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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022527526
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2021009255
(87)【国際公開番号】W WO2021240945
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020090932
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-188162(JP,A)
【文献】特開2010-141081(JP,A)
【文献】特開2003-68834(JP,A)
【文献】特開2006-344670(JP,A)
【文献】特開2020-68350(JP,A)
【文献】特開2005-79415(JP,A)
【文献】特表2018-503969(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0118800(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にウエハ載置面を有する円盤状のセラミックプレートと、
前記セラミックプレートに埋設された静電電極と、
前記セラミックプレートを上からみたときに複数のゾーンに分かれており、前記ゾーンごとに一対のガス給排口の一方から他方に至るように前記ウエハ載置面に独立して設けられたガス溝と、
を備え
前記ゾーンごとに設けられた前記ガス溝にガスを供給するパターンは、前記一対のガス給排口の一方から他方にガスが流れる第1パターンと、前記一対のガス給排口の他方から一方にガスが流れる第2パターンの、いずれかのパターンを選択可能である、
静電チャック。
【請求項2】
前記複数のゾーンは、前記セラミックプレートと中心が同じである円形突起の外側に設けられ、前記セラミックプレートと中心が同じである2以上の環状ゾーンを含む、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記ガス溝ごとに設けられた前記一対のガス給排口は、前記セラミックプレートの所定の半径方向に沿って並んでおり、互いに隣接するゾーンに設けられた2つのガス溝のうち一方を流れるガスの方向は時計回りに設定され、他方を流れるガスの方向は反時計回りに設定されている、
請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
表面にウエハ載置面を有する円盤状のセラミックプレートと、
前記セラミックプレートに埋設された静電電極と、
前記セラミックプレートを上からみたときに複数のゾーンに分かれており、前記ゾーンごとに一対のガス給排口の一方から他方に至るように前記ウエハ載置面に独立して設けられたガス溝と、
を備え、
前記複数のゾーンは、前記セラミックプレートと中心が同じである円形突起の外側に設けられ、前記セラミックプレートと中心が同じである2以上の環状ゾーンを含み、
前記ガス溝ごとに設けられた前記一対のガス給排口は、前記セラミックプレートの所定の半径方向に沿って並んでおり、互いに隣接するゾーンに設けられた2つのガス溝のうち一方を流れるガスの方向は時計回りに設定され、他方を流れるガスの方向は反時計回りに設定されている、静電チャック。
【請求項5】
前記複数のゾーンは、前記セラミックプレートの半径によって区切られた複数の扇形ゾーンである、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記複数のゾーンは、前記セラミックプレートの中心から外縁に向かって延びる曲線によって区切られた複数の湾曲ゾーンである、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記ゾーンごとに設けられた前記ガス溝には、それぞれに特性の異なるガスを供給可能である、
請求項1~のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の静電チャックであって、
前記ゾーンごとに一対の端子の一方から他方に至るように前記セラミックプレートに埋設された抵抗発熱体
を備えた静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面にウエハ載置面を有する円盤状のセラミックプレートと、そのセラミックプレートに埋設された静電電極と、を備えた静電チャックが知られている。この種の静電チャックとしては、例えば特許文献1,2に示すように、ウエハ載置面にガス溝を設けたものが知られている。特許文献1には、セラミックプレートの中心を厚さ方向に貫通する1つのガス導入口と、そのガス導入口から放射状に延びるようにウエハ載置面に設けられた4本のガス分配溝と、ガス分配溝のそれぞれに連通するようにセラミックプレートの外周近傍に設けられた排気口とを備えた静電チャックが開示されている。特許文献2には、セラミックプレートを上からみたときに2つの半円ゾーンに分けられ、半円ゾーンごとにガス溝が設けられた静電チャックが開示されている。具体的には、一方の半円ゾーンには、セラミックプレートの外周近傍に設けられたガス導入口から同心円状の複数の仕切り壁の切り欠き部を通過したあとセラミックプレートの中心に設けられたガス排出口にガスが流れる。また、他方の半円ゾーンには、セラミックプレートの外周近傍に設けられた別のガス導入口から同心円状の複数の仕切り壁の切り欠き部を通過したあとセラミックプレートの中心に設けられた共通のガス排出口にガスが流れる。一方の半円ゾーンを流れるガスと他方の半円ゾーンを流れるガスは、完全にはセパレートされておらず、途中で混ざり合う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-275854号公報
【文献】特開2012-129547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、4本のガス分配溝を流れるガスは、同じガス導入口に供給されたものであるため、ガス分配溝ごとにガスを個別に制御することはできなかった。特許文献2では、一方の半円ゾーンを流れるガスと他方の半円ゾーンを流れるガスは途中で混ざり合うため、ゾーンごとにガスを個別に制御することはできなかった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、静電チャックのバックサイドガスをゾーンごとに個別に制御できるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の静電チャックは、
表面にウエハ載置面を有する円盤状のセラミックプレートと、
前記セラミックプレートに埋設された静電電極と、
前記セラミックプレートを上からみたときに複数のゾーンに分かれており、前記ゾーンごとに一対のガス給排口の一方から他方に至るように前記ウエハ載置面に独立して設けられたガス溝と、
を備えたものである。
【0007】
この静電チャックでは、ガス溝は、ゾーンごとに一対のガス給排口の一方から他方に至るようにウエハ載置面に独立して設けられている。ガス溝は、ウエハ載置面に載置されるウエハのバックサイドにガス(バックサイドガス)を供給するのに用いられる。こうしたガス溝がゾーンごとに独立して設けられているため、静電チャックのバックサイドガスをゾーンごとに個別に制御できるようになる。
【0008】
本発明の静電チャックにおいて、
前記複数のゾーンは、前記セラミックプレートと中心が同じである円形突起の外側に設けられ、前記セラミックプレートと中心が同じである2以上の環状ゾーンを含んでいてもよい。こうすれば、環状のゾーンを流れるガスをそれぞれ個別に制御できるようになる。この場合、前記ガス溝ごとに設けられた前記一対のガス給排口は、前記セラミックプレートの所定の半径方向に沿って並んでおり、互いに隣接するゾーンに設けられた2つのガス溝のうち一方を流れるガスの方向は時計回りに設定され、他方を流れるガスの方向は反時計回りに設定されていてもよい。こうすれば、例えば隣接するゾーンに設けられた2つのガス溝に同じ温度のガスを供給したときにガスに起因する温度分布が発生するのを抑制することができる。
【0009】
本発明の静電チャックにおいて、前記複数のゾーンは、前記セラミックプレートの半径によって区切られた複数の扇形ゾーンであってもよい。こうすれば、複数の扇形ゾーンを流れるガスをそれぞれ個別に制御できるようになる。
【0010】
本発明の静電チャックにおいて、前記複数のゾーンは、前記セラミックプレートの中心から外縁に向かって延びる曲線によって区切られた複数の湾曲ゾーンであってもよい。こうすれば、複数の湾曲ゾーンを流れるガスをそれぞれ個別に制御できるようになる。
【0011】
本発明の静電チャックにおいて、前記ゾーンごとに設けられた前記ガス溝には、それぞれに特性の異なるガスを供給可能としてもよい。こうすれば、ゾーンごとに適した特性のガスを供給することができる。なお、「特性」としては、例えば温度、流量、圧力、ガス種などが挙げられる。
【0012】
本発明の静電チャックにおいて、前記ゾーンごとに設けられた前記ガス溝にガスを供給するパターンは、前記一対のガス給排口の一方から他方にガスが流れる第1パターンと、前記一対のガス給排口の他方から一方にガスが流れる第2パターンの、いずれかのパターンを選択可能としてもよい。こうすれば、ガス溝ごとに第1パターンでガスを流すか第2パターンでガスを流すかを決めることができる。
【0013】
本発明の静電チャックは、前記ゾーンごとに一対の端子の一方から他方に至るように前記セラミックプレートに埋設された抵抗発熱体を備えていてもよい。こうすれば、ゾーンごとにどの程度加熱するかを個別に制御できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】プラズマ処理装置10の構成の概略を示す説明図。
図2】静電チャック20の斜視図。
図3】静電チャック20の平面図。
図4図3のA-A断面図。
図5】静電チャック20の電気的接続を示す説明図。
図6】ガス溝25aに接続されたガス経路78aの説明図。
図7】ガス溝25aに接続されたガス経路78aの説明図。
図8】ガス溝25aに接続されたガス経路78aの説明図。
図9】静電チャック120の平面図。
図10図9の部分拡大図。
図11図9のB-Bの断面図。
図12】静電チャック220の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1はプラズマ処理装置10の構成の概略を示す説明図であり、図2は静電チャック20の斜視図であり、図3は静電チャック20の平面図であり、図4図3のA-A断面図であり、図5は静電チャックの電気的接続を示す説明図である。なお、図では、便宜上、抵抗発熱体31~37を網掛けで示した。なお、以下の説明において、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。
【0016】
プラズマ処理装置10は、図1に示すように、内圧を調整可能な金属製(例えばアルミニウム合金製)の真空チャンバ12の内部に、静電チャック20とプラズマを発生させるときに用いる上部電極60とが設置されている。静電チャック20は、真空チャンバ12の内部に設置されている。上部電極60のうち静電チャック20と対向する面には、反応ガスをウエハ面に供給するための多数の小穴が開いている。真空チャンバ12は、反応ガス導入路14から反応ガスを上部電極60に導入可能であると共に、排気通路16に接続された真空ポンプによって真空チャンバ12の内圧を所定の真空度まで減圧可能である。
【0017】
静電チャック20は、ウエハWを吸着保持可能なウエハ載置面22aが上面に設けられたセラミックプレート22と、セラミックプレート22に埋設された静電電極30(図4参照)と、セラミックプレート22に埋設された抵抗発熱体31~37(図3及び図4参照)とを備えている。セラミックプレート22は、外径がウエハWの外径よりも小さいセラミック製(例えばアルミナ製とか窒化アルミ製)の円盤状プレートである。
【0018】
ウエハ載置面22aは、図2~4に示すようにセラミックプレート22と中心が同じである円形突起29と、円形突起29を取り囲むようにセラミックプレート22と同心円状に設けられた環状突起23a~23gとを備えている。また、ウエハ載置面22aは、仕切り壁28を備えている。仕切り壁28は、セラミックプレート22の中心側から半径方向に直線的に延び、円形突起29と環状突起23aとを繋ぎ、環状突起23a~23gのうち隣あうもの同士を繋ぐ。ウエハ載置面22aに載置されたウエハWは、円形突起29、環状突起23a~23g及び仕切り壁28の上面に支持される。
【0019】
セラミックプレート22のウエハ載置面22aは、上からみたときにゾーンZ1~Z7に分かれている(図3及び図4参照)。ゾーンZ1は、環状突起23aの内側の領域である。つまり、ゾーンZ1は、セラミックプレート22と中心が同じである円形のゾーンである。ゾーンZ1は、円形突起29の外側の領域にC字状のガス溝25aを備えている。ガス溝25aには、ガスをゾーンZ1に供給し又は排出する一対の給排口26a,27aが設けられている。一方の給排口26aはC字状のガス溝25aの一端(仕切り壁28の近傍)に設けられ、他方の給排口27aはC字状のガス溝25aの他端(仕切り壁28の近傍)に設けられている。ゾーンZ2は、環状突起23aと環状突起23bとの間の領域であり、ゾーンZ3は、環状突起23bと環状突起23cとの間の領域であり、ゾーンZ4は、環状突起23cと環状突起23dとの間の領域であり、ゾーンZ5は、環状突起23dと環状突起23eとの間の領域であり、ゾーンZ6は、環状突起23eと環状突起23fとの間の領域であり、ゾーンZ7は、環状突起23fと環状突起23gとの間の領域である。つまり、ゾーンZ2~Z7は、ゾーンZ1の外側にセラミックプレート22と同心円状に設けられた環状のゾーンである。ゾーンZ2~Z7は、それぞれに対応するC字状のガス溝25b~25gを有する。ガス溝25b~25gは、それぞれに対応するゾーンZ2~Z7の略全領域に設けられている。C字状のガス溝25b~25gには、それぞれ一端に給排口26b~26gが設けられ、他端に給排口27a~27gが設けられている。給排口26a~26gと給排口27a~27gとの間には、仕切り壁28が位置している。一方の給排口26a~26gも他方の給排口27a~27gも仕切り壁28に沿って設けられている。そのため、一対の給排口26a~26g,27a~27gは、セラミックプレート22の所定の半径方向に沿って並んでいる。
【0020】
静電電極30は、図5に示すESC電源71により直流電圧を印加可能な平面状の電極であり、ウエハ載置面22aと平行に設けられている。この静電電極30に電圧が印加されるとウエハWはクーロン力又はジョンソン・ラーベック力によりウエハ載置面22aに吸着保持され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面22aへの吸着保持が解除される。
【0021】
抵抗発熱体31~37は、ウエハ載置面22aと平行な同一平面に、ゾーンZ1~Z7のそれぞれに対応して一筆書きの要領で形成された抵抗発熱体である。抵抗発熱体31の両端に設けられた端子は、図5に示すヒータ電源81に、セラミックプレート22の裏面から差し込まれた図示しない給電部材を介して接続されている。抵抗発熱体31にヒータ電源81の電圧が印加されると抵抗発熱体31は発熱してゾーンZ1を加熱する。他の抵抗発熱体32~37も、それぞれ個別にヒータ電源82~87に接続されており、電圧が印加されるとゾーンZ2~Z7を個別に加熱する。抵抗発熱体31~37は、例えばW、WC、Moなどを含む導電性材料によって形成されている。抵抗発熱体31~37の形状は、特に限定されるものではなく、例えばコイル状であってもよいし、リボン状であってもよい。また、導電性材料のペーストを印刷したものであってもよい。
【0022】
制御装置70は、CPUやROM、RAMなどを備えた周知のマイクロコンピュータを内蔵している。制御装置70には、図5に示すように、測温センサ62a~62gから出力された信号や入力装置80(キーボードやマウスなど)からオペレータが入力した指令を入力する。測温センサ62a~62gは、ガス溝25a~25gのそれぞれに対応する位置の温度を測定するように設けられている。また、制御装置70は、静電電極30にESC電源71を介して電力を出力したり、抵抗発熱体31~37にヒータ電源81~87を介して電力を出力したりする。更に、制御装置70は、ガス供給源74a~74gを制御して、ガス溝25a~25gに供給するガスの種類や温度や圧力や流量を変更したり、三方弁76a~76g、77a~77gを制御して、ガス溝25a~25gを流れるガスの方向を制御したりする。なお、静電電極30には交流の電力も供給可能であり、プラズマを発生させる際には高周波電源72を介して静電電極30に高周波電圧を印加可能である。
【0023】
ここで、ガス溝25a~25gを流れるガスの方向を制御する場合について説明する。以下には、ガス溝25aを例に挙げて説明する。図6図8は、ガス溝25aに接続されたガス経路78aの説明図である。セラミックプレート22には、セラミックプレート22を厚さ方向に貫通する貫通穴46a,47aが設けられている。貫通穴46a、47aは、それぞれ、ガス溝25aに設けられた給排口26a,27aに連通している。貫通穴46aは、第1三方弁76aに接続されている。貫通穴47aは、第2三方弁77aに接続されている。第1三方弁76aの3つのポートのうち1番目のポートは貫通穴46aに連結され、2番目のポートはガス供給口に連結され、3番目のポートはガス排出口と第2三方弁77aとを接続するガス管の途中に連結されている。第2三方弁77aの3つのポートのうちの1番目のポートは貫通穴47aに連結され、2番目のポートはガス排出口に連結され、3番目のポートはガス供給口と第1三方弁76aとを接続するガス管の途中に連結されている。なお、図6図8の○で囲んだ数字1~3は、三方弁の1~3番目めのポートを示す。
【0024】
ガス溝25aにガスを供給するパターンは、第1及び第2三方弁76a,77aの位置を制御装置70によって調節することにより、給排口26aから給排口27aにガスを流す第1パターンと、給排口27aから給排口26aにガスを流す第2パターンとを切替え可能となっている。
【0025】
具体的には、ガスを給排口26aから供給しガス溝25aを図3で反時計回りに流して給排口27aから排出されるようにするには、第1及び第2三方弁76a,77aを次のように調節する。すなわち、図6に示すように、第1三方弁76aの1番目のポートと2番目のポートとが連通され、3番目のポートが遮断されるように第1三方弁76aを調節すると共に、第2三方弁77aの1番目のポートと2番目のポートとが連通され、3番目のポートが遮断されるように第2三方弁77aを調節する。
【0026】
ガスを給排口27aから供給しガス溝25aを図3で時計回りに流して給排口26aから排出されるようにするには、第1及び第2三方弁76a,77aを次のように調節する。すなわち、図7に示すように、第1三方弁76aの1番目のポートと3番目のポートとが連通され、2番目のポートが遮断されるように第1三方弁76aを調節すると共に、第2三方弁77aの1番目のポートと3番目のポートとが連通され、2番目のポートが遮断されるように第2三方弁77aを調節する。
【0027】
ガスをガス溝25a内に充填する(閉じ込める)には、第1及び第2三方弁76a,77aを次のように調節する。すなわち、図8に示すように、第1三方弁76aの1番目のポートが遮断され、2番目のポートと3番目のポートとが連通されるように第1三方弁76aを調節すると共に、第2三方弁77aの番目のポートが遮断され、2番目のポートと3番目のポートとが連通されるように第2三方弁77aを調節する。この場合、ガス供給源74aを停止させてもよい。
【0028】
ガス溝25b~25gを流れるガスの方向を制御する場合も、ガス溝25aと同様にして第1三方弁76b~76g及び第2三方弁77b~77gを調節すればよい。
【0029】
次に、こうして構成されたプラズマ処理装置10の使用例について説明する。まず、真空チャンバ12内に静電チャック20を設置した状態で、ウエハWをセラミックプレート22のウエハ載置面22aに載置する。そして、真空チャンバ12内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート22の静電電極30に直流電圧をかけてクーロン力又はジョンソン・ラーベック力を発生させ、ウエハWをセラミックプレート22のウエハ載置面22aに吸着保持する。これにより、ガス溝25a~25gはウエハWと共にガス空間を形成する。次に、真空チャンバ12内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、真空チャンバ12内の上部電極60とセラミックプレート22の静電電極30との間に高周波電圧を印加し、プラズマを発生させる。そして、発生したプラズマによってウエハWの表面がエッチングされる。エッチングを行うにあたって、予めウエハWの目標温度Tが設定されている。制御装置70は、測温センサ62a~62gの出力値が目標温度Tと一致するように、各ゾーンZ1~Z7の抵抗発熱体31~37に印加する電圧を調節したり、各ゾーンZ1~Z7のガス溝25a~25gを流れるガスの向きやガスの特性(温度、流量、圧力、ガス種など)を調節したりする。ガス溝25a~25gを流れるガスの向きを変更するには、上述したように第1及び第2三方弁76a~76g,77a~77gを調節すればよい。ガスの温度や流量、圧力、ガス種を変更するには、ガス供給源74a~74gを制御すればよい。
【0030】
ウエハWにホットスポットが発生した場合には、そのホットスポットに対応するゾーンのガス溝に温度の低いガスを導入したり、熱伝導率の高いガス(例えばHeガス)を供給したりしてセラミックプレート22へ効率よくホットスポットの熱を逃がすようにする。あるいは、ガス溝に供給するガスの封入圧力を高くしてもよい。あるいは、そのホットスポットに対応するゾーンの抵抗発熱体に供給する電力を低くして発熱量を抑える。
【0031】
一方、ウエハWにクールスポットが発生した場合、そのクールスポットに対応するガス溝に温度の高いガスを導入したり、ガスの流速を早くしたり、熱伝導率の低いガス(例えばArガス)を供給したりしてクールスポットの熱がセラミックプレート22へ逃げにくくする。あるいは、ガス溝に供給するガスの封入圧力を低くしてもよい。あるいは、そのクールスポットに対応するゾーンの抵抗発熱体に供給する電力を高くして発熱量を上げる。
【0032】
ガスに起因する温度分布の発生を抑制したい場合、ガス溝25a,25c,25e,25gでガスが流れる方向が第1パターンとなるように、三方弁76a,77a,76c,77c,76e,77e,76g,77gでガスの流路を切替える。それと共に、ガス溝25b,25d,25fでガスが流れる方向が第2パターンとなるように、三方弁76a,77a,76c,77c,76e,77e,76g,77gでガスの流路を切替える。こうすることで、隣あうゾーンを流れるガス同士の間で熱交換が行われ、温度の均一なガスがガス溝25a~25gを流れるようにする。
【0033】
以上詳述した静電チャック20では、ガス溝25a~25gは、ゾーンごとに一対の給排口の一方から他方に至るようにウエハ載置面22aに独立して設けられている。ガス溝25a~25gは、ウエハ載置面22aに載置されるウエハWのバックサイドにガス(バックサイドガス)を供給するのに用いられる。こうしたガス溝25a~25gがゾーンZ1~Z7ごとに独立して設けられているため、静電チャック20のバックサイドガスをゾーンZ1~Z7ごとに個別に制御できるようになる。
【0034】
また、静電チャック20では、セラミックプレート22と中心が同じである円形のゾーンZ1と、ゾーンZ1の外側に設けられた環状のゾーンZ2~Z7とを含んでいる。そのため、円形のゾーンZ1又は環状のゾーンZ2~Z7を流れるガスをそれぞれ個別に制御できるようになる。更に、隣接するゾーンに設けられた2つのガス溝のうち一方を流れるガスの方向は時計回りに設定し、他方を流れるガスの方向は反時計回りに設定しうる。そのため、例えば隣接するゾーンに設けられた2つのガス溝に同じ温度のガスを供給したときにガスに起因する温度分布が発生するのを抑制することができる。
【0035】
更に、静電チャック20ではゾーンZ1~Z7に対応して設けられたガス溝25a~25fには、それぞれに、温度や流量や圧力やガス種類の異なるガスを供給可能である。そのため、ゾーンごとに適した特性のガスを供給することができる。
【0036】
そして、静電チャック20では、ガス溝25a~25gごとにガスを供給するパターンは、給排口26から給排口27にガスが流れる第1パターンと、給排口27から給排口26にガスが流れる第2パターンの、いずれかのパターンを選択可である。そのため、ガス溝ごとに第1パターンでガスを流すか第2パターンでガスを流すかを決めることができる。
【0037】
そしてまた、静電チャック20では、ゾーンZ1~Z7に対応した抵抗発熱体31~37がセラミックプレート22に埋設されている。そのため、ゾーンZ1~Z7ごとにどの程度加熱するかを個別に制御できる。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上述した実施形態では、ウエハ載置面22aは、上からみたときに円形のゾーンZ1と環状のゾーンZ2~Z7とに分かれていたが、これに限られない。例えば、各ゾーンは図9~11に示す静電チャック120のように、セラミックプレート122のウエハ載置面122aは、上からみたときにセラミックプレート122の半径によって区切られた複数の扇形のゾーンZ12に分かれていてもよい。各ゾーンZ12は、略全領域に扇形のガス溝125を備えている。各ガス溝125の中心側には給排口126が設けられ、外周側には給排口127が設けられている。各ゾーンZ12のうち隣あうもの同士の間には、ウエハ載置面122aの中心側から外周側に向かって延びる仕切り壁128が設けられている。各ガス溝125には、それぞれ独立して、ガス供給可能になっている。こうすれば、複数のゾーンZ12を流れるガスをそれぞれ個別に制御できるようになる。
【0040】
あるいは、図12に示す静電チャック220のように、セラミックプレート222のウエハ載置面222aは、上からみたときにセラミックプレート222の中心から外縁に向かって延びる曲線によって区切られた複数の湾曲したゾーンZ22に分かれていてもよい。各ゾーンZ22は、略全領域に湾曲したガス溝225を備えている。各ガス溝225の中心側には給排口226が設けられ、外周側には給排口227が設けられている。各ゾーンZ22のうち隣あうもの同士の間には、ウエハ載置面222aの中心側から外周側に向かって延び、中心側から外周側に進むにつれて湾曲する仕切り壁228が設けられている。各ガス溝225には、それぞれ独立して、ガス供給可能になっている。こうすれば、複数のゾーンZ22を流れるガスをそれぞれ個別に制御できるようになる。
【0041】
上述した実施形態では、セラミックプレート22に抵抗発熱体31~37を埋設したが、抵抗発熱体31~37を埋設しなくてもよい。この場合、主にガス溝25a~25gに流すガスによってウエハWの温度を制御することになる。
【0042】
上述した実施形態において、静電チャック20の裏面に金属製(例えばアルミニウム製とかアルミニウム合金製)の冷却プレートを接着又は接合してもよい。冷却プレートの内部には、冷媒(例えば冷却水)が循環する冷媒流路を設けてもよい。冷媒によってもウエハWの温度を制御することが可能になる。
【0043】
本出願は、2020年5月25日に出願された日本国特許出願第2020-090932号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、半導体製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 プラズマ処理装置、12 真空チャンバ、14 反応ガス導入路、16 排気通路、20,120,220 静電チャック、22,122,222 セラミックプレート、22a,122a,222aウエハ載置面、23a~23g 環状突起、25a~25g,125,225 ガス溝、26a~26g,27a~27g,126,127,226,227 給排口、28,128 仕切り壁、29 円形突起、30 静電電極、31~37 抵抗発熱体、46a,47a 貫通穴、60 上部電極、62a~62g 測温センサ、70 制御装置、71 ESC電源、72 高周波電源、74a~74g ガス供給源、76a~76g 第1三方弁、77a~77g 第2三方弁、78a ガス経路、80 入力装置、81~87 ヒータ電源、W ウエハ、Z1~Z7,Z12,Z22 ゾーン。
図1
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図12