、例えば、27Vを超える過電圧保護を提供し得る。一例では、コンデンサC1の定格は100μFである。
【0099】
5Wの長いケーブル抵抗電圧降下の場合、起動時の低電圧が24Vから56VDCに増加し得ることが分かり得る。1つ以上の実施形態では、低電圧は56V以下であり得、高電圧電力(PSEでのパワーオンパルス時)と低電圧電力との間の差は、200Vより大きくなり得る(例えば、約324V、約368V)。これらの電圧レベルは単なる例であり、他のレベルが使用され得ることが理解されるべきである。低電圧は、低電圧起動中(例えば、初期化や同期)の安全性の問題を防ぐように定格が定められていることが好ましく、高電圧は、オフパルス間隔中に安全性確認を提供しながら、受電デバイスに給電するのに十分な電力を提供するように定格が定められていることが好ましい。以下で説明するように、高電圧電力レベルは、パルスが相間で互いにオフセットされている多相電力システムの相数に基づくことができる。
【0100】
図12Cは、図12Bに示される回路127に対応する回路128のブロック図を示す。この例では、回路には、ハウスキーピング電力用の28Vゲートイネーブル、ゲートバイアス、およびDC/DC変換器(例えば、16V/5W)が含まれている。
【0101】
図13A図13Bは、一実施形態による高電圧起動を示す。図5に関して上述したように、高電圧起動を高電圧初期化起動として使用して、安全性保護を追加するための短い高電圧オンパルス、または低電圧初期化プロセスを必要とすることなくPDをホットスワップする通常の高電圧パルスを備えることができる。高電圧初期化は、ショートオンパルスを使用して(図6に関して上述した安全領域内で)安全な動作を提供する。
【0102】
まず図13Aを参照すると、一実施形態による、簡略化された初期の高電圧起動回路130を示すブロック図が示されている。高電圧制御が、ゲート制御131および高電圧スイッチ132で提供される。PSE変調器スイッチ(スイッチ1およびスイッチ2)133は、PSEゲート制御134に結合されている。前述のように、PDは、PDゲート制御137に結合されたPD変調器スイッチ139、およびVsense同期回路136を含む。PDエンドポイントの負荷は138で示されている。図13Aに示される回路130は、図11Aの低電圧ハウスキーピング回路120の代わりに、高電圧DC/DCハウスキーピング回路140(例えば、380Vから12/3.3VへのDC/DC変換器)を含む。一例では、以下で説明するように、PSE変調器スイッチの高電圧オン時間中に高電圧がSミリ秒未満でパルスオンされて、次の高電圧相までのホールドアップ時間で出力を最小出力ハウスキーピング電圧に充電する。
【0103】
PSE変調器スイッチ133は、確立されたオン時間(例えば、8ミリ秒)およびオフ時間(例えば、4ミリ秒)のデューティサイクルならびに周波数で高電圧のパルスを開始する。PDのDC/DC初期起動回路140は、一定の動作時間(例えば、6~8ミリ秒)の第1の高電圧オン時間サイクルで通電される。Vsense回路136は、PSEゲートがスイッチオンになったとき、電圧垂下後、VCcableの正の遷移から有効化パルス幅(例えば、6ミリ秒)を発生させ、ハウスキーピング電力を継続するためにDC/DCハウスキーピング変換器140を動作させる(図13Aおよび図13B)。高電圧DC/DC変換器138は、PD回路にハウスキーピング電力を提供し、PD変調器および通信を開始し、次いで、ケーブルへの高電圧変調器の切り替えを可能にする。
【0104】
図13Bは、PSEゲート制御134がオフ(変調器スイッチ133が開いている)状態の電圧波形垂下(VCcable)(PSEの開始時にケーブルで測定)を示す。PSEゲートトレースは、PSEスイッチ133の変調を示す。DC/DC電力は、DC/DCハウスキーピング回路140で測定される。前述のように、VCcableは、垂下後にPSEゲート134がスイッチオンになると、正に遷移する。Vsense回路136は、PSEゲートがスイッチオンになると、電圧垂下の後、VCcableの正の遷移から有効化パルス幅を発生させて、ハウスキーピング電力の継続のためにDC/DCハウスキーピング変換器140を動作させる。
【0105】
図14は、安全性のためにPSEに含まれるクローバー/短絡リレー150を備えたPSE141およびPD142の簡略化された回路を示す、システム140のブロック図である。図8に関して前述したように、ブロック143内に示される構成要素は、単相を表し、多相システムの相ごとに複製され得る。PSE141は、絶縁された高電圧源(例えば、380VDC)と、スイッチ144aおよびゲートとを含む。PSEおよびPDのTx/Rx146a、146bは、カップリングネットワークを備えた送受信機を表す。DSP(デジタル信号プロセッサ)145a、145bは、マイクロコントローラまたはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)デジタル制御、およびソフトウェア/ファームウェアであり得る。PSEハウスキーピング用に絶縁型電源147aが提供されている。絶縁型電源147bは、低電圧初期化および試験用の24VDC入力を備えたPDハウスキーピング用に提供されている。PD DC/DC絶縁変換器147cは、Vout用および280~380VDC入力の12/3.3Vハウスキーピング用に提供されている。電流感知変圧器/ホール効果センサ(CS/CT)148a、148bがPSEとPDに配置されている。安全性感知回路(Vsense安全性)149aおよびPD同期電圧センサ(Vsense同期)149bは、それぞれPSEおよびPDに配置されている。前述のように、PSEは、PSE変調器スイッチ144b、144cを含み、PDは、PD変調器スイッチ144dを含む。
【0106】
図14に示す例では、高電圧の安全性を高めるために、短絡スイッチ(安全クローバー)150がPSE141に設置されている。短絡スイッチ150は、例えば、ケーブル電圧充電エネルギーを放電するためにボディ衝撃障害で通電されるソリッドステートデバイス(例えば、MOSFET)を含むことができる。高電圧リレーも使用され得る。短絡スイッチ150は、機器の設置または保守の際に保守要員によって、高電圧ロックアウトとして手動で(例えば、PSEのボタンで)通電することができる。短絡スイッチは、例えば、切断されたときにケーブルコネクタの安全インターロックで通電されてもよい。
【0107】
図8図9A図9C図10A図11A図11C図12A図12B図12C図13A、および図14に示される回路およびブロック図は単なる例であり、他の配置構成または構成要素の組み合わせ(例えば、抵抗器、コンデンサ、ダイオード、インダクタ、スイッチ、ゲート、絶縁電源、変圧器(変換器)、または感知回路)、パルスタイミング、または電圧レベルもしくは電力レベルは、実施形態の範囲から逸脱することなく使用され得ることが理解されるべきである。例えば、低電圧パルス電力は、24V以上、56V以下で伝送される電力のパルス(すなわち、パルスオン)を含み得、高電圧パルス電力は、200V以上、380V以上、または他の任意の適切なレベルで伝送される電力のパルスを含み得る。1つ以上の実施形態では、低電圧電力と高電圧電力との差は、少なくとも170Vである。
【0108】
図15図19は、データファイバペアを備えた銅線ペアで電力を供給するための拡張安全電力(ESP)システムの簡略化された例を示す。前述および後述のように、拡張された安全な電力は、データ配信のために1本以上の光ファイバを用いて複合ケーブル上で配信され得る。図15は、PSEとPDとの間に延在し、2本のツイストペアおよび光ファイバを搬送するケーブルを示す簡略化されたブロック図である。図16は、単一のツイストペアに対するPSEおよびPDでの追加の機能構成要素を示すブロック図である。図17は、複数の低電力PDエンドポイント負荷へのESPのマルチポイント分配を示すブロック図である。図18および図19は、PSEおよびPDの入力および出力での、電力レベルおよび電圧レベルの例を示す簡略化されたブロック図を示す。
【0109】
ここで図15を参照すると、電力およびデータ用の複合ケーブル(例えば、パワーオーバーファイバ(PoF)ケーブル)154を介して、負荷153に電力を提供するPD152と通信するPSE150を含む、データおよび電力供給システムの簡略化された例が示されている。この例では、ケーブル154は、2本の光ファイバ155(例えば、2ファイバシングルモード)および2本のツイストペア156(例えば、銅線)を含む。157で示される制御データは、光ファイバ155もしくは銅線(ツイストペア)156、または別個の伝送ラインを介して供給され得る。制御データには、例えば、絶縁スイッチ同期制御データ、変調器スイッチ制御データ、双方向制御データ、または他のPSE/PD同期データが含まれ得る。双方向通信データはまた、光ファイバ155または電線156を介して送信され得る。一例では、10MBの通信は、パルス上の高電圧の間に(例えば、高電圧データリンク上で)、銅線ペアを介して提供される。入力電力(例えば、AC、HVAC、HVDC、ラインカード48~56VDC)は、PSE150で提供され得る。ケーブル154は、異なるケーブル長にわたってデータおよび高電圧パルス電力を供給するための、任意の数の光ファイバおよび電線もしくは電線ペアを含むことができる。
【0110】
1つ以上の実施形態では、PoEまたは高電圧電力(例えば、ESP、パルス電力、多相パルス電力)は、同じケーブルおよびコネクタを介して供給され得る。PSE150およびPD152の機能に応じて、PDは1つ以上の異なるモードで動作し得る。PSE150とPD152とに互換性がない場合(すなわち、一方がPoE専用に構成され、もう一方がESP専用に構成されている場合)、回路には電力が供給されない。PSE150およびPD152の両方がESP動作可能である場合、PSEは高電圧パルス電力を供給し、PDは高電圧パルス電力を使用して動作する。別の例では、PSE、PD、またはPDとPSEの両方が、最も効率的な供給モードに基づいて、(例えば、PDとPSEとの間のオートネゴシエーションを使用して)動作モードを選択することができる。
【0111】
図16は、一実施形態による、図15に示すツイストペアのうちの1本の追加の詳細を示す。PoF(パワーオーバーファイバ)ケーブルが、PSE160とPD162の間に延在している。この例では、PD162は56VDC負荷169(例えば、PoE、PONエンドポイント、アクセスポイント、スイッチ)に電力を供給する。図16に示す簡略化された例では、ケーブルに、2本の光ファイバおよび1本のツイストペアが含まれている。前述のように、ケーブルは、任意の数の電線ペア(例えば、N本のツイストペア)を備えることができる。この例では、システムは衝撃保護のために高抵抗の中点接地を提供する。一例では、中点接地は、ライン-接地間電圧を低下させる(例えば、275Vライン-接地間、550Vライン-接地間、190Vライン-接地間、380Vライン-接地間)。1つ以上の実施形態では、各伝送ペアの給電および戻りの両方が切り替えられて、効果的な制御を実装し、ライン-接地間障害検出は10~100μsである。前述のように、ケーブル感知はPSE160で提供され得る。システムは、上述のように、高電圧パルスオフ時間でのオートネゴシエーション中のケーブル障害状態に対して、ライン-接地間(GFI(地絡遮断器))衝撃保護およびライン間衝撃保護を提供することができる。1つ以上の実施形態は、ケーブルへの任意の高電圧経路に単一障害点および冗長性を提供する。1つ以上の実施形態では、システムは、前述のように、初期起動状態およびデフォルト状態に12~56VDC低電圧を使用して、高電圧動作を有効化する前にデータリンクおよび安全性インターロックを確立することができる。一例では、送受信機168に示されるように、パルス上の高電圧の間にツイストペアを介して10MBの通信が提供される。
【0112】
図17は、複数の低電力エンドポイント負荷(例えば、5G無線セットまたは他のデバイス)へのESPマルチポイント分配の例を示す。PSEソース170は、ファイバおよび電線を含むPoFケーブルアセンブリ174を介して、複数のPD172に高電力およびデータを供給する。1つ以上の実施形態では、多相パルス電力は、ケーブル174上で少なくとも200Vの電圧で供給される。一例では、1~2kWの電力が、550VDCパルス電力で1~10kmを超えるデータファイバペアを備えた銅線ペアに提供される。前述のように、パルス電力は任意の数の相を含むことができる。上記のように、システムは、初期起動状態およびデフォルト状態に24VDCまたは56VDCの低電圧を使用して、高電圧動作を有効化する前にデータリンクと安全性インターロックを確立することができる。図17に示す例では、550VDCパルス電力は、例えば、5G無線セットなどの複数の低電力PD PONエンドポイント負荷に分配され得る。一例では、システムは、1~10kmを超えるデータファイバペアを備えた銅線ペアで1~2kWの電力を提供し、380/550VDCの拡張安全電力を70%超の効率で提供する。デイジーチェーントポロジ(本明細書では、マルチ/ドロップデイジーチェーンのハイブリッド型のトポロジとも呼ばれる)におけるPSE170から複数の下流PD172への電力の伝送については、図29図40に関して以下で説明する。
【0113】
図18および図19は、ESPシステムの様々なセクションでの電力入力および電力出力の例を含む、簡略化されたシステムを示すブロック図である。図18は、プラグ181で115VAC電力を受信する2つのPSU180を備えたPSEを示す。PSEには、ブロック182に示すように、低電圧/高電圧制御、PSE変調器、デジタル制御、安全性感知、および通信用の送信機/受信機が含まれる。PSEは、電力ケーブル184(例えば、14AWG)によってPDと結合されている。この例では、PSEでの出力は、380VDC、2000Wの電力を含む。この例では、PDは、1400W PON(パッシブ光ネットワーク)エンドポイントであり、ブロック186のPD変調器、デジタル制御、および送受信機/受信機を含んでいる。この例のPDUでの入力は380~280VDCおよび1474Wであり、PSU188での出力は50VDC、28A、および1400Wである。
【0114】
図19は、前述のように、低電圧/高電圧の制御、変調、および通信のための2つのPSU190およびモジュール192を含むPSEを示す。PD196(PD変調器、デジタル制御、送受信機/受信機を含む)は、ラック構成要素198(例えば、ファブリック相互接続、ブレードサーバなど)を含むエンドポイントに結合されている。電力は、115VACプラグ191で受信される。この例では、PD196は、ラック構成要素198に192~400VDC(1492W)の電力を提供する。
【0115】
図18および図19の簡略化されたブロック図に示される電力入力および電力出力は単なる例であり、実施形態の範囲から逸脱することなく、他の電圧および電力レベルを使用できることが理解されるべきである。また、ケーブルは任意の数の電線または光ファイバを含むことができ、システムは、N+NまたはN+1冗長性を備えた連続動作のための単一障害点耐性のために構成することができる。1つ以上の実施形態では、高電圧から低電圧へのフェイルセーフ動作が提供され得る。
【0116】
前述のように、パルス電力システムは、複数相の(多相)システムとして動作することができる。本明細書で説明する初期化、同期、試験、および障害検出は、多相システムの各相で実施することができる。1つ以上の実施形態では、パルス電力システムは、上記で参照した米国特許出願第16/380,954号に記載されているように、多相パルス電力システムを含むことができる。一例では、単一の導体ペアケーブルは、2対の電力線、バスバー、電源面、またはケーブル配線ペアを備えた2相パルス送電システムケーブルに置き換えられる。例えば、1つ以上の実施形態は、3線式、バスバー、電源面、またはケーブル線トリオを備えた2相パルス送電システムケーブルを含んでもよい。多相(3相以上)動作により、相ごとのRMS電流がさらに減少し、かさばるフィルタ構成要素なしで連続的なDC電圧を効果的に提供できる。1つ以上の実施形態では、出力および分割接地(例えば、高抵抗の中点接地)への高いまたは効果的な100%のデューティサイクルは、より低いRMS電流ケーブル損失でより高い効率をもたらし、高速かつ効果的な地絡検出を可能にし、制限されたケーブル電圧定格から負荷へのより高い電圧および電力を可能にし、より低いEMI/EMCノイズ放射および影響を受けやすいフィールドのためにより低いピーク電流でコモンモードシステム(個別の接地接続)を実装することを可能にし得る。
【0117】
1つ以上の実施形態では、複数相アプローチは、例えば、ケーブルの短絡、開放、報告されていない電力損失(例えば、低電流短絡)、または人間もしくは動物によるさらなる抵抗を検証するために、10ミリ秒ウィンドウで大幅なオフ時間を可能にする。この延長されたオフ時間により、安全性が大幅に向上する。また、多相パルス電力により、より低い電源電圧を使用して、受電デバイスの要件を100%満たすことも可能となる。前述のように、単相システムでは、オフ時間をかさばるフィルタでフィルタ除去する必要があり得るが、その場合でも、高負荷での電力効率/有効性は約80%である。より高いデューティサイクルおよびより高い効率で複数の相を使用することにより、構成要素に大きな利点がもたらされ、電力供給の増加および信頼性の向上をももたらされ得る。例えば、3相以上のシステムで単相が損失された場合でも、受電デバイスでの100%の連続デューティサイクル電力の有効性には影響を与えない。以下で説明するように、給電位相のフロントエンド回路が損失された場合でも、冗長電源によって動作に影響を与えないことがある。
【0118】
ここで図20を参照すると、一実施形態による、マルチノード多相パルス電力のブロック図が示されている。図20に示す簡略化された例は、3つ以上のPD(例えば、パルス電力タップ/受信機212およびノードエンドポイント214)に電力を供給するPSEノード200を含む。この例では、パルス電力タップ/受信機212はエンドポイント機器214から分離されているが、これらのノードは組み合わされていてもよい。また、パルス電力タップ/受信機212のうちの1つ以上に2つ以上のノード214が接続されていてもよい。
【0119】
PSEネットワークデバイス200は、入力電力を受信するための入力電力インターフェース(例えば、図1Aに示される例では、電源コード209を受容する3つのPSU205)と、入力電力を受信し、複数の相のDCパルス電力をケーブル211を介して複数の受電デバイス212、214に伝送し、DCパルス電力のパルスのオフ時間内のケーブル動作を検証するための電力制御システム207と、ケーブル211を介した多相DCパルス電力およびデータの供給(例えば、銅線または光ファイバ上での制御データ、双方向通信)のためのケーブルインターフェース(例えば、電力インターフェース208)と、を備える。
【0120】
パルス電力タップ/受信機212は、複数の相のDCパルス電力およびデータをPSE200から受信するための入力ケーブルインターフェース213aと、絶縁スイッチ(後述する)と、電力をエンドポイントノード214に伝送するためのインターフェース213bとを備える。インターフェース213bは、例えば、HVDCケーブル222に接続されたインターフェース、パルス電力ケーブル、またはエンドポイントノードへの直接インターフェースであってよい。タップ/受信機212は、パルス電力ケーブルシステムに沿って1つ以上のノード214に電力を供給することができる。タップ/受信機212は、個々のノード電力をサポートするようなサイズにすることができ、データリンク通信に基づく障害分離またはノード制御のための切断を実装することができる。複数の相(多相)のDCパルス電力は、エンドポイントノード214で連続的なDC電圧を提供するために少なくとも2つの相を含む。1つ以上の実施形態では、多相パルス電力は、1つの相が損失した場合に連続電力を提供するために、少なくとも3つの相を含む。パルス電力タップ/受信機212のうちの1つ以上はまた、複数相のDCパルス電力およびデータを、テーパトポロジ(タップノード構成)における下流のタップノード212にケーブル上で送信するための出力ケーブルインターフェース213cを備える。
【0121】
図20に示される例では、PSE200は、3つのPSU205と、制御システム207および電力インターフェース208を含むパルス電力モジュール206とを備える。図20に示すように、各PSU205は、高電圧レール、PM(電力管理)バスライン、56Vライン、またはそれらの任意の組み合わせを介してパルス電力モジュール206と電力通信することができる。一例では、各PSU205は、冗長性を提供し、標準の15A(アンペア)電源コード/分岐回路の使用を可能にする1200W電源用に構成されている。一例では、PSE200は、ノード214に1500W超の総電力を供給するように動作可能である。一例では、190Vのライン-接地(合計380V)により、中間の電力変換が不要になる。
【0122】
パルス電力モジュールの制御システム207は、例えば、タイミングおよび順序付け、ライン検出および特性評価、電圧および電流感知、高抵抗の中点接地、障害感知、PSUへの通信、およびリモートノードへのデータリンク/制御を提供することができる。本明細書で説明するように、制御システム207は、DCパルス電力におけるパルスのオフ時間中にケーブル動作を検証する(例えば、ケーブル動作の完全性を検証する)ことができる。パルス電力モジュール206は、パルス電力変調器、安全回路、初期化回路、PMBus、PMBus I2C(IC(相互統合回路))、ロジック、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)、またはこれらの任意の組み合わせもしくは本明細書に記載の機能を実施するように構成された他の構成要素の任意の組み合わせを含み得る。
【0123】
図20の例に示すように、PSU205は、ケーブル209でAC電力を受信し、ケーブル211でパルス電力を供給する。1つ以上の実施形態では、パルス電力タップ/受信機212は、相を組み合わせて、ケーブル222上のノード/エンドポイント214に高電圧(HV)DC電力を供給することができる。別の実施形態では、パルス電力タップ/受信機212は、ケーブル222上のエンドポイント214にパルス電力を供給することができる。1つ以上の実施形態では、パルス電力ケーブル211は、後述のとおり、電力とデータ用の複合ケーブルでデータを供給するための2本以上の光ファイバを含む。一例では、分岐ごとに専用のファイバ(または複数のファイバ)が存在してもよい。
【0124】
ケーブル211内の電線は、EMCの考慮事項に応じて、2導体、ツイストペア(シールド付きまたはシールドなし)、同軸もしくは3軸ケーブルを含み得る。潜在的なコモンモードノイズの問題に対処するために、別個の接地導体を提供することができる。本明細書で使用する場合、電線(wire)という用語は、単一の電線または一対の電線を指し得ることが理解されるべきである。後述のとおり、本電力システムは、ファイバまたは他の通信伝送媒体と束ねられ得る任意の数の電線を含んでもよい。
【0125】
電力は、パルス電力タップ/受信機212(分岐タップ、スマート分岐タップ、受信機/変換器とも呼ばれる)を介してエンドポイント214に供給される。1つ以上の実施形態では、スマート分岐タップ212は、分岐障害分離を可能にする。タップ/受信機212は、例えば、絶縁スイッチ(切断スイッチ)、データリンク、およびロジック/タイミングコントローラを含み得る。タップ/受信機212は、オートネゴシエーションプロセス、障害分岐分離アルゴリズム、電力初期化、および障害のあるPD交換を初期化するために使用され得る。パルス電力線を介したデータリンクは、各ノード214のスマート分岐タップ212の実装、および障害分離もしくはノード管理のための各分岐の独立した制御(切断)を可能にする。
【0126】
エンドポイント214の各々は、エンドポイントで機器に電力を供給するためのHVDC PSUを含み得る。エンドポイント214は、例えば、56VDC負荷を含み得、例えば、PON(パッシブ光ネットワーク)エンドポイント、5Gノード、アクセスポイント、ルータ、スイッチ、または他のタイプの機器として動作し得る。エンドポイント214はまた、1つ以上の他のノード(例えば、PoEノード、IoT(モノのインターネット)デバイス)に電力を供給することができる。
【0127】
図20に示されるシステムは単なる一例であり、システムが多相パルス電力を提供するために任意の数(例えば、2つ以上)のPSU205を備えてもよいことが理解されるべきである。図20に示されるネットワークトポロジおよびノードは単なる一例であり、ネットワークは、実施形態の範囲から逸脱することなく、異なるトポロジおよびネットワークデバイスを含むことができる。
【0128】
複数のPSUにより、多相動作が可能になり、冗長性も提供され得る。例えば、3相以上を含むシステムにおいて1相が損失された場合でも、PDノード214に連続して電力が供給され得る。各相は、好ましくは、PDノード214への全電力を維持するために、より高いピーク電力を供給するようにサイズ決めされる。N+1フロントエンド電力(FEP)供給を利用することにより、さらなる冗長性を提供することができる。例えば、合計1500WのPD電力システムの場合、3つの1200W FEPがN+NまたはN+1の完全な冗長性でシステムに電力供給することができ、各FEPが必要とするのは共通の120V、15Aフィードのみである。
【0129】
図21に示され、後述するように、多相パルス電力は、電圧パルスの複数のシーケンスを含み、電圧パルスの各シーケンスは、多相パルス電力の相を形成する。図21は、例えば、図20に示すシステムで供給される、相ドロップを伴う75%のデューティサイクルの3相パルス電力電圧および電流の例を示す。理想化された波形が示され、正味PD電圧およびライン電流には、ノード/エンドポイント214からの一定の電力負荷によるライン損失効果が含まれている。図21に示す例では、相Bが2サイクルでドロップアウトしている。3相電圧(A、B、およびC)(223a、223b、223c)が、オートネゴシエーションライン感知224とともに示されている。
【0130】
図21に示すように、パルスオン時間中は高電圧電力がPSEからPDに供給され、高電圧電力がオフの間のパルスオフ時間中は、電線の完全性を確認するための低電圧感知(224で示される)で使用するために、各相で低電圧が印加され得る。
【0131】
正味PD電圧は、225で3相電圧の組み合わせとして示されている。対応する相電流(A、B、C)(226a、226b、226c)が、電圧の下に示されている。3相電流に対応する正味ライン電流が227に示されている。図21に示すように、1つの相が損失された場合(相Bのドロップで示されている)でも、連続した電力がPDノードに供給される。各相は、PDへの全電力を維持するために、より高いピーク電力を供給するようにサイズ決めされ得る。
【0132】
図21に示すように、2本以上の伝送線(例えば、電線もしくは電線ペア)が、各電線(例えば、1本の電線もしくはペア)の導通の相調整を可能にするため、少なくとも1本の電線は常にONである。PDでORが実行されると、結果として225で示すように連続したDC電圧が得られるため、かさばるフィルタ構成要素が不要になる。多相システムでの相のオーバーラップ中、ケーブル電流の合計はすべてのON線で共有される。個々の伝送線電流は比例して減少し、伝送ケーブルの総損失が減少する。
【0133】
1つ以上の実施形態では、オフ時間は、最悪の場合のケーブル長さおよび特性に基づいて固定されるか、もしくは検出されたケーブルの特性に基づいて能動的に制御され得る(より高い効率/より長い範囲のため)。各相のオン時間(電力供給)は、適切なボディ抵抗データに基づく総パルス電力電圧および感電事故限界に基づいて固定することができる。このアプローチを使用して最大パルスオーバーラップが達成され得、それによってケーブルのRMS電流を低減し、送電距離を最大化できる(または導線サイズを最小化できる)。
【0134】
前述のように、理想的な波形を図21に示す。PSE200、ケーブル211、およびPD受信機212のインダクタンスにより、ケーブル電流の何らかの平均化が発生し、オーバーラップ電流が増加し、パルスオフ時間中の電流が減少する場合がある(図20)。この効果は、ケーブル長さおよびタイプ(インダクタンス)によって異なり得る。相電流は図21に示す。
【0135】
図21に示すように、相の各々は互いにオフセットされ(位相シフトされたデューティサイクル)、オンパルスとオフパルスとで構成されるパルス電力を提供する。オフパルスは、小さな電圧(例えば、0V、3Vに近い)、またはオンパルス電力よりも大幅に小さい値(例えば、オンパルスとオフパルスとの間の電力レベル差が少なくとも170V)であり得る。前述のように、オンパルス時間とオフパルス時間(パルス幅、パルスデューティサイクル)は、システム設計(例えば、相の数、供給電力量)および安全性要件に基づいて選択され得る。パルスデューティサイクルはまた、初期化フェーズ、同期フェーズ、試験フェーズ、または通常動作の間で変化し得る。一例では、起動デューティサイクルは、12ミリ秒の周期で8ミリ秒のオンパルスと4ミリ秒のオフパルスとを含み得る。別の例では、高電圧初期化中のオンパルスはわずか0.5ミリ秒または1ミリ秒であり得る。一例では、オフパルスは1ミリ秒であり得、これは、上記で参照した米国特許出願第15/971,729号に記載されているように、100μsの抵抗分析およびオートネゴシエーション時間を含む。別の例では、10ミリ秒の時間ウィンドウ内で環境安全性を適切に評価するために、2ミリ秒~4ミリ秒のオフパルス(電力パルス間)が必要な場合がある。
【0136】
1つ以上の実施形態では、PSEの中央コントローラは、相間のオフセットを調整し、最適化のために(または必要に応じて相の損失に続いて)パルス幅を適応させることができる。パルスタイミングに変更があれば同期のためにPDに通信される。
【0137】
図21に示された上述の、電流、電圧、パルス幅、デューティサイクル、および相のオーバーラップは、単なる例であり、本明細書に示されるかもしくは記載されるものとは異なってもよいことが理解されるべきである。例えば、オーバーラップ中はパルス電流が高くなり、非オーバーラップ中は電流が低くなることがある。違いは、例えば、パルス送電のインダクタンスと静電容量(例えば、配線の長さやケーブルの種類)に依存し得る。
【0138】
前述のように、多相パルス電力システムは、2つ以上の電線もしくは電線ペアを含むことができる。本明細書に記載の多相システムは、異なる数の電線もしくは電線ペアを含むシステムに実装することができ、図20および図21に示す3相システムは一例に過ぎないことが理解されるべきである。パルス電力システムは、実施形態の範囲から逸脱することなく、任意の数(例えば、2、3、4など)の相で動作することができる。また、前述のように、ケーブルには、データ伝送用に任意の数の光ファイバまたは追加の銅線を含めることができる。1つ以上の実施形態では、ケーブルはまた、前述のように、冷却を搬送することもできる。
【0139】
図22は、一実施形態による、従来のPoEよりも高い電力レベルで安全な電力を供給するための多相電力システムの簡略化された回路である。PSEは、コネクタ232(例えば、RJ-45または変更されたRJ-45)を備えた4ペアケーブルを介してPDに結合される。一例では、56Vの2相ESPを使用して、従来のPoEの約1.5倍の電流と電力を提供することができる。別の例では、112Vの2相ESPを使用して、56VDCのPoEの約3倍の電流と電力を提供することができる。さらに別の例では、150Vの2相ESPは、56VDCのPoEの約4倍の電流と電力を提供することができる。
【0140】
前述のように、PD変調器およびPSE変調器は、低電圧初期化中もしくは高電圧初期化中、または多相システムの各相の高電力動作中に、同期させることができる。1つ以上の実施形態では、(上述の)PSEおよびPD変調器(制御)スイッチは、図23および図24に示すように、PD変調器スイッチがオンになる前にPSEパルスがオンになり、パルスごとにPSE変調器スイッチがオフになる前にPD変調器スイッチがオフになるようなタイミング制御を含み得る。これを使用して配電システムの過渡現象を最小限に抑えることができ、これにより、EMIが減少し、より正確な電流検出のためのよりクリーンな電流波形が生成される。
【0141】
図23および図24は、一実施形態による、4相システムにおける簡略化された電圧波形および相電流を示す。図23は、4相の75%デューティサイクル動作を示す。電圧パルスは、相Aについては264a、相Bについては264b、相Cについては264c、相Dについては264dで示している。累積相電流は266で示している。図23に示すように、PSEスイッチドライブは、パルスの開始時にPDスイッチドライブの前にオンになり、パルスオン間隔の終了時には、各相のPSEスイッチドライブの前にPDスイッチドライブがオフになる。
【0142】
図24は、1つの相(相B)がドロップした状態の動作を示す。電圧パルスは、相Aについては274a、相Cについては274c、相Dについては274dで示している。累積相電流は276で示している。図24から分かるように、3つの機能相の相対時間を調整することによって、相Bが損失された場合でも、継続的な電力がなお供給される。
【0143】
図1図17、および図20に関して前述したように、PSEおよびPDは、様々なトポロジ(PSEおよびPDの数および配置)を含むネットワークで通信できる。本明細書に記載の拡張安全電力(ESP)システムは、例えば、ポイントツーポイントトポロジ、デイジーチェーントポロジ、マルチドロップトポロジ、マルチドロップ/デイジーチェーンのハイブリッド型トポロジ、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上のPSEノードおよび1つ以上のPDノードを含むことができる。
【0144】
図25は、ポイントツーポイントトポロジでESP PDノード282と通信しているESP PSEノード280を示す簡略化されたブロック図である。PSEノード280は、PSE絶縁スイッチ284を含み、PDノードは、伝送ライン288を介して通信しているPD絶縁スイッチ286を含む。絶縁スイッチ284、286は、以下で説明するように、初期化中、同期中、および試験中にデバイスを絶縁する。ポイントツーポイントトポロジは、図8図16および図18図19に関して上述した簡略化された回路に示されている。
【0145】
図26は、第1の伝送ライン288aを介してPD282aと通信しているPSE280aを示す簡略化されたブロック図である。PD282aはまた、内部バス290を介して下流のPSEノード280bと通信している。PSEノード280bは、第2の伝送ライン288bを介して別のPD282bに電力を供給する。PD282aおよびPSE280bは、同じネットワークデバイスに配置され、内部バス290を介して結合されてもよい。第1のPSE280aは、第1のPD282aとともに、初期化、同期、および安全性試験を実施する。第2のPSE280bは、第2のPD282bとともに、初期化、同期、および安全性試験を実施する。
【0146】
図27に、マルチドロップトポロジの例を示す。PSE280は、伝送ライン288を介して2つのPD282a、282bと通信している。PSE280は、絶縁スイッチ284を含み、各PDは、それ自体の絶縁スイッチ286a、286bを含む。
【0147】
図28は、一実施形態による、マルチドロップ/デイジーチェーンのハイブリッド型トポロジを示す。PSE280およびPSE絶縁スイッチ284は、伝送ライン288aを介して第1のPD282aに結合されている。PD282aは、ローカル絶縁スイッチ286aおよび出力絶縁スイッチ300aを含み、これらは、伝送ライン288bを介して下流のPD282bと通信することができる。以下で詳細に説明するように、PSE280は、安全性確認を実施し、ローカル絶縁スイッチ286aを介して第1のPD282aと同期する。第2のPD282bがネットワークに接続されると、PDは第1のPD282aとの初期化および同期を実施し、安全性確認に合格した後、伝送ライン288bを介して第1の受電デバイス282aの出力絶縁スイッチ300aを介して高電圧パルス電力を受信する。この配置は、マルチドロップの場合のようにPSEが監視する1つの伝送ラインを提供し、デイジーチェーンの場合のようにPDによって下流登録が制御されるが、PSEの機能のサブセットを使用している。
【0148】
一実施形態による、マルチドロップ/デイジーチェーンのハイブリッド型トポロジ(図28)におけるPSEおよびPDの初期化プロセスの詳細については、図29図40に関して後述する。後述のように、PSEノードおよびPDノードは、PD内の機能により、マルチドロップ/デイジーチェーンのハイブリッド型トポロジで動作し、これによって、PSEによって典型的に実施される機能(例えば、低電圧初期化)を内部で実施することが可能になる。ただし、ネットワークデバイストポロジの観点からは(すなわち、外部ネットワークデバイスおよびリンクのみを見ると)、PSEおよびPDがデイジーチェーントポロジを形成する(伝送ラインは第1のPDを通過し、直接第2のPDに到達する)。
【0149】
図25図40は単相のみを示しており、後述の初期化プロセスは簡略化のために単相用であるが、本明細書に記載のプロセスは多相システムの相ごとに繰り返され得ることが理解されるべきである。例えば、伝送ライン288は、多相動作のための複数の電線ペアを含み得、本明細書に記載のプロセスは、多相システムの相ごとに実施され得る。
【0150】
1つ以上の実施形態では、給電機器320と通信する第1の受電デバイス322aは、第1の受電デバイスと通信する第2の受電デバイス322bを識別し、第1の受電デバイスは、給電機器から高電圧パルス電力を受信している(図37)。第1の受電デバイス322aは、高電圧パルス電力を受信する前に、あらかじめ給電機器とともに(第1の)低電圧初期化を実施した(図30図36)。第1の受電デバイス322aは、給電機器320に第2の受電デバイス322bを通知し、高電圧パルス電力を第2の受電デバイス322bに渡す前に、第2の受電デバイスとともに低電圧電力初期化を実施する(図37図40)。
【0151】
ここで図29を参照すると、マルチドロップ/デイジーチェーンのハイブリッド型トポロジのブロック図が示されている。この例では、PSE320は第1のPD322aに接続されており、第1のPD322aは第2のPD322bに接続されている。PSE320は、出力絶縁スイッチ332と通信する送受信機326、高電圧源328、低電圧源330、および伝送ライン監視器334を含む。各PD322a、322bは、上流検出信号336a、336b、ブートストラップ電源338a、338b(例えば、上述のハウスキーピング電源回路)、およびローカル絶縁スイッチ340a、340bと通信する送受信機342a、342bを含む。各PD322a、322bは、機器負荷出力346a、346bと通信する高電圧受信機344a、344bをさらに含む。第1のPD322aは、第2のPD322bと通信するための出力絶縁スイッチ348aを含む。この例では、第2のPD322bは、(下流デバイス検出器350bを使用して)別の下流PDに電力およびデータを提供するための出力絶縁スイッチ348bも含むが、PD322bは、パススルー機能のないエンドポイントとしての動作のために、出力絶縁スイッチおよび下流検出器なしで構成することもできる。図29に示す例では、PSE320およびPDノード322a、322bはすべて、PSEの絶縁スイッチが開いた位置にある、電源オフの状態にある。
【0152】
図30は、第1のPD322aのPSE検出および伝送ライン発見を示す。この例では、PSEの電源がオンになり(出力絶縁スイッチ332が閉じられ)、低電圧パルス電力(低電圧検出パルス列)の送信が開始され、伝送ラインパラメータ(例えば、静電容量)が収集される。PSE320は、前述のように、PSEとPDとの間のケーブルの静電容量試験を実施できる。
【0153】
図31は、電力を持ち出している第1のPD322aを示す。PD322aは、PDコントローラに電源投入するローカルエネルギー貯蔵(ブートストラップ電源338a)を充電することによって電源投入される。
【0154】
図32は、PD訓練フェーズを示す。PD322aは、PSEの低電圧パルス列(低電圧パルス電力の波形333)からタイミングパラメータ(周波数、位相)を回復し、これをPD絶縁スイッチのゲートドライブ波形に使用して、PSE変調器スイッチおよびPD変調器スイッチ(図4に関して上述)を同期させる。
【0155】
図33は、PD322aの識別フェーズを示す。上流検出信号モジュール336aに示されるように、PD322aは、低電圧パルス列を受信しながら、負荷電流の変調を通じて識別データを送信することができる。識別データは、PSE320の伝送ライン監視器334で受信される。
【0156】
図34は、低電圧源330を切断した後、PSE320が伝送ラインを絶縁する最終的なPSE安全性確認を示す。
【0157】
図35に示すように、PSE320では高電圧動作が有効になっている。PSE320は、周波数または位相シフトなしで、低電圧源330でのPDゲートドライブ低電圧パルス列から高電圧源328での高電圧パルス列にシフトする。PSE320の高電圧源328は、ここで出力絶縁スイッチ332を介して伝送ラインに接続され、高電圧パルス電力は、第1のPD322aのローカル絶縁スイッチ340aを介して高電圧受信機344aに伝送される。
【0158】
図36は、PSE-PD通信のリンクアップを示す。PSE320の送受信機326は、送受信機342aでPD322aとの通信を確立する。PSE320およびPD322aは、通信リンクを使用して、ネゴシエーションの続行、電力制限の設定、テレメトリの送信などを行う。
【0159】
図37は、第1のPD322aにおける第2のPD322bの下流検出を示す。前述のように、第1のPD322aは、そのローカル絶縁スイッチ340aの使用を介してPSE320とともに第1の低電力電圧初期化をすでに実施しており、ここではこのローカル絶縁スイッチで高電圧パルス電力を受信する。第1のPD322aは、着信PD(第2のPD)322bを検出し、次いで、PSE320に通知する。PD322aは、ライン静電容量の変化による必要なタイミング調整をPSE320に通知することもできる。タイミングが変更された場合、必要に応じてPSE320とPD322aを再同期させることができる。次に、PD322bに対して下流デバイスの分類と同期が実施される。第1のPD322aは、第1のPDコントローラ内部の低減されたPSE機能を使用して、第2のPD322bとの低電圧同期および分類動作を実施する。第2のPD322bで受信された低電圧電力は、ブートストラップ電源338bを充電し、PDコントローラ(上流検出信号336b)に電源投入するために使用される。
【0160】
図38は、下流デバイスの安全性確認を示す。第1のPD322aの出力絶縁スイッチ348は閉じられ、第2のPD322bの絶縁スイッチ340b、348bへの伝送ライン全体に対する安全確認が、PSE320で実施される。
【0161】
図39に示すように、安全性確認に合格すると、高電圧パルス電力が、第1のPD322aを介して第2のPD322bの高電圧受信機344bに伝送され、高電圧パルス電力の供給は、追加されたノードで継続される。
【0162】
図40に示すように、通信リンクが第2のPD322bで立ち上げられる。送受信機326、342a、342bが、3つのノード(PSE320、PD322a、PD322b)すべての間でリンクアップされ、システムは定常状態に達する。
【0163】
前述のように、上記のプロセスは、相ごとに実施される同期および確認を伴い、多相パルス電力に対して実施され得る。また、ネットワークは、パルス電力動作用に構成された1つ以上のエンドノード、パルス電力もしくはPoE用に構成された1つ以上のノード、およびPoE専用に構成された1つ以上のエンドポイント、を備えた任意のトポロジに任意の数のノードを含むこともできる。また、1つ以上のPDは、図26に示すように、下流ノードのPSEとして動作する機能を含んでもよい。
【0164】
本方法および装置は、示された実施形態に従って説明されてきたが、当業者であれば、実施形態の範囲から逸脱することなく、実施形態に変更を加えることができることを容易に認識するであろう。したがって、上記の説明に含まれ、添付の図面に示されているすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されるものとすることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
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